(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記請求項4に記載の製造方法により製造された管状のシリコーンゴムスポンジにおける貫通孔に軸体を内挿する内挿工程を有することを特徴とするシリコーン発泡ローラの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、この発明に係るシリコーンゴムスポンジの製造方法によって製造されるシリコーンゴムスポンジ、及び、この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法によって製造されるシリコーン発泡ローラが備えるシリコーンゴムスポンジについて説明する。このシリコーンゴムスポンジは、シリコーンゴムが3次元網目構造の骨格を形成する多孔質構造を有している。この多孔質構造には近傍に存在する他の気泡(セルとも称する。)に接し、又は連通する連続気泡が主に存在しており、連続気泡に加えて近傍に存在する他のセルに接することのない、又は連通することのない独立気泡が存在していてもよい。シリコーンスポンジにおいて、気泡の過半数が連続気泡であればよく、例えば、気泡の連続気泡率(連泡率と称することもある。)は65〜98%が好ましく、特に75〜98%であるのが好ましい。気泡の連泡率が前記範囲内にあると、加熱して使用するロールに使用した場合、加熱した時の熱膨張による外径変化が少なく、ニップを多くかけることもできるため画質も安定し、印字速度も速くできる。またゴムにかかる負担も軽減されることから、耐久性も増すという効果が得られる。
【0010】
気泡の連泡率は次のようにして算出することができる。まず、シリコーンゴムスポンジの全部又は一部を切り出して試験片を準備する。この試験片の質量W(g)及び密度D(g/cm
3)を常法に従って測定し、試験片の体積V(cm
3)をW/Dにより算出する。次いで、減圧チャンバ内に配置された容器に満たされた水に試験片を浸漬して、試験片から気泡が出現しなくなるまで、減圧チャンバ内を減圧し、試験片から気泡が出現しなくなったら、減圧を解除して、常圧で24時間静置する。次いで、試験片を水中から取り出し、試験片に付着した水を拭き取って、浸漬後の試験片の質量Wi(g)を測定し、試験片が吸収した水の質量Ww(g)をWi−Wにより算出する。なお、試験片が吸収した水の体積Vw(cm
3)は、水の密度を1(g/cm
3)とすると、Wwと等しくなる。一方、シリコーンゴムスポンジを形成するシリコーンゴム組成物の密度Dc(g/cm
3)を予め常法に従って測定して、このシリコーンゴム組成物で形成されるシリコーンゴムスポンジの理論上の体積Vc(cm
3)をW/Dcにより算出し、さらに、シリコーンゴムスポンジに形成された連続気泡の全体積Vb(cm
3)をV−Vcにより算出する。そして、シリコーンゴムスポンジの連泡率(%)は、このようにして算出した、試験片が吸収した水の体積Vwと連続気泡の全体積Vbとから、計算式(Vw/Vb)×100(%)、すなわち、(Ww/Vb)×100(%)によって、算出される。
【0011】
気泡は、特に限定されず、例えば、略球状であってもよく、また、楕円体形、不定形であってもよく、また、複数のセルが連通した管状であってもよい。この連続気泡の平均セル径は、通常、後述する水溶性粒子の平均粒径とほぼ同等であって、80〜500μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。平均セル径が前記範囲内にあると、このシリコーンゴムスポンジトナー圧着に優れ、画像の高画質化にも対応できるという効果が得られる。
このシリコーンゴムスポンジは、アスカーC硬度が10〜40であるのが好ましく、20〜30であるのが特に好ましい。アスカーC硬度が前記範囲内にあると、ニップを多くかけられるという効果が得られる。
【0012】
このシリコーンゴムスポンジは、用途に応じて適宜の形状を成しており、例えば、板状、ブロック状、管状、環状、角柱状又は円柱状等が挙げられる。
この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法で製造されるシリコーン発泡ローラの製造方法は、軸線に垂直な断面形状が通常円形又は楕円形で軸孔を有する管状のシリコーンゴムスポンジを備えている。このシリコーンゴムスポンジは前記特性を満たしているから、画像形成装置に装着される各種ローラ、特に、定着ローラ、加圧ローラ、現像ローラ、記録体搬送ローラ、クリーニングローラ等に好適に用いられる。
【0013】
次いで、この発明に係るシリコーンゴムスポンジの製造方法及びシリコーン発泡ローラの製造方法(以下、両製造方法をまとめてこの発明に係る製造方法と称することがある。)を併せて説明する。
この発明に係るシリコーンゴムスポンジの製造方法は前記各工程を有しており、この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法は前記成形工程が前記混合物を管状に成形する工程である。
【0014】
この発明に係る製造方法においては、液状シリコーンゴム組成物と、前記液状シリコーンゴム組成物に含有されるシリコーンゴム成分100質量部に対して水溶性粒子50〜200質量部と、水0.1〜5質量部を混合して混合物を調製する工程を実施する。
準備する液状シリコーンゴム組成物としては、(A)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm
3である無機質充填材と、(D)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0015】
前記(A)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示される化合物が好適である。
【0016】
R
1aSiO
(4−a)/2 (1)
ここで、前記平均組成式(2)におけるR
1は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
前記R
1は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基及びこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した炭化水素基等が挙げられる。R
1の少なくとも2個はアルケニル基、特にビニル基であり、90%以上がメチル基であるのが好ましい。具体的には、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10
−6〜5.0×10
−3mol/g、特に5.0×10
−6〜1.0×10
−3mol/gであることが好ましい。
【0017】
オルガノポリシロキサンの重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
【0018】
R
2bH
cSiO
(4−b−c)/2 (2)
ここで、前記平均組成式(2)におけるR
2は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
【0019】
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とから成る共重合体、及び、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0020】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。また、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
前記(C)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに好適な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm
3、好ましくは0.15〜0.45g/cm
3である。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cm
3より小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0021】
このような無機質充填材としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
無機質充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。
【0022】
前記(E)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、(A)オルガノポリシロキサン及び(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
【0023】
この付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有するのが好ましく、特に10〜200Pa・sの粘度を有するのが好ましい。
【0024】
この発明における調製工程では、前記液状シリコーンゴム組成物と、水溶性粒と、水とを混合して混合物が調製される。
水溶性粒子は、例えば0〜100℃で水に溶解する水溶性物質の粒子であればよく、水溶性物質として、塩又は糖が挙げられる。
塩は、微粉末化し易く、硬化工程における硬化温度(110℃〜160℃)において分解ガス化せず、かつ、加熱後は水によって容易に洗除できる無機化合物をいい、具体的には塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどの塩が用いられる。
【0025】
糖は、ペントースやヘキトースなどの単糖類、サッカロースやマルトースなどの二糖類、デンプンやグリコーゲンなどの多糖類のいずれも使用でき、更に、これらを併用して使用することもできる。
これらの中でも、温度上昇で溶解度が大きくなる糖が好ましく、砂糖が特に好ましい。
水溶性粒子は、シリコーンゴム組成物に混合しやすい点で、例えば、顆粒、粉末であるのがよく、その形状は例えば球状、針状等いかなる形状であってもよい。水溶性粒子は、粒径が均一であるのが均一なセルを形成する点で好ましく、例えば、粒径分布が500μm以下であるのが好ましい。この水溶性粒子は平均粒径が例えば、80〜500μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。前記範囲の粒径分布及び平均粒径を水溶性物質が有していると、形成されるセルが安定的に形成でき、溶融も安易にできるという効果が得られる。前記粒径分布および前記平均粒径は、マイクロスコープなどで直接観察し、測定することが出来、100箇所の測定値により、分布も把握できる。なお、水溶性粒子の粒径分布及び平均粒径は例えば特定の篩目を有する篩による分級で調整できる。
【0026】
混合物を調製する際の水の混合量は、前記液状シリコーンゴム組成物に含有されるシリコーンゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部であり、好ましくは0.5〜3.5質量部である。水含有量が0.1質量部未満であると所期の効果が得られないことがあり、一方、水の混合量が5質量部を超えると水溶性粒子が溶解して粒状を維持できずにスラリーになることがあり、水の含有量が前記範囲内にあると、詳細な理由は明らかではないが、水溶性粒子のほとんどすべてが速やかに溶出して多孔質構造が形成される。通常、水はシリコーンゴムとの相溶性又は混合性が悪く、水とシリコーンゴムとを併用すると例えばこれらが分離し、また成形体にピンホール等の欠陥が発生する等の問題があるので、シリコーンゴム又はシリコーンゴム組成物に水を使用しないのが技術常識となっている。ところが、この発明の発明者の検討によれば、驚くべきことに、水溶性粒子と水とを先に混練した後、液状シリコーンゴム組成物と水溶性混合物及び水の混練物とを混練させると、後述する溶出工程において水溶性物質、特に砂糖が成形体から容易かつ速やかに溶出可能なことが判明した。この理由は技術常識に反するので詳細には不明であるが、あえて考慮すると、成形体中で水溶性粒子を覆う水と液状シリコーンゴム組成物とが反発して水溶性粒子と液状シリコーンゴム組成物との間に水の薄膜が形成され、この薄膜を介して成形体中に進入した水が水溶性粒子に接触しやすくなるのではないかと発明者は推測している。
【0027】
このように水溶性粒子は、特定量の水と混合されるのであればよいが、その効果により一層優れる点で、水溶性粒子の表面を水が均一に被覆するように特定量の水と水溶性粒子とが混合されるのが好ましい。このように水溶性粒子の表面を被覆するように水と水溶性粒子とを混合させるには、例えば、スプレー等の方法を採用できる。
【0028】
この発明に係る製造方法においては、このようにして準備した液状シリコーンゴム組成物と水溶性粒子と水とを混合する。このとき、混合される水溶性粒子は、液状シリコーンゴム組成物に含有されるシリコーンゴム成分100質量部に対して50〜200質量部である。水溶性粒子の混合量が50質量部未満であると、水溶性粒子同士が互いに近接又は接することなく分散して後述する浸漬させる工程で水溶性粒子を溶出できず、連続気泡を有するシリコーンゴムスポンジを製造できないことがある。一方、水溶性粒子の混合量が200質量部を超えると、水溶性粒子を溶解させた際に、シリコーンスポンジの骨格が脆くなり、形状を維持できなくなることがある。水溶性粒子は、スポンジ構造を維持するという点で、60〜180質量部の割合で液状シリコーンゴム組成物と混合されるのが好ましく、80〜150質量部の割合で液状シリコーンゴム組成物と混合されるのが特に好ましい。混合方法は特に限定されず、例えば、常温常圧下で、液状シリコーンゴム組成物に水溶性粒子を投入して攪拌機、混練器等で均一に混合させる方法等が挙げられる。このようにして混合物を調製する工程が完遂する。
【0029】
この発明に係る製造方法においては、次いで、調製した混合物を成形する工程を実施する。
なお、前記混合物には、各種の添加剤が含有されていても良い。各種添加剤としては、例えば、前記鎖延長剤及び前記架橋剤等の助剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0030】
混合物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練され、成形される。
【0031】
成形工程において混合物を成形する形状は、用途等に応じて適宜に選択され、例えば、板状、ブロック状、管状、環状、角柱状又は円柱状等が挙げられる。この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法においては、後述する軸体の外径よりもわずかに小さな軸孔を有する管状に成形される。
【0032】
管状のシリコーンゴムスポンジを製造するには、管状の成形体を、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、キャビティの内部が円筒形をした金型のその内周面に離型剤を塗布しておく。下端駒の保持穴と上端駒の保持穴とで、軸体を、軸体の軸線がキャビティの軸線に沿うようにキャビティ内でキャビティの一端から他端に亙って差し渡すように保持する。下端駒のスプルーから、混合物を、ベントから液溜り部に流出し始めるまで、混合物を注入する。次いで、金型の外部から、所定の温度に加熱して、その温度で所定時間保持し、混合物を加熱硬化する。加熱硬化後に、金型を放冷して管状の成形体を金型から取り出し、スプルー及びベントにおけるゴム付着部分を切断除去して、管状の成形体を得る。なお、あらかじめ軸体にプライマー処理を施したものを使用して、接着しても良い。
【0033】
また、連泡率測定用のブロック形状作成は、上記と同様に成形したものを、任意の大きさにカットして成形体を得る事ができる。
この発明に係る製造方法においては、次いで、成形した成形体を硬化する硬化工程を実施する。
この硬化工程は、成形体を複数回に分けて硬化(加熱)する場合には、通常高温で実施される最終硬化を除く硬化工程である。例えば、成形体を一次硬化及び二次硬化する場合には、この硬化工程は一次硬化する工程である。この硬化工程における硬化条件は、液状シリコーンゴム組成物が硬化すると共に、水溶性粒子が溶融、融解、分解又は焼失しない条件に設定される。例えば、水溶性物質が塩化ナトリウムである場合は加熱温度70〜100℃、水溶性物質が砂糖である場合は加熱温度30〜100℃に設定される。
【0034】
硬化工程は、前記調製工程で前記混合物が調製された後、72時間以内に実施されるのが好ましい。72時間を超えてから混合物を硬化させると混合物が硬化前に液状シリコーンゴム組成物と水で被覆された水溶性粒子とが分離して均一な連泡率を有するシリコーンゴムスポンジが製造できないことがある。所望のシリコーンゴムスポンジを製造できる点で前記経過時間は24時間以内であるのが特に好ましい。
この発明に係る製造方法においては、次いで、溶出工程を実施する。この溶出工程は、硬化工程で得られた硬化体から水溶性粒子を溶出できる方法であればよく、例えばこの硬化体を水中に浸漬させる方法、硬化体に水を噴射させる方法等が挙げられる。溶出工程は、常温常圧環境下で実施することもでき、また冷却下又は加熱下で、減圧して実施することもできる。この発明に係る製造方法においては、水溶性粒子を効率よく溶出できる点で、水が強制的に硬化体中に進入する減圧下で実施するのが好ましく、また減圧下での浸漬後に水中から取り出して常圧に戻す工程を繰り返して実施することもできる。
【0035】
また、この発明に係る製造方法においては、硬化体を水中に浸漬したときに超音波振動させるが、水を強制的に硬化体中に進入させて水溶性粒子を効率よく溶出させることができる点で、好ましい。超音波振動方法は、特に限定されず、例えば、水中に浸漬した硬化体を直接振動させる直接法でもよく、硬化体が浸漬された水を振動させる間接法でもよく、また硬化体が浸漬された水を収容する容器を振動させる間接法でもよい。
【0036】
この発明に係る製造方法においては、このようにして硬化体から水溶性粒子のほとんどすべてを溶出できる。
この発明に係る製造方法においては、所望により実施される二次硬化する工程の前に、硬化体における水溶性粒子の溶出残存量を検査する検査工程を実施してもよい。
【0037】
この発明に係る製造方法においては、所望により、このようにして得られた多孔質成形体をさらに硬化する工程を実施する。この硬化工程は、例えば、二次硬化する二次硬化工程である。この二次硬化工程は、多孔質成形体を、例えば4〜20時間かけて120〜250℃に加熱することにより、実施される。
この二次硬化工程が適用される多孔質成形体は水溶性粒子がほとんど残存していないから、水溶性粒子が溶融、融解、分解又は焼失する条件よりも過酷な条件を採用できる。
【0038】
このようにして、この発明に係る製造方法によれば前記特定の連泡率を有するシリコーンゴムスポンジを製造できる。
この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法においては、このようにして製造された管状のシリコーンゴムスポンジの軸孔に軸体を内挿する工程を実施する。内挿する工程は、例えば、軸体の外周面若しくはシリコーンゴムスポンジの軸孔に接着剤等を塗布し、軸体をシリコーンゴムスポンジの軸孔に圧入した後に、接着剤を硬化する。なお、この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法において、接着剤の硬化はこの発明に係る製造方法における二次硬化する工程と同時に実施してもよい。内挿する別の工程として、例えば、外周面にプライマー層が形成された軸体をシリコーンゴムスポンジの軸孔に圧入する方法が挙げられる。なお、使用する軸体は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0039】
このように、予め製造した管状のシリコーンゴムスポンジを用いてシリコーン発泡ローラを製造するこの発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法においては、多孔質管状成形体を水に浸漬したときに、その外表面及び両端面に加えて内表面からも水溶性粒子を溶出させることができるから、ほとんどすべての水溶性粒子を速やかかつ確実に溶出させることができる。したがって、この発明に係るシリコーン発泡ローラの製造方法で製造され、発泡弾性層としてシリコーンゴムスポンジを備えたシリコーン発泡ローラは、シリコーンゴムスポンジが前記特性に加えて水溶性粒子がほとんど無含有であるから、画像形成装置に装着されたときに、高い耐久性及び優れたリバウンド性(優れた永久圧縮歪すなわち歪みにくい特性)を十分に発揮して、画像形成装置の印字速度の向上及び画質の向上に大きく貢献できる。
【0040】
この発明に係る製造方法においては、所望により、前記溶出工程において硬化体が取り出された水から水溶性粒子を回収する工程を実施できる。この回収する工程は水を揮発又は蒸発等によって除去すればよく、例えば、加熱、放置又は送風手段等を採用できる。このようにして水から回収された水溶性粒子は粉砕又は解砕され、平均粒径等を調製されて、この発明に係る製造方法に再度使用されることができる。なお、回収した水溶性粒子を再使用する前に精製することもできる。
【実施例】
【0041】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
水溶性粒子であるグラニュー糖砂糖粒(三井製糖株式会社製、商品名:スティックシュガー)を乳鉢ですりつぶして表1に示される粒子径(平均粒子径)を有する砂糖粒を得た。次に得られた砂糖粒をトレイに薄く分散させ、その上から霧吹きにて、100質量部に対して、2.5質量部分の水をムラ無く散布する。その後、すぐにビニール袋に回収し、ビニール袋を揉むことにより、砂糖粒と水とをムラ無く混合させる。出来上がった水混合砂糖粒102.5質量部と、液状シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名:KE−1353A、B)100質量部をプラネタリーミキサーに入れ、15分撹拌して混練し、これによって混合物を得た。次いで、前記内径φ35の金型にて、下端駒の保持穴と上端駒の保持穴とで、作製したφ17のSUM22製軸体をキャビティの中央に保持した後、金型を組み立て、下端駒のスプルーから、前記混合物を、ベントから液溜り部に流出し始めるまで、前記混合物を注入した。次いで、金型の外部から、120℃に加熱して、同温度で30分間保持し、前記混合物を加熱成形した。加熱成形後、金型を放冷して成形品を金型から取り出し、スプルー及びベントの部分のゴムが付着している部分を切断除去して、管状の成形体を作製した。
【0042】
この管状の成形体を厚さ10mmにカットし、常温の流水にて揉み解した後、水をはった超音波振動器(株式会社エスエヌディ製 超音波振動器 製品名:US−1)に浸漬し、38kHzで1時間超音波振動させ成形体に含まれている砂糖を溶出した。
水から成形体を引き上げて乾燥すると、シリコーンゴムスポンジを得ることができた。
製造した各シリコーン発泡ローラにおける連泡率、平均セル径、アスカーC硬度を前記方法に基づいて測定した結果を第1表に示す。なお、比較例2においては、スポンジに形成することができなかったのでデータを取得することができなかった。
(実施例8、比較例5)
この管状のシリコーンゴムスポンジに形成された中心孔にシリコーン系接着剤(信越化学工業株式会社製 シリコーン系接着剤 品名:KE−1880)を付着させた無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(直径18mm×長さ350mm、SUM22)軸体を挿入して、200℃で1時間、ギアーオーブンで加熱処理し、ついで常温にて1時間以上放置した後、両端の多孔質成形体をカットし、円筒研削機で外径をφ30に研削して、軸線長さが300mmの所謂「ストレート形状」の多孔質成形体を備えて成るローラを作製した。このローラ多孔質成形体の平均セル径と連泡率、アスカーC硬度、耐久試験結果を表1に記す。
【0043】
比較例5においては、砂糖が完全に溶解することができなかったので、試験中にスポンジが破損してしまい、データをとることができなかった。
(耐久性試験)
このようにして製造された各弾性ローラ及び
図1に示された耐久性試験装置70を用いて、各弾性ローラの耐久性試験を実施して硬度の低下状況を評価した。具体的には、この耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた保温材73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを用いた。
【0044】
製造した各弾性ローラを、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、
図6に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ(
図6において「弾性ローラ76」)を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において弾性ローラ76における発泡弾性層が内部に3mm凹陥するように弾性ローラ76を固定した(すなわち、弾性ローラ76の半径と加熱ローラ71との半径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。次いで、内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度180rpmで450時間にわたって回転駆動させた。回転開始後から450時間まで50時間毎に弾性ローラを耐久性試験装置70から取り外して前記のようにしてアスカーC硬度を測定した。なお、アスカーC硬度の測定箇所は、軸線方向に3箇所、周方向に4箇所とし、具体的には、軸線方向の3箇所は発泡弾性体の両端部から中央に向かって30mmの部分及び軸線方向の中央部分とし、周方向の4箇所は軸線方向の3箇所それぞれにおいて中心角が90°となる周方向に等間隔な4箇所とした。
なお、この耐久試験の結果として、硬度低下量が3°以下をOKとする。
【0045】
【表1】