特許第6113721号(P6113721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113721
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】治療標的及び診断標的
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170403BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170403BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20170403BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61P35/02
   G01N33/574 A
   C12Q1/68 A
【請求項の数】16
【全頁数】79
(21)【出願番号】特願2014-517978(P2014-517978)
(86)(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公表番号】特表2014-527034(P2014-527034A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】IB2012001680
(87)【国際公開番号】WO2013001369
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/502,160
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510034270
【氏名又は名称】オックスフォード ビオトヘラペウトイクス エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ロールフ
(72)【発明者】
【氏名】アラスダイル スタンプス
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0232822(US,A1)
【文献】 BLOOD,1985年,65(4),964-73
【文献】 E. ORTOLAN,FUNCTIONAL ROLE AND PROGNOSTIC SIGNIFICANCE OF CD157 IN OVARIAN CARCINOMA,JOURNAL OF THE NATIONAL CANCER INSTITUTE,2010年 8月 4日,V102 N15,P1160-1177
【文献】 Proc Natl Acad Sci U S A.,1994年,91(12),5325-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/02
C12Q 1/68
G01N 33/574
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性骨髄白血病(AML)の治療又は予防のための医薬組成物であって、BST1に特異的に結合し、かつ抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発する又は補体依存性細胞傷害(CDC)を誘発するモノクローナル抗体又はその機能的断片の治療有効量を含、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、脱フコシル化抗体又は二重特異性抗体である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記機能的抗体断片が、ユニボディ(UniBody(登録商標))、ドメイン抗体又はナノボディである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、治療的部分を含有するか又は該治療的部分に結合する、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療的部分が、細胞傷害性部分又は放射性同位体である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が抗体薬物結合体である、請求項4又は5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、T細胞傷害を誘発する、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、癌細胞のアポトーシスを誘導し、癌幹細胞を死滅させるか若しくは癌幹細胞の数を低減させ、及び/又は循環癌細胞を死滅させるか若しくは循環癌細胞の数を低減させる、前記医薬組成物。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、BST1の生理作用を調節し、BST1へのリガンド結合を阻害し、及び/又はBST1によって媒介されたシグナル伝達経路を阻害する、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
BST1が発現する疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングするインビトロの方法、若しくは該疾患の進行をモニタリングするインビトロの方法、又は該疾患においてBST1が発現する疾患の薬剤若しくは治療の効果をモニタリングするインビトロの方法であって、該疾患を有する対象から得られた生体試料における、BST1若しくはその1以上の断片の存在若しくはレベル、又はBST1をコードする核酸の存在若しくはレベルを検出することを含むか、又は、該レベルの変化を検出することを含み、該疾患が急性骨髄白血病(AML)である、前記インビトロの方法。
【請求項11】
BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在を検出することを含み、(a)健常対象由来の生体試料におけるレベルと比較しての前記対象由来の生体試料における、BST1若しくはその1以上の断片のレベルの上昇、若しくはBST1をコードする核酸のレベルの上昇の存在、又は(b)健常対象由来の生体試料における対応する検出不可能なレベルと比較しての前記対象由来の生体試料における、BST1若しくはその1以上の断片の検出可能なレベル、若しくはBST1をコードする核酸の検出可能なレベルの存在のいずれかが、該対象におけるBST1が発現する前記癌の存在を示す、請求項10に記載のインビトロの方法。
【請求項12】
BST1が発現する疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングするか若しくは該疾患の進行をモニタリングするインビトロの方法、又は、BST1が発現する疾患における薬剤若しくは治療の効果をモニタリングするインビトロの方法であって、該疾患を有する対象から得られた生体試料における、BST1若しくはその1以上の断片に免疫特異的に結合し得る抗体の存在又はレベルを検出することを含み、該疾患が急性骨髄白血病(AML)である、前記インビトロの方法。
【請求項13】
前記BST1若しくはその1以上の断片の存在が、BST1に結合するモノクローナル抗体又はその機能的断片を使用して検出される、請求項10〜12のうちのいずれか一項記載のインビトロの方法。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、請求項2又は3に定義されているとおりである、請求項13記載のインビトロの方法。
【請求項15】
前記モノクローナル抗体又はその機能的断片が、検出可能な標識を含有するか又は該標識に結合する、請求項13又は14記載のインビトロの方法。
【請求項16】
前記対象がヒトである、請求項10〜15のうちのいずれか一項記載のインビトロの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(緒言)
本発明は、癌治療のための治療標的又はかかる癌のマーカーとして有用性を有する、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌及び膵臓癌に関連する膜タンパク質の同定に関する。特に、タンパク質は、治療用抗体を含む親和性試薬に対する生物学的な標的を表すか、又は他の医薬を製造することができる。また、本発明は、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌又は膵臓癌などの癌の治療又は診断におけるかかる親和性試薬の使用にも関する。さらに、本発明は、例えばモノクローナル抗体を使用して、タンパク質の免疫細胞発現を枯渇させて、炎症性疾患を治療することにも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌及び膵臓癌の治療における主な試みは、早期検出率を改善すること、疾患進行を追跡し、再発を確認するのに使用することができる新規非侵襲性標識を発見すること、及び、特に5年生存するのが依然として困難な、より進行した疾患について改良され、かつより毒性の低い治療法を発見することである。癌細胞により特異的である標的、例えば免疫治療剤及び標的化毒素のような期待できる新規アプローチにより攻撃することができるように、腫瘍細胞の表面に発現されるものを同定する大きな必要性が存在する。
【0003】
本発明者らは、BST1が、単球及び顆粒細胞において発現し、これらの双方と関係して、喘息、痛風、クローン病、狼瘡及び糖尿病などの疾患において活性化し得ることを示した。また、単球もアテローム斑の発生に関係する。BST1が、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌又は膵臓癌の細胞膜から生じることについては、過去に報告されておらず、新しい治療価値及び診断価値のあるタンパク質に相当する。
【発明の概要】
【0004】
(発明の概要)
本発明は、正常組織の細胞膜抽出物ではなく、種々の疾患組織、例えば、急性骨髄白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、喘息、痛風、クローン病、狼瘡、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、乾癬、糖尿病及びアテローム性動脈硬化症(以下、「本発明の疾患」と称する。)の細胞膜抽出物におけるADPリボシルシクラーゼ2(以下、BST1と称する。)の検出を開示する。
【0005】
種々の癌におけるBST1の示差的発現によって、かかる癌の親和性試薬、例えば抗体に基づく治療の基礎としてタンパク質が標的とされることが可能になる。したがって、癌に関連するBST1は、特異的にBST1に結合し、治療の基礎としての親和性試薬によって標的とすることが可能な抗体を含む親和性試薬の生成に使用することができる。癌細胞の細胞表面上のタンパク質を標的とする抗体を含む親和性試薬は、種々のメカニズムによる癌の治療に利用することができ、このメカニズムには、(i)補体依存性細胞傷害若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)による溶解、(ii)かかる抗体に結合する薬剤若しくは毒素による溶解、又は、(iii)例えばシグナル経路を介して、癌細胞の増殖を促進する、かかるタンパク質の生理作用の阻害が含まれる。かかる抗体に基づく治療の重要な側面は、組織分布及び発現レベルの観点から、タンパク質標的の正常な発現プロファイルとして、抗体による正常組織上のタンパク質標的化が、正常組織に結合することによって有害な副作用を生じないということである。
【0006】
BST1の完全長ヒト変異体は、配列番号1に示されている。
【0007】
本発明は、BST1と種々の癌との関連性、及びBST1に特異的な抗体の生成を実証する。かかる抗体を使用して、免疫組織化学分析及びフローサイトメトリー解析によるBST1の発現プロファイルを検証し、種々の癌組織の細胞表面に対するBST1の特異的な結合、及び正常組織中のBST1の存在しない状態を通じて、抗体の存在を示す。さらに、かかる抗体は、癌細胞株に結合する細胞表面、癌細胞株への結合時のインターナリゼーション、エクスビボ悪性細胞に結合する生存細胞、及び、重要なことに、毒素のインターナリゼーションによるこれらの癌細胞死滅能によって、細胞溶解性抗癌剤の要件を満たすことが実証された。
【0008】
本発明は、BST1が発現する癌の治療方法又は予防方法を提供し、この方法は、BST1に結合する親和性試薬の治療有効量を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0009】
癌は、本発明の疾患のうちの1つであることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上述した癌の治療又は予防に使用する、BST1に結合する親和性試薬も提供する。
【0011】
さらに、本発明は、上述した癌の治療又は予防のための医薬の製造における、BST1に結合する親和性試薬の使用も提供する。
【0012】
本発明に使用する親和性試薬は、特異的にBST1に結合することが好ましい。
【0013】
親和性試薬は、抗体、例えば、全抗体若しくはその機能的断片又は抗体模倣体であってもよい。好ましい親和性試薬には、抗体、例えばモノクローナル抗体が含まれる。
【0014】
親和性試薬は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、脱フコシル化抗体又は二重特異性抗体であってもよい。
【0015】
機能的抗体断片には、ユニボディ(UniBody(登録商標))、ドメイン抗体又はナノボディが含まれる。
【0016】
抗体模倣体には、アフィボディ、DARPin、アンチカリン、アビマー、バーサボディ又はデュオカリンが含まれる。
【0017】
本発明に使用する親和性試薬は、細胞傷害性部分若しくは放射性同位体などの治療的部分を含有するか又はこの部分に結合することができる。親和性試薬は、抗体薬物結合体又は免疫結合体であってもよい。
【0018】
本発明の方法において、親和性試薬は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発するか、又は補体依存性細胞傷害(CDC)を誘発し得る。親和性試薬は、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、癌幹細胞を死滅させるか若しくは癌幹細胞の数を低減させ、及び/又は循環腫瘍細胞の数を低減させ得る。親和性試薬は、BST1の生理作用を調節することができ、リガンド結合を阻害し、及び/又はシグナル伝達経路を阻害する。
【0019】
他の実施態様において、本発明は、BST1が発現する癌の治療方法又は予防方法を提供し、この方法は、BST1をコードする核酸にハイブリダイズし得るハイブリダイズ剤の治療有効量を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0020】
癌は、本発明の疾患のうちの1つであることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、上述した癌の治療又は予防に使用する、BST1をコードする核酸にハイブリダイズし得るハイブリダイズ剤も提供する。
【0022】
さらに、本発明は、上述した癌の治療又は予防のための医薬の製造における、BST1をコードする核酸にハイブリダイズし得るハイブリダイズ剤の使用も提供する。
【0023】
本発明に使用するハイブリダイズ剤は、BST1をコードする核酸に特異的に結合することが好ましい。
【0024】
本発明に使用する適切なハイブリダイズ剤には、阻害性RNA、低分子干渉RNA (siRNA)、低分子ヘアピンRNA (shRNA)、マイクロRNA (miRNA)、アンチセンス核酸又は相補性DNA (cDNA)、オリゴヌクレオチド(oligonucleotode)及びリボザイムが含まれる。
【0025】
また、本発明は、対象において、BST1が発現する進行性癌を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法、又は、BST1が発現する癌の抗癌剤若しくは治療の効果をモニタリングする方法であって、前述の対象における、BST1若しくはその1以上の断片の存在若しくはレベル、又はBST1をコードする核酸の存在若しくはレベルを検出することを含むか、又は、そのレベルの変化を検出することを含む方法も提供する。
【0026】
かかる方法は、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在を検出することを含んでいてもよく、(a)健常対象のレベルと比較しての対象における、BST1若しくはその1以上の断片のレベルの上昇、若しくはBST1をコードする核酸のレベルの上昇の存在、又は、(b)健常対象において対応する検出不可能なレベルと比較しての対象における、BST1若しくはその1以上の断片の検出可能なレベル、若しくは核酸BST1の検出可能なレベルの存在のいずれかが、前述の対象において、BST1が発現する癌の存在を示す。
【0027】
また、本発明は、対象において、BST1が発現する進行性癌を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法、又は、BST1が発現する癌の抗癌剤若しくは治療の効果をモニタリングする方法であって、BST1若しくはその1以上の断片に免疫特異的に結合し得る抗体の存在又はレベルを検出することを含む方法も提供する。
【0028】
かかる方法において、癌は、本発明の疾患のうちの1つであることが好ましい。
【0029】
本発明による診断方法において、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在、又はBST1若しくはその1以上の断片に免疫特異的に結合し得る抗体の存在若しくはレベルは、対象から得られる生体試料の分析によって検出される。
【0030】
BST1若しくはその1以上の断片の存在は、BST1に結合する親和性試薬を使用して検出することができる。親和性試薬は、上述したいずれかの適切な親和性試薬であってもよい。親和性試薬は、検出可能な標識を含有するか又はこの標識に結合することができる。
【0031】
上述した本発明のいずれかの態様において、対象はヒトであり得る。
【0032】
また、本発明は、BST1が発現する癌の治療又は予防のための物質を同定する方法であって、(a)候補物質を、BST1又はその1以上の断片と接触させることと、(b)物質が、BST1又はその1以上の断片に結合するか否かを判断することとを含む方法も提供する。この方法はまた、BST1又はその1以上の断片に結合して、BST1が発現する癌を抑制するという物質の能力を試験することを更に含んでいてもよい。
【0033】
本発明の態様による方法を用いて同定された物質は、本発明の疾患の治療又は予防のための物質であることが好ましい。
【0034】
かかる方法を用いて同定された物質は、低分子であり、BST1の活性を調節し、BST1に結合するリガンドを低減させ得る。
【0035】
本明細書に説明する本発明の種々の実施態様において、言及され得る特定の癌の種類及び/又は炎症性疾患は、本発明の疾患のうちの1つである。
【0036】
一実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、急性骨髄白血病(AML)である。
【0037】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、乳癌である。
【0038】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、結腸直腸癌である。
【0039】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、腎臓癌である。
【0040】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、頭頸部癌である。
【0041】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、肺癌、例えば、非小細胞肺癌及び/又は小細胞肺癌である。
【0042】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、卵巣癌である。
【0043】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される癌は、膵臓癌である。
【0044】
一実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、喘息である。
【0045】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、痛風である。
【0046】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、クローン病である。
【0047】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、狼瘡である。
【0048】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、多発性硬化症である。
【0049】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、慢性関節リウマチである。
【0050】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、乾癬である。
【0051】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、糖尿病である。
【0052】
別の実施態様において、検出されるか、予防されるか又は治療される炎症性疾患は、アテローム性動脈硬化である。
【0053】
本発明の他の態様は、以下に及び特許請求の範囲に示される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
(図面の簡単な説明)
図1a、1b、1c、1d及び1eは、本発明のタンパク質のアミノ酸配列を示す。LCMSによって試験的に検出されたタンデムペプチドには下線を付している。
【0055】
図2は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列を示す。非小細胞肺癌においてiTRAQによって試験的に検出されたタンデムペプチドには下線を付している。
【0056】
図3a及び3bは、BST1のRNAプロファイリング解析の結果を示す。図3cは、CD33とともに、BST1発現を示す1組の正常組織についての比較RT-PCRプロファイリングの結果を示す。
【0057】
図4aは、AML患者におけるBST1のフローサイトメトリー解析の結果を示す。図4bは、ヒト白血球の部分集合におけるBST1及びCD33のフローサイトメトリー解析の結果を示す。図4cは、A549及びH226細胞におけるBST1のフローサイトメトリー解析の結果を示す。
【0058】
図5a〜5bは、MabZAPアッセイを用いた、A549及びH226細胞による抗BST1モノクローナル抗体のインターナリゼーションを示す。
【0059】
図6a及び6b。**robin開始。
【発明を実施するための形態】
【0060】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本発明の患者層別の疾患のスクリーニング、診断、予後及び治療のための方法及び組成物、本発明の疾患の治療効果をモニタリングするための方法及び組成物、並びに本発明の疾患を治療する薬剤の開発のための方法及び組成物を提供する。
【0061】
以下に詳細に説明する本発明は、癌、例えば本発明の疾患を治療又は予防するための、対象、例えば哺乳動物対象への治療用組成物の投与を包含する。また、本発明は、特定の治療に最も反応すると考えられる患者を識別する、哺乳動物対象における癌、例えば本発明の疾患の臨床スクリーニング、診断及び予後のための方法及び組成物、癌、例えば本発明の疾患の治療の結果をモニタリングするための方法及び組成物、薬剤のスクリーニング及び薬剤開発のための方法及び組成物も提供する。
【0062】
一態様において、本発明は、癌などの疾患、特に本発明の疾患の治療、スクリーニング、検出及び/又は診断における使用のための、BST1若しくはその断片に特異的に結合し得る物質、又はBST1をコードする核酸にハイブリダイズし得るハイブリダイズ剤、BST1の活性を検出し得る物質を提供する。
【0063】
本発明の別の態様は、BST1若しくはその断片に特異的結合し得る親和性試薬であり、例えば、検出可能な標識を含有するか若しくはこれに結合する、又は細胞傷害性部分などの治療的部分を含有するか又はこの部分に結合する親和性試薬である。親和性試薬は、例えば、抗体であり得る。
【0064】
本発明に使用する親和性試薬は、配列番号13の1以上の部分を含むBST1のエピトープに結合することができる。
【0065】
本発明の別の態様は、BST1若しくはその断片に特異的結合し得る親和性試薬の治療有効量を含む医薬組成物である。
【0066】
別の態様において、本発明は、例えば本発明の疾患の治療又は予防における、BST1ポリペプチド又はその1以上の断片若しくは誘導体の使用を提供する。
【0067】
また、本発明は、例えば本発明の疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、BST1ポリペプチド、その1以上の断片若しくは誘導体の使用も提供する。
【0068】
一態様において、例えば本発明の疾患の治療又は予防のために、BST1ポリペプチド、その1以上の断片若しくは誘導体、又はその1以上の断片若しくは誘導体の治療有効量を投与することを含む、治療方法が提供される。
【0069】
本発明は、対象における例えば本発明の疾患の治療若しくは予防の方法、又は例えば本発明の疾患に対し対象にワクチン接種する方法であって、BST1ポリペプチド及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片の有効量を、例えばワクチンとして対象に投与することを含む方法を更に提供する。
【0070】
哺乳動物対象は、ヒト以外の哺乳動物であってもよいが、一般にヒト、例えばヒト成人、すなわち少なくとも21歳(例えば、少なくとも35歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳又は少なくとも80歳)のヒト対象である。
【0071】
一態様において、対象において免疫応答を誘発し得る組成物であって、BST1ポリペプチド及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片、並びに1以上の適切なアジュバント(適切なアジュバントは後述する。)を含む組成物が提供される。
【0072】
免疫応答を誘発し得る組成物は、例えば、BST1ポリペプチド又はその誘導体及び/又はその1以上の抗原性若しくは免疫原性断片を含むワクチンとして提供することができる。
【0073】
本開示の明確化のために、限定を目的とせずに、本発明は、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織の分析に関して説明される。しかしながら、当業者に認識されるように、後述する分析及び技術は、他の種類の患者試料に適用することができ、この試料には、体液(例えば、血液、尿若しくは唾液)、本発明の疾患のリスクを有する患者由来の組織試料(例えば、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺若しくは膵臓などの生検)又はそのホモジェネートが含まれる。本発明の方法及び組成物は、生存対象のスクリーニング、診断及び予後に特に適するが、例えば、同じ疾患を発生するリスクのある家族構成員を識別するために、対象の死後診断用に使用することもできる。
【0074】
一部の実施態様において、本発明は、抗BST1抗体を調製する方法であって、この方法は、本発明の抗体をコードする1以上の核酸分子を含有した宿主細胞を得る工程と、宿主細胞培地で宿主細胞を増殖させる工程と、1以上の核酸分子が発現する宿主細胞培養条件を提供する工程と、宿主細胞から又は宿主細胞培地から抗体を回収する工程とを含む。
【0075】
本発明の他の態様は、本発明の抗体を作製する方法に関し、この方法は、BST1ペプチドによってヒト免疫グロブリン遺伝子を含む遺伝子組換え動物を免疫する工程と、前述の遺伝子組換え動物からB細胞を回収する工程と、前述のB細胞からハイブリドーマを作製する工程と、BST1に結合する抗体を発現するハイブリドーマを選択する工程と、前述の選択されたハイブリドーマから、BST1に結合する前述の抗体を回収する工程とを含む。
【0076】
他の実施態様において、抗BST1抗体を作製する方法は、
(a) BST1ペプチドによってヒト免疫グロブリン遺伝子を含む遺伝子組換え動物を免疫する工程と、
(b)前述の遺伝子組換え動物のB細胞からmRNAを回収する工程と、
(c)前述のmRNAをcDNAに変換する工程と、
(d)前述のcDNAによってコードされた抗BST1抗体が、前述のファージの表面上に提示されるように、ファージ中の前述のcDNAを発現させる工程と、
(e)抗BST1抗体を提示するファージを選択する工程と、
(f)前述の抗BST1免疫グロブリンをコードする前述の選択されたファージから核酸分子を回収する工程と、
(g)宿主細胞中に、前述の回収された核酸分子を発現させる工程と、
(h) BST1に結合する前述の宿主細胞から抗体を回収する工程と、を含む。
【0077】
本発明の別の態様は、例えば本発明の疾患の治療又は予防における、BST1ポリペプチド又はその1以上の免疫原性断片若しくは誘導体の使用を提供する。
【0078】
別の態様において、本発明は、例えば本発明の疾患を治療する方法であって、この方法は、(a)例えば本発明の疾患の発症若しくは発生を予防するために、(b)例えば本発明の疾患の進行を予防するために、又は、(c)例えば本発明の疾患の症状を寛解するために、例えば本発明の疾患患者において、本発明のタンパク質の発現若しくは生物活性(又はこれらの両方)を調節するか又は補完する(例えば、上方制御するか若しくは下方制御する)、化合物の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0079】
本発明の別の態様によれば、対象において、例えば本発明の疾患の進行を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法若しくはモニタリングする方法、又は、本発明の疾患に対する、例えば抗癌剤若しくは治療の効果をモニタリングする方法であって、BST1若しくはその1以上の断片の存在若しくはレベル、又は、BST1をコードする核酸の存在若しくはレベル、又はBST1の活性の存在若しくはレベルを検出することを含むか、又は、前述の対象において、そのレベルの変化を検出することを含む方法が提供される。
【0080】
本発明の別の態様によれば、候補対象において、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法であって、候補対象において、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在、又はBST1の活性の存在を検出することを含み、(a)健常対象のレベルと比較しての候補対象における、BST1若しくはその1以上の断片のレベルの上昇、若しくはBST1をコードする核酸のレベルの上昇、若しくはBST1活性のレベルの上昇の存在、又は、(b)健常対象において対応する検出不可能なレベルと比較しての候補対象における、BST1若しくはその1以上の断片の検出可能なレベル、若しくはBST1をコードする核酸の検出可能なレベル、若しくはBST1活性の検出可能なレベルの上昇の存在のいずれかが、前述対象において、例えば本発明の疾患の存在を示す方法が提供される。
【0081】
本発明の別の態様によれば、対象において、例えば本発明の疾患の進行をモニタリングする方法、又は、本発明の疾患に対する、例えば抗癌剤若しくは治療の効果をモニタリングする方法であって、最初の時点及び最後の時点での、前述の候補対象における、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又BST1をコードする核酸の存在、又はBST1の活性の存在を含み、前述の最初の時点における対象のレベルと比較しての、最後の時点における対象のBST1若しくはその1以上の断片のレベルの上昇若しくは下降、又はBST1をコードする核酸のレベルの上昇若しくは下降の存在、又はBST1活性のレベルの上昇若しくは下降の存在が、前述の対象における例えば本発明の疾患の進行若しくは退行を示すか、又は、本発明の疾患に対する、例えば抗癌剤若しくは治療の効果若しくは非効果を示す方法が提供される。
【0082】
本発明の別の態様によれば、対象において、例えば本発明の疾患の進行を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法若しくはモニタリングする方法、又は、本発明の疾患に対する、抗癌剤若しくは治療の効果をモニタリングする方法であって、前述の対象において、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の存在若しくはレベルを検出することを含むか、又は、そのレベルの変化を検出することを含む方法が提供される。
【0083】
また、本発明の別の態様によれば、対象において、癌、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングする方法であって、前述の対象において、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の存在を検出することを含み、(a)健常対象のレベルと比較しての前述の対象における、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片のレベルの上昇の存在、又は、(b)健常対象において対応する検出不可能なレベルと比較しての前述の対象における、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の検出可能なレベルの存在が、前述対象において、癌の存在を示す方法も提供される。
【0084】
癌、例えば本発明の疾患を検出、診断及び/又はスクリーニングする具体的な方法の一つは、
生体試料を、試験すべきBST1又はその1以上のエピトープ含有断片と接触させることと、
対象において、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体又はその1以上のエピトープ含有断片の存在を検出すること、とを含む。
【0085】
本発明の別の態様によれば、対象において、癌、例えば本発明の疾患の進行をモニタリングする方法、又は本発明の疾患に対する、抗癌剤又は治療の効果をモニタリングする方法であって、最初の時点及び最後の時点での、前述の対象における、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の存在を検出することを含み、前述の最初の時点における前述の対象のレベルと比較しての、BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片のレベルの上昇若しくは下降の存在が、前述の対象における前述の癌の進行若しくは退行を示すか、又は、前述の抗癌剤若しくは治療の効果若しくは非効果を示す方法が提供される。
【0086】
BST1に免疫特異的に結合し得る抗体若しくはその1以上のエピトープ含有断片の存在は、通常、前述の対象から得られる生体試料の分析により検出される(例示的な生体試料は上述されており、例えば、試料は、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺若しくは膵臓の組織、又はこれら以外に血液若しくは唾液の試料である。)。方法には、通常、前述の対象由来の分析のための前述の生体試料を得ることが含まれる。
【0087】
検出可能な抗体としては、IgA、IgM及びIgG抗体が挙げられる。
【0088】
上述した方法のうちのいずれかにおいて、癌、例えば本発明の疾患に罹患した候補対象において検出可能なレベルは、健常対象のレベルの2倍以上である。
【0089】
本発明の一態様において、例えば本発明の疾患のスクリーニング若しくは診断において、本発明のタンパク質の発現を測定するために、本発明の疾患患者の予後を判断するために、本発明の疾患の治療有効性をモニタリングするために、又は薬剤開発のために、一次元電気泳動又は他の適切な方法を用いて、対象、好ましくは生存対象由来の、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織試料を分析する。
【0090】
本明細書に使用する「本発明のタンパク質」又は「BST1」という用語は、癌組織試料の液体クロマトグラフィー‐質量分析により試験的に検出された、図1に示すタンパク質、並びに、絶対的定量及び相対的定量用同位体標識により試験的に検出された、図2に示すタンパク質を指す。また、この配列のタンパク質誘導体は、本明細書に説明するものと同じ目的において有用であり得る。
【0091】
このタンパク質は、実施例1及び2に記載する好ましい技術の方法及び装置(膜タンパク質抽出物の液体クロマトグラフィー‐質量分析、並びに、絶対的定量及び相対的定量用同位体標識、トリプシン消化)によって、癌患者の癌組織試料の膜タンパク質抽出物において同定されている。ペプチド配列は、SWISS-PROT及びtrEMBLデータベース(www.expasy.comで利用可能な、スイスバイオインフォマティクス研究所(SIB)及びヨーロッパバイオインフォマティクス研究所(EBI)の管理下にある。)と比較され、次のエントリ:Q10588、ADPリボシルシクラーゼ2が同定された。このタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号NM_004334.2でみられ、これは、引用により本明細書中に明示的に組み込まれる。
【0092】
ADPリボシルシクラーゼ2(骨髄間質抗原1 (BST1)又はCD157としても知られている。)は、リボヌクレオチドの環化及び加水分解に触媒する、脂質に係留された二機能性細胞外酵素である。ADPリボシルシクラーゼ2は、カルシウム放出及びタンパク質リン酸化を活性化することが可能なヌクレオチドセカンドメッセンジャー、環状ADPリボース及びADPリボースを発生させる(FEBS Lett. 1994, 356(2-3):244-8)。ADPリボシルシクラーゼ2は、NAD+代謝物質の発生を通じて、パラクリンによりB前駆細胞の増殖を支持することができると考えられている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994, 91:5325-5329; J Biol Chem. 2005, 280:5343-5349)。
【0093】
免疫組織化学試験(実施例3参照)は、非小細胞肺癌において強い染色を示した。
【0094】
RNAプロファイリング及びフローサイトメトリー試験も行われ、急性骨髄白血病(AML)患者の癌細胞が循環されると、高いレベルでBST1が発現することを示した。これらのレベルにおいて、ADCC改変が増強された抗体は、治療上有効となる。
【0095】
BST1は、MabZAPアッセイによって取り込まれることを示し(実施例9参照)、これは、抗体‐薬物結合体(ADC)を示し、治療上有効であった。
【0096】
本発明のタンパク質は、断片、特にエピトープ含有断片、例えばその抗原性若しくは免疫原性断片及びその誘導体として有用である。抗原性若しくは免疫原性断片を含むエピトープ含有断片は、通常、長さ12アミノ酸以上、例えば20アミノ酸以上、例えば50又は100アミノ酸以上である。断片は、完全なタンパク質の長さの95%以上、例えば完全なタンパク質の長さの90%以上、例えば75%又は50%又は25%又は10%以上であってもよい。
【0097】
または、本明細書中において使用され又は言及されるタンパク質/ポリペプチドは、本明細書に具体的に列挙/記載するもの、又は、これらと80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%同一若しくは類似のものに限定され得る。
【0098】
抗原性若しくは免疫原性断片を含むエピトープ含有断片は、患者において関連する免疫応答を誘発することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAは、その断片、例えばその免疫原性断片などの本発明のタンパク質のDNAをコードする断片としても有用である。本発明のタンパク質をコードする核酸(例えば、DNA)の断片は、完全なコード領域の長さの95%以上、例えば完全なコード領域の長さの90%以上、例えば75%又は50%又は25%又は10%以上であってもよい。核酸(例えば、DNA)の断片は、36ヌクレオチド以上、例えば60ヌクレオチド以上、例えば150又は300ヌクレオチド以上の長さであってもよい。
【0099】
本発明のタンパク質の誘導体には、1以上(1〜20、例えば15アミノ酸、又はタンパク質の全長を基準としたアミノ酸の数に対して最大10%又は5%又は1%などの最大20%)の欠失、挿入又は置換がなされた配列上の変異体が含まれる。置換は、通常、保存的置換であり得る。誘導体は、通常、これらが誘導されるタンパク質と同じ生物学的機能を本質的に有する。誘導体は、通常、これらが誘導されるタンパク質と同等の抗原性であるか又は免疫原性である。誘導体は、通常、これらが誘導されるタンパク質の、リガンド結合活性若しくは活性受容体複合体形成能力のいずれか、又は好ましくはこれらの両方を有する。
【0100】
また、タンパク質の誘導体には、例えば精製中に処理される、カルボキシメチル化された、カルボキシアミド化された、アセチル化されたタンパク質などの化学的に処理されたタンパク質も含まれる。
【0101】
BST1において、例えば本発明の疾患を有しない対象由来の組織を分析することで得られた検出レベルに対する、例えば本発明の疾患を有する対象由来の組織を分析することで得られた検出レベルは、使用される具体的な分析プロトコル及び検出方法に依存する。したがって、本発明は、各研究室が、診断技術において従来のように、使用に際しての分析プロトコル及び検出方法に従い、例えば本発明の疾患を有しない対象における参照範囲を確立することを意図する。好ましくは、例えば本発明の疾患を有することが公知の対象由来の少なくとも1つの正の対照の組織試料、又は例えば本発明の疾患でないことが公知の対象由来の少なくとも1つの負の対照の組織試料(より好ましくは、正と負の対照試料の両方)は、分析される試験試料の各バッチに含まれる。
【0102】
BST1は、例えば本発明の疾患の検出、予後、診断若しくはモニタリング、又は薬剤開発に使用することができる。本発明の一実施態様において、対象(例えば、本発明の疾患を有する疑いのある対象)由来の組織は、BST1の検出のために、液体クロマトグラフィー‐質量分析によって分析される。本発明の疾患を有する対象又はこの疾患を有しない対象由来の組織(例えば、対照試料)又は以前に決定された参照範囲に対する、対象由来の組織におけるBST1量の増加は、本発明の疾患の存在を示す。
【0103】
本発明の別の実施態様において、対象(例えば、本発明の疾患を有する疑いのある対象)由来の組織は、BST1の検出における絶対的定量及び相対的定量用同位体標識によって分析される。本発明の疾患を有する対象又はこの疾患を有しない対象由来の組織(例えば、対照試料)又は以前に決定された参照範囲に対する、対象由来の組織におけるBST1量の増加は、本発明の疾患の存在を示す。
【0104】
BST1の断片、エピトープ含有断片、免疫原性断片又は抗原性断片に関して、
関連する癌の適用では、本発明の一態様において、これらは、実施例1及び2のトリプシン断片配列と同定される配列を含む。
【0105】
本明細書に使用するBST1は、実質的に混入タンパク質がない調製物、すなわち、存在するタンパク質全量の10%未満(例えば、1%未満などの5%未満)が混入タンパク質である調製物で存在する場合、「単離」されている。混入タンパク質は、質量スペクトル分析によって決定されるとおり、単離されたBST1の配列と顕著に異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。本明細書に使用する「顕著に異なる」配列は、実施例1及び2で本明細書に記載の参照プロトコルに従って行われる質量スペクトル分析によるBST1からの混入タンパク質の分解を可能とする。
【0106】
したがって、一態様において、本発明は、例えば本発明の疾患の治療のための医薬組成物であって、治療有効量のBST1ポリペプチド(特に上に定義したもの)又はその免疫原性断片と、アジュバントとを含む医薬組成物を提供する。
【0107】
BST1は、当業者に公知の方法によりアッセイすることができ、この方法には、本明細書に記載する好ましい技術、キナーゼアッセイ、酵素アッセイ、結合アッセイ、及び他の機能的アッセイ、イムノアッセイ及びウエスタンブロッティングが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
または、BST1は、イムノアッセイで検出することができる。一実施態様において、イムノアッセイは、BST1が存在する場合に結合(例えば、免疫特異的結合)が起こり得る条件下で、試験すべき対象由来の試料を、抗BST1抗体(又は他の親和性試薬)と接触させること、及び親和性試薬による結合(例えば、免疫特異的結合)の量を検出又は測定することにより、行われる。BST1結合剤は、本明細書に教示する方法及び技術によって製造することができる。具体的な実施態様において、BST1は、免疫組織化学分析を用いて分析される。
【0109】
BST1は、その断片、例えばそのエピトープ含有(例えば、免疫原性又は抗原性)断片の検出特性により、検出することができる。断片は、少なくとも10、より一般的には少なくとも20アミノ酸、例えば少なくとも50又は100アミノ酸、例えば少なくとも150又は200アミノ酸、例えば少なくとも300又は500のアミノ酸、例えば少なくとも700又は900アミノ酸の長さを有し得る。
【0110】
一実施態様において、組織切片における親和性試薬(例えば、抗体)の結合は、異常なBST1局在、又はBST1の異常なレベルを検出するのに使用することができる。特定の実施態様において、BST1に対する抗体(又は他の親和性試薬)は、BST1のレベルについて患者組織(例えば、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓)をアッセイするのに使用することができ、アッセイにおける異常なレベルのBST1は、本発明の疾患を示す。本明細書に使用する「異常なレベル」とは、本発明の疾患を有しない対象におけるレベル、又は参照レベルと比較して増加したレベルを意味する。
【0111】
ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ及びタンパク質Aイムノアッセイなどの方法を用いる競合的及び非競合的アッセイ系を含むが、これらに限定されない、いずれかの適切なイムノアッセイを用いることができる。
【0112】
例えば、BST1は、二段階サンドイッチアッセイによって、流体試料(例えば、血液、尿又は唾液)において検出することができる。第一段階において、捕捉試薬(例えば、抗BST1抗体又は他の親和性試薬)を使用して、BST1を捕捉する。捕捉試薬は、場合により、固相上に固定することができる。第二段階において、直接又は間接的に標識された検出試薬を使用して、捕捉されたBST1を検出する。一実施態様において、検出試薬はレクチンである。本目的のために、BST1と同じコアタンパク質を有する他のアイソフォーム、又は抗体により認識される抗原決定基を共有する他のタンパク質に対してよりもBST1に優先的に結合する、いずれかのレクチンを使用することができる。好適な実施態様において、選択されたレクチンは、BST1と同じコアタンパク質を有する他のアイソフォーム、又は親和性試薬により認識される抗原決定基を共有する前述の他のタンパク質に対してよりも、少なくとも2倍大きな親和性、より好ましくは少なくとも5倍大きな親和性、更により好ましくは少なくとも10倍大きな親和性で、BST1に結合する。本記載に基づいて、BST1を検出することに適したレクチンは、当該技術分野で周知の方法によって容易に同定することができ、例えば、Gabius H-J及びGabius S (編), 1993,「レクチン及び糖鎖生物学(Lectins and Glycobiology)」の158-174頁におけるSumarらによる「疾患関連糖形態の指標としてのレクチン(Lectins as Indicators of Disease-Associated Glycoforms)」の158〜159頁の表Iに列挙されている1以上のレクチン(引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)を試験することができる。代替的実施態様において、検出試薬は抗体(又は他の親和性試薬)であり、例えば、他の翻訳後修飾を特異的に(例えば、免疫特異的に)検出する抗体、例えばリン酸化されたアミノ酸に免疫特異的に結合する抗体である。かかる抗体の例としては、ホスホチロシンに結合する抗体(BD Transduction Laboratories社、カタログ番号:P11230-050/P11230-150; P11120; P38820; P39020)、ホスホセリンに結合する抗体(Zymed Laboratories社(South San Francisco, CA)製, カタログ番号61-8100)、及びホスホスレオニンに結合する抗体(Zymed Laboratories社、South San Francisco, CA, カタログ番号71-8200, 13-9200)に結合する抗体が挙げられる。
【0113】
必要に応じて、BST1をコードする遺伝子、関連する遺伝子、又は相補配列を含む関連する核酸配列若しくはサブ配列もハイブリダイゼーションアッセイに使用することができる。BST1をコードするヌクレオチド、又は少なくとも8ヌクレオチド、好ましくは少なくとも12ヌクレオチド及び最も好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを含むそのサブ配列は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。BST1をコードする遺伝子の異所性発現に関連する状態、障害若しくは症状の検出、予後、診断若しくはモニタリングのために、又は、例えば本発明の疾患で示唆的徴候又は症状を有する対象の鑑別診断のために、ハイブリダイゼーションアッセイを用いることができる。特に、かかるハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含有する対象の試料を、BST1をコードするDNA若しくはRNAにハイブリダイズし得る核酸プローブと、ハイブリダイゼーションが起こり得る条件下で接触させること、及びその結果生じたハイブリダイゼーションのすべてを検出若しくは測定すること、を含む方法により行うことができる。
【0114】
したがって、BST1をコードする核酸(例えばDNA、又はより好適にはRNA)は、例えば、BST1をコードする核酸を検出し得るハイブリダイズ剤を使用して検出することができる。
【0115】
かかる例示的な方法の一つは、
BST1をコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続ヌクレオチドを含む1以上のオリゴヌクレオチドプローブを、対象由来の生体試料から得られるRNAと、又はRNAから複製したcDNAと接触させることであって、存在する場合、プローブのヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションを許容する条件下で起こる、前述の接触させることと、
プローブとヌクレオチド配列との間におけるハイブリダイゼーションが存在する場合に検出することと、
段階(b)において検出される場合、ハイブリダイゼーションを、対照試料において検出されるハイブリダイゼーションと、又はあらかじめ決定された参照範囲と比較すること、とを含む。
【0116】
また、本発明は、抗BST1抗体(又は他の親和性試薬)を備える診断用キットも提供する。加えて、かかるキットは、次の1つ以上を場合により備えていてもよい:(1)診断、予後、治療モニタリング又はこれらの用途のいずれかの組合せについての抗BST1親和性試薬を使用するための取扱説明書;(2)親和性試薬に対する標識化結合パートナー;(3)抗BST1親和性試薬が固定されている固相(試薬ストリップなど);及び(4)診断、予後若しくは治療的使用又はいずれかのこれらの組合せのための規制認可を示す標識又は挿入物。親和性試薬に標識された結合パートナーがない場合、抗BST1親和性試薬自体を、検出可能なマーカー、例えば、化学発光部分、酵素部分、蛍光部分、放射性部分で標識することができる。
【0117】
また、本発明は、BST1をコードする核酸、好適にはRNAにハイブリダイズし得る核酸プローブを備えたキットも提供する。特定の実施態様において、キットは、1以上の容器に、適切な反応条件下で、例えばポリメラーゼ連鎖反応(例えば、Innisらの文献:1990, 「PCRプロトコル(PCR Protocols)」, Academic Press社(San Diego, CA)を参照)、Qβレプリカーゼのリガーゼ連鎖反応(欧州特許第320,308号参照)の使用、周期的プローブ反応又は当該技術分野で公知の他の方法により、BST1をコードする核酸の少なくとも一部の増幅を開始することができる一対のプライマー(例えば、それぞれ、6〜30ヌクレオチド、より好ましくは10〜30ヌクレオチド及び更により好ましくは10〜20ヌクレオチドのサイズ範囲)を備える。
【0118】
キットは、場合により、例えば標準又は対照として、あらかじめ定められた量のBST1又はBST1をコードする核酸を更に備え得る。
【0119】
使用する生体試料は、血清試料又は組織試料などのいずれかの供給源由来の試料であり、例えば、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織であり得る。例えば、本発明の疾患の転移についての証拠を探索する場合、本発明の疾患の転移の主な部位、例えば、乳癌については、肝臓、肺及び骨;結腸直腸癌については、肝臓、腹膜腔、骨盤、腹膜後腔及び肺;腎臓癌については、骨、肺及び肝臓;肺癌については、脳、肝臓、骨及び副腎、並びに、膵臓癌については肝臓を探索する。
【0120】
または、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在、又はBST1の活性の存在は、インサイチュ分析によって検出することができる。
【0121】
特定の実施態様において、本明細書に説明する診断方法は、少なくとも部分的に又はすべてインビトロで行うことができる。
【0122】
BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在、又はBST1の活性の存在は、定量的に検出されることが適切である。
【0123】
例えば、定量的な検出は、
生体試料を、BST1に特異的な親和性試薬と接触させることであって、前述の親和性試薬が、場合により、検出可能な標識に結合される、前述の接触させることと、
親和性試薬と試料中の少なくとも1つの種との間に結合が生じたか否かを検出することであって、前述の検出が直接又は間接的に行われる、前述の検出することと、を含む。
【0124】
または、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在、又はBST1の活性の存在は、イメージング技術の使用を含む手段によって定量的に検出することができる。
【0125】
別の実施態様において、本発明の方法は、BST1若しくはその1以上の断片の存在、又はBST1をコードする核酸の存在、又はBST1の活性の存在を判断するために、及び、これによって、例えば本発明の細胞の疾患を見つけ出すために、例えば、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織切片における免疫組織化学法の使用を含む。
【0126】
一実施態様において、BST1又はその1以上のエピトープ含有断片の存在は、例えば、抗体などの、BST1又はその1以上の断片に特異的に結合し得る親和性試薬を使用して検出される。
【0127】
別の実施態様において、BST1の活性が検出される。ADPリボシルシクラーゼ2とその相同体CD38は、リアノジン受容体による細胞内Ca2+放出を誘導するセカンドメッセンジャー代謝物質を発生させて、受容体として機能すると考えられる(Biochem Biophys Res Commun. 1996, 228(3):838-45)。また、PI-3キナーゼ経路を介してCa2+放出をもたらすように、CD11bインテグリンによっても機能し得る(J Biol Regul Homeost Agents. 2007;21(1-2):5-11)。
【0128】
(臨床試験における使用)
本発明の診断法及び組成物は、例えば、本発明の疾患の治療用薬剤を評価する臨床試験をモニタリングする際に有用であり得る。一実施態様において、候補分子は、例えば本発明の疾患を有する対象のBST1レベルを、本発明の疾患を有しない対象において見出されるレベルまで回復させるこれらの能力について、又は治療された対象におけるBST1レベルを、非急性骨髄白血病、非乳癌、非結腸直腸癌、非腎臓癌、非肺癌若しくは非膵臓癌の値に若しくはその近傍に保持するこれらの能力について、試験される。
【0129】
別の実施態様において、本発明の方法及び組成物は、例えば本発明の疾患を有する個人を識別する臨床試験の候補をスクリーニングするのに使用され、その後、個人は、試験から除外することができるか、又は治療若しくは分析について別々のコホートに配置することができる。
【0130】
(本発明のタンパク質及び対応する核酸の生産)
一態様において、本発明は、例えば本発明の疾患を治療又は予防する方法であって、かかる治療又は予防を必要とする対象に、治療有効量のBST1をコードする核酸又はその1以上の断片若しくは誘導体を、例えばワクチンの形態で投与することを含む方法を提供する。
【0131】
別の態様において、例えば本発明の疾患を治療又は予防する方法であって、かかる治療又は予防を必要とする対象に、BST1の機能若しくは発現を阻害する核酸の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0132】
本発明の方法(及び/又は本明細書に開示する他のDNA態様)は、例えば、核酸がBST1アンチセンス核酸若しくはリボザイムである方法を含み得る。
【0133】
したがって、本発明には、例えば本発明の疾患を治療又は予防するための医薬の製造における、BST1をコードする核酸又はその1以上の断片若しくは誘導体の使用が含まれる。
【0134】
また、例えば本発明の疾患を治療又は予防するための医薬の製造における、BST1の機能又は発現を阻害する核酸の使用も提供される。
【0135】
本発明に使用するDNAは、出発物質として市販mRNAを使用するcDNAライブラリからcDNA断片として単離すること、そのヌクレオチド配列を決定及び同定することにより得ることができる。すなわち、具体的には、クローンは、Oharaらの方法(DNA Research 第4巻、53-59(1997))に従って調製されるcDNAライブラリからランダムに単離される。次に、ハイブリダイゼーションを介し、複製されたクローン(これは繰り返し現れる。)を除去した後、インビトロ転写及び翻訳を行う。50 kDa以上の産物が確認されたクローンの両方の末端ヌクレオチド配列を決定する。
【0136】
さらに、公知の遺伝子のデータベースで、このようにして得られた末端ヌクレオチドチド配列を問合せとして使用して、相同性について検索する。
【0137】
上述のスクリーニング方法に加え、cDNAの5'及び3'末端配列をヒトゲノム配列に関連付ける。次いで、未知の長鎖遺伝子を配列間の領域で確認し、cDNAの全長を分析する。このようにして、既知の遺伝子に依存する従来のクローニング方法によって得ることができない未知の遺伝子を体系的にクローン化することができる。
【0138】
さらに、本発明のDNAを含有するヒト由来遺伝子の領域のすべては、短い断片又は得られた配列において起こる人為的誤りを防ぐように十分注意を払いながら、RACEなどのPCR法を用いて調製することもできる。上述のとおり、本発明のDNAを有するクローンを得ることができる。
【0139】
本発明のDNAをクローニングするための別の手段において、本発明の一部のポリペプチドの適切なヌクレオチド配列を有する合成DNAプライマーを調製した後、適切なライブラリを使用してPCR法により増幅させる。または、選択は、適切なベクターに組み込まれ、本発明のポリペプチドの領域の一部若しくは全部をコードするDNA断片又は合成DNAで標識されたDNAを用いる、本発明のDNAのハイブリダイゼーションにより行うことができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(Frederick M. Ausubelら編, 1987)に記載されている方法により行うことができる。本発明のDNAは、これらが上述した本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する限り、いかなるDNAであってもよい。かかるDNAは、cDNAライブラリから同定及び単離されたcDNAであってもよく、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織に由来するようなものであってもよい。また、かかるDNAは、合成DNAなどであってもよい。ライブラリ構築に使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどのいずれかであってもよい。さらに、上述の細胞及び/又は組織から調製される全RNA画分又はmRNA画分の使用により、増幅は、直接的な逆転写共役ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「RT-PCR法」と略記される。)により行うことができる。
【0140】
BST1のアミノ酸配列に実質的に同一であるアミノ酸配列からなる上述のポリペプチドをコードするDNA、又はアミノ酸配列の一部を構成する1以上のアミノ酸の欠失、置換若しくは追加によるBST1のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列からなる上述のポリペプチドをコードするDNAは、例えば、当業者に公知の部位特異的突然変異生成法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法及びPCR法の適切な組合せにより、容易に生産することができる。加えて、現時点で、ポリペプチドに実質的に同等の生物活性をもたらす考えられ得る方法は、ポリペプチドを構成するアミノ酸間での相同アミノ酸(例えば、極性及び無極性アミノ酸、疎水性及び親水性アミノ酸、正荷電及び負荷電アミノ酸、並びに芳香族アミノ酸)の置換である。さらに、実質的に同等の生物活性を維持するために、本発明のポリペプチドに含有されている機能的ドメイン内のアミノ酸は、好ましくは保存される。
【0141】
さらに、本発明のDNAの例としては、BST1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNA、及びDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつBST1のアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能と同等の生物活性(機能)を有するポリペプチド(タンパク質)をコードするDNAが挙げられる。かかる条件下で、BST1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むDNAにハイブリダイズし得るかかるDNAの例は、DNAの全ヌクレオチド配列にある程度、例えば、およそ80%以上、好ましくはおよそ90%以上、及びより好ましくはおよそ95%以上の全体平均相同性を有するヌクレオチド配列を含むDNAである。ハイブリダイゼーションは、「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(Frederick M. Ausubelら編, 1987)に記載されている方法などの当業者に公知の方法、又はこれに準じた方法により行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件」は、例えば、およそ1*SSC、0.1% SDS及び37℃、よりストリンジェントな条件は、およそ0.5*SSC、0.1% SDS及び42℃の条件であり、又は、更によりストリンジェントな条件は、およそ0.2*SSC、0.1% SDS及び65℃の条件である。よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いると、プローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離が予想することができる。SSC、SDS及び温度条件の上述の組合せは、説明目的のために提供される。上述のものに類似するストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの決定のための上述の因子又は他の因子(例えば、ハイブリダイゼーションのためのプローブ濃度、プローブ長及び反応時間)の適切な組合せを用いて、当業者により達成することができる。
【0142】
本発明のクローン化DNAは、目的に応じて、直接使用することができるか、又は、必要に応じて、制限酵素での消化又はリンカーの追加の後に使用することができる。DNAは、5'末端側の翻訳開始コドンとしてATGを有し、3'末端側の翻訳終止コドンとして、TAA、TGA又はTAGを有し得る。これらの翻訳開始及び翻訳終止コドンは、適切な合成DNAアダプタを使用して追加することもできる。
【0143】
本発明の方法/使用において、BST1は、例えば、BST1ポリペプチドが少なくともある程度まで精製されたものなどの単離された形態で提供することができる。BST1ポリペプチドは、実質的に純粋な形態で、すなわち実質的範囲で他のタンパク質を含まない形態で、提供することができる。BST1ポリペプチドは、組換え法を用いて生産することができ、合成的に生産することができるか、又はこれらの方法の組合せによって生産することもできる。BST1は、当業者に公知のいずれかの方法によっても容易に調製することができ、これは、本発明の適切なDNAを含有する発現ベクター又は本発明のDNAを含有する遺伝子を生産することと、発現ベクターを使用して形質転換された形質転換体を培養することと、本発明の適切なポリペプチド又はポリペプチドを含有する組換えタンパク質を生成し蓄積することと、その後、生成物を回収することとを含む。
【0144】
組換えBST1ポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から、当該技術分野で周知の方法によって生産することができる。したがって、本発明は、BST1ポリペプチド又は核酸を含む発現系に、かかる発現系によって遺伝子操作された宿主細胞に、及び組換え法によるBST1ポリペプチドの生産にも関する。組換えBST1ポリペプチド生産のために、宿主細胞は、核酸にその発現系又は部分を組み込むように遺伝子操作することができる。かかる組込みは、当該技術分野で公知の方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAD-デキストラン媒介型トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン脂質媒介型トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、切屑負荷(scrape loading)、バレット導入又は感染を用いて行うことができる(例えば、Davisらの文献:「分子生物学における基本的方法(Basic Methods in Molecular Biology)」, 1986、並びにSambrookらの文献:「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」,第2版, Cold Spring Harbour laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY, 1989参照)。
【0145】
宿主細胞として、例えば、エシェリキア属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、ストレプトマイセス属の細菌、バチルス属の細菌、酵母、アスペルギルス細胞、昆虫細胞、昆虫、及び動物細胞が使用される。本明細書に使用するエシェリキア属の細菌の具体例としては、大腸菌K12及びDH1(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 60, 160 (1968))、JM103(Nucleic Acids Research, Vol. 9, 309 (1981))、JA221(Journal of Molecular Biology, Vol. 120, 517 (1978))、及びHB101(Journal of Molecular Biology, Vol. 41, 459 (1969))が挙げられる。バチルス属の細菌としては、例えば、枯草菌MI114(Gene, Vol. 24, 255 (1983))及び207-21(Journal of Biochemistry, Vol. 95, 87 (1984))が使用される。酵母としては、例えば、出芽酵母(Saccaromyces cerevisiae) AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D及び20B-12、分裂酵母(Schizosaccaromyces pombe )NCYC1913及びNCYC2036、並びにピキア・パストリス(Pichia pastoris)が使用される。昆虫細胞としては、例えば、ショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9細胞が使用される。動物細胞としては、例えば、COS-7及びベロサル細胞、CHOチャイニーズハムスター細胞(以下、CHO細胞と略記される)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウス骨髄腫細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞、COS、HeLa、C127、3T3、HEK 293、BHK及びボーズメラノーマ細胞が使用される。
【0146】
また、無細胞翻訳システムも、組換えポリペプチドを生産するのに使用することができる(例えば、ウサギ網状赤血球溶解液、小麦麦芽溶解液、Roche Diagnostics社(Lewes, UK)製SP6/T7インビトロT&T及びRTS 100大腸菌HY転写及び翻訳キット、並びにPromega UK社(Southampton, UK)製TNTクイック共役転写/翻訳システム)。
【0147】
発現ベクターは、当該技術分野で公知の方法に従って生産することができる。例えば、ベクターは、(1)本発明のDNAを含有するDNA断片又は本発明のDNAを含有する遺伝子を切除すること、及び(2)適切な発現ベクターにおいてプロモータの下流にDNA断片を連結することにより生産することができる。広範囲の発現系を使用することができ、例えば、染色体、エピソーム及びウイルスから派生した系、例えば大腸菌(例えば、pBR322、pBR325、pUC18及びpUC118)に由来するプラスミド、枯草菌(例えば、pUB110、pTP5及びpC194)に由来するプラスミド、バクテリオファージ由来の系、トランスポゾン由来の系、酵母エピソーム由来の系(例えば、pSH19及びpSH15)、挿入因子由来の系、酵母染色体要素由来の系、バキュロウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス由来の系、並びにこれらの組合せ、例えばプラスミド由来の系及びバクテリオファージ(λファージなど)遺伝因子、例えばコスミド及びファージミドなどであるが、これらに限定されない。発現系は、発現を調節するだけでなく、発現を発生させる制御領域も含有し得る。遺伝子発現のために使用される宿主に適切である限り、本発明に使用するプロモータは、いかなるプロモータであってもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合、trpプロモータ、lacプロモータ、recAプロモータ、pLプロモータ、lppプロモータなどが好ましい。宿主が枯草菌である場合、SPO1プロモータ、SPO2プロモータ、penPプロモータなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモータ、PGKプロモータ、GAPプロモータ、ADHプロモータなどが好ましい。動物細胞を宿主として使用する場合、この事例に使用するプロモータの例としては、SRaプロモータ、SV40プロモータ、LTRプロモータ、CMVプロモータ及びHSV-TKプロモータが挙げられる。通常、宿主においてポリペプチドを産生する核酸を維持し、増殖させるか又は発現することができる、いずれかの系又はベクターを使用することができる。
【0148】
適切な核酸配列は、上述したSambrookらの文献に記載されているものなどのいずれかの種々の周知方法かつルーチン法により、発現系に挿入することができる。適切な分泌シグナルは、小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への翻訳タンパク質の分泌を可能にするために、BST1ポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルはBST1ポリペプチドに内在性であってもよいし、又はシグナルは異種性シグナルであってもよい。宿主細胞の形質転換は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。例えば、次に示す文献を参照することができる:Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 69, 2110 (1972); Gene, Vol. 17, 107 (1982); Molecular & General Genetics, Vol. 168, 111 (1979); Methods in Enzymology, Vol. 194, 182-187 (1991); Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), Vol. 75, 1929 (1978); Cell Technology, 別冊8, 「新規細胞技術、試験プロトコル(New Cell Technology, Experimental Protocol.)」263-267 (1995) (Shujunsha発行);及びVirology, Vol. 52, 456 (1973)。このように、本発明のDNAを含有する発現ベクター又は本発明のDNAを含有する遺伝子で形質転換して得られた形質転換体は、当該技術分野で公知の方法に従って培養することができる。例えば、宿主がエシェリキア属の細菌である場合、細菌は通常、およそ15℃〜43℃でおよそ3〜24時間培養する。必要に応じて、通気又は振動も追加することができる。宿主がバチルス属の細菌である場合、細菌は通常、およそ30℃〜40℃でおよそ6〜24時間培養する。必要に応じて、通気又は振動も追加することができる。宿主が酵母である形質転換体を培養する場合、培養は通常、pHをおよそ5〜8に調整した培地を使用して、およそ20℃〜35℃でおよそ24〜72時間行う。必要に応じて、通気又は振動も追加することができる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合、細胞は通常、pHをおよそ6〜8に調整した培地を使用して、およそ30℃〜40℃でおよそ15〜60時間培養する。必要に応じて、通気又は振動も追加することができる。
【0149】
BST1ポリペプチドが細胞ベースのスクリーニング分析アッセイ用に発現される場合、ポリペプチドは細胞表面に産生されることが好ましい。この場合、細胞は、スクリーニングアッセイの使用の前に回収することができる。BST1ポリペプチドが培地に分泌される場合、培地は、前述のポリペプチドを単離するために回収することができる。細胞内で産生される場合、細胞は、BST1ポリペプチドが回収される前に、最初に溶解する必要がある。
【0150】
BST1ポリペプチドは、組換え細胞培養物から、又は他の生物学的供給源から、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、分子篩クロマトグラフィー、遠心分離法、電気泳動法及びレクチンクロマトグラフィを含む周知の方法により、回収及び精製することができる。一実施態様において、これらの方法の組合せが用いられる。別の実施態様において、高速液体クロマトグラフィーが使用される。更なる実施態様において、BST1ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、前述のポリペプチドのBST1ポリペプチドを含む試料を減少させるか又はBST1ポリペプチドを精製するのに使用することができる。
【0151】
培養生成物から本発明のポリペプチド又はタンパク質を分離して精製するために、例えば、培養後に、微生物本体又は細胞を公知の方法により回収し、これらを適切な緩衝液中で懸濁させ、微生物本体又は細胞を、例えば、超音波、リゾチーム、及び/又は凍結融解により破壊し、次いで、その生成物を遠心単離又はろ過に供し、その後、タンパク質の粗抽出物を得ることができる。緩衝液は、尿素若しくは塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤、又はTriton X-100(商標)などの界面活性剤も含有し得る。タンパク質が培養液中に分泌される場合、微生物本体又は細胞及び上清は、培養の完了後に公知の方法によって分離され、上清は回収される。このようにして得られた培養上清又は抽出物に含有するタンパク質は、公知の分離及び精製法の適切な組合せにより、精製することができる。本発明のこのようにして得られたポリペプチド(タンパク質)は、公知の方法又はこれに準じる方法によって、塩に変換することができる。逆に、本発明のポリペプチド(タンパク質)が塩の形態で得られる場合、これは、公知の方法又はこれに準じた方法によって、遊離タンパク質又はペプチド又は他の塩に変換することができる。さらに、トリプシン又はキモトリプシンなどの適切なタンパク質修飾酵素は、精製の前又は後に組換えによって生産されたタンパク質への作用をもたらし、かかる修飾は適宜追加することができ、又はポリペプチドは部分的に除去することができる。本発明のポリペプチド(タンパク質)又はその塩の存在は、種々の結合アッセイ、特異的抗体を使用する酵素イムノアッセイなどによって測定することができる。
【0152】
BST1ポリペプチドが単離及び/又は精製の間に変性する場合、BST1ポリペプチドの天然の又は活性のある立体構造を再生するリフォールディングのための当該技術分野で周知の技術を使用することができる。本発明に関連して、BST1ポリペプチドは、血液試料又は組織試料、例えば骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織試料などであるが、これらに限定されない、いずれかの供給源由来の生体試料から得ることができる。
【0153】
BST1ポリペプチドは、「成熟タンパク質」の形態であり得るか、又は融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であり得る。分泌若しくはリーダー配列、プレ‐、プロ‐又はプレプロ‐タンパク質配列を含有する追加的アミノ酸配列、又は親和性タグ、例えば複数のヒスチジン残基、FLAGタグ、HAタグ又はmycタグ(これらに限定されない)などの精製に有用な配列を含むことは、有益であることが多い。
【0154】
BST1は、例えば、ヘモフィルス・インフルエンザB由来のタンパク質Dとして知られている表在性タンパク質、NS1などのインフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質、B型肝炎由来のS抗原、又はそのC末端などのLYTAとして公知のタンパク質などの異種融合パートナーと融合させることができる。
【0155】
組換え生産の間に安定性を提供することが可能な追加的配列を使用することもできる。かかる配列は、追加的配列又はその一部として切断可能配列を組み込むことにより、必要に応じて、除去することができる。したがって、BST1ポリペプチドは、他のポリペプチド又はタンパク質(例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ及びプロテインA)を含む他の部分に融合することができる。かかる融合タンパク質は、適切なプロテアーゼを使用して切断でき、そして、各タンパク質に分離することができる。かかる追加的配列及び親和性タグは当該技術分野で周知である。上述のものに加え、所望の場合、エンハンサ、スプライシングシグナル、polyA付加シグナル、選択マーカー及びSV40複製起点などの当該技術分野で公知の特性を発現ベクターに追加することができる。
【0156】
(BST1に対する親和性試薬の生産)
公知技術によれば、3種類の主要な免疫親和性試薬、すなわち、モノクローナル抗体、ファージ提示抗体、並びにアフィボディ、ドメイン抗体(dAb)、ナノボディ、ユニボディ、DARPin、アンチカリン、デュオカリン、アビマー又はバーサボディなどのより小さな抗体由来分子がある。一般に、抗体の使用が記載される本発明の適用において、他の親和性試薬(例えば、アフィボディ、ドメイン抗体、ナノボディ、ユニボディ、DARPin、アンチカリン、デュオカリン、アビマー又はバーサボディ)を使用することができる。かかる物質は、BST1に免疫特異的に結合し得るということができる。適切である場合、「親和性試薬」という用語は、リガンド、レクチン、ストレプトアビジン、抗体模倣体及び合成結合剤を含むがこれらに限定されない、免疫親和性試薬並びにBST1に特異的結合し得る他の物質を含むものとする。
【0157】
(BST1に対する抗体の生産)
本発明によれば、BST1、BST1類似体、BST1関連タンパク質、又は上述のいずれかの断片若しくは誘導体を免疫原として使用し、かかる免疫原に免疫特異的に結合する抗体を生産することができる。かかる免疫原は、先に記載した方法を含むいずれかの都合のよい手段によって単離することができる。本明細書に使用する「抗体」という用語は、抗原又はエピトープを特異的に結合し得る、免疫グロブリン遺伝子又はその断片に由来し、これらに倣って生産され、又はこれらによって実質的にコードされる、ペプチド又はポリペプチドをいう。例えば、Fundamental Immunology, 第3版, W.E. Paul編, Raven Press, N.Y. (1993); Wilsonの文献 (1994) J. Immunol. Methods 175:267-273; Yarmushの文献 (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。「抗体」という用語には、抗原結合部分、すなわち、抗原に結合する能力を保持する「抗原結合部位」(例えば、断片、サブ配列、相補性決定領域(CDR))が含まれ、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii) F(ab')2断片、ヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardらの文献 (1989):Nature, 341:544-546);及び、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。単鎖抗体も、「抗体」という用語を参照することにより含まれる。本発明の抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体若しくはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片及びF(ab')2断片、Fab発現ライブラリによって生産される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上述したもののうちのいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれかのクラス(例えば、IgGなどの、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスであり得る。
【0158】
「特異的に結合」(又は「免疫特異的に結合」)という用語は、抗体がその意図する標的のみに結合することを示すことを意図するものではない。むしろ、抗体は、通常、その意図する標的に対する親和性が、非標的分子に対するその親和性と比較した場合に、約5倍を上回る場合に、「特異的に結合する」。好適には、望ましくない物質、特に健常な人又は動物の天然存在型タンパク質又は組織との有意な交差反応又は交差結合がない。抗体の親和性は、非標的分子に対するその親和性よりも、少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、更により好ましくは50倍、及び最も好ましくは100倍以上、標的分子に対して大きな親和性であることが好ましい。一部の実施態様において、抗体又は他の結合物質と抗原との間の特異的結合は、少なくとも106M-1の結合親和性を意味する。抗体は、例えば、少なくとも約107M-1、好ましくは約108M-1〜約109M-1、約109M-1〜約1010M-1、又は約1010M-1〜約1011M-1の親和性で結合し得る。
【0159】
親和性はKd=koff/konとして算出される(koffは解離速度定数であり、konは会合速度定数であり、Kdは平衡定数である。)。親和性は、種々の濃度(c)で標識化リガンドの画分結合(r)を測定することによって、平衡で決定することができる。データは、スキャッチャード式:r/c=K(n-r)
(式中、
r=平衡時の結合したリガンドのモル数/受容体のモル数;
c=平衡時の遊離リガンド濃度;
K=平衡会合定数;及び、
n=受容体分子1個あたりのリガンド結合部位の数)を用いてグラフ化される。
図式解析により、r/cをY軸にプロットし、対してrをX軸にプロットし、こうしてスキャッチャードプロットを作成する。親和性は、その線の負の傾斜である。Koffは、結合した標識化リガンドを、標識されていない過剰のリガンドと競合させることにより決定することができる(例えば、米国特許第6,316,409号参照)。その標的分子に対する標的化物質の親和性は、例えば、少なくとも約1×10-6モル/リットル、例えば少なくとも約1×10-7モル/リットル、例えば少なくとも約1×10-8モル/リットル、特に少なくとも約1×10-9モル/リットル、及び特に少なくとも約1×10-10モル/リットルである。スキャッチャード分析による抗体親和性測定は、当該技術分野で周知である。例えば、van Erpらの文献:J. Immunoassay 12: 425-43, 1991;Nelson及びGriswoldの文献:Comput. Methods Programs Biomed. 27: 65-8, 1988を参照されたい。
【0160】
一実施態様において、BST1をコードする遺伝子の遺伝子産物を認識する抗体は、公然利用可能である。別の実施態様において、当該技術分野で公知の方法は、BST1、BST1類似体、BST1関連ポリペプチド、又は前述のいずれかの断片若しくは誘導体を認識する抗体を生産するのに使用される。当業者は、例えば、文献:「抗体、研究室マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」, Ed Harlow及びDavid Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory (1988), Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されているような多くの手段が、抗体生産に利用可能であることを認識する。当業者はまた、抗体を模倣する結合断片又はFab断片も種々の手段により遺伝情報から調製できることも認識する(「抗体工学:実践的アプローチ(Antibody Engineering: A Practical Approach)」(Borrebaeck, C編), 1995, Oxford University Press, Oxford; J. Immunol. 149, 3914-3920 (1992))。
【0161】
本発明の一実施態様において、BST1の特定のドメインに対する抗体が生産される。特定の実施態様において、BST1の親水性断片が、抗体生産のための免疫原として使用される。
【0162】
抗体生産において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野で公知の技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって達成することができる。例えば、BST1の特定のドメインを認識する抗体を選択するために、かかるドメインを含有するBST1断片に結合する生成物について生産されたハイブリドーマをアッセイすることができる。第1のBST1相同体に特異的に結合するが、第2のBST1相同体には特異的に結合しない(又は結合性が低い)抗体の選択のために、第1のBST1相同体への陽結合(positive binding)、及び第2のBST1相同体への結合の欠如(又は結合の減少)に基づき、抗体を選択することができる。同様に、BST1に特異的に結合するが、同じタンパク質の異なるアイソフォーム(BST1と同じコアペプチドを有する異なるグリコフォームなど)に特異的に結合しない(又は結合性が低い)抗体の選択のために、BST1への陽結合、及び異なるアイソフォーム(例えば、異なるグリコフォーム)への結合の欠如(又は結合の減少)に基づき、抗体を選択することができる。したがって、本発明は、BST1の異なるアイソフォーム(例えば、グリコフォーム)に対するよりも、BST1に対して大きな親和性(例えば少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、特に少なくとも10倍大きな親和性)で結合する抗体(モノクローナル抗体など)を提供する。
【0163】
本発明の方法に使用することができるポリクローナル抗体は、免疫動物の血清由来の抗体分子の異種集団である。非分画免疫血清を使用することもできる。当該技術分野で周知の種々の手順は、BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、又はBST1関連ポリペプチドの断片に対するポリクローナル抗体の生産に使用可能である。例えば、方法のうちの一つは、関心対象ポリペプチドを精製すること、又は、例えば当該技術分野で周知の固相ペプチド合成法を用いて、関心対象ポリペプチドを合成することである。例えば、タンパク質精製の手引き(Guide to Protein Purification), Murray P. Deutcher編, Meth. Enzymol. Vol 182 (1990);固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis), Greg B. Fields編, Meth. Enzymol. Vol 289 (1997);Kiso らの文献:Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 38:1192-99, 1990;Mostafaviらの文献:Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids 1:255-60, 1995;Fujiwaraらの文献:Chem.Pharm.Bull. (Tokyo)44:1326-31, 1996を参照されたい。そして、選択されたポリペプチドは、ウサギ、マウス、ラットなどを含むがこれらに限定されない種々の宿主動物に注入免疫し、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を産生するのに使用することができる。BST1がゲル電気泳動により精製される場合、BST1は、ポリアクリルアミドゲルからの抽出を用いてか又は用いずに、免疫に使用することができる。完全又は不完全フロイントアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット‐ゲラン桿菌)又はコリネバクテリウム・パルバムなどのアジュバントを含むがこれらに限定されない種々のアジュバント(すなわち、免疫賦活剤)を、宿主種に応じて、免疫応答を強化するのに使用することができる。更なるアジュバントも、当該技術分野で周知である。
【0164】
BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、又はBST1関連ポリペプチドの断片に対するモノクローナル抗体(mAbs)の生産のために、培養で持続細胞株による抗体分子の生産を提供するいずれかの技術を使用することができる。例えば、ハイブリドーマ技術は、Kohler及びMilstein (1975, Nature 256:495-497)によりはじめて開発され、同様にトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborらの文献1983:Immunology Today 4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Coleらの文献1985:モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)において, Alan R. Liss社, 77-96頁)がヒトモノクローナル抗体を生産するために開発された。かかる抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそのいずれかのサブクラスを含む、いずれかの免疫グロブリンのクラスのものであり得る。本発明のmAbsを生産するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボで培養してもよい。本発明の更なる実施態様において、モノクローナル抗体は、公知の技術(国際特許出願第PCT/US90/02545号(引用により本明細書中に組み込まれる。))を利用して無菌動物において生産することができる。
【0165】
モノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体及びキメラモノクローナル抗体(例えば、ヒト‐マウスキメラ)を含まれるが、これらに限定されない。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種由来である分子、例えばヒト免疫グロブリン定常領域及びマウスmAb由来の可変領域を有する分子である(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号;及び、Bossらの米国特許第4,816397号参照。これらは、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。)。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1以上の相補性決定領域(CDR)、及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、Queenの米国特許第5,585,089号参照。当該文献は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。)。
【0166】
キメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、例えば国際公開第87/02671号;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;国際公開公報第86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterらの文献1988:Science 240:1041-1043;Liuらの文献1987:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443;Liuらの文献1987:J. Immunol.139:3521-3526;Sunらの文献1987:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimuraらの文献1987:Canc.Res. 47:999-1005;Woodらの文献1985:Nature 314:446-449;及び、Shawらの文献1988:J.Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559;Morrisonの文献1985:Science 229:1202-1207;Oiらの文献1986:BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesらの文献, 1986, Nature 321:552-525;Verhoeyanらの文献 (1988):Science 239:1534;及び、Beidlerらの文献1988:J. Immunol.141:4053-4060に記載されている方法を用いる、当該技術分野で公知の組換えDNA法によって生産することができる。
【0167】
完全ヒト抗体は、ヒト対象の治療的処置に特に望ましい。かかる抗体は、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して、生産することができる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えばBST1の全体又は一部を用いて通常の様式で免疫される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化時に再編成し、その後、クラススイッチング及び体細胞突然変異を受ける。したがって、かかる技術を使用して、治療に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を生産することができる。ヒト抗体を生産するこの技術の概要については、Lonberg及びHuszarの文献(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生産するためのこの技術、並びにかかる抗体を生産するためのプロトコルの詳細な論考については、例えば、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び、米国特許第5,545,806号を参照されたい。加えて、Abgenix社(Freemont,CA)及びGenpharm社(San Jose, CA)などの企業は、先に記載したものと類似の技術を使用して、選択された抗原に対するヒト抗体を提供するのに関係し得る。
【0168】
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイドセレクション」と呼ばれる技術を使用して生産することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)は、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を導くために使用される(Jespersらの文献(1994):BioTechnology 12:899-903)。
【0169】
本発明の抗体は、選択された標的への結合について、ポリペプチドのライブラリを生産してスクリーニングするファージディスプレイ技術の使用により生産することもできる。例えば、Cwirlaらの文献:Proc. Natl. Acad. Sci USA 87, 6378-82, 1990;Devlinらの文献:Science 249, 404- 6, 1990, Scott及びSmithの文献:Science 249, 386-88, 1990;及び、Ladnerらの米国特許第5,571,698号を参照されたい。ファージディスプレイ法の基本的概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードするDNAとそのポリペプチドとの間の物理的関連付けの確立である。この物理的関連付けは、ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するキャプシドの一部としてポリペプチドを提示する、ファージ粒子により提供される。ポリペプチドとその遺伝物質との間の物理的関連付けの確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時大量スクリーニングを可能にする。標的への親和性を有するポリペプチドを提示するファージは標的に結合し、これらのファージは、標的への親和性スクリーニングにより濃縮される。これらのファージから提示されるポリペプチドの同一性は、これらの各ゲノムにより決定することができる。そして、これらの方法を用いて、所望の標的に対し結合親和性を有すると確認されたポリペプチドは、従来の手段により大量に合成することができる。例えば、米国特許番号第6,057,098号を参照されたい。当該文献のすべての表、図面及び特許請求の範囲を含むそのすべてが引用により本明細書中に組み込まれる。特に、かかるファージは、レパートリ又は組合せの抗体ライブラリ(例えば、ヒト又はマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するのに利用することができる。関心対象の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原、例えば、標識化抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉された抗原を使用して、選択又は同定することができる。これらの方法で使用するファージは、通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えにより融合されたFab、Fv又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されたfd 及びM13結合ドメインを含む、線維状ファージである。本発明の抗体を作製するのに用いることができるファージディスプレイ法には、Brinkmanらの文献:J. Immunol.Methods 182:41-50 (1995);Amesらの文献:J. Immunol.Methods 184:177-186 (1995);Kettleboroughらの文献:Eur.J. Immunol.24:952-958 (1994);Persicらの文献:Gene 187 9-18 (1997);Burtonらの文献:Advances in Immunology 57:191-280 (1994);国際特許出願第PCT/GB91/01134号;国際公開公報第90/02809号;同91/10737号;同92/01047号;同92/18619号;同93/11236号;同95/15982号;同95/20401号;及び、米国特許第5,698,426号;同5,223,409号;同5,403,484号;同5,580,717号;同5,427,908号;同5,750,753号;同5,821,047号;同5,571,698号;同5,427,908号;同5,516,637号;同5,780,225号;同5,658,727号;同5,733,743号及び同5,969,108号(それぞれ、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
【0170】
上述の文献に記載されているように、ファージ選択の後、ファージ由来の抗体コード領域は、ヒト抗体を含む全抗体又はいずれかの他の所望の抗原結合断片を生産するために単離して使用することができ、例えば、以下に詳細に説明するような哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む、いずれかの所望の宿主において発現させることができる。例えば、Fab、Fab'及びF(ab') 2断片を組換えにより生産する技術は、国際公開公報第92/22324号;Mullinaxらの文献:BioTechniques 12(6):864-869 (1992);及びSawaiらの文献, AJRI 34:26-34 (1995);及びBetterらの文献:Science 240: 1041-1043 (1988)(前述の文献は引用によりそのすべてが組み込まれる。)に開示されているものなどの、当該技術分野で公知の方法を用いて、利用することもできる。
【0171】
単鎖Fvs及び抗体を生産するのに使用することができる技術の例としては、米国特許第4,946,778号及び同5,258,498号;Hustonらの文献:Methods in Enzymology 203:46-88 (1991); Shuらの文献:PNAS 90:7995-7999 (1993);及びSkerraらの文献:Science 240:1038-1040 (1988)に記載されているものが挙げられる。
【0172】
本発明は、当該技術分野で公知の方法により作製することができる二重特異性抗体の使用を更に提供する。完全長二重特異性抗体の従来の生産は、2つの免疫グロブリン重鎖‐軽鎖対の同時発現であって、2つの鎖が異なる特異性を有する、前述の同時発現に基づいている(Milsteinらの文献1983:Nature, 305:537-539)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、そのうちの1つのみが的確な二重特異性構造を有する。通常、親和性クロマトグラフィー工程によってなされる的確な分子の精製は、むしろ扱いにくく、産物収率は低い。同様の手法は、1993年5月13日に公開された国際公開公報第93/08829号、及びTrauneckerらの文献1991:EMBO J. 10:3655-3659に開示されている。
【0173】
種々のアプローチ及びより好ましいアプローチに従って、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体‐抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを伴う。融合のうちの少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する、第1の重鎖定常部(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、及び所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別々の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。これは、構築に使用した不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収量を提供する実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に優れた柔軟性を提供する。ただし、同等の比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高収率を生じる場合、又は比率が具体的意義を有しない場合、2つ又は3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することができる。
【0174】
このアプローチの好適な実施態様において、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにおける(第2の結合特性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖‐軽鎖対から構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することが、容易な単離方法を提供するので、この非対称構造は、望まれない免疫グロブリン鎖状結合からの所望の二重特異性化合物の単離を促進することがわかった。このアプローチは、1994年3月3日に公開された国際公開公報第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の生産に関する更なる詳細については、例えば、Sureshらの文献:Methods in Enzymology, 1986 121:210を参照されたい。
【0175】
本発明は、抗BST1免疫グロブリン分子の機能的に活性な断片、誘導体又は類似体を提供する。機能的に活性とは、断片、誘導体又は類似体が、断片、誘導体又は類似体が誘導される抗体により認識されるのと同じ抗原を認識する抗‐抗‐イディオタイプ抗体(すなわち、三次抗体)を誘発できることを意味する。具体的には、好適な実施態様において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、フレームワーク及び特異的に抗原を認識するCDR配列に対するC末端であるCDR配列の欠失により強化することができる。CDR配列が抗原に結合するか否かについて判断するために、CDR配列を含有する合成ペプチドを、当該技術分野で公知のいずれかの結合試験法による抗原を用いる結合アッセイに使用することができる。
【0176】
本発明は、F(ab')2断片及びFab断片などであるがこれらに限定されない抗体断片を提供する。特異的なエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって生産することができる。F(ab')2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインから構成され、抗体分子のペプシン消化によって生産される。Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生産される。また、本発明は、本発明の抗体の重鎖と軽鎖との二量体、又はFvs若しくは単鎖抗体(SCA)などのいずれかのその最小断片(例えば、米国特許第4,946,778号;Birdの文献1988:Science 242:423-42;Hustonらの文献1988:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;及び、Wardらの文献1989:Nature 334:544-54に記載されているようなもの)、又は本発明の抗体と同じ特異性を有するいずれかの他の分子も提供する。単鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を連結することにより形成され、一本鎖ポリペプチドを生じる。大腸菌(E. coli)における機能的なFv断片の集成のための技術を使用してもよい(Skerraらの文献1988:Science, 242:1038-1041)。
【0177】
他の実施態様において、本発明は、本発明の免疫グロブリンの融合タンパク質(又はその機能的に活性な断片)、例えば、免疫グロブリンがN末端又はC末端において、共有結合(例えば、ペプチド結合)を介してその免疫グロブリンでない別のタンパク質のアミノ酸配列(又はその一部、好ましくはタンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)に融合されている融合タンパク質を提供する。好ましくは、免疫グロブリン又はその断片は、定常ドメインのN末端において、他のタンパク質に共有結合される。上述したように、かかる融合タンパク質は、精製を容易にし、インビボでの半減期を増加させ、及び免疫系に対する上皮関門を越えた抗原の送達を増強し得る。
【0178】
本発明の免疫グロブリンには、修飾される、すなわち、いずれかの型の分子の共有結合が免疫特異的結合を損なわない限り、かかる共有結合による類似体及び誘導体が含まれる。例えば、免疫グロブリンの誘導体及び類似体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、ホスフィレーション(phosphylation)、アミド化、公知の保護/保護基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質に対する結合などにより更に修飾されたものが含まれるが、これらに限定されない。特定の化学裂開、アセチル化、ホルミル化などを含むが、これらに限定されない多くの化学修飾のいずれかを、周知の技術により行うことができる。加えて、類似体又は誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0179】
前述の抗体は、BST1の局在及び活性に関して、当該技術分野で公知の方法で、例えば、タンパク質を画像化するのに、適切な生理的試料においてそのレベルを測定するのに、診断法などにおいて、使用することができる。
【0180】
(BST1に対するアフィボディの生産)
アフィボディ分子は、ブドウ球菌プロテインAのIgG-結合ドメインのうちの1つに由来する、58アミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質の新規なクラスを表す。この三重螺旋束ドメインは、コンビナトリアルファージミドライブラリの構築に対する足場として使用され、これからファージディスプレイ技術を使用して、所望の分子を標的化するアフィボディ変異体を選択し得る(Nord K, Gunneriusson E, Ringdahl J, Stahl S, Uhlen M, Nygren PAの文献:「αヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain)」, Nat Biotechnol 1997; 15:772-7. Ronmark J, Gronlund H, Uhlen M, Nygren PAの文献:「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA (IgA)特異的リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, Eur J Biochem 2002;269:2647-55)。その低分子量(6 kDa)と組み合わせたアフィボディ分子の単純で堅固な構造により、広範囲の用途に、例えば検出試薬として(Ronmark J, Hansson M, Nguyen T,らの文献:「大腸菌において産生されるアフィボディ-Fcキメラの構築及び特性評価(Construction and characterization of Affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli)」, J Immunol Methods 2002;261 :199-211)、及び受容体相互作用を阻害するために(Sandstorm K, Xu Z, Forsberg G, Nygren PAの文献:「コンビナトリアルタンパク質工学により開発されたCD28結合アフィボディリガンドによるCD28-CD80共刺激シグナルの阻害(Inhibition of the CD28-CD80 co-stimulation signal by a CD28-binding Affibody ligand developed by combinatorial protein engineering)」, Protein Eng 2003; 16:691-7)、アフィボディ分子が適するようになる。アフィボディ及びその生産方法の更なる詳細は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第5831012号を参照することにより得ることができる。
【0181】
また、標識化アフィボディは、アイソフォームの存在量を測定するためのイメージング用途にも有用であり得る。
【0182】
(BST1に対するドメイン抗体の生産)
本明細書における抗体についての言及は、ドメイン抗体についての言及を包含する。ドメイン抗体(dAb)は、抗体の最も小さな機能的結合単位であり、ヒト抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖の可変領域に対応する。ドメイン抗体は、およそ13 kDaの分子量を有する。ドマンティス(Domantis)は、完全ヒトVH及びVL dAbの一連の大きくかつ高度に機能的なライブラリを開発し(各ライブラリにおいて10,000,000,000超の異なる配列)、これらのライブラリを使用して治療標的に特異的であるdAbを選択する。多くの従来抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系において良好に発現する。ドメイン抗体及びその生産方法の更なる詳細は、次に示すものを参照することによって得ることができる:米国特許第6,291,158号;同6,582,915号;同6,593,081号;同6,172,197号;同6,696,245号;米国出願第2004/0110941号;欧州特許出願第1433846号、並びに欧州特許第0368684号及び同0616640号;国際公開公報第05/035572号、同04/101790号、同04/081026号、同04/058821号、同04/003019号及び同03/002609号(これらはそれぞれ、その全体が本明細書中に引用により組み込まれる。)。
【0183】
(BST1に対するナノボディの生産)
ナノボディは、抗体由来の治療用タンパク質であり、天然に存在する重鎖抗体の固有の構造及び機能特性を含有する。これらの重鎖抗体は、1つの可変ドメイン(VHH)及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含有する。重要なことに、クローン化されかつ単離されたVHHドメインは、もとの重鎖抗体の全抗原結合能を保持する完全に安定なポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のVH領域と高い相同性を有し、活性の損失を全く伴わずに更にヒト化することができる。重要なことに、ナノボディは低免疫原性能を有し、これは霊長類研究において、ナノボディリード化合物を用いて確認された。
【0184】
ナノボディは、従来型抗体の利点を、低分子薬の重要な特徴と組み合わせる。従来の抗体のように、ナノボディは、高い標的特異性、これらの標的に対する高親和性、及び低い固有毒性を示す。しかしながら、低分子薬のように、ナノボディは、酵素を阻害することができ、受容体間隙に容易に到達し得る。さらに、ナノボディは極めて安定で、注入以外の手段により投与することができ(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる国際公開公報第04/041867号を参照)、生産が容易である。ナノボディの他の利点には、これらの小さいサイズにより共通していないか又は隠れたエピトープを認識すること、これらの特有の三次元構造に起因する高親和性及び選択性によりタンパク質標的の腔若しくは活性部位に結合すること、薬剤様式柔軟性、半減期の合目的化、並びに薬剤発見の容易性及び迅速性が含まれる。
【0185】
ナノボディは、1つの遺伝子によってコードされ、ほとんどすべての原核生物及び真核生物宿主、例えば大腸菌(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第6,765,087号参照)、カビ(例えば、アスペルギルス又はトリコデルマ)、及び酵母(例えば、サッカロマイセス、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ハンセヌラ(Hansenula)又はピキア)(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許第6,838,254号参照)において効率的に生産される。生産過程は計測可能であり、数キログラム量のナノボディが生産されている。ナノボディは、従来の抗体と比較して優れた安定性を発揮するので、これらは、長期貯蔵寿命があり、すぐに使用可能な溶液として製剤化することができる。
【0186】
ナノクローン法(例えば、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる国際公開公報06/079372号参照)は、B細胞の自動化ハイスループット選択に基づき、所望の標的に対してナノボディを生成する特許取得済みの方法である。
【0187】
(BST1に対するユニボディの生産)
ユニボディの生産は、別の抗体断片技術である。しかしながら、これは、IgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づくものである。ヒンジ領域の欠失は、従来のIgG4抗体の基本的に半分のサイズであり、かつIgG4抗体の二価結合領域よりもむしろ一価結合領域を有する分子を生じる。IgG4抗体が不活性で、それゆえ免疫系と相互作用しないことも周知であり、これは免疫応答が望ましくない場合における疾患の治療に有利であり得、この効果はユニボディに受け継がれている。例えば、ユニボディは、これらが結合した細胞を阻害又は抑制するが、死滅させないように機能し得る。加えて、癌細胞に結合するユニボディは、癌細胞が増殖することを刺激しない。さらに、ユニボディは従来型IgG4抗体の約半分のサイズであるので、これらは、潜在的に有利な効率でより大きな固形腫瘍により良好な分布を示し得る。ユニボディは、全IgG4抗体と同等の速度で身体から排出され、これらの抗原に対し全抗体と同等の親和性で結合することができる。ユニボディの詳細は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる特許(国際公開公報第2007/059782号)を参照することにより得ることができる。
【0188】
(BST1に対するDARPinの生産)
DARPin(設計されたアンキリンリピートタンパク質(Designed Ankyrin Repeat Proteins))は、非抗体ポリペプチドの結合能力を利用するために開発された、抗体模倣体DRP(設計されたリピートタンパク質(Designed Repeat Protein))技術の1つの例である。アンキリン又はロイシンリッチリピートタンパク質などのリピートタンパク質は遍在的な結合分子であり、抗体と異なった様式で、細胞内及び細胞外で生じる。これらの固有のモジュラー構造は、構造単位を反復すること(繰返し)を特徴とし、これらはともに積み重なり、可変的及びモジュラー標的結合表面を提示する長いリピートドメインを形成する。このモジュラリティに基づき、高度に多様化された結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリを作製することができる。この戦略には、可変表面残基を提示する自家和合性リピートのコンセンサス設計及びリピートドメインへのこれらのランダムなアセンブリが含まれる。
【0189】
DARPinは、細菌発現系において非常に高収率で生産でき、これらは公知の最も安定なタンパク質に属する。ヒト受容体、サイトカイン、キナーゼ、ヒトプロテアーゼ、ウイルス及び膜タンパク質を含む広範囲の標的タンパク質に対し高度に特異的で高親和性なDARPinが選択された。一桁台のナノモルからピコモル範囲に親和性を有するDARPinを得ることができる。
【0190】
DARPinは、ELISA、サンドイッチELISA、フローサイトメトリー解析(FACS)、免疫組織化学法(IHC)、チップ適用、親和性精製又はウエスタンブロット法を含む、広範囲の用途に使用されている。DARPinは、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合した細胞内マーカータンパク質として、細胞内区画内で非常に活性であることも判明した。DARPinは更に、pM範囲のIC50でウイルス侵入を阻害するのに使用された。DARPinは、タンパク質‐タンパク質相互作用を遮断するのに理想的であるだけでなく、酵素も阻害する。プロテアーゼ、キナーゼ及び輸送体は、ほぼアロステリック阻害様式で良好に阻害された。腫瘍上の非常に速くかつ特異的な富化並びに血液比率に対する腫瘍の高度な優位性により、DARPinがインビボ診断又は治療アプローチに非常に適するようになる。
【0191】
DARPin及び他のDRP技術に関する追加的情報は、米国特許出願公開第2004/0132028号及び国際公開公報第02/20565号に見出すことができ、これらはともに、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0192】
(BST1に対するアンチカリンの生産)
アンチカリンは更なる抗体模倣技術であるが、この場合における結合特異性は、ヒト組織及び体液において自然にかつ豊富に発現される低分子量ファミリーのタンパク質である、リポカリンに由来する。リポカリンは、化学的に感応性な又は不溶な化合物の生理学的輸送及び貯蔵に関連して、インビボにおける一定の範囲の機能を実行するために進化してきた。リポカリンは、タンパク質の一方の末端で4つのループを支持する、高度に保存されたβバレルを含む、堅固な固有の構造を有する。これらのループは、結合ポケットへの入口、及び個々のリポカリンの間の結合特異性におけるバリエーションの主因である分子のこの部分における高次構造的な差異を形成する。
【0193】
保存されたβ-シートフレームワークにより支持される超可変ループの全体構造は免疫グロブリンを暗示し、リポカリンは、サイズに関してかなり抗体と異なり、これは、単一の免疫グロブリンドメインよりもわずかに大きい160〜180アミノ酸の単一のポリペプチド鎖からなる。
【0194】
リポカリンはクローン化され、これらのループは、アンチカリンを作製するために操作に供される。構造的に多様なアンチカリンのライブラリが作製されており、アンチカリンディスプレイは、結合機能の選択及びスクリーニングを可能にし、続いて、原核生物系又は真核生物系の更なる分析のための可溶タンパク質の発現及び生産がなされる。試験は、アンチカリンが実質的にヒト標的タンパク質に特異的であるように開発できることを良好に実証し、これらは単離することができ、ナノモル以上の範囲の結合親和性で得ることができる。
【0195】
アンチカリンは、二重標的化タンパク質、いわゆるデュオカリンとして形式化することもできる。デュオカリンは、標準的な製造法を用いて、1つの容易に生成された単量体タンパク質における2つの別々の治療標的に結合するとともに、その2つの結合ドメインの構造方向性(structural orientation)にかかわらず、標的特異性及び親和性を保持する。
【0196】
単一の分子を介する複数の標的の調節は、1つよりも多くの原因因子を含むことが公知の疾患において、特に有利である。さらに、デュオカリンなどの二価又は多価の結合様式は、疾患において細胞表面分子を標的化すること、シグナル伝達経路においてアゴニスト的効果を媒介すること、又は細胞表面受容体の結合及びクラスタリングを介する強化された内部移行効果を誘導することにおいて、顕著な潜在性を有する。さらにまた、デュオカリンの高度に固有な安定性は単量体アンチカリンに匹敵し、柔軟な製剤及びデュオカリンの送達能を提供する。
【0197】
アンチカリンに関する追加的情報は、米国特許第7,250,297号及び国際公開公報第99/16873号に見出すことができ、これらはともに、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0198】
(BST1に対するアビマーの生産)
アビマーは、インビトロエキソンシャフリング及びファージディスプレイによりヒト細胞外受容体ドメインの大きなファミリーから進化し、結合特性及び阻害特性を有するマルチドメインタンパク質を生じる。複数の独立する結合ドメインを連結することは、結合能力を生み出すことが示されており、従来の単一エピトープ結合タンパク質と比較して親和性及び特異性の向上をもたらす。他の考えられ得る利点には、大腸菌における複数標的特異的分子の単純かつ効果的な生産、耐熱性の向上及びプロテアーゼに対する耐性が含まれる。ナノモル未満の親和性を有するアビマーは、種々の標的に対して得られている。
【0199】
アビマーに関する追加的情報は、米国特許出願公開第2006/0286603号、同2006/0234299号、同2006/0223114号、同2006/0177831号、同2006/0008844号、同2005/0221384号、同2005/0164301号、同2005/0089932号、同2005/0053973号、同2005/0048512号、同2004/0175756号に見出すことができ、これらはすべて、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0200】
(BST1に対するバーサボディの生産)
バーサボディは、15%超のシステインを有する3〜5 kDaの小さいタンパク質であり、これは、高いジスルフィド密度足場を形成し、一般的なタンパク質が有する疎水性核を置換する。疎水性核を含み、少数のジスルフィドを有する多数の疎水性アミノ酸の置換は、より小さく、より親水性で(より少ない凝集及び非特異的結合)、プロテアーゼ及び熱に対してより耐性があり、かつより低密度のT細胞エピトープを有するタンパク質を生じる。これは、MHC提示に大部分寄与する残基が疎水性であるからである。これら4つの特性のすべては、免疫原性に影響を及ぼすことが周知であるとともに、これらは、免疫原性を大きく減少させると予測される。
【0201】
バーサボディについてのインスピレーションは、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリ及びアネモネによって産生される天然の注射可能なバイオ医薬品から生じ、これらは、予想外に低い免疫原性を示すことが公知である。サイズ、疎水性、タンパク質分解性抗原プロセシング、及びエピトープ密度を設計し、スクリーニングすることにより選択された天然のタンパク質ファミリーで開始することは、天然の注射可能なタンパク質の平均をはるかに下回るレベルまで最小化する。
【0202】
バーサボディの構造を前提とする場合、これらの抗体模倣体は、多価性、複特異性、半減期機構の多様性、組織標的化モジュール、及び抗体Fc領域の存在しない状態を含む、多用な様式を提供する。さらに、バーサボディは大腸菌において高収率で生産され、これらの親水性及び小さなサイズにより、バーサボディは高度に可溶性であり、高濃度で製剤化することができる。バーサボディは、例外的に、熱安定性(バーサボディは沸騰可能である。)であり、長期の貯蔵寿命をもたらす。
【0203】
バーサボディに関する追加的情報は、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0191272号において見出すことができる。
【0204】
(親和性試薬の発現)
(抗体の発現)
本発明の抗体は、抗体合成に関する当該技術分野で公知のいずれかの方法、特に、化学合成によって、又は組換え発現によって生産することができ、好ましくは組換え発現法によって生産される。
【0205】
抗体又はその断片、誘導体又は類似体の組換え発現は、抗体をコードする核酸の構築を必要とする。抗体ヌクレオチド配列が公知である場合、抗体をコードする核酸は、(例えば、Kutmeierらの文献1994:BioTechniques, 17:242に記載されているように)化学的に合成されたオリゴヌクレオチドから集成してもよく、これは、簡単にいうと、抗体をコードする配列の部分を含有した重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、そして、PCRによる連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
【0206】
または、抗体をコードする核酸は、抗体をクローニングすることによって得ることができる。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが利用できないが、抗体分子の配列が公知の場合、抗体をコードする核酸は、適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリ、又は抗体を発現するいずれかの組織又は細胞から生産されるcDNAライブラリ)から、配列の3'及び5'末端にハイブリダイズし得る合成プライマーを使用するPCR増幅、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって、得ることができる。
【0207】
特定の抗原を特異的に認識する抗体分子(又は、かかる抗体をコードする核酸をクローニングするためのcDNAライブラリのための供与源)が利用することができない場合、特定の抗原に特異的な種の抗体は、当該技術分野で公知のいずれかの方法によって、例えばウサギなどの動物を免疫して、ポリクローナル抗体を生産することによって、又は例えばモノクローナル抗体を生産することによって、生産することができる。または、少なくとも抗体のFab部分をコードするクローンは、(例えば、Huseらの文献1989:Science 246:1275-1281に記載されているように)特異抗原に結合するFab断片のクローン用のFab発現ライブラリをスクリーニングすることによって、又は抗体ライブラリをスクリーニングすることによって(例えば、Clacksonらの文献1991:Nature 352:624;Haneらの文献1997:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4937参照)、得ることができる。
【0208】
一旦、少なくとも抗体分子の可変ドメインをコードする核酸が得られたら、これを、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含有するむベクターに導入することができる(例えば、国際公開公報第86/05807号;同89/01036号;及び、米国特許第5,122,464号参照)。完全な抗体分子の発現を可能にする核酸との同時発現のための完全な軽鎖又は重鎖を含有するベクターも利用することができる。そして、抗体をコードする核酸を使用して、スルフヒドリル(sulfhydyl)基を含有しないアミノ酸残基との鎖内ジスルフィド結合に関与する1以上の可変領域システイン残基を置換する(又は欠失させる)のに必要なヌクレオチド置換又は欠失を導入することができる。かかる修飾は、ヌクレオチド配列における特定の突然変異又は欠失の導入のための当該技術分野で公知のいずれかの方法、例えば化学的突然変異誘発、インビトロ部位特異的突然変異誘発(Hutchinsonらの文献1978:J. Biol. Chem. 253:6551)、PCTに基づく方法などであるが、これらに限定されない方法で行うことができる。
【0209】
さらに、適切な生物活性のヒト抗体分子由来遺伝子とともに適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の生産のために開発された技術(Morrisonらの文献1984:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:851-855;Neubergerらの文献1984:Nature 312:604-608;Takedaらの文献1985:Nature 314:452-454)を使用することができる。上述したように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物の種に由来する分子、例えば、マウスmAb及びヒト抗体定常領域に由来する可変領域を有する、例えばヒト化抗体などの分子である。
【0210】
一旦、本発明の抗体分子をコードする核酸が得られたら、抗体分子の生産のためのベクターは、当該技術分野で周知の技術を使用する組換えDNA法によって生産することができる。したがって、抗体分子の配列を含有する核酸を発現することにより本発明のタンパク質を生産するための方法が本明細書に記載される。当業者に周知の方法を用いて、抗体分子コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA法、合成法、及びインビボ遺伝子組換え法が含まれる。例えば、Sambrookらの文献(1990, 「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)及びAusubelら(編)の文献(1998, 「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」, John Wiley & Sons, NY)に記載されている技術を参照されたい。
【0211】
発現ベクターを従来技術によって宿主細胞に移入し、次いで、トランスフェクト細胞を従来技術によって培養し、本発明の抗体を生産する。
【0212】
本発明の組換え抗体を発現するのに使用される宿主細胞は、大腸菌などの細菌細胞、又は好ましくは特に組換え抗体分子全体の発現のための真核細胞のいずれかであってもよい。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期遺伝子プロモータエレメントなどのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foeckingらの文献1986:Gene 45: 101;Cockettらの文献1990:BioTechnology 8:2)。
【0213】
種々の宿主‐発現ベクター系を、本発明の抗体分子を発現させるのに利用してもよい。かかる宿主‐発現系は、関心対象のコード配列を生産し、その後に精製され得る媒体を表すだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換されたか又はトランスフェクトされた場合、本発明の抗体分子をインサイチュで発現し得る細胞も表し得る。これらには、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)などの微生物;抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス、ピキア);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクターで感染させた植物細胞系(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)、又は抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;又は、哺乳動物細胞のゲノムに由来する(例えば、メタロチオネインプロモータ)若しくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモータ(例えば、アデノウイルス後期プロモータ、ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)を含有する組換え発現構築物を保有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
【0214】
細菌系では、発現される抗体分子の意図される用途に応じて、多数の発現ベクターを都合よく選択することができる。例えば、大量のかかるタンパク質が生産される場合、抗体分子を含む医薬組成物の生産のために、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を命令するベクターが望ましいと考えられる。かかるベクターには、抗体コード配列がインフレームでlacZコード領域を有するベクターにそれぞれ連結され、それゆえ、融合タンパク質が生産され得る、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherらの文献1983:EMBO J. 2:1791);pINベクター(Inouye及びInouyeの文献1985:Nucleic Acids Res. 13:3101-3109);Van Heeke及びSchusterの文献:1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターを使用して、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させてもよい。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン‐アガロースビーズへの吸着及び結合、続く遊離グルタチオンの存在下における溶出により、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出することができるように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0215】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)を使用する。ウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個々にクローン化することができ、AcNPVプロモータ(例えば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下に配置することができる。哺乳動物宿主細胞において、多くのウイルスに基づく発現系(例えば、アデノウイルス発現系)を利用することができる。
【0216】
上述のように、挿入された配列の発現を調節するか、又は望まれる特定の様式で遺伝子産物を修飾及び加工された宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のかかる修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能に重要であり得る。
【0217】
組換え抗体の長期多収生産のためには、安定な発現が好ましい。例えば、安定的に関心対象の抗体を発現する細胞系は、細胞を抗体のヌクレオチド配列及び選択可能な(例えば、ネオマイシン又はハイグロマイシン)ヌクレオチド配列を含む発現ベクターでトランスフェクトすること、及び選択可能マーカーの発現について選択することにより、生産することができる。かかる改変細胞株は、抗体分子と直接又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価に特に有用であり得る。
【0218】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増加させることができる(総説については、Bebbington及びHentschelの文献:「DNAクローニングにおける哺乳動物細胞中のクローン化遺伝子の発現についての遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」, 第3版 (Academic Press, New York, 1987)を参照)。抗体を発現するベクター系においてマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養に存在する阻害剤のレベルを高めることは、マーカー遺伝子の複製数を増加させる。増幅された領域は抗体遺伝子と関係するので、抗体の生産も増加する(Crouseらの文献1983:Mol. Cell. Biol. 3:257)。
【0219】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、すなわち、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクター、及び軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターにより同時トランスフェクトしてもよい。2つのベクターは、同等の重鎖及び軽鎖ポリペプチドの発現を可能にする、同一の選択可能なマーカーを含有していてもよい。または、重鎖及び軽鎖ポリペプチドをともにコードする1つのベクターを使用してもよい。かかる状況において、有毒な遊離重鎖過剰を避けるために、軽鎖を重鎖の前に配置する必要がある(Proudfoot, 1986, Nature 322:52;Kohler, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197)。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含んでいてもよい。
【0220】
一旦本発明の抗体分子が組換え発現されたならば、これを、抗体分子の精製のための当該技術分野で公知のいずれかの方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインA若しくは特異抗原などを用いる親和性クロマトグラフィー、及びサイズカラムクロマトグラフィー)、遠心単離、差動的溶解度により、又はタンパク質精製のための他のいずれかの標準的技術により、精製することができる。
【0221】
または、いずれかの融合タンパク質は、発現される融合タンパク質に対して特異的な抗体を利用することによって、容易に精製することができる。例えば、Janknechtらの文献に記載されている系は、ヒト細胞株おいて発現される非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknechtらの文献1991:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-897)。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳可能に融合されるように、関心対象遺伝子をワクシニア組換えプラスミドにサブクローニングする。タグは、融合タンパク質に対するマトリクス結合ドメインとして有用である。組換えワクシニアウイルスを感染させた細胞由来の抽出物をNi2+ニトリロ酢酸‐アガロースカラムにかけ、ヒスチジンタグを付けたタンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0222】
次いで、これらの方法により生産された抗体を、関心対象の精製ポリペプチドとの親和性及び特異性について最初にスクリーニングし、必要であれば、抗体の親和性及び特異性の結果を、結合から除外されることが望まれるポリペプチドと比較することによって、選択してもよい。スクリーニング手順には、マイクロタイタープレートの別々のウェルにおける精製ポリペプチドの固定化を含めることができる。次いで、可能性のある抗体又は抗体群を含有する溶液をそれぞれのマイクロタイターのウェルに入れ、約30分間〜2時間インキュベートする。そして、マイクロタイターのウェルを洗浄し、標識化二次抗体(例えば、産生抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼに結合された抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間インキュベートし、その後洗浄する。基質をウェルに添加し、固定されたポリペプチドに対する抗体が存在する場合、呈色反応がみられる。
【0223】
次いで、こうして同定された抗体を、選択したアッセイデザインにおいて親和性及び特異性について更に分析してもよい。標的タンパク質に関するイムノアッセイの開発において、精製した標的タンパク質は、選択された抗体を使用するイムノアッセイの感受性及び特異性を判断するための標準として機能する。種々の抗体の結合親和性は異なり得るので、(例えば、サンドイッチアッセイにおいて)特定の抗体対が立体配置的になどで互いに妨げることがあり得、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対親和性及び特異性よりも重要な基準であり得る。
【0224】
当業者であれば、多くのアプローチは、抗体又は結合断片を生産すること、種々のポリペプチドに対する親和性及び特異性についてスクリーニング及び選択することに採用できるが、これらのアプローチが本発明の範囲を変更しないことを認識する。
【0225】
治療的使用に関し、抗体(特に、モノクローナル抗体)は、好適には、ヒト又はヒト化動物(例えば、マウス)抗体であってもよい。動物抗体は、免疫原としてヒトタンパク質(例えば、BST1)を使用し、動物において産生することができる。ヒト化は、通常、これにより同定されるCDRをヒトフレームワーク領域に移植することを含む。通常、鎖の高次構造を最適化するために、その後、一部のレトロ突然変異が必要とされる。かかる方法は当業者に公知である。
【0226】
(アフィボディの発現)
アフィボディの構築は、他に記載されており(Ronnmark J, Gronlund H, Uhln, M., Nygren P.Aの文献:「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA(IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655)、アフィボディファージディスプレイライブラリの構築を含む(Nord, K., Nilsson, J., Nilsson, B., Uhln, M.及びNygren, P.Aの文献:「a-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリ(A combinatorial library of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1995, Protein Eng. 8, 601-608。Nord, K., Gunneriusson, E., Ringdahl, J., Stahl, S., Uhlen, M.及びNygren, P.Aの文献:「a-ヘリカル細菌受容体ドメインのコンビナトリアルライブラリから選択された結合タンパク質(Binding proteins selected from combinatorial libraries of an a-helical bacterial receptor domain)」, 1997, Nat. Biotechnol. 15, 772-777)。
【0227】
バイオセンサ結合試験を用いて最適なアフィボディ変異体を調査するためのバイオセンサ分析も、他に記載されている(Ronnmark J, Gronlund H, Uhlen, M., Nygren P.Aの文献:「プロテインAのコンビナトリアル工学からのヒト免疫グロブリンA(IgA)特異リガンド(Human immunoglobulin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A)」, 2002, Eur. J. Biochem. 269, 2647-2655)。
【0228】
(親和性試薬修飾)
好適な実施態様において、抗体又はその断片などの抗BST1親和性試薬は、診断部分(検出可能な標識など)又は治療的部分に結合される。抗体は、診断に、又は所定の治療計画の有効性を判断するのに使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質(標識)に連結することによって促進することができる。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、ポジトロン放射金属(ポジトロン放出断層撮影における使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。一般に、本発明による診断に使用する、抗体に結合することができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ、適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリトリンが含まれ、適切な発光物質には、ルミノールが含まれ、適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ、適切な放射性核種には、125I、131I、111In及び99Tcが含まれる。68Gaも利用することができる。
【0229】
上に示すように、本発明に使用する抗体などの親和性試薬は、細胞毒素、薬剤(例えば、免疫抑制薬)又は放射性毒素などの治療的部分に結合することができる。かかる結合体は、本明細書中で「免疫結合体」とも称される。1以上の細胞毒素を含む免疫結合体は「免疫毒素」と称される。細胞毒素又は細胞傷害性物質には、細胞に対して有害な(例えば、死滅させる)いずれかの物質が含まれる。その例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD,1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにこれらの類似体又は相同体が挙げられる。治療剤の例としては、例えば、アンチメタボライト(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)も挙げられる。
【0230】
本発明の抗体に結合可能な治療用細胞毒素の他の好適な例としては、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、メイタンシン及びアウリスタチン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。カリケアマイシン抗体結合体の例は市販されている(Mylotarg(登録商標);American Home Products社製)。
【0231】
細胞毒素は、当該技術分野において利用可能なリンカー技術を使用して、本発明の抗体に結合することができる。抗体に細胞毒素を結合させるのに使用するリンカーの種類の例としては、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、及びペプチド含有リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、リソソーム区画内の低いpHによって切断されやすい、又はカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織において優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼによって切断されやすいものを選択することができる。
【0232】
細胞毒素の例は、例えば、米国特許第6,989,452号、同7,087,600号、及び同7,129,261号、国際特許出願第PCT/US2002/17210号、同PCT/US2005/017804号、同PCT/US2006/37793号、同PCT/US2006/060050号、同PCT/US2006/060711号、国際公開公報第2006/110476号、並びに米国特許出願第60/891,028号(これらの開示はすべて、全体において引用により本明細書中に組み込まれる。)に記載されている。細胞毒素の種類、リンカー、及び抗体への治療剤の結合方法についての更なる論考については、Saito, G.らの文献(2003):Adv. Drug Deliv. Rev. 55: 199-215;Trail, P.A.らの文献(2003):Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;Payne, G.の文献(2003):Cancer Cell 3:207-212;Allen, T.M.の文献(2002):Nat. Rev. Cancer 2:750-763;Pastan, I.及びKreitman, R. J.の文献(2002):Curr. Opin. Investig. Drugs 3: 1089-1091;Senter, P.D.及びSpringer, C.J.の文献(2001):Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
【0233】
また、本発明の抗体は、放射性同位体に結合して、細胞傷害性放射性医薬品(放射性免疫結合体ともいう。)を生成することもできる。診断又は治療に使用する抗体に結合することができる放射性同位元素の例としては、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90及びルテチウム177が挙げられるが、これらに限定されない。放射性免疫結合体の調製方法は、当該技術分野で確立されている。放射性免疫結合体の例は、商業的に入手可能であり、Zevalin(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals社製)、及びBexxar(登録商標)(Corixa Pharmaceuticals社製)を含み、類似した方法を、本発明の抗体を使用して放射性免疫結合体を調製するのに用いることができる。
【0234】
本発明の抗体結合体を使用して、所定の生物反応を改善することができ、また、薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されるように解釈することはできない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。かかるタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素若しくはジフテリア毒素などの酵素活性のある毒素若しくはその活性断片;腫瘍壊死因子若しくはインターフェロン‐γなどのタンパク質;又は、例えば、リンホカイン、インターロイキン‐1(「IL-1」)、インターロイキン‐2(「IL-2」)、インターロイキン‐6(「IL-6」)、顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、若しくは他の成長因子などの生物反応調節剤が含まれ得る。Senter P.D.の文献(2009):Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244; Kovtun et al. (2010) Cancer Res. 70(6):2528-2537を参照されたい。
【0235】
抗体にかかる治療的部分を結合させる技術は、周知であり、例えば、Arnonらの文献:「癌治療における薬剤の免疫標的化のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」, 「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy)」, Reisfeldら編, pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromらの文献:「ドラッグデリバリーのための抗体(Antibodies For Drug Delivery)」, 「ドラッグデリバリー制御(Controlled Drug Delivery)(第2版)」, Robinson ら編, pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpeの文献:「癌治療における細胞傷害性物質の抗体担体:総説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」:「モノクローナル抗体'84:生物学的及び臨床応用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)」, Pincheraら編, pp. 475-506 (1985);「癌治療における放射性同位元素標識化抗体の治療的使用に予想される分析、結果及び将来 (Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」, 「癌検出及び治療におけるモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy)」, Baldwinら編, pp. 303-16 (Academic Press 1985);及び、Thorpeらの文献:Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)を参照されたい。
【0236】
または、Segalにより米国特許第4,676,980号に記載されているように、抗体を第2の抗体に結合し、抗体ヘテロ結合体を形成することができる。
【0237】
抗体は、結合される治療的部分の有無にかかわらず、単独で、又は細胞傷害性因子及び/若しくはサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用することができる。
【0238】
本発明は、抗体介在性(antibody-directed)細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を誘導する、完全ヒト又はヒト化抗体も提供する。完全ヒト抗体は、タンパク質配列が天然に存在するヒト免疫グロブリン配列によってコードされており、単離された抗体産生ヒトBリンパ球、又は、染色体領域をコードするマウス免疫グロブリンがオルソログ的なヒト配列により置換されたマウスのトランスジェニックマウスBリンパ球のいずれかに由来する。後者の型のトランスジェニック抗体には、HuMab(Medarex社、CA)及びXenoMouse(Abgenix社、CA)が含まれるが、これらに限定されない。ヒト化抗体は、適切な抗原特異性の非ヒト抗体分子の定常領域が、適切なエフェクター機能を有するヒト抗体の、好ましくはIgGサブタイプの定常領域により置換される抗体である(Morrisonらの文献1984:Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851-855; Neubergerらの文献1984:Nature 312:604-608;Takedaらの文献1985:Nature 314:452-454)。適切なエフェクター機能にはADCCが含まれ、これは、完全ヒト抗体又はヒト化抗体が癌細胞の表面上の標的に結合した場合、通常の免疫系の一部であるリンパ球の細胞死滅特性のスイッチを入れることによる、自然過程である。これらの活性なリンパ球、いわゆるナチュラルキラー(NK)細胞は、抗体が結合する生存細胞を破壊するために、細胞傷害過程を用いる。ADCC活性は、抗原特異的抗体及び免疫適格の生存ヒト対象から抽出した末梢血単核細胞の存在下、ユーロピウム(Eu3+)標識された生存細胞からのEu3+の放出を測定することにより検出及び定量化することができる。ADCC過程は、Janeway Jr. C.A.らの文献:Immunobiology, 第5版, 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X; Pier G.B.らの文献:Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5; Albanell J.らの文献:Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68、及びWeng, W.-K.らの文献:Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947に詳細に記載されている。ADCCの検出及び定量化のための適切な方法は、Blombergらの文献:Journal of Immunological Methods. 1986, 86:p225-9; Blombergらの文献:Journal of Immunological Methods. 1986, 21;92:p117-23、並びにPatel及びBoydの文献:Journal of Immunological Methods. 1995, 184:p29-38に見出すことができる。
【0239】
ADCCは、通常、NK細胞の活性化を含み、NK細胞の表面上のFc受容体によって、抗体で被覆した細胞の認識に依存する。Fc受容体は、標的細胞の表面に特異的に結合した、IgGなどの抗体のFc(結晶質)部分を認識する。NK細胞の活性化を誘発するFc受容体は、CD16又はFcγRIIIaと呼ばれている。一旦FcγRIIIa受容体がIgG Fcに結合すると、NK細胞は、IFN-γなどのサイトカイン、並びに標的細胞に入り、アポトーシスを誘発することによって細胞死を促進するパーフォリン及びグランザイムを含有する細胞傷害性顆粒を放出する。
【0240】
抗体による抗体依存性細胞傷害(ADCC)の誘導は、抗体定常領域(Fc)と、免疫系の細胞の表面に存在する種々の受容体との間の相互作用を変える修飾により強化することができる。かかる修飾には、哺乳動物細胞での天然合成若しくは組換え合成時において、抗体のFcに通常添加される複雑なオリゴ糖鎖におけるα1,6結合フコース部分の減少又は欠如が含まれる。好適な実施態様において、抗体又はその断片などの非フコシル化抗BST1親和性試薬は、ADCC反応を誘導するこれらの能力を強化するために生産される。
【0241】
Fcのオリゴ糖鎖におけるα1,6結合フコース部分を低減又は切除する技術は十分に確立されている。第1の例において、組換え抗体は、α1,6結合のフコースを、N結合二分岐複雑型Fcオリゴ糖の最も内側のN-アセチルグルコサミンに加えるその能力が欠損した細胞株において合成される。かかる細胞株には、低レベルのα1,6-フコシル基転移酵素遺伝子(FUT8)を発現するラットハイブリドーマYB2/0が含まれるが、これに限定されない。好ましくは、抗体は、FUT8遺伝子の両方の複製の欠失により、α1,6結合フコシル部分を複雑なオリゴ糖鎖に加えることができない細胞株において合成される。かかる細胞株には、FUT8-/- CHO/DG44細胞株が含まれるが、これに限定されない。部分的にフコシル化された若しくは非フコシル化された抗体及び親和性試薬を合成する技術は、Shinkawaらの文献:J. Biol. Chem. 278:3466-34735 (2003);Yamane-Ohnukiらの文献:Biotechnology and Bioengineering 87: 614-22 (2004)、並びに国際公開公報第00/61739 A1号、同02/31140 A1号及び同03/085107 A1号に記載されている。第2の例において、組換え抗体のフコシル化は、二分したN-アセチルグルコサミンを運搬する複雑なN結合オリゴ糖の生産を最大にするレベルで糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼを過剰発現させるように遺伝子操作した細胞株の合成によって、低減されるか又は中止される。例えば、抗体は、酵素N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT III)を発現する、チャイニーズハムスター卵巣細胞株において合成される。好適な糖タンパク質修飾グリコシル転移酵素で安定的にトランスフェクトされた細胞株、及びこれらの細胞を使用する抗体の合成法は、国際公開公報第99/54342号に開示されている。
【0242】
非フコシル化抗体又は親和性試薬は、単独で、又は細胞傷害性因子及び/若しくはサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用することができる。
【0243】
更なる修飾において、抗体Fcのアミノ酸配列は、リガンド親和性に影響を及ぼすことなく、ADCC活性化を高めるように変更される。かかる修飾の例は、Lazarらの文献:Proceedings of the National Academy of Sciences 2006, 103: p4005-4010;国際公開公報第03/074679号及び同2007/039818号に記載されている。これらの例において、239位のセリンのアスパラギン酸へ、及び332位のグルタミン酸のイソロイシンへなどの抗体Fc内のアミノ酸の置換は、Fc受容体への抗体の結合親和性を変更し、ADCC活性化の増加をもたらした。
【0244】
アミノ酸置換によりADCC活性化が増強された抗体試薬は、単独で、又は細胞傷害性因子及び/又はサイトカインと組み合わせて投与される治療薬として使用することができる。
【0245】
また、本発明は、第1の標的エピトープ(すなわち、BST1)に対する少なくとも1つの第1の結合特異性及び第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を有する、二重特異性分子も提供する。第2の標的エピトープは、第1の結合特異性により結合されたものと同じ標的タンパク質に存在すると考えられる。または、第2の標的エピトープは、第1の結合特異性により結合された第1のタンパク質に結合されたものと異なる標的タンパク質に存在すると考えられる。第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープ(すなわち、BST1)と同じ細胞に存在し得る。または、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープを提示する細胞によって提示されない標的に存在し得る。本明細書に使用する「結合特異性」という用語は、少なくとも1つの抗体可変ドメインを含む部分を指す。
【0246】
これらの二重特異性分子は、T細胞クローン性増殖及びT細胞傷害性などの、エフェクター細胞(例えば、CD3若しくはCD5発現細胞傷害性T細胞)及びトリガーCD3又はCD5媒介エフェクター細胞活性を示すBST1発現細胞を標的とする。本発明の二重特異性抗体は、全2つ又は3つの抗体可変ドメイン有し、二重特異性抗体の第1の部分は、ヒト免疫エフェクター細胞に位置するエフェクター抗原に特異的に結合することにより、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を補強することができ、エフェクター抗原は、ヒトCD3又はCD5抗原であり、前述の第1の部分は、1つの抗体可変ドメインからなり、二重特異性抗体の第2の部分は、エフェクター抗原以外の標的抗原、例えばBST1に特異的に結合することができ、前述の標的抗原は、前述のヒト免疫エフェクター細胞以外の標的細胞に位置し、前述の第2の部分は、1つ又は2つの抗体可変ドメインを含む。
【0247】
(本発明の疾患を含む癌の診断)
本発明によれば、本発明の疾患を有することが疑われるか又は有することが既知の対象から得られた骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺若しくは膵臓の組織、血清、血漿又は尿の試験試料を診断又はモニタリングするのに使用することができる。一実施態様において、(本発明の疾患を有しない対象由来の)対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるBST1の存在量の変化は、本発明の疾患の存在を示す。別の実施態様において、対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるBST1の相対的存在量は、本発明の疾患のサブタイプを示す(例えば、炎症性乳癌、家族性若しくは散発性結腸直腸癌、腎細胞癌、扁平上皮細胞肺癌腫、小細胞癌、又は膵臓の内分泌腫瘍)。さらに別の実施態様において、対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるBST1の相対的存在量は、本発明の疾患(例えば、転移の可能性)の程度又は重篤性を示す。上述した方法のいずれかにおいて、BST1の検出は、場合により、本発明の疾患についての1以上の追加的なバイオマーカーの検出と組み合わせることができる。本明細書に記載する好ましい技術、キナーゼアッセイ、BST1を検出し及び/又は視覚化するイムノアッセイ(例えば、ウエスタンブロット、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫組織化学法など)を含むがこれらに限定されない、いずれかの適切な方法を用いて、BST1のレベルを測定することができる。更なる態様において、対照試料又はあらかじめ決定された基準範囲と比較しての試験試料におけるBST1をコードするmRNAの存在量の変化は、本発明の疾患の存在を示す。いずれかの適切なハイブリダイゼーションアッセイ法を用いて、BST1をコードするmRNAを検出し及び/又は視覚化することによりBST1発現を検出することができる(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチュハイブリダイゼーションなど)。
【0248】
本発明の別の実施態様において、BST1に特異的に結合する標識化抗体(又は他の親和性試薬)、その誘導体及び類似体は、本発明の疾患を検出し、診断し又はモニタリングするための診断目的に使用することができる。本発明の疾患は、動物において、より好ましくは哺乳動物、及び最も好ましくはヒトにおいて検出されることが好ましい。
【0249】
(スクリーニングアッセイ)
本発明は、BST1に結合し、又はBST1の発現若しくは活性に対し刺激効果若しくは阻害効果を有する物質(例えば、候補化合物又は試験化合物)を同定する方法を提供する。また、本発明は、BST1関連ポリペプチド若しくはBST1融合タンパク質に結合するか、又はBST1関連ポリペプチド若しくはBST1融合タンパク質の発現若しくは活性に対し刺激効果若しくは阻害効果を有する物質、候補化合物又は試験化合物を同定する方法を提供する。物質、候補化合物又は試験化合物の例としては、核酸(例えば、DNA及びRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体、低分子及び他の薬物が挙げられるが、これらに限定されない。物質は、次に示すものを含む、当該技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリ法における多数のアプローチのいずれかを用いて得ることができる:生物学的ライブラリ;空間的にアドレス指定可能な並列固相又は溶液相ライブラリ;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリ法;及び、親和性クロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリ法。生物学的ライブラリアプローチはペプチドライブラリに限られるが、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー又は低分子ライブラリに適用することができる(Lamの文献1997:Anticancer Drug Des. 12:145;米国特許第5,738,996号;及び、米国特許第5,807,683号。それぞれ、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。)。
【0250】
分子ライブラリの合成についての方法の例は、当該技術分野において、例えば、DeWittらの文献1993:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909;Erbらの文献1994:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:11422;Zuckermannらの文献1994:J. Med. Chem. 37:2678;Choらの文献1993:Science 261:1303;Carrellらの文献1994:Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carellらの文献1994:Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;及び、Gallopらの文献1994:J. Med. Chem. 37:1233に見出すことができる。これらはそれぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0251】
化合物のライブラリは、例えば、溶液中に(例えば、Houghtenの文献1992:BioTechniques, 13:412-421)、又はビーズ上に(Lamの文献1991:Nature 354:82-84)、チップ(Fodorの文献1993:Nature, 364:555-556)、細菌に(米国特許第5,223,409号)、胞子(特許番号5,571,698;5,403,484;及び5,223,409)、プラスミドに(Cullらの文献1992:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1865-1869)若しくはファージに(Scott及びSmithの文献1990:Science, 249:386-390;Devlinの文献1990:Science 249:404-406;Cwirlaらの文献1990:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382;及びFeliciの文献1991:J. Mol. Biol. 222:301-310)存在し得、これらはそれぞれ、引用によりそのすべてが本明細書中に組み込まれる。
【0252】
一実施態様において、BST1、BST1断片(例えば、機能的に活性な断片)、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片、又はBST1融合タンパク質と相互作用する(すなわち、結合する)物質は、細胞に基づくアッセイ系で同定される。本実施態様によれば、BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片、又はBST1融合タンパク質を発現する細胞を候補化合物又は対照化合物と接触させ、BST1と相互作用する候補化合物の能力を決定する。所望の場合、このアッセイを用いて、複数(例えば、ライブラリ)の候補化合物をスクリーニングすることができる。細胞は、例えば原核生物起源(例えば、大腸菌)又は真核生物起源(例えば、酵母又は哺乳動物)であり得る。さらに、細胞は、BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質を内因的に発現することができるか、又はBST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質を発現するように遺伝子操作することができる。特定の場合において、BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質、又は候補化合物は、例えば、放射性標識(例えば、32P、35S及び125I)又は蛍光標識(例えば、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド又はフルオレサミン)で標識化し、BST1と候補化合物との間の相互作用の検出を可能にする。BST1、BST1の断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質により直接又は間接的に相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で決定することができる。例えば、候補化合物と、BST1、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質との間の相互作用は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降又はウエスタンブロット分析によって決定することができる。
【0253】
別の実施態様において、BST1、BST1断片(例えば、機能的に活性な断片)、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質と相互作用する(すなわち、結合する)物質は、無細胞アッセイ系で同定される。本実施態様によれば、天然型若しくは組換え型のBST1若しくはその断片、天然型若しくは組換え型のBST1関連ポリペプチド若しくはその断片、BST1融合タンパク質若しくはその断片を候補化合物又は対照化合物と接触させ、BST1、又はBST1関連ポリペプチド、又はBST1融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力を決定する。所望の場合、このアッセイ法を用いて、複数(例えば、ライブラリ)の候補化合物をスクリーニングすることができる。好ましくは、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質は、はじめに、例えばBST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質を、これらを特異的に認識し結合する固定された抗体(若しくは他の親和性試薬)と接触させることにより、又はBST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質の精製調製物を、タンパク質に結合するように設計された表面と接触させることにより、固定される。BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質は、部分的に若しくは完全に精製し得る(例えば、部分的に又は完全に他のポリペプチドがない)か、又は細胞溶解物の一部であり得る。さらに、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド又はBST1関連ポリペプチドの断片は、BST1若しくはその生物学的活性部分、又はBST1関連ポリペプチド、及びグルタチオンSトランスフェラーゼなどのドメインを含む融合タンパク質であり得る。または、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質は、当業者に周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals社(Rockford, IL)製)を使用してビオチン化することができる。BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で決定することができる。
【0254】
別の実施態様において、細胞に基づくアッセイ系を用いて、BST1の生産若しくは分解の原因であるか、又はBST1の翻訳後修飾の原因である酵素などのタンパク質又はその生物学的活性部分に結合し又はその活性を調節する物質を同定する。一次スクリーニングにおいて、複数(例えば、ライブラリ)の化合物を、自然に又は組換えにより次に示すものを発現する細胞と接触させる:(i)BST1、BST1アイソフォーム、BST1相同体、BST1関連ポリペプチド、BST1融合タンパク質又は前述のいずれかの生物学的に活性な断片;及び、(ii)BST1、BST1アイソフォーム、BST1相同体、BST1関連ポリペプチド、BST1融合タンパク質のプロセシングの原因であるタンパク質、又はBST1、BST1アイソフォーム、BST1相同体、BST1関連ポリペプチド、BST1融合タンパク質若しくは断片の生産、分解又は翻訳後修飾を調節する化合物を同定するための断片。そして、必要に応じて、一次スクリーニングにおいて同定された化合物を、自然に又は組換えによりBST1を発現する細胞に対する二次スクリーニングにおいてアッセイすることができる。BST1、アイソフォーム、相同体、BST1関連ポリペプチド又はBST1融合タンパク質の生産、分解又は翻訳後修飾を調節する候補化合物の能力は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、免疫沈降及びウエスタンブロット分析を含むがこれらに限定されない、当業者に公知の方法で決定することができる。
【0255】
別の実施態様において、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質に競合的に相互作用する(すなわち、結合する)物質を競合結合アッセイで同定する。本実施態様によれば、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質を発現する細胞を、候補化合物、及びBST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させ、次いで、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質に優先的に相互作用する候補化合物の能力を決定する。または、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド又はBST1関連ポリペプチドの断片に優先的に相互作用する(すなわち、結合する)物質は、無細胞アッセイ系において、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片、若しくはBST1融合タンパク質を、候補化合物、及びBST1、BST1関連ポリペプチド若しくはBST1融合タンパク質と相互作用することが公知の化合物と接触させることにより同定される。上述したように、BST1、BST1断片、BST1関連ポリペプチド、BST1関連ポリペプチドの断片若しくはBST1融合タンパク質と相互作用する候補化合物の能力は、当業者に公知の方法で決定することができる。これらの細胞に基づくアッセイ、又は無細胞アッセイのいずれかを用いて、複数(例えば、ライブラリ)の候補化合物をスクリーニングすることができる。
【0256】
別の実施態様において、BST1又はBST1関連ポリペプチドの発現又は活性を調節する(すなわち、上方制御するか若しくは下方制御する)物質は、BST1又はBST1関連ポリペプチドを発現する細胞(例えば、原核生物起源若しくは真核生物起源の細胞)を候補化合物又は対照化合物(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS))と接触させること、及び、BST1、BST1関連ポリペプチド、又はBST1融合タンパク質、BST1をコードするmRNA、又はBST1関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現を決定することにより同定される。候補化合物の存在下におけるBST1、BST1関連ポリペプチド、BST1をコードするmRNA又はBST1関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルは、候補化合物の存在しない状態における(例えば、対照化合物の存在下における)BST1、BST1関連ポリペプチド、BST1をコードするmRNA又はBST1関連ポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルと比較される。そして、候補化合物は、この比較に基づいて、BST1又はBST1関連ポリペプチドの発現のモジュレータと同定することができる。例えば、BST1又はmRNAの発現が、その存在しない状態よりも候補化合物の存在下で顕著に多い場合、候補化合物はBST1又はmRNAの発現の刺激因子と同定される。または、BST1又はmRNAの発現が、その存在しない状態よりも候補化合物の存在下で顕著に少ない場合、候補化合物はBST1又はmRNAの発現の阻害因子と同定される。BST1又はこれをコードするmRNAの発現レベルは、当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、mRNA発現は、ノーザンブロット分析又はRT-PCRにより評価することができ、タンパク質レベルは、ウエスタンブロット分析により評価することができる。
【0257】
別の実施態様において、BST1又はBST1関連ポリペプチドの活性を調節する物質は、BST1若しくはBST1関連ポリペプチドを含む調製物、又はBST1若しくはBST1関連ポリペプチドを発現する細胞(例えば、原核生物若しくは真核生物細胞)を、試験化合物若しくは対照化合物と接触させること、及び、BST1又はBST1関連ポリペプチドの活性を調節する(例えば、刺激若しくは阻害する)試験化合物の能力を決定することにより、同定される。BST1又はBST1関連ポリペプチドの活性は、BST1若しくはBST1関連ポリペプチドの細胞シグナル伝達経路の誘導(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)を検出すること、適切な基質における標的の触媒若しくは酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、BST1若しくはBST1関連ポリペプチドに応答性であり、かつ検出可能なマーカー(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする核酸に機能的に連結された、調節エレメント)の誘導を検出すること、又は、細胞応答、例えば細胞分化若しくは細胞増殖を検出することにより、評価することができる。本記載に基づき、当業者に公知の技術が、これらの活性を測定するのに使用することができる(例えば、米国特許第5,401,639号(引用により本明細書中に組み込まれる。)参照)。そして、候補化合物は、対照化合物に対する候補化合物の効果を比較することにより、BST1又はBST1関連ポリペプチドの活性のモジュレータと同定することができる。適切な対照化合物には、リン酸緩衝食塩水(PBS)及び通常の食塩水(NS)が含まれる。
【0258】
別の実施態様において、BST1又はBST1関連ポリペプチドの発現、活性、又は発現及び活性の両方を調節する(すなわち、上方制御するか若しくは下方制御する)物質を動物モデルにおいて同定する。適切な動物の例としては、マウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、使用する動物は、本発明の疾患のモデルを表す(例えば、ヌードマウス若しくはSCIDマウスにおけるMCF-7(Ozzello L, Sordat M., Eur J Cancer. 1980; 16:553-559)及びMCF10AT(Millerらの文献:J Natl Cancer Inst. 1993;85:1725-1732)などの乳癌細胞系の異種移植片;エストロゲン欠乏SCIDマウスにおけるMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌細胞系の異種移植片, Eccles らの文献:1994 Cell Biophysics 24/25, 279;CAKI-1(Matthews PN, Grant AG, Hermon-Taylor J. Brの文献:J Cancer. 1984年2月; 49(2): 193-198), 786-O(G. J. STREWLERらの文献:Endocrinology Vol. 119, No. 1 303-310)、及びヌードマウスにおけるACHN(Zeng J, Mei W, Huang H, Li X, Kong P.らの文献:J Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci. 2002;22(4):331-3)A549及びH460などの非小細胞肺癌細胞系の異種移植片、並びに、ヌードマウスにおける、MIA PaCa-2などの膵癌細胞系のNCI-H345又は異種移植片などの小細胞肺癌細胞系の異種移植片, Marincolaらの文献:J Surg Res 1989年12月;47(6):520-9)。これらのモデルにおいて示される病理は、本発明の疾患の病理と類似しているので、これらは、BST1のレベルを調節する試験化合物に利用することができる。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を(例えば、経口的に、直腸に又は非経口的に、例えば腹膜内に又は静注で)適切な動物に投与し、BST1又はBST1関連ポリペプチドの発現、活性、又は発現及び活性の両方における効果を判断する。BST1又はBST1関連ポリペプチドの発現における変化は、先に概要を示した方法で評価することができる。
【0259】
さらに、別の実施態様において、BST1又はBST1関連ポリペプチドは、BST1又はBST1関連ポリペプチドに結合するか又は相互作用する他のタンパク質を同定するためのツーハイブリッドアッセイ又はスリーハイブリッドアッセイにおける「ベイトタンパク質」として使用される(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosらの文献(1993):Cell 72:223-232; Maduraらの文献(1993):J. Biol. Chem. 268:12046-12054;Bartelらの文献(1993):BioTechniques 14:920-924;Iwabuchiらの文献(1993):Oncogene 8:1693-1696;及び、国際公開公報第94/10300号参照)。当業者に認識されているように、かかる結合タンパク質は、例えば、BST1が関与するシグナリング経路の上流又は下流の要素として、BST1によりシグナルの伝播に関与する可能性もある。
【0260】
本発明は、先に記載したスクリーニングアッセイ法により同定される新規物質、及び本明細書に記載するような治療におけるその使用を更に提供する。加えて、本発明はまた、本発明の疾患の治療用医薬の製造における、BST1と相互作用するか又はその活性を調節する物質の使用についても提供する。
【0261】
(BST1の治療的使用)
本発明は、治療用化合物の投与による種々の疾患及び障害の治療又は予防を提供する。かかる化合物には、次に示す化合物が含まれるが、これらに限定されない:BST1、BST1類似体、BST1関連ポリペプチド及びその誘導体(断片を含む);前述のものに対する抗体(又は他の親和性試薬);BST1、BST1類似体、BST1関連ポリペプチド及びその断片をコードする核酸;BST1又はBST1関連ポリペプチドをコードする遺伝子に対するアンチセンス核酸;及び、BST1又はBST1関連ポリペプチドをコードする遺伝子のモジュレータ(例えば、アゴニスト及びアンタゴニスト)。本発明の重要な特徴は、本発明の疾患などの癌に関与するBST1の非変異体(lon-variant)をコードする遺伝子の同定である。本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織におけるBST1の機能又は発現を減少させる治療用化合物の投与により治療することができる(例えば、症状を寛解させるか又は発症若しくは進行を遅延させることができる)か又は予防することができる。
【0262】
一実施態様において、それぞれBST1に特異的に結合する1以上の抗体(若しくは他の親和性試薬)を、単独で、又は1以上の追加的な治療用化合物若しくは治療と組み合わせて投与する。
【0263】
抗体(又は他の親和性試薬)などの生物学的生成物は、例えば、これが投与される対象に対し同種(allogeneic)である。一実施態様において、ヒトのBST1若しくはヒトのBST1関連ポリペプチド、ヒトのBST1若しくはヒトのBST1関連ポリペプチドをコードする核酸、又はヒトのBST1若しくはヒトのBST1関連ポリペプチドに対する抗体(若しくは他の親和性試薬)を、治療法(例えば、症状を寛解させるか又は発症若しくは進行を遅延させる)又は予防のためにヒト対象に投与する。
【0264】
理論により制限されることなく、BST1に特異的に結合する抗体(又は他の親和性試薬)の治療的活性は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の現象を介して達成できることが考えられる(例えば、Janeway Jr. C.A.らの文献:Immunobiology, 第5版, 2001, Garland Publishing, ISBN 0-8153-3642-X; Pier G.B. らの文献:Immunology, Infection, and Immunity, 2004, p246-5;Albanell J. らの文献:Advances in Experimental Medicine and Biology, 2003, 532:p2153-68及び、Weng, W.-K. らの文献:Journal of Clinical Oncology, 2003, 21:p 3940-3947参照)。
【0265】
(本発明の疾患の治療及び予防)
例えば、本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象への、又は本発明の疾患を発生する危険性のある対象への、本発明の疾患を有しない対象の血清若しくは組織と比較して本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織に示差的に存在するBST1のレベル又は活性(すなわち、機能)を調節する(すなわち、増加させるか若しくは減少させる)化合物の投与により、治療又は予防される。一実施態様において、本発明の疾患は、本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象への、又は本発明の疾患が発生する危険性のある対象への、本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織において減少したBST1のレベル又は活性(すなわち、機能)を上方制御する(すなわち、増加させる)化合物を投与することにより、治療又は予防される。かかる化合物の例としては、BST1のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はリボザイム、BST1に対する抗体(又は他の親和性試薬)、及びBST1の酵素活性を阻害する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の有用な化合物、例えば、BST1のアンタゴニスト及びBST1の低分子アンタゴニストは、インビトロアッセイを用いて同定することができる。
【0266】
また、癌、例えば本発明の疾患は、かかる癌を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象への、又はかかる癌を発生する危険性のある対象への、かかる癌を有する対象の血清又は組織において増加したBST1のレベル又は活性(すなわち、機能)を下方制御する化合物の投与により、治療又は予防される。かかる化合物の例としては、次に示すものが挙げられるが、これらに限定されない:BST1、BST1の断片及びBST1関連ポリペプチド;(例えば、遺伝子療法における使用のための)BST1、BST1の断片及びBST1関連ポリペプチドをコードする核酸;及び、酵素活性を有するBST1又はBST1関連ポリペプチドのための、酵素活性を調節することが公知の化合物又は分子。使用可能な他の化合物、例えばBST1のアゴニストは、インビトロアッセイを用いて同定することができる。
【0267】
別の実施態様において、治療又は予防は、個々の対象の必要に合わせて調製する。したがって、特定の実施態様において、BST1のレベル又は機能を促進する化合物は、BST1のレベル若しくは機能がないか、又は対照若しくは正常の基準範囲と比較してBST1のレベル若しくは機能が減少している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。更なる実施態様において、BST1のレベル又は機能を促進する化合物は、BST1のレベル若しくは機能が対照若しくは基準範囲と比較して増加している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。更なる実施態様において、BST1のレベル又は機能を減少させる化合物は、BST1のレベル若しくは機能が対照若しくは基準範囲と比較して増加している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。更なる実施態様において、BST1のレベル又は機能を減少させる化合物は、BST1のレベル若しくは機能が対照若しくは基準範囲と比較して減少している、癌、例えば本発明の疾患を有することが疑われるか若しくは有することが既知の対象に、治療的に若しくは予防的に投与される。かかる化合物の投与によるBST1の機能又はレベルにおける変化は、例えば、試料(例えば、血液若しくは尿)を得ることにより、及びBST1のインビトロレベル若しくは活性、又はBST1をコードするmRNAのレベル、又は前述のいずれかの組合せをアッセイすることにより、容易に検出することができる。かかるアッセイは、本明細書に記載するように、本化合物の投与前及び投与後に行うことができる。
【0268】
本発明の化合物には、BST1プロファイルを正常に回復させるいずれかの化合物、例えば、有機低分子、タンパク質、ペプチド、抗体(又は他の親和性試薬)、核酸などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、いずれかの他の化学療法剤と組み合わせて供することができる。
【0269】
(ワクチン療法)
本発明の別の態様は、BST1若しくはそのエピトープ含有断片、又はBST1をコードする核酸若しくはその断片を、場合により免疫賦活剤とともに含む、免疫原性組成物、好適にはワクチン組成物である。
【0270】
また、かかる組成物を対象に投与することを含む免疫応答を高める方法、並びに、かかる組成物の治療有効量をその必要のある対象に投与することを含む、癌、例えば本発明の疾患の治療方法又は予防方法、及び本発明の疾患の予防又は治療に使用するかかる組成物も提供する。
【0271】
したがって、BST1は、抗原性物質として有用であり、癌、例えば本発明の疾患の治療又は予防のためのワクチンの製造に使用することができる。かかる物質は、「抗原性」及び/又は「免疫原性」であり得る。通常、「抗原性」とは、タンパク質が抗体(若しくは他の親和性試薬)を生じるように使用できるか、又は実際に対象若しくは実験動物における抗体反応を誘導できることを意味する。「免疫原性」とは、タンパク質が、対象又は実験動物において保護免疫応答などの免疫応答を誘発できることを意味する。したがって、後者の場合、タンパク質は、抗体反応を発生させるだけでなく、抗体に基づかない免疫応答も発生させ得る。また、「免疫原性」は、タンパク質がインビトロ設定(例えば、T細胞増殖アッセイ)における免疫様反応を誘発することができるか否かも含む。適切な免疫応答の生成は、1以上のアジュバントの存在及び/又は抗原の適切な提示を必要とし得る。
【0272】
当業者は、BST1の相同体又は誘導体も抗原性/免疫原性物質としての使用が見出されることを認識する。したがって、例えば、1以上の付加、欠失、置換などを含むタンパク質が本発明に含まれる。加えて、一方のアミノ酸を別の類似の「型」に置き換えることが可能であり得る。例えば、一方の疎水性アミノ酸を別のものに置き換える。アミノ酸配列を比較するために、CLUSTALプログラムなどのプログラムを使用することができる。このプログラムはアミノ酸配列を比較し、適切にいずれかの配列にスペースを挿入することにより最適なアライメントを見出す。最適なアライメントについてのアミノ酸同一性又は類似性(アミノ酸型の同一性及び保存)を算出することができる。BLASTxのようなプログラムは、類似配列で最も長いストレッチを配置し、値を適合させるように割り当てる。このようにして複数の類似領域が見出される比較を得ることが可能であり、そのそれぞれは異なるスコアを有する。両方のタイプの分析が本発明で考慮される。
【0273】
相同体及び誘導体の場合、本明細書に記載するタンパク質との同一性の程度は、相同体又は誘導体がその抗原性及び/又は免疫原性を保持することよりも重要ではない。しかしながら、好適には、本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチドと少なくとも60%の類似性を有する(上述のような)相同体又は誘導体、例えば、少なくとも80%の類似性などの少なくとも70%の類似性を有する相同体又は誘導体が提供される。特に、少なくとも90%又は更に95%の類似性を有する相同体又は誘導体が提供される。好適には、相同体又は誘導体は、本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチドと少なくとも60%の配列同一性を有する。好ましくは、相同体又は誘導体は、少なくとも70%の同一性を有し、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有する。最も好ましくは、相同体又は誘導体は、少なくとも90%又は更に95%の同一性を有する。
【0274】
代替的なアプローチにおいて、相同体又は誘導体は、例えば所望のタンパク質又はポリペプチドに効果的にタグを付けることによって精製がより容易になる部分を組み込んだ融合タンパク質であり得る。これは、「タグ」を除去するのに必要であるか、又は、これは、融合タンパク質自体が有用であるのに十分な抗原性を保持する場合でもあり得る。
【0275】
エピトープ領域、すなわちタンパク質又はポリペプチドの抗原性又は免疫原性の原因となるその領域を同定するのに抗原性タンパク質又はポリペプチドをスクリーニングできることは周知である。当業者に周知の方法は、抗原性について断片及び/又は相同体及び/又は誘導体を試験するのに用いることができる。したがって、本発明の断片には、1以上のかかるエピトープ領域が含まれる必要があるか、又は、本発明の断片は、これらの抗原性/免疫原性特性を保持するためにかかる領域に十分に類似する必要がある。そして、本発明による断片について、これらは本明細書に記載するタンパク質又はポリペプチド、相同体若しくは誘導体の特定の部分と100%同一であり得るので、同一性の程度は恐らく無関係と考えられる。重要な問題は、再度、断片が、その由来するタンパク質の抗原性/免疫原性特性を保持するということである。
【0276】
相同体、誘導体及び断片にとって重要なことは、これらが、その由来するタンパク質又はポリペプチドの抗原性/免疫原性の少なくとも1つの程度を有することである。したがって、追加的な本発明の態様において、BST1の抗原性若しくは免疫原性断片、又はその相同体若しくは誘導体が提供される。
【0277】
BST1又はその抗原性断片は、精製された若しくは単離された調製物として、単独で提供することができる。これらは、本発明の1以上の他のタンパク質又はその抗原性断片との混合物の一部として提供することができる。したがって、更なる態様において、本発明は、BST1及び/又はその1以上の抗原性断片を含む抗原組成物を提供する。かかる組成物は、癌、例えば本発明の疾患の検出及び/又は診断に使用することができる。
【0278】
本発明によるワクチン組成物は、予防用ワクチン組成物又は治療用ワクチン組成物のいずれかであってもよい。
【0279】
本発明のワクチン組成物には、1以上のアジュバント(免疫賦活剤)が含まれ得る。当該技術分野で周知の例としては、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル類、及び不完全フロイントアジュバントなどの油中水乳剤が挙げられる。他の有用なアジュバントは、当業者に周知である。
【0280】
癌の治療のためにワクチン組成物に使用する適切なアジュバントには、次に示すものが含まれる:3De-Oアシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL又は単なるMPLとして公知である。国際公開公報第92/116556号参照)、サポニン、例えばQS21又はQS7、及び例えば国際公開公報第95/26204号に開示されているCpG含有分子などのTLR4アゴニスト。使用するアジュバントは、構成要素、例えば、MPL及びQS21又はMPL、QS21及びCpG含有部分の組合せであってもよい。アジュバントは、水中油乳剤又はリポソーム製剤として製剤化することができる。かかる製剤には、他のビヒクルが含まれ得る。
【0281】
別の実施態様において、BST1又はBST1のペプチド断片をコードするヌクレオチド配列に相補的な10以上の連続するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの調製物を、癌、例えば本発明の疾患の治療のためのワクチンとして使用する。かかる調製物には、アジュバント又は他のビヒクルが含まれ得る。
【0282】
(本発明の疾患を治療するためのBST1の阻害)
本発明の一実施態様において、癌、例えば本発明の疾患は、かかる癌を有しない対象の血清又は組織と比較して、かかる癌を有する対象の血清又は組織において上昇するBST1のレベル及び/又は機能をアンタゴナイズする(阻害する)化合物の投与により治療されるか又は予防される。
【0283】
この目的のために有用な化合物には、抗BST1抗体(又は他の親和性試薬、並びにその結合領域を含有する断片及び誘導体)、BST1のアンチセンス又はリボザイム核酸、及び相同組換えによる内因性BST1機能を「ノックアウト」するのに使用することができる非機能的BST1をコードする核酸が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Capecchiの文献1989:Science 244:1288-1292参照)。BST1の機能を阻害する他の化合物は、公知のインビトロアッセイ、例えば、別のタンパク質又は結合パートナーへのBST1の結合を阻害する、又はBST1の公知の機能を阻害する試験化合物の能力についてのアッセイの使用により、同定することができる。
【0284】
かかる阻害は、例えば、インビトロで又は細胞培養でアッセイすることができるが、遺伝的アッセイを利用することもできる。また、好ましい技術を使用して、化合物の投与の前後でBST1のレベルを検出することもできる。適切なインビトロ又はインビボアッセイは、以下により詳細に説明するように、具体的化合物の効果、及びその投与が罹患組織の治療を示すか否かを判断するのに利用される。
【0285】
特定の実施態様において、BST1の機能(活性)を阻害する化合物は、本発明による治療を受けていない、例えば本発明の疾患を有する対象の血清若しくは組織と比較して、BST1の血清若しくは組織レベル又は機能的活性の増加(例えば、正常レベル又は所望のレベルよりも高い)が検出される対象に治療的又は予防的に投与されるか、又は、かかる癌を有しない対象において見出されるレベル若しくは活性又はあらかじめ決定された基準範囲をもたらすように、治療的又は予防的に投与される。先に概説したように、当該技術分野における標準的方法を利用して、BST1のレベル又は機能における増加を測定することができる。BST1の適切な阻害因子組成物には、例えば、低分子、すなわち1000ダルトン以下の分子が含まれ得る。かかる低分子は、本明細書に記載するスクリーニング方法によって同定することができる。
【0286】
(治療用化合物又は予防用化合物のアッセイ)
本発明は、BST1の細胞外ドメインを発現する癌、例えば本発明の疾患の治療又は予防のための化合物の有効性を確認又は検証するための、薬剤開発に使用するアッセイも提供する。
【0287】
したがって、BST1の活性を調節する化合物のスクリーニングの方法が提供され、この方法は次に示すことを含む:(a)BST1又はその生物学的活性部分を候補化合物と接触させること;及び(b)BST1の活性がこれによって調節されているか否かを判断すること。かかる方法は、(a)BST1又はその生物学的活性部分を試料中の候補化合物と接触させることと、(b)前述の候補化合物を接触させた後の前述の試料中のBST1又はその生物学的活性部分の活性を、前述の候補化合物を接触させる前の前述の試料中のBST1又はその生物学的活性部分の活性と、又は基準レベルの活性と比較することとを含み得る。
【0288】
スクリーニングの方法は、BST1の活性を阻害する化合物のスクリーニングの方法であり得る。
【0289】
BST1又はその生物学的活性部分は、例えば細胞上に又は細胞により発現され得る。BST1又はその生物学的活性部分は、例えばこれを発現する細胞から単離することができる。BST1又はその生物学的活性部分は、例えば固相上に固定することができる。
【0290】
また、BST1又はBST1をコードする核酸の発現を調節する化合物のスクリーニングの方法も提供され、この方法は、(a)BST1又はBST1をコードする核酸を発現する細胞を候補化合物と接触させることと、(b)BST1又はBST1をコードする核酸の発現がこれにより調節されるか否かを判断することとを含む。かかる方法は、(a)BST1又はBST1をコードする核酸を発現する細胞を試料中の候補化合物と接触させることと、(b)前述の候補化合物を接触させた後の前述の試料中の細胞によるBST1又はBST1をコードする核酸の発現を、前述の候補化合物を接触させる前の前述の試料中の細胞のBST1又はBST1をコードする核酸の発現と、又は基準レベルの発現と比較することと、を含み得る。
【0291】
本方法は、BST1又はBST1をコードする核酸の発現を阻害する化合物のスクリーニング方法であり得る。
【0292】
本発明の他の態様には、次に示すものが含まれる:上述したスクリーニング方法により得ることができる化合物、BST1又はBST1をコードする核酸の活性又は発現を調節する化合物、例えば、BST1又はBST1をコードする核酸の活性又は発現を阻害する化合物。
【0293】
かかる化合物は、癌、例えば本発明の疾患の治療又は予防に使用するのに提供される。また、かかる化合物の治療有効量をその必要のある対象に投与することを含む、癌、例えば本発明の疾患を治療又は予防する方法も提供される。
【0294】
試験化合物は、かかる癌を有しない対象において見出されるレベルに対して例えば本発明の疾患を有する対象におけるBST1のレベルを回復させるか、又はかかる癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらす、これらの能力についてアッセイすることができる。癌、かかる癌を有しない対象において見出されるレベルに対して例えば本発明の疾患を有する対象におけるBST1のレベルを回復させることができるか、又はかかる癌の実験動物モデルにおいて同様の変化をもたらすことができる化合物を、更なる創薬のリード化合物として使用することができるか又は治療に使用することができる。BST1の発現は、好ましい技術、イムノアッセイ、ゲル電気泳動と、これに続く視覚化、BST1の活性の検出、又は本明細書に教示するか若しくは当業者に公知の他のいずれかの方法によってアッセイすることができる。かかる分析は、臨床モニタリングにおいて、又は薬剤開発において、候補薬物をスクリーニングするのに使用することができ、BST1の存在量は、臨床疾患の代理マーカーとして有用であり得る。
【0295】
種々の特定の実施態様において、インビトロアッセイを、対象の障害に関与する細胞型の代表的な細胞により行い、化合物が、かかる細胞型において所望の効果を有するか否かについて判断することができる。
【0296】
治療に使用する化合物は、ヒトでの試験前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなど含むが、これらに限定されない適切な動物モデル系で試験することができる。インビボ試験については、ヒトに対する投与の前に、当該技術分野で公知のいずれかの動物モデル系を使用することができる。本発明の疾患の動物モデルの例としては、ヌードマウス若しくはSCIDマウスにおけるMCF-7(Ozzello L, Sordat M., Eur J Cancer. 1980; 16:553-559)及びMCF10AT(Millerらの文献:J Natl Cancer Inst. 1993;85:1725-1732)などの乳癌細胞系の異種移植片;エストロゲン欠乏SCIDマウスにおけるMDA-MB-345などのヒト結腸直腸癌細胞系の異種移植片, Ecclesらの文献 1994 Cell Biophysics 24/25, 279;CAKI-1(Matthews PN, Grant AG, Hermon-Taylor J. Brの文献:J Cancer. 1984年2月; 49(2): 193-198), 786-O(G. J. STREWLERらの文献:Endocrinology Vol. 119, No. 1 303-310)、及びヌードマウスにおけるACHN(Zeng J, Mei W, Huang H, Li X, Kong P.らの文献:J Huazhong Univ Sci Technolog Med Sci. 2002;22(4):331-3)A549及びH460などの非小細胞肺癌細胞系の異種移植片、並びに、ヌードマウスにおける、MIA PaCa-2などの膵癌細胞系のNCI-H345又は異種移植片などの小細胞肺癌細胞系の異種移植片, Marincolaらの文献:J Surg Res 1989年12月;47(6):520-9が挙げられるが、これらに限定されない。これらのモデルにおいて示される病理は、例えば本発明の疾患の病理と類似しているので、上述のものは、BST1のレベルを調節する試験化合物に利用することができる。また、本開示に基づき、トランスジェニック動物がBST1をコードする遺伝子又は遺伝子群の「ノックアウト」変異を有して産生され得ることも、当業者にとって明らかである。遺伝子の「ノックアウト」変異は、変異された遺伝子を発現させなくするか、又は異常形態で若しくは低レベルで発現させる突然変異であり、その結果、遺伝子産物に関連する活性がほとんど又は完全になくなる。トランスジェニック動物は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはマウスである。
【0297】
一実施態様において、BST1の発現を調節する試験化合物は、非ヒト動物(例えばマウス、ラット、サル、ウサギ及びモルモット)において、好ましくはBST1を発現する本発明の疾患についての非ヒト動物モデルにおいて同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を動物に投与し、BST1の発現における試験化合物の効果を判断する。BST1の発現を変える試験化合物は、試験化合物で処置した動物若しくは動物群におけるBST1(若しくはこれをコードするmRNA)のレベルを、対照化合物で処置した動物若しくは動物群におけるBST1又はmRNAのレベルと比較することにより、同定することができる。当業者に公知の技術、例えばインサイチュハイブリダイゼーションを用いて、mRNA及びタンパク質レベルを測定することができる。動物は、試験化合物の効果をアッセイするために致死させることができるか、又は致死させなくてもよい。
【0298】
別の実施態様において、BST1又はその生物学的活性部分の活性を調節する試験化合物は、BST1を発現する、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、サル、ウサギ及びモルモット)、好ましくは本発明の疾患についての非ヒト動物モデルにおいて同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を動物に投与し、BST1の活性における試験化合物の効果を判断する。BST1の活性を変える試験化合物は、対照化合物で処置した動物、及び試験化合物で処置した動物をアッセイすることにより同定することができる。BST1の活性は、BST1の細胞セカンドメッセンジャー(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を検出すること、BST1若しくはその結合パートナーの触媒活性又は酵素活性を検出すること、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ若しくは緑色蛍光タンパク質などの検出可能なマーカーをコードする核酸を機能的に連結したBST1応答性調節エレメント)の誘導を検出すること、又は細胞応答(例えば、細胞分化若しくは細胞増殖)を検出することにより評価することができる。当業者に公知の技術は、BST1の活性の変化を検出するのに利用することができる(例えば、米国特許第5,401,639号(引用により本明細書中に組み込まれる。)参照)。
【0299】
さらに、別の実施態様において、BST1のレベル又は発現を調節する試験化合物は、例えば本発明の疾患を有するヒト対象において、好ましくは、例えば重篤な本発明の疾患を有するヒト対象において同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物をヒト対象に投与し、BST1の発現における試験化合物の効果を、生体試料(例えば、血清、血漿若しくは尿)中のBST1又はこれをコードするmRNAの発現を分析することにより判断する。BST1の発現を変える試験化合物は、対照化合物で処置した対象又は対象群におけるBST1又はこれをコードするmRNAのレベルを、試験化合物で処置した対象又は対象群におけるBST1又はこれをコードするmRNAのレベルと比較することにより、同定することができる。または、BST1の発現の変化は、試験化合物の投与前又は後の対象又は対象群におけるBST1又はこれをコードするmRNAのレベルを比較することによって確認することができる。当業者に公知の技術を使用して、生体試料を得、mRNA又はタンパク質発現を解析することができる。例えば、本明細書に記載する好ましい技術は、BST1のレベルの変化を評価するのに使用することができる。
【0300】
別の実施態様において、BST1の活性を調節する試験化合物は、例えば本発明の疾患を有するヒト対象(好ましくは、例えば重篤な本発明の疾患を有するヒト対象)で同定される。本実施態様において、試験化合物又は対照化合物をヒト対象に投与し、BST1の活性における試験化合物の効果を判断する。BST1の活性を変える試験化合物は、対照化合物で処置した対象由来の試料を、試験化合物で処置した対象由来の試料と比較することにより同定することができる。または、BST1の活性の変化は、試験化合物の投与前又は後の対象又は対象群におけるBST1の活性を比較することによって確認することができる。BST1の活性は、生体試料(例えば、血清、血漿若しくは尿)における、BST1の細胞シグナル伝達経路(例えば細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)、BST1若しくはその結合パートナーの触媒活性若しくは酵素活性、又は細胞応答、例えば、細胞分化若しくは細胞増殖の誘導を検出することにより評価することができる。当業者に公知の技術を使用して、BST1のセカンドメッセンジャーの誘導における変化、又は細胞応答の変化を検出することができる。例えば、RT-PCRを使用して、細胞セカンドメッセンジャーの誘導における変化を検出することができる。
【0301】
別の実施態様において、対照対象(例えば、本発明の疾患を有しないヒト)において検出されたレベルに対し、BST1のレベル又は発現を変化させる試験化合物は、更なる試験用途又は治療的使用のために選択される。別の実施態様において、対照対象(例えば、本発明の疾患を有しないヒト)において見出される活性に対し、BST1の活性を変化させる試験化合物は、更なる試験用途又は治療的使用のために選択される。
【0302】
別の実施態様において、例えば本発明の疾患に関連する1以上の症状の重篤性を減少させる試験化合物は、例えば本発明の疾患を有するヒト対象、特に、例えば重篤な本発明の疾患を有する対象で同定される。本実施態様により、試験化合物又は対照化合物を対象に投与し、本発明の疾患の1以上の症状における試験化合物の効果を判断する。1以上の症状を減少させる試験化合物は、対照化合物で処置した対象を、試験化合物で処置した対象と比較することにより同定することができる。例えば本発明の疾患に精通している医師に公知の技術を使用して、例えば本発明の疾患に関連する1以上の症状を減少させるか否かを判断することができる。例えば、本発明の疾患を有する対象において腫瘍量を減少させる試験化合物は、かかる対象に有益である。
【0303】
別の実施態様において、本発明の疾患のうちの1つを有するヒトにおいて、癌、例えば本発明の疾患に関連する1以上の症状の重篤性を減少させる試験化合物は、更なる試験用途又は治療的使用のために選択される。
【0304】
(治療用組成物及び予防用組成物及びこれらの使用)
本発明は、本発明の化合物の有効量を対象に投与することを含む、治療(及び予防)の方法を提供する。特定の態様において、本化合物は、実質的に精製されている(例えば、その作用を制限するか又は望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない。)。対象は、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどを含むがこれらに限定されない動物であり、例えばヒトなどの哺乳動物である。特定の実施態様において、非ヒト哺乳動物が対象である。
【0305】
本化合物が核酸を含む場合に利用することができる製剤及び投与方法は、先に記載されており、更なる適切な製剤及び投与経路は、以下に記載されている。
【0306】
例えば、リポソーム内のカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、本化合物を発現することができる組換え細胞、受容体媒介型エンドサイトーシス(例えば、Wu及びWuの文献:1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などの種々の送達系が公知であり、本発明の化合物を投与するのに使用することができる。導入方法には、経腸的又は非経口的であり得、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口経路が含まれるが、これらに限定されない。本化合物は、いずれかの好都合な経路により、例えば、注入又は大量瞬時投与により、上皮性又は粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜など)を介した吸収により投与することができ、他の生物活性物質とともに投与することができる。投与は、全身的又は局所的であり得る。さらに、脳室内及び髄腔内注射を含むいずれかの適切な経路により、本発明の医薬組成物を中枢神経系に導入することが望ましい可能性があり、例えば、脳室内注入は、例えばオマヤレザバー(Ommaya reservoir)などの貯蔵部に取り付けた脳室内カテーテルにより容易にすることができる。また、例えば吸入器又は噴霧器の使用により、及びエアロゾル化剤での処方により、肺投与も利用することができる。
【0307】
本発明の一態様において、本発明で利用される核酸は、例えば粒子媒介型表皮性送達を利用して真皮に送達することができる。
【0308】
特定の実施態様において、治療を必要とする領域に局所的に本発明の医薬組成物を投与することが望ましい場合があり、これは、例えば、限定されるものではないが、外科手術の間の局部的な注入、局所適用、例えば注射によって、カテーテルによって、又はインプラントによって達成してもよく、このインプラントは、サイラスティック(sialastic)膜などの膜を含む多孔性、非多孔性若しくはゲル状物質又は線維である。一実施態様において、投与は、骨髄、胸部、結腸直腸、腎臓、肺又は膵臓の組織への直接注入によるものであり得るか、又は悪性腫瘍組織若しくは新生物組織若しくは前新生物組織の部位(又は前者の部位)での直接注入によるものであり得る。
【0309】
別の実施態様において、本化合物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langerの文献1990:Science 249:1527-1533;Treatらの文献:「感染性疾患及び癌の治療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」中, Lopez Berestein及びFidler (編), Liss, New York, pp. 353-365 (1989);Lopez Beresteinの文献:同書, pp. 317-327;同書を一般に参照)。
【0310】
さらに、別の実施態様において、本化合物は、徐放系で送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Langerの文献,上述; Seftonの文献1987:CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldらの文献1980:Surgery 88:507; Saudekらの文献1989:N. Engl. J. Med. 321:574参照)。別の実施態様において、ポリマー物質を使用することができる(「徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer及びWise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御薬剤生体利用能、薬剤生産設計及び性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen及びBall (編), Wiley, New York (1984); Ranger及びPeppas, J.の文献1983:Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61参照。また、Levyらの文献1985:Science 228:190;Duringらの文献1989:Ann. Neurol. 25:351;Howardらの文献1989:J. Neurosurg. 71:105も参照)。さらに別の実施態様において、徐放系は、治療標的、例えば、膀胱、胸部、結腸、頭頸部、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、皮膚又は甲状腺の近傍に配置することができ、このため、全身用量の一部のみが必要とされるにすぎない(例えば、Goodsonの文献, 「徐放の医学的適用(Medical Applications of Controlled Release)」中,上述, vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。他の徐放系は、Langerによる総説(1990, Science 249:1527-1533)に論じられている。
【0311】
本発明の化合物がタンパク質をコードする核酸である特定の実施態様において、核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部としてこれを構築し、これが細胞内になるように投与することにより、例えばレトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286を参照)、又は直接注入により、又は微粒子照射の使用により(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont)、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクト試薬での被覆により、又は核内に入ることが公知のホメオボックス様ペプチドに関連付けてこれを投与すること(Joliotらの文献, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868)などにより、インビボで投与して、そのコードタンパク質の発現を促進することができる。または、核酸は、細胞内に導入し、相同組換えにより発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0312】
また、本発明は医薬組成物も提供する。かかる組成物は、治療有効量の化合物及び医薬として許容し得る担体を含む。特定の実施態様において、「医薬として許容し得る」という用語は、動物及びより具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局により適切に承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルをいう。かかる医薬担体は、水及び油などの滅菌液であり得、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物又は合成起源のものを含む。水は、医薬組成物を静脈内投与するときに好ましい担体である。特に注射用溶液については、生理食塩水並びに水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液も液体担体として利用することができる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望の場合、微量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤も含有し得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を採用することができる。組成物は、坐薬として、トリグリセリドなどの従来型の結合剤及び担体とともに製剤化することができる。経口製剤には、医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体が含まれ得る。適切な医薬担体の例は、E.W. Martinによる文献:「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。かかる組成物は、治療有効量の本化合物を、例えば精製した形態で、対象への投与に適した形態を提供するのに適切な量の担体とともに含有する。製剤化は、投与様式に適合させる必要がある。
【0313】
例えば、1以上の抗体が利用される実施態様において、本組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合させた医薬組成物としてルーチン手順に従い製剤化される。通常、静脈内投与用組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、本組成物には、溶解剤、及び注射部位における疼痛を緩和するリドカインなどの局所麻酔薬も含まれ得る。一般に、成分は、別々に、又は単位剤形、例えば活性剤の量を示すアンプル若しくはサッシェなどの密封封止容器内に乾燥凍結粉末として若しくは水を含まない濃縮物として混合され、供給される。本組成物を輸液により投与する場合、無菌医薬品等級の水又は生理食塩水を含有する輸液ボトルで供給することができる。本組成物が注射により投与される場合、成分が投与前に混合することができるように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0314】
本発明の化合物は、中性又は塩形態として製剤化することができる。医薬として許容し得る塩には、適切な場合、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基と形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの遊離カルボキシル基と形成されたものが含まれる。
【0315】
癌、例えば本発明の疾患の治療に効果的である本発明の化合物の量は、標準的な臨床技術により決定することができる。加えて、場合により、最適な用量範囲の確認を補助するのに、インビトロアッセイ法を用いることができる。また、製剤に利用される正確な用量は、投与経路及び疾患又は障害の重症度にも依存し、従事者の判断及び各対象の状況に従って決定されることを要する。ただし、静脈内投与に適切な用量範囲は、一般に、体重1キログラムあたり約20〜500 μgの活性化合物である。鼻腔内投与に適切な用量範囲は、一般に、約0.01 pg/kg体重〜1 mg/kg体重である。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から得た用量反応曲線から推定することができる。
【0316】
坐薬は、一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の活性成分を含有し、経口製剤は、好ましくは10%〜95%の活性成分を含有する。
【0317】
また、本発明は、本発明の医薬組成物の1以上の成分を充填した1以上の容器を備える医薬パック又はキットも提供する。かかる容器は、場合により、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府当局により規定された形態での通知を伴い得、この通知は(a)ヒト投与についての製造、使用又は販売の当該機関による承認、(b)使用の方向性、又はこれらの両方を反映する。
【0318】
したがって、キットが本発明で利用される抗体を備えるという態様において、例えば、抗体は、投与又は使用の前の再構成のために凍結乾燥することができる。キットが癌などの療法/治療における使用のための場合、抗体は、等張水溶液により再構成することができ、この等張水溶液は、キットに備えられている場合がある。一態様において、キットは、本発明で使用される免疫原性ポリペプチドなどのポリペプチドを備えており、これは、例えば凍結乾燥することができる。後者のキットは、免疫原性ポリペプチドを再構成するためのアジュバントを更に備え得る。
【0319】
また、本発明は、本明細書に記載する組成物、例えば、対象において免疫応答を誘発するための医薬組成物及び/又はワクチン組成物にも及ぶ。
【0320】
(イメージング技術によるBST1の存在量の測定)
イメージング技術によるBST1の存在量の測定の利点は、かかる方法が非侵襲性であり(試薬を投与する必要があり得ることは別として)、対象から試料を抽出する必要がないことであり得る。
【0321】
適切なイメージング技術には、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)が含まれる。かかる技術を使用するBST1の視覚化は、適切な標識、例えば18F、11C又は123Iなどの放射性トレーサの取り込み及び結合を必要とする(例えば、NeuroRx - The Journal of the American Society for Experimental NeuroTherapeutics (2005) 2(2), 348-360、及び技術の更なる詳細については上述の361-371頁を参照)。放射性トレーサ又は他の標識は、好適に標識された特定のリガンドの対象への投与により(例えば注入により)、BST1に組み込むことができる。または、これらは、(例えば注入により)対象に投与できるBST1に特異的な結合親和性試薬(例えば、抗体)に組み込むことができる。イメージングについてのアフィボディの使用に関する論考については、例えばOrlova A, Magnusson M, Eriksson TL, Nilsson M, Larsson B, Hoiden-Guthenberg I, Widstrom C, Carlsson J, Tolmachev V, Stahl S, Nilsson FYの文献:「ピコモル親和性HER2結合アフィボディ分子を使用する腫瘍イメージング(Tumor imaging using a picomolar affinity HER2 binding Affibody molecule)」, Cancer Res. 2006 Apr 15;66(8):4339-48を参照されたい。
【0322】
(免疫組織化学法を用いた本発明の疾患を含む癌の診断及び治療)
免疫組織化学法は、優れた検出法であり、それゆえ、本発明の疾患を含む癌の診断及び治療に非常に有用であり得る。免疫組織化学法は、蛍光色素、酵素、放射性元素又はコロイド金などのマーカーにより視覚化される抗原‐抗体相互作用を介する特異試薬として、BST1に特異的に結合する標識化抗体(又は他の親和性試薬)、その誘導体及び類似体の使用により、組織切片におけるBST1抗原の局在を介して、上述したような癌を検出し、診断し又はモニタリングするのに使用することができる。
【0323】
モノクローナル抗体技術の発達は、ヒト新生物の最新の正確な顕微鏡診断における免疫組織化学法の立場を確実にする際に極めて重要であった。免疫組織化学法による拡散した腫瘍的形質転換細胞の同定は、癌浸潤及び転移、並びに悪性度増加に対する腫瘍細胞関連免疫表現型の進化のより鮮明な画像を可能にする。将来の抗新生物治療アプローチには、個々の患者の腫瘍性疾患に伴う特定の免疫表現型的パターンに特異的な種々の個別的免疫治療が含まれ得る。更なる論考については、例えば、Bodey Bの論文:「新生物の診断及び治療における免疫組織化学法の意義(The significance of immunohistochemistry in the diagnosis and therapy of neoplasms)」, Expert Opin Biol Ther. 2002 Apr;2(4):371-93を参照されたい。
【0324】
本発明の各態様の好適な特徴は、必要な変更を加えた他の態様のそれぞれに関して同様である。本明細書に記載の先行技術文献は、法律により許容される最大範囲で組み込まれる。
【0325】
本発明は、次の非限定的な実施例によって示される。
【実施例】
【0326】
(実施例1:液体クロマトグラフィー‐質量分析(LC/MS)を使用する、慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌及び膵臓癌の組織において発現するBST1の同定)
次の参照プロトコルを用いて、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌及び膵臓癌の組織試料から抽出された膜タンパク質を消化し、得られたペプチドをタンデム質量によって配列決定した。
【0327】
(1.1 材料及び方法)
(1.1.1 原形質膜分画)
手順はすべて4℃で行った。慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌及び膵臓癌の組織から回収した細胞を均質化し、1000 Gで遠心分離した。その上清を採取し、超遠心分離機において49500 Gで遠心分離した。得られたペレットを回収し、1.4Mスクロースクッション上に置いた。ミクロソーム/原形質膜を相境界で回収し、PBS中で再緩衝化し、49500 Gで再度遠心分離した。次いで、ペレット(原形質膜画分)を液体クロマトグラフィー‐質量分析(LC/MS)によって分析した(下の2.1.2節参照)。
【0328】
(1.1.2 液体クロマトグラフィー‐質量分析(LC/MS)法)
慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌及び膵臓癌の組織試料由来のPBS中で懸濁した原形質膜画分を、卓上型遠心分離機において21460 Gの最高速度で、12〜14℃で45分間、遠心分離した。上清を除去し、4 mg/mlの濃度にした必要量の上清をペレットに戻した。次いで、等量の1 %w/v SDSを加えた。その後、試料を室温でボルテックスし、次いで、21460 Gで、12〜15℃で30分間、遠心分離した。ペレットを残して、試料を回収した。各タンパク質溶液の量を50 μgとし、150 μlの0.5 M重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)溶液を加えた。各試料に、3 μlの50 mMトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィンを加え、この混合物を、60℃で1時間、インキュベートした。次いで、イソプロパノール中1 μlのシステインブロッキング試薬、200 mMのメチルメタンチオスルホナート(MMTS)を加えた。室温で10分間のインキュベーション後、15 μlの1 μg/μlトリプシンを、各試料に加え、続いて、37℃で一晩インキュベートした。
【0329】
消化した試料を真空下で乾燥させ、0.1%水性ギ酸40 μlを加え、続いて、イオン交換分画前に、十分なトリフルオロ酢酸(TFA)を加え、溶液のpHを3未満まで低下させた。
【0330】
(1.1.3 分画及び標識化ペプチドの分析)
試料を、Agilent 1200クロマトグラフ(Agilent社(Santa Clara, CA, USA)製)を用いる、強陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画した。試料を、20分にわたり0〜100 mM酢酸ナトリウム、次いで10分にわたり1 Mまでの20 μl/分の勾配を用いて、Agilent Zorbax Bio-SCXIIカラム(3.5 μm;50×0.8 mm)から溶出し、その後、1 Mで25分間維持した。1分の画分を40分にわたって回収した。それぞれの画分に、2 μlの1% TFA溶液を加えた。その後、画分を-80℃で保存した。各画分を、PepMap 100 C18, 3um, 100Aカラム, 150mm×75 mm(LC Packings社製/Dionex)及びQスターエリート四重極飛行時間装置(Q-Star Elite quadrupole-time-of-flight instrument)(Applied Biosystems社製/MDS Sciex)を備えたエキジェントテンポクロマトグラフ(Ekigent Tempo chromatograph)を用いる液体クロマトグラフィー‐質量分析によって分析した。ペプチドを、60分でアセトニトリルが5%から40%まで増加する300 nl/分の勾配で溶出した。データを、MS/MSモードで、強度閾値を超える最大3つの前駆体イオンを選択し、ペプチドの配列決定を促進するのに収集した生成イオンスペクトルによって得た。以前の操作で既に検出した質量を除く、2回及び3回の操作による自動MS/MSモードで、3回の通過を行った。
【0331】
(1.1.4 標識化ペプチドのアミノ酸配列分析)
Paragon(商標)アルゴリズムを用いて、IPIバージョン3.58(www.ebi.ac.uk/IPI/IPIhuman.html)及び夾雑物のトリプシン配列からなる配列データベースに対し検索することにより、ピーク一覧からのアミノ酸配列を推測する、Protein Pilotソフトウェア(Applied Biosystems社製/MDS Analytical Technologies社製)によって、QSTARから生成した生データを加工した。ペプチド同定についての基準には、トリプシン消化、並びに種々の生物学的及び化学的修飾(酸化メチオニン、MMTS又はヨードアセトアミドによるシステイン修飾、並びにセリン、トレオニン及びチロシンのリン酸化)が含まれていた。60%以上の信頼性スコアを有するペプチドを、タンパク質群のうちの1つのみのペプチドが80%以上のスコアであると判断される基準を備えるタンパク質群として処理した。
【0332】
(1.1.5慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌膵臓癌に関連するタンパク質の識別)
BST1を同定する方法は、天然に存在するヒトタンパク質の上述の質量分析によって試験的に得られたペプチド配列を使用して、公開されているヒトゲノム配列におけるコード化エキソンを同定し、組織化するものである。
【0333】
これらの試験的に決定した配列を、国際公開公報第2009/087462号に記載されている、ペプチド質量、ペプチド記号(peptide signature)、EST及びパブリックドメインゲノム配列データの処理及び統合によって編集されたOGAP(登録商標)データベースと比較した。この方法を用いて、およそ100万のペプチド配列を発生させ、タンパク質コード遺伝子を同定し、これらのエキソンにより、膀胱癌中の506の遺伝子、乳癌中の4,713の遺伝子、バーキットリンパ腫中の766の遺伝子、子宮頸癌中の1,371の遺伝子、結腸直腸癌中の949の遺伝子、肝細胞癌中の1,782遺伝子、CLLの中の2,424遺伝子、肺癌中の978遺伝子、黒色腫中の1,764の遺伝子、卵巣癌中の1,033の遺伝子、膵臓癌中の2,961の遺伝子及び前立腺癌中の3,307の遺伝子を含む、67の種々の組織及び57の疾患において、18083の遺伝子のタンパク質配列が同定された。
【0334】
(1.2 結果)
本明細書に更に説明するように、これらの試験はBST1を同定した。完全長BST1は、慢性リンパ球性白血病、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌、卵巣癌及び膵臓癌の試料の原形質膜中で検出され、細胞質ゾルでは検出されなかった(図1a及び1g)。OGAP(登録商標)データベースの配列と、試験的に決定した配列との比較は、このタンパク質の予後及び診断の性質を示す、乳癌(表1a)、結腸直腸癌(表1b)、腎臓癌(表1c)、肺癌(表1d)、膵臓癌(表1e)、頭頸部癌(表1f)、卵巣癌(表1g)及び慢性リンパ球性白血病(表1h)に対して、BST1が高度の特異性を示すことを示した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0335】
(実施例2:絶対的定量及び相対的定量用同位体タグ(iTRAQ)を用いた肺癌組織試料において発現する膜タンパク質の同定)
次の参照プロトコルを使用して、結腸直腸癌、腎臓癌又は肺癌の組織及び隣接する正常組織試料から抽出した膜タンパク質を消化し、絶対的及び相対的定量試薬用同位体タグ(Isotope Tagging for Absolute & Relative Quantitation reagents)(iTRAQ; Applied Biosystems社(Foster City, CA, USA)製)によって標識化し、生じた相対的なペプチド発現レベルをタンデム質量分析によって配列決定した。
【0336】
(2.1 材料及び方法)
(2.1.1 原形質膜の分画)
肺癌及び肺の隣接する正常組織から回収した細胞を溶解し、1000 Gで遠心分離した。
上清を採取し、次いで、この上清を3000 Gで遠心分離した。再度、上清を採取し、次いで、この上清を100000 Gで遠心分離した。得られたペレットを回収し、15〜60%スクロース勾配に供した。ウエスタンブロットを使用して細胞内マーカーを同定し、原形質膜画分をプールした。次いで、プールした溶液をiTRAQによって直接分析した(下の2.1.2節参照)。
【0337】
(2.1.2 iTRAQ法)
肺癌組織及び隣接する正常な肺組織由来の膜タンパク質ペレットを、緩衝液の添加により試料緩衝液中で可溶化し(0.5% SDS中2〜4 μg/μl)、次いで、95℃で3分間加熱した。各タンパク質溶液の量を50 μgとし、150 μlの0.5M重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)溶液を添加した。各試料に、3 μlの50 mMトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィンを加え、この混合物を60℃で1時間インキュベートした。次いで、イソプロパノール中1 μlのシステイン保護試薬、200 mMのメチルメタンチオスルホナート(MMTS)を添加した。室温で10分間のインキュベーション後、15 μlの1 μg/μlトリプシンを各試料に加え、続いて、37℃で一晩インキュベートした。消化した試料を真空下で乾燥させ、30 μlの0.5M TEAB溶液で再構成した。70 μlのエタノールを4つのiTRAQ試薬(114/115/116/117)のそれぞれに添加し、1つの試薬を、分析する4つの試料(2つの癌組織腎試料、及び2つの対応する隣接する正常組織試料)にそれぞれ添加し、室温で1時間放置した。各試料に添加した具体的な試薬を記録した。4つの標識化試料を混合し、ボルテックスした。混合試料を、真空下で乾燥するまで減少させ、C18スピンカラムにかけ、水性溶媒で洗浄し、次いで、70%アセトニトリルで溶出することによって脱塩した。試料画分を再度乾燥するまで減少させ、次いで、イオン交換分画前に、40 μlの溶媒A(97.9%水、2%アセトニトリル、0.1%ギ酸)中に再溶解した。
【0338】
(2.1.3 標識化ペプチドの分画及び分析)
試料を、Agilent 1200クロマトグラフ(Agilent社(Santa Clara, CA, USA)製)を用いる、強陽イオン交換クロマトグラフィーによって分画した。試料を、20分にわたって0〜100 mM酢酸ナトリウム、及びその後10分にわたって1 Mまでの20 μl/分の勾配を用いて、Agilent Zorbax Bio-SCXIIカラム(3.5 μm;50×0.8 mm)から溶出した。1分の画分を、30分の操作にわたって回収した。
【0339】
各画分を、Zorbax 300SB-C18 (150 mm×75 μm)及びAgilent 6510四重極飛行時間装置(Agilent社(Santa Clara, CA, USA)製)を備えたAgilent 1200クロマトグラフを用いる液体クロマトグラフィー/質量分析によって分析した。ペプチドを、60分でアセトニトリルが15%から45%まで増加する300 nl/分の勾配で、溶出した。データを、自動MS/MSモードで、強度閾値を超える最大3つの前駆体イオンを選択し、標識化ペプチドの配列決定を促進するのに収集した生成イオンスペクトルによって得た。Spectrum Millソフトウェア(Agilent社(Santa Clara, CA, USA)製)を用いて、生データを加工し、ピーク一覧を作成した。
【0340】
(2.1.4 標識化ペプチドのアミノ酸配列分析)
ADPリボシルシクラーゼ2の部分的なアミノ酸配列及び同定において、SEQUEST検索プログラム(Engらの文献:J. Am. Soc. Mass Spectrom. 5, 976-989)を用いて、トリプシンペプチドの解明されていないタンデム質量スペクトルを検索した。データベースによる同定についての基準には、次に示すのものが含まれていた:トリプシンの切断特異性;データベースから返されたペプチドにおける1組のa、b及びyイオンの検出、並びに、メタンチオスルホン酸メチル及び遊離アミノ酸(N末端及びリジン)へのiTRAQ標識の添加による修飾の原因となるすべてのシステイン残基の質量増分。データは、IPI Human v3.23(www.ebi.ac.uk/IPI/IPIhuman.html)によって検索された。
【0341】
(2.1.5 肺癌組織関連タンパク質の識別)
BST1を同定する方法は、天然に存在するヒトタンパク質の上述の質量分析によって試験的に得られたペプチド配列を使用して、公開されているヒトゲノム配列におけるコード化エキソンを同定し、組織化するものである。これらの試験的に決定した配列を、国際公開公報第2009/087462号に記載されている、ペプチド質量、ペプチド記号、EST及びパブリックドメインゲノム配列データの処理及び統合によって編集されたOGAP(登録商標)データベースと比較した。
【0342】
(2.2 結果)
本明細書に更に説明するように、これらの試験はBST1を同定した(表2)。BST1は、非小細胞肺癌試料の原形質膜中で検出された(図2)。iTRAQ分析は、癌試料中のBST1のレベルが、適合させた隣接する正常組織試料よりも高いことを示した。
【表9】
【0343】
(実施例3:BST1に対する抗体を使用する免疫組織化学法)
次の参照プロトコルを用いて、免疫組織化学法を、BST1に対するヤギポリクローナル抗体(R&D Systems Europe社(Abingdon, UK)製)を使用し、FFPE腫瘍及び正常組織において行った。
【0344】
(3.1 材料及び方法)
(3.1.1 脱パラフィン化及び脱水)
スライドを、緩衝液を含まない水浴中の50 mlファルコンにおいて、60℃で2時間加熱した。各ファルコンは、1枚のスライド、又は2枚のスライドであって互いに固着することを防ぐためにこれらの間に長いゲルローディングチップを有する2枚のスライドを有していた。スライドを、黒色のスライドラックにおいて5分間、EZ-DeWax(BioGenex社(CA, USA)製)で脱パラフィン化し、次いで、1 mlのピペットを使用して同じDeWax溶液で十分に洗浄し、その後、水で洗浄した。圧力鍋が準備できるまで、水を充填したコプリンジャー(coplin jar)内にスライドを入れ、水を2回交換した。
【0345】
(3.1.2 抗原回復)
水を、抗原回復溶液、すなわち、1×クエン酸塩緩衝液、pH 6(DAKO社製)に交換した。抗原を水浴法により回復させた。抗原回復溶液中のプラスチック製コプリンジャーにあるスライドを圧力鍋に入れ、その後、ポジション6(最も高い設定)まで加熱した。15〜20分間インキュベートし、温度をポジション3まで下げ、(圧力鍋内部の温度が117℃になったら)その状態で更に20〜25分間放置した。その後、ホブのスイッチを切り、冷却したホブ上に圧力鍋を置き、ハンドルを「開」と「閉」との間の位置に慎重に動かして圧力を放出させた。すべてのシステムをそのままにして、圧力を放出させ、更に20分間冷却した。蓋を開けて、試料を取り出し、ベンチ上に置いた。スライドをPBS-3T(0.5L PBS + 3滴のTween-20)で1×5分洗浄し、スライドをPBS中に入れた。
【0346】
(3.1.3 染色)
抗原回復後、スライドを、シャンドン(Shandon)カバープレート系で包埋した。スライドとプラスチックカバープレートとの間の気泡の捕捉は、カバープレートをPBSで満たされたコプリンジャーに入れ、組織切片を有するスライドをカバープレートに穏やかに摺動させることにより、予防した。スライドをコプリンジャーから引き抜くと同時に、これをカバープレートとともに緊密に保った。組み立てたスライドをラックに入れ、PBSを、漏斗内及びスライドとカバープレートとの間に閉じ込めて通した。スライドを、2×2 mlのPBS-3T(又は4×1 ml)及び1×2 mlのPBSで洗浄し、すべてのPBSがスライドからなくなり、かつ、実質的にPBSが漏斗内からなくなるまで待機した。
【0347】
内在性ペルオキシドブロックを、ペルオキシダーゼブロッキング試薬(S2001, DAKO社製)を使用して行った。スライドあたり1〜4滴のペルオキシド溶液を使用し、5分間インキュベートした。スライドを水で洗浄し、その後、2 mlのPBS-3Tで1回及び2 ml PBSで1回洗浄し、新しい部の洗浄緩衝液を加える前に、実質的に液体が漏斗に残らなくなるまで待機することが重要であった。
【0348】
一次抗体を抗体希釈試薬(DAKO社製)で希釈した。最適な希釈を1:100と決定した。50〜200 μlの希釈一次抗体を、全組織を被覆するように注意しつつ、各切片及び/又は組織マイクロアレイに適用した。スライドを静かに叩いて均一に切片上の抗体に分散させるか、又は、ピペット先端を切片の上部に使用した。スライドを、室温で45分間、湿室でインキュベートした。スライドを、2×2 ml(又は4×1 ml)PBS-3T、次いで1×2 ml PBSで洗浄し、すべてのPBSがスライドを通り、かつ、実質的にPBSが漏斗内からなくなるまで待機した。対応するロバ抗ヤギIgG:HRP(OBT1500P, 1 mg/ml, Serotec社製)を1:1000で適用し、室温で35分間インキュベートした。スライドを上述のように洗浄した。DAB基質を希釈緩衝液中で作製した。2滴の基質を含有する2 mlは、10枚のスライドに十分であった。DAB試薬を一度に数滴適用することによって、スライドに適用した。DABをすべて、スライド間に分散させた。スライドを10分間インキュベートした。スライドを、1×2 ml(又は2×1 ml)PBS-3Tで、及び1×2 ml(又は2×1 ml)PBSで洗浄し、すべてのPBSがスライドを通り、かつ、実質的にPBSが漏斗内からなくなるまで待機した。ヘマトキシリン(DAKO社製)を適用した。その1 mlは、10枚のスライドに十分であり、スライドを室温で1分間インキュベートした。シャンドンカバープレートシステムの漏斗に2 mlの水を充填し通した。スライドが過剰のヘマトキシリンに透明である場合、システムを分解し、組織切片及び/又はアレイを洗浄瓶からの水により洗浄し、黒色のスライドラックに入れた。組織を、EZ-DeWaxにおいて5分間、次いで95%エタノールにおいて2〜5分間インキュベートすることにより脱水した。スライドを、室温のベンチ上で乾燥させ、その後、封入剤中に封入し、カバースリップで被覆した。
【0349】
(3.2 結果)
免疫組織化学分析は、肺癌組織切片の腫瘍細胞を特異的に染色することを示した。肺癌の59人の患者を表す肺組織アレイにおいて、癌細胞中のBST1の高い染色が28人の患者(47%)でみられた。したがって、この癌及び他の癌の種類における治療及び診断がBST1の発現を示すので、BST1に対する抗体は、有用性があると考えられる。
【0350】
(実施例4:BST1のRNAプロファイリング)
(4.1 材料及び方法)
定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、種々の正常組織及び癌組織を、BST1 mRNA発現についてスクリーニングした。
【0351】
(4.2 結果)
図3aは、種々の正常組織及び癌組織に対するBST1についてのRT-PCR結果を示す。縦軸は、BST1の複製#/5 ng cDNAを示す。mRNAプロファイリングは、ほとんどの正常組織において非常に少ない発現プロファイルと異なり、NPB単球及びCD33+細胞において顕著に高い発現レベルの標的を示した。mRNAの発現は、BST1タンパク質の発現を示す。図3bは、更なるmRNA発現分析の結果を示し、これは、単球及びCD33+細胞においても高レベルのBST1発現を示す。NPB単球及びCD33+細胞のレベルは、他の組織/細胞型の20〜30倍であることが分かった。
【0352】
図3cは、CD33とともにBST1発現を示す1組の正常組織、骨髄系細胞上に発現した膜横断受容体、及び急性骨髄白血病のためのゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg)、モノクローナル抗体に基づく治療の標的で行われた、比較RT-PCRプロファイリングの結果を示す。CD33と比較して、BST1が、非常に制限された正常発現プロファイルを有することが分かった。
【0353】
(実施例5:ファージディスプレイライブラリの構築)
BST1のアミノ酸29-292(配列番号13)からなる組換えタンパク質を、標準的な組換え法によって細菌中に合成させ、免疫用抗原として使用した。
【0354】
(免疫化及びmRNA単離)
BST1結合分子の同定のためのファージディスプレイライブラリを次に示すように構築した。A/Jマウス(Jackson Laboratories社(Bar Harbor, Me.))を、第0日目にフロイント完全アジュバント中100 μgタンパク質、第28日目に100 μg抗原を使用して、組換えBST1抗原(細胞外ドメイン)によって腹腔内で免疫化した。眼窩後方の鼻腔の穴を通して、マウスの試験用血液を得た。力価を試験して、ニュートラアビジン(Reacti-Bind(商標) NeutrAvidin(商標)被覆ポリスチレンプレート、Pierce社(Rockford, I11.)製)により固定化したビオチン化BST1抗原を使用したELISAによって、試験用血液が高い力価であると考えられた場合、マウスを、第70日目、71日目及び72日目に100 μgのタンパク質で増強し、その後、第77日目に致死させ、脾臓を摘出した。抗体力価が十分でないと考えられた場合、マウスを第56日目に100 μgの抗原で増強し、試験用血液を第63日目に採取した。十分な力価を得た場合、動物を、第98日目、99日目及び100日目に100 μgの抗原で増強し、第105日目に脾臓を摘出した。
【0355】
脾臓を層流フードに収集し、ペトリ皿に移し、脂肪及び結合組織を切除し、廃棄した。脾臓を、1.0 mlの溶液D(25.0 gグアニジンチオシアナート(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、滅菌水29.3 ml、0.75 Mクエン酸ナトリウム(pH 7.0) 1.76 ml、10%ザルコシル2.64 ml(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)、2-メルカプトエタノール0.36 ml(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)の存在下で、滅菌5 ccシリンジからプランジャーで迅速に浸軟させた。この脾臓懸濁液を、全細胞が溶解するまで18ゲージ針を通して引き抜き、その粘着性の溶液をマイクロ遠心管に移した。ペトリ皿を100 μlの溶液Dで洗浄し、残存する脾臓を回収した。次いで、この懸濁液を、更に5〜10回、22ゲージ針を通して引き抜いた。
【0356】
試料を2本のマイクロ遠心管に均等に分け、次に示すものを順に添加し、各添加後に反転によって混合した:2 M酢酸ナトリウム(pH 4.0) 50 μl、水飽和フェノール0.5 ml(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)、100 μlクロロホルム/イソアミルアルコール49:1 100 μl(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)。この溶液を10秒間撹拌し、15分間氷上でインキュベートした。2〜8℃で、14 krpm、20分間の遠心分離後に、その水相を新しいチューブに移した。等量の水飽和フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)を加え、チューブを10秒間撹拌した。15分の氷上でのインキュベーション後、試料を2〜8℃で20分間遠心分離し、その水相を新しいチューブに移し、これを等量のイソプロパノールによって-20℃で最低30分間沈殿させた。4℃で、14 krpm、20分間の遠心分離後に、その上清を吸引し、チューブをしばらくの間回転させ、すべての微量液体をRNAペレットから除去した。
【0357】
RNAペレットをそれぞれ300 μlの溶液D中に溶解し、これらを合わせて、これを等量のイソプロパノールによって-20℃で最低30分間沈殿させた。試料を4℃で、14 krpm、20分間遠心分離し、前述と同様にしてその上清を吸引し、試料を、氷冷した70%エタノール100 μlで洗浄した。試料を再度4℃で、14 krpm、20分間遠心分離し、70%エタノール溶液を吸引し、RNAペレットを減圧下で乾燥させた。ペレットを100 μlの無菌ジエチルピロカルボナート処理水中で再懸濁させた。1.0の吸光度を40 μg/mlの濃度に用いるA260によって、濃度を測定した。RNAを-80℃で保存した。
【0358】
(相補DNA (cDNA)の調製)
上述のマウス脾臓から精製した全RNAを、cDNA調製用のテンプレートとして直接使用した。RNA (50 μg)を滅菌水で100 μLに希釈し、130 ng/μLオリゴdT12 10 μL(Applied Biosystems Model 392 DNAシンセサイザーで合成)を加えた。試料を70℃で10分間加熱し、次いで、氷上で冷却した。0.1 Mジチオトレイトール20 μL(Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.)製)、20 mMデオキシヌクレオシド三リン酸10 μL(dNTP's, Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及び10 μLの水氷とともに、40 μL 5*のファーストストランドバッファー(Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.)製)を加えた。次いで、試料を37℃で2分間インキュベートした。10 μLの逆転写酵素(Superscript(商標)II, Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.)製)を加え、37℃で1時間インキュベートを継続した。cDNA産物をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に直接使用した。
【0359】
(PCRによる抗体遺伝子の増幅)
PCRを使用してすべてのH及びL鎖遺伝子を実質的に増幅させるために、すべての公開された配列に実質的に対応するプライマーを選択した。H及びLのアミノ末端ヌクレオチド配列は、相当な多様性を有しているので、米国特許第6,555,310号に記載のとおり、H鎖の5'プライマーとして機能するために33のオリゴヌクレオチドを合成し、κL鎖の5'プライマーとして機能するために29のオリゴヌクレオチドを合成した。各鎖の定常領域ヌクレオチド配列は、H鎖の1つの3'プライマーと、κL鎖の1つの3'プライマーのみを必要とした。
【0360】
それぞれのプライマー対の50 μL反応を、50 μmolの5'プライマー、50 μmolの3'プライマー、0.25 μLのTaq DNAポリメラーゼ(5ユニット/μL, Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、3 μLのcDNA(記載のとおりに調製)、2 mM dNTP's 5 μL、MgC12添加5 μL 10*Taq DNAポリメラーゼバッファー(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及びH2O(50 μLになるまで添加)によって行った。GeneAmp(登録商標)9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer社(Foster City, Calif.)製)を使用して、次に示すサーモサイクルプログラムで増幅を行った:94℃、1分間;94℃、20秒間、55℃、30秒間、及び72℃、30秒間の30サイクル;72℃、6分間;4℃。
【0361】
次いで、PCR処理のdsDNA産物を、3'プライマーのみを使用して非対称PCRに供し、標的遺伝子の抗センス鎖のみを実質的に生成した。それぞれのdsDNA産物の100 μL反応を、200 μmolの3'プライマー、2 μLのdsDNA産物、0.5 μL Taq DNAポリメラーゼ、2 mM dNTP's 10 μL、MgC12添加10 μL 10*Taq DNAポリメラーゼバッファー(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及びH2O(100 μLになるまで添加)によって行った。上述のものと同じPCRプログラムを使用して、単鎖(ss)‐DNAを増幅させた。
【0362】
(高速液体クロマトグラフィーによる単鎖DNAの精製、及び単鎖DNAのキナーゼ処理)
H鎖ss‐PCR産物及びL鎖単鎖PCR産物を、2.5容量のエタノール及び0.2容量の7.5 M酢酸アンモニウムを加えて、-20℃で少なくとも30分間インキュベートすることによって、エタノール沈殿させた。2〜8℃で、14 krpm、10分間のエッペンドルフ遠心分離をすることによって、DNAをペレット化した。その上清を慎重に吸引し、チューブをしばらくの間、2回回転させた。上清の最後の滴をピペットで除去した。DNAを中程度の熱で10分間、減圧下で乾燥させた。H鎖生成物を210 μLの水にプールし、また、L鎖生成物を別個に210 μLの水にプールした。単鎖DNAを、Hewlett Packard 1090 HPLC及びGen-Pak(商標)FAX陰イオン交換カラム(Millipore社(Milford, Mass.)製)を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。単鎖DNAを精製するのに使用した勾配を表3に示し、オーブン温度は60℃であった。吸光度を260 nmでモニタリングした。HPLCから溶出した単鎖DNAを0.5分画分で回収した。単鎖DNA含有画分をエタノール沈殿させ、上述のとおりにペレット化し、乾燥させた。乾燥したDNAペレットを200 μL滅菌水にプールした。
【表10】
バッファーAは、25 mMトリス、1 mM EDTA、pH 8.0である。
バッファーBは、25 mMトリス、1 mM EDTA、1 M NaCl、pH 8.0である。
バッファーCは40 mm リン酸である。
【0363】
単鎖DNAを変異誘発のための調製で5'-リン酸化した。
24 μL 10*キナーゼバッファー(United States Biochemical社(Cleveland, Ohio)製)、10 mMアデノシン5'‐三リン酸10.4 μL(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、及び2 μLポリヌクレオチドキナーゼ(30ユニット/μL, United States Biochemical社(Cleveland, Ohio)製)をそれぞれの試料に加え、チューブを37℃で1時間インキュベートした。チューブを70℃で10分間インキュベートすることによって反応を停止した。DNAを、トリス平衡化フェノール(pH>8.0, United States Biochemical社(Cleveland, Ohio)製):クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)の1回の抽出、及びクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)の1回の抽出によって精製した。抽出後、DNAをエタノール沈殿させ、上述のとおりにペレット化した。DNAペレットを乾燥させ、次いで、50 μLの滅菌水中に溶解した。1.0の吸光度について33 μg/mlを用いた260 nmのDNAアリコートの吸光度測定によって、濃度を決定した。試料を-20℃で保存した。
【0364】
(脾臓抗体ファージライブラリの生成に使用するウラシルテンプレートの調製)
一晩培養した1 mlの大腸菌(E. coli) CJ236(BioRAD社(Hercules, Calif.))を、250 mlのバッフル付き振盪フラスコ(baffled shake flask)中の50 ml 2*YTに加えた。この培養物をOD600=0.6まで37℃で増殖させ、10 μlの1/100希釈BS45ベクターファージストック(米国特許第6,555,310号に記載)を接種し、6時間継続して増殖させた。およそ40 mlの培養物を、4℃で、12 krpm、15分間遠心分離した。その上清(30 ml)を新しい遠心管に移し、15 μlの10 mg/ml RNアーゼA(Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)を加えた後、室温で15分間インキュベートした。7.5 mlの20%ポリエチレングリコール8000(Fisher Scientific社(Pittsburgh, Pa.)製)/3.5 M酢酸アンモニウム(Sigma Chemical社(St. Louis, Mo.)製)を加え、氷上で30分間インキュベートすることによって、ファージを沈殿させた。試料を、2〜8℃で、12 krpm、15分間遠心分離した。その上清を慎重に捨て、チューブをしばらくの間回転させ、すべての微量上清を除去した。ペレットを400 μlの高塩緩衝液(300 mM NaCl、100 mMトリス(pH 8.0)、1 mM EDTA)中で再懸濁させ、1.5 mlのチューブに移した。
【0365】
ファージストックを、白色の界面が目に見えなくなるまで、等量の平衡化フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)で繰り返し抽出し、次いで、等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)で抽出した。DNAを2.5容量のエタノール及び1/5容量の7.5 M酢酸アンモニウムで沈殿させ、-20℃で30分間インキュベートした。DNAを、4℃で、14 krpm、10分間遠心分離し、ペレットを冷却70%エタノールで1回洗浄し、減圧下で乾燥させた。ウラシルテンプレートDNAを30 μlの滅菌水中に溶解し、1.0の吸光度を40 μg/mlの濃度に用いるA260によって、濃度を決定した。テンプレートを滅菌水で250 ng/μLに希釈し、等分し、-20℃で保存した。
【0366】
(ss-DNAによるウラシルテンプレートの変異誘発、及び抗体ファージライブラリを生成する大腸菌へのエレクトロポレーション)
単鎖重鎖及び軽鎖遺伝子をファージディスプレイベクターウラシルテンプレート上に同時に導入することによって、抗体ファージディスプレイライブラリを生成した。通常の変異誘発を、0.2 mlのPCR反応チューブ中で次に示すものを混合することによって、2 μg規模で行った:8 μlのウラシルテンプレート(250 ng/μL)、8 μLの10*アニーリングバッファー(200 mMトリス(pH 7.0)、20 mM MgC12、500 mM NaCl)、3.33 μlのキナーゼ処理単鎖重鎖挿入物(100 ng/μL)、3.1 μlのキナーゼ処理単鎖軽鎖挿入物(100 ng/μL)、及び滅菌水(80 μlになるまで添加)。DNAを次に示す熱プロファイルを用いて、GeneAmp(登録商標)9600サーマルサイクラーでアニーリングした:94℃で20秒、85℃で60秒間、85℃〜55℃で傾斜して30分間、55℃に15分間保持。プログラム終了後、DNAを氷に移した。8 μlの10*合成バッファー(5 mM各dNTP、10 mM ATP、100 mMトリス(pH 7.4)、50 mM MgC12、20 mM DTT)、8 μLのT4 DNAリガーゼ(1 U/μL、Boehringer Mannheim社(Indianapolis, Ind.)製)、8 μLの希釈T7 DNAポリメラーゼ(1 U/μL、New England BioLabs社(Beverly, Mass.)製)を加え、37℃で30分間インキュベートすることによって、伸長/ライゲーションを行った。300 μLの変異誘発停止バッファー(10 mMトリス(pH 8.0)、10 mM EDTA)によって、反応を停止した。変異誘発DNAを平衡化フェノール(pH>8):クロロホルム:イソアミルアルコール(50:49:1)で1回抽出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)で1回抽出し、-20℃で少なくとも30分間、DNAをエタノール沈殿させた。DNAをペレット化し、上述のとおりに、その上清を慎重に除去した。試料を再度しばらくの間回転させ、ピペットマンですべての微量エタノールを除去した。ペレットを減圧下で乾燥させた。DNAを4 μLの滅菌水中で再懸濁させた。
【0367】
1 μLの変異誘発DNA (500 ng)を、エレクトロポレーションを使用して、40 μlのエレクトロコンピテント大腸菌(E. coli) DH12S(Gibco/BRL社(Gaithersburg, Md.))に転写した。形質転換細胞を、2*YTブロスでもとの容積の60%に希釈したおよそ1.0 mlの一晩培養XL-1細胞と混合した。次いで、この混合物を15 mlの無菌培養管に移し、150 mmのLB寒天プレートで平板培養するために、9 mlのトップアガーを加えた。プレートを37℃で4時間インキュベートし、次いで、一晩で20℃に移行させた。10 mlの2*YTでこれらのプレートからファージを溶出し、破片を回転させ、上清を採取することによって、第1ラウンド抗体ファージを作製した。これらの試料は、BST1に対する抗体の選択に使用する抗体ファージディスプレイライブラリである。LB寒天プレートの懸濁した細胞の10-4希釈物10μlを平板培養し、その後、37℃でプレートの一晩のインキュベートによって、エレクトロポレーションの効率を測定した。10-4希釈物プレートのプラークの数に106を掛けるによって、効率を算出した。ライブラリエレクトロポレーション効率は通常、これらの条件下では1*107ファージよりも高い。
【0368】
(エレクトロポレーションによる大腸菌の形質転換)
エレクトロコンピテント大腸菌細胞を氷上で解凍した。DNAを、気泡が入らないように注意して、2〜3回上下に静かにピペットで移すことによって、細胞40 Lと混合した。細胞を、再度移動で気泡が入らないように注意して、氷上で冷却した遺伝子パルサーキュベット(0.2 cmギャップ、BioRAD社(Hercules, Calif.)製)に移した。キュベットを大腸菌パルサー(BioRAD社(Hercules, Calif.)製)に置き、メーカーの推奨に従って、1.88 kVに設定した電圧でエレクトロポレーション導入した。形質転換試料を直ちに、1 mlの2*YTブロス、又は400 μlの2*YT/600 μlの一晩培養XL-1細胞混合物1 ml中で再懸濁させ、指示された手順のとおり処理した。
【0369】
(抗体ファージディスプレイベクター変異誘発反応によって形質転換したM 13ファージ又は細胞の平板培養)
100 mmのLB寒天プレートで平板培養する場合は、ファージ試料を大腸菌XL1-ブルーの一晩培養物200 μLに加え、又は、無菌15 ml培養管において150 mmのプレートで平板培養する場合は、ファージ試料を600 μLの一晩培養細胞に加えた。LBトップアガー(100 mmのプレートに3 ml、又は150 mmのプレートに9 ml)を加えた後、トップアガーを55℃で保存した(付録A1, Sambrookらの文献、上述を参照)。その混合物を、寒天表面の過剰な水分を除去するためにあらかじめ温めた(37℃〜55℃)LB寒天プレート上に均等に分散させた。トップアガーが凝固するまで、プレートを室温で冷却した。プレートを反転させて、上に示すように、37℃でインキュベートした。
【0370】
(ビオチン化チロシンプロテインキナーゼ膜横断受容体BST1及びビオチン化抗体の調製)
濃縮組換えBST1抗原(全長細胞外ドメイン)を、BBS(20 mMホウ酸塩、150 mM NaCl、0.1% NaN3、pH 8.0)で広範囲に透析した。透析後、1 mgのBST1(BBS中1 mg/ml)を、15倍のモル過剰のビオチン-XX-NHSエステル(Molecular Probes社(Eugene, Oreg.)製、DMSO中40 mMの原液)と反応させた。この反応物を室温で90分間インキュベートし、次いで、最終濃度20 mMのタウリン(Sigma Chemical社(St. Louis, Mo.)製)でクエンチした。その後、ビオチン化反応混合物を2〜8℃でBBSに対して透析した。透析後、ビオチン化BST1をパンニングバッファー(panning buffer)(40 mMトリス、150 mM NaCl、20 mg/ml BSA、0.1% Tween 20、pH 7.5)中で希釈し、等分し、必要があるまで-80℃で保存した。
【0371】
重鎖のカルボキシ末端に位置する遊離システインを使用して、3-(N-マレイミジルプロピオニル)ビオシチン(Molecular Probes社(Eugene, Oreg.)製)と抗体を反応させた。抗体を、最終濃度1 mMまで30分間室温でDTTを加えることによって還元した。還元抗体を、50 mMリン酸カリウム、10 mMホウ酸、150 mM NaCl、pH 7.0中で平衡化したSephadex G50脱塩カラムに通した。3-(N-マレイミジルプロピオニル)ビオシチンを、最終濃度1 mMまで加え、反応を室温で60分間進行させた。次いで、試料をBBSに対して広範囲に透析し、2〜8℃で保存した。
【0372】
(アビジン磁気ラテックスの調製)
磁気ラテックス(Estapor、10%固形物、Bangs Laboratories社(Fishers, Ind.)製)を完全に再懸濁させ、15 mlの円錐管に2 ml等分した。磁気ラテックスを12 ml蒸留水中で懸濁させ、磁石(PerSeptive Biosystems社(Framingham, Mass.)製)を使用して10分間溶液から分離した。磁気ラテックスの磁石による分離を維持しつつ、10 mlの滅菌ピペットを使用して液体を慎重に除去した。この洗浄工程を更に3回反復した。最終洗浄後、ラテックスを2 mlの蒸留水中で再懸濁させた。個別の50 mlの円錐管では、10 mgのアビジン-HS(NeutrAvidin, Pierce社(Rockford, Ill.)製)を、18 mlの40 mMトリス、0.15 M塩化ナトリウム、pH 7.5 (TBS)中に溶解した。撹拌中、2 mlの洗浄磁気ラテックスを希釈アビジン‐HSに加え、その混合物を更に30秒混合した。この混合物を45℃で2時間インキュベートし、30分ごとに振盪した。アビジン磁気ラテックスを、磁石を使用して溶液から分離し、上述のとおりに、20 ml BBSで3回洗浄した。最終洗浄後、ラテックスを10 mlのBBS中で再懸濁させ、4℃で保存した。
【0373】
使用直前に、アビジン磁気ラテックスをパンニングバッファー(40 mMトリス、150 mM NaCl、20 mg/ml BSA、0.1% Tween 20、pH 7.5)中で平衡化した。パンニング試験に必要なアビジン磁気ラテックス(200 μl/試料)を、滅菌15 ml遠心管に加え、パンニングバッファーで10 mlにした。遠心管を磁石上に10分間置き、ラテックスを分離した。上述のとおりに、溶液を10 ml滅菌ピペットで慎重に除去した。磁気ラテックスを10 mlのパンニングバッファー中で再懸濁させ、第2の洗浄を開始した。磁気ラテックスをパンニングバッファーで計3回洗浄した。最終洗浄後、ラテックスをパンニングバッファー中で開始容積まで再懸濁させた。
【0374】
(実施例6:BST1抗原に対する組換えポリクローナル抗体の選択)
BST1に特異的に結合する結合試薬を、実施例5に記載の過剰免疫したマウスから作製したファージディスプレイライブラリから選択した。
【0375】
(パンニング)
第1ラウンド抗体ファージを、BS45ウラシルテンプレートを使用して、実施例5に記載のとおりに調製した。変異誘発DNAのエレクトロポレーションを行い、種々の免疫化マウスに由来するファージ試料を生産した。組換えポリクローナルライブラリの多くの多様性を生み出すために、各ファージ試料を別々にパンニングした。
【0376】
ビオチン化BST1抗原による機能的パンニングの第1ラウンド前に、7F 11-磁気ラテックス(米国特許第6,555,310号の実施例21及び22に記載)でパンニングすることによって、これらの表面で重鎖及び軽鎖をともに示すファージの抗体ファージライブラリを選択した。これらの強化されたライブラリの機能的パンニングを、原則として、米国特許第6,555,310号の実施例16に記載のとおりに行った。具体的には、10 μLの1*10-6 Mビオチン化BST1抗原を、ファージ試料(最終濃度およそ1*10-8 MのBST1)に加え、2〜8℃で、その混合物を一晩平衡になるようにした。
【0377】
平衡に到達後、試料をアビジン磁気ラテックスでパンニングし、BST1に結合した抗体ファージを捕捉した。平衡化アビジン磁気ラテックス(実施例5)、試料当たり200 μLラテックスを、室温で10分間ファージとともにインキュベートした。10分後、およそ9 mlのパンニングバッファーを各ファージ試料に加え、磁石を使用して磁気ラテックスを溶液から分離した。10分の分離後、10 mlの滅菌ピペットを使用して、未結合のファージを慎重に除去した。次いで、磁気ラテックスを10 mlのパンニングバッファー中で再懸濁させ、第2の洗浄を開始した。上述のとおりに、ラテックスを計3回洗浄した。それぞれの洗浄において、チューブを磁石と10分間接触させ、磁気ラテックスから未結合のファージを分離した。第3の洗浄後、磁気ラテックスを1 mlのパンニングバッファー中で再懸濁させ、1.5 mLのチューブに移した。次いで、各試料の磁気ラテックスの全量を回収し、200 μl 2*YT中で再懸濁させ、実施例1に記載のとおり、これを150 mmのLBプレートで平板培養し、結合ファージを増幅させた。プレートを37℃で4時間、次いで、20℃で一晩インキュベートした。
【0378】
結合ファージを増幅させるのに使用した150 mmのプレートを使用して、次のラウンドの抗体ファージを生成した。一晩インキュベート後、細菌叢上に10 mlの2*YT培地をピペットで移し、プレートを室温で20分間静かに振盪することによって、第2ラウンドの抗体ファージを150 mmのプレートから溶出した。次いで、ファージ試料を、プラグシールキャップを備える15 mlの使い捨て滅菌遠心管に移し、3500 rpmで15分間、遠心管を遠心分離することによって、LBプレートの破片をペレット化した。その後、第2ラウンドの抗体ファージを含有する上清を新しいチューブに移した。
【0379】
各ファージストック100 μLを、15 mlの使い捨て滅菌遠心管の900 μLのパンニングバッファーで希釈することによって、第2ラウンドの機能的パンニングを設定した。次いで、第1ラウンドのパンニングの記載のとおりに、ビオチン化BST1抗原を各試料に加え、ファージ試料を室温で1時間インキュベートした。その後、上述のとおりに、ファージ試料をアビジン磁気ラテックスでパンニングした。パンニングの進行を、100 mmのLB寒天プレート上の各ラテックス試料のアリコートを平板培養することによって、この時点でモニタリングして、κ陽性の割合を決定した。各パンニングの大多数のラテックス(99%)を、150 mmのLB寒天プレート上で平板培養し、ラテックスへのファージ結合を増幅させた。100 mmのLB寒天プレートを37℃で6〜7時間インキュベートした後、プレートを室温まで移行し、ニトロセルロース膜(孔径0.45 mm、BA85 Protran、Schleicher and Schuell社(Keene, N.H.)製)をプラーク上に覆った。
【0380】
ニトロセルロース膜を有するプレートを、室温で一晩インキュベートした後、ヤギ抗マウスκアルカリホスファターゼで発現させ、下記のとおりにκ陽性の割合を決定した。集団のκ陽性の低い割合(<70%)のファージ試料を、7F11-磁気ラテックスによるパンニングのラウンドに供した後、およそ2*10-9 Mでビオチン化BST1抗原を使用してパンニングの第3機能的ラウンドを2〜8℃で一晩行った。また、このラウンドのパンニングもκ陽性のためにモニタリングした。80%を超えるκ陽性割合である個々のファージ試料をプールし、5*10-9 MのBST1で、2〜8℃で一晩パンニングする最終ラウンドに供した。この第4ラウンドの機能的パンニングから溶出したファージ内に含有するBST1抗体遺伝子を、発現ベクターpBRncoH3にサブクローン化した。
【0381】
米国特許第6,555,310号の実施例18に記載のとおりに、サブクローニング工程を概して行った。サブクローニング後、発現ベクターをDH10B細胞にエレクトロポレーションし、その混合物を、1%グリセロール及び10 μg/mlテトラサイクリンを含有する2*YTで一晩増殖させた。テトラサイクリン中の第2ラウンドの増殖及び選択後、BST1ポリクローナル抗体生産の供給源として、細胞のアリコートを-80℃で凍結した。これらのポリクローナル混合物の試料を、10 μg/mlテトラサイクリンを含有するLB寒天プレートで平板培養し、BST1を認識する抗体をスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体をポリクローナル混合物から選択した。
【0382】
(BST1に対する組換え抗体の発現及び精製)
振盪フラスコ接種物を、37℃、300 rpmに設定したInnova 4330インキュベーター振盪機(New Brunswick Scientific社(Edison, N.J.)製)で、-70℃の細胞バンクから一晩で発生させた。接種物を、3 g/L L-ロイシン、3g/L L-イソロイシン、12 g/Lカゼイン消化物(Difco社(Detroit, Mich.)製)、12.5 g/Lグリセロール、及び10 μg/mlテトラサイクリンを添加した規定培養培地(Packらの文献(1993):BioTechnology 11: 1271-1277)を収容した20 L発酵槽(Applikon社(Foster City, Calif.)製)に接種するのに使用した。発酵槽の温度、pH及び溶解酸素をそれぞれ、26℃、6.0〜6.8、及び25%飽和に制御した。ポリプロピレングリコール(Dow社(Midland, Mich.)製)の添加によって、気泡を制御した。グリセロールを流加モードの発酵槽に加えた。対数増殖後期にL(+)-アラビノース(Sigma社(St. Louis, Mo.)製)を2g/Lまで加えることによって、Fab発現を誘発した。細胞密度を、UV-1201分光測光器(Shimadzu社(Columbia, Md.)製)において600 nmの吸光度によって測定した。運転の終了及びpH 6.0への調整後、培養物を17,000 psiでM-210B-EHマイクロフルイダイザー(Microfluidics社(Newton, Mass.)製)に2回通した。細胞の高圧均質化によって、Fabが培養上清中に放出された。
【0383】
精製の第1の工程は、膨張床固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(EB-IMAC)であった。Streamline(商標)キレート樹脂(Pharmacia社(Piscataway, N.J.)製)に0.1 M NiC12を加えた後、膨張させ、上方向に流れる50 mM酢酸塩、200 mM NaCl、10 mMイミダゾール、0.01% NaN3、pH 6.0バッファー中で平衡化した。保存溶液を使用して培養ホモジェネートを10 mMイミダゾールに移し、その後、平衡化バッファー中で2倍以上に希釈し、湿潤固体含量を5重量%未満まで低減させた。次いで、これを、300 cm/時間の空塔速度で上方向に流れるStreamlineカラムにかけた。細胞残屑は妨害なく通過したが、Fab重鎖上のニッケルとヘキサヒスチジンタグとの間の高い親和性相互作用によって、Fabが捕捉された。洗浄後、膨張床を充填床に替え、下方向に流れる20 mMホウ酸塩、150 mM NaCl、200 mMイミダゾール、0.01% NaN3、pH 8.0バッファーでFabを溶出した。
【0384】
精製の第2の工程は、イオン交換クロマトグラフィ(IEC)を使用した。Q Sepharose FastFlow樹脂(Pharmacia社(Piscataway, N.J.)製)を、20 mMホウ酸塩、37.5 mM NaCl、0.01% NaN3、pH 8.0中で平衡化した。EB-IMAC工程のFab溶出プールを、20 mMホウ酸塩、0.01% NaN3、pH 8.0中で4倍に希釈し、IECカラムにかけた。洗浄後、37.5〜200 mM NaCl塩勾配によってFabを溶出した。溶出画分を、プールする前に、Xcell II(商標)SDS-PAGEシステム(Novex社(San Diego, Calif.)製)を使用して、純度を評価した。そして、Fabプールを濃縮し、保存のため、20 mMホウ酸塩、150 mM NaCl、0.01% NaN3、pH 8.0バッファーに透析ろ過した。これは、10,000 MWCOカセット(Sartorius社(Bohemia, N.Y.)製)を備えたSartocon Slice(商標)システムで達成した。最終精製収率は通常50%であった。精製Fabの濃度を、280 nmのUV吸光度によって測定し、1.6の吸光度を1 mg/ml溶液とした。
【0385】
(実施例7:フローサイトメトリー解析によって決定したBST1に対するモノクローナル抗体の特異性)
フローサイトメトリー解析を、ヤギポリクローナル抗体sc7113(Santa Cruz Biotechnology社(CA)製)を使用して、AML患者由来のCD33+末梢血細胞で行った。また、比較FACS試験も、BST1とCD33とを比較して、ヒト白血球の部分集合で行った。
【0386】
さらに、実施例6で選択したBST1に対する抗体の特異性も、フローサイトメトリーによって試験した。細胞表面BST1タンパク質に対する抗体の結合能を試験するために、抗体を、BST1発現細胞H226(ヒト肺扁平上皮癌)及びA549(ヒト肺腺癌(lung adenocarinoma))とともにインキュベートした。細胞をFACSバッファー(DPBS, 2% FBS)中で洗浄し、遠心分離し、100 μlの希釈一次BST1抗体(更にFACSバッファー中で希釈された)中で再懸濁させた。抗体‐A549複合体及び抗体‐H226複合体を、氷上で60分間インキュベートし、次いで、上述したFACSバッファーで2回洗浄した。細胞‐抗体ペレットを、100 μlの希釈二次抗体(更にFACSバッファー中で希釈された)中で再懸濁させ、氷上で60分間インキュベートした。前述したとおりに、ペレットを洗浄し、200 μlのFACSバッファー中で再懸濁させた。試料を、BD FACScanto IIフローサイトメーターにロードし、BD FACSdivaソフトウェアを使用してデータを分析した。A549及びH226細胞に発現したBST1へのBST1_A1及びBST1_A2の結合を、フローサイトメトリーを使用して解析した。
【0387】
(結果)
図4aは、6つのAML試料のフローサイトメトリー解析を示す。これは、抗BST1抗体により染色された(曲線下の無色の部分)又は未染色の(灰色の部分)AML患者由来のCD33+末梢血細胞を示す。結果は、6人のAML患者のうち6人において、抗BST1抗体による陽性染色を示す。
【0388】
図4bは、ヒト白血球の部分集合におけるBST1及びCD33のフローサイトメトリー解析を示す。結果は、これらの細胞クラスにおいて、2つの標的の比較可能な結合プロファイルを示した。BST1の強い結合は、顆粒細胞及び単球でみられ、これらの双方と関係して、喘息、痛風、クローン病、狼瘡及び糖尿病などの疾患において活性化し得る。また、単球もアテローム斑の発症に関係する。
【0389】
フローサイトメトリー解析の結果は、BST1_A1及びBST1_A2と命名した4つのモノクローナル抗体が、細胞表面ヒトBST1に効果的に結合することを実証した。図4cは、A549及びH226細胞におけるBST1へのBST1_A1及びBST1_A2両方の結合特異性をそれぞれ示す。結果は、A549及びH226におけるBST1に対するこれらの抗体の強い結合を示す。
【0390】
(実施例8:チロシンプロテインキナーゼ膜横断受容体BST1に対するモノクローナル抗体の構造上の特性評価)
標準PCR法を用いて、BST1_A1及びBST1_A2モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするcDNA配列を得、標準的なDNAシーケエンス法を用いて、これらを配列決定した。
【0391】
抗体配列を突然変異させて、1以上の残基で生殖細胞系列残基に戻した。
【0392】
BST1_A1の重鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号18及び14である。
【0393】
BST1_A1の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号19及び15である。
【0394】
BST1_A2の重鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号20及び16である。
【0395】
BST1_A2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号21及び17である。
【0396】
(実施例9:A549及びH226細胞におけるBST1_A1及びBST1_A2のインターナリゼーション及びMabZAP。)
H226及びA549によるBST1_A1及びBST1_A2のインターナリゼーションを、MabZapアッセイを用いて調査した。MabZapアッセイは、毒素サポリン(Advanced Targeting System社(San Diego, CA)製、IT-22-100)に結合した抗ヒトIgG二次抗体の結合を通じて、抗BST1モノクローナル抗体のインターナリゼーションを示した。まず、BST1 Fabが細胞の表面に結合した。次いで、MabZAP抗体が一次抗体に結合した。次に、MabZAP複合体が細胞によって取り込まれた。サポリンの細胞への侵入は、タンパク質合成の阻害及び最終的な細胞死をもたらした。
【0397】
MabZAPアッセイを次に示すとおりに行った。細胞をそれぞれ、ウェル当たり5×103細胞の密度で接種した。抗BST1モノクローナル抗体又はアイソタイプ対照ヒトIgGを連続的に希釈し、次いで、細胞に加え、25℃で15分間インキュベートした。その後、MabZAPを加え、37℃で72時間インキュベートした。プレートの細胞生存率をCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存アッセイキット(Promega社製、G7571)によって検出し、プレートを読み取り、Promega Glomaxを使用して分析した。細胞死は、抗BST1モノクローナル抗体の濃度に比例していた。図5a及び5bは、抗BST1モノクローナル抗体、BST1_A1及びBST1_A2が、抗ヒトIgGアイソタイプ対照抗体と比較して、H226及びA549細胞に効率的に取り込まれたことを示す。
【0398】
(実施例10:AML患者におけるフローサイトメトリー解析によって決定したBST1に対するモノクローナル抗体の特異性)
AML患者由来のリンパ芽球へのBST_A2の結合能を、フローサイトメトリー解析によって試験した。血液を20人のAML患者から採取した。実施例7に説明する手順を用いて、BST_A2は、AML患者のおよそ80%のAML芽細胞に結合することを示した。
【0399】
(実施例11:抗BST1 mAbsによって媒介した抗体依存性細胞傷害)
まず、10 nm/L〜0.1 nm/Lの濃度で25 μlの親及び非フコシル化抗BST1抗体(BST1_A2及びBST1_A2_NF)を加え、50 μlのBST1発現A549及びU937細胞(組織球性リンパ腫細胞)を加えた96穴プレートのウェルを分離した。その後、25 μlのエフェクター細胞を、10:1及び25:1の最終エフェクター:標的(E:T)比を得るように、ウェルに加えた。次いで、プレートを、1000 rpmで2分間、静かに回転させ、その後、37℃で4時間、5% CO2インキュベーターでインキュベートした。3時間のインキュベーション後に、10 μlの溶解液をBST1発現細胞のみを含有するそれぞれのウェルに加え、最大LDH放出を測定した。なお、一組のウェルには、容積補正対照として、培地のみを含有していた。
【0400】
インキュベーション後、細胞を、1000 rpmで2分間、静かに回転させ、その後、50 μlの上清を平底96穴プレートに移した。Promega社から入手可能なCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(カタログ番号:G1780)を用いて、キット構成要素を、メーカーの説明書に従って再構成し、50 μlの基質ミックスをそれぞれのウェルに加えた。次いで、プレートを覆い、光から保護しつつ、そのまま25℃で30分間インキュベートした。この後、50 μlの停止液をそれぞれのウェルに加え、varioskanプレートリーダーを使用して、吸光度を490 nmで記録した。
【0401】
正の対照として、ADCCによる細胞死滅を刺激することが知られている抗体、及び、負の対照としてヒトIgG1アイソタイプ対照を使用して、結果は、BST1_A2及びBST1_A2_NFが、BST1発現A549及びU937細胞においてADCCを誘発できたことを示す。BST1発現A549細胞において、BST1_A2_NFは、10 nmol/Lでおよそ45%まで死滅することを示した(図6)。BST1発現U937細胞において、BST1_A2は、1 nmol/Lでおよそ20%まで死滅し、BST1_A2_NFは、1 nmol/Lでおよそ45%まで死滅することを示し(図6b)、このため、BST1_A2_NFが、AML患者及び肺癌患者において治療効果を有することを示す。
(配列表)
【表11】
図1A-C】
図1D-F】
図1G
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A-B】
図6A-B】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]