(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113710
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】水中ポンプ付き消防ポンプ車
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-265941(P2014-265941)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-123562(P2016-123562A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年7月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391043240
【氏名又は名称】日本機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】武内 幸一
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−505701(JP,A)
【文献】
特開2009−285424(JP,A)
【文献】
特開平07−185031(JP,A)
【文献】
特開平09−038234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消防ポンプ車であって、該消防ポンプ車に搭載されたまま、水中に投入された給水管から取水して送水する消防ポンプ(3)と、水中に設置して取水して送水する油圧式水中ポンプ(5)と、該油圧式水中ポンプに加圧されたオイルを送り駆動させる油圧ポンプ(4)とを搭載し、火災の規模に対応して消火に必要とされる水量、及び前記必要水量が得られる水源までの距離、水面までの高度差等消火用水源の状況に基づいて、前記消防ポンプ(3)又は油圧式水中ポンプ(5)を駆動させる油圧ポンプ(4)のいずれか一方を選択し、車両走行用エンジン(2)のフルパワーPTO(2a)へ切替接続する切替接続機構を備えてなることを特徴とする水中ポンプ付き消防ポンプ車。
【請求項2】
前記消防ポンプ(3)と、油圧ポンプ(4)との車両走行用エンジン(2)のフルパワーPTO(2a)への切替接続機構が、前記フルパワーPTO(2a)に接続されたドライブシャフト(7a)の先端に設けられた主歯車(6a)と、該主歯車(6a)に噛み合って回転する2つの従歯車(6b、6c)とを有し、その一方の従歯車(6b)の回転軸(7c)にクラッチ(8)等の動力伝達機構によって断接可能に前記消防ポンプ(3)が接続され、他方の従歯車(6c)の回転軸(7d)にアンロードバルブ(13)を備えた油圧ポンプ(4)が接続されてなり、前記クラッチ(8)等の動力伝達機構による前記消防ポンプ(3)の駆動と、アンロードバルブ(13)の開閉による油圧式水中ポンプ(5)の油圧モータ(14)への加圧オイルの供給による駆動とが、切替制御可能にしてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の水中ポンプ付き消防ポンプ車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中ポンプ付き消防ポンプ車(1)の車両走行用エンジン(2)のサイドPTO(2b)に接続されたドライブシャフト(7b)に別途小型の油圧ポンプ(4’)を接続し、該小型油圧ポンプ(4’)によって前記油圧式水中ポンプ(5)を駆動し、該油圧式水中ポンプ(5)が取り込んだ水を前記消防ポンプ(3)の吸水口(3i)に取り入れ、該消防ポンプ(3)の駆動によって加圧して遠距離送水を可能にしてなることを特徴とする水中ポンプ付き消防ポンプ車。
【請求項4】
油圧式水中ポンプ(5)が、フロート(5a)を有してなり、該油圧式水中ポンプが水源の水面近傍に浮遊して取水可能にしてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中ポンプ付き消防ポンプ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防ポンプ車に係り、
該消防ポンプ車に搭載されたまま、水中に投入された給水管から取水して送水する消防ポンプと、油圧式水中ポンプと、該油圧式水中ポンプに加圧されたオイルを送り駆動させる油圧ポンプとを搭載し、火災の規模に対応して、
前記消防ポンプ又は油圧式水中ポンプのいずれかを選択し、車両走行用エンジンの駆動によって取水可能にしてなる水中ポンプ付き消防ポンプ車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の消防ポンプ車に搭載された
まま、水中に投入された給水管から取水して送水する消防ポンプでの吸水可能な水源までの距離は10m程度、吸水可能な水面までの高度差も理論的に7m程度であり、消火栓や消火用水槽等が整備された場所での消火活動には支障は出ないが、大規模災害によって大火災が発生した場合には消火に要する大量の水をこれら消火栓や消火用水槽のみから得ることは困難になり、水源を大量の水が得られる河川や海岸、湖等に求めざるを得ないこととなる。しかし、この場合、従来の消防ポンプ車の吸水可能距離、吸水可能高度差で対応できる場所は少ない。
この問題の解決策として水中ポンプを用いて水を押し上げることによって前記消防ポンプ車の吸水可能な距離、及び吸水可能高度差を大幅に超えて取水できる消防装置の発明がいくつか開示されている。
例えば、特許文献1には、「エンジンを格納したベースユニットと、該ベースユニットから独立して任意の場所に搬送自在にすると共に前記エンジンの動力エネルギーによって遠隔駆動される水中ポンプと、該水中ポンプの吐出側に連結される放水ホースとから構成した消防装置。(請求項1)」が開示され、「水中ポンプから直接消防ホースに送水するようにすることにより、水中ポンプの出力の大きさに応じて数百m〜数kmの長距離でも途中にポンプ車等を中継することなく送水可能になる。(段落0006)」とし、「また、取水源の水面とベースユニットを置く陸地との高度差が約10mを超えるような高さになっても容易に送水が可能になる。(段落0007)」とその効果が記載されている。
そして、「少なくとも前記ベースユニットと前記水中ポンプとを移動車に積卸し可能に搭載した請求項1に記載の消防装置。(請求項3)」とし、移動車として、段落0015に「
図2は、数kmの遠距離送水を可能にするものとして、消防機器をトレーラTに搭載する場合を示す。このトレーラTは、内部を仕切壁20によって左右に区分し、そのうちの一方をホース格納庫21にして、例えば総延長3km相当の複数本の放水ホース12を収納するようにし、また反対側の空間にベースユニット1や水中ポンプ9を格納し、さらにその前方側に工具類の格納庫22を形成するようにしている。」と記載されており、かなり大型のトレーラが必要になることを示唆している。
【0003】
また、特許文献2には、「動力源と、この動力源によって駆動され、吸水口から吸水した水を吐水口へ吐水する水中ポンプと、この水中ポンプの吐水口と消防ポンプとを接続する送水管と、を備えることを特徴とする消防ポンプの吸水長、吸水高延長方法および装置(請求項4)」が、開示されている。
そして、この装置の一実施例は、消防ポンプ車のエンジンによって駆動されるオイルポンプと、該オイルポンプによって駆動される動力源としての発電機と、発電機で発電した電力を水中ポンプに供給して水中ポンプ駆動する操作盤とケーブル、及び前記水中ポンプと消防ポンプを接続する送水管によって構成されている(明細書段落「0013」及び
図1参照)。
また他の実施例として、動力源としての前記オイルポンプに、オイルタンクと、油圧操作盤を備え、該操作盤には油圧取出口、油圧戻し口が設けられており、前記油圧取出口および油圧戻し口と水中ポンプとが耐圧ホースで接続され、消防ポンプ車のエンジンによってオイルポンプを駆動すると、オイルポンプによってオイルタンクから圧送されるオイルが耐圧ホースを介して水中ポンプに送られた後耐圧ホースを介してオイルタンクに戻され、このオイルの循環によって水中ポンプが作動する構成のものが示されている(明細書「0027」及び
図7参照)。
いずれにせよ水中ポンプの動力源は消防ポンプ車のエンジンであり、また消防ポンプも消防ポンプ車のエンジンで駆動されている(
図1、
図7参照)。したがって、水中ポンプを駆動する専用のエンジンが搭載されていない分車両が小型軽量に構成でき、機動性に富んだ水中ポンプ付き消防ポンプ車となるが、消防ポンプ車のエンジン出力が、消防ポンプと、水中ポンプを駆動する油圧ポンプとに分配供給されるため水中ポンプの回転数が低く抑えられ取水水圧が特許文献1の発明より低下し、取水可能な水面までの高度差が20m程度までとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−185031号公報
【特許文献2】特開平9−38234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の消防装置は、水中ポンプを駆動させるための専用エンジンを格納したベースユニットを水中ポンプを投入した水面に近い陸上に載置して使用されるものであって、少なくとも前記ベースユニットと前記水中ポンプとは取水場所に移動させなければならず、移動車に積卸し可能に搭載されている。したがって移動車のエンジンは走行時にのみ使用され、従来の消防ポンプ車のように消火活動には寄与しておらず、さらに前記のように移動車としてのトレーラの内部を仕切壁によって左右に区分し、そのうちの一方を例えば総延長3km相当の複数本の放水ホースを収納するホース格納庫にし、また反対側の空間にベースユニッや水中ポンプ等を格納するとすれば、移動車であるトレーラの重量、形状とも大きくなり、トレーラ走行用エンジンの出力も大きくせざるを得なくなる。
この特許文献1の消防装置は、「海水利用型消防水利システム」(帝国繊維株式会社製)として実用されており、その資料によれば最高50mの落差のある水源からの取水ができ、口径150mmの送水ホースによって1800mを超える距離の送水が可能とされている。そしてホース格納庫を備えることによってトレーラが大型化するのを避け、また「例えば総延長3km」と記載された長い距離のホースの敷設を機動的に行おうとすることもあってか、前記油圧式水中ポンプを搭載した送水車と、1800mを超える遠距離に送水する150mmの大口径ホースを搭載し、かつ前記大口径ホースを回収する回収装置を装備したコンテナ式ホース延長車との2台1セット構成で運用するものとされている。
このため、この消防設備は、大災害、大火災発生時の備えとしては有効であるが、通常の火災時における運用には適さず、活動機会が少ないという問題がある。
また、特許文献2の発明にあっては、水中ポンプを駆動する動力を、消防ポンプ車のエンジンで駆動するオイルポンプ、又は該オイルポンプで駆動する発電機から得ており、特許文献1に記載の発明の装置を積載した移動車より軽量小型にできるが、車両走行用エンジンの出力を消防ポンプと水中ポンプの駆動に分配利用するので、水中ポンプの出力は専用エンジンを備えた特許文献1の消防装置に比べて小さくなり、その分水中ポンプで取水できる水面までの高さは20m程度に留まり、利用可能水源の範囲が狭まることになる。しかし、水中ポンプからの取水を消防ポンプで加圧して送水するので、より長い距離の送水が可能になるが、長距離送水ホースの扱いについては特許文献1と同様な工夫が必要となる。
したがって特許文献2の発明も、特許文献1の発明と同様に、大災害、大火災発生時の備えとしては有効であるが、通常の火災時における運用には適さず、活動機会が少ないという問題がある。
本発明は、これら上記周辺技術の問題に鑑みてなされたもので、通常の火災から大災害時の火災までその火災規模に適合する消火用水の必要量の水が得られる水源までの距離、水面までの高度差等の水源状況に基づいて対応できる消防ポンプ車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を下記の手段により解決した。
(1)消防ポンプ車であって、
該消防ポンプ車に搭載されたまま、水中に投入された給水管から取水して送水する消防ポンプ(3)と、水中に設置して取水して送水する油圧式水中ポンプ(5)と、該油圧式水中ポンプに加圧されたオイルを送り駆動させる油圧ポンプ(4)とを搭載し、火災の規模に対応して消火に必要とされる水量、及び前記必要水量が得られる水源までの距離、水面までの高度差等消火用水源の状況に基づいて、前
記消防ポンプ(3)又は油圧式水中ポンプ(5)を駆動させる油圧ポンプ(4)のいずれか一方を選択し、車両走行用エンジン(2)のフルパワーPTO(2a)へ切替接続する切替接続機構を備えてなることを特徴とする水中ポンプ付き消防ポンプ車。
(2)
前記消防ポンプと、油圧ポンプとの車両走行用エンジンのフルパワーPTOへの切替接続機構が、前記フルパワーPTOに接続されたドライブシャフトの先端に設けられた主歯車と、該主歯車に噛み合って回転する2つの従歯車とを有し、その一方の従歯車の回転軸にクラッチ等の動力伝達機構によって断接可能に
前記消防ポンプが接続され、他方の従歯車の回転軸にアンロードバルブを備えた油圧ポンプが接続されてなり、前記クラッチ等の動力伝達機構による
前記消防ポンプの駆動と、アンロードバルブの開閉による油圧式水中ポンプの油圧モータへの加圧オイルの供給による駆動とが、切替制御可能にしてなるものであることを特徴とする(1)に記載の水中ポンプ付き消防ポンプ車。
(3)前記(1)又は(2)に記載の水中ポンプ付き消防ポンプ車の車両走行用エンジンのサイドPTOに接続されたドライブシャフトに別途小型の油圧ポンプを接続し、該小型油圧ポンプによって前記油圧式水中ポンプを駆動し、該油圧式水中ポンプが取り込んだ水を前
記消防ポンプの吸水口に取り入れ、
該消防ポンプの駆動によって加圧して遠距離送水を可能にしてなることを特徴とする水中ポンプ付き消防ポンプ車。
(4)油圧式水中ポンプが、フロートを有してなり、該油圧式水中ポンプが水源の水面近傍に浮遊して取水可能にしてなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の水中ポンプ付き消防ポンプ車。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車によって下記の効果が発揮できる。
〈1〉本発明の消防ポンプ車が、
該消防ポンプ車に搭載されたまま、水中に投入された給水管から取水して送水する消防ポンプと、水中に設置して取水して送水する油圧式水中ポンプと、該油圧式水中ポンプに加圧されたオイルを送り駆動させる油圧ポンプとを搭載し、火災の規模に対応して消火に必要とされる水量、及び前記必要水量が得られる水源までの距離、水面までの高度差等消火用水源の状況に基づいて、前
記消防ポンプ又は油圧式水中ポンプを駆動させる油圧ポンプのいずれか一方を選択し、車両走行用エンジンのフルパワーPTOへ切替接続する切替接続機構を備えているので、
1台の消防ポンプ車によって消火栓や消火水槽からの取水によって消火可能な規模の火災においては、
前記消防ポンプを駆動しての消火ができ、大規模災害による大規模火災時には、油圧式水中ポンプの駆動によって大量の水を取水し、大口径(例えば口径150mm)ホースによって高い水圧のまま遠距離送水でき、火災現場で複数
の消防ポンプ車に分水しての消火も可能になる。
また、油圧水中ポンプを駆動する油圧ポンプも、車両走行用エンジンで駆動できるので、油圧ポンプ専用のエンジンを搭載する必要がなく、車両の小型化と軽量化が図られ、消火に必要な水源までの距離、及び水面までの高度差等の水源条件を心配することなく出動でき、消火に当たれる消防ポンプ車が提供できる。
〈2〉
前記消防ポンプと、油圧ポンプとの車両走行用エンジンのフルパワーPTOへの切替接続機構が、前記フルパワーPTOに接続されたドライブシャフトの先端に設けられた主歯車と、該主歯車に噛み合って回転する2つの従歯車とを有し、その一方の従歯車の回転軸にクラッチ等の動力伝達機構によって断接可能に
前記消防ポンプが接続され、他方の従歯車の回転軸にアンロードバルブを備えた油圧ポンプが接続されてなり、前記クラッチ等の動力伝達機構による
前記消防ポンプの駆動と、アンロードバルブの開閉による油圧式水中ポンプの油圧モータへの加圧オイルの供給による駆動とが、切替制御可能にしてなるので、
選択駆動される
前記消防ポンプ又は油圧ポンプのいずれか一方には車両走行用エンジンのフルパワーが伝達され、高い圧力での消防が可能となる。
また、
前記消防ポンプと油圧ポンプとの切替がクラッチ等の動力伝達機構とアンロードバルブの開閉操作によって容易に行え、消火活動のしやすい水中ポンプ付き消防ポンプ車が提供できる。
【0008】
〈3〉前記〈1〉又は〈2〉の効果に加えて、本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車が、その車両走行用エンジンのサイドPTOに接続されたドライブシャフトに別途小型の油圧ポンプを接続してなり、該小型油圧ポンプによって前記油圧式水中ポンプを駆動し、該油圧式水中ポンプが取り込んだ水を前
記消防ポンプの吸水口に取り入れ、
該消防ポンプの駆動によって加圧して遠距離送水を可能にしているので、
小型油圧ポンプには車両走行用エンジンのフルパワーは伝達されず水中ポンプの回転数が上がらず可能吸水高さは20m程度となるが、油圧式水中ポンプからの送水を
前記消防ポンプで加圧することから、大量の水をより遠距離の火災現場ま水圧を落とすことなく送水でき、複数の消防ポンプ車に分配供給しての消火活動が実施できる。
〈4〉油圧式水中ポンプが、フロートを有してなり、該油圧式水中ポンプが水源の水面近傍に浮遊して取水可能となっているので、
海水面の干満等水源の水面変動によって取水量が変化する心配がなく、大規模火災の消火活動に必要な大量の水を安定して確保し、遠距離送水ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車の構成概念図
【
図2】本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車の動力伝達機構の説明図
【
図3】車両用エンジンのサイドPTOに接続した小型油圧ポンプ使用時の動力伝達機構の説明図
【
図4】車両走行用エンジンによって消防ポンプのみを駆動して消火する場合の概念図
【
図5】車両走行用エンジンによって油圧ポンプのみを駆動して消火する場合の概念図
【
図6】車両走行用エンジンによって消防ポンプとサイドPTO接続の小型油圧ポンプとを駆動して消火する場合の概念図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車を実施するための形態を実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車の構成概念図、
図2は本発明の水中ポンプを付き消防ポンプ車の動力伝達機構の説明図、
図3は車両用エンジンのサイドPTOに接続した小型油圧ポンプ使用時の動力伝達機構の説明図であり、
図4は車両走行用エンジンによって消防ポンプのみを駆動して消火する場合の概念図、
図5は車両走行用エンジンによって油圧ポンプのみを駆動して消火する場合の概念図、
図6は車両走行用エンジンによって消防ポンプとサイドPTO接続の小型油圧ポンプとを駆動して消火する場合の概念図である。
図において1は水中ポンプ付き消防ポンプ車、2は車両走行用エンジン、2aはフルパワーPTO、2bはサイドPTO、3は従来型の消防ポンプ、3iは吸水口、3oは吐出口、4は油圧ポンプ、4’は小型油圧ポンプ、4a、4a’は送油ホース取付口、5は油圧式水中ポンプ、5aはフロート、6はギヤケース、6aは主歯車、6b、6cは従歯車、7a、7bはドライブシャフト、7c、7dは従歯車の回転軸、8はクラッチ、9は吸水管、9aはストレーナ、10は放水ホース、11は耐圧送油ホース、12は耐圧送油ホース収納用リール、13はアンロードバルブ、14は油圧モータ、15は送水ポンプ、16はオイルタンク、17は分水器を示す。
【0011】
本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車は、
図1〜
図3に示すように、消防ポンプ車に搭載されたまま、水中に投入された給水管から取水して送水する消防ポンプ3(以下従来型の消防ポンプという)と、水中に設置して取水して送水する油圧式水中ポンプ5と、該油圧式水中ポンプに加圧されたオイルを送り駆動させる油圧ポンプ4とを搭載し、火災の規模に対応して消火に必要とされる水量、及び前記必要水量が得られる水源までの距離、水面までの高度差等消火用水源の状況に基づいて、前記従来型の消防ポンプ3又は油圧式水中ポンプ5を駆動させる油圧ポンプ4のいずれか一方を選択し、車両走行用エンジン2のフルパワーPTO2aへ切替接続する切替接続機構備えている。
そして、従来型の消防ポンプ3と、油圧ポンプ4との車両走行用エンジン2のフルパワーPTO2aへの切替接続機構が、前記フルパワーPTO2aに接続されたドライブシャフト7aの先端に設けられた主歯車6aと、該主歯車6aに噛み合って回転する2つの従歯車6b、6cとを有し、その一方の従歯車6bの回転軸7cにクラッチ8等の動力伝達機構によって断接可能に従来型の消防ポンプ3が接続され、他方の従歯車6cの回転軸7dにアンロードバルブ14を備えた油圧ポンプ4が接続されてなり、前記クラッチ8等の動力伝達機構による従来型の消防ポンプ3の駆動と、アンロードバルブ13の開閉による油圧式水中ポンプ5の油圧モータ14への加圧オイルの供給による駆動とを切替制御可能にしている(
図2参照)。
また、この切替接続機構が、油圧ポンプ4においても従来型の消防ポンプ3と同様に、従歯車6cの回転軸
7dに電磁クラッチ
8’等の動力伝達機構を介して断接可能にされてなるものであってもよい。
そしてさらに、前記水中ポンプ付き消防ポンプ車1の車両走行用エンジン2のサイドPTO2bに接続されたドライブシャフト7bに別途小型の油圧ポンプ4’を接続し、該小型油圧ポンプ4’によって前記油圧式水中ポンプ5を駆動し、該油圧式水中ポンプ5が取り込んだ水を前記従来型の消防ポンプ3の吸水口3iに取り入れ、該従来型消防ポンプ3の駆動によって加圧して遠距離送水を可能にしてとする構成も備えられている(
図3参照)。この場合従来型の消防ポンプ3と小型油圧ポンプ4’は、それぞれフルパワーPTO2a、サイドPTO2bを介して、車両走行用エンジン2で同時に駆動されることになる。
なお、本水中ポンプ付き消防ポンプ車1には、フルパワーTPO2aに接続される油圧ポンプ4とサイドTPO2bに接続される小型油圧ポンプ4’とが備えられていることから、これら油圧ポンプ4、4’が水中ポンプ5の油圧モータ14に加圧オイルを循環させて送水ポンプ15を駆動させるための耐圧送油ホース11を巻取るリール12、及びオイルタンク16とが搭載されている(
図1参照)。
そして油圧式水中ポンプ5には、フロート5aが設けられ、該油圧式水中ポンプ5が水源の水面近傍に浮遊して取水可能にされている。
【0012】
本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車1は、前述のように、
A.車両走行用エンジン2のフルパワーPTO2aに従来型の消防ポンプ3を接続して消防ポンプの吸引力によって取水しての消火活動と、
B.車両走行用エンジン2のフルパワーPTO2aに油圧ポンプ4を接続して油圧式水中ポンプ5を駆動し、油圧式水中ポンプ5の揚水力によっての消火活動と、
C.車両走行用エンジン2のサイドPTO2bに小型油圧エンジン4’を接続して油圧式水中ポンプ5を駆動し、かつ前記油圧式水中ポンプ5からの送水を従来型の消防ポンプ3の吸水口3iに取り入れ、前記従来型の消防ポンプ3の駆動によって加圧して吐水口3oから放水ホースに送り出しての消火活動とが、
火災の規模とその消火に必要な水量、そして必要水量が得られる水源までの距離、水面までの高度差等の水源状況を勘案して選択使用できる。
以下上記3つの消火活動について、
図4〜6に基づいて詳細に説明する。なお、各図において搭載機器のうち説明する消火活動で使用されないものを点線で表示している。
【0013】
図4は上記Aに示した消火活動における機器使用状態を示したもので、従来型の消防ポンプ車と同様な構成が採られている。即ち車両走行用エンジン2のフルパワーPTO2aに接続されたドライブシャフト7aの先端に設けられた主歯車6aに噛み合って回転する従歯車6bの回転軸7cに電磁クラッチ8等の動力伝達機構を介して従来型の消防ポンプ3が接続され、前記車両走行用エンジン2の駆動によって、従来型の消防ポンプ3が回転し、その吸引力によって水中に投入された給水管9先端のストレーナー9aから取水し、放水ホース10の先端に取り付けられたノズル(図示せず)から火災現場に放水して消火するものである。
なお、前記主歯車6aに噛み合った従歯車6cの回転軸7dに接続された油圧ポンプ4も同時に回転するが、油圧ポンプ4に設けられたアンロードバルブ13が開かれ、油圧ポンプ4から圧送されるオイルは、このアンロードバルブ13を介してオイルタンク16へ還流されるので油圧式水中ポンプ5に達することはなく、油圧式水中ポンプ5が駆動することはない。
この方法では、従来の消防ポンプ車と同様、水面までの高さが3m程度の水源から水を汲み上げ、毎分2800リットル(A1型)又は毎秒2000リットル(A2型)の水を0.85MPaの水圧で放水ホース10に供給できる放水性能が得られ、火災現場の近くに消火栓や、消防用水槽のある場所においての小規模な火災には迅速、的確に対応することができる。
【0014】
図5は上記Bに示した消火活動における機器使用状態を示したもので、車両走行用エンジン2のフルパワーPTO2aに接続されたドライブシャフト7aの先端に設けられた主歯車6aに噛み合って回転する従歯車6cの回転軸7dに油圧ポンプ4が接続され、前記車両走行用エンジン2の駆動によって、油圧ポンプ4が回転し、その吸引力によってオイルタンク16から汲み上げられたオイルを、耐圧給油ホース11を介して油圧式水中ポンプ5の油圧モータ14に送り、またオイルタンク16に還流させるオイルの循環機構によって油圧モータ14を回転させ、水中ポンプ5の送水ポンプ15を駆動して取水し、放水ホース10によって火災現場に送水して、消火に利用するものである。
なおこの際、従来型の消防ポンプ3は電磁クラッチ8等の動力伝達機構によって従歯車6bの回転軸7cと従来型の消防ポンプ3との接続が断たれているので、従来型の消防ポンプ3が駆動することはない。
この方法では水面までの高低差が最高50mまでの水源から毎分3500リットルの大量な水が取水でき1MPaの水圧で送水し消火に使用できる。したがって、大規模な火災で大量の消火用水を必要とし、必要量の水源が得られる河川、海岸、湖水等が火災現場近くに得られない場合でも、数km離れた場所から送水でき、火災現場で複数台の消防車に分水器17によって分水して消火に当たることも可能となる。
また、本水中ポンプ付き消防ポンプ車1においては、その設置位置と水源の水面との間に最高50mまでの高度差あっても取水できることから、潮位の変動がある海岸でも長時間にわたって安定して必要量の取水が可能で、大規模火災消火に適切に対応できる。
【0015】
図6は上記Cに示した消火活動における機器使用状態を示したもので、車両走行用エンジン2のサイドPTO2bに小型油圧エンジン4’を接続して油圧式水中ポンプ5を駆動し、かつ前記油圧式水中ポンプ5からの送水を従来型の消防ポンプ3の吸水口3iに取り入れ、前記従来型の消防ポンプ3の駆動によって加圧して吐水口3oから放水ホース10に送り出しての消火活動を行うものである。そして油圧式水中ポンプ5は前記フルパワーPTO2aに接続された油圧ポンプ4と共用できるよう油圧ポンプ4と小型油圧ポンプとの双方に送油ホース取付口4a、4a’を設けている。
この方法では、車両走行用エンジン2の出力が、フルパワーPTO2aに接続された従来型の消防ポンプ3の駆動と、サイドPTO2bに接続された小型油圧ポンプ4’の駆動とに分散使用されるため、小型油圧ポンプの回転数が上がらず取水圧力が落ちるが、20m程度の高度差の水面からの水の汲み上げは可能であり、これを従来型の消防ポンプ3によって加圧するので、毎分4000リットルの大量の水を、水圧1.2MPaで送水して消火に使用できる。
したがって、前記フルパワーPTO2aに接続された油圧ポンプ4の駆動による消火に比べてその水の汲み上げ可能な高度差は小さくなるものの、送水量、送水圧力が大きく取れるので、大規模な火災で大量の消火用水を必要とし、必要量の水源が得られる河川、海岸、湖水等が火災現場近くに得られない場合でも、揚水差20m以下の水源が得られるならばより遠距離の送水や、火災現場でのより多い台数の消防車に分水器17によって分水して消火に当たることが可能となり、大規模火災の延焼防止や早期鎮火への貢献が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の水中ポンプ付き消防ポンプ車1は、大規模災害による大火災時に備えるものとして、大火災時の運用に適合した装置構成、及び使用方法を中心に説明してきたが、水中ポンプ4、4’によって高度差50m以下、又は20m以下の水面から取水でき
るので、水害による地下街等への浸水被害の復旧対策としての排水活動にも使用できる。
【符号の説明】
【0017】
1:水中ポンプ付き消防ポンプ車
2:エンジン
2a:フルパワーPTO
2b:サイドPTO
3:消防ポンプ
3i:吸水口
3o:吐出口
4:大型油圧ポンプ
4’:小型油圧ポンプ
4a、4a’:送油ホース取付口
5:水中ポンプ
5a:フロート
6:ギヤケース
6a、6b、6c:歯車
7a、7b:ドライブシャフト
7c、7d:従歯車の回転軸
8、8’:クラッチ
9:吸水管
9a:ストレーナ
10:放水ホース
11:耐圧送油ホース
12:耐圧送油ホース収納用リール
13:アンロードバルブ
14:油圧モータ
15:送水ポンプ
16:オイルタンク
17:分水器