特許第6113527号(P6113527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113527DC/DCコンバータおよびその制御回路、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113527
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータおよびその制御回路、それを用いた電源装置、電源アダプタおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-40936(P2013-40936)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-171290(P2014-171290A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好則
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−004550(JP,A)
【文献】 特開2005−261128(JP,A)
【文献】 特開2009−100591(JP,A)
【文献】 特開平11−313483(JP,A)
【文献】 特開2005−295787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータの制御回路であって、
前記DC/DCコンバータは、
1次巻線および2次巻線を有するトランスと、
トランスの1次巻線の電流経路上に設けられたスイッチングトランジスタと、
を有しており、
前記制御回路は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック電圧を受け、少なくとも前記フィードバック電圧にもとづいて、前記DC/DCコンバータの出力電圧が目標値に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号にもとづいて前記スイッチングトランジスタを駆動するドライバと、
前記スイッチングトランジスタをスイッチングすべきスイッチング期間においてアサートされ、前記スイッチングトランジスタのスイッチングを停止すべき停止期間においてネゲートされるバースト制御信号を生成するバースト制御回路と、
を備え、
前記バースト制御回路は、
前記フィードバック電圧を所定のしきい値電圧と比較し、前記フィードバック電圧が前記しきい値電圧より高くなるとアサートされ、前記フィードバック電圧が前記しきい値電圧より低くなるとネゲートされる比較信号を生成するバーストコンパレータと、
前記比較信号のアサートを契機として時間測定を開始し、開始から所定の時間の経過までの間ネゲートされ、経過後にアサートされるマスク信号を生成する最大周波数設定回路と、
(i)前記比較信号がネゲートされると前記バースト制御信号をネゲートし、(ii)前記マスク信号がアサートされ、かつ前記比較信号がアサートされると前記バースト制御信号をアサートするロジック部と、
を備え、
前記パルス変調器は、
前記スイッチングトランジスタに流れる電流に応じた検出電圧が前記フィードバック電圧に達するとアサートされるリセット信号を生成するリセット信号生成部と、
セット信号を生成するセット信号生成部と、
前記バースト制御信号がアサートされる間、前記セット信号および前記リセット信号を通過し、前記バースト制御信号がネゲートされる間前記セット信号および前記リセット信号が無効化するマスク回路と、
前記マスク回路を通過した前記セット信号および前記リセット信号に応じて前記パルス信号を生成するフリップフロップと、
を含むことを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記最大周波数設定回路は、
時間測定開始から前記所定の時間の経過後にアサートされるタイマー信号を生成するタイマー回路と、
前記タイマー信号がアサートされると、前記マスク信号をアサートし、前記バースト制御信号がアサートされると前記タイマー回路に時間測定を開始させるタイマー制御部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記所定の時間は、設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記タイマー回路は、
一端の電位が固定されたタイマー用キャパシタと、
前記タイマー用キャパシタを充電する電流源と、
前記タイマー用キャパシタの電圧を所定のしきい値電圧と比較し、前記タイマー用キャパシタの電圧が前記しきい値電圧より高くなると、前記タイマー信号をアサートするタイマー用コンパレータと、
前記タイマー用キャパシタと並列に設けられた放電スイッチと、
を含み、
前記タイマー制御部は、前記タイマー信号がアサートされると、前記マスク信号をアサートし、前記バースト制御信号がアサートされると前記放電スイッチをオフするとともに前記マスク信号をネゲートすることを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記タイマー用キャパシタは、前記制御回路が集積化される半導体チップに外付けされることを特徴とする請求項4に記載の制御回路。
【請求項6】
前記タイマー回路は、クロック信号をカウントし、カウント値が所定値に達すると前記タイマー信号をアサートするカウンタを含むことを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項7】
前記ロジック部は、
前記比較信号と前記マスク信号の論理積を生成するANDゲートと、
前記ANDゲートの出力に応じてセットされ、前記比較信号の反転信号に応じてリセットされ、前記バースト制御信号を出力するRSフリップフロップと、
を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
前記DC/DCコンバータは、
前記スイッチングトランジスタの経路上に設けられた検出抵抗をさらに有し、前記検出抵抗の電圧降下が、前記検出電圧であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の制御回路。
【請求項9】
前記セット信号生成部は、所定の周期で前記セット信号をアサートすることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項10】
前記セット信号生成部は、前記リセット信号がアサートされてから所定のオフ時間経過後に前記セット信号をアサートすることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項11】
前記セット信号生成部は、前記トランスに蓄えられたエネルギーが実質的にゼロになると、前記セット信号をアサートすることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項12】
前記トランスは、1次側に設けられた補助巻線をさらに有し、
前記制御回路は、前記補助巻線の一端の電圧が入力される補助端子をさらに備え、
前記セット信号生成部は、(i)前記補助端子の電圧を所定のしきい値電圧と比較し、前記補助端子の電圧が前記しきい値電圧とクロスするたびにアサートされるボトム検出信号を生成し、(ii)前記ボトム検出信号のアサートされる回数が、カウント設定値に達するたびに前記セット信号をアサートすることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項13】
前記トランスは、1次側に設けられた補助巻線をさらに有し、
前記制御回路は、前記補助巻線の一端の電圧が入力される補助端子をさらに備え、
前記セット信号生成部は、(i)前記補助端子の電圧を所定のしきい値電圧と比較し、前記補助端子の電圧が前記しきい値電圧とクロスするたびにアサートされるボトム検出信号を生成し、(ii)前記ボトム検出信号がアサートされてから、所定時間経過後に前記セット信号をアサートすることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項14】
ひとつの半導体基板上に一体集積化されることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の制御回路。
【請求項15】
1次巻線、2次巻線および補助巻線を有するトランスと、
前記トランスの1次巻線と接続されるスイッチングトランジスタと、
アノードが前記2次巻線と接続される第1ダイオードと、
一端が接地され、他端が前記第1ダイオードのカソードと接続された第1出力キャパシタと、
アノードが前記補助巻線と接続される第2ダイオードと、
一端が接地され、他端が前記第2ダイオードのカソードと接続された第2出力キャパシタと、
前記第1出力キャパシタに生ずる出力電圧に応じたフィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、
前記フィードバック電圧を受け、前記スイッチングトランジスタをスイッチングする請求項1から14のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項16】
前記フィードバック回路は、
前記出力電圧を分圧した電圧と所定の目標値の誤差がゼロとなるようにレベルが調節されるフィードバック信号を生成するシャントレギュレータと、
その1次側の発光素子が前記フィードバック信号によって制御されるフォトカプラと、
を含み、前記フォトカプラの2次側の受光素子に生ずる信号が、前記フィードバック電圧として前記制御回路に供給されることを特徴とする請求項15に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項17】
商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、
前記ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、
前記直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する請求項15または16に記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項18】
負荷と、
商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、
前記ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、
前記直流入力電圧を降圧し、前記負荷に供給する請求項15または16に記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項19】
商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、
前記ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、
前記直流入力電圧を降圧し、直流出力電圧を生成する請求項15または16に記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電源アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビや冷蔵庫をはじめとするさまざまな家電製品は、外部からの商用交流電力を受けて動作する。ラップトップ型コンピュータ、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistants)をはじめとする電子機器も、商用交流電力によって動作可能であり、あるいは商用交流電力によって、機器に内蔵の電池を充電可能となっている。こうした家電製品や電子機器(以下、電子機器と総称する)には、商用交流電圧をAC/DC(交流/直流)変換する電源装置(インバータ、AC/DCコンバータともいう)が内蔵され、あるいはインバータは、電子機器の外部の電源アダプタ(ACアダプタ)に内蔵される。
【0003】
図1は、インバータの基本構成を示すブロック図である。インバータ100rは主としてヒューズ102、入力キャパシタCi、フィルタ104、ダイオード整流回路106、平滑キャパシタCsおよびDC/DCコンバータ110rを備える。
【0004】
商用交流電圧VACは、ヒューズ102および入力キャパシタCiを介してフィルタ104に入力される。フィルタ104は、商用交流電圧VACのノイズを除去する。ダイオード整流回路106は、商用交流電圧VACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。ダイオード整流回路106の出力電圧は、平滑キャパシタCsによって平滑化され、直流電圧VINに変換される。
【0005】
絶縁型のDC/DCコンバータ(フライバックコンバータ)110rは、入力端子P1に直流電圧VINを受け、それを降圧して、目標値に安定化された出力電圧VOUTを出力端子P2に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0006】
DC/DCコンバータ110rは、制御回路2r、スイッチングトランジスタM1、出力回路200、フィードバック回路210を備える。出力回路200は、トランスT1、第1ダイオードD1、第1出力キャパシタCo1、検出抵抗R、第1ダイオードD1、第2出力キャパシタCo2を含む。出力回路200のトポロジーは一般的なものであるため、説明を省略する。
【0007】
スイッチングトランジスタM1がスイッチングすることにより、入力電圧VINが降圧され、出力電圧VOUTが生成される。そして制御回路2rは、スイッチングトランジスタM1のスイッチングのデューティ比を調節することにより、出力電圧VOUTを目標値に安定化させるとともに、トランスT1の1次巻線W1に流れるコイル電流Ipを制御する。
【0008】
検出抵抗Rは、トランスT1の1次巻線W1およびスイッチングトランジスタM1と直列に設けられる。検出抵抗Rには、1次巻線W1およびスイッチングトランジスタM1に流れる電流Ipに比例した電圧降下(検出電圧)VCSが発生する。制御回路2rは、検出電圧VCSにもとづいて、1次巻線W1に流れる電流Ipを制御する。
【0009】
フィードバック回路210は、出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBを生成し、制御回路2rのフィードバック端子(FB端子)に供給する。フィードバック回路210は、シャントレギュレータ212およびフォトカプラ214を含む。シャントレギュレータ212は、出力電圧VOUTと所定の目標値の誤差がゼロとなるようにレベルが調節されるフィードバック信号S11を生成し、フォトカプラ214の発光ダイオードに供給する。フォトカプラ214のフォトトランジスタ(あるいはフォトトランジスタ)は、発光ダイオードからの光信号S12を、フィードバック信号S11に応じたフィードバック電圧VFBに変換する。
【0010】
トランスT1の1次側には、1次巻線W1に加えて補助巻線W3が設けられる。補助巻線W3、第2ダイオードD2、第2出力キャパシタCo2は、第2のDC/DCコンバータを形成する。スイッチングトランジスタM1のスイッチングに応じて、第2出力キャパシタCo2には、直流電圧VCCが発生する。直流電圧VCCは、制御回路2rの電源端子VCC(VCC端子)に供給される。
【0011】
制御回路2rは、パルス変調器を含む。制御回路2rは、スイッチングトランジスタM1のオンに対応するオンレベルと、スイッチングトランジスタM1のオフに対応するオフレベルを、繰り返すパルス信号(スイッチング出力)SOUTを生成する。そして制御回路2rは、スイッチング出力SOUTをスイッチングトランジスタM1のゲートに供給する。スイッチング出力SOUTのデューティ比が調節されることにより、出力電圧VOUTが目標値に安定化される。
【0012】
図1の制御回路2rは、電流モードの変調器(不図示)を含む。図2は、本発明者が検討した制御回路2rの構成を示す回路図である。制御回路2rは、パルス変調器10、ドライバ20、ブランキング回路40、バースト制御回路50、分圧回路80を備える。分圧回路80は、フィードバック電圧VFBを所定の分圧比(たとえば1/4倍)で分圧する。この分圧比は、重負荷状態において、負荷に十分な電力を供給できるように定められる。
【0013】
ブランキング回路40は、検出電圧VCSのノイズを除去するために設けられる。具体的には、スイッチングトランジスタM1がオンした直後、所定のブランク期間の間、検出信号VCSをマスクする。ブランキング回路40は省略してもよい。
【0014】
パルス変調器10は、ブランキング回路40を経た検出電圧VCS’と分圧回路80により分圧されたフィードバック電圧VFB’にもとづき、パルス信号SPWMを生成する。パルス変調器10は、オシレータ12、コンパレータ14、RSフリップフロップ16を含む。オシレータ12は所定の周期でアサート(たとえばハイレベル)されるセット信号SSETを生成し、RSフリップフロップ16のセット端子(S)に入力する。コンパレータ14は、スイッチングトランジスタM1のオン期間において、検出電圧VCS’が、フィードバック電圧VFB’と所定の上限電圧VLIM1のうち低い方に達すると、リセット信号SRESETをアサート(ハイレベル)し、フリップフロップ16のリセット端子(R)に出力する。RSフリップフロップ16の出力であるパルス信号SPWMは、セット信号SSETがアサートされるたびに、スイッチングトランジスタM1のオンレベル(ハイレベル)に、リセット信号SRESETがアサートされるたびに、オフレベルに遷移する。
【0015】
ドライバ20は、パルス信号SPWMにもとづいてスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0016】
DC/DCコンバータ110rの出力端子P2に負荷としてマイコンなどが接続される場合、マイコンが待機状態(スリープ状態)に遷移すると、DC/DCコンバータ110rの出力電流は非常に小さくなる(軽負荷状態)。
【0017】
軽負荷状態において、DC/DCコンバータ110は、消費電力を低減して効率を高めるために、スイッチングトランジスタM1を間欠動作(バースト動作)させる。具体的には、スイッチングトランジスタM1がスイッチング動作するスイッチング期間と、スイッチングトランジスタM1がオフ状態を維持する停止期間を交互に繰り返す。
【0018】
DC/DCコンバータ110rは、軽負荷時において、バーストモード(間欠モード)で動作する。バースト制御回路50は、DC/DCコンバータ110の軽負荷状態を検出し、バースト動作を制御するために設けられる。
【0019】
図3は、バーストモードの動作を説明する図である。時刻t0に軽負荷状態となる。軽負荷状態では、出力電圧VOUTが上昇し、フィードバック電圧VFBが低下する。バースト制御回路50は、フィードバック電圧VFBを所定のバーストしきい値VBURSTと比較するコンパレータを含む。
【0020】
時刻t1にフィードバック電圧VFBがバーストしきい値VBURSTより低くなると、バースト制御回路50は、バースト制御信号SBURSTをネゲート(たとえばローレベル)する。バースト制御信号SBURSTがネゲートされる間、パルス変調器10は、パルス信号SPWMをオフレベルに固定し、スイッチングトランジスタM1のスイッチングを停止する。
【0021】
スイッチングの停止により、出力キャパシタCo1への充電が停止すると、負荷電流による放電により出力電圧VOUTが徐々に低下する。出力電圧VOUTの低下にともない、フィードバック電圧VFBが時間とともに上昇する。フィードバック電圧VFBは、出力電圧VOUTに対して遅延して変動し、その遅延量は、フィードバックループの時定数に応じている。
【0022】
時刻t2に、フィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTを超えると、バースト制御回路50は、バースト制御信号SBURSTをアサート(たとえばハイレベル)する。バースト制御信号SBURSTがアサートされると、スイッチングトランジスタM1のスイッチングが再開する。スイッチングにともない、出力電圧VOUTが増大すると、フィードバック電圧VFBが低下し始める。時刻t3にフィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより低くなると、スイッチングが停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2003−164145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明者は、DC/DCコンバータ110rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0025】
このDC/DCコンバータ110rでは、バースト動作時のバースト周波数(およびその逆数のバースト周期)は、出力キャパシタCo1の容量値、インダクタL1のインダクタンスなどに応じて定まり、さらには、負荷電流の大きさ、入力電圧VINに応じて変動する。
【0026】
バースト周波数が高くなると、スイッチングの頻度が高くなるため、軽負荷状態におけるDC/DCコンバータ110rのスイッチング損失が増大し、効率が悪化する。また、バースト周波数が高くなり、可聴帯域に入ると、トランスT1において音鳴りが発生する可能性がある。
【0027】
従来のDC/DCコンバータ110rでは、バースト周波数の変動幅を小さくするために、出力キャパシタCo1の容量値を大きくするなどの対策をとる必要があった。しかしながら大容量コンデンサは、コストが高いという問題がある。
【0028】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、バースト周波数の範囲を制御可能なDC/DCコンバータおよびその制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明のある態様は、DC/DCコンバータの制御回路に関する。DC/DCコンバータは、1次巻線および2次巻線を有するトランスと、トランスの1次巻線の電流経路上に設けられたスイッチングトランジスタと、を有する。制御回路は、DC/DCコンバータの出力電圧に応じたフィードバック電圧を受け、少なくともフィードバック電圧にもとづいて、DC/DCコンバータの出力電圧が目標値に近づくようにパルス変調されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづいてスイッチングトランジスタを駆動するドライバと、スイッチングトランジスタをスイッチングすべきスイッチング期間においてアサートされ、スイッチングトランジスタのスイッチングを停止すべき停止期間においてネゲートされるバースト制御信号を生成するバースト制御回路と、を備える。バースト制御回路は、フィードバック電圧を所定のしきい値電圧と比較し、フィードバック電圧がしきい値電圧より高くなるとアサートされ、フィードバック電圧がしきい値電圧より低くなるとネゲートされる比較信号を生成するバーストコンパレータと、比較信号のアサートを契機として時間測定を開始し、開始から所定の時間の経過までの間ネゲートされ、経過後にアサートされるマスク信号を生成する最大周波数設定回路と、(i)比較信号がネゲートされるとバースト制御信号をネゲートし、(ii)マスク信号がアサートされ、かつ比較信号がアサートされるとバースト制御信号をアサートするロジック部と、を備える。
【0030】
この態様によると、マスク信号がネゲートされる間、比較信号のアサートがアサートされると、そのアサートが無効化される。そしてその後、マスク信号がアサートされると、バースト制御信号がアサートされる。その結果、バースト周期が、所定の時間より短くならないように制限されるため、バースト周波数の範囲を制御することができる。
【0031】
最大周波数設定回路は、時間測定開始から所定の時間の経過後にアサートされるタイマー信号を生成するタイマー回路と、タイマー信号がアサートされると、マスク信号をアサートし、バースト制御信号がアサートされるとタイマー回路に時間測定を開始させるタイマー制御部と、を含んでもよい。
【0032】
所定の時間は、設定可能であってもよい。これにより、バースト周波数の上限値を任意に設定することができる。
【0033】
タイマー回路は、一端の電位が固定されたタイマー用キャパシタと、タイマー用キャパシタを充電する電流源と、タイマー用キャパシタの電圧を所定のしきい値電圧と比較し、タイマー用キャパシタの電圧がしきい値電圧より高くなると、タイマー信号をアサートするタイマー用コンパレータと、タイマー用キャパシタと並列に設けられた放電スイッチと、を含んでもよい。タイマー制御部は、タイマー信号がアサートされると、マスク信号をアサートし、バースト制御信号がアサートされると放電スイッチをオフするとともにマスク信号をネゲートしてもよい。
【0034】
タイマー用キャパシタは、制御回路が集積化される半導体チップに外付けされてもよい。これにより、タイマー用キャパシタの容量値に応じて、バースト周波数の上限値を設定できる。
【0035】
タイマー回路は、クロック信号をカウントし、カウント値が所定値に達するとタイマー信号をアサートするカウンタを含んでもよい。
【0036】
ロジック部は、比較信号とマスク信号の論理積を生成するANDゲートと、ANDゲートの出力に応じてセットされ、比較信号の反転信号に応じてリセットされ、バースト制御信号を出力するRSフリップフロップと、を含んでもよい。
【0037】
DC/DCコンバータは、スイッチングトランジスタの経路上に設けられた検出抵抗をさらに有してもよい。パルス変調器は、検出抵抗の電圧降下に応じた検出電圧がフィードバック電圧に達するとアサートされるリセット信号を生成するリセット信号生成部と、セット信号を生成するセット信号生成部と、セット信号がアサートされると、スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、リセット信号がアサートされるとスイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するパルス信号を生成するフリップフロップと、を含んでもよい。
【0038】
セット信号生成部は、所定の周期でセット信号をアサートしてもよい。
【0039】
セット信号生成部は、リセット信号がアサートされてから所定のオフ時間経過後にセット信号をアサートしてもよい。
【0040】
セット信号生成部は、トランスに蓄えられたエネルギーが実質的にゼロになると、セット信号をアサートしてもよい。
【0041】
トランスは、1次側に設けられた補助巻線をさらに有してもよい。制御回路は、補助巻線の一端の電圧が入力される補助端子をさらに備えてもよい。セット信号生成部は、(i)補助端子の電圧を所定のしきい値電圧と比較し、補助端子の電圧がしきい値電圧とクロスするたびにアサートされるボトム検出信号を生成し、(ii)ボトム検出信号のアサートされる回数が、カウント設定値に達するたびにセット信号をアサートしてもよい。
【0042】
トランスは、1次側に設けられた補助巻線をさらに有してもよい。制御回路は、補助巻線の一端の電圧が入力される補助端子をさらに備えてもよい。セット信号生成部は、(i)補助端子の電圧を所定のしきい値電圧と比較し、補助端子の電圧がしきい値電圧とクロスするたびにアサートされるボトム検出信号を生成し、(ii)ボトム検出信号がアサートされてから、所定時間経過後にセット信号をアサートしてもよい。
【0043】
制御回路は、ひとつの半導体基板上に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。制御回路を1つのIC(Integrated Circuit)として集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0044】
本発明の別の態様は、DC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは、1次巻線、2次巻線および補助巻線を有するトランスと、トランスの1次巻線と接続されるスイッチングトランジスタと、アノードが2次巻線と接続される第1ダイオードと、一端が接地され、他端が第1ダイオードのカソードと接続された第1出力キャパシタと、アノードが補助巻線と接続される第2ダイオードと、一端が接地され、他端が第2ダイオードのカソードと接続された第2出力キャパシタと、第1出力キャパシタに生ずる出力電圧に応じたフィードバック電圧を生成するフィードバック回路と、フィードバック電圧を受け、スイッチングトランジスタをスイッチングする上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。
【0045】
フィードバック回路は、出力電圧を分圧した電圧と所定の目標値の誤差がゼロとなるようにレベルが調節されるフィードバック信号を生成するシャントレギュレータと、その1次側の発光素子がフィードバック信号によって制御されるフォトカプラと、を含み、フォトカプラの2次側の受光素子に生ずる信号が、フィードバック電圧として制御回路に供給されてもよい。
【0046】
本発明の別の態様は電源装置に関する。電源装置は、商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する上述のDC/DCコンバータと、を備えてもよい。
【0047】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、負荷と、商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、直流入力電圧を降圧し、負荷に供給する上述のDC/DCコンバータと、を備えてもよい。
【0048】
本発明の別の態様は電源アダプタに関する。電源アダプタは、商用交流電圧をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力電圧を全波整流するダイオード整流回路と、ダイオード整流回路の出力電圧を平滑化し、直流入力電圧を生成する平滑キャパシタと、直流入力電圧を降圧し、直流出力電圧を生成する上述のDC/DCコンバータと、を備えてもよい。
【0049】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0050】
本発明のある態様によれば、DC/DCコンバータのバースト周波数の範囲を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】インバータの基本構成を示すブロック図である。
図2】本発明者が検討した制御回路の構成を示す回路図である。
図3】バーストモードの動作を説明する図である。
図4】実施の形態に係る制御回路の構成を示す回路図である。
図5図5(a)は、図4の制御回路の軽負荷状態におけるタイムチャートであり、図5(b)は図2の比較技術に係る制御回路の動作を示すタイムチャートである。
図6】インバータを備えるACアダプタを示す図である。
図7図7(a)、(b)は、インバータを備える電子機器を示す図である。
図8】第2の変形例に係る制御回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0053】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0054】
図4は、実施の形態に係る制御回路2の構成を示す回路図である。制御回路2は図1に示すDC/DCコンバータ110に利用される。
【0055】
図1に示すように、DC/DCコンバータ110は、制御回路2、スイッチングトランジスタM1、検出抵抗R、出力回路200、フィードバック回路210を備える。制御回路2の構成を除いて、図1と同様であるため、説明は省略する。
【0056】
以下、制御回路2の構成を説明する。
制御回路2は、ひとつの半導体基板上に一体集積化された機能ICであり、図1に示す補助端子(ZT端子)、FB端子、CS端子、GND端子、OUT端子、VCC端子、VH端子に加えて、周波数設定端子(FBST端子)を有する。図4には、FB端子、OUT端子、CS端子、FBST端子のみが示され、残りの端子は省略される。
【0057】
制御回路2は、少なくともFB端子のフィードバック電圧VFBにもとづいて、DC/DCコンバータ110のスイッチングトランジスタM1のスイッチングのデューティ比を調節することにより、直流出力電圧VOUTを目標レベルに安定化する。なお、スイッチングトランジスタM1は制御回路2に集積化されてもよい。
【0058】
制御回路2は、パルス変調器10、ドライバ20、ブランキング回路40、バースト制御回路50、を備える。
【0059】
ブランキング回路40は、検出電圧VCSのノイズを除去するために設けられる。具体的には、スイッチングトランジスタM1がオンした直後、所定のブランク期間の間、検出信号VCSをマスクする。ブランキング回路40は省略してもよい。
【0060】
パルス変調器10は、フィードバック電圧VFBと検出電圧VCSにもとづいて、DC/DCコンバータ110の出力電圧VOUTが目標値に近づくようにパルス変調されるパルス信号SPWMを生成する。この実施の形態において、パルス変調器10は、いわゆるピーク電流モードの変調器である。
【0061】
パルス変調器10の構成は特に限定されず、公知の技術を利用すればよい。たとえばパルス変調器10は、セット信号生成部12、リセット信号生成部14、RSフリップフロップ16、マスク回路18を含む。
【0062】
リセット信号生成部14は、検出電圧VCSが、フィードバック電圧VFBに達するとアサートされるリセット信号SRESETを生成する。たとえばリセット信号生成部14は、検出電圧VCSを、フィードバック電圧VFBと上限電圧VLIM1のうち低い方と比較し、検出電圧VCSの方が高くなると、リセット信号SRESETをアサート(ハイレベル)する。
【0063】
セット信号生成部12は、セット信号SSETを生成する。たとえばセット信号生成部12は、所定の周期ごとにセット信号SSETをアサート(ハイレベル)するオシレータを含んでもよい。
【0064】
あるいは、セット信号生成部12は、リセット信号SRESETがアサートされてから所定のオフ時間TOFF経過後にセット信号SSETをアサートしてもよい。
【0065】
あるいはセット信号生成部12は、トランスT1に蓄えられたエネルギーが実質的にゼロになると、セット信号SSETをアサートしてもよい(疑似共振制御という)。
【0066】
疑似共振制御において、ある実施例では、セット信号生成部12は、コンパレータとカウンタで構成してもよい。ZT端子には、補助巻線W3の一端の電圧が分圧して入力される。コンパレータは、ZT端子に入力される補助巻線W3の一端の電圧を、所定のしきい値電圧と比較し、補助端子の電圧がしきい値電圧とクロスするたびにコンパレータによってボトム検出信号をアサートする。カウンタは、ボトム検出信号がアサートされた回数がある設定値に達すると、セット信号SSETをアサートしてもよい。
【0067】
疑似共振制御において、別の実施例では、セット信号生成部12は、コンパレータとタイマー回路で構成してもよい。コンパレータは、(i)補助端子の電圧を所定のしきい値電圧と比較し、補助端子の電圧がしきい値電圧とクロスするたびにアサートされるボトム検出信号を生成する。タイマー回路は、(ii)ボトム検出信号がアサートされてから、所定時間経過後にセット信号SSETをアサートする。
【0068】
セット信号生成部12により生成されたセット信号SSETは、RSフリップフロップ16のセット端子(S)に入力される。RSフリップフロップ16の出力であるパルス信号SPWMは、セット信号SSETがアサートされると、スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベル(ハイレベル)に遷移し、リセット信号SRESETがアサートされるとスイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベル(ローレベル)に遷移する。
【0069】
マスク回路18は、RSフリップフロップ16の前段に設けられ、後述のバースト制御回路50からのバースト制御信号SBURSTがアサート(ハイレベル)される間、セット信号SSETおよびリセット信号SRESETを通過させる。反対に、バースト制御信号SBURSTがネゲートされる間、マスク回路18は、セット信号SSET、リセット信号SRESETを無効化し、RSフリップフロップ16の出力SPWMを固定する。これにより、バースト制御信号SBURSTがネゲートされる間、スイッチングトランジスタM1のスイッチングが停止する。マスク回路18の構成は特に限定されない。
【0070】
ドライバ20は、パルス信号SPWMにもとづいて、OUT端子に接続されるスイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0071】
バースト制御回路50は、軽負荷状態を検出するために設けられる。バースト制御回路50は、スイッチングトランジスタM1をスイッチングすべきスイッチング期間においてバースト制御信号SBURSTをアサートし、スイッチングトランジスタM1のスイッチングを停止すべき停止期間においてバースト制御信号SBURSTをネゲートする。
【0072】
バースト制御回路50は、バーストコンパレータ52、最大周波数設定回路54、ロジック部56を備える。
バーストコンパレータ52は、フィードバック電圧VFBを所定のしきい値電圧VBURSTと比較し、フィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより高くなると、比較信号S1をアサートし、フィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより低くなると比較信号S1をネゲートする。バーストコンパレータ52は、しきい値電圧VBURSTが2値で遷移するヒステリシスコンパレータであってもよい。
【0073】
最大周波数設定回路54は、比較信号S1のアサートを契機として時間測定を開始する。最大周波数設定回路54は、測定開始から所定の時間τFMAXの経過までの間、マスク信号S2をネゲート(たとえばローレベル)し、時間τFMAXの経過後にマスク信号S2をアサートする。
【0074】
時間τFMAXは、制御回路2のICの外部から設定可能とすることが好ましい。最大周波数設定回路54は、外付けのタイマー用キャパシタ60、電流源62、タイマー用コンパレータ64、放電スイッチ66、タイマー制御部68を含む。
【0075】
タイマー用キャパシタ60の一端は接地され、その電位が固定され、その他端は制御回路2のFBST端子に接続される。電流源62は、タイマー用キャパシタ60を電流Icで充電する。タイマー用コンパレータ64は、タイマー用キャパシタ60の電圧VFBSTを所定のしきい値電圧VTIMEと比較し、タイマー用キャパシタ60の電圧VFBSTがしきい値電圧VTIMEより高くなると、タイマー信号S3をアサートする。
【0076】
放電スイッチ66は、タイマー用キャパシタ60と並列に設けられる。タイマー制御部68は、バースト制御信号SBURSTがアサートされると放電スイッチ66をオフする。これにより、バースト制御信号SBURSTのアサートを契機として、タイマー用キャパシタ60の充電、すなわち時間測定が開始される。
【0077】
またタイマー制御部68は、タイマー信号S3がアサートされると放電スイッチ66をオンする。これにより、時間測定が終了すると、タイマー用キャパシタ60を放電し、経過時間をゼロリセットできる。
【0078】
たとえばタイマー制御部68は、Dフリップフロップ70、インバータ71、72を含む。インバータ71は、タイマー信号S3を反転し、Dフリップフロップ70のリセット端子(反転論理)に反転タイマー信号S3#を入力する。Dフリップフロップ70の入力端子(D)には、ハイレベル電圧Vが入力され、そのクロック端子にはバースト制御信号SBURSTが入力される。つまりDフリップフロップ70の出力S4は、タイマー信号S3がアサートされるたびにローレベルに、バースト制御信号SBURSTがアサートされるたびにハイレベルに遷移する。
【0079】
インバータ72は、Dフリップフロップ70の出力S4を反転し、マスク信号S2を生成する。マスク信号S2は、タイマー信号S3がアサートされるたびにハイレベルに、バースト制御信号SBURSTがアサートされるたびにローレベルに遷移する。放電スイッチ66のゲートには、マスク信号S2が入力される。なお、タイマー制御部68の構成は特に限定されない。
【0080】
最大周波数設定回路54が測定する時間τFMAXは、タイマー用キャパシタ60の容量値をCFBSTとするとき、以下の式で与えられる。
τFMAX=CFBST×VTIME/Ic
【0081】
したがってタイマー用キャパシタ60を制御回路2が集積化される半導体チップに外付けすることにより、その容量値に応じて、時間τFMAXを設定できる。
【0082】
ロジック部56は、(i)比較信号S1がネゲートされるとバースト制御信号SBURSTをネゲートする。またロジック部56は、(ii)マスク信号S2がアサートされ、かつ比較信号S1がアサートされると、バースト制御信号SBURSTをアサートする。
【0083】
ロジック部56は、たとえばANDゲート74、インバータ75、ワンショット回路76、RSフリップフロップ77を含む。
ANDゲート74は、比較信号S1とマスク信号S2の論理積に応じたセット信号S5を生成し、RSフリップフロップ77のセット端子に入力する。インバータ75は、比較信号S1を反転する。ワンショット回路76は、回路動作の安定化のために設けられ、インバータ75の出力のパルス幅を引き延ばし、RSフリップフロップ77のリセット端子に出力する。RSフリップフロップ77の出力は、バースト制御信号SBURSTとなる。
【0084】
以上が制御回路2の構成である。続いてその動作を説明する。図5(a)は、図4の制御回路2の軽負荷状態におけるタイムチャートである。
【0085】
図5(a)には、2サイクルTcyc1、Tcyc2の動作が示される。
【0086】
1サイクル目Tcyc1について説明する。1サイクル目は、バースト動作の周期が長い(バースト周波数が低い)ときの動作である。
【0087】
時刻t0〜t1の間、DC/DCコンバータ110は停止期間であり、バースト制御信号SBURSTはネゲートされ、マスク信号S2はアサートされている。
【0088】
時刻t1にフィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTを超え、比較信号S1がアサートされ、セット信号S5がハイレベルに遷移すると、RSフリップフロップ77の出力であるバースト制御信号SBURSTがアサートされる。これによりスイッチング期間となり、出力電圧VOUTが上昇し始める。時刻t1からある遅延時間が経過すると、フィードバック電圧VFBが低下を始める。
【0089】
時刻t1にバースト制御信号SBURSTがアサートされると、マスク信号S2がネゲートされる。そして最大周波数設定回路54は時間測定を開始し、所定の時間τFMAXが経過した時刻t2に、マスク信号S2をアサートする。
【0090】
時刻t3に、フィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより低くなると、比較信号S1がネゲートされる。これを契機としてRSフリップフロップ77がリセットされ、バースト制御信号SBURSTがネゲートされ、停止期間となる。
【0091】
時刻t4にフィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより高くなると、再びスイッチング期間となる。
【0092】
続いて2サイクル目Tcyc2について説明する。2サイクル目は、バースト動作の周期が短い(バースト周波数が高い)ときの動作である。
【0093】
時刻t4に、最大周波数設定回路54による時間測定が開始され、時間τFMAX経過後の時刻t7に、マスク信号S2がアサートされる。
【0094】
時刻t5にフィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより低くなると、比較信号S1がネゲートされ、RSフリップフロップ77がリセットされ、バースト制御信号SBURSTがネゲートされる。これにより停止期間となり、スイッチングトランジスタM1のスイッチングが停止する。
【0095】
時刻t6に、フィードバック電圧VFBがしきい値電圧VBURSTより高くなると、比較信号S1がアサートされる。ところがこのとき、マスク信号S2はネゲートされたままであるため、比較信号S1のアサートが無効化され、RSフリップフロップ77はセットされず、バースト制御信号SBURSTはネゲート状態を維持する。
【0096】
時刻t7に、マスク信号S2がアサートされると、ANDゲート74の出力であるセット信号S5がアサートされ、バースト制御信号SBURSTがアサートされる。以上の制御により、第2サイクルTcyc2のバースト周期は、τFMAXとなる。
【0097】
以上が制御回路2の動作である。
制御回路2の利点は、図2の比較技術に係る制御回路との対比によって明確となる。
【0098】
図5(b)は、図2の比較技術に係る制御回路2rの動作を示すタイムチャートである。従来の制御回路2rには、最大周波数設定回路54およびロジック部56が存在しない。したがって、時刻t6に比較信号S1がアサートされると、バースト制御信号SBURSTが直ちにアサートされる。バースト制御信号SBURSTがアサートされると、その後、フィードバック電圧VFBは低下し始め、時刻t8にしきい値電圧VBURSTより低くなる。
【0099】
図5(b)に示すように、従来の制御回路2rでは、バースト周期はTcyc3、Tcyc4と非常に短くなり、バースト周波数は高くなる。これにより、スイッチングトランジスタM1のスイッチング期間が長くなり、DC/DCコンバータ110rの消費電力が増大する。また、バースト周波数が高くなり可聴帯域に入ると、トランスT1にて音鳴りが発生する。
【0100】
以上が従来の制御回路2rの動作である。
【0101】
実施の形態に係る制御回路2の利点を説明する。制御回路2によれば、軽負荷状態におけるバースト周期を、最大周波数設定回路54による測定時間τFMAX以上に、言い換えれば、バースト周波数を上限周波数1/τFMAX以下に制限することができる。
これにより、軽負荷状態における消費電力を低減し、あるいは、トランスT1の音鳴きを防止することができる。
【0102】
また、最大周波数設定回路54による測定時間τFMAXを可変に構成することにより、DC/DCコンバータ110の設計者が、バースト周波数の上限値を任意に設定できる。バースト周波数の上限を任意に設定できることにより、第1出力キャパシタCo1の容量値をはじめとする回路パラメータの設計の自由度が高まるという利点もある。たとえば第1出力キャパシタCo1の容量値を小さくできれば、DC/DCコンバータ110のコストを下げることができる。
【0103】
続いて、DC/DCコンバータ110の用途を説明する。
【0104】
DC/DCコンバータ110は、図1に示すインバータ(電源装置)100に好適に利用できる。そして、インバータ100は、ACアダプタや電子機器の電源ブロックに好適に利用される。
【0105】
図6は、インバータ100を備えるACアダプタ800を示す図である。ACアダプタ800は、プラグ802、筐体804、コネクタ806を備える。プラグ802は、図示しないコンセントから商用交流電圧VACを受ける。インバータ100は、筐体804内に実装される。インバータ100により生成された直流出力電圧VOUTは、コネクタ806から電子機器810に供給される。電子機器810は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、携帯オーディオプレイヤなどが例示される。
【0106】
図7(a)、(b)は、インバータ100を備える電子機器900を示す図である。図7(a)、(b)の電子機器900はディスプレイ装置であるが、電子機器900の種類は特に限定されず、オーディオ機器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、電源装置を内蔵する機器であればよい。
プラグ902は、図示しないコンセントから商用交流電圧VACを受ける。インバータ100は、筐体804内に実装される。インバータ100により生成された直流出力電圧VOUTは、同じ筐体904内に搭載される、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路、デジタル回路などの負荷に供給される。
【0107】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0108】
(第1の変形例)
図4において、電流源62が生成する電流Icを外部から設定可能としてもよいし、しきい値電圧VTIMEを外部から設定可能としてもよい。これらの設定は、外部のマイコンからの制御命令によって行ってもよいし、制御用のピン(端子)を制御回路2に設け、そのピンの状態によって変更可能としてもよい。
【0109】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例に係る制御回路2aの構成を示す回路図である。
図8の制御回路2aは、図4の制御回路2と比べて最大周波数設定回路54の構成が異なっている。図8の最大周波数設定回路54aは、リップルカウンタ90、タイマー制御部92を備える。
【0110】
リップルカウンタ90は、所定の周波数を有するクロック周波数CKのエッジ毎にカウントアップする4ビットカウンタである。リップルカウンタ90には、制御回路2aの起動時にアサートされるパワーオンリセット(POR)信号S6と、バースト制御信号SBURSTが入力される。リップルカウンタ90は、POR信号S6またはバースト制御信号SBURSTがアサートされるたびにリセットされ、それを契機としてカウントアップを開始し、所定の時間τFMAXが経過後に、その出力であるタイマー信号S7がアサートされる。図8のリップルカウンタ90の構成は一般的である。
【0111】
タイマー制御部92は、バースト制御信号SBURSTがアサートされるとリップルカウンタ90をリセットし、放電スイッチ66をオフする。タイマー制御部92は、ワンショット回路94、Dフリップフロップ96を含む。ワンショット回路94は、バースト制御回路50からのバースト制御信号SBURSTをパルス化し、リップルカウンタ90のリセット端子に供給する。これにより、バースト制御信号SBURSTのアサートを契機として、リップルカウンタ90の時間測定が開始される。
【0112】
またタイマー制御部68は、リップルカウンタ90がタイマー信号S7をアサートすると、マスク信号S2をアサートする。
【0113】
この変形例によっても、実施の形態と同様に、バースト周波数の上限を設定することができる。
【0114】
なお、この変形例においては、リップルカウンタ90のビット数を設定可能とし、あるいは、クロック信号CKの周波数を設定可能とすることにより、バースト周波数の上限を任意に設定することができる。これらの設定は、外部のマイコンからの制御命令によって行ってもよいし、制御用のピン(端子)を制御回路2に設け、そのピンの状態によって変更可能としてもよい。
【0115】
(第3の変形例)
実施の形態では、シャントレギュレータ(誤差増幅器)212がトランスT1の2次側に設けられる場合を説明したが、この誤差増幅器は、1次側に設けてもよく、さらには制御回路2に内蔵してもよい。
【0116】
(第4の変形例)
実施の形態で説明した回路は、各信号のアサートをハイレベル、ネゲートをローレベルに割り当てた正論理(ハイアクティブ)系で構成されるが、それらを負論理系で構成してもよいし、正論理系と負論理系を組み合わせて構成してもよい。
【0117】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0118】
P1…入力端子、P2…出力端子、Co1…第1出力キャパシタ、Co2…第2出力キャパシタ、D1…第1ダイオード、D2…第2ダイオード、T1…トランス、W1…1次巻線、W2…2次巻線、W3…補助巻線、M1…スイッチングトランジスタ、RS…検出抵抗、100…インバータ、102…ヒューズ、Ci…入力キャパシタ、104…フィルタ、106…ダイオード整流回路、Cs…平滑キャパシタ、110…DC/DCコンバータ、2…制御回路、200…出力回路、210…フィードバック回路、212…シャントレギュレータ、214…フォトカプラ、10…パルス変調器、12…セット信号生成部、14…リセット信号生成部、16…RSフリップフロップ、18…マスク回路、20…ドライバ、40…ブランキング回路、50…バースト制御回路、52…バーストコンパレータ、54…最大周波数設定回路、56…ロジック部、60…タイマー回路、61…タイマー用キャパシタ、62…電流源、64…タイマー用コンパレータ、66…放電スイッチ、68…タイマー制御部、70…Dフリップフロップ、71,72…インバータ、74…ANDゲート、75…インバータ、76…ワンショット回路、77…RSフリップフロップ、80…分圧回路、90…リップルカウンタ、92…タイマー制御部、800…ACアダプタ、802…プラグ、804…筐体、806…コネクタ、810,900…電子機器、902…プラグ、904…筐体、S1…比較信号、S2…マスク信号、S3…タイマー信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8