特許第6113567号(P6113567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113567
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】超音波溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   B23K20/10
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-89327(P2013-89327)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-213324(P2014-213324A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501410126
【氏名又は名称】ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】▲ボウ▼ 俊
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/036036(WO,A1)
【文献】 特開2009−279657(JP,A)
【文献】 特開2002−067162(JP,A)
【文献】 特開昭49−002753(JP,A)
【文献】 毛利 尚武, 齊藤 長男,第2回 超音波除去加工技術の基礎と応用,機械と工具,日本,志村 幸雄, 株式会社工業調査会, 工業調査会大阪支社,2000年 5月 1日,第44巻第5号,89〜93ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接チップをホーンと近い周波数をもつ、半波長又は一波長で且つ半波長においては腹部−節部−腹部、一波長においては腹部−節部−腹部−節部−腹部をもつ共振体とし、更に該溶接チップを軸断面多角形とし、その軸方向の両端において、その腹部の位置に軸方向と直交又は平行して突出する接合作用部を設け、且つまた該接合作用部は各面の夫々に設けると共に、端面にホーンとの結合ネジの螺合孔を設け、更に該溶接チップの軸方向における節部の位置において保持、加圧を行うことを特徴とする超音波溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせた金属或いは樹脂材等の超音波接合可能な部材に加圧力と共に超音波振動を付与してそれらの部材を接合する超音波溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重ね合わせた金属或いは樹脂材等に加圧力と共に超音波振動を付与してそれらの部材を接合する超音波溶接装置は、一般的にコンバーターとブースターとからなる起振ユニットと、ブースターから前方に突出するホーンと、このホーンの先端に取着される溶接チップとをもって構成されている。
【0003】
また、斯かる超音波溶接装置は、溶接チップとアンビルで被溶接部材を挟んだ状態で、コンバーターに電力が供給されると、コンバーターを介してブースターに超音波振動エネルギーが発生し、これの前方に接続されたホーンの振動が溶接チップに伝わり、該溶接チップの振動による発熱によって被溶接部材が接合されるものである。
【0004】
また、従来の超音波溶接装置における溶接チップは、ホーンの先端に着脱可能に取着されており、図5及び図6にはその一例を示している。
【0005】
該図において、100はホーンであり、101は該ホーン100の先端に着脱自在に取着された溶接チップである。また、該溶接チップ101は、ホーン100の先端に形成した段部100aに外嵌した環状のチップ本体101Aと、該チップ本体101Aの外周に一体的に突設した、作用面101B′を凹凸面とした接合作用部101Bとからなるものである。そしてまた、該溶接チップ101は、ホーン100の先端に形成したボルト100Aと、これに螺合するナット100Bとの締め付けにより固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、斯かる従来の溶接チップ101は、単にホーン100の先端に、その一部として取着されているに過ぎず、共振体ではないことから、該溶接チップ101とホーン100との接触面で振動ロスが発生する。そして、この振動ロスが摩耗、発熱の原因となる。
【0007】
また、溶接チップ101は、ホーン100の先端にその一部として取着されるものであることから、その重量を大きくすることができない。このため、接合作用部101Bの個数や作用面101B′の面積に制約がある。
【0008】
また、溶接チップ101は、これ自体が加圧されることはなく、片持ち状に保持されたホーン100側において加圧されるものであるから、加圧のバランスが悪く、溶接チップにおいて充分で且つ安定した加圧を行うことができない。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、溶接チップをホーンと近い周波数をもつ、半波長又は一波長で且つ半波長においては腹部−節部−腹部、一波長においては腹部−節部−腹部−節部−腹部をもつ共振体とし、溶接チップとホーンを一つの共振システムとして構成し、溶接チップを軸断面多角形とし、その軸方向の両端において、その腹部の位置に軸方向と直交又は平行して突出する接合作用部を設け、且つまた該接合作用部は各面の夫々に設けると共に、端面にホーンとの結合ネジの螺合孔を設け、更に溶接チップの軸方向における節部の位置において保持、加圧を行い、もって上記従来の溶接チップの問題点を悉く解消することができるようになした超音波溶接装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して、本発明の要旨とするところは、溶接チップをホーンと近い周波数をもつ、半波長又は一波長で且つ半波長においては腹部−節部−腹部、一波長においては腹部−節部−腹部−節部−腹部をもつ共振体とし、更に該溶接チップを軸断面多角形とし、その軸方向の両端において、その腹部の位置に軸方向と直交又は平行して突出する接合作用部を設け、且つまた該接合作用部は各面の夫々に設けると共に、端面にホーンとの結合ネジの螺合孔を設け、更に該溶接チップの軸方向における節部の位置において保持、加圧を行うことを特徴とする超音波溶接装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記の如き構成であり、溶接チップをホーンと近い周波数をもつ、半波長又は一波長で且つ半波長においては腹部−節部−腹部、一波長においては腹部−節部−腹部−節部−腹部をもつ共振体とし、該溶接チップとホーンを一つの共振システムとして構成し、更に該溶接チップを軸断面多角形とし、その軸方向の両端において、その腹部の位置に軸方向と直交又は平行して突出する接合作用部を設け、且つまた該接合作用部は各面の夫々に設けると共に、端面にホーンとの結合ネジの螺合孔を設け、更に溶接チップの軸方向における節部の位置において保持、加圧を行うものである。
【0012】
上記の如く溶接チップを共振体とし、溶接チップとホーンを一つの共振システムとして構成したから、従来の如き溶接チップとホーンとの接触面での振動ロスの発生を抑制することができる。そしてまた、この振動ロスに起因する摩耗と発熱の問題も解消することができるものである。
【0013】
また、溶接チップは共振体であるから、その軸方向の両端における腹部の位置に接合作用部を設けることにより、且つまた反転使用を可能とすべく、軸方向の両端の端面にホーンとの結合ネジの螺合孔を設けることにより、従来の溶接チップよりも接合作用部、更に実質的にはその接合作用面の数を少なくとも2倍に増やすことができるものである。また、溶接チップは軸断面多角形(多面体)であるから、各面の夫々に接合作用部を設けることにより、接合作用部の数を増やすことも可能となるものである。加えて、接合作用部を従来よりも大きくすることが可能になるから、その作用面の面積を大きくすることも可能となるものである。
【0014】
また、溶接チップの軸方向における節部の位置において保持、加圧を行うものであるから、ホーン側の保持及び加圧と同時に、これと併せて該溶接チップの保持及び加圧を行うことができるようになり、加圧のバランスがとれて、溶接チップにおいて充分で且つ安定した加圧を行うことができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る超音波溶接装置における要部の斜視図である。
図2】同側面図である。
図3】同正面図である。
図4図3中A−A線断面図である。
図5】従来の超音波溶接装置におけるホーンと溶接チップ部分の斜視図である。
図6】同縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図中、1は超音波溶接装置におけるホーンであり、所定の周波数をもつ半波長のホーンである。また、図においては、超音波溶接装置を構成するホーン以外の部材、即ちコンバーターとブースターからなる起振ユニット等は省略している。
【0018】
また、該ホーン1は、軸方向の中央部が縮径された鼓形をなし、その軸方向の一方側の端面に、ブースターとの結合ネジ2を取り付けると共に、他方側の端面に後記溶接チップとの結合ネジ3を取り付けている。
【0019】
4は前記ホーン1の先端に着脱自在に取着される溶接チップであり、前記ホーン1とでもって一つの共振システムとして構成されるものである。また、該溶接チップ4は、前記ホーン1と同様に、軸方向の中央部が縮径された鼓形となしている。
【0020】
また、該溶接チップ4は、前記ホーン1と近い周波数をもつ、半波長で且つ腹部4a−節部4b−腹部4cをもつ共振体である。また、該溶接チップ4は、軸断面多角形(本実施形態では四角形)であり、その軸方向の両端において、その腹部4a、4cの位置に軸方向と直交して突出する接合作用部5、5を設け、且つまた該接合作用部5、5は各面の夫々に設けると共に、端面に前記ホーン1との結合ネジ3の螺合孔6、6を設けている。更にまた、該溶接チップ4は、その軸方向中央における節部4bの位置において保持、加圧を行うものである。尚、図中7は節部4bの位置に形成したフランジ部である。また、該溶接チップ4と前記ホーン1とで一つの共振システムとして構成していることは、図2に示す通りである。尚、本実施形態においては、溶接チップ4を半波長とした例を示しているが、一波長としてもよく、そして、その場合においては、腹部−節部−腹部−節部−腹部をもつ共振体とし、且つまたこの節部の位置において保持、加圧を行うものである。また、接合作用部5、5を軸方向と直交して突出させた例を示しているが、軸方向と平行して突出させるようにしてもよい。
【0021】
上記本実施形態によれば、溶接チップ4を共振体とし、溶接チップ4とホーン1を一つの共振システムとして構成していることにより、従来の如き溶接チップとホーンとの接触面での振動ロスの発生を抑制することができるものである。そしてまた、この振動ロスに起因する摩耗と発熱の問題も解消することができるものである。
【0022】
また、溶接チップ4は共振体であるから、その軸方向の両端における腹部4a、4cの位置に接合作用部5、5を設けることにより、且つまた反転使用を可能とすべく、軸方向の両端の端面にホーン1との結合ネジの螺合孔6、6を設けることにより、従来の溶接チップよりも接合作用部、更に実質的にはその接合作用面の数を少なくとも2倍に増やすことができるものである。また、溶接チップ4は軸断面多角形(多面体)であるから、各面の夫々に接合作用部を設けることにより、接合作用部の数を増やすことも可能となるものである。加えて、接合作用部を従来よりも大きくすることが可能となるから、その作用面の面積を大きくすることも可能となるものである。
【0023】
また、溶接チップ4の軸方向中央における節部4bの位置において保持、加圧を行うことにより、ホーン1側の保持及び加圧と同時に、これと併せて該溶接チップ4の保持及び加圧を行うことができるようになり、加圧のバランスがとれて、溶接チップ4において充分で且つ安定した加圧を行うことができるようになるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 ホーン
2、3 結合ネジ
4 溶接チップ
4a、4c 腹部
4b 節部
5、5 接合作用部
6、6 結合ネジの螺合孔
ランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6