(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の車載器は、複数のサービスに対応することが求められている。例えば、車載器が路車間通信及び車車間通信の両方に対応することや、車載器が交通情報サービスと課金サービスの両方に対応していることが求められている。路車間通信及び車車間通信の両方に対応した車載器は、例えば、特許文献1(特開2008−99085号公報)に開示されている。特許文献1に開示された車載器は、ダイバーシティを行うために2つのアンテナを有しており、該2つのアンテナが、スイッチにより、路車間通信用送受信部と車車間通信用送受信部のいずれかに接続される構成を有している。なお、ダイバーシティとは、当業者に周知のように、独立性の大きい複数の通信経路を用いることにより、一方の通信経路の信号が劣化しても、他方の通信経路の信号を用いて通信品質を確保する技術である。
【0003】
車載器(又はそれを搭載する車両)に複数のサービスを提供するための通信規格として、WAVE(wireless access in vehicular environment)が提案されている。WAVEは、無線LAN規格であるIEEE802.11を移動体向けに改定したものであり、レイヤー1(物理層)、レイヤー2(データリンク層)においてIEEE802.11pを用いている。WAVEの一つの特徴は、各端末に送信機会が平等に与えられる自律分散制御(DCF)を行うことである。詳細には、WAVEにおいては、各通信フレームが、「チャネル」と呼ばれる複数のタイムスロットに区分されている。各通信フレームは、単一のコンロトールチャネルと、少なくとも一のサービスチャネルを含んでいる。コントロールチャネルでは同報通信が行われ、サービスチャネルでは、特定の送信先にデータを送信するための通信が行われる。送信を希望する送信元の通信端末は、コントロールチャネルにおいて送信先の通信端末及び送信が行われるサービスチャネルを指定する。送信先の通信端末は、指定されたサービスチャネルにおいて、送信元の通信端末からデータを受信する。
【0004】
複数のサービスを提供する場合の一つの問題は、複数のサービスにおいて求められる通信速度や信頼性が異なり得ることである。例えば、交通情報サービスでは、大容量データを通信することが求められる一方で、求められる信頼性は比較的低い。一方、課金サービスでは、通信可能な情報量は少ないことが許容されるが、信頼度が高い通信が求められる。
【0005】
複数のサービスにおいて要求される信頼性が異なる場合、異なる通信速度範囲で通信を行うことが考えられる。この場合、サービスの切り替えに当たり、通信速度範囲の切り替えを行うことが必要になる。しかしながら、不適切な切り替え手順を用いると、サービスが不完全に提供されてしまう事態が発生し得る。特に、上記のWAVE通信規格が用いられる場合においては、異なるサービスで異なる通信速度範囲を用いることは前提とされておらず、切り替え手順の問題は重大である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、要求される信頼性が異なる複数のサービスの間の切り替え手順を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2本のアンテナを備え、ダイバーシティに対応した車載器において、複数のサービスの間の円滑な切り替えを行うための技術を提供する。
【0009】
詳細には、本発明の一の観点では、車載器が、第1アンテナ及び第2アンテナと、第1サービスに対応する第1サービス通信部と、第2サービスに対応する第2サービス通信部と、第1アンテナ及び第2アンテナと、第1サービス通信部及び第2サービス通信部との間の接続関係を切り替えるスイッチと、スイッチを制御する制御部とを備えている。第1サービス通信部は、第1通信速度範囲内の通信速度で、第1サービスのための通信を、外部の第1通信装置と行うように構成されており、第2サービス通信部は、第2通信速度範囲内の通信速度で、第2サービスのための通信を、外部の第2通信装置と行うように構成されている。ここで、第1通信速度範囲は、第2通信速度範囲と異なっている。当該車載器は、第1乃至第3動作モードを有している。車載器が第1動作モードに設定されているとき、スイッチは、第1アンテナ及び第2アンテナの両方を第1サービス通信部に接続し、第1サービス通信部は、第1通信速度範囲内の通信速度で、第1通信装置と第1サービスのための通信を行う。車載器が第1動作モードに設定されているときに第1サービス通信部が第2サービスの通信のための無線信号を第2通信装置から受信したことを検知すると、車載器は、第2動作モードに移行する。車載器が第2動作モードに設定されているとき、スイッチは、第1アンテナ及び第2アンテナの一方を第1サービス通信部に接続し、他方を第2サービス通信部に接続し、第1サービス通信部は、第1通信速度範囲内の通信速度で、第1通信装置と第1サービスのための通信を行い、第2サービス通信部は、第2通信速度範囲内の通信速度で、第2通信装置と第2サービスのための通信を行う。車載器が第2動作モードに設定されているときに、制御部が第1サービスのための通信を切断するための切断処理を完了すると、車載器は、第3動作モードに移行する。車載器が第3動作モードに設定されているとき、スイッチは、第1アンテナ及び第2アンテナの両方を第2サービス通信部に接続し、第2サービス通信部は、第2通信速度範囲内の通信速度で、第2通信装置と第2サービスのための通信を行う。
【0010】
一実施形態では、第2通信速度範囲の上限値が、第1通信速度範囲の上限値よりも低い。この実施形態の一例では、第1サービスが、車載器に交通情報を提供する交通情報サービスであり、第2サービスが、車載器のユーザに課せられる料金の処理を電子的に行う課金サービスである。
【0011】
車載器が第1動作モードに設定されているとき、第1サービス通信部は、第1アンテナ及び第2アンテナを用いたダイバーシティを行いながら、第1通信装置と第1サービスのための通信を行うことが好ましい。同様に、車載器が第3動作モードに設定されているとき、第2サービス通信部は、第1アンテナ及び第2アンテナを用いたダイバーシティを行いながら、第2通信装置と第2サービスのための通信を行うことが好ましい。
【0012】
本発明の他の観点では、第1アンテナ及び第2アンテナと、第1サービスに対応する第1サービス通信部と、第2サービスに対応する第2サービス通信部と、第1アンテナ及び第2アンテナと、第1サービス通信部及び第2サービス通信部との間の接続関係を切り替えるスイッチとを備える車載器による通信方法が提供される。ここで、第1サービス通信部は、第1通信速度範囲内の通信速度で、第1サービスのための通信を、外部の第1通信装置と行うように構成され、第2サービス通信部は、第2通信速度範囲内の通信速度で、第2サービスのための通信を、外部の第2通信装置と行うように構成される。また、第1通信速度範囲は、第2通信速度範囲と異なっている。当該通信方法は、
車載器が第1動作モードに設定されているとき、スイッチにより第1アンテナ及び第2アンテナの両方を第1サービス通信部に接続した状態で、第1サービス通信部により、第1通信速度範囲内の通信速度で第1通信装置と第1サービスのための通信を行うステップと、
車載器が第1動作モードに設定されているときに第1サービス通信部が第2サービスの通信のための無線信号を第2通信装置から受信したことを検知すると、車載器を第2動作モードに移行させるステップと、
車載器が第2動作モードに設定されているとき、スイッチにより、第1アンテナ及び第2アンテナの一方を第1サービス通信部に接続し、他方を第2サービス通信部に接続した状態で、第1サービス通信部により第1通信速度範囲内の通信速度で第1通信装置と第1サービスのための通信を行うと共に、第2サービス通信部により第2通信速度範囲内の通信速度で第2通信装置と第2サービスのための通信を行うステップと、
車載器が第2動作モードに設定されているときに、制御部が、第1サービスのための通信を切断するための切断処理を行うステップと、
切断処理を完了した後、車載器を第3動作モードに移行させるステップと、
車載器が第3動作モードに設定されているとき、スイッチにより第1アンテナ及び第2アンテナの両方を第2サービス通信部に接続した状態で、第2サービス通信部により、第2通信速度範囲内の通信速度で、第2通信装置と第2サービスのための通信を行うステップ
とを具備する。
【0013】
本発明の更に他の観点では、プログラムが、上記の通信方法を車載器に搭載された演算装置に実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、求められる信頼性が異なる第1サービス及び第2サービスの切り替えを円滑に行うことが可能になると共に、第1サービス及び第2サービスのそれぞれが行われる場合の信頼性も向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の通信システム10の構成を示す概念図である。本実施形態では、通信システム10は、交通情報サービスセンター1と、課金サービスセンター2と、路側通信装置3、4と、車両5に搭載される車載器6とを備えている。
図1においては、各路側通信装置3の通信可能領域(即ち、各路側通信装置3が車載器6と通信可能な領域)が符号3aによって示されており、各路側通信装置4の通信可能領域(即ち、各路側通信装置4が車載器6と通信可能な領域)が符号4aによって示されている。交通情報サービスセンター1とは、交通情報サービスの提供にあたり必要なデータを収集し、また、提供する機能を有するホストコンピュータである。また、課金サービスセンター2とは、課金サービスの提供にあたり必要なデータを収集し、また、提供する機能を有するホストコンピュータである。
【0017】
本実施形態では、通信システム10が、路車間通信に基づく2つのサービス:交通情報サービスと課金サービスとを提供するように構成されている。ここで、交通情報サービスとは、交通に関する様々な情報を車載器6(及び車載器6に接続された機器)に提供するサービスである。一方、課金サービスとは、車載器6を搭載する車両5のユーザに課せられる料金(例えば、有料道路の通行料金や駐車料金等)の処理を電子的に行うためのサービスである。
【0018】
詳細には、
図2Aに図示されているように、交通情報サービスセンター1と路側通信装置3とは、通信ネットワーク7によって接続され、交通情報サービスを提供する交通情報サービスネットワーク20を構成している。交通情報サービスネットワーク20とは、交通情報サービスを車載器6(及びそれに接続された機器)に提供するためのネットワークである。交通情報サービスにおいては、交通情報サービスセンター1は、路側通信装置3を介して、交通に関する様々な情報を車載器6に提供する。交通情報サービスにおいて車載器6に提供される情報の例としては、渋滞情報、緊急車両接近情報、事故情報、天候情報、交通規制情報、広告情報及びニュース情報が挙げられる。
【0019】
一方、
図2Bに図示されているように、課金サービスセンター2と路側通信装置4とは、通信ネットワーク8によって接続され、課金サービスを提供する課金サービスネットワーク30を構成している。課金サービスネットワーク30とは、課金サービスを車載器6(及びそれに接続された機器)に提供するためのネットワークである。課金サービスにおいては、課金サービスセンター2と車載器6とは、車載器6を搭載する車両5のユーザに課されるべき料金の課金処理に必要な様々な情報を、路側通信装置4を介して交換する。課金サービスにおいて課金サービスセンター2と車載器6との間で交換される情報の例としては、車種情報(例えば、車両5が普通車、大型車、自動二輪のいずれであるかを示す情報)、課金カード情報(車載器6に挿入されたカードのカード種別、カード番号、)課金履歴情報(課金開始等の、課金の履歴)が挙げられる。
【0020】
図1から理解されるように、交通情報サービスセンター1と路側通信装置3とによって提供される交通情報サービスは、比較的広い地域で提供されるサービス(広域サービス)であるのに対し、課金サービスセンター2と路側通信装置4とによって提供される課金サービスは、限定された地域で提供されるサービス(局所的サービス)である。このため、車載器6は、通常は交通情報サービスの提供を受ける交通情報サービスモードに設定される。その一方で、車両5が、課金エリア、即ち、路側通信装置4の通信可能領域4aに進入すると、車載器6は、課金サービスの提供を受ける課金サービスモードに切り替えられる。
【0021】
ここで、本実施形態の通信システムの一つの特徴は、交通情報サービスモードから課金サービスモードに移行する際に、一旦、交通情報サービスと課金サービスとが並行して提供される、切替通信モードに切り替えられることである。交通情報サービスモード、課金サービスモード及び切替通信モードの間の切り替えの手順については、後に詳細に説明する。
【0022】
図3は、本実施形態における車載器6の構成を示すブロック図である。車載器6は、2つのアンテナ31、32と、スイッチ33と、交通情報サービス通信部34と、課金サービス通信部35と、演算装置36と、記憶装置37とを備えている。
【0023】
2つのアンテナ31、32は、それぞれが、路側通信装置3、4との間で無線信号を送受信する機能を有している。後述されるように、車載器6は、2つのアンテナ31、32を利用したダイバーシティを行うことができるように構成されている。
【0024】
スイッチ33は、アンテナ31、32と、交通情報サービス通信部34及び課金サービス通信部35の間の接続関係を切り替える機能を有している。ここで、スイッチ33は、少なくとも次の3つの状態をとることができるように構成されている:
(1)アンテナ31、32の両方が交通情報サービス通信部34に接続された状態
(2)アンテナ31、32の一方が交通情報サービス通信部34に接続され、他方が課金サービス通信部35に接続された状態
(3)アンテナ31、32の両方が課金サービス通信部35に接続された状態
スイッチ33は、これらの3つの状態の間の切り替えを行う。スイッチ33の動作の制御は、車載器6が設定された動作モードに応じて演算装置36から送られてくる制御信号38に応答して行われる。
【0025】
交通情報サービス通信部34は、交通情報サービスのための通信に用いられる路側通信装置3と通信可能なように構成されており、路側通信装置3との間で無線信号を送受信するための無線回路を備えている。交通情報サービス通信部34は、交通情報サービスに関連して演算装置36から送られてくるデータ(交通情報サービス送信データ)を変調して路側通信装置3に送信される無線信号を生成する。加えて、交通情報サービス通信部34は、路側通信装置3から受け取った無線信号を復調して交通情報サービス受信データを生成し、該交通情報サービス受信データを演算装置36に送る。
【0026】
一方、課金サービス通信部35は、課金サービスのための通信に用いられる路側通信装置4と通信可能なように構成されており、路側通信装置4との間で無線信号を送受信するための無線回路を備えている。課金サービス通信部35は、課金サービスに関連して演算装置36から送られてくる課金サービス送信データを変調して路側通信装置3に送信される無線信号を生成する。加えて、交通情報サービス通信部34は、路側通信装置3から受け取った無線信号を復調して課金サービス受信データを生成し、該課金サービス受信データを演算装置36に送る。
【0027】
演算装置36は、次の3つの機能を有している。第1に、演算装置36は、交通情報サービスに関連するデータを処理する交通情報サービスデータ処理機能41を有している。交通情報サービスデータ処理機能41では、交通情報サービス通信部34から受け取った交通情報サービス受信データを処理し、また、交通情報サービス送信データを生成して交通情報サービス通信部34に供給する。交通情報サービスデータ処理機能41における処理においては、必要な情報が交通情報サービスデータ44として記憶装置37に保存される。また、交通情報サービスデータ処理機能41における処理によって、車載器6に接続される表示装置9に表示される表示データが生成される。表示データには様々な交通情報(例えば、渋滞情報、緊急車両接近情報、事故情報、天候情報、交通規制情報、広告情報及びニュース情報)が含まれており、ユーザは、表示装置9を見て様々な交通情報を知ることができる。表示装置9は、例えば、カーナビゲーションシステム等の外部機器であってもよいし、車載器6に専用の表示装置であっても良い。
【0028】
第2に、演算装置36は、課金サービスに関連するデータを処理する課金サービスデータ処理機能42を有している。課金サービスデータ処理機能42では、課金サービス通信部35から受け取った課金サービス受信データを処理し、また、課金サービス送信データを生成して課金サービス通信部35に供給する。課金サービスデータ処理機能42における処理においては、必要な情報が課金サービスデータ45として記憶装置37に保存される。
【0029】
第3に、演算装置36は、車載器6の動作モードの切り替えを行う通信切り替え制御機能43を有している。上述のように、車載器6には、交通情報サービスモード、課金サービスモード、及び、切替通信モードの3つの動作モードがある。通信切り替え制御機能43では、これらの動作モードの間の選択を行い、更に、動作モードの選択に応じて、スイッチ33を制御する制御信号38を生成する。
【0030】
このような演算装置36の各機能は、記憶装置37に記憶されたソフトウェアプログラムを演算装置36が実行することで実現されてもよい。
【0031】
ここで、本実施形態においては、交通情報サービス通信部34と路側通信装置3の間で行われる交通情報サービスのための通信と、課金サービス通信部35と路側通信装置4の間で行われる課金サービスのための通信とで、要求される通信速度と信頼性とが異なっている。具体的には、交通情報サービスのための通信は、通信速度が速いことが求められるが、比較的に低い信頼性での通信が許容される。一方、課金サービスのための通信は、通信速度は遅いことが許容されるが、高い信頼性での通信が求められる。
【0032】
このため、交通情報サービス通信部34と路側通信装置3の間で行われる交通情報サービスのための通信と課金サービス通信部35と路側通信装置4の間で行われる課金サービスのための通信とでは、通信速度の許容範囲が異なっている。詳細には、交通情報サービス通信部34及び課金サービス通信部35のそれぞれは、それぞれが行う通信のBER(bit error rate)を監視し、BERに応じて通信速度を切り替えるように構成されている。このとき、課金サービスのための通信において用いられる通信速度範囲の上限値が、交通情報サービスのための通信において用いられる通信速度範囲の上限値よりも低く設定されている。これにより、課金サービスのための通信においては高信頼性での通信が行われ、交通情報サービスのための通信においては高速の通信速度での通信が行われる。
【0033】
以下では、このような構成の本実施形態の車載器6の動作について説明する。上述されているように、本実施形態の車載器6は、3つの動作モード:交通情報サービスモード、切替通信モード、及び、課金サービスモードを有している。そして、
図4Aに図示されているように、車載器6が交通情報サービスモードに設定されると、スイッチ33は、演算装置36から供給される制御信号38に応答して、アンテナ31、32の両方を交通情報サービス通信部34に接続する。交通情報サービス通信部34は、アンテナ31、32の両方を用いて交通情報サービスのための通信を行う。このとき、交通情報サービス通信部34は、2つのアンテナ31、32を利用したダイバーシティを行う。アンテナ31、32を利用したダイバーシティでは、送信ダイバーシティ及び受信ダイバーシティの少なくとも一方が行われる。また、ダイバーシティでは、空間ダイバーシティ、偏波ダイバーシティ、角度ダイバーシティのいずれが行われてもよい。ダイバーシティを行うことにより、交通情報サービスのための通信の信頼性を向上することができる。
【0034】
また、車載器6が切替通信モードに設定されると、
図4Bに図示されているように、スイッチ33は、アンテナ31、32の一方を交通情報サービス通信部34に接続し、他方を課金サービス通信部35に接続する。この場合、交通情報サービス通信部34は、該一方のアンテナを用いて交通情報サービスのための通信を行い、課金サービス通信部35は、該他方のアンテナを用いて課金サービスのための通信を行う。
【0035】
更に、
図4Cに図示されているように、車載器6が課金サービスモードに設定されると、スイッチ33は、アンテナ31、32の両方を課金サービス通信部35に接続する。課金サービス通信部35は、アンテナ31、32の両方を用いて課金サービスのための通信を行う。この場合、課金サービス通信部35は、2つのアンテナ31、32を利用したダイバーシティを行う。
【0036】
交通情報サービスモード、切替通信モード、及び、課金サービスモードの間の切り替えにおいて留意すべきことは、交通情報サービスのための通信と課金サービスのための通信とで通信速度の許容範囲が異なっていることである。これは、車載器6が交通情報サービスモードに設定されているときに車載器6を搭載した車両5が課金エリア(即ち、路側通信装置4の通信可能領域4a)に進入しても、交通情報サービス通信部34は、路側通信装置4から送られてきた課金サービスのための通信の無線信号を正常に受信できない(即ち、正常に復調ができない)という事態を生じさせる。ただし、路側通信装置4から無線信号が入力されたこと自体は検出可能である。
【0037】
そこで、本実施形態では、交通情報サービス通信部34は、路側通信装置4から無線信号が入力されたことを検出すると、その旨を演算装置36に通知する。演算装置36は、路側通信装置4から無線信号が入力されたことを交通情報サービス通信部34から通知されると、車載器6を切替通信モードに切り替える。これにより、車載器6は、交通情報サービス通信部34が交通情報サービスのための通信を継続しながら、課金サービス通信部35が課金サービスのための通信を行うことができる状態になる。
【0038】
加えて、車載器6が切替通信モードに切り替えられると、演算装置36の交通情報サービスデータ処理機能41では、交通情報サービスを正常に停止するための切断処理(例えば、車載器6が交通情報サービスに関するデータの受信を終了することを示すデータを、車載器6から交通情報サービスセンター1に送る処理)を行う。切断処理が完了した後、演算装置36は、車載器6を課金サービスモードに切り替える。これにより、以後、課金サービスのための通信のみが行われる。
【0039】
このような手順によれば、要求される信頼性が異なる2つのサービスの間の切り替えを円滑に行うことができる。特に、車載器6の動作モードが、交通情報サービスから切替通信モードを経て課金サービスモードに切り替えられることで、交通情報サービスモードの通信可能時間、及び、課金サービスモードの通信可能時間を長く確保することができる。交通情報サービスモードの通信可能時間を長く確保することで、交通情報サービスの切断処理を確実に行い、無駄なデータ再送を抑制することが可能になる。また、課金サービスモードの通信可能時間を長く確保することで、課金サービスの確実な提供が可能になる。
【0040】
加えて、交通情報サービスモード、及び、課金サービスモードにおいては2つのアンテナ31、32を用いたダイバーシティを行うことで、それぞれの動作モードにおける通信の信頼性を一層に向上させることができる。
【0041】
図5は、本実施形態の車載器6の動作、特に、車載器6が交通情報サービスモードから切替通信モードを経て課金サービスモードに移行する際の車載器6の動作の例を説明する図である。
図5は、路側通信装置3、4と、車両5に搭載される車載器6との間の通信が、いずれも、WAVE通信規格によって行われる場合の動作例を示している。上述のように、WAVEによる通信では、各通信フレームが、単一のコンロトールチャネルと、少なくとも一のサービスチャネルを含んでいる。コントロールチャネルでは同報通信が行われ、サービスチャネルでは、特定の送信先にデータを送信するための通信が行われる。
【0042】
ここで、
図5では、交通情報サービスネットワーク20の路側通信装置3が車載器6に送信する無線信号の各通信フレームのコントロールチャネルが「CTRL CH.(交通情報)」として図示され、サービスチャネルが「SVC CH.(交通情報)」として図示されている。また、課金サービスネットワーク30の路側通信装置4が車載器6に送信する無線信号の各通信フレームのコントロールチャネルが「CTRL CH.(課金)」として図示され、サービスチャネルが「SVC CH.(課金)」として図示されている。
図5では、交通情報サービスのための通信の通信フレームと課金サービスのための通信の通信フレームとが同期しているとして車載器6の動作が図示されている。即ち、後述されるように、車両5(及び車載器6)が課金エリアに入域した場合には、交通情報サービスのコントロールチャネルにおける通信と、課金サービスのコントロールチャネルにおける通信とが同時に行われる。しかしながら、交通情報サービスのための通信の通信フレームと課金サービスのための通信の通信フレームとは必ずしも同期している必要はない。
【0043】
同様に、車載器6が交通情報サービスネットワーク20の路側通信装置3に送信する無線信号の各通信フレームのコントロールチャネルが「CTRL CH.(交通情報)」として図示され、サービスチャネルが「SVC CH.(交通情報)」として図示されている。更に、車載器6が課金サービスネットワーク30の路側通信装置4に送信する無線信号の各通信フレームのコントロールチャネルが「CTRL CH.(課金)」として図示され、サービスチャネルが「SVC CH.(課金)」として図示されている。ここで、車載器6が路側通信装置3、4の両方に無線信号を送ることができる場合のコントロールチャネルについては、「CTRL CH.(交通情報)and/or(課金)」と図示され、サービスチャネルについては、「SVC CH.(交通情報)and/or(課金)」として図示されている。
【0044】
初期状態(通信フレーム#k−1及びそれより前の通信フレーム)では、車載器6が交通情報サービスモードに設定されているとする。この場合、車載器6の交通情報サービス通信部34は、アンテナ31、32に接続され、アンテナ31、32を用いて交通情報サービスネットワーク20の路側通信装置3と通信している。交通情報サービス通信部34と路側通信装置3との間の通信においては、コントロールチャネルにおいて同報通信が行われ、サービスチャネルにおいて相手を指定した通信が行われる。この場合、2つのアンテナ31、32を用いてダイバーシティが行われ、交通情報サービスの通信の信頼性が向上されている。
【0045】
車載器6を搭載した車両5が課金エリア(即ち、課金サービスネットワーク30の路側通信装置4の通信可能領域4a)に進入すると、車載器6には、交通情報サービスネットワーク20の路側通信装置3からの通信フレームに加え、路側通信装置4からの通信フレームも到達する。よって、路側通信装置4からの通信フレームが交通情報サービス通信部34に到達することになる。
【0046】
このとき、交通情報サービス通信部34が通信に用いる通信速度の範囲、即ち、交通情報サービスのための通信に許容される通信速度の範囲が、課金サービスのための通信に許容される通信速度の範囲とは異なるため、交通情報サービス通信部34は、路側通信装置4からの通信フレームを正しい通信フレームとしては認識できない。ただし、交通情報サービス通信部34は、路側通信装置4から通信フレームが到達したこと自体は検知できる。交通情報サービス通信部34は、課金サービスネットワーク30の路側通信装置4から通信フレームを受け取ったことを演算装置36に通知する。
【0047】
演算装置36は、路側通信装置4からの通信フレームを受け取ったことを交通情報サービス通信部34から通知されると、車載器6を切替通信モードに切り替える。
図5では、路側通信装置4から初めて到達した通信フレームの次の通信フレームにおいて、車載器6が切替通信モードに設定される。これにより、アンテナ31、32の一方が交通情報サービス通信部34に接続され、他方が課金サービス通信部35に接続される。これにより、車載器6は、交通情報サービス通信部34が交通情報サービスのための通信を継続しながら、課金サービス通信部35が課金サービスのための通信を行うことができる状態になる。
交通情報サービス通信部34と路側通信装置3との間の通信においては、コントロールチャネルにおいて同報通信が行われ、サービスチャネルにおいて相手を指定した通信が行われる。課金サービス通信部35と路側通信装置4との間の通信においても同様に、コントロールチャネルにおいて同報通信が行われ、サービスチャネルにおいて相手を指定した通信が行われる。
【0048】
加えて、車載器6が切替通信モードに切り替えられると、演算装置36の交通情報サービスデータ処理機能41は、交通情報サービスを正常に停止するための切断処理(例えば、車載器6が交通情報サービスに関するデータの受信を終了することを示すデータを、車載器6から交通情報サービスセンター1に送る処理)を行う。
【0049】
切断処理が完了した後、演算装置36は、車載器6を課金サービスモードに切り替える。これにより、アンテナ31、32の両方が車載器6の課金サービス通信部35に接続され、以後、課金サービス通信部35は、アンテナ31、32の両方を用いて課金サービスネットワーク30の路側通信装置4と通信する。上述のように、課金サービス通信部35と路側通信装置4との間の通信においては、コントロールチャネルにおいて同報通信が行われ、サービスチャネルにおいて相手を指定した通信が行われる。この場合、2つのアンテナ31、32を用いてダイバーシティが行われ、課金サービスの通信の信頼性が向上される。
【0050】
更に、課金サービスによる課金処理が完了すると、演算装置36は、車載器6を課金サービスモードから交通情報サービスモードに復帰させる。車載器6が交通情報サービスモードに復帰すると、アンテナ31、32の両方が車載器6の交通情報サービス通信部34に接続され、以後、交通情報サービス通信部34は、アンテナ31、32の両方を用いて交通情報サービスネットワーク20の路側通信装置3と通信する。
【0051】
以上に説明されているように、車載器6の動作モードが、交通情報サービスモードから切替通信モードを経て課金サービスモードに切り替えられることで、交通情報サービスモードの通信可能時間、及び、課金サービスモードの通信可能時間を長く確保することができる。また、交通情報サービスモード、及び、課金サービスモードにおいて2つのアンテナ31、32を用いたダイバーシティを行うことで、それぞれの動作モードにおける通信の信頼性を一層に向上させることができる。
【0052】
なお、上記では、交通情報サービスと課金サービスとの間の切り替えを行う実施形態について記載しているが、本発明は、要求される信頼性が異なる2つのサービスの間の切り替え一般に適用可能であることに留意されたい。
【0053】
以上には、本発明の実施形態が具体的に記述されているが、本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明が様々な変更と共に実施され得ることは、当業者には自明的であろう。