(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和機のデフロスト運転時において、室内熱交換器には、液冷媒が完全に蒸発せずに残っている場合がある。また、膨張弁を全開にして冷媒回路を均圧化する過程において、室外熱交換器に残っている液冷媒が、差圧により、膨張弁を経由して室内熱交換器に流入する。そのため、冷媒回路を均圧化した後において、室内熱交換器の内部に液冷媒が存在する場合がある。この場合、空気調和機が暖房運転を再開すると、室内熱交換器に供給される高圧のガス冷媒は、室内熱交換器の内部に存在する液冷媒と混合して気液混合冷媒となる。そして、気液混合冷媒が冷媒回路を流れる際に、液冷媒の流速とガス冷媒の流速との差に起因して、音が発生するおそれがある。この音は、室内熱交換器に伝播して、騒音の原因となる。従って、特許文献1に開示される空気調和機では、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に騒音が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができるヒートポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係るヒートポンプ装置は、冷媒回路と、制御部とを備える。冷媒回路は、圧縮機と、膨張機構と、熱源側熱交換器と、利用側熱交換器とを有する。冷媒回路では、冷媒が循環する。制御部は、冷媒回路を制御して、暖房運転またはデフロスト運転を行う。制御部は、第1圧縮機起動制御と、第2圧縮機起動制御と、圧縮機停止制御とを行う。第1圧縮機起動制御は、デフロスト運転の終了後の暖房運転を除く暖房運転の開始時に、圧縮機の回転数を第1回転数まで上げる制御である。第2圧縮機起動制御は、デフロスト運転の終了後の暖房運転の開始時に、圧縮機の回転数を上げる制御である。圧縮機停止制御は、デフロスト運転の終了後、第2圧縮機起動制御の開始前に、圧縮機の回転数をゼロにして、膨張機構の開度を上げて冷媒回路を均圧化する制御である。制御部は、最初に、第1圧縮機起動制御における加速レートである第1加速レートよりも小さい加速レートである第2加速レートで圧縮機の回転数を第2回転数まで
上げ、次に、第2加速レートよりも大きい加速レートで圧縮機の回転数を
第2回転数から第1回転数までさらに上げる
ことで、第2圧縮機起動制御を行う。加速レートは、単位時間当たりにおける圧縮機の回転数の増加量である。第2回転数は、第1回転数よりも小さい回転数である。
【0007】
このヒートポンプ装置は、暖房運転またはデフロスト運転を行う。暖房運転時において、冷媒回路の冷媒は、圧縮機、利用側熱交換器、膨張機構、熱源側熱交換器および圧縮機の順番に通過して循環する。デフロスト運転において、冷媒回路の冷媒は、圧縮機、熱源側熱交換器、膨張機構、利用側熱交換器および圧縮機の順番に通過して循環する。熱源側熱交換器は、室外熱交換器に相当し、利用側熱交換器は、室内熱交換器に相当する。熱源側熱交換器では、冷媒と熱源との熱交換が行われて、冷媒が加熱される。熱源は、例えば、外気である。熱源である外気の温度が低い条件下で暖房運転が行われる場合、熱源側熱交換器に霜が付着して運転効率が低下することがある。デフロスト運転時において、圧縮機から吐出される高温の冷媒は熱源側熱交換器に流入するため、熱源側熱交換器に付着した霜が融けて除去される。
【0008】
このヒートポンプ装置では、デフロスト運転を終了して暖房運転を開始する際における圧縮機の加速レートが、通常時において暖房運転を開始する際における圧縮機の加速レートよりも小さい。デフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、圧縮機の加速レートを通常時よりも抑えることで、圧縮機から吐出され利用側熱交換器に流入する冷媒の量が低減される。デフロスト運転の実行時において、利用側熱交換器には、蒸発せずに残っている液冷媒が存在する。また、デフロスト運転の終了後に冷媒回路を均圧化する過程において、熱源側熱交換器に残っている液冷媒は、差圧により、膨張機構を経由して利用側熱交換器に流入する。そのため、デフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、圧縮機から利用側熱交換器に供給されるガス冷媒は、利用側熱交換器に残っている液冷媒と混合して気液混合冷媒となる。ガス冷媒の流速は液冷媒の流速と異なるため、利用側熱交換器を通過した気液混合冷媒は、乱流を起こしやすい。デフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、圧縮機の加速レートが大きいと、冷媒の乱流による音が発生し、騒音の原因となるおそれがある。そのため、デフロスト運転から暖房運転に復帰する際における圧縮機の加速レートを抑えることで、利用側熱交換器に流入する冷媒の量が低減され、気液混合冷媒の乱流による音が低減される。従って、このヒートポンプ装置は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【0009】
また、このヒートポンプ装置では、デフロスト運転の終了後、圧縮機の運転を停止させて膨張機構の開度を上げることで、冷媒回路を均圧化させる。これにより、デフロスト運転から暖房運転に復帰する際において、高圧側の熱源側熱交換器から、低圧側の利用側熱交換器に向かって、冷媒が急激に流れ込むことが防止される。従って、このヒートポンプ装置は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【0010】
本発明の第2観点に係るヒートポンプ装置は、第1観点に係るヒートポンプ装置であって、冷媒は、R32である。
【0011】
このヒートポンプ装置は、冷媒回路を循環する冷媒として、R32を使用する。R32は、R410A等の冷媒と比べて、ガス冷媒の流速と液冷媒の流速との差が大きい冷媒である。そのため、R32が循環する冷媒回路を備えるヒートポンプ装置では、デフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、気液混合冷媒の乱流が起こりやすい。このヒートポンプ装置は、デフロスト運転から暖房運転に復帰する際における圧縮機の加速レートを抑える。これにより、利用側熱交換器に流入する冷媒の量が低減され、気液混合冷媒の乱流による音が低減される。従って、このヒートポンプ装置は、R32を冷媒として使用する場合に、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
第1観点に係るヒートポンプ装置は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【0013】
第2観点に係るヒートポンプ装置は、R32を冷媒として使用する場合に、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るヒートポンプ装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るヒートポンプ装置は、例えば、空気調和装置および給湯装置として利用される。
【0016】
(1)ヒートポンプ装置の構成
本実施形態に係るヒートポンプ装置10は、暖房運転およびデフロスト運転を行うことができる。ヒートポンプ装置10は、冷媒が循環する冷媒回路20と、冷媒回路20を制御する制御部30とを備えている。
図1は、ヒートポンプ装置10の暖房運転時における回路構成図である。
図2は、ヒートポンプ装置10のデフロスト運転時における回路構成図である。
図1および
図2において、矢印は、冷媒回路20を循環する冷媒の流れを表す。冷媒回路20を循環する冷媒は、R32である。
【0017】
(1−1)冷媒回路
ヒートポンプ装置10の冷媒回路20は、主として、圧縮機21と、膨張弁22と、室外熱交換器23と、室内熱交換器24と、四方切替弁25と、分流器26とが配管によって接続された回路である。ヒートポンプ装置10の暖房運転は、室内熱交換器24が設置されている室内の空気を加熱する運転である。ヒートポンプ装置10のデフロスト運転は、室外熱交換器23に付着した霜を除去する運転である。
【0018】
圧縮機21は、冷媒回路20を流れる低圧の冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出する圧縮機である。圧縮機21は、例えば、ロータリ圧縮機である。
【0019】
膨張弁22は、冷媒回路20を循環する冷媒の流量および圧力を調節する膨張機構である。膨張弁22は、例えば、電子膨張弁である。
【0020】
室外熱交換器23は、冷媒−空気熱交換器である。室外熱交換器23では、冷媒回路20を循環する冷媒と、外気との間の熱交換が行われる。室外熱交換器23は、例えば、プレートフィンコイル型の熱交換器である。室外熱交換器23の近傍には、室外ファン23aが設置されている。室外ファン23aは、室外熱交換器23に外気を送風し、室外熱交換器23において冷媒と熱交換された外気を排出する。
【0021】
室内熱交換器24は、冷媒−空気熱交換器である。室内熱交換器24では、冷媒回路20を循環する冷媒と、室内熱交換器24が設置されている室内の空気との間の熱交換が行われる。室内熱交換器24は、例えば、フィンコイル型の熱交換器である。室内熱交換器24の近傍には、室内ファン24aが設置されている。室内ファン24aは、室内熱交換器24に室内の空気を送風して、室内熱交換器24において冷媒と熱交換された空気を排出する。
【0022】
四方切替弁25は、冷媒回路20における冷媒の循環方向を逆にして、暖房運転とデフロスト運転とを切り替えるための切替弁である。四方切替弁25は、第1ポート25aと、第2ポート25bと、第3ポート25cと、第4ポート25dとを有する。四方切替弁25は、第1連通状態または第2連通状態にある。第1連通状態では、
図1に示されるように、第1ポート25aと第2ポート25bとが連通し、かつ、第3ポート25cと第4ポート25dとが連通している。第2連通状態では、
図2に示されるように、第1ポート25aと第3ポート25cとが連通し、かつ、第2ポート25bと第4ポート25dとが連通している。ヒートポンプ装置10が暖房運転を行うとき、四方切替弁25は、第1連通状態にある。ヒートポンプ装置10がデフロスト運転を行うとき、四方切替弁25は、第2連通状態にある。
【0023】
分流器26は、冷媒回路20を循環する冷媒の流れを分流または合流させるための部材である。冷媒回路20において、分流器26は、室内熱交換器24と膨張弁22との間に設けられている。分流器26は、室内熱交換器24の近傍に設けられている。分流器26は、
図1に示されるように、暖房運転時において、室内熱交換器24の下流側に設けられ、かつ、
図2に示されるように、デフロスト運転時において、室内熱交換器24の上流側に設けられている。
図3は、分流器26の断面図である。
図3に示される矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを表している。分流器26は、冷媒が通過する分流器流路26aを内部に有している。分流器26は、暖房運転時における冷媒の流れの上流側の端面である先端面26bと、冷媒の流れの下流側の端面である後端面26cとを有している。分流器流路26aの断面積は、先端面26b側から後端面26c側に向かうに従って減少している。先端面26bには、複数の先端面開口26b1が形成されている。後端面26cには、1つの後端面開口26c1が形成されている。分流器26は、先端面開口26b1を介して室内熱交換器24側に接続され、かつ、後端面開口26c1を介して膨張弁22側に接続されている。
図3に示されるように、暖房運転時において、室内熱交換器24を通過した複数の冷媒の流れは、分流器26において合流する。デフロスト運転時において、膨張弁22を通過した冷媒の流れは、分流器26において分流する。
【0024】
冷媒回路20の回路構成について説明する。圧縮機21の吐出側は、四方切替弁25の第1ポート25aに接続されている。四方切替弁25の第2ポート25bは、室内熱交換器24に接続されている。室内熱交換器24は、分流器26の先端面開口26b1に接続されている。分流器26の後端面開口26c1は、膨張弁22に接続されている。膨張弁22は、室外熱交換器23に接続されている。室外熱交換器23は、四方切替弁25の第3ポート25cに接続されている。四方切替弁25の第4ポート25dは、圧縮機21の吸入側に接続されている。
【0025】
(1−2)制御部
制御部30は、ヒートポンプ装置10の各構成要素を制御するためのコンピュータである。制御部30は、圧縮機21、膨張弁22および四方切替弁25に接続されている。制御部30は、例えば、ヒートポンプ装置10の電装品ユニット(図示せず)に設置されている。制御部30は、例えば、圧縮機21の回転数、圧縮機21の加速レート、および、膨張弁22の開度を制御する。圧縮機21の加速レートは、圧縮機21の起動時における、単位時間当たりにおける圧縮機21の回転数の増加量である。
【0026】
また、制御部30は、四方切替弁25を制御して、第1連通状態と第2連通状態とを切り替えることができる。これにより、制御部30は、ヒートポンプ装置10の運転中において、暖房運転とデフロスト運転とを切り替えることができる。
【0027】
(2)ヒートポンプ装置の動作
最初に、ヒートポンプ装置10の暖房運転時における、冷媒回路20を循環する冷媒の流れについて説明する。冷媒は、低圧のガス冷媒として圧縮機21に吸入されて圧縮される。圧縮された冷媒は、高温高圧のガス冷媒として圧縮機21から吐出され、四方切替弁25の第1ポート25aおよび第2ポート25bを通過して、室内熱交換器24に送られる。室内熱交換器24において、ガス冷媒は、室内熱交換器24が設置されている室内の空気と熱交換されて凝縮し、高圧の液冷媒となる。室内の空気は、冷媒との熱交換によって加熱される。室内熱交換器24を通過した高圧の液冷媒は、分流器26を通過して、膨張弁22に送られる。高圧の液冷媒は、膨張弁22を通過することで減圧され、低圧の気液二相状態の冷媒となる。低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23において外気と熱交換されて蒸発し、低圧のガス冷媒となる。そして、低圧のガス冷媒は、四方切替弁25の第3ポート25cおよび第4ポート25dを通過して、圧縮機21に送られる。ヒートポンプ装置10の暖房運転時において、冷媒回路20は、以上の工程を繰り返すことで、外気の熱を、冷媒を介して、室内の空気に供給する。
【0028】
次に、ヒートポンプ装置10のデフロスト運転時における、冷媒回路20を循環する冷媒の流れについて説明する。デフロスト運転時における冷媒の循環方向は、暖房運転時における冷媒の循環方向と反対である。デフロスト運転時において、冷媒は、圧縮機21、四方切替弁25(第1ポート25aおよび第3ポート25c)、室外熱交換器23、膨張弁22、分流器26、室内熱交換器24、四方切替弁25(第2ポート25bおよび第4ポート25d)および圧縮機21を、順番に通過して循環する。デフロスト運転時には、圧縮機21から吐出される高温の冷媒が、室外熱交換器23に供給される。これにより、室外熱交換器23に付着している霜が融けて、室外熱交換器23がデフロストされる。
【0029】
次に、ヒートポンプ装置10の動作について説明する。ヒートポンプ装置10は、暖房運転またはデフロスト運転を行う。ヒートポンプ装置10の暖房運転時において、冷媒回路20の四方切替弁25は、
図1に示されるように、第1連通状態にある。ヒートポンプ装置10のデフロスト運転時において、冷媒回路20の四方切替弁25は、
図2に示されるように、第2連通状態にある。
【0030】
ヒートポンプ装置10の暖房運転時において、冷媒回路20の室外熱交換器23では、冷媒回路20を循環する冷媒へ、外気から熱が移動する熱交換が行われる。すなわち、ファン23aによって送風される外気は、室外熱交換器23において、熱交換により熱が奪われる。そのため、寒冷地および冬季等、外気の温度が低い条件下において、室外熱交換器23に霜が付着することがある。室外熱交換器23に霜が付着すると、室外熱交換器23に霜が付着していない状態と比べて、室外熱交換器23における熱交換の効率が低下して、ヒートポンプ装置10の運転効率が低下してしまう。そのため、ヒートポンプ装置10は、外気の温度が低い条件下において、運転効率の低下を抑制するために、室外熱交換器23に付着した霜を除去するデフロスト運転を定期的に行う必要がある。ヒートポンプ装置10のデフロスト運転は、室外熱交換器23に付着した霜を熱で融かすことによって行われる。
【0031】
次に、ヒートポンプ装置10の暖房運転を終了してデフロスト運転を開始する際の動作について説明する。最初に、制御部30は、圧縮機21の回転数をゼロにして、圧縮機21を停止させる。圧縮機21の停止により、暖房運転が終了する。次に、制御部30は、四方切替弁25を第1連通状態から第2連通状態へ切り替える。次に、制御部30は、圧縮機21の回転数をゼロから上げて、圧縮機21の運転を開始する。圧縮機21の起動により、ヒートポンプ装置10のデフロスト運転が開始する。デフロスト運転時には、圧縮機21から吐出される高温の冷媒が、室外熱交換器23に流入する。また、デフロスト運転時には、暖房運転時に室内熱交換器24に蓄積された熱が、冷媒回路20を流れる冷媒を介して、室外熱交換器23に供給される。これにより、室外熱交換器23に付着している霜が融けて、室外熱交換器23がデフロストされる。以下、通常の暖房運転の開始時における圧縮機21の加速レートを、第1加速レートと呼ぶ。通常の暖房運転とは、デフロスト運転の終了直後の暖房運転を除く暖房運転である。なお、圧縮機21のデフロスト運転の開始時における圧縮機21の加速レートは、第1加速レートと同じでもよい。第1加速レートは、例えば、2.0Hz/秒である。
【0032】
次に、ヒートポンプ装置10のデフロスト運転を終了して暖房運転を再開する際の動作について説明する。最初に、制御部30は、圧縮機21の回転数をゼロにして、圧縮機21を停止させる。圧縮機21の停止により、デフロスト運転が終了する。次に、制御部30は、膨張弁22の開度を上げる。なお、制御部30は、膨張弁22を全開にしてもよい。膨張弁22の開度の上昇により、高圧の冷媒を有する室外熱交換器23から、低圧の冷媒を有する室内熱交換器24に向かって、膨張弁22および分流器26を経由して、冷媒が流れ込む。これにより、室外熱交換器23の冷媒の圧力と、室内熱交換器24の冷媒の圧力との差が小さくなり、冷媒回路20が均圧化される。次に、制御部30は、四方切替弁25を第2連通状態から第1連通状態へ切り替える。次に、制御部30は、圧縮機21の回転数をゼロから上げて、圧縮機21の運転を開始する。圧縮機21の起動により、ヒートポンプ装置10の暖房運転が再開する。以下、デフロスト運転を終了して暖房運転を再開する時における圧縮機21の加速レートを、第2加速レートと呼ぶ。制御部30は、第1加速レートよりも低い第2加速レートで圧縮機21の運転を開始して、暖房運転を再開する。第2加速レートは、例えば、0.5Hz/秒である。なお、圧縮機21の回転数がゼロになりデフロスト運転が終了した時点から、圧縮機21の回転数がゼロから上がり暖房運転が再開する時点までの期間、すなわち、圧縮機21の停止時間は、例えば、30秒である。
【0033】
図4は、ヒートポンプ装置10のデフロスト運転を終了して暖房運転を再開する際における圧縮機21の回転数の時間変化を表すグラフである。
図4では、参考として、通常の暖房運転の開始時における圧縮機21の回転数の時間変化が、点線で示されている。
図4において、符号L1で示される線分は、第1加速レートでの圧縮機21の回転数の時間変化を表し、符号L2で示される線分は、第2加速レートでの圧縮機21の回転数の時間変化を表す。
図4において、「圧縮機停止」は、デフロスト運転の終了時点から暖房運転の再開時点までの期間、すなわち、圧縮機21の回転数がゼロになっている期間を表す。なお、ヒートポンプ装置10は、
図4に示されるように、暖房運転を開始する際において、圧縮機21の加速レートを段階的に上げてもよい。これにより、圧縮機21の起動時における、圧縮機21にかかる負荷が低減される。
【0034】
(3)特徴
ヒートポンプ装置10は、暖房運転時において、冷媒回路20を循環する冷媒を介して、室外熱交換器23から室内熱交換器24に熱を送って、室内の空気を加熱する。ヒートポンプ装置10は、デフロスト運転時において、室外熱交換器23を加熱して、室外熱交換器23をデフロストする。デフロスト運転時において、膨張弁22を通過した気液二相状態の冷媒は、分流器26を通過して、室内熱交換器24に流入する。
【0035】
デフロスト運転時において、室内熱交換器24では、液冷媒が蒸発する。しかし、デフロスト運転の終了時に、室内熱交換器24の内部において、液冷媒が完全に蒸発せずに残っている場合がある。また、デフロスト運転の終了後に、膨張弁22の開度を上げて冷媒回路20を均圧化する過程において、室外熱交換器23に残っている液冷媒が、差圧により膨張弁22を経由して、室内熱交換器24に流入する。そのため、ヒートポンプ装置10がデフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、圧縮機21から室内熱交換器24に供給されるガス冷媒は、室内熱交換器24の内部に存在する液冷媒と混合して気液混合冷媒となる。気液混合冷媒は、室内熱交換器24を通過した後、分流器26に流入する。
【0036】
一般的に、ガス冷媒の流速は液冷媒の流速と異なるため、室内熱交換器24を通過した気液混合冷媒の流れは、分流器26の分流器流路26aにおいて、乱流となりやすい。そして、分流器流路26aにおいて冷媒の乱流が起こると、分流器26から音が発生する。この音は、例えば、ストローで、液体と気体とを同時に吸い上げるときに発生する音と同じ現象である。冷媒の乱流によって分流器26から発生した音は、室内熱交換器24に伝播して、騒音の原因となるおそれがある。
【0037】
また、ヒートポンプ装置10の暖房運転時において、分流器26に流入した冷媒は、
図3に示されるように、先端面26b側から後端面26c側に向かって流れる。分流器流路26aの断面積は、先端面26b側から後端面26c側に向かうに従って減少している。すなわち、分流器26は、暖房運転時における冷媒の流れ方向に沿って、冷媒の流路抵抗が徐々に増加する「絞り」を有している。そのため、暖房運転時において、分流器26を通過する冷媒は、加速される。そして、冷媒の加速により、分流器流路26aにおける冷媒の乱流が促進されるおそれがある。
【0038】
従って、ヒートポンプ装置10がデフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、室内熱交換器24に液冷媒が残っている場合、分流器26を通過する冷媒が乱流を起こし、これにより、室内熱交換器24から騒音が発生する可能性がある。ヒートポンプ装置10がデフロスト運転から暖房運転に復帰する際における圧縮機21の加速レート、すなわち、第2加速レートが大きいほど、分流器26を通過する冷媒の乱流が大きくなり、室内熱交換器24から発生する騒音が大きくなると考えられる。
【0039】
本実施形態に係るヒートポンプ装置10は、デフロスト運転から暖房運転への復帰時において、通常の暖房運転の開始時における圧縮機21の加速レート、すなわち、第1加速レートよりも、第2加速レートを低くすることで、圧縮機21から室内熱交換器24に流入する冷媒の量を低減する。これにより、分流器26を通過する冷媒の乱流に起因する音が低減される。従って、ヒートポンプ装置10は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【0040】
また、ヒートポンプ装置10は、冷媒回路20を循環する冷媒として、R32を使用する。R32は、R410A等の冷媒と比べて、ガス冷媒の流速と液冷媒の流速との差が大きい冷媒である。そのため、R32が循環する冷媒回路20を備えるヒートポンプ装置10では、デフロスト運転から暖房運転に復帰する際に、分流器26を通過する冷媒の乱流が起こりやすい。しかし、ヒートポンプ装置10は、第2加速レートを第1加速レートよりも低くすることで、圧縮機21から室内熱交換器24に流入する冷媒の量を低減し、分流器26を通過する冷媒の乱流に起因する音を低減する。従って、ヒートポンプ装置10は、R32を冷媒として使用する場合に、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を効果的に低減することができる。
【0041】
また、ヒートポンプ装置10は、デフロスト運転を終了した後、暖房運転を再開する前において、圧縮機21の回転数をゼロに維持する制御を行う。ヒートポンプ装置10の制御部30は、デフロスト運転の終了後、圧縮機21の回転数をゼロにして圧縮機21を停止させ、さらに、膨張弁22の開度を上げることで、冷媒回路20を均圧化させる。これにより、制御部30が、四方切替弁25を第2連通状態から第1連通状態へ切り替える際において、高圧の冷媒を有する室外熱交換器23から、低圧の冷媒を有する室内熱交換器24に向かって冷媒が急激に流れ込むことが防止される。室外熱交換器23から室内熱交換器24に向かって大量の冷媒が短時間に流入すると、冷媒回路20から騒音が発生するおそれがある。従って、ヒートポンプ装置10は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に発生する騒音を低減することができる。
【0042】
(4)変形例
本発明の実施形態の具体的構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で変更可能である。以下、本発明の実施形態に適用可能な変形例について説明する。
【0043】
(4−1)変形例A
本実施形態に係るヒートポンプ装置10は、デフロスト運転から暖房運転への復帰時において、第2加速レートを第1加速レートよりも低くすることで、圧縮機21から室内熱交換器24に流入する冷媒の量を低減し、分流器26を通過する冷媒の乱流に起因する音を低減する。ヒートポンプ装置10の制御部30は、例えば、
図4に示されるように、暖房運転の再開時において、圧縮機21の回転数を、通常の暖房運転における最大回転数まで、第2加速レートで段階的に上げる。
【0044】
しかし、制御部30は、
図5に示されるように、暖房運転の再開時において、最初に、第2加速レートで圧縮機21の回転数を所定の回転数まで上げ、次に、第2加速レートより高い加速レートで、圧縮機21の回転数を、通常の暖房運転における最大回転数まで上げてもよい。例えば、制御部30は、暖房運転の再開時において、最初に、第2加速レートで圧縮機21の回転数を上げ、次に、第1加速レートで圧縮機21の回転数をさらに上げてもよい。デフロスト運転から暖房運転への復帰時において、圧縮機21の回転数が徐々に増加すると、室内熱交換器24に高温高圧のガス冷媒が供給される。これに伴い、室内熱交換器24に残っている液冷媒の量が減少するので、分流器26を通過する冷媒の乱流に起因する騒音が低減される。そのため、最初に、第2加速レートで圧縮機21の回転数を上げ、圧縮機21の回転数が所定の値に達した後において、第2加速レートより高い加速レートで圧縮機21の回転数を上げることで、圧縮機21の回転数が、通常の暖房運転における最大回転数に達するまでに必要な時間を短縮することができる。従って、このヒートポンプ装置10は、デフロスト運転の終了後、暖房運転への復帰時に必要な時間を短縮することができる。
【0045】
(4−2)変形例B
本実施形態に係るヒートポンプ装置10では、デフロスト運転を終了した後、暖房運転を再開する前において、制御部30は、圧縮機21の回転数をゼロにして、圧縮機21を停止させる。しかし、デフロスト運転を終了した後、暖房運転を再開する前において、制御部30は、圧縮機21の回転数をゼロより僅かに高い値に維持して、圧縮機21を完全に停止させなくてもよい。例えば、制御部30は、圧縮機21を非常に低速で運転させた状態で、冷媒回路20の均圧化、および、四方切替弁25の切り替え等を行ってもよい。