(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウィンドシールドを払拭するワイパ装置が知られており、そのワイパ装置の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたワイパ装置は、車両のカウルトップパネルに設けたピボット軸と、ピボット軸を中心として動作する駆動アームとを有する。駆動アームには、ピボット軸から偏心した位置にピンが設けられており、ピンに遊星歯車の中心が回転可能に取り付けられている。また、ピボット軸を取り囲むようにカバーが設けられており、カバーには内歯車が形成されている。カバーはピボット軸に対して相対回転が可能である。
【0004】
そして、遊星歯車は内歯車に噛み合わされている。遊星歯車の中心から偏心した位置に突起が設けられており、突起に支持アームが回転可能に連結されている。カバーにはガイドレールが設けられており、支持アームはガイドレールに沿って動作可能である。支持アームであって突起に連結された端部とは反対側の端部にワイパアームが固定されており、ワイパアームの先端にはワイパブレードが取り付けられている。ワイパブレードは、車両のウィンドシールドに接触している。
【0005】
特許文献1に記載されたワイパ装置は、ピボット軸が所定角度の範囲内で正逆に回転すると、遊星歯車が内歯車に沿って自転し、かつ、ピボット軸の回りを公転する。遊星歯車がピボット軸の周りを公転する動作により、支持アーム及びワイパアームが、ピボット軸を中心とする半径方向に往復動する。また、カバーは、遊星歯車が自転及び公転する動作によりピボット軸を中心として所定角度の範囲内で揺動運動する。
【0006】
このため、ワイパアームは、カバーと共に所定角度の範囲内で往復動作し、かつ、長手方向に往復動する。したがって、ワイパーブレードによりウィンドシールドが払拭され、かつ、ワイパブレードは、ワイパアームの動作角度が変化することに伴い長手方向に往復動することで、ワイパブレードにより払拭される範囲が、ピボット軸の半径方向に変化する。このようにして、特許文献1には、ワイパ装置によるウィンドシールドの払拭面積を極力大きくすることができる、と記載されている。
【0007】
なお、ウィンドシールドの拭き残しを減少するワイパ装置は、特許文献2にも記載されている。特許文献2に記載されたワイパ装置は、ピボット軸の動力で往復動作するメインアームに、ワイパアーム及びワイパブレードが共に長手方向に移動可能に取り付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたワイパ装置は、ワイパアーム及びワイパブレードが、共に長手方向に往復運動する。このため、ウィンドシールドの払拭面積を拡大するために必要な動力が増加する問題があった。
【0010】
本発明の目的は、ウィンドシールドの払拭面積を拡大するために必要な動力が増加することを抑制できる、ワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ピボット軸に支持され、かつ、前記ピボット軸を中心として動作するワイパアームと、前記ワイパアームに取り付けられ、かつ、前記ワイパアームが動作すると車両のウィンドシールドを払拭するワイパブレードと、を備えたワイパ装置であって、前記ワイパブレードを前記ワイパアームに対して前記ピボット軸を中心とする半径方向に動作させる動作機構が設けられ
、前記動作機構は、磁力により前記ワイパブレードを前記ワイパアームに対して動作させるものであり、前記動作機構は、前記ワイパブレードに設けられた永久磁石と、前記ワイパアームに設けられ、かつ、磁力を発生して前記永久磁石と共に前記ワイパブレードを動作させる電磁石と、を含む。
【0012】
本発明は、前記
ワイパアームの長さ方向で、前記ピボット軸に連結された端部とは反対側の端部には、前記ワイパブレードを支持する支持部が設けられ、前記ワイパアーム、前記ピボット軸、前記支持部には、前記電磁石に電流を供給する電線が収容されるケーブル収容部が設けられている。
【0013】
本発明は、前記
ワイパブレードは、ホルダとブレードラバーとを有し、前記ホルダを前記支持部に対して動作可能とする案内機構が設けられている。
【0014】
本発明は、前記
案内機構は、前記支持部に設けられた凸部と、前記ホルダに設けられた凹部とを有し、前記ホルダは、前記凸部に沿ってスライド可能である。
【0015】
本発明は、前記ワイパアームに、前記ピボット軸を中心とする半径方向で前記ワイパブレードが前記ウィンドシールドを払拭する範囲よりも内側で前記ウィンドシールドを払拭する補助ブレードが設けられている。
【0016】
本発明は、前記動作機構が、前記ワイパアームの停止位置を基準とする前記ワイパアームの動作角度を検知し、かつ、検知された前記ワイパアームの動作角度に基づいて、前記ピボット軸を中心とする半径方向における前記ワイパブレードの位置を決定する。
【0017】
本発明は、前記ピボット軸を回転させる電動モータと、前記電動モータの出力軸の回転状態を検知して検知信号を出力するセンサと、が設けられており、前記動作機構は、前記センサの検知信号から前記ワイパアームの動作角度を検知する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のワイパ装置は、ワイパブレードをワイパアームに対してピボット軸を中心とする半径方向に動作させることができる。したがって、ワイパブレードの払拭範囲が、ピボット軸を中心とする半径方向に移動し、ウィンドシールドの払拭残りを低減できる。また、ワイパブレードをワイパアームに対して動作させるため、ワイパブレードの払拭範囲を移動させるために必要な動力が増加することを抑制できる。
【0019】
本発明のワイパ装置は、電磁石により発生した磁力により、永久磁石と共にワイパブレードを動作させることができる。
【0020】
本発明のワイパ装置は、ピボット軸を中心とする半径方向で、ワイパブレードの払拭範囲の内側を、補助ブレードにより払拭できる。したがって、払拭残りを一層低減できる。
【0021】
本発明のワイパ装置は、ウィンドシールドの形状に合わせて、ワイパブレードを動作させることができ、払拭残りを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図5に基づいて詳細に説明する。
図1に示す車両10は、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11を有する。フロントガラス11は、車両10を平面視すると、略台形状を有している。すなわち、フロントガラス11は、上縁11aの長さが下縁11bの長さよりも短い。上縁11aは、フロントガラス11の縁のうち、ルーフ12に近い箇所であり、下縁11bは、フロントガラス11の縁のうち、カウルトップパネル13に近い箇所である。また、上縁11aの両端と下縁11bの両端とをそれぞれ接続する2つの側縁11cは、同じ長さである。
【0024】
そして、フロントガラス11を払拭するワイパ装置14が設けられている。ワイパ装置14は、電動モータ15と、ピボット軸としてのピボット軸16と、ワイパアーム17と、ワイパブレード18とを有する。電動モータ15はケーシング19の内部に収容されており、ケーシング19はカウルトップパネル13の下方に設けられている。電動モータ15は、出力軸としてのアマチュア軸15aを有し、アマチュア軸15aは、所定角度の範囲内で正逆回転される。ケーシング19の内部には、減速機構20が設けられている。
【0025】
減速機構20は、アマチュア軸15aの外周に形成されたウォームと、ウォームに噛み合うウォームホイール21とにより構成されている。ピボット軸16は、ウォームホイール21と同軸に、かつ、一体回転するように設けられている。減速機構20は、アマチュア軸15aのトルクをピボット軸16に伝達する際に、アマチュア軸15aの回転速度に対してピボット軸16の回転速度を低速にして、トルクを増幅する機構である。
【0026】
アマチュア軸15aのトルクが減速機構20を介してピボット軸16伝達され、ピボット軸16は所定の角度範囲内で正逆回転する。ピボット軸16は、車両10の幅方向における略中央であり、かつ、フロントガラス11の前方に1本のみ配置されている。なお、ケーシング19の内部には、アマチュア軸15aの回転角度を検知するセンサ22が設けられている。センサ22は検知信号を出力する。
【0027】
ワイパアーム17は、金属材料、樹脂材料等を用いて棒状に成形されており、ワイパアーム17の長さ方向の一端がピボット軸16に固定されている。ワイパアーム17はピボット軸16が正逆回転すると、所定の角度範囲内で往復動作する。ワイパアーム17は、ピボット軸16を中心として、所定角度の範囲内を円弧状の軌跡で往復動作する。ワイパアーム17は、ピボット軸16を中心とする円弧の半径方向には動作しない構造である。
【0028】
ワイパアーム17の長さ方向で、ピボット軸16に連結された端部とは反対側の端部に支持部23が設けられている。支持部23はワイパブレード18を支持する要素であり、ワイパアーム17からフロントガラス11に向けて突出されている。支持部23は、非磁性材料、例えば樹脂により成形されており、支持部23は、ワイパアーム17に固定されている。
【0029】
ワイパブレード18は、
図4のように、ホルダ24及びブレードラバー25を有する。ホルダ24は、非磁性材料、例えば、樹脂により長尺形状に成形されており、ホルダ24は支持部23に対して動作可能に取り付けられている。ホルダ24は、ホルダ24の長手方向と、ワイパアーム17の長手方向とが一致する方向となるように、支持部23に取り付けられている。ホルダ24の動作方向における長さは、支持部23の長さよりも長く設定されている。
【0030】
また、ホルダ24を支持部23に対して動作可能とする案内機構26が設けられている。案内機構26は、支持部23に設けられた凸部27と、ホルダ24に設けられた凹部28とを有する。凸部27は、ワイパアーム17の幅方向における両側に対応させて2本設けられている。2本の凸部27は、ワイパアーム17の長手方向に沿って、レール形状に設けられている。また、2本の凸部27は、ワイパアーム17の幅方向に沿って互いに逆向きに突出されている。
【0031】
ホルダ24に設けられた凹部28は、ホルダ24の長手方向に沿って設けられている。また、凹部28は、ホルダ24の幅方向における両端に2本設けられており、2本の凹部28は、ホルダ24の幅方向の深さを有する。そして、2本の凸部27は、それぞれ単独で2本の凹部28に挿入されており、ホルダ24は2本の凸部27に沿って長手方向に動作可能、つまり、スライド可能である。
【0032】
さらに、ワイパアーム17の長手方向において、2本の凸部27の長さ及び2本の凹部28の長さは、ワイパ装置14により払拭するべきフロントガラス11の平面形状に基づいて設定されている。なお、支持部23またはホルダ24のうちの少なくとも一方に、ストッパが設けられている。ストッパは、ホルダ24が支持部23に沿って動作する範囲を決定する構造である。
【0033】
さらに、ブレードラバー25は、ゴム材料、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPR)等の非ジエン系ゴムにより一体成形されている。ブレードラバー25は、ホルダ24に固定された基部25aと、基部25aに連続されたリップ部25bとを備えており、リップ部25bがフロントガラス11の表面に接触する。また、ブレードラバー25は、リップ部25bの先端がフロントガラス11の表面に密着するように、長手方向に沿って湾曲している。
【0034】
さらに、ワイパ装置14は、ワイパブレード18を、ワイパアーム17に対して動作させる動作機構29を備えている。具体的に説明すると、動作機構29は、ワイパブレード18を、ピボット軸16を中心とする円の半径方向に動作させる機構である。動作機構29は、2個の電磁石30a,30b及び複数の永久磁石31a〜31h、案内機構26を含む。2個の電磁石30a,30bは、支持部23にワイパアーム17の長手方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。つまり、ワイパアーム17の長手方向で、電磁石30a,30b同士の間に支持部23の一部が介在されている。
【0035】
2個の電磁石30a,30bは、磁性体の回りにコイルを巻き付けて別個に構成されている。コイルはスイッチ回路32を介して電源33に接続されている。具体的には、電流が流れる電線が設けられている。スイッチ回路32は、電源33からコイルに流れる電流の向きを切り替える制御、電源33及びコイルを含む電気回路を遮断する制御をおこなう。電源33は車体側に設けられており、電源33は、バッテリ、キャパシタを含む。また、電源33は、電動モータ15に電力を供給する電源と共通でもよいし、異なっていてもよい。2個の電磁石30a,30bは、電流が供給されると磁力を発生し、電源33からコイルに電流が供給されないと磁力を発生しない。また、2個の電磁石30a,30bは、電源33からコイルに流れる電流の向きが切り替えられると、極性、つまり、N極とS極とが別個に切り替わる。
【0036】
一方、複数の永久磁石31a〜31hは、ワイパブレード18、具体的にはホルダ24に取り付けられている。複数の永久磁石31a〜31hは、ホルダ24の長手方向に配置されている。また、複数の永久磁石31a〜31hは、異なる極性を交互に配置してある。
図3の例では、永久磁石31a,31c,31e,31gがS極であり、永久磁石31b,31d,31f,31hがN極である。さらに、ワイパアーム17、支持部23、ピボット軸16等に、電線を取回すためのケーブル収容部、例えば、孔、溝、切り欠き等が設けられている。
【0037】
この構造は、ワイパアーム17がピボット軸16を中心として動作しても、電線が摩耗、破損することを抑制するものである。なお、ワイパアーム17にインサート成形を行うことにより電線(ケーブル)を収容してもよい。また、フィルム形状のケーブルをワイパアーム17に接着してもよい。
【0038】
さらに、
図2のように、電動モータ15の停止及び回転、回転速度、回転方向等を制御する電動モータ用制御装置34が設けられている。電動モータ用制御装置34には、運転者が操作するワイパスイッチの信号が入力される。また、ワイパブレード18をワイパアーム17の長手方向に動作させる電磁石用制御装置35が設けられている。電磁石用制御装置35は、ピボット軸16を中心とする半径方向で、ワイパブレード18の位置及び動作範囲を制御する。動作機構29は、電磁石用制御装置35を含む。電動モータ用制御装置34と電磁石用制御装置35との間で、相互に信号の行き来が行われる。
【0039】
さらにまた、ピボット軸16を中心とする半径方向において、支持部23とピボット軸16との間に補助ブレード36が設けられている。補助ブレード36は、フロントガラス11に接触するブレードラバーを有している。補助ブレード36は、ピボット軸16を中心とする半径方向の払拭範囲が、ワイパブレード18よりも内側である。さらに、カウルトップパネル13の上方にはカバー37が設けられている。カバー37は車両10の幅方向に設けられたプレート状の要素であり、ピボット軸16におけるワイパアーム17を取り付けた端部は、カバー37とカウルトップパネル13との間に配置されている。
【0040】
本実施形態のワイパ装置14は、ワイパスイッチがオフされていると、電動モータ15に電力を供給しない。このため、ワイパアーム17は、ワイパブレード18がカウルトップパネル13またはフロントガラス11に接触した位置、つまり初期位置で停止している。この初期位置が、本発明の停止位置に相当する。これに対して、ワイパ装置14は、ワイパスイッチがオンされると電動モータ15に電力が供給され、アマチュア軸15aが所定角度の範囲内で正逆回転する。
【0041】
アマチュア軸15aのトルクが減速機構20を経由してピボット軸16に伝達されると、ワイパアーム17は、初期位置から離れる向きで動作し、反転位置で一旦停止し、ついで、初期位置に近づく向きで動作する、という往復動作を繰り返す。つまり、ワイパアーム17は、ピボット軸16を中心として、所定角度の範囲内で揺動運動する。ワイパアーム17が動作すると、ワイパブレード18によりフロントガラス11の表面が払拭され、フロントガラス11の表面の異物、例えば、水滴、雪、埃等が払拭される。ワイパブレード18は、ピボット軸16を中心として円弧形状に動作する。ワイパブレード18は、ピボット軸16と中心として一定の長さを有するため、その長さに対応した幅で、フロントガラス11が払拭される。
【0042】
本実施形態のワイパ装置14は、初期位置を基準とするワイパアーム17の動作角度に基づいて、ワイパブレード18をワイパアーム17に対して長手方向に動作させることができる。例えば、
図3の(A)において、電磁石30aに電流が流されており、その電磁石30aはN極になり電磁石30aにより磁力が発生する。電磁石30aは、ワイパアーム17の長手方向で、電磁石30bよりもピボット軸16に近い位置にある。電磁石30bには電流が流されておらず、電磁石30bは磁力を発生していない。このため、N極である電磁石30aで発生した磁力によりS極の永久磁石31cが吸着され、ワイパブレード18はワイパアーム17に対して停止している。
【0043】
ここで、電磁石用制御装置35は、
図3(B)のように、電磁石30aへの通電を停止し、電磁石30bへ通電して、電磁石30bをS極とする制御を行う。すると、S極の電磁石30bは、ワイパブレード18に固定したS極の永久磁石31eと反発しあい、かつ、S極の電磁石30bは、永久磁石31eの隣に配置されたN極の永久磁石31fと吸着し合う。その結果、ワイパブレード18は、
図3(C)のように左側に向けて動作する。
【0044】
さらに、電磁石用制御装置35は、ワイパブレードが
図3(C)の位置にある状態において、
図3(D)のように、電磁石30bへの通電を停止し、電磁石30aへ通電して、電磁石30aをS極とする制御を行う。すると、S極の電磁石30aは、S極の永久磁石31cと反発しあい、かつ、電磁石30aは、永久磁石31cの右隣に配置されたN極の永久磁石31dと吸着し合う。その結果、
図3(F)のようにワイパブレード18が左側に向けて動作する。このように、ワイパブレード18を
図3で左側に向けて動作すると、ワイパブレード18によるフロントガラス11の払拭範囲は、ワイパアーム17の長手方向に沿いピボット軸16に近づく。
【0045】
これに対して、ワイパブレード18が
図3(E)に示す位置にある状態で、電磁石30aへの通電を停止し、電磁石30bへ通電して電磁石30bをS極にすると、S極の電磁石30bとS極の永久磁石31gとが反発しあう。また、永久磁石31gの左隣に配置されているN極の永久磁石31fと、電磁石30bと吸着し合う。その結果、ワイパブレード18はワイパアーム17に対して右方向に向けて動作し、ワイパブレード18はワイパアーム17の長手方向でピボット軸16から遠ざかる。以後、電磁石30a,30bへの通電の有無、電磁石30a,30bの極性を切り替えることにより、ワイパブレード18をピボット軸16から離れる向きに更に移動させることができる。
【0046】
このように、ワイパブレード18を
図3で右側に向けて動作すると、ワイパブレード18によるフロントガラス11の払拭範囲は、ワイパアーム17の長手方向に沿いピボット軸16から離れる。なお、ピボット軸16を中心とするワイパブレード18の払拭幅は、ワイパブレード18がワイパアーム17に対して停止している場合、ワイパブレード18がワイパアーム17に対して長手方向に動作している場合のいずれにおいても同じである。
【0047】
ところで、電動モータ用制御装置34は、センサ22により検知されるアマチュア軸15aの回転状態に基づいて、ワイパアーム17の動作状態を間接的に検知できる。アマチュア軸15aの回転状態は、アマチュア軸15aの回転方向、ワイパアーム17の初期位置に対応するアマチュア軸15aの位置を基準とする回転角度を意味する。
【0048】
ワイパアーム17の動作状態は、ワイパアーム17の初期位置を基準とするワイパアーム17の動作方向、ワイパアーム17の動作角度を意味する。ワイパアーム17の動作方向は、初期位置から離れる方向にワイパアーム17が動作する方向、初期位置に近づく方向にワイパアーム17が動作する方向を含む。ピボット軸16を中心とする半径方向において、ワイパブレード18の先端から、フロントガラス11の上縁11a及び側縁11cまでの距離は、フロントガラス11の平面形状、ワイパアーム17の動作角度等の条件に基づいて一義的に定まる。
【0049】
このため、ワイパアーム17の動作方向及び動作角度に応じて、ワイパブレード18をワイパアーム17の長手方向に動作させると、ピボット軸16を中心とする半径方向で、ワイパブレード18の外側端と、フロントガラス11の上縁11a及び側縁11cとの間の距離をなるべく短くすることができる。つまり、ワイパブレード18によるフロントガラス11の払拭範囲を、フロントガラス11の平面形状に合わせて任意に変更することができ、拭き残りを低減できる。
【0050】
本実施形態のワイパ装置14によるワイパブレード18の払拭範囲の一例を、
図5に示す。ワイパブレード18をワイパアーム17に対して動作させると、一点鎖線で示す払拭範囲A1と、破線示す払拭範囲B1との間で、ワイパブレード18の払拭範囲を変更することができる。ワイパブレード18の払拭範囲A1は、ワイパブレード18の払拭範囲B1よりも、ピボット軸16の半径方向で外側に位置する。
【0051】
このように、ワイパ装置14は、ワイパブレード18をワイパアーム17に対してピボット軸16を中心とする半径方向に動作させることができる。したがって、ワイパブレード18の払拭範囲が、ピボット軸16を中心とする半径方向に移動し、フロントガラス11の払拭残りを低減できる。また、ワイパブレード18をワイパアーム17に対して動作させ、ワイパアーム17はピボット軸16を中心とする半径方向には動作しない。したがって、ワイパブレード18の払拭範囲を移動させるために必要な動力が増加することを抑制できる。
【0052】
さらに、補助ブレード36は、ワイパアーム17が動作すると、ワイパブレード18により払拭できない領域を払拭する。
図5に示すように、補助ブレード36の払拭範囲C1は、ピボット軸16を中心とする半径方向で、ワイパブレード18が最大限外側に移動した場合において、ワイパブレード18の払拭範囲A1と一部で重なる。このように、補助ブレード36は、ワイパブレード18により払拭できない領域を払拭する。なお、補助ブレード36は設けなくてもよい。
【0053】
さらに、電動モータ用制御装置34は、ワイパスイッチがオフされた際に、ワイパアーム17及びワイパブレード18が、共にカウルトップパネル13とカバー37との間に収納された状態で、アマチュア軸15aを停止する制御を行うことができる。ワイパアーム17が、カウルトップパネル13とカバー37との間に収納された格納位置は、ワイパアーム17の初期位置とは異なる。電動モータ用制御装置34がこの制御を行うと、ワイパアーム17及びワイパブレード18は、車両10の前方に存在する人からは見えなくなる。したがって、車両10のデザイン性は損なわれない。
【0054】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施形態のワイパ装置において、ワイパアームの動作角度を間接的に検知するセンサは、アマチュア軸の回転位置を検知するセンサの他、ピボット軸の回転位置を検知するセンサ、ワイパアームの動作角度を直接検知するセンサを含む。さらに、本発明のワイパブレードをワイパアームに対して長手方向に動作可能とする案内機構は、ワイパブレードに設けられた凸部、支持部に設けられ、かつ、凸部がはまる凹部を含む。凸部は、ワイパブレードの長手方向に沿ってレール形状に設けられる。凹部は、支持部にワイパアームの長手方向に設けられる。
【0055】
本実施形態のワイパ装置は、支持部がワイパアームの幅方向に突出する構造を含む。また、本実施形態のワイパ装置は、支持部がワイパアームの長手方向の端部に設けられている構造を含む。さらに、本実施形態のワイパ装置は、ワイパアーム及び支持部が、インサート成形により一体化されている構造、接着剤により一体化されている構造、ねじ、ボルト等の締結要素を用いて一体化されている構造を含む。
【0056】
さらに、本発明のワイパ装置は、電磁石がワイパアームに設けられ、永久磁石がワイパブレードに設けられている第1の構造を含む。また、本発明のワイパ装置は、電磁石がワイパブレードに設けられ、永久磁石がワイパアームに設けられている第2の構造を含む。第2の構造を有するワイパ装置においては、電源に接続された第1の端子がワイパアームに設けられ、電磁石に接続された第2の端子がワイパブレードに設けられる。そして、第2の構造を有するワイパ装置は、ワイパアームに対してワイパブレードが動作している状態、またはワイパアームに対してワイパブレードが停止している状態のいずれにおいても、第1の端子と第2の端子とが通電可能に接続される。
【0057】
第2の構造を有するワイパ装置は、ワイパブレードに設けられた複数の電磁石に対する通電及び非通電を別個に制御して、各電磁石が磁力を発生する状態と磁力を発生しない状態とに、個別に切り替えることができる。また、第2の構造を有するワイパ装置は、各電磁石のコイルに流す電流の向きを切り替えることにより、電磁石の極性をN極とS極とに切り替えることができる。なお、第2の構造を有するワイパ装置において、ワイパブレードがワイパアームの長手方向に動作する原理は、第1の構造を有するワイパ装置と同じである。
【0058】
さらに、本発明のワイパ装置は、電磁石の個数及び永久磁石の個数を任意に変更可能である。さらに、本発明のワイパ装置は、電磁石と永久磁石とが接触して配置される構造、または、電磁石と永久磁石とが非接触で配置される構造を含む。すなわち、本発明のワイパ装置は、電磁石で発生する磁力が永久磁石に作用し、ワイパブレードを動作させることができればよい。さらにまた、本発明のワイパ装置払拭するウィンドシールドは、車両のフロントガラス、リヤガラスを含む。