(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による例示的な平坦弁輪形成リングホルダの側面図である。
【
図2】
図1に示されるものに類似する平坦弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図2A】
図2に示されるものに類似する、リングホルダのブラケットが付加的な開口を有する平坦弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図3】本発明による例示的な鞍形弁輪形成リングホルダの側面図である。
【
図4】
図3に示されるものに類似する鞍形弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図4A】
図4に示される、ブラケットが付加的な開口を有する鞍形弁輪形成リングホルダの類似の上面図である。
【
図5】本発明による別の例示的な弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図5A】本発明による別の例示的な弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図6】本発明による、弁輪形成リングに取り付けられた例示的な弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図6A】本発明による、弁輪形成リングに取り付けられた例示的な弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図7】本発明による、短縮コネクタスタブ、陥凹コネクタ基部、及び陥凹切断ブロックを有する例示的な平坦弁輪形成リングホルダの側面図である。
【
図8】本発明による、陥凹コネクタ基部を有する例示的な鞍形弁輪形成リングホルダの側面図である。
【
図9】本発明による、陥凹コネクタ基部を有する例示的な鞍形弁輪形成リングホルダの側面図である。
【
図10】本発明による、
図11に示される断面図の(線11−11での)位置を示す例示的な平坦弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図10A】本発明による例示的な平坦弁輪形成リングホルダの上面図である。
【
図11】本発明による、
図10の線11−11に沿った平坦弁輪形成リングホルダの斜視断面図である。
【
図11A】本発明による、
図10の線11−11に沿った平坦弁輪形成リングホルダの斜視断面図である。
【
図12a】本発明による糸結びポストを有する例示的な弁輪形成リングホルダの1つを示す切欠き図である。
【
図12b】本発明による糸結びポストを有する例示的な弁輪形成リングホルダの1つを示す切欠き図である。
【
図12c】本発明による糸結びポストを有する例示的な弁輪形成リングホルダの1つを示す切欠き図である。
【
図13a】本発明による例示的な縫合糸巻付け方法の1つを示す図である。
【
図13b】本発明による例示的な縫合糸巻付け方法の1つを示す図である。
【
図13c】本発明による例示的な縫合糸巻付け方法の1つを示す図である。
【
図14a】本発明による解放可能な縫合糸と共に例示的な弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図14b】本発明による解放可能な縫合糸と共に例示的な弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図15】本発明による例示的な内部張力弁輪形成リングホルダの概略図である。
【
図16a】本発明による例示的な内部締付け弁輪形成リングホルダの1つを示す図である。
【
図16b】本発明による例示的な内部締付け弁輪形成リングホルダの1つを示す図である。
【
図17a】本発明による例示的な内部締付け弁輪形成リングホルダの1つを示す図である。
【
図17b】本発明による例示的な内部締付け弁輪形成リングホルダの1つを示す図である。
【
図18】本発明による弁輪形成リングホルダに備えられることができる鋸歯状クランプの概略図である。
【
図19a】本発明による例示的な端部締付け弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図19b】本発明による例示的な端部締付け弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図20a】本発明による格納式ピンを有する例示的な内部張力弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図20b】本発明による格納式ピンを有する例示的な内部張力弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図21】本発明による弁輪形成リングホルダに備えられることができる例示的な締付ブラケットの概略図である。
【
図22a】本発明による例示的な締付け弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図22b】本発明による例示的な締付け弁輪形成リングホルダを示す図である。
【
図23a】本発明による例示的な締付け弁輪形成リングホルダを概略的に示す図である。
【
図23b】本発明による例示的な糸を用いないホルダを概略的に示す図である。
【
図24】本発明による例示的なシースホルダの概略図である。
【
図25a】本発明による、予め縫われた縫合と共に例示的な弁輪形成ホルダ及びリングを示す図である。
【
図25b】本発明による、予め縫われた縫合と共に例示的な弁輪形成ホルダ及びリングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では種々の変更形態及び代替形態が可能であるが、それらの詳細は、図面において例として示されており、詳しく記載されるであろう。しかし、本発明を記載される特定の実施形態に限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。それとは逆に、本発明はあらゆる改変、均等物及び代替物を包含するものである。
【0013】
本発明では、弁輪形成リングのホルダの実施形態が記載されている。弁輪形成リングは、心臓弁の補強又は再形成における補助を行うのに外科医によって用いられる場合がある。弁輪形成リングは、例えば、僧帽弁に隣接して心臓に縫着されて、弁を再形成することができる。この処置は、弁逆流又は他の弁機能不全を治療及び制限するのに用いられることができる。患者への弁輪形成リングの埋込みの前及び埋込みの間に、リングは、リングが心臓内に配置されて縫着される際にリングを固定及び支持するのに用いられるホルダに取り付けられている。ホルダは、剛性でも又は可撓性でもよく、代替的には開心手術又は低侵襲的外科手術の間に用いられることができる。可撓性のホルダは、ホルダ及びリングが小さい切開及び/又はカテーテルを通って患者の心臓に挿入されなければならない場合がある低侵襲的外科手術に特に好適であり得る。ホルダは、保管、操作、又は弁輪形成リング埋込み及び前処理に関する他の処置の間にリングを支持するのにも用いられることができる。好ましい実施形態において、ホルダは患者に埋め込まれず、ホルダは、埋込み処置の間にリングから取り外され、埋込み部位から取り除かれるようになっている。リングホルダは、該リングホルダ上に設けられたコネクタに取り付けられるハンドル又は他の把持具を用いて外科医が操作することが可能である。
【0014】
以下の明細書においては、リングホルダに組み込まれることができる種々の新規な特徴が記載されている。これらの特徴は、例えば、代替的なホルダ構造、コネクタ構造、切断ブロック及び糸結びポスト、可撓性ブラケット、リングをホルダに取り付ける縫着法及び非縫着法、並びに予め縫われた縫合を含むことができる。そのような特徴は、以下の記載において関連付けられた表題を与えられた節において記載されている。
【0015】
弁輪形成リングに合わせて特別に設計されたホルダに関して本発明は記載されているが、本発明が種々の医療用途及び他の用途の取付けブラケットの設計という、より一般的な文脈において用いられることができることを当業者なら理解するであろう。
【0016】
A.ホルダ構造
図2、
図4及び
図5は、例示的な弁輪形成リングホルダ10、30、50の上面図を示す。各ホルダの上面はこれらの上面図において見ることができる。3つのホルダ10、30、50は、ホルダに取り付けられた弁輪形成リングを支持することが可能な外側楕円形ブラケット構造11、又はD形ブラケット構造31、51を有している。ブラケットの形状は、関連する弁輪形成リングの形状に近似するように設計されていてもよい。ブラケットは、上部フランジを形成する上面の一部と、半径方向外側に対向する環状下面とを有することができ、環状下面は、上部フランジから環状下面上での最も低い点へ延びる高さを有している。環状表面は、弁輪形成リングと係合可能である。ブラケットは、他の基準に従って成形されてもよい。ブラケットは、可撓性又は半可撓性材料からなってもよく、また、その形状を、ブラケットが支持しているリングの形状に適合させてもよい。ホルダ10、30、50は、切断ブロック17、37、57と、縫合糸通し孔19、39、59と、コネクタ15、35、55とを含む、それらの上面上で見ることができる他の特徴も有している。これらの特徴の各々は、本明細書の以下の節においてより詳細に検討されることになる。
【0017】
弁輪形成リングホルダ10、30、又は50の中心は、1つ又は複数の広い開口領域13、33、又は53を有することができる。開口領域は、ホルダの上面に開けられた複数の孔13、若しくは一つの広い中央孔33又は53によって形成されることができる。ホルダの中心は、リングホルダを介しての心臓弁領域の可視性を高めるように孔が開けられており、それによって外科医は、弁輪形成リングを埋込み部位により正確に配置及び縫着することができる。
【0018】
ホルダの中心は、少なくとも一つのコネクタ15、35、又は55を含むことができる。コネクタは、添付図面における六角形のスタブ(stub)によって表されている。コネクタは、ホルダを把持及び操作するのに外科医が用いるハンドル又は他の把持具にホルダを取り付けるのに用いられることができる。コネクタは、典型的には、ブラケット31若しくは51に沿って、又はコネクタを外側ブラケットに接合する支持腕を有するブラケット11の中心部に配置されている。コネクタは、リングホルダ上のいずれの場所に配置されてもよい。好ましい実施形態においては、コネクタの位置は、外科医がアクセス可能になるように、かつハンドル又は他の装置がコネクタに取り付けられた時にリング及びホルダの容易かつ巧みな操作をもたらすように決定されている。コネクタの位置は、医師に対する心臓弁領域の可視性を高め、手術領域での取り散らかし(cluttering)を低減させるように決定されてもよい。他の要件もまた、弁輪形成リングホルダ上でのコネクタの位置に影響を与える場合がある。
図2、
図4及び
図5に示される例示的な実施形態において、コネクタ15、35、又は55は、代替的に、ブラケット11の中央に位置付けられるか、又はブラケットの中心に連続的な開放領域33若しくは53を設けるようにブラケット31若しくは51の縁部に沿って配置される。コネクタは、ブラケット10若しくは30の中心軸に沿って中心決めされても、又はブラケット50上の他の位置に配置されてもよい。コネクタはまた、ブラケット11の縁部に沿って配置されても、ブラケット31若しくは51の中心に配置されても、又はホルダ10、30、50上の他のいずれの位置に配置されてもよい。
【0019】
図1及び
図3は、弁輪形成リングホルダ10、30の側面図である。ホルダ10は、
図1に示すように平坦状であってもよい。平坦状ホルダは、本質的に平坦なブラケット11を有することができる。ホルダ30は、代替的には、鞍形リングの形状により近く追従及び支持するように、鞍形であってもよい。鞍形リングホルダは、非平坦状ブラケット31を有することができ、本質的に鞍形である弁輪形成リングを固定及び支持するのに用いられることができる。鞍形リングは、心臓弁(例えば、僧帽弁)の基部の自然形状により近く追従することができ、したがって、リングの埋込み後の弁の機能を更に改善することが可能となる。リングホルダの鞍は、ホルダの後部と前部とで対称になっていてもよい。鞍は、典型的には、ホルダの上の最も低い点から最も高い点まで2mmから10mmの範囲(約5%から約25%の範囲での交連幅に対する輪高さの比(Annular Height To Commissure Width Ratio(AHCWR))で変化する高さを有することができる。
【0020】
リングホルダは、リング埋込み処置の間に医師を補助するように他の特徴を組み込むことができる。
図6は、インジケータタブ66を備えるリングホルダ60を示している。弁輪形成リング62は、リングホルダ60に取り付けられて示されている。インジケータタブ66は、三角の位置(trigone locations)を示し、医師が簡便かつ正確に心臓弁上にリングを位置合わせする助けとなる。インジケータタブは、心臓弁上でリングとホルダとを位置合わせする助けとなる、リング又はリングホルダ上に配置される、印刷された視覚的指示、成形された視覚的指示、又は他の視覚的指示であることができる。インジケータタブはまた、他の形態をとることもできる。
【0021】
図6に示される弁輪形成リング62は、とりわけ、完全な円形リング(図示の通り)、間隙を有する円形リング(間隙付きリング)、又はC形状プロテーゼであることができる。簡潔にする上で、用語「リング」は、本明細書中において、任意の弁輪形成リングの実施形態に言及するのに使用されている。完全な円形リング又はC形状のリングが代替的に添付の図に示されるが、本明細書中に記載されるホルダ、特徴、及び実施形態は、特に指定される場合を除いて、任意の種類のリングと共に使用されることができることに留意されたい。
【0022】
上述のように、弁輪形成リングホルダ、例えば、ホルダ10、30、50は、剛性、半可撓性、又は可撓性であることが可能であり、また代替的には、開心手術又は低侵襲的外科手術の間に用いられることができる。リングホルダのブラケット11、31、51は、剛性、可撓性、又は半可撓性であることが可能である。可撓性ホルダは、胸部の切開が小さすぎて弁輪形成リングを体内に導入することが困難であり得る低侵襲的外科手術に特に好適であることができる。剛性又は半可撓性ホルダを導入する困難さを補償する上で外科医がホルダから弁輪形成リングを取り外し、その結果、リングホルダを使用することの利点を失う場合がある。1つの態様では、可撓性ブラケットを有する可撓性ホルダは、ポート又は小さい切開を通る際に圧縮され、胸部で再び拡張されることができる。
【0023】
さらに可撓性のホルダは、弁輪形成リングが弁輪に取り付けられる際に或る程度の組織応力緩和をもたらすことができる。病変した心臓弁輪は、心臓疾病の性質によっては非常に脆弱である場合があり、病変した心臓弁がリングホルダ形状に一致しない場合がある。外科医が脆弱な環組織を通り、次いで、ホルダ上で結び目を作るように弁輪形成リングを通る縫合を配置すると、組織がホルダの方に引っ張られ、応力の増大が組織に与えられる。この例では、組織を、引っ張りリングをホルダ上に接触させる際に、可撓性ホルダは組織に対してより寛容であり、可撓性ホルダは組織に向かって移動して、応力の一部を緩和することが可能である。応力の増大は、組織の微小な又は肉眼的な断裂を引き起こす可能性があり、リング離開の原因になる場合がある。
【0024】
一実施形態において、ホルダ10、30、50、60、100は、例えば、可撓性ブラケット11、31、51、61、101をそれぞれ有する可撓性ホルダであることが可能である。可撓性ホルダは、少なくとも2つの異なるデュロメータ材料から構成されることが可能である。より低いデュロメータの材料(より可撓性が高く、より軟性)は、可撓性ブラケットを構成するのに用いられることができ、より高いデュロメータ材料(より硬質な材料)は、コネクタ構造を構成するのに用いられることができる。一実施形態において、可撓性ブラケット11、31、51、61、又は101に用いられる生体適合性材料は、一般的に熱可塑性エラストマであり、ポリエステル、PEBAX(商標)(低デュロメータ)又はVESTAMID(商標)等のポリアミドポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン及びウレタン(例えば、ELASTEON(商標)、PELLETHANE(商標)、TECOTHANE(商標)、BIONATE(商標)、CARBOSIL(商標)、及びPuriSil(商標))、ポリエチレン、ポリブチレン、シリコン、ゴム、或る特定のポリイミド、ナイロン、及びフッ素化炭化水素ポリマ、SANTOPRENE(商標)熱可塑性加硫物等からなる群から選択されることができるが、これらに限定されない。ブラケット11、31、51、61、又は101に選択された材料は可撓性であり、一実施形態においては、デュロメータ値は、約20ショアAから約100ショアAの範囲にあることが可能である。別の実施形態においては、デュロメータ値は、約35ショアAから約80ショアAの範囲にあることが可能である。更に別の実施形態においては、デュロメータ値は、約40ショアAから約70ショアAの範囲にあることが可能である。
【0025】
ブラケット11、31、51、61、又は101の構成だけではなく、ブラケットを構成するのに用いられる材料の選択によっても、ブラケット11、31、51、61、又は101に可撓性を与えることが可能である。例えば、
図2、
図6及び
図10は、複数の縫合糸通し孔19、109、又は複数の縫合チャネル69をそれぞれ有するホルダ10、60、100を開示している。これらの縫合糸通し孔及びチャネルは、縫合糸取付け点を与えるだけではなく、孔又はチャネル周囲の局所領域においてホルダが屈曲及び移動することを可能にしている。更なる可撓性が必要になる場合は、
図2A、
図6A及び
図10Aに示されるように、ブラケット11、61、101に開口16、65、103がそれぞれ付加されることが可能である。開口16、65、103の数及びパターンは、ブラケットの構造的統合性が維持されるように配置されることが可能である。
図4A及び
図5Aに示されるホルダは、縫合糸通し孔39及び59に加えて開口36、52をそれぞれ有している。開口36及び52は、特に、開口36、52の周囲の領域におけるホルダの可撓性を高めるように、ブラケット31及び51に設けられている。更なる開口36、52が、必要に応じてブラケット31、51に付加されることが可能であり、開口36、52のパターン及び配置は、所望の可撓性及び性能特性を与えるように変更されることが可能である。さらに、リングホルダ10、30、50、60、100の中心には、1つ又は複数の大きい開口領域13、33、53、64、102がそれぞれ含まれている。上述のように、開口領域によって、リングホルダを介する心臓弁領域の可視性が高められ、それによって外科医が埋込み部位に弁輪形成リングをより正確に配置及び縫着することが可能になる。しかし、開口領域構造によって、弁輪形成リングの埋込みの間に付加的な可撓性もブラケット11、31、51、61、101に与えられることになる。したがって、ブラケット11、31、51、61、101を構成するのに用いられる材料の特性と、縫合糸通し孔/チャネル、付加的な開口、並びにリングホルダ10、30、50、60、100の中心の開口領域の構成とは、弁輪形成リングホルダにおいて所望の可撓性を達成するように種々の方法で組み合わせられることが可能である。
【0026】
以下で更に詳細に記載されるように、例えば、コネクタ15、35、55、67、105は、ハンドル又は鉗子等の把持器具のホルダへの取付け点を提供するものである。ハンドル又は他の把持器具は、ホルダ及び弁輪形成リングの操作の改善をもたらす補助を行うことが可能である。ハンドルがホルダに取り付けられる場合、スナップフィット、ネジ山、ツイストピン、又はハンドルを接続する他の手段の使用を含む種々の方法で、ハンドルはホルダに固定されることが可能である。上述のように、コネクタは、可撓性ブラケットの材料と比較して高デュロメータの材料から構成されることが可能である。コネクタは、いくつかの材料例を挙げると、ステンレス鋼、コバルト、他の金属及び合金、ニチノール、アセタール樹脂(DELRIN(商標)等)、ポリスルホン、RADEL(商標)ポリフェニルスルホン、チタン、ELGILOY(商標)Co−Cr−Ni合金、ポリオレフィン(例えば、超高分子量(UHMW))等の熱可塑性プラスチック、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、メタクリレート(例えば、メタクリル酸ポリメチル(PMMA))、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、PEEK(ポリアリールエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、高デュロメータPEBAX(商標)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、並びにガラス繊維/炭素強化された可撓性材料を含む、より剛性の生体適合性材料からなることが可能であるが、これらに限定されない。
【0027】
一実施形態において、可撓性ホルダは、剛性のコネクタを有することが可能であり、そのコネクタは、ホルダブラケットよりも高いデュロメータの材料から作られている。ホルダのコネクタ部分はまず、より硬質の高デュロメータの材料で成形することが可能である。次いで、コネクタはブラケット型内に配置されて、低デュロメータ材料がモールドキャビティ内で成形されることが可能である。低デュロメータ材料は、剛性コネクタの特定の部分にオーバーモールドされ、それによってコネクタとブラケットとが接合される。別の実施形態において、コネクタ及びブラケットは、例えば、コネクタ及びブラケットの両方に高デュロメータ材料を用いて同一材料から製造されることが可能であり、これによって剛性又は半可撓性のホルダが形成されることになる。
【0028】
上述のように、弁輪形成リングは、リングをホルダに結び付ける上での縫合糸の使用を含む種々の手段及び方法を用いて、ホルダ、特に、ブラケットに固定されることが可能である。リングをホルダに固定し、リングをホルダから解放する他の手段及び方法は、以下に記載されている。縫合糸を用いて弁輪形成リングをホルダに結び付ける例においては、切断ブロックを用いて縫合糸を切断することによって、リングをホルダから解放することが可能である。切断ブロック107を、例えば、
図10、
図10A及び
図11に示しているが、切断ブロックの使用の更なる詳細は後述する。切断ブロックは、剛性、半可撓性、又は可撓性のホルダの構造に含まれることが可能である。一実施形態において、剛性又は半可撓性のホルダにおけるブラケット及び切断ブロックの形成に類似の材料を用いることが可能であり、その材料は、メスによって切断ブロックに切り目がつけられることによって体内に入り込む可能性のあるいかなる物質も押しのけることがないような十分なデュロメータを有している。
【0029】
可撓性ホルダ内への切断ブロック(複数の場合もあり)の組み込みには、切断ブロックの少なくとも一部が、ブラケットよりも高いデュロメータの材料から作る必要があってもよい。一実施形態において、コネクタが概して剛性であり、ブラケットよりも高いデュロメータの材料から作るものであれば、切断ブロック107及びコネクタ105は、同一又は類似の材料から作ることが可能である。剛性の切断ブロック107と剛性のコネクタとを有する可撓性のホルダを製造するには、ホルダのコネクタ105部分及び切断ブロック107がまず、より硬質の高デュロメータ材料で成形される。切断ブロック107の構成によって、切断スリット104が規定される。切断ブロック107の切断スリット104の形状は、非対称の半月形状、標準的なメス刃の形状、又は他の好都合な形状であることが可能である。切断スリット104を規定する切断ブロック107は、切断スリット104の幅、長さ、及び深さを規定する内部表面を有する。コネクタ105及び切断ブロック107は、ブラケット型内に配置されることが可能であり、ブラケットモールドキャビティ内で低デュロメータ材料を成形することが可能である。低デュロメータ材料は、剛性のコネクタ105の特定部分にオーバーモールドされ、それによって、コネクタとブラケットとが結合される。低デュロメータ材料は、切断スリット104を規定する切断ブロック107の外部表面を包み込むことが可能であり、その結果、切断スリット104を含む切断ブロック107をブラケットに接続することができる。代替的には、切断ブロック107は、タブを有することが可能であり、そのタブは、低デュロメータ材料でオーバーモールドされ、その結果、切断ブロック107が可撓性のブラケットに接合されることが可能である。
図11Aは、切断スリット104を規定する切断ブロックの内部表面108を含む切断ブロック107を示し、切断ブロックの内部表面108を含む切断ブロック107は、ブラケット101の材料よりも高いデュロメータの材料からなることが可能である。さらに、ブラケットの上面から突出する切断ブロック(例えば、
図1中の17)は、低デュロメータ材料でオーバーモールドされることが可能な下部を有することが可能であり、その結果、可撓性のブラケットに接合されることが可能である。例えば、
図1、
図4、及び
図5に示されるような切断ブロックの他の形状及び位置は、オーバーモールド又は切断ブロックの一部の部分的なエンケーシング等の技術によってブラケットに接合されることが可能であるが、これらの技術に限定されない。
【0030】
別の実施形態において、切断ブロック107は、ブラケット101と同じ材料から作ることが可能であり、ブラケット101と共に一体として成型されることが可能である。切断ブロック107を有するブラケット101が一旦成型されると、切断ブロック107の内側表面108にコーティングが施されることが可能である。コーティングによって、切断スリット104内を通って移動するメスが、体内に入る可能性があるいかなる物質を傷つけたり押しのけたりすることがないように、より硬質な表面を与えることが可能になる。コーティングは、可溶化に耐性がなければならず、かつ、要求される硬質な表面をもたらすものでなければならない。さらに、コーティングは、滅菌に耐性があり、生体適合性を有し、かつ、迅速に硬化するべきである。それに加えて、コーティングは、塗布が比較的容易であるべきである。切断ブロック107の内側表面108のコーティングは、シアノアクリレート及びエポキシ樹脂、特に、二液型エポキシ系、ウレタン等を含む。シアノアクリレートは、n−ブチルシアノアクリレート及び2−オクチルシアノアクリレートを含むことが可能である。シアノアクリレートは、促進剤を使用するタイプのもの又は促進剤を必要としないものであることが可能である。シアノアクリレートコーティングの硬化は、室温、熱硬化、又は紫外線によって達成されることが可能である。シアノアクリレートコーティングの選択は、ブラケット101の材料、切断ブロック107及び切断ブロック107の内側表面108の材料、滅菌の必要性、硬化後のシアノアクリレートの硬度、硬化方法及び時間、塗布の簡易さ、生体適合性等を含む種々の因子に依存している。シアノアクリレートコーティングの代わりに、切断ブロック107の内部表面108をコーティングするのにエポキシ樹脂を用いることが可能である。エポキシ樹脂は、熱硬化、室温硬化、又はエポキシ系の二液の組み合わせによって硬化されることが可能である。エポキシ樹脂コーティング、又はウレタン若しくはアクリルコーティングの選択は、シアノアクリレートコーティングの検討において上に挙げたものと類似の因子に基づく。Loctite(商標)は、切断ブロック内部表面硬質コーティングとしての使用要件を満たすことができる、医療グレードのシアノアクリレート、エポキシ樹脂、ウレタン、並びにその他の粘着剤及びコーティングの供給物である。
【0031】
B.コネクタ構造
コネクタ15、35、又は55は、ホルダをハンドル又は他の把持器具(図示せず)に取り付けるのに使用されることが可能なホルダの一部である。医師は、ホルダ及びリングアセンブリを操作し、それらを埋込み部位又は他の適切な部位に配置するように、ハンドル又は把持器具をコネクタに取り付けることができる。上述のように、コネクタは、指、鉗子、又は他の手段を使用してそのコネクタを把持すること、又はスナップフィット、ネジ山、ツイストピン、若しくはハンドルを接続する他の手段を使用して固定することが可能な特徴を有することができる。コネクタはまた、ホルダ及びハンドル又は把持器具が単一の存在である場合、永久的な取り付けを含んでいてもよい。図において、コネクタは、六角形スタブとして例示的に示されている。これは、異なる非六角形コネクタの使用を排除するものではない。
【0032】
上述され、かつ、
図2、
図4及び
図5に示されるように、ホルダ上のコネクタの位置は、種々の目的に合うように変更されてもよい。コネクタは、埋込みリング、心臓弁、及びこれらの構造の周囲の手術領域の、医師の可視性を最大化するように配置されることができる。コネクタはまた、リング及びホルダを正確に配置し、それ以外に操作する医師の能力を最大化し、手術領域に対する医師のアクセスを最大にし、ホルダを操作するのに使用されるハンドル又は把持具を用いての手術領域での取り散らかしを最小化するように配置されることができる。他の目的もまた、ホルダ上のコネクタの位置決めに影響するものである。
【0033】
ホルダの水平面におけるコネクタの位置は、
図2、
図4及び
図5の内容において上記で検討された。以下の段落では、垂直方向においてホルダの位置及び高さを変化させることが記載されている。
【0034】
図1は、底面がホルダの下面14と面一であるコネクタ15を備える平坦リングホルダ10を示している。コネクタスタブ15は、ホルダの上面12上に突出し、コネクタの基部は、ホルダの下面14と面一である。
図7に示される平坦リングホルダ70は、下面がホルダの下面74よりも下にある陥凹コネクタ基部78を示している。陥凹コネクタ基部78は、ホルダブラケット71の下方に突出し、ホルダ及びリングが埋込み部位に配置されると、弁口内に突出するようになっている。リングホルダ70はまた、全長コネクタ構造15よりも短く、ホルダからあまり突出しない短縮コネクタスタブ75を用いることもできる。別の実施形態において、リングホルダ70からのコネクタ構造の突出を減少させるように、コネクタ基部78がホルダ70内に更に陥凹されても、又はコネクタスタブ75が更に短縮されてもよい。コネクタスタブ75の短縮及びコネクタ基部78の下降によって、ホルダの上側部分に沿ったより良好なアクセス及び可視性がもたらされることになる。ブラケット71上のコネクタスタブ75の突出を減少又は無くすことによって、医師は、埋込み縫合糸を結んだり、又はリングの周囲に沿った他の操作を実施する空間を更に有することが可能になる。スタブ75の突出の減少によって、リング及び他の隣接する構造の周囲の医師の視野を改善することもできる。
【0035】
図8及び
図9は、鞍形状リングホルダの内容における、同様に陥凹及び短縮されたコネクタ85及び95を示している。
図3に示される鞍形状ホルダの第1の実施形態30において、コネクタ基部38は、おおよそ、ホルダブラケット31の下面34が達する最も高い点と同じレベルにある。コネクタスタブ35は、ブラケットの上面32が達する最も高い点より上に突出している。第2の実施形態80において、コネクタ基部88は、第1の実施形態30よりも低い。これによって、コネクタスタブ85が、ホルダブラケット81の上面82より上にあまり突出せず、ホルダ80上での可視性を高めている。同様に、第3の実施形態90において、コネクタ基部98は、更に陥凹されている。コネクタスタブ95は、ブラケット91の上面92上にあまり突出していない。実際、第3の実施形態90において、コネクタスタブ95は、ブラケット91の上面92と略面一である。第2の実施形態及び第3の実施形態の両方において、陥凹コネクタスタブ基部88、98は、リングの埋込み部位の下に見出される心臓弁組織及び弁口内に様々な程度まで突出することができる。これらの第2の実施形態及び第3の実施形態において、ホルダブラケット81、91上のコネクタスタブ85、95の突出を減少させることによって、ホルダ80及び90上の手術領域の可視性が、ホルダの頂部に沿って改善されることになる。スタブ75のような短縮コネクタスタブは、
図3、
図8及び
図9に示されていないが、短縮コネクタスタブは、ブラケット上のスタブの突出を減少させるように、鞍形状ホルダと組み合わせて使用されることができることに留意されたい。短縮スタブはまた、コネクタ基部88及び98からブラケット81、91の下の心臓弁組織内への突出を減少させるのに使用されることもできる。
【0036】
C.切断ブロック
埋込み処置の前及び埋込み処置の間、弁輪形成リングは、ホルダに固定される場合がある。ホルダは、埋込み部位に配置される際に、リングを保持及び操作するのに、並びに、操作の間及びリングが適所に縫着される間にリングを支持するのに使用されることができる。ホルダは、埋込み処置の間にリングから取り外されることが可能である。なぜなら、ホルダは、典型的には弁輪形成リングと一緒には心臓内へ埋め込まれないからである。リングは、種々の手段を用いてホルダに固定されていてもよい。リングは、縫合糸又は他の糸様構造を使用してホルダに取り付けられることができる。代替的には、リングは、他の解放可能な手段を使用してホルダに取り付けられることができる。リングをホルダに固定するのに使用されることができる種々の方法は、本明細書において以下でより詳細に記載されている。
【0037】
弁輪形成リングが縫合糸又は切断を受ける他の手段によってリングホルダに固定される本発明の実施形態において、切断ブロックは、ホルダ上に備えられることができる。切断ブロックは、縫合糸又は埋め込まれる弁輪形成リングをホルダに取り付ける他の手段の切断を容易にするのに使用されるガイドである。切断ブロックは、医師が切断される適切な縫合糸を切断することを助け、医師が適切な縫合糸を切断することを確実にし、かつ、医師が組織又は切断ブロックを通るもの以外の縫合糸を切断することを防ぐのに使用されることができる。
【0038】
切断ブロックは、リングをホルダに取り付けるのに使用される縫合糸が切断されることができる好ましい位置(単数又は複数)を医師に示す視覚的又はその他のガイドを備えることができる。このように、切断ブロックは、ホルダからリングを解放するのに切断されるべき、又は切断されることが可能な縫着を特定するのに使用され得る。切断ブロックは、好ましい切断場所の位置を強調する着色された視覚的指示、成型された視覚的指示、又は他の視覚的指示を有していてもよい。切断ブロックはまた、他の方法で医師に好ましい切断場所へ方向を指示し又は医師を誘導する物理的なガイドを備えていてもよい。好ましい実施形態において、切断ブロックは、医師のメス刃の方向を指示し、適切な縫合糸が切断されることを確実にするのに使用されるスロット又は他のガイド手段を備えることができる。
【0039】
切断ブロックは、リングホルダ上の種々の位置に配置されることができる。
図10に示される特定の実施形態においては、4つの切断ブロック107が、保持ブラケット101上の種々の位置に配置されている。
図4に示される実施形態において、3つの切断ブロック37は、ブラケット31上に配置されている。より多い若しくはより少ない数の切断ブロックを備えるホルダ、又はブラケット若しくはホルダ上の異なる位置に配置される切断ブロックもまた、使用されることができる。コネクタ位置の場合のように、それが適切であるならば、支持構造がブラケットに対して適切な位置に切断ブロックを保持した状態で、切断ブロックはブラケットの中心に配置されていてもよい。
【0040】
切断ブロックの位置はまた、垂直なホルダ平面において様々であってもよい。切断スロットを備える切断ブロックは、無視できない深さを有している。このような切断ブロックは、ホルダブラケット11、31、又は71よりも厚くてもよく、それぞれ、ブラケットの上面及び下面より上又は下に突出してもよい。コネクタの場合のように、切断ブロックの垂直位置は、ホルダの上縁部の周りでアクセス及び可視性を高めるか、又は他の目的を満たすように変えられてもよい。
図1のホルダ10は、ブラケット11の上面12より上に突出する切断ブロック17を示す。切断ブロックは、
図7に示されるように、陥凹されてもよい。
図7のホルダの実施形態において、切断ブロック77は、ブラケット71の上面72より上に突出せず、代わりに切断ブロック77は、ブラケット71の下面74より下に突出している。陥凹切断ブロック77は、リング埋込み部位の下に見出される弁組織及び弁口内に突出する場合がある。しかし、陥凹切断ブロック77は、ホルダ70の上面72に沿ってより良好な可視性を提供し、医師に、埋め込まれたリング及び埋込み部位に隣接する構造の妨げのない視野を与えている。平坦ホルダ70の特定の内容における陥凹切断ブロック77が
図7に示されているが、陥凹切断ブロックは、鞍形状ホルダ又はその他のタイプの埋込みデバイスホルダ上に備えられてもよい。
【0041】
図10、
図11及び
図11Aは、切断ブロックを備える例示的な弁輪形成リングホルダの2つの図を示している。
図10は、ホルダ100の上面図を示し、
図11の断面図に示される断面11−11での平面を示している。
図11の断面図は、切断ブロックの切欠き図である。
図11に示されるように、各切断ブロック107は、メス刃が導入されることができるスリット104及び縫合糸が通過することができる2つの孔109を備えることができる。孔の軸は、切断スリット104の軸と交差し、その結果、孔を通る糸は切断スリット104を横切ることになる。糸は、スロット深さのほぼ半分で横切ることができる。メス刀が切断スリット104を通過すると、縫合糸が切断され、リングの少なくとも一部分をホルダから解放するようになっている。
【0042】
切断ブロック107の断面
図11−11に示される切断スリット104は、非対称な半月形状を有することができる。切断スリット104は、切断効率を高めるように、メス刃の形状に一致する形状であることができる。スリット104の形状はまた、好ましい方向に切断を導くように、又は両方向に切断を可能にするように設計されることもできる。この形状はまた、組織から上方に離間して切断動作を引き上げるように調整されることができ、埋込み部位の周囲の構造を損傷する危険性を最小化している。
図11及び
図11Aに示される特定の例において、切断スリット104は、15番のメス刃の形状に一致することができる。スリットは、他の標準的なメス刃に一致するような形状であってもよい。
【0043】
弁輪形成リングホルダは、リングをホルダに保持するのに使用される縫合糸が結ばれ得る糸結びポストを備えることができる。糸結びポストは、縫合糸が両方の構造を通過することが可能であることから、切断ブロックに隣接して配置されることができる。
図12a〜
図12cに示されるように、縫合糸123は、弁輪形成リング及び切断ブロックの縫合チャネル129を通過することができ、糸結びポスト128に結ばれた(結び目124)その端部の少なくとも1つを有することができる。糸の両端はまた、
図12a〜
図12cに示されるように、互いに結ばれた結び目124及び糸結びポスト128に結ばれてもよい。糸結びポストは、ホルダの上面の下でリングをホルダに保持するのに使用される縫合を隠すのに用いられることができる。したがって、糸結びポストは、ホルダの上面上での視覚的妨害を低減させるようにホルダの下側に配置されることができる。糸結びポストはまた、リングがホルダから解放された後に、埋め込まれた弁輪形成リングに縫合糸が取り付けられたままにならないことを確実にするのにも使用されることができる。この目的で、縫合糸の両端は、糸結びポストに結ばれることができ、これによって、ホルダが埋込み部位から取り除かれる際に、切断された糸の両方の部分が確実にホルダに取り付けられたままになる。結び目124は、糸結びポスト128上に示されるように、切断後に縫合を保持するように、ポストの各側で結ばれることができる。
【0044】
D.ホルダへの弁輪形成リングの固定
種々の方法が、弁輪形成リングをリングホルダに固定するのに使用されることができる。縫合糸又は他の糸様の用具を包含する方法は、リングをホルダに結び付けるのに使用されることができる。代替的には、他の保持手段が、リングをホルダに固定するのに使用されてもよい。これらは、ホルダに組み込まれる締付具又は他の拘束具を含むことができる。このようなデバイスは、本明細書の以下の2つの節において更に詳細に記載されている。
【0045】
1.縫着方法−ホルダへの取り付け
弁輪形成リングは、縫合糸又は類似の糸様の用具を使用して、リングホルダに取り付けられることができる。縫合糸は、ホルダを通過しても、ホルダの周りに巻き掛けられても、又は他の方法でホルダに取り付けられてもよい。
図6は、糸63がホルダブラケット61の縫合チャネル69を通過する例示的な配置を示している。縫合チャネル69は、リング62がホルダブラケット61に対して強固に保持されることを確実にするように、ホルダ60上の種々の位置に配置されてもよい。
図6に示される特定の実施形態において、単一長さの縫合糸63は、ホルダ60を通り、リング62の周りに複数回巻き掛けられることができる。リング及びホルダセンブリに糸を複数回巻き掛けることによって、ホルダに取り付けられるリングを保持するのに必要になる糸の数をより少なくすることができる。これは、各長さの糸が、複数の位置でホルダにリングを固定するからである。そのような実施形態において、必要とする切断ブロックの数を少なくすることができる。なぜなら、各長さの糸は、一つの位置で切断することだけが必要であるからである。
図6の特定の実施形態において、リング62は、半径方向内側に引っ張る力を用いて、糸63によって保持されている。したがって、ホルダブラケットの張り出しを減少させることができ、リング周縁部及びリング上の縫合位置に対する外科医のアクセスが改善されることになる。
【0046】
縫合糸はまた、ホルダ上の縫合チャネルを通過して又は通過せずにホルダに巻き掛けられてもよい。このような実施形態は、例えば、
図14a及び
図14bに示されている。この実施形態において、縫合糸143は、ホルダブラケット141を通過しない場合がある。その代わりに、糸は、ブラケットの縁部に対して張られた状態で維持されることができる。ホルダ及びブラケットの周りに縫合糸を巻き付ける異なる手段が使用されることができる。例えば、以下の節に記載される、リングを固定するのに使用される手段と類似の手段もまた、縫合糸をホルダに固定するのに使用されることができる。
【0047】
2.縫着方法−弁輪形成リングへの取り付け
リングをホルダに固定するのに縫合糸が使用される実施形態において、縫合糸は、リングを通過すること、リング周りに巻き掛けられること、又は他の方法でリングをホルダに保持することによって、弁輪形成リングに固定されることができる。
図13aに示される1つの例示的な実施形態において、糸133は、通し縫い(through stitch)でリング131を1回又は複数回通過することができる。同じ糸はまた、本明細書の上記の節に記載されるように、リングホルダ132を通過しても、又はその周りに巻き付けられてもよい。
【0048】
糸はまた、リングを通って縫われて又は縫われずに弁輪形成リング131の周りに巻き付けられることができる。
図13bは、1つの実施形態において、リング131に一回巻き掛けられる糸134を示し、
図13cは、第2の実施形態において、リング131に複数回巻き付けられた糸135を示している。リング及びホルダに複数回糸135を巻き付けることによって、糸の単一のループ134が固定することが可能なセクションよりも広いリングセクションをホルダに固定するのに、単一の長さの糸を使用することが可能になる。リング及びホルダの周りに複数回糸135を巻き付けることで、糸、切断ブロック、結びポスト、及びホルダに取り付けられたリングを保持するのに使用され得る他のホルダ構造の総数を減らすことができる。リングの周りに糸を巻き掛ける又は巻き付けることによって、糸は、ホルダブラケットに対して半径方向内側にリングを引っ張ることができる。そのような実施形態において、ホルダブラケットは、リングの上及び下の張り出しを最小限に抑えることが可能であり、リングが保持される内側支持構造が代わりに与えられる。これによって、リングの外側周縁部に対するアクセスが改善され、リング周縁部に対する医師の視野及びアクセスが改善されることになる。代替的には、リングへの糸の巻き掛け又は巻き付けは、実質的にリングの上面の周囲に配置されるホルダブラケットに対して上向きにリングを引っ張るのに使用されることが可能である。このようなホルダは、その中心により少ない数のブラケット構造を有することができ、ホルダの中心を通る心臓弁領域の妨げられない視野が医師にもたらされることになる。
【0049】
リングをホルダに固定するのに縫着方法が使用される実施形態において、リングを固定するのに使用される糸(単数又は複数)は切断して、リングをホルダから解放することができる。切断は、メス、切断ブロック、又は他の適切な切断方法を用いて実行されることができる。また他の方法が、リングをホルダから解放するのに用いられてもよい。
図14a及び
図14bは、糸143を係合解除し、リング142を解放する押しボタン式解放方法を示している。押しボタン144は、1つ又は複数の糸を同時に解放するのに使用されることができる。リングの解放には、1つ又は複数の押しボタンを押すことが必要となる場合がある。
【0050】
3.非縫着方法
リングをホルダに固定するのに他の方法を用いてもよい。これらの方法は、リングを保持するのに内部張力、締付け、又は他の手段を用いることができる。
【0051】
図15〜
図20は、リングを保持するのに内部張力又は内部締付けを用いる一連の例示的なホルダを示す。これらのホルダは、半径方向に伸縮可能なブレース(braces)を有することができる。ブレースが外側に向かって拡張すると、ブレースとリングとの間の摩擦力又は内部張力によってリングをホルダに固定することが可能となる。内部張力に代えて又はそれに加えて、ブレース構造がリングを保持するのに使用されることができる。
【0052】
図15は、リング151を保持する基本的な内部張力ホルダ152を示している。ホルダ152は、剛性であっても弾性であってもよく、その形状及び弾性を維持するのに、又はコネクタを取り付けるのに、中央構造を備えることができる。可撓性又は半可撓性のホルダ152は、D形状リングを支持するのに使用されることができる。そのような場合、内部張力が与えられる際にホルダ及びリングアセンブリが取る自然形状は、鞍形状である場合がある。一般的に、リング151は、完全に繋がった弁輪形成リングであってよい。リング151はまた、C形状(図示の通り)又は間隙付きリングであってもよく、これは、リングの端部の間で結ばれる剛性又は弾性の縫合糸153を必要とする場合がある。縫合糸153は、リング形状を維持し、かつ、リングをホルダ上に保持する働きがある。ホルダ152は、可撓性のホルダであってよい。
【0053】
図16及び
図17は、C形状ブレース161、171を備えるホルダを示している。ブレースの面取り縁部は、リングを支持し、かつ、ブレースが半径方向外側に拡張する際にリングがホルダから滑落することを防ぐ働きがある。鋸歯状、高摩擦、又はクリッピングブラケットもまた、ブラケット内にリングを更に固定するのに使用されることができる。
図18は、リング181を保持する鋸歯クリップブラケット182の1つの概略的な実施形態を示している。クリップブラケットは、交互にリングを締付け及び保持し、又は開いてリングをホルダから解放し得る蝶番付き顎部を有することができる。
【0054】
ホルダはまた、リングを固定するブレースの係合を解除するのに用いられる解放機構を有することができる。この解放機構は、押しボタン、又はブレースを内側に引っ張り、リングをホルダから解放するのに使用可能である他のタイプの機構を含むことができる。
図16及び
図17は、ホルダの中心又はその近くに配置される押しボタン又はレバーがブレースを後退させるのに使用される2つの例示的な解放機構を示している。これらの図に示される解放機構は例示であり、他の既知のタイプの解放機構が、これらのホルダにおいて使用されることができる。ブレースは、半径方向ブラケット支持アーム162、172の上方のセット及び下方のセットを実質的に反対方向に移動させることによって、引っ込めることができる。支持アーム162又は172の上方のセットは、実質的に上方向に移動することができ、支持アーム162又は172の下方のセットは、実質的に下方向に移動することができる。支持アームの異なる方向への移動は、保持ブレース161、171を半径方向内側に引っ張り、かつ、リングをホルダから解放するように作用することができる。
【0055】
図19a及び
図19bは、C形状プロテーゼ(「リング」)をホルダに保持するのに端部クランプ192を使用する例示的なホルダを示している。端部クランプ192は、リング191上に係止し、ブラケットの面取り縁部はリングを固定する補助となることができる。端部クランプは、リングがホルダから解放される際に、193で示されるように、係合解除されることができる。C形状ホルダは、
図19bに示されるように、折り畳まれることによって、リング191をその外側ブラケット194から解放することができる。
【0056】
図20a及び
図20bは、中央ホルダ構造203から半径方向に延びる引込可能ロッド又はピン202を有する例示的なホルダ200を示している。ロッド又はピンは、剛性又は可撓性の材料からなることができ、形状記憶合金又はニチノールからなることができる。ロッド202は、係合されると中央ホルダ構造203から半径方向外向きに伸長し、複数の点でリング内面に圧力を掛けるようになっている。ロッド202は、係合解除されると内側に引っ込み、リング201をホルダ200から解放するようになっている。ロッドは、ロッド202が挿入される中央ハブ203を回転させることによって係合解除されることができる。他の係合解除機構を用いてもよい。
【0057】
図21及び
図22は、締付けホルダ又はクラムシェルホルダを示している。これらのホルダは、1つ又は複数の中央ブレース212又は222と、1つ又は複数の引込可能な外側支持体213又は223とを備えることができる。中央ブレース及び外側ブレースは、リングの周りの1つ又は複数の位置でリング211又は221を実質的に締付け又は拘束するのに用いられることができる。ブレースは、リングがクランプから滑落するのを阻止するために、面取り縁部又は突起を有していてもよい。締付けブレースは、内側締付けブレース及び外側締付けブレースを移動させて離間させることによって、リングを解放することができる。
図22a及び
図22bに示される1つの実施形態において、外側ブレース223が解放され、内側ブレース222は実質的に静止したままでもよい。別の実施形態において、内側ブレースが引っ込む間に、外側ブレースは実質的に静止したままであってもよい。代替的には、内側ブレース及び外側ブレースの両方が移動してもよい。ホルダは、押しボタン機構又は他の機構を使用してリングを解放することができる。
図22a及び
図22bに示される特定の実施形態では、ホルダの中央部分のねじり作用を与え、外側締付け又はクラムシェル構造223を係合解除することによって、リングがホルダから解放される。外側締付け又はクラムシェル構造223は、一旦係合解除されると、リング221を自由に移動及び解放させることができる。他の既知の解放及び締付け機構を用いてもよい。
【0058】
リングをホルダ内に固定するのに使用される締付け及び他の方法は、他の保持手段と組み合わされることができる。
図23aは、クランプ状構造233を使用してホルダ232に固定されるリング231を示している。クランプ状構造233は、とりわけ、糸、布、金属、及び/又はプラスチックを含む種々の材料を含むことができる。クランプ状構造233は、縫合糸234によって適所に保持されることができる。クランプ状構造233は、縫合糸234を切断することによって解放されることができる。
図23bは、糸ではないラップ235を用いてホルダ232に固定されるリング231を示している。糸ではないラップ235は、種々の材料のいずれからなってもよく、リング231及びホルダ232の一方又は両方の周囲に巻き付けられてもよい。縫合糸ホルダの内容において上述したように、糸ではないラップ235は、リング231及び/又はホルダ232の周りに一回巻き付けられても、又は構造の一方又は両方の周りに複数回巻き掛けられてもよい。
【0059】
他のホルダ構造もまた使用されることができる。
図24は、弁輪形成リング241の周囲に嵌合し、弁輪形成リング241上を滑動し、出し入れすることが可能なチューブ構造242を含むシースホルダを示している。シースホルダは、C形状リング又は間隙付き完全リングのいずれかと一緒に用いられることができ、間隙は、シースホルダをリングから取り外すことを可能にするのに必要とされるものである。チューブ構造242は、リングの形状の維持を助けるように剛性であってもよい。代替的には、チューブ構造242は、可撓性又は不定形であってもよい。このような可撓性ホルダは、この弁輪形成リング及びホルダが埋込みカテーテルを介して埋め込まれなければならない場合がある低侵襲的な外科手術で特に有用である場合がある。可撓性ホルダは、リング及びホルダを埋込み部位に運ぶのに、医師がリング及びホルダをつぶして埋込みカテーテル内に入れることを可能にすることができる。リング及びホルダセンブリは、埋込み部位において又はその近くで埋込みカテーテルから一旦引き抜かれると、その形状を再び回復することができる。シースホルダに取り付けられたリングの埋込みの間、リングは、その埋込み部位においてリングを縫着する前にホルダから引き抜かれなければならない場合がある。縫着は、ホルダが取り除かれた後に行われる場合がある。縫着はまた、縫合糸がリングの露出部分に結び付けられている間にリングの非縫着部のホルダ内への固定及び支持を維持するように、シールホルダが引き抜かれる際に行ってもよい。
【0060】
E.予め縫われた縫合
本明細書中に記載されるホルダ等のホルダに取り付けられた弁輪形成リングは、予め縫われた縫合を用いて取り付けられることができる。
図25aは、予め縫われた縫合糸252が縫合針253からリング251を通って延びた状態で、ホルダ250に取り付けられたリング251を示す。予め縫われた縫合糸252及び縫合針253の使用によって、埋込み部位でのリングの縫合が容易になり、促進することができる。それらの使用によってまた、縫合のより良好な位置合わせ及び間隔決めを可能にすることができ、リングのより良好な配置が確実になる。絡み防止の特徴が、予め縫われた縫合糸と組み合わされることができる。縫合糸252は、ホルダ250を通過しても、又はリング251をホルダ250に固定若しくは保持するのに使用されてもよい。縫合糸252はまた、ホルダ250を通過しない場合もあり、リング251をホルダ250に固定するのに使用されない場合もある。
図25bは、縫合針253によって埋込み部位に縫着されるリング251を示している。縫合針253は、リング251がホルダ250に取り付けられたまま、又はホルダがリングから取り外された後に結び付けることができる。
【0061】
本発明の例示的な実施形態を例証及び記載するためだけに、上記の記載を提示した。これは、網羅的であること又は開示されるいかなる明確な形態にも本発明を限定することを意図するものではない。上記の教示を踏まえて、多くの変更形態及び変形形態が可能である。本明細書において特定の例が例証及び記載されているが、当業者は、同じ目的を達成すると予測されるいかなる配置によって、示される特定の例を代替することが可能であることを理解するであろう。本願は、本主題の改変又は変更を包含することを意図するものである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的な均等物によって規定されることが意図されている。