(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向に伸長する複数の結合部材によって形成される、糸、不織布、織布、ブレード、編地、刺繍織布、および/またはメッシュの織構造体からなる人工装具材料であって、
前記結合部材の各々は、メッシュ状構造になるよう編み込まれた糸を含むスリーブと、前記スリーブに結合されたコアとを含み、
前記スリーブは前記コアを取り囲み、
前記コアは、吸湿性材料で構成されるか、または吸湿性材料が中に封入された疎水性材料で構成された構成部材を含み、水、生理食塩水、血液、および/または体液に接すると、水を吸収することによって太くなることが可能であり、
前記コアが太くなると前記スリーブの直径が大きくなり、これにより前記スリーブが長手方向に縮んで前記結合部材が収縮される、人工装具材料。
長手方向に伸長する複数の結合部材によって形成される、糸、不織布、織布、ブレード、編地、刺繍織布、および/またはメッシュの織構造体からなる人工装具材料であって、
前記結合部材の各々は、メッシュ状構造になるよう編み込まれた糸を含むスリーブと、前記スリーブに結合されたコアとを含み、
前記スリーブは前記コアを取り囲み、
前記コアは、吸湿性材料で構成されるか、または吸湿性材料が中に封入された疎水性材料で構成された構成部材を含み、水、生理食塩水、血液、および/または体液に接すると、水を吸収することによって太くなることが可能であり、
前記コアが太くなると前記スリーブの直径が大きくなり、これにより前記スリーブが長手方向に縮んで前記結合部材が収縮される、人工装具材料。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を更に詳しく説明する。
【0016】
図1は、ジャケット12により取り囲まれて予張力が与えられたコア11を備える結合部材の一部分10の概略的表示を示している。ジャケット12は、所定の時間にわたって行なわれる後述する化学的プロセスおよび物理的プロセスの作用下で圧縮される硬質材料からなっている。この圧縮プロセスを引き起こす結果的な力は、コアに対する予張力の付与に起因する力、すなわち環境から糸に作用する張力(例えば、縫合中に加えられる張力)である。環境によって糸に及ぼされる張力が減少するにつれて、結果として生じるジャケットに作用する圧縮力が増大する。これがジャケットの圧縮に有利に働き、その結果、糸または糸から形成される織構造体の収縮が加速される。これにより、前述した力間で再び平衡状態が得られるまであるいはゆっくりとした圧縮を伴うことなくジャケットに作用する圧縮力をジャケットが支持できるまで、糸または織構造体に張力が付与される。
【0017】
ジャケットのための材料は、それが規定の期間にわたって制御された塑性変形を可能にするという点を特徴としている。すなわち、該材料は、明確な降伏点を有するとともに、降伏点以下でほぼ弾性的に振る舞う。このことは、材料の主成分が、体温を超えるガラス転移温度を有していなければならないあるいは高い結晶化度を有していなければならないとともに、更に高度の破壊靱性を有することを意味している。この材料クラスの代表的なものは、例えば、体温を明らかに上回るTgを有する構造的ポリマーと0°を明らかに下回るTgを有するポリマーとの混合物または共重合体である(混合物:ポリラクチドとトリメチレンカーボネートとの混合物、共重合体:ポリヒドロキシブチラートとポリヒドロキシバレレートとの共重合体)。しかしながら、この機能は、PE、ポリアミドまたはポリエステルなどの高結晶性ポリマーによって果たすこともでき、その場合、エンベロープの構造体には、例えば断面の局所的な薄肉化によって、補強および捻れ(キンク)の組み入れによって、あるいは、高分子配向の変動による弾性率の局所的な周期的変動によって、規定の降伏点が設けられなければならない。結合部材のこの部分10の端部には、いずれの場合にも、例えばメッシュなどの結合構成部13が存在し、この結合構成部を用いてジャケット12が編み込まれる。コア11は、このメッシュ13と例えば結節14とを通じてルート付けられる。コア11自体は可撓性材料からなる。コアのための材料の例は、エラストマーの性質を有し且つクリープを起こす傾向が最小の材料であることが好ましく、その典型的なものは、糸の完全な分解が求められる場合に分解性成分からなることもできるシリコ
ーンまたはポリウレタンなどの架橋ポリマーである。休止位置において、コア11は結合構成部13間の距離よりも短く、そのため、
図1で見ると、挿入されたコア11に予張力が与えられている。これは、矢印15で示されている。ジャケット12は硬質であるため、結合構成部13は、コア11のバネ張力の作用にもかかわらず、離間した状態に維持される。
【0018】
ここで説明したコアおよびジャケットの機能を置き換えることもできる。すなわち、処理前に、ジャケットに予張力が付与され、コアが圧力によって作用される。
【0019】
また、処理後(例えば、糸の場合には縫合後)にのみ予張力を加えることもできる。
【0020】
結合部材、特に、創傷処置のための縫合材料、例えば幅広いバンドも、結合部材の多くのそのような部分10によって形成され、その場合、例えば多くの結合部材が互いに連続的に並んで配置されることにより、処理できるバンドが形成される。結合部材は、制御された捻れ挙動を伴うエンベロープによってそれらの全体が取り囲まれることが有益である。しかしながら、特に構造全体ができる限り柔軟で形成可能でなければならない場合には、それぞれの個々の部材をそのようなエンベロープによって取り囲むことができてもよい。
【0021】
大きな力がそのようなバンド上で急激に増大して特定の時間後に再び減少する場合、例えば、ほんの数秒で増大する力が数秒間持続した後にゼロに戻る場合、硬質ジャケット12は、個々の部分10を所定の位置に保ち、したがって、バンドおよび結果的にバンドに接続された器官、例えば腱および骨も所定の位置に保つ。
【0022】
ここで、
図2は、長い時間にわたる、例えば数週間にわたる結合部材の部分10の進展を示している。長期間の後、前述した短期持続型の力が介在すると、ジャケット12が変形する。ここでは、その変化されたジャケットが参照符号16で示されている。コア11の予張力作用により、結合構成部13が互いの方へと移動し、結合部材の部分10から形成されるバンドが収縮する。この結果、長さが当初の長さから最大で80%まで変化する。
【0023】
ジャケット16の変形の代わりに、他の実施形態に係るジャケット22は、例えば前述した生体分解性ポリマーの少なくとも部分的な使用によって構造的に分解することもできる。すなわち、材料の少なくとも一部は、水の摂取および組み込まれた生体分解性ポリマーの初期の加水分解の結果として、最初にその弾性率の一部を失い、したがって、捻れに対するその安定性を失うが、同時に、その塑性変形能力に関して利益を得る。分解が進むにつれて、これにより、質量の損失および物理的破壊がもたらされる。これは、使用開始時のものとして
図3に示され、また、長時間が経過した後のものとして
図4に示されている。いずれの場合にも、全ての図面において、同様の特徴には同じ参照符号が与えられている。
【0024】
結合部材の部分20にはジャケット22が設けられ、このジャケット22はその構造的完全性を経時的に失う。これは、
図4の更に薄いジャケット26から分かる。このようにして、分解するジャケット26は、柔軟なコア11に対する抵抗力がほとんどなくなり、結合構成部13間の距離が更に短くなる。しかしながら、このプロセス中に急激な張力または衝撃力が結合部材20に作用する場合、結合部材は再び剛体状に反応する。これは、原則的に、ジャケット22の剛性が、特に急激な応力に対するその抵抗力に関して変形により変化せず、巨視的に異なっていないためであり(図面の概略的表示のみから出発して)、また、コア11に対して弱くなったにすぎないためである。これは、特に、短期の応力作用時に関与するジャケット材料の弾性特性に関わっている。
【0025】
二次元または三次元の本体が結合部材から形成される場合には、衝撃力を吸収することができ、その本体は、それらの断面によって規定される座屈安定性または捻れ安定性を有する。これは、例えば、相互に接続された回転対称な糸からなるシートにより、あるいは、結合部材の内部が長円形断面または楕円断面を伴って引き伸ばされるという事実により達成することができる。
【0026】
図面に示されない例示的実施形態において、結合部材10または20は、硬質コアと予張力が付与されたジャケットとを有することもできる。しかしながら、
図1〜2および
図3〜4に係る機能は同一のままである。重要な点は、各部分10、20が急激な負荷変化に反応せず、すなわち、各部分が硬質のままであり経時的に収縮するという点である。
【0027】
そのような一次元部材に二次元または三次元的な配列を与えて、収縮する織構造が得られるようにすることもできることは明らかである。また、これらの材料に吸収性構成材料を設けて、これらの材料を最終的に分解できるようにすることもできる。
【0028】
図5は、結合部材30の第3の例示的な実施形態を示している。結合部材30は、潤滑材32が組み込まれた多数の隣接する分
子(コアポリマー
31)から形成されている。分子は、例えば、既知の生体適合性ポリマーからなる高分子であってもよい。例えば可塑剤としての機能を果たす、いわゆる潤滑材は、特に、排他的ではないが、コアポリマーのための溶媒またはコアポリマー中での溶解度が高い物質を含むことができ、前記物質は、解放された投与量で生体適合性を有していなければならない。潤滑材は、比較的高い投与量で許容されることが既知のアセトンまたはアルコール、あるいは、N−ピロリドンまたはジメチルスルホンアミド(DMSO)などの低分子量溶媒を含むことができる。潤滑材32は、矢印の参照符号33で示されるように、例えば数週間にわたって次第に糸から離れる。すなわち、潤滑材は拡散放出される。一方では、コアポリマーと潤滑材との間の分子の相互作用によって拡散の動力学が決定され、他方では、有機(例えば、潤滑材のための低溶解度の他のポリマー)または無機(例えば、プラズマ重合PMMA層またはSiOx層またはアモルファスダイヤモンド状の層などのCVD層)の生体適合性バリア層を適用することによって拡散挙動を制御することができる。このようにして、力が特に矢印34に沿って作用する。したがって、結合部材30が
図6係る収縮状態へと変換し、この状態では、
コアポリマー31の各分
子が僅かな空間しか占めない。これらの結合部材30は、糸に類似し得るが、いくつかの織りフィラメントからなることもできる。
【0029】
図7は、結合部材40の第4の例示的な実施形態を示している。結合部材40は、ジャケット42により取り囲まれたコア41を備える。コア41は、例えば後述するように膨潤性材料である。ジャケット42は、特にメッシュからなり、例えばコア41の周囲に螺旋状に配置された糸43、特に編み込まれた糸あるいは織り交ぜ糸43からなり、これらは、特に、外科縫合材料で一般に使用され且つ縫合材料のために処理される前述した一群の既知の分解性ポリマーおよび非分解性ポリマー、例えば伸張されたポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアラミド、拡張されたあるいは密にハロゲン化されたポリマーまたはポリエーテルエーテルケトンやカプトンなどの高強度ラダーポリマーからのものである。
図7は休止状態の結合部材40を示している。この状態において、糸43は、結合部材40の長手方向に対して例えば30度の角度44で方向付けられている。角度は、その初期状態では、例えば5度〜50度、特に10度〜40度をとることができ、20度〜35度であることが好ましい。したがって、ここに描かれる例示的な実施形態は、この角度範囲の中間に収まる。
【0030】
そのような結合部材40は力の急激な変化に反応しない。それに対して、化学的プロセスおよび物理的プロセスによって引き起こされるコア
41の膨張により、糸43により取り囲まれるコア
41が厚くなる。このようにして、結合部材40の長手方向に対する角度44が新たな角度45、例えば48度に変わる。したがって、メッシュ46に大きな直径が与えられて、メッシュが短くなり、結合部材全体も短くなる。メッシュは、編み込まれた糸によって形成されている場合、ブレードと称される。したがって、この用語は、本出願の全体にわたってメッシュという用語と置き換えることができる。
【0031】
膨張プロセスは、例えば、浸透性コア
41、すなわち、浸透活性物質(例えば、塩、粒子形状の水溶性物質(例えば糖類)、または、弾性チューブ中のこれらの物質の高濃縮された溶液)を有し、したがって水を吸収するコア
41によって達成することができる。
【0032】
例えば、
図7Aに非常に概略的に示されるように、コア41は、塩の結晶47が組み込まれるフィラメント状高分子材料(分解できない、または、完全にあるいは部分的に分解できる)、例えば、熱可塑性エラストマー
(TPE)(ポリウレタン、ポリエステル)、架橋エラストマー(シリコーン、ポリウレタン、エラスチン、コラーゲン)、または、ゲル(ポリエチレングリコール、アルギン酸塩、キトサン)を備えることができ、その場合、粒子状物質は、粒径、粒径分布、凝集の状態に応じて、ポリマー中で5%〜75%の体積濃度を有利に有することができる。しかしながら、ナノスケールの粒子が使用される場合、高い粒子数は、1%未満の濃度が既に有効であることを意味している。ポリマー糸は溶融物または溶液から押し出し成形することができ、また、粒子は、押し出し成形前に、ポリマー塊へ同時押出し成形されあるいは混合される。また、これらは、25〜60%の濃度を有することもできる。周囲液体としての粒子の周囲の個々の胞状形態が吸収されるため、コアの強度(糸強度は周囲フィラメントの特性によって決定される)は粒子の濃度に直接に依存している。
【0033】
他の例示的な実施形態では、拡張材料または浸透活性物質またはその高濃縮された溶液が直接に充填される10〜200ミクロンの膜、例えばPU膜をチューブに設けることができる。したがって、充填密度を除き、体積の100%が浸透活性物質または塩で満たされる。チューブは、PUR、シロキサン、PEGまたは他の浸透性の生成物、特に浸透性を有する弾性または可塑性の幾何学的に伸張可能な膜(例えば、軸方向の折れ、襞、または、起伏の引き伸ばし)の形態を成す半浸透性の生成物から形成することができる。特に、チューブは、分割されたチャンバを形成するために一定の間隔で狭くすることができる。このことは、前述した効果にほとんど影響を及ぼすことなく糸全体を任意の所望の長さに切断できることを意味する。
【0034】
浸透活性物質は、生体適合性無機塩類およびその水溶液、例えば塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムを含むことができ、あるいは、有機浸透活性分子、例えばデキストランなどの低分子量多糖類を使用することができる。取り扱いを向上させるため、また、浸透性の動力学に更に影響を及ぼすため、浸透活性物質を、生体適合性のゲルまたはヒドロゲル(例えば、アルギン酸塩、キトサン、または、その共重合体、ポリアクリレート、ポリエチレングリコールなどの群からのもの)内に埋め込むこともでき、あるいは、前述したようにエラストマー内に埋め込むことができる。その作用が原理的に浸透活性物質に匹敵する効果は、ヒドロゲルの単独使用によっても達成することができる。フィックの法則によれば、特定の重要性は膨張系を取り囲む膜に付随し、この膜は、H
2Oに関するその浸透および拡散特性により、また、その厚さにより、浸透性の動力学にかなりの影響を及ぼす。無論、膜は、いくつかの層から形成することができ、または、安定したあるいは可溶性の拡散抑制層を備えることもできる。ヒドロゲルが使用される場合、そのような膜状特性は、外側に向けてかなり増大する架橋密度によって得ることもできる。浸透性をもたらす濃度差は、糸コアと患者の周囲血液または間質液および/または組織内液(intrastitial fluid)との間で得られなければならない。
【0035】
糸43の編み込まれた構造は、分解性または非分解性モノフィラメントまたはマルチフィラメント縫合材料において一般的に使用されるような織り糸を使用して、例えば、伸張されたあるいはテクスチャード加工されたポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリジオキサノンを使用して得ることができる。縫合材料は、編み込まれた糸によって取り囲まれる膨潤コアから構成することができるとともに、それぞれが糸状ブレードによって順に取り囲まれるいくつかの織り合わされた膨潤性の糸から構成することもできる。フィラメント直径は、取り囲まれるべきコアの繊度に関して、また、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの被覆糸(0.2−200ミクロン)の選択に関して、従来技術と一致している。スライディング格子のように作用するこの収縮メカニズムは、膨潤コア、構造フィラメントの膨潤コーティング、特にブレードを形成する構造フィラメントまたは更に軸方向に延びる構造フィラメントの膨潤コーティングが設けられた糸と同様に達成することができる。他の例示的な実施形態に関して既に述べたように、前記糸材料を使用して、収縮する二次元または三次元織構造を形成することもできる。
【0036】
すなわち、結合部材40には長期にわたる自由度が与えられ、その結果、力を加えることなく、材料がゆっくりと緩みあるいは収縮する。これに対し、ピーク負荷では、結合部材40が剛体状に反応する。無論、従来技術にしたがって、増殖因子、炎症抑制剤、サイトカイン、受容体または受容体配列、抗生物質、または、抗生物質作用、細胞静止作用、殺菌作用、あるいは、静菌作用を有する物質などの生物活性物質の吸着、移植または解放により、全ての材料または生物学的組織と接触する材料表面を化学的に、生物化学的に、または、生物学的に機能化させることができる。
【0037】
図7Aは、結合部材の本発明にしたがった更なる機能化を示している。膨潤コア41は、活性物質で満たされた小胞48を備え、あるいは、間質溶解された活性物質49、したがって、ポリマー鎖間に組み込まれる活性物質49を備える。膨潤により、小胞および溶解された活性物質に作用する圧力が増大する。したがって、活性物質をコアから積極的に放出することができる。小胞の径方向の分布密度を変えることにより、時間制御された解放プロファイルを得ることができるが、無論、この解放プロファイルは、増大する膨潤圧力によって影響される。前述したように拡散制御膜がコアに設けられる場合、コアからの物質の流れは、濃度および化学的活性に依存する膜の輸送特性によって更に影響され得る。明確にするため、参照符号47、48および49はコア
41の異なる場所に示した。基本的に、塩粒子47は、コア内に等方的に分布させることができる。活性物質は、小胞48内に設けることができあるいは間質溶解できることが有益であるが、いずれの形態においても、簡略化された表示とは異なり、コアにわたる等方的な分布が存在する。
【0038】
言い換えると、膨潤効果は、巨大分子構造の水和によって得られる。管状弾性膜は、チューブの周囲に螺旋形状に巻き付く硬質糸から形成されたメッシュスリーブ内に嵌め込まれる。張力はこのメッシュスリーブを介して伝えられる。チューブの内部には、飽和した塩溶液が存在する。メッシュスリーブおよび膜は等張液内に配置される。化学的/物理的プロセスにより、平衡の状態が得られるまで濃度バランスが行なわれる。溶液が吸収される結果、かなりの圧力が弾性管状スリーブの内部で増大し、それにより、チューブの膨潤がもたらされる。力の平衡が、内圧と、メッシュスリーブまたは編み込まれたスリーブに対して軸方向に加えられる張力との間で確立される。スライディング格子としての機能を果たすメッシュスリーブが収縮する。
【0039】
310°Kにおいて膜の両側で所与の濃度差(Δc)[mol/l]で浸透圧により引き起こされる寸法変化および長手方向収縮力を計算するため、以下のようなシミュレーションが行なわれた。
開始点d
0における糸直径 7×10-
4m
開始角α 60°
張力方向に対する糸角度β 90−α°
濃度本体C
blood 0.296mol/l
飽和濃度(NaCl)C
saturation 6.15mol/l
【0040】
理想的に希釈された溶液における浸透圧П[Pa]は、以下のように簡略化された様式で設定することができる。
【0042】
ボイラー式による径引張σ
radial[N/m]
【数2】
【0043】
テンション(σ
radial)からの径方向の力(f
radial)[N/m]
【数3】
【0045】
径方向の力(F
radial)と長手方向の力(F
long)の比
【数5】
【0046】
圧力(F
pressure)[N]
【数6】
【0049】
得られる長さ−収縮力(F
res.)[N]
【数9】
【0050】
Δc=5.8mol/lの差においては、約30°の規定の糸角度および開始寸法で、結果として生じる長さ−収縮力が最大となることが分かった。体積が増大するにつれて、表面積、したがって圧力による力(F
pressure)が更に大きくなり、それにより、結果として生じる長さ−収縮力が減少する。径方向の力の割合は、45°の角度から始まる長手方向成分よりも大きくなる。長手方向の力の所望の最小値は、この例では、48°の糸角度で得られる。この時点で、糸が20%を僅かに越える分だけ短くなった。対応する表示が
図11に示されている。
【0051】
図9は、本発明の第5の例示的な実施形態に係る、インビトロまたはインビボでの試験使用直後すなわち埋め込み後における結合部材50の概略図を示している。結合部材50は、例えば糸分子52が組み込まれる通常の分解性または非分解性縫合材料からなる基材51によって形成された糸である。分子52は、例えば、体温をかなり下回るガラス転移温度を有するポリマーであってもよく、あるいは、水を吸収して膨張する際立った傾向を有するポリマー(例えば、多糖類、ポリアミド)を選択することができ、あるいは、分子の収縮性が増大されるようにその前の架橋が架橋部位の加水分解によって還元され且つ例えば処理および基材中におけるそれらの限られた溶解度によって分子鎖またはメゾスコピック構造、例えばネマチック構造を形成できるポリマーを選択することができる。
【0052】
糸が製造中に伸張され、それにより、収縮性の糸分子または相52が結合部材50の長手方向と平行に方向付けられる。力が急激に加えられると、すなわち、牽引力または衝撃が加えられると、結合部材50は糸52によって剛体状に反応する。長期間にわたって、例えば数日間にわたって、特に数週間にわたって、糸分子または相52が変形し、特に、糸分子は、収縮するとともに、当初の伸張方向に対して垂直に巻き上がりあるいは広がる。その際、糸分子は、長手方向から逸れ、したがって長手方向に対して短くなる。したがって、匹敵する糸部分が短くなる。このプロセス中に、急激な牽引力または衝撃力が結合部材50に作用する場合、結合部材は再び剛体状に作用する。これは、糸53の剛性が基本的に変形によって変化しなかったからである。コイル構造の弾性率は、配向されたネマチック構造の弾性率よりもかなり小さいが、この構造は、機械的観点から、結合部材50に作用する短期間の負荷の僅かな部分だけを吸収する。したがって、剛性は、そのような衝撃型負荷によってほとんど影響されない。
【0053】
図11は、本発明に係る例示的な実施形態の図を概略表示で最終的に示し、特に、本発明に係る結合部材の使用範囲の一例を示している。引張り方向に対する糸角度(°)がX軸上にプロットされ、前記式では、この角度に文字βが与えられている。Y軸上には、力F
res(ニュートン)が左側にプロットされ、一方、右側は、相対直径(参照符号61)、長さ(参照符号62)、体積(参照符号63)をパーセントで示している。ボックス64によって規定される糸角度範囲は、50%を越える体積の変化をカバーしている。対応する力曲線65は、全てとは限らない非常に非対称な力分布、したがって、糸部材の最大負荷の前後でのあまり大きくない降下を示している。
【0054】
組織および人工装具材料を処理するための方法は、組織および/または人工装具材料と本発明に係る結合部材とを接続する方法ステップを備える。人工装具材料は、既製の糸ループとして1つ以上の縫合固定部または同様のインプラント上に固定される針を伴わない糸材料またはメッシュ材料を含むことができる。また、人工装具材料は、糸ループを伴う既製の針として1つ以上の縫合固定部または同様のインプラント上に固定される針を伴う糸材料を含むこともできる。特に、糸材料から製造されたバンドを例えばステープルまたはピンまたは釘によって骨または軟組織に対して直接に接続することもできる。
【0055】
経時的に短くなる結合部材は、骨に対する腱または靱帯の固定時に使用される。経時的に短くなる結合部材の更なる用途は、確実に固定されあるいは摺動する縫合固定部と組み合わされた、ループとして、固定保持プレート(パラシュート)間の接続部として、または、いくつかの固定部間の接続部としての用途である。また、経時的に短くなる結合部材は、哺乳類および他の動物でも使用することができ、特に人間に使用することができる。
【0056】
特に、経時的に短くなる結合部材は、以下の適用、すなわち、腱再建術、特にアキレス腱再建術または腱板再建術、関節上での肩安定化手術、腱、筋膜、靱帯、または、他の軟組織部分を接続するための腱移行術、関節安定化手術、特に肩鎖関節または胸鎖関節の安定化、例えば膝、ひじ、または、足首での側副靱帯再建術、十字靱帯再建術、筋膜隙間の閉塞、ヘルニア手術、例えば筋膜切開後における開放創傷処置での創傷閉塞、皮膚縫合、全てのタイプの、例えば吸収性または非吸収性のインプラント上、例えば人口装具または縫合固定部上での腱、骨、または、軟組織部分の再建、結紮、子宮または膀胱の固定/支持、腸、胃、膀胱、血管、気管、気管支、または、食道の縫合、および、筋膜の縫合に関連して外科的用途のために提供することができる。
【0057】
経時的に短くなる結合部材は、組織として使用することができる。また、当該結合部材は、器官、例えば心臓を取り囲むための袋として使用することもできる。筋膜の隙間のために組織を使用することもできる。
【0058】
組織は、腱または筋膜欠陥のための橋渡し接ぎ木(架橋グラフト)として使用することができる。また、組織は、例えば人工皮膚または培養された皮膚または他の皮膚閉塞材料と組み合わせて、皮膚欠陥の閉塞のために使用することもでき、あるいは、例えば動脈瘤における血管周囲のカフとして、胆管または胆嚢の周囲のカフとして、腸の一部、例えば胃の周囲のカフとしての機能を果たす。最後に、組織は外的用途のため、例えば、サポートストッキングとして、傷跡修正等のためのやけどの被覆材として与えることもできる。また、組織は、これらが例えば腱板上の異なる部分に接続される場合には、同時にいくつかの腱のための橋渡し接ぎ木としての機能を果たすこともできる。
【0059】
既製の形態で、すなわち、例えば十字靱帯、腱、支帯、筋膜等のような交換または増強されるべき器官または器官の一部の形態で材料を設けることが特に有益となり得る。また、機能面構造、例えば軟組織部分の固定のための返しを糸材料に設けることができる。最後に、結節のためあるいは結節がない形態で、骨縫合固定部に対する糸材料の接続部が、前記固定部で摺動しあるいは摺動することなく存在する。前記接続部は、吸収性材料、部分的に吸収性がある材料、あるいは、完全吸収性の材料から形成することができる。異なる特性間を区別するために、結合部材を異なる色で形成して使用することができる。
【0060】
結合部材は、単独で使用される以外に、硬質な一部品または多部品インプラント、例えば糸の収縮中に所望の様式で収縮する本質的に移動可能な圧縮プレートと組み合わせて設けることもできる。
【0061】
これらの用途に加えて、結合部材は、技術的物体の接続のため、例えば織部分の接続または一般的に部材の固定のために使用することもできる。医学における例示的実施形態の使用の説明は、この使用に対する限定を何ら示唆するものではない。
【0062】
図12は、インビトロまたはインビボでの試験使用における本発明に係る糸84の形態を成す結合素子に関し、時間71に対してプロットされた糸張力72の概略図を従来の糸74と比較して示している。
【0063】
破線73は任意の閾値を示し、この閾値よりも上では、糸がピンと張った状態(高い糸張力)を呈し、閾値よりも下では、糸が幾分緩んだ状態(低い糸張力)を呈する。
【0064】
曲線74は従来の糸に関するものであり、曲線84は本発明に係る糸に関するものである。例えば靱帯を固定するための移植の開始時間付近では、両方の糸の張力が同等である。従来の糸は、単調な下向きの線75により示されるように、張力を徐々に緩める。靭帯が縫合された人の身体の一部での任意の不適切な動きであってもよい降下76の暁には、張力の突然の増大が存在するが、直ぐに、その後の単調な下向きの線77が更に下位のレベルまで降下する。
【0065】
これに対し、本発明に係る糸84の場合には、糸張力の経時的な単調増加85がある。これは重要である。なぜなら、ここでは降下76と同じ時間に発生する同じ大きさの降下86が、張力の短時間の増大が除去された後の糸の緩みをもたらすからである。しかしながら、この降下は、あまり大きくないため、降下後の張力は開始張力をあまり下回らない。その後、糸の新たな引張り87があり、その後、更に高い張力値を再び得ることができる。このサイクルは、組織部の収縮再結合により数週間後に完了される治癒プロセスが終了するまで、治癒組織部の転位を補償するためにそれ自体数回繰り返すことができる。
【0066】
図13は、本発明の例示的実施形態に係る中実コアを有する糸を伴う結合部材160の一部の概略図を示している。これは特定の形態を示している。糸160はコア161とメッシュスリーブ162とからなる。この場合、メッシュスリーブ162は12本の編み込まれたフィラメント163によって形成されている。フィラメントは、楕円空間を占めるマルチフィラメントである。このようにすれば、編み込みによりコア161を完全に覆うことができる。12本のフィラメント163ではなく、前記フィラメント163を更に多く(例えば、14本、18本以上)あるいは少なく(例えば、3、4、6本または10本)設けることもできる。更に多くの数を用いて、フィラメントをモノフィラメントにすることもできる。ここでは、コア161は、弾性的に、塑性的に、または、幾何学的に径方向に伸張できる膜によって区切られるとともに、例えば降下86の場合に強い張力負荷を吸収するためのステッチ糸164を含有せず、1本含み、あるいは、複数本(ここでは、3本)含有する。コア161内にはゲルまたは基質165も存在し、コア内には、浸透活性粒状物質166または小胞内に封入された物質、例えば塩の結晶を組み込むことができる。塩の結晶は、他の浸透活性物質と置き換えることもできる。これらの封入体166は、その後、前述した様式で浸透により液体を吸収することができるとともに、コアの拡張により糸160の収縮、したがって糸160の引張りをもたらすことができる。この収縮はスリーブフィラメント163の十字配置によって支持され、これに対し、中心のステッチ糸は、糸160の最大強度を規定すると同時に、コア161の圧縮を制限する。
【0067】
図14は、本発明の例示的実施形態に係る管状コア161を有する糸を伴う結合部材170の一部の概略図を示している。糸170は、コア161とメッシュスリーブ162とからなる。同じ参照符号は、全ての例示的実施形態において同じ意味または同様の意味を有する。コア161は、コーティング171を設けることができる管状膜177を備える。先の実施形態で説明したように、コーティングは、拡散特性に影響を与えることができ、あるいは、例えばコアと剪断フィラメントとの間の摩擦を減らすことができ、したがって、浸透プロセスの効率を高めることができ、また、軸方向に折り曲げられた襞のある硬質な膜(滑らかなエラストマー膜177とは対称的である)として形成することができるとともに、膨潤プロセスを制限してブレードからのコアの膨れ上がりを妨げる。物質輸送のための材料の例としては、PVDコーティングまたはCVDコーティングまたはポリマーコーティングが挙げられ、また、拡張を制限する材料の例としては、ポリアミドまたはポリオレフィンなどの硬質な構造的ポリマーが挙げられる。
【0068】
3本のステッチ糸164が飽和食塩水175または他の浸透活性物質によって取り囲まれ、この場合、飽和溶液を維持するべく更なる液体を吸収するために更なる粒状塩結晶176が存在することができる。フィラメント163を有するメッシュスリーブ162は、先の例示的実施形態の場合と同じ方法で形成されている。液体は、例えば、水溶液、親水性の液体(例えば、高級アルコール、DMSO)、または、吸湿性の生体適合性液体または疎水性の液体(例えば、油)であってもよい。液体の疎水性度合いは、拡散速度、したがって浸透作用の動力学に影響を与えるために使用できる。
図7で説明した実施形態と同様、ステッチ糸は、ゲル状基質あるいはエラストマー基質中に埋め込むこともでき、この場合、浸透膨潤を達成するために固体状または液体状の浸透活性物質が組み込まれる。基質がそれ自体で十分に安定している場合、例えばエラストマー基質の場合には、膜171を省くこともできる。
【0069】
コーティングはTPUからなることもできる。ステッチ糸は、前述したものと同様に省くこともでき、異なる数で存在することもでき、あるいは、コアの外側に適用することもできる。
【0070】
図14に示される実施形態の変形として、
図15〜
図17は、糸構造の異なる構成を示している。
図15は、本発明の例示的な実施形態に係る外側膜181を有するマルチコア糸161を伴う結合部材180の概略断面図を示している。ここでは、3つのコア161が設けられ、これらのコアは、浸透膜によって取り囲まれるとともに、例えばそれぞれがゲル充填材165を有し、ゲル充填材中には塩結晶186が埋め込まれている。形成されるべき糸の強度に応じて、4つ、5つ、6つ以上のコア161を設けることもでき、これらのコアは、必ずしもそのようである必要はないが、例えばスリーブ162のフィラメント163がその上に配置される膜によって取り囲まれる。スリーブ162の(マルチ)フィラメント163はそれぞれ、及ぼされる引張応力の結果として図示の形態で存在する多数の個々のフィラメント183を備える。糸180は、全体として、外側から糸をシールするスリーブ181によって取り囲まれている。
図13および
図14における糸とは異なり、編み込まれたフィラメント163は、ここでは、浸透チャンバの内側にある。特に、その濃度が液体の取り込みの結果として減少する溶液によって空間185を満たすこともできる。空間185、および、膜163、181によって囲まれる空間も、活性物質で満たされた小胞187を含有することができ、あるいは、コア構造体の径方向の拡張による圧力に晒されることにより1つ以上の活性物質を放出する活性物質溶液188を直接に含むことができ、前記活性物質は、膜181を介して周囲組織中へと解放される。他の例示的実施形態の場合と同様、この例示的実施形態の特定の特徴も、例えばステッチ糸の数および位置に関して、ここに記載された他の特徴と置き換えることができる。
【0071】
図16は、本発明の例示的実施形態に係るコア膜191をいずれの場合にも有するマルチコア糸190を伴う結合部材190の断面図を示している。ここでは、3つのコア164のそれぞれは、全体としてあるいはコア164毎に浸透活性膜191によって閉塞される塩結晶186を組み込んだ浸透液体またはゲルまたはエラストマーポリマー165によって取り囲まれている(あるいは、エラストマーの場合には、膜を伴わないコアだけもよく、エラストマーでない場合には、この構造体が膜を用いてあるいは用いることなく本質的に安定していれば、ステッチ糸を伴わないコアであってもよい)。編み込まれたメッシュスリーブ162は、ねじることができあるいは互いに並んで平行に有利に配置されるこれらの閉塞されたコア164の周囲に設けられる。糸の所望の収縮前においては、膜191の拡張時に、コア膜191とメッシュスリーブ162の内側フィラメントとの間の空間195を最初に満たすことができる。したがって、
図12に戻って参照すると最初に張力の単調な増加をもたらすことができる開始時間が糸において与えられる。
【0072】
図17は、本発明の例示的実施形態に係る内側の共通コア膜201を有するマルチコア糸164を伴う結合部材200の概略断面図を示している。これは、その特徴に関して
図15の実施形態と
図16の実施形態との間に位置する実施形態である。ここでは、コア膜201が編み込まれたメッシュスリーブ162の内側に配置されているが、それぞれの個々のコア164を取り囲む代わりに、空間185がコア膜201内に位置するようにコア膜がコア164を全体的に取り囲んで、活性物質を解放する系を封入するために
図15に示されるように使用することもできる。このとき、メッシュスリーブ162がこれらを取り囲む。
【0073】
これらの例示的実施形態から分かるように、本発明は、これらの例示的実施形態のうちの1つに限定されるように意図されていない。それどころか、これらの特徴の全ての組み合わせも本発明の範囲に及ぶ。したがって、ステッチ糸164を有する個々の糸は、液体物質、ゲル状物質、または、高分子物質になり得る。しかしながら、糸は、ステッチ糸自体を有さず、基質だけを有することもできる。すなわち、比較的大きな直径の糸の場合には、コア内にいくつかの基質糸があるのが有益となり得る。その理由は、これらが糸を軟らかくするからであり、また、いくつかの小径な糸を用いた拡散動力学が大径の糸を用いたそれと比べて加速されるからである。
【0074】
ステッチ糸の数(ここでは、3本)は、ゼロ〜数ダースの間で変えることができる。メッシュスリーブ162は、ここでは、いずれの場合にも19本のモノフィラメント183を有するマルチフィラメント163からなっている。マルチフィラメント163の性質およびモノフィラメント183の数の両方を変えることができることは言うまでもない。マルチフィラメント163の数は、特に3本〜10本の間で選択することができ、モノフィラメント183の数は10本〜100本を越える数の間で選択することができる。内側膜が比較的に硬質である場合には、時として、メッシュスリーブを完全に覆わずに済むことができる。これは、その場合、膜がカバーの欠陥間で突出できないからである。拡散を可能にするが同時に圧力差を制限する膜スリーブを有し、それにより、膜の損傷を確実に回避できるようにすることは重要である。本目的は、突然の張力負荷を吸収して落下時における糸のコアの過度な圧縮を確実に回避するステッチ糸164によっても果たされる。したがって、当業者であれば分かるように、前述した例示的実施形態の全ての特徴は、互いに直接に組み合わせることができるとともに、入れ替えることができる。
【0075】
多くの試験が、適切に用意された糸を使用して行なわれ、また、想定し得る例示的実施形態の例として示されている。したがって、重量の上昇に関する試験により
図12の曲線が検証された。これが
図18に曲線303によって示され、上昇される力302が時間301に対してプロットされている。試験される糸は、塩に対するシリコ
ーン基質の重量比が1:1の
図13に係る糸(しかし、ステッチ糸164および膜161を伴わない)である。この場合、結晶166の粒径は70ミクロンよりも小さく、また、糸は、37℃の温度の蒸留水中に強固に固定されている。糸張力は連続的に測定される。張力(糸張力)は、1日もたたないうちに増大して12ニュートンを越え、それにより、スリーブによって制限される平衡状態まで移行する。糸は、例えばそのような糸によって腱が縫合される患者による降下に対応する2日後に、ゆっくりと緩むようになる。緩みは、単に伸張によって達成することができる。したがって、糸張力の増大が再び始まるが、この度合いは小さく、増大されるバネ張力は約8ニュートンに達するにすぎない。ここでは、新たな緩みを行なうために平衡状態がちょうど3日間維持された。この第3の領域では、5日以上経って、張力が4ニュートを越えて増大することができる。この場合、平らな曲線303は、糸の最大張力が形成されたことを示している。
【0076】
図19は、異なるシリコ
ーン/塩比率に関し、収縮する糸により最大収縮402が起こるまでの時間が造粒401に対してプロットされている2つの曲線403、404の概略図を示している。
図18はシリコ
ーン/塩比率が1:1であった。このことは、充填材165が1:1の重量比で結晶166を有することを意味している。2つの曲線403、404は、最大収縮までの継続時間を塩結晶の造粒401の関数として示し、この継続時間は、シリコ
ーン:塩の比率が2:1のときの方が、0.71:1の比率のとき、すなわち、コア内に塩の方が多く含まれている場合よりも短い。なお、これらは、一般的な規則ではなく、実験結果であり、その特性は更なるパラメータ、例えば塩結晶の局所的分布、凝集形成、ポリマーの構造に応じて大きく変えることができる。50ミクロン〜約150ミクロン未満の範囲の小さな造粒においては、差がほとんど生じないが、大きな造粒では、最大収縮までの継続時間が急激に増大する。
【0077】
図20の三次元曲線504は、造粒503(ミクロン)に関して、シリコ
ーン:塩の重量比502に対する最初の収縮501(パーセント/日)間の比率の概要を示している。塩に対する多量のシリコ
ーンおよび小さい造粒が急激な経時的収縮をもたらし、一方、大きな造粒および高い塩含有量の両方が1日当たりの小さな収縮をもたらす。したがって、当業者は、個々の成分を適切に選択することにより、糸の挙動をかなりの程度まで規定することができる。
【0078】
特に以下について留意すべきである。糸の形態を成す結合部材は、外科的な用途に関与する場合、50ミクロン程度の(およびそれよりも小さい)直径で形成することができる。更に厚い糸の場合には、一般にマルチフィラメント構造として表わされる捻れ構造またはドリル構造を形成することができる。これらの利点は、そのようにして形成される結合部材において個々の糸の摩擦が大きな強度を与えるという点であり、一方、同じ理由から、多数の捻れたあるいはドリル状の糸が剛性を減少させる。
【0079】
50ミクロン直径の糸においては、100ナノメートル〜1ミクロン未満の塩結晶の粉末を使用することが好都合である。
【0080】
これらの結晶のそれぞれから、浸透活性の小さな中心が形成される。特に、そのような塩コアの周囲に形成される小胞を含むこれらの中心は、膨潤コアの直径よりも約10のファクタだけ小さくなければならない。少数の中心は、僅かな大きな結晶を用いる場合よりも信頼できる浸透活性を与える。そのような糸のそれらの構造の教えに対応する収縮速度は、膨潤コアのために使用されるポリマー材料の特性によって有利に設定される。
【0081】
図21および
図22は、異なるシリコ
ーン/NaCl(塩)比率603/604および異なるTPE/NaCl(塩)比率605/606に関して、収縮する糸によって与えられる収縮602が時間601に対してパーセントでプロットされる2つの測定された曲線の図をそれぞれ示している。
【0082】
なお、塩結晶の平均粒径が70ミクロン未満でNaClに対するシリコ
ーンの質量比率が2:1であり且つ1ニュートンの一定の糸張力を伴うシリコ
ーン糸では、約1日後に、高い収縮レベルで、曲線603の平衡状態が得られる。これに対し、塩結晶の平均粒径が200ミクロン〜250ミクロン未満でのNaClに対するシリコ
ーンの質量比率が5:7で且つ1ニュートンの略一定の糸張力では、4倍小さい収縮が曲線604において見られ、これは、約4日後に得られる。コアは、0.7ミリメートルの直径を有した。
【0083】
TPE糸を用いた試験が他の時間水平軸で行なわれた。この場合、塩結晶の平均粒径が160ミクロン〜200ミクロン未満でNaClに対するTPEの質量比率が1:1であり且つ1ニュートンの一定の糸張力を伴う(すなわち、他の試験の場合と同様)TPE糸では、約20日〜25日後に、1パーセントの非常に小さい収縮レベルで、曲線605の平衡状態が得られる。これに対し、塩結晶の平均粒径が70ミクロン〜150ミクロン未満でのNaClに対するTPEの質量比率が2:1で且つ1ニュートンの同様に一定の糸張力では、8倍大きい収縮が曲線604において見ることができ、これは、20日以降であっても平衡状態に達しなかった。
【0084】
したがって、当業者であれば明らかなように、塩含有量および造粒が異なるTPEおよびシリコ
ーンの糸コアを使用すると、ファクタ200の速度差に対応する40%/1日〜1%/5日の間で適切な収縮を設定することができる。これらの値は、膜(ほぼ浸透性がある;伸びにおいてほぼ柔軟性がある)の適切な使用によって更に調整することができる。したがって、コアを有する糸を用いてここで与えられた結果は、他の例示的実施形態に置き換えることができる。
【0085】
様々な品質で使用できるシリコ
ーンに加え、これは、TPE充填材を有する糸、すなわち、熱可塑性糸に関して更に大きい程度まで適用される。これらの熱可塑性エラストマーは、処理中に塑性状態を通り過ぎるため、非常に容易に成形することができる。これらは、特に5ショアA〜90ショアDの硬度で形成することができる。これらの流動性およびこれらの密度および他の特性は、多種多様な充填材および添加剤と混合することによって調整することができる。例えばエチレン/プロピレンターポリマー/プロピレン、架橋ゴムまたは天然ゴム/ポリプロピレンなどのTPE−Vは良好なゴム状特性を有する。
【0086】
このように、第2の材料は、膨潤材料、特に、浸透活性の結果として患者の身体に非常に大きな負担をかけることなく体内で平衡状態を容易に確立するという利点を有する例えばNaClなどの吸湿性材料を備える。第2の材料の膨潤は、当業者が必要に応じて選択する半透性または選択的に浸透性の膜を介して、浸透作用により、すなわち、結合部材を取り囲む液体(体外では、例えば、ビーカー内の水または生理食塩水溶液;体内では、糸のインプラント部位を取り囲む体液による)を収容する空間からの水の拡散により達成される。
【0087】
図12〜
図22の例示的実施形態は、
図1〜
図11の開示に直接に関連している。したがって、第1の材料は、ステッチ糸、または、メッシュスリーブにおけるステッチ糸および/または軸方向糸および膜、または、膜における軸方向糸補強材と見なすことができる。長期間にわたってゆっくりと収縮する第2の材料は、膨潤に寄与する結晶が組み込まれる1つ以上のチャンバ165、185である。第2の材料を取り囲む第1の材料の剪断は、特に編み込まれたメッシュスリーブを設けることによって得られる。第1の期間よりも長い第2の期間にわたる第2の材料のゆっくりとした収縮は、第1の材料に伴う効果の組み合わせとして、編み込まれた糸との副産物としても理解される。重要なファクタは、単に、いずれの場合にも部材中の2つの対応する局所的な基準点において、距離がある期間にわたって短くなり、すなわち、これらの2つの点間で張力が増大するということである。これらの点がしっかりと固定されていない場合には、これらの点間の距離が短くなり、これは第2の材料の収縮に対応する。
【0088】
しかしながら、膨潤時に長さが短くなる個々の軸方向に画定されるチャンバを形成するため、縫合点において糸の通常の直径の長さの3〜10倍の短い軸方向距離で膜自体を互いに溶着することもできる。この程度まで、開示された人工装具材料における全ての使用は、
図12〜
図22の教示内容にしたがって形成される結合部材にも及ぶ。
【0089】
短期間の負荷中、筋痙攣または痙攣も、組織転位、ピーク負荷、および、僅かにゆっくりとした増大を作り出すことができる。