(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天板と、該天板の一端部および該一端部と対向する他端部に少なくとも設けられ、前記天板を床面に対して保持する脚部と、少なくとも前記一端部の複数の脚部の間または前記一端部に設けられる脚部と兼用して形成された収納箱とを有し、前記天板、前記脚部および前記収納箱と床面との間に形成される空間が、人間が避難できる広さに形成された防災テーブルであって、
前記収納箱が、非常時の備品を分別して収納できるように少なくとも1段の棚を有するように形成されると共に、該収納箱の、前記天板の外周側および前記空間側である内側の壁面が共にけんどん式扉で形成されてなる防災テーブル。
少なくとも一方の前記けんどん式扉の前記収納箱の内側に向いた面に、工具を脱着できるように装着する複数種類の工具の形状に刳り貫いた工具装着部材が設けられてなる請求項1記載の防災テーブル。
前記脚部の底部、または前記脚部と兼用して形成された前記収納箱の底板に、前記防災テーブルを前記床面に固定する固定部材の挿入孔が形成されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の防災テーブル。
前記防災テーブルを前記床面に固定するネジ部材が、前記脚部または前記脚部と兼用して形成された前記収納箱の前記床面と向かい合う面から前記床面側に軸部を突出するように固定されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の防災テーブル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、テーブルの下に避難してそのまま閉じ込められた場合に、数日間救助を待って生き延びられるようにテーブルに設けた収納箱に非常用の食糧や飲料水などを備蓄する構造のテーブルは種々提案されている。しかし、前述のように、収納箱の扉がテーブルの外側に設けられている開き戸式や、引き出し式、引き戸式などであると、テーブルの下側に閉じ込められた場合、テーブルの外に出て収納箱を開けるということができない。また、テーブルの下側の避難空間側に収納箱の扉が設けられていても、避難空間側は非常に狭く、避難空間側で扉を開けようとしても、スペースがなく扉を開けることができないという問題がある。さらに、たとえテーブルの外に避難できたとしても、テーブルの上や周囲に落下物が重なり、テーブルが落下物でほぼ埋められている場合には、前述の形式の扉であると、収納箱の扉を開けることができず、非常時の備品を取り出すことができないという問題がある。
【0005】
さらに、従来の収納箱に備蓄する備品としては、非常用の食料品、飲料水、救急医療品、懐中電灯などが一般的である。そのため、テーブルの下などに閉じ込められた場合に、救助を待つまでの間の飢えを凌ぐことはできても、積極的に瓦礫を掻き分けて外に脱出するということができないという問題がある。
【0006】
さらに、強いゆれの場合には、最初のゆれでテーブルの遠くに飛ばされてテーブルの下に潜り込めなかったり、たとえ潜り込めたとしても、継続するゆれに対して体をテーブルの下に保持できずに外に投げ出されたりするおそれがあることや、極めて強いゆれの場合には、その下に潜れないばかりか、テーブル自身が飛ばされて、そのテーブルと衝突することによって生命にも関わるような損傷を被るおそれすらある。
【0007】
また、地震が夜間に発生して最初の強いゆれで停電した場合などは、テーブルを視認することができないために、その下の避難空間に速やかに潜り込むことができないということも起こりうる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、地震の発生により、テーブルの下に避難した状態で落下物などにより閉じ込められても、避難した空間側からでも、また、瓦礫で埋まった外部側からでも、収納箱に備蓄した備品を取り出すことができる防災用テーブルを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、テーブルの下の避難空間に閉じ込められた場合や、また、テーブルの下から脱出できてもマンションなどの1箇所しかないドアが家の傾きなどにより開かなくなって外部に避難することができない場合などに、障害物を除去するバールや鋸などの工具類を容易に得やすいように、収納箱に収納すると共に、テーブルの下から脱出した場合に、そのまま工具類を持参しながら脱出することができる収納箱の構造を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、極めて強い地震が発生したときでも、そのゆれによってテーブル自身が飛ばされたりすることや、人がテーブルの遠くに飛ばされたりすることなく、テーブルの下の避難空間に潜り込むことができる防災テーブルを提供することにあり、さらに、夜間の地震で停電した場合のような明かりの無い状態でも避難空間の位置を認識することが可能で、速やかにその中に潜り込むことができる防災テーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の防災テーブルは、天板と、該天板の一端部および該一端部と対向する他端部に少なくとも設けられ、前記天板を床面に対して保持する脚部と、少なくとも前記一端部の複数の脚部の間または前記一端部に設けられる脚部と兼用して形成された収納箱とを有し、前記天板、前記脚部および前記収納箱と床面との間に形成される空間が、人間が避難できる広さに形成されたテーブルであって、前記収納箱が、非常時の備品を分別して収納できるように少なくとも1段の棚を有するように形成されると共に、該収納箱の、前記天板の外周側および前記空間側である内側の壁面が共にけんどん式扉で形成されている。
【0012】
前記けんどん式扉の少なくとも一方の前記収納箱の内側に向いた面に、工具を脱着できるように装着する複数種類の工具の形状に刳り貫いた工具装着部材が設けられていることにより、テーブルの周囲に落下物などが重なりテーブルの下から脱出することができない場合でも、また、テーブルの下からは脱出できても屋外に脱出することができない場合でも、その工具を使うことにより脱出口を作りやすくでき、災害後に安全な場所まで避難しやすくなるため好ましい。
【0013】
また、前記工具装着部材が設けられたけんどん式扉に形成される扉開閉用の凹部が、該扉を貫通した貫通孔で形成されていることが、工具類が装着されたけんどん式扉を持って避難することができ、玄関のドアなどが傾きにより開かない場合でも、避難途中で散乱物を掻き分ける場合でも、バールなどの必要な工具類を利用して避難路を確保することができるため好ましい。
【0014】
また、前記脚部の底部、または前記脚部と兼用して形成された前記収納箱の底板に、前記防災テーブルを前記床面に固定する固定部材の挿入孔が形成されることが、および/または、前記防災テーブルを前記床面に固定するネジ部材が、前記脚部または前記脚部と兼用して形成された前記収納箱の前記床面と向かい合う面から前記床面側に軸部を突出するように固定されることが、床面へのテーブルの簡便、且つ、強固な固定を可能にし、地震のゆれでテーブルが動くことを防いで、その下への避難を可能にすると共に、強いゆれで飛ばされたテーブルによって危害を加えられることを防ぐことができるため好ましい。
【0015】
また、前記天板の周端部に、少なくとも1つの貫通孔が設けられることによって握持部が形成されることが、この握持部を握ることによって、地震のゆれで飛ばされることを防ぐことを可能にし、さらにテーブルの下への避難後もテーブルの下に体を保持することを可能にするため好ましい。
【0016】
また、前記空間の開口部を形成する前記天板、前記脚部、および、前記収納箱のうちの少なくとも1つの前記防災テーブルの外周面に、ならびに/または、前記握持部を形成する貫通孔の周囲および該貫通孔の内周面の少なくとも一部に、蛍光性材料からなる塗膜または部材が付着されることが、明かりの無い状態でも、速やかにテーブルの下に潜ること、および/または、ゆれを感じたときに咄嗟に握持部を握ることを可能にするため好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防災テーブルに設けられる収納箱は、テーブルの外周側のみならず、テーブルの中心側である避難空間側にも開閉用の扉が設けられ、しかもその開閉用の扉がけんどん式扉で形成されているため、地震発生時にテーブル下の避難空間に避難した後に、落下物などによりテーブル周囲が閉塞されても狭い避難空間内で収納箱の扉を開けて内部の備品などを取り出すことができる。すなわち、開閉用の扉が開き戸で形成されていると、狭い避難空間内に人間が入って開き戸を開けることは非常に困難であり、また、引き戸で形成されていると、開閉口が収納箱の開口部の約半分しか開けることができないが、けんどん式扉であれば、僅かに持ち上げて下部を手前に引くだけで、簡単に取り外すことができる。しかも、この扉を開くことは、扉そのものを無くすることになるため、収納箱を広々と開口することができる。しかも、テーブルの外周側もけんどん式の扉で閉塞されているため、テーブルの外周側が落下物などで埋まっていても、僅かな隙間を利用して収納箱を開口させ、内部に保管されている非常用の備品以外に工具類などで大きな物も簡単に取り出すことができる。また、けんどん式扉は剛体で形成できるため、地震のゆれによる収納箱外への備品の飛び出しを防ぐこともできる。
【0018】
さらに、けんどん式扉の収納箱内部側に、工具装着部材が設けられ、工具ごとにそれぞれの形状を形どった工具装着部材の凹部内に収納されていることにより、けんどん式扉を取り外せば、直ちに必要な工具類を簡単に認識することができ、薄暗いときでも必要な工具類を脱着して逃げ口の形成に利用することができる。すなわち、工具類は、通常工具箱内に入れて特別な場所に保管されているが、それでは地震などの災害の際に工具箱に辿り着くことができないが、本発明の災害用テーブルでは、常時その収納箱内に保持され、しかもけんどん式扉の内側に工具ごとに分離して収納されることにより、工具箱を収納するスペースも必要ではなくなり、さらに、工具ごとに分離されているため、手探りでも必要な工具を瞬時に見つけて利用することができ、使用後も元の場所に戻すことができるため、工具を紛失することもなくなる。
【0019】
さらに、けんどん式扉に設けられる開閉用のための凹部を貫通孔にすることにより、テーブルの避難空間から脱出した後に、その工具類が装着されたけんどん式扉の貫通孔部分に手の平を入れることができるため、工具類を装着した状態のけんどん式扉を持って避難でき、避難途上または避難先でも工具類を使用して、避難経路を確保したり、他の被災者を救出したりすることができる。
【0020】
さらに、脚部の底部、または収納箱の底板に、テーブルを前記床面に固定する固定部材の挿入孔が形成されることにより、または、ネジ部材が、脚部または収納箱から床面側に軸部を突出するように固定されることにより、ネジ止めなどによって簡便に、且つ、大きなゆれでも飛ばされないように強固にテーブルを床面に固定でき、そのようにテーブルを固定しておくことによって、極めて強い地震が発生したときでも、安定した所定の避難空間を確保できると共に、飛ばされたテーブルと衝突して重大な損傷を受けることを防ぐことができる。
【0021】
また、前記天板の周端部に少なくとも1つの握持部が形成されることにより、地震の発生時に咄嗟にこの握持部を握って体を支えることができるので、ゆれによってテーブルの遠くに飛ばされることがなく、テーブルの下の避難空間に潜り込むことができる。さらに、テーブルの下からもこの握持部を握ることができるので、テーブルの下に体を保持しやすくなり、テーブルの下に避難した後に強いゆれが続いていても、テーブルの外に投げ出されるようなことを防ぐことができる。
【0022】
また、避難空間への入り口となる開口部を形成する、天板、脚部および収納箱のうちの少なくとも1つのテーブルの外周面に、ならびに、握持部を形成する貫通孔の周囲や内周面の少なくとも一部に蛍光性の塗膜または部材が付着されることにより、明かりの無い状態でも避難空間への入り口および握持部を見付けられるので、たとえば、夜間に地震が発生して即座に停電したような場合でも、咄嗟に握持部を掴むことができ、ゆれによって体が飛ばされるのを防ぐことができると共に、速やかに避難空間の中へ潜り込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による防災テーブル1は、
図1〜2に示されるように、天板2の一端部21およびその一端部21に対向する天板2の他端部22に天板2を床面Fに対して保持する脚部が設けられ、少なくとも一端部21の複数の脚部の間または一端部21に設けられる脚部と兼用して形成された収納箱5とを有しており、天板2と、脚部および収納箱5と、床面Fとの間に空間(避難空間8)が形成され、避難空間8は、人間が避難できる広さに形成されている。
図1〜2に示される例は、脚部と収納箱とが兼用して一体的に形成された収納箱5の例である。収納箱5は、非常時の備品を分別して収納できるように少なくとも1段の棚(仕切板)55を有するように形成されると共に、収納箱5の、天板2の外周側および避難空間8側である内側の壁面が、共にけんどん式扉52で形成されていることに特徴がある。避難空間8の大きさは、人間の身体全てを収容できて、且つ、平常時の実用的な天板の高さが確保できれば限定されるものではないが、例えば、少なくとも1人が避難できるようにするには、避難空間8の大きさを、幅600mm×奥行き800mm以上、好ましくは、幅900mm×奥行き900mm以上とすることが好ましく、高さを、650〜800mmの範囲、好ましくは700〜750mmの範囲、とすることが好ましい。なお、天板2と収納箱5との固定方法は、特に限定されるものではなく、ネジ、金具、または接着材などを使用して固定することができる。
【0025】
天板2は、木製でも、ステンレスなどのスチール製でも良く、物が倒れたり、落下物が落ちてきたりしても下側の避難空間8を保護できる構造に形成されていれば良い。また、大きさは、避難空間8に少なくとも1人の人間が避難できる空間を確保できると共に、後述する非常備品や工具類を収納できる収納箱の領域を形成することができる大きさであることが好ましく、たとえば
図1に示されるような矩形状であれば、0.8m×1m〜1.5m×3m位の大きさに形成されるが、この大きさおよび形状には制限されない。たとえば円板状のものでもよい。円板状でもたとえば直径の一方の端部側で、ある幅を有する部分を一端部とすれば、その直径の反対側の同じ幅を有する部分を他端部とすることができる。
【0026】
脚部を兼ねた収納箱5は、
図3に示されるように、板材を上下および左右の面の壁材として組み合わせて枠状に形成された本体部(枠体)51、および本体部51の前面および後面であって壁材の無い開放面である開口部53に設けられる開閉用の扉52から構成されている。本発明では、この収納箱5の開閉用の扉52がけんどん式扉で構成されていることに特徴がある。このけんどん式の扉52は、たとえば
図3に示されるように、矩形状に形成された板材で構成され、上端および下端を、収納箱5(本体部51)の開口部53の上枠および下枠に設けられた溝54に嵌合させることによって本体部51に取り付けられるけんどん式の扉52である。なお、扉52は、本体部51が天板2と組み合わされたときに天板2の外周側を向く面および避難空間8側を向く面のいずれの開口部53にも設けられている。収納箱5の容量は、前述の天板2の大きさおよびテーブル1の実用に適した高さによる制約を受けるが、避難空間8内で、数日間過ごせる程度の飲食物や、そこから脱出するための工具などを収容できる容量を有していることが好ましく、0.06立方m以上、好ましくは0.1立方m以上であることが好ましい。収納箱5は、天板2を支える強度を有していれば材料は限定されるものではなく、木材、スチール材、金属材などで構成することができ、複数の板材を組み合わせて形成するほか、一体として形成することもできる。
【0027】
けんどん式の扉52は、
図4に示されるように、板材からなる本体521に、本体521よりも薄厚の薄板部522を上端および下端に備えて構成されており、収納箱5の外側を向く面の、上端のやや下方であって幅方向(収納箱5を天板2と組み合わせてテーブル1としたときの奥行き方向)略中央部に、扉開閉用の凹み523を備えている。扉52は、けんどん式の扉であり、
図4(a)に示される扉52を閉じた状態から、扉52を、収納箱5の開口部53の下枠の溝54と扉52の下端の薄板部522との嵌合が外れるまで上方に持ち上げ、その状態から、
図4(b)に示されるように、扉52の下端を収納箱5の外側まで引き出し、その後、
図4(b)に矢印Pで示す方向に引き下げることによって、本体部51から取り外すことができる。従って、収納箱5の周囲に僅かな空間しかない場合でも、扉52を取り外すことができる。また、扉52を本体部51に取り付けるときは、前述の取り外す手順と逆の手順によって取り付けることができる。なお、本実施形態では扉52は薄板部522を備えているが、収納箱5の溝54を扉52の厚さに応じた幅に設定して薄板部522を備えずに構成することもできる。
【0028】
また、
図5に示される本発明の一実施形態の変形例では、天板2の周端部に握持用貫通孔23が設けられることによって握持部24が形成されている。このような握持部が形成されていることにより、地震の発生時に、咄嗟に握持部24を掴むことによって、地震のゆれで飛ばされないように体を支えることができ、さらに、テーブルの下へ避難した後も、テーブルの下から握持部24を握ることによって、テーブルの外に投げ出されないようにテーブルの下に体を保持することができる。握持用貫通孔23の大きさおよび形状は、少なくとも1つの指を差し込むことができれば特に限定されるものではないが、手のひらまで差し込める程度の大きさおよび形状であることが好ましい。また握持部24は、貫通孔ではなく、天板2の周端部に、少なくとも指先の一部を差し込むことが出来る深さの凹み部を設けることによって形成されてもよい。また、
図1に示される例では、矩形状の天板2の長辺に沿って3つずつおよび短辺に沿って1つずつ握持部24が形成されているが、これに限定されるものではなく、防災テーブル1のデザイン性にも配慮して、天板2の周端部の他の位置に形成されてもよく、または、防災テーブル1の周囲のどの位置からでも少なくとも1つの握持部24に手が届くように、例えば0.8〜1m程度の間隔で形成されてもよい。
【0029】
また、
図5に示される例では、避難空間8の開口部を形成する天板2および収納箱5の、防災テーブル1の外周面に、蛍光性材料からなる塗膜25が形成されている。このような塗膜25が形成されることにより、明かりの無い状態でも、避難空間8の開口部、すなわち入り口を容易に見つけることができ、避難空間8に速やかに潜り込むことができる。
図5に示される例では、収納箱5が脚部と一体的に形成されているため、塗膜25が収納箱5に形成されているが、収納箱5が脚部と別に形成される場合は、塗膜25は、脚部に、または脚部と収納箱5の両方に形成されてもよい。また、
図5に示される例では、塗膜25は、天板2および収納箱5のそれぞれの長手方向のほぼ全長にわたって形成されているが、これに限定されるものではなく、避難空間8の開口部の少なくとも一端が認識できるように、天板2および収納箱5の少なくとも一部に形成されていてもよく、さらに、天板2に代えて、または天板2に加えて、幕板26(
図2(a)参照)の防災テーブル1の外周面に形成されていてもよい。蛍光性材料は、全く明かりの無い状態でも、所定の時間発光が持続する蓄光材料であることが好ましいが、例えば電池などによって稼働する機器が発するわずかな電磁波などによって周囲との識別が可能な程度にさえ発光するものであれば特に限定されるものではなく、アクリル系、ウレタン系など、あらゆる材料系の蛍光性材料を採用することができる。
【0030】
さらに、
図5に示される例では、握持用貫通孔23の周囲の天板2の上面にも、蛍光性材料からなる塗膜25が形成されている。この塗膜25が形成されることにより、明かりの無い状態でも、握持用貫通孔23の位置を認識でき、握持部24を咄嗟に掴むことができる。
図5に示される例では、塗膜25は、握持用貫通孔23の周囲の全周にわたって形成されているが、これに限定されるものではなく、握持用貫通孔23の周囲の一部に形成されてもよく、さらに、握持用貫通孔23の周囲に代えて、または握持用貫通孔23の周囲に加えて、握持用貫通孔23の内周面の一部もしくは全周にわたって形成されてもよい。
【0031】
図5に示される例では、塗膜25が、天板2および収納箱5に形成されているが、塗膜25に代えて、または塗膜25に加えて、蛍光性材料からなる識別用部材が接着剤などによって取り付けられてもよい。
【0032】
また、収納箱5の底板56の四隅に、
図6(a)に示されるような、防災テーブル1を床面に固定する固定部材が挿入される挿入孔57が形成されていてもよい。このような挿入孔57を設けることにより、例えばネジ部材などの固定部材(図示せず)を、収納箱5の内側からこの挿入孔57を通して、床面F(
図2参照)に設けられるねじ穴(図示せず)にねじ込むことによって、または、床面Fに固定され、収納箱5の外側から挿入孔57に挿入されたネジ部材などを収納箱5の内側からナット(図示せず)などで留めることによって、防災テーブル1を床面Fに固定することができる。挿入孔57は、挿入穴57に挿入される、例えばネジ部材などの軸部の直径に応じた内径で、その全長にわたって形成されても良いが、
図6(a)に示されるように、例えばネジ部材の頭部、または、収納箱5の外側から挿入されるネジ部材を留めるナットなどが収容される部分571を含んでいても良い。また、
図6(b)および(c)に示されるように、防災テーブル1を床面Fに固定するネジ部材58が、収納箱5の床面Fと向かい合う面から床面F側に軸部581を突出するように、収納箱5に固定されていても良い。
図6(b)に示される例では、ネジ部材58は、収納箱5の底板56に設けられた孔に収納箱5の内側から挿入されて接着剤582で固定されており、
図6(c)に示される例では、軸部のみからなるネジ部材58が、収納箱5の外側から収納箱5にねじ込まれて固定されている。ネジ部材58の収納箱5への固定方法は、防災テーブル1を床面Fに固定するときにネジ部材に加わるトルクに耐え得る強度が得られるものであれば特に限定されるものではなく、接着およびねじ込み以外のあらゆる方法で収納箱5に固定されても良い。なお、前述の
図1および
図5に示される例のように収納箱5が脚部と一体的に形成されている場合は、挿入孔57が収納箱5に形成され、ネジ部材58も収納箱5に固定されるが、収納箱5が脚部と別に形成される場合は、挿入孔57が脚部の底部に形成され、ネジ部材58が脚部の床面Fと向かい合う面から床面F側に軸部を突出するように固定されてよい。また、床面Fの構造上、テーブル1をネジ部材などで固定することができない場合は、例えば、接着剤などによって収納箱5または脚部を床面に固定しても良い。さらに、収納箱5または脚部の裏面には、例えば、ゴムや合成樹脂などを用いてシート状に形成された滑動防止用のシート材が貼付けられても良い。
【0033】
本発明の収納箱5の内部は、
図7にその一例が示されるように、仕切板(棚)55が備えられ、この収納箱5の中に収納されるペットボトル飲料111などの備品11を分別して収容できる棚が構成されており、
図7に示される例では、7枚の仕切板55によって、種類別に保管される備品11の大きさに応じたそれぞれの区画に仕切られている。仕切板55の数量や配置は、これに限定されるものではなく、収納箱5の内部を必要な数および大きさの区画に分割して収納箱5内の空間を有効に利用できるように、備品11の数量および大きさに応じて必要な位置に配置され得る。仕切板55は、ダボを収納箱5の内部側壁に配置して、その上に単に載置されるようにしてもよいが、地震時のゆれにより脱落することを防ぐという点で、ボルトなどで収納箱5の内壁に固定されることが好ましい。
【0034】
また、
図8に示されるように、扉52の収納箱5の内側を向く面には、フック524が備えられ、ヘルメット114などの備品を吊下げて保管できるように構成されており、同じ面にはさらに、棒状の材料を幅が広く底の浅いU字形状に形成して構成されたストッパ525が設けられており、非常用スリッパ115などの備品をこのストッパ525と扉52の間に挿し込んで保管することもできるように構成されている。扉52は、前述したように収納箱5の本体部51から取り外しできるため、このように備品を装着できるように扉52を構成しておくことにより、収納されている備品を扉52ごと持ち出すこともできる。
【0035】
図7および
図8には、ペットボトル入りの飲料水111、非常食112、非常用持ち出し袋113、ヘルメット114、および非常用スリッパ115が備品11として保管されているように示されているが、これら以外にも、医薬品、軍手、懐中電灯、収納ボックス、ブックスタンド、フェライトマグネット、救助笛、防寒シート、接着剤、および各種テープなどが必需品であることを本発明者は見出しており、これらの備品11を収納箱5に収納できるように収納箱5を形成する必要がある。また、これらに限らず、地震などの被災時に必要と考えられるあらゆるものの中から選択される備品の収納に適するように、収納箱5の内部および扉52の収納箱5の内側を向く面を構成することができる。
【0036】
この実施形態による防災テーブル1は、天板2と、天板2の一端部21の下面および一端部21に対向する天板2の他端部22の下面にそれぞれ設けられた収納箱5を備えており、天板2、2つの収納箱5および床面Fで、上部の空間を収納用の空間に占拠されること無く天板2の高さと略同じ高さの避難空間8を形成することができる。また収納箱5は、天板2の外周側に面する側および避難空間8に面する側のそれぞれに、備品11の出し入れのための開口部53とその扉52とを備えており、さらに、扉52がけんどん式扉であるため、地震発生時に人間が避難空間8に避難しているような、すなわち、収納箱5の内側の扉52の周囲に狭い空間しか無いような状況や、テーブル1の周囲に狭い空間しか無いような状況でも、扉52を、避難空間8側から、およびテーブル1の外側からのいずれからも開けることができ、備品11を取り出すことができる。また、収納箱5の底板56には挿入孔57が形成されてもよく、挿入孔57を通してネジ部材などを床面Fにねじ込むことによって、極めて強いゆれに対しても動かないように、テーブル1を床面Fに固定することができる。また、天板2の周端部には握持部24が設けられてもよく、地震発生時に咄嗟に握持部24を掴むことによって、テーブルの遠くに飛ばされないように体を支えることができる。また、避難空間8の開口部を形成する天板2および収納箱5のテーブル1の外周面、ならびに、握持部24を形成する貫通孔23の周囲に、蛍光性材料からなる塗膜25が形成されてもよく、それにより、明かりの無い状態でも咄嗟に握持部24を掴むことができ、かつ、速やかに避難空間8に潜り込むことができる。また、収納箱5は、その内部に複数の仕切板55を有しており、収納される備品11の種類ごとの大きさおよび数量に応じて、仕切板55で収納箱5内を必要な数および大きさの区画に分割することにより、収納箱5内の収納用の空間を有効に利用することができる。また扉52は、収納箱5の内側を向く面に複数のフック524およびストッパ525を有しており、備品11をフック524に吊下げて、または、ストッパ525と扉52との間に備品11を挿し込んで保管することができ、また扉52は本体部51から取り外しできるため、収納されている備品11を扉52ごと持ち出すこともできる。したがって本実施形態のテーブル1によれば、極めて強い地震が発生してもテーブル1およびその周囲にいる人が飛ばされることなく、しかも夜間の地震で停電して明かりの無い状況でも避難空間8に速やかに一次避難ができ、その後、避難空間8内またはテーブル1が置かれた屋内に閉じ込められたときには、収納箱5に保管された備品11を取り出して使用できるため、自力で脱出できる可能性を高めることができ、自力で脱出できない場合でも、収納箱5に保管された飲食物を摂取することにより、救出されるまでの数日間を耐えしのぐことができる。
【0037】
つぎに、
図9および
図10を参照して、本願発明の他の実施形態について説明する。
図9に示されるように、この実施形態では、収納箱7は脚部3と別に形成されている。この実施形態によるテーブル1は、天板2、天板2の一端部21の下面および一端部21に対向する天板2の他端部22の下面のそれぞれに、枠状に形成して設けられた脚部3、および脚部3を形成する枠内にそれぞれ組み付けられた2つの収納箱7から構成されている。天板2は、前述の2つの脚部3により床面に対して水平に保持され、天板2、2つの脚部3、2つの収納箱7、および床面で、人間が地震のときに入ることができる避難空間8を形成している。脚部3は、角材を上下および左右に配して枠状に組み合わせて構成されており、下端には、テーブル1の高さを調整できるようにアジャスタ31を備えている。また、枠状に形成された脚部3の床面に面する辺である底部33の両端部付近に、前述の
図6(a)に示されるような挿入孔57が形成されている。脚部3は、複数の部材の組み合わせで形成するほか、単一の部材で一体的に形成してもよく、さらに、各辺を構成する部材の形状も角材に限定されず、その断面を円形または多角形とすることもできる。また、脚部3は、材料として、木材、スチール材、金属材などが使用でき、天板2との固定方法も特に限定されず、ネジ、金具、または接着材などを使用して固定することができる。また、アジャスタ31および挿入孔57に代えて、または加えて、
図6(b)および(c)に示されるようなネジ部材58が固定されていても良い。
【0038】
本実施形態の収納箱7は、前述の収納箱5と同様に、枠状に形成された本体部71およびけんどん式扉72を備えて構成されており、収納箱5と共通する構成については詳しい説明を省略する。
図9に示される本実施形態の実施例では、収納箱7と脚部3は、着脱可能なように構成されており、脚部3に設けられたボルト孔32および収納箱7の本体部71に設けられたボルト孔711にボルトを通して組み付けられるように構成されている。このように収納箱7と脚部3との着脱が可能なように構成される場合は、収納箱7の底面にキャスターを備えるようにして、脚部から取り外した際の移動が容易なようにすることも可能である。しかし、収納箱7は、着脱可能としないで接着剤などにより脚部3に固定的に組み付けられるように構成することもできる。
【0039】
図10に示されるように、扉72は、前述の扉52と同様に、板材で矩形に形成された本体721の上端および下端に薄板部722を備えており、本実施形態では、幅方向(天板2と組み合わせてテーブル1とした場合の奥行き方向)略中央部であって上端のやや下方および下端のやや上方の2個所に、扉開閉用の貫通孔723を備え、収納箱から取り外すとき、および取り外してそのまま携行するときの把持性を高めている。なお、扉72は、前述の扉52と同じ方法で、収納箱7の本体部71に取り付け、および取り外すことができる。
【0040】
扉72は、収納箱7の内部を向く面に、工具12を装着する工具装着部材724が設けられている。工具装着部材724は、装着される工具12と同じような形状で工具12よりもやや大きめに刳り貫かれた部分である装着領域725を複数種類備えており、装着される工具12の少なくとも半分以上の部分を収容できる深さの装着領域725を形成できる厚さを有する板材で構成されている。これにより、工具12をそれぞれの形状に応じた装着領域725に整然と保管することができる。また扉72の収納箱7の内部を向く面には、装着領域725に相対する位置の一部に、クリップ726が設けられており、このクリップ726で工具12を挟むことによって、地震によるゆれに対しても、工具12が装着領域725から脱落することなく保持することができると共に、工具類の着脱を容易にすることができる。なお、扉72の収納箱7の内部を向く面と工具装着部材724との間に磁性材料からなる平板を備えるか、または工具装着部材724自体を磁性材料で構成することによって、クリップ726に代えて、磁力で工具12を保持するように構成してもよいし、工具装着部材724が、工具12の厚さに対して充分な厚さを備えている場合などは、このような保持力を持たせるための手段を備えない構成とすることもできる。工具装着部材724は、木材、金属材などを使用することができるが、扉72を収納箱7から取り外したときの持ち運びを容易にする点で軽量の材料が好ましく、ウレタン材、またはプラスチック材などを使用してもよい。また、工具装着部材724をゴム類などの弾力性のある材料によって形成することにより、工具を固定するクリップなどを設けなくても、工具よりも一部狭い領域を有するように装着部を形成しておくことにより、簡単に脱着することができる。
【0041】
工具装着部材724に装着される工具12は、
図10に示されるように、バール、ノコギリ、ハンマー、ペンチ、六角レンチ、金鋸、釘類、カッターナイフ、ハサミが災害時の工具類として必需品であり、これら以外にも、ドライバー、メジャー、各種ネジ、釘、および各種金具などが必要であることが本発明者により確認された。さらに、これらに限らず、地震などの被災時に、特にテーブルの下または家屋から脱出するために必要と考えられ得るあらゆる工具から選択されるものを装着できるように装着領域725を構成することができる。
【0042】
前述の
図9(a)に示されるように、本実施形態の天板2の周端部には、各辺のほぼ全長にわたる長さの握持用貫通孔23が設けられており、握持部24が、天板2の周端部のほぼ全周にわたって形成されている。したがって、天板2に手が届きさえすれば、テーブル1の周囲のどの位置にいても、地震発生時に咄嗟に握持部24を掴むことができ、テーブルの遠くに飛ばされないように体を支えることができる。また、本実施形態では、握持用貫通孔23の周囲の天板2の上面に代えて、握持用貫通孔23の内周面に蛍光性材料からなる塗膜25が形成されている。これにより、明かりの無い状態でも握持部を認識できるようにしながら、握持用貫通孔23の周囲の天板2の上面も、配色、描画などによってテーブル1のデザイン性を高めることに活用することができる。また、
図9に示される例では、天板2の周端部の長辺に沿う握持用貫通孔23の内周面の向かい合う4組の個所、および、短辺に沿う握持用貫通孔23の内周面の向かい合う2組の個所に、塗膜25が形成されているが、これに限定されるものではなく、明かりの無い状態で握持部24の位置を部分的にでも認識できる位置に形成されていれば良い。
【0043】
また、本実施形態では、収納箱7と脚部3とが着脱可能なように構成されており、収納箱7が取り外されているときは、収納箱7が取り外されたあとの脚部3を構成する四辺からなる枠の内側からも避難空間8に入ることができるので、蛍光性材料からなる塗膜25は、
図9(b)に示されるように、テーブル1の長辺の外周面に加えて、収納箱7が組み付けられるテーブル1の短辺の外周面の天板2および脚部3にも形成されている。さらに、収納箱7が取り外されていてテーブル1の短辺側からも避難空間8に入ることができるかどうかを明かりの無い状態でも識別できるように、収納箱7のけんどん式扉72の中央部分にも蛍光性材料からなる塗膜25が形成されている。
【0044】
図9および
図10に示された本実施形態のテーブル1によれば、収納箱7の扉72は、収納箱7の内部を向く面に、装着される工具12と同じような形状で工具12よりもやや大きめに刳り貫かれた部分である装着領域725を複数種類備えた工具装着部材724が設けられ、工具12をそれぞれの形状に応じた領域に収容できるように構成されていることによって、日常から工具類の保管場所として使用でき、また、地震のゆれに対する収納箱7内での工具の散乱を抑えることができることから、紛失や、互いにぶつかることによる破損、または他の備品とぶつかることによる他の備品の破損を防止することができ、さらに、工具12を所定の位置に保管できるため、地震後に想定される停電などによる暗がりの中でも、特定の工具を取り出すことを容易にすることができる。また、扉72の収納箱7の内部を向く面には、装着領域724に相対する位置の一部に、クリップ726が設けられており、このクリップ726で工具12を挟むことによって、地震によるゆれに対しても、装着領域725から脱落することなく工具12を保持することができる。さらに本実施形態の扉72は扉開閉用の凹部を貫通孔723とし、さらに扉72の上端部および下端部にそれぞれ1つずつ設けているため、扉72を収納箱7へ取り付けまたは収納箱7から取り外すとき、および、取り外した後にそのまま持ち運ぶときの把持性を高め、工具12として重い工具類が装着されているときなどでも、扉72を取扱いやすくできる。したがって本実施形態によれば、工具12を、取り出しやすく、破損のおそれが少なく、携行しやすい状態で保管できることから、避難空間8、またはテーブル1が置かれた屋内に閉じ込められたときに自力で脱出できる可能性を、さらに高めることができる。
【0045】
なお、けんどん式の扉72の内面側に工具類12を設ける構造を
図9の第2の実施形態として説明したが、扉の内面側に工具類を設けることは、第1の実施形態である
図1に示される構造の扉52にも同様に適用できることは言うまでもない。さらに、扉72の凹部を貫通孔723にすることも、凹部を上下2か所に設けることも、
図1に示される実施例にも適用できるし、逆に
図9および
図10に示される実施形態でも貫通孔723にしないで、凹部のままにすることも、上部などの一方だけに設ける構造にすることもできる。
【0046】
また、収納箱7は、脚部3と別に形成され、しかも着脱可能なように脚部3に組み付けられているため、工具12を収納した収納箱7を脚部3と分離した状態で、テーブル1が置かれている場所と異なる場所に設置することもできる。例えば大きな地震の後など、余震に見舞われる可能性が高いときなどは、日中はテーブル1に組み付けて設置しておき、就寝時は収納箱7を脚部3から取り外して寝室に移して設置することもでき、また平常時に、一時的に収納箱7を脚部3から取り外し、この収納箱7が設けられていた天板2の一端部21または他端部22を着座位置として使用するときに、着席者の足元の空間を確保して座りやすくすることもできる。
【0047】
本発明によれば、日頃から目に触れるテーブルに収納箱が設けられており、この収納箱に地震などの被災時に備えた飲食物、工具、およびその他の備品を、日常の使用も可能な、容易に出し入れができる状態で、まとめて保管しておくことができるため、使用者にこれらの備品の所在についての認識を維持させることができ、また使用期限のある備品や飲食物の更新が忘れられることを防ぐとともに更新のための備品の交換作業自体も容易にすることができる。また本発明のテーブルは、住居内に限らず、天板の大きさや収納箱の容量、収納箱内の備品収納のための構成を最適化することにより、オフィス、教育施設、飲食店などで利用することも可能である。