(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
(直流モータ)
次に、この発明の第1実施形態を
図1、
図2に基づいて説明する。
図1は、直流モータ1の縦断面図、
図2は、直流モータ1の概略構成図である。
図1、
図2に示すように、直流モータ1は、車両に搭載する電装品の駆動源となるものであって、有底円筒形状のヨーク2内にアーマチュア3を回転自在に配置した構成となっている。
【0019】
ヨーク2の筒部2aは、断面略6角形状に形成されており、6つの平坦壁41と、これらを連結する屈曲壁42とで構成されている。
各平坦壁41の内面には、それぞれセグメント型の永久磁石4が周方向に磁極が順番となるように固着されている。すなわち、永久磁石4は6つ設けられており、直流モータ1は、ヨーク2に6極の磁極が形成された状態になっている。なお、セグメント型の永久磁石4としては、例えばネオジム焼結(Nd焼結)により形成された磁石などが用いられる。
【0020】
アーマチュア3は、回転軸5に外嵌固定されたアーマチュアコア6と、アーマチュアコア6に巻装されたアーマチュアコイル7と、アーマチュアコア6の一端側に配置されたコンミテータ(整流子)13とから構成されている。アーマチュアコア6は、リング状の金属板8を軸方向に複数枚積層したものである。金属板8の外周部には軸方向平面視T字型のティース9が周方向に沿って等間隔で、かつ放射状に10個形成されている。
【0021】
複数枚の金属板8を回転軸5に外嵌することにより、アーマチュアコア6の外周には隣接するティース9間に蟻溝状のスロット11が形成されている。スロット11は軸方向に沿って延びており、周方向に沿って等間隔に10個形成されている。
このスロット11間にはエナメル被覆の巻線12が巻装され、これによりアーマチュアコア6の外周に複数のアーマチュアコイル7が形成される。
【0022】
ここで、各ティース9は、この延在方向が軸方向に対して捩れるように形成され、最適スキュー角θを有している。最適スキュー角θは、以下のように設定される。
すなわち、直流モータ1は、磁極数が6極、スロット11の数が10に設定されているので、次数が30次となる。このため、最適スキュー角θは、
θ=360/30=12度・・・(1)
に設定される。
【0023】
コンミテータ13は回転軸5の一端に外嵌固定されている。コンミテータ13の外周面には、導電材で形成されたセグメント14が15枚取り付けられている。セグメント14は軸方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。各セグメント14のアーマチュアコア6側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ15が一体形成されている。ライザ15には、アーマチュアコイル7や後述の接続線(均圧線)25を形成する巻線12の巻き始め端31、及び巻き終わり端32(
図3参照)とが掛け回わされ、ヒュージングによりライザ15に固定されている。これにより、セグメント14とこれに対応するアーマチュアコイル7、及び接続線25とが電気的に接続される。
【0024】
回転軸5の他端側は、ヨーク2に突出形成されたボス内の軸受16によって回転自在に支持されている。ヨーク2の開口端にはカバー17が設けられており、このカバー17の内側にはホルダステー18が取り付けられている。ホルダステー18には、周方向に所定の角度間隔をあけて2つのブラシホルダ19が設けられている。
なお、本実施形態では、2つのブラシホルダ19は、機械角で60度間隔をあけて配置されている。しかしながら、直流モータ1は、ヨーク2の内周面に6つの永久磁石4が磁極が順番となるように配設されており、回転軸5を中心にして対向する磁極が異なる。このため、2つのブラシホルダ19を、機械角で180度間隔をあけて配置することも可能である。
【0025】
各ブラシホルダ19には、それぞれブラシ21がスプリングSを介して付勢された状態で出没自在に内装されている。これらブラシ21の先端部は、スプリングSによって付勢されているためコンミテータ13に摺接しており、外部からの電源がブラシ21を介してコンミテータ13に供給されるようになっている。
【0026】
(巻線の巻装方法)
図3は、アーマチュア3のセグメント14(ライザ15)とティース9、そして、ヨーク2側に配設されている永久磁石4とを展開した図面であり、隣接するティース9の空隙がスロット11に相当している(以下の図面についても同様)。なお、以下の図面においては、各セグメント14、及び各ティース9に周回り方向に沿って順に番号を付けると共に、巻装された巻線12にそれぞれ符号を付して説明する。
【0027】
ここで、同電位となるセグメント14同士、つまり、4つ置きに存在しているセグメント14同士は、互いに接続線25によって短絡されている。
また、アーマチュアコア6の外周に形成されるアーマチュアコイル7は、隣接する2つのティース9,9に跨るように分布巻き方式で巻線12が巻装されることにより形成され、U相のアーマチュアコイル71U、V相のアーマチュアコイル71V、W相のアーマチュアコイル71W、X相のアーマチュアコイル71X、Y相のアーマチュアコイル71Yの5相構造になっている。そして、各相のアーマチュアコイル7は、それぞれ回転軸5を中心にして対向するように2箇所に形成される。以下、より具体的に説明する。
【0028】
図3に示すように、まず、U相のアーマチュアコイル71Uを形成する。この場合、まず、巻線12の巻き始め端31を1番セグメント14のライザ15に掛け回し、巻線12を10番−1番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、10番−1番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する2番−3番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を順方向(
図2における時計回り方向)に向かってN回(Nは自然数)巻回し、U相小コイル171Uを形成する。
【0029】
U相小コイル171Uを形成した巻線12は、2番−3番ティース9,9間のスロット11から引き出し、7番−8番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、7番−8番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する5番−6番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を逆方向(
図3における反時計回り方向)に向かってN回巻回し、−U相小コイル172Uを形成する。
【0030】
これにより、U相小コイル171Uと−U相小コイル172Uとが直列に接続されたU相のアーマチュアコイル71Uが形成される。
そして、U相のアーマチュアコイル71Uの巻き終わり端32を、5番−6番ティース9,9間のスロット11から引き出し、1番セグメント14に隣接する2番セグメント14と同電位となる7番セグメント14のライザ15に掛け回す。これにより、隣接するセグメント14である1番セグメント14と2番セグメント14との間、6番セグメント14と7番セグメント14との間、及び11番セグメント14と12番セグメント14との間に、U相のアーマチュアコイル71Uが接続された状態になる。
【0031】
続いて、V相のアーマチュアコイル71Vを形成する。この場合、まず、巻線12の巻き始め端31を7番セグメント14のライザ15に掛け回し、巻線12を4番−5番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、4番−5番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する6番−7番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を順方向に向かってN回巻回し、V相小コイル171Vを形成する。
【0032】
V相小コイル171Vを形成した巻線12は、6番−7番ティース9,9間のスロット11から引き出し、1番−2番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、1番−2番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する9番−10番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を逆方向に向かってN回巻回し、−V相小コイル172Vを形成する。
【0033】
これにより、V相小コイル171Vと−V相小コイル172Vとが直列に接続されたV相のアーマチュアコイル71Vが形成される。
そして、V相のアーマチュアコイル71Vの巻き終わり端32を、9番−10番ティース9,9間のスロット11から引き出し、7番セグメント14に隣接する8番セグメント14と同電位となる13番セグメント14のライザ15に掛け回す。これにより、隣接するセグメント14である2番セグメント14と3番セグメント14との間、7番セグメント14と8番セグメント14との間、及び12番セグメント14と13番セグメント14との間に、V相のアーマチュアコイル71Vが接続された状態になる。
【0034】
続いて、W相のアーマチュアコイル71Wを形成する。この場合、まず、巻線12の巻き始め端31を13番セグメント14のライザ15に掛け回し、巻線12を8番−9番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、8番−9番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する10番−1番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を順方向に向かってN回巻回し、W相小コイル171Wを形成する。
【0035】
W相小コイル171Wを形成した巻線12は、10番−1番ティース9,9間のスロット11から引き出し、5番−6番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、5番−6番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する3番−4番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を逆方向に向かってN回巻回し、−W相小コイル172Wを形成する。
【0036】
これにより、W相小コイル171Wと−W相小コイル172Wとが直列に接続されたW相のアーマチュアコイル71Wが形成される。
そして、W相のアーマチュアコイル71Wの巻き終わり端32を、3番−4番ティース9,9間のスロット11から引き出し、13番セグメント14に隣接する14番セグメント14と同電位となる4番セグメント14のライザ15に掛け回す。これにより、隣接するセグメント14である3番セグメント14と4番セグメント14との間、8番セグメント14と9番セグメント14との間、及び13番セグメント14と14番セグメント14との間に、W相のアーマチュアコイル71Wが接続された状態になる。
【0037】
続いて、X相のアーマチュアコイル71Xを形成する。この場合、まず、巻線12の巻き始め端31を4番セグメント14のライザ15に掛け回し、巻線12を2番−3番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、2番−3番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する4番−5番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を順方向に向かってN回巻回し、X相小コイル171Xを形成する。
【0038】
X相小コイル171Xを形成した巻線12は、4番−5番ティース9,9間のスロット11から引き出し、9番−10番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、9番−10番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する7番−8番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を逆方向に向かってN回巻回し、−X相小コイル172Xを形成する。
【0039】
これにより、X相小コイル171Xと−X相小コイル172Xとが直列に接続されたX相のアーマチュアコイル71Xが形成される。
そして、X相のアーマチュアコイル71Xの巻き終わり端32を、7番−8番ティース9,9間のスロット11から引き出し、4番セグメント14に隣接する5番セグメント14と同電位となる10番セグメント14のライザ15に掛け回す。これにより、隣接するセグメント14である4番セグメント14と5番セグメント14との間、9番セグメント14と10番セグメント14との間、及び14番セグメント14と15番セグメント14との間に、X相のアーマチュアコイル71Xが接続された状態になる。
【0040】
続いて、Y相のアーマチュアコイル71Yを形成する。この場合、まず、巻線12の巻き始め端31を10番セグメント14のライザ15に掛け回し、巻線12を6番−7番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、6番−7番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する8番−9番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を順方向に向かってN回巻回し、Y相小コイル171Yを形成する。
【0041】
Y相小コイル171Yを形成した巻線12は、8番−9番ティース9,9間のスロット11から引き出し、3番−4番ティース9,9間のスロット11に引き込む。そして、3番−4番ティース9,9間のスロット11と、このスロット11から1つのスロット11を飛ばして存在する1番−2番ティース9,9間のスロット11との間に巻線12を逆方向に向かってN回巻回し、−Y相小コイル172Yを形成する。
【0042】
これにより、Y相小コイル171Yと−Y相小コイル172Yとが直列に接続されたY相のアーマチュアコイル71Yが形成される。
そして、Y相のアーマチュアコイル71Yの巻き終わり端32を、1番−2番ティース9,9間のスロット11から引き出し、10番セグメント14に隣接する11番セグメント14と同電位となる1番セグメント14のライザ15に掛け回す。これにより、隣接するセグメント14である5番セグメント14と6番セグメント14との間、10番セグメント14と11番セグメント14との間、及び15番セグメント14と1番セグメント14との間に、Y相のアーマチュアコイル71Yが接続された状態になる。
【0043】
このような構成のもと、隣接するセグメント14,14間には、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yが、U相、V相、W相、X相、Y相の順に接続された状態になり、並列回路数が2回路となる閉回路を形成する。
そして、ブラシ21を介して各相のアーマチュアコイル71U〜72Yに順次電流が供給されると、アーマチュアコア6の所定の位置に順次磁界が発生する。すると、ヨーク2に設けられている永久磁石4との間に反発力や吸引力が発生し、アーマチュア3が回転する。
【0044】
(効果)
したがって、上述の第1実施形態によれば、スロット11の数を10としたまま、磁極数を、従来の4極から6極にすることができる。このため、直流モータ1の体格を従来と同じ体格に維持しつつ、1極当たりの磁束量を小さくすることができる。よって、アーマチュアコア6、ヨーク2等の磁路が形成される部位の寸法を、従来よりも小さく設定することができ、この分小型化、軽量化を図ることができる。
また、ブラシ21の配置角度のバリエーションとして、機械角で60度間隔をあけて配置することができる他、磁極数が2極の場合と同様に、機械角で180度間隔をあけて配置することができる。このため、ブラシ21の周囲のレイアウト性を向上させることができる。
【0045】
さらに、従来と比較して磁極数が増大する分、ティース9の最適スキュー角を小さく設定することができる。つまり、特に図示しないが、例えば、従来のように4極10スロットのモータの場合、次数が20次となり、最適スキュー角θ’は、
θ’=360/20=18度・・・(2)
を満たすように、設定される。これに対し、本実施形態の直流モータ1は、6極10スロットなので次数が30次となり、ティース9の最適スキュー角θは式(1)を満たすように設定さる。
【0046】
つまり、従来よりも最適スキュー角を小さく設定することができ、この分、従来よりもアーマチュアコア6を容易に製造することが可能になる。また、最適スキュー角が従来よりも小さいので、この分、アーマチュアコア6への巻線12の巻装作業も容易行うことが可能になる。
さらに、次数が従来よりも大きいので、この分、コギングトルクを小さくすることができる。このため、低騒音、低振動な直流モータを提供することが可能になる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を
図1を援用し、
図4に基づいて説明する。
図4は、この第2実施形態におけるアーマチュア3のセグメント14(ライザ15)とティース9、そして、ヨーク2側に配設されている永久磁石4とを展開した図である。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態でも同様)。
【0048】
この第2実施形態において、直流モータ1は、永久磁石4を6つ、スロット11を10個、セグメント14を15枚有した6極10スロット15セグメントのモータである点、アーマチュアコア6の外周に形成されるアーマチュアコイル7は、隣接する2つのティース9,9に跨るように分布巻き方式で巻線12が巻装されることにより形成され、U相、V相、W相、X相、Y相のアーマチュアコイル71U〜71Yの5相構造になっている点、そして、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yは、それぞれ回転軸5を中心にして対向するように形成された各相小171U〜172Yからなる点、同電位となるセグメント14同士、つまり、回転軸5の回転軸線に対向する2つのセグメント14同士は、接続線25によって短絡されている点等の基本的構成は、前述の第1実施形態と同様である。また、各相小コイル171U〜172Yが巻装されている2つのティース9,9の番号は、前述の第1実施形態と同様とする(以下の実施形態でも同様)。
【0049】
ここで、前述の第1実施形態と、この第2実施形態の相違点は、前述の第1実施形態のアーマチュアコイル7は、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yを構成する各相小コイル171U〜172Yが、同相同士一連に形成されているのに対し、第2実施形態の各相小コイル171U〜172Yは、それぞれの巻き始め端31、及び巻き終わり端32が対応するセグメント14のライザ15に掛け回されている点にある。
【0050】
(巻線の巻装方法)
より詳しくは、
図4に示すように、まず、巻線12の巻き始め端31を1番セグメント14に掛け回した後、所定のスロット11,11間にU相小コイル171Uを形成し、このU相小コイル171Uの巻き終わり端32を、1番セグメント14に隣接する2番セグメント14のライザ15に駆け回して接続する。
この後、2番セグメント14に、−V相小コイル172Vの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間に−V相小コイル172Vを形成し、この−V相小コイル172Vの巻き終わり端32を、2番セグメント14に隣接する3番セグメント14と同電位となる13番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。
【0051】
続いて、13番セグメント14に、W相小コイル171Wの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間にW相小コイル171Wを形成し、このW相小コイル171Wの巻き終わり端32を、13番セグメント14に隣接する14番セグメントのライザ15に掛け回して接続する。
続いて、14番セグメント14に、−X相小コイル172Xの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間に−X相小コイル172Xを形成し、この−X相小コイル172Xの巻き終わり端32を、14番セグメント14に隣接する15番セグメント14と同電位となる10番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。
【0052】
続いて、10番セグメント14に、Y相小コイル171Yの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間にY相小コイル171Yを形成し、このY相小コイル171Yの巻き終わり端32を、10番セグメント14に隣接する11番セグメントのライザ15に掛け回して接続する。
続いて、11番セグメント14に、−U相小コイル172Uの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間に−U相小コイル172Uを形成し、この−U相小コイル172Uの巻き終わり端32を、11番セグメント14に隣接する12番セグメント14と同電位となる7番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。
【0053】
続いて、7番セグメント14に、V相小コイル171Vの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間にV相小コイル171Vを形成し、このV相小コイル171Vの巻き終わり端32を、7番セグメント14に隣接する8番セグメントのライザ15に掛け回して接続する。
続いて、8番セグメント14に、−W相小コイル172Wの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間に−W相小コイル172Wを形成し、この−W相小コイル172Wの巻き終わり端32を、8番セグメント14に隣接する9番セグメント14と同電位となる4番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。
【0054】
続いて、4番セグメント14に、X相小コイル171Xの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間にX相小コイル171Xを形成し、このX相小コイル171Vの巻き終わり端32を、4番セグメント14に隣接する5番セグメントのライザ15に掛け回して接続する。
続いて、5番セグメント14に、−Y相小コイル172Yの巻き始め端31を接続した形で、所定のスロット11,11間に−Y相小コイル172Yを形成し、この−Y相小コイル172Yの巻き終わり端32を、5番セグメント14に隣接する6番セグメント14と同電位となる1番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。
【0055】
これにより、隣接するセグメント14,14間には、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yが、U相、V相、W相、X相、Y相の順に接続された状態になり、並列回路数が4回路となる閉回路を形成する。
【0056】
(効果)
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、並列回路数を4つにすることができるので、前述の第1実施形態のように並列回路数が2回路の場合と比較して、巻線12の線径を細径化することができる。このため、巻線12の巻装作業を容易化することが可能になる。
【0057】
(第3実施形態)
(巻線の巻装方法)
次に、この発明の第3実施形態を
図5に基づいて説明する。
図5は、この第3実施形態におけるアーマチュア3のセグメント14(ライザ15)とティース9、そして、ヨーク2側に配設されている永久磁石4とを展開した図である。
同図に示すように、前述の第1実施形態の巻線12の巻装方法と、第3実施形態の巻線12の巻装方法との相違点は、第1実施形態では、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yと接続線25とがそれぞれ別々の巻線12により形成されているのに対し、第3実施形態では、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yと接続線25とが所謂一筆書きの要領で一連に形成されている点にある。
【0058】
より詳しくは、まず、巻線12の巻き始め端31を1番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、6番セグメント14のライザ15、11番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。
さらに、再び1番セグメント14のライザ15に巻線12を掛けまわした後、所定のスロット11,11間に−U相小コイル171Uを形成し、次いでU相小コイル171Uを形成する。
【0059】
続いて、巻線12を7番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、12番セグメント14のライザ15、2番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。
さらに、再び7番セグメント14のライザ15に巻線12を掛けまわした後、所定のスロット11,11間に−V相小コイル171Vを形成し、次いでV相小コイル171Vを形成する。
【0060】
続いて、巻線12を13番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、3番セグメント14のライザ15、8番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。
さらに、再び13番セグメント14のライザ15に巻線12を掛けまわした後、所定のスロット11,11間に−W相小コイル171Wを形成し、次いでW相小コイル171Wを形成する。
【0061】
続いて、巻線12を4番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、9番セグメント14のライザ15、14番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。
さらに、再び4番セグメント14のライザ15に巻線12を掛けまわした後、所定のスロット11,11間に−X相小コイル171Xを形成し、次いでX相小コイル171Xを形成する。
【0062】
続いて、巻線12を10番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、15番セグメント14のライザ15、5番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。
さらに、再び10番セグメント14のライザ15に巻線12を掛けまわした後、所定のスロット11,11間に−Y相小コイル171Yを形成し、次いでY相小コイル171Yを形成する。そして、最後に巻線12の巻き終わり端32を、1番セグメント14のライザ15に掛け回す。
このように巻装作業を行うことにより、隣接するセグメント14,14間に、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yが、U相、V相、W相、X相、Y相の順に接続された状態になり、並列回路数が2回路となる閉回路を形成する。
【0063】
(効果)
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、アーマチュアコア6への巻線12の巻装作業、及び各セグメント14への巻線12の接続作業を一筆書きの要領で連続で行うことができる。このため、巻線12の巻装時間、及びセグメント14への接続線25の接続時間の総時間を短縮し、製造コストを低減できる。
【0064】
(第4実施形態)
(巻線の巻装方法)
次に、この発明の第4実施形態を
図6〜
図8に基づいて説明する。
図6は、この第4実施形態におけるアーマチュア3のセグメント14(ライザ15)とティース9、そして、ヨーク2側に配設されている永久磁石4とを展開した図である。
同図に示すように、この第4実施形態と前述の第2実施形態との相違点は、前述の第2実施形態では、各々スロット11から引き出された巻線12は、引き出されたスロット11の近傍に位置する所定のセグメント14に接続されているのに対し、第4実施形態では、各々スロット11から引き出された巻線12は、引き出されたスロット11から離れた位置に存在する所定のセグメント14に接続されている点にある。
【0065】
ここで、第4実施形態では、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yを形成する巻線12の巻装工程が、U相小コイル171U、V相小コイル171V、W相小コイル171W、X相小コイル171X、及びY相小コイル171Yを形成する第1巻装工程と、−U相小コイル172U、−V相小コイル172V、−W相小コイル172W、−X相小コイル172X、及び−Y相小コイル172Yを形成する第2巻装工程との2つの工程により構成されている。
【0066】
より詳しく、
図7、
図8に基づいて説明する。
図7は、アーマチュア3の展開図であって、第1巻装工程を示している。
図8は、アーマチュア3の展開図であって、第2巻装工程を示している。
図7に示すように、第1巻装工程では、まず、巻線12の巻き始め端31を1番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、6番セグメント14のライザ15、11番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。そして、11番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間にU相小コイル171Uを形成する。
【0067】
続いて、巻線12を7番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、12番セグメント14のライザ15、2番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。そして、2番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間にV相小コイル171Vを形成する。
【0068】
続いて、巻線12を13番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、3番セグメント14のライザ15、8番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。そして、8番セグメント14か巻線12を引き出して所定のスロット11,11間にW相小コイル171Wを形成する。
【0069】
続いて、巻線12を4番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、9番セグメント14のライザ15、14番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。そして、14番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間にX相小コイル171Xを形成する。
【0070】
続いて、巻線12を10番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、15番セグメント14のライザ15、5番セグメント14のライザ15の順に巻線12を掛け回す。これにより、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25が形成される。そして、5番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間にY相小コイル171Yを形成する。このY相小コイル171Yを形成した後、巻線12の巻き終わり端32を1番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。これにより、第1巻装工程が完了する。
【0071】
次に、第2巻装工程を行う。
図8に示すように、第2巻装工程では、まず、巻線12の巻き始め端31を1番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、11番セグメント14のライザ15に巻線12を掛け回す。そして、11番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間に−Y相小コイル172Yを形成する。
【0072】
続いて、巻線12を10番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、5番セグメント14のライザ15に巻線12を掛け回す。そして、5番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間に−X相小コイル172Xを形成する。
続いて、巻線12を4番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、14番セグメント14のライザ15に巻線12を掛け回す。そして、14番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間に−W相小コイル172Wを形成する。
【0073】
続いて、巻線12を13番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、8番セグメント14のライザ15に巻線12を掛け回す。そして、8番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間に−V相小コイル172Vを形成する。
続いて、巻線12を7番セグメント14のライザ15に掛け回し、この後、2番セグメント14のライザ15に巻線12を掛け回す。そして、2番セグメント14から巻線12を引き出して所定のスロット11,11間に−U相小コイル172Uを形成する。この−U相小コイル172Uを形成した後、巻線12の巻き終わり端32を1番セグメント14のライザ15に掛け回して接続する。これにより、第2巻装工程が完了する。
【0074】
このように巻装作業を行うことにより、隣接するセグメント14,14間に、各相のアーマチュアコイル71U〜71Yが、U相、V相、W相、X相、Y相の順に接続された状態になり、並列回路数が4回路となる閉回路を形成する。
【0075】
(効果)
したがって、上述の第4実施形態では、前述の第2実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、第1巻装工程(
図7参照)、及び第2巻装工程(
図8参照)を連続して行うことにより、アーマチュアコア6への巻線12の巻装作業、及び各セグメント14への巻線12の接続作業を一筆書きの要領で連続で行うことができる。このため、並列回路数を4回路形成する巻線12の構造であっても、巻線12の巻装時間、及びセグメント14への接続線25の接続時間の総時間を短縮し、製造コストを低減できる。
【0076】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ホルダステー18に、2つのブラシホルダ19が設けられ、2つのブラシ21,21がセグメント14に摺接している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、極数と同じ数である6つまでブラシ21を増加させることが可能である。
【0077】
また、上述の実施形態では、ヨーク2の筒部2aは、断面略6角形状に形成されており、各平坦壁41の内面に、それぞれセグメント型の永久磁石4が周方向に磁極が順番となるように固着されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ヨーク2に磁極が6極形成されていればよい。より具体的に、以下に説明する。
【0078】
(ヨークの第1変形例)
図9は、ヨークの第1変形例を示し、
図2に対応している。
同図に示すように、ヨーク52の筒部52aは、略円筒状に形成されている。筒部52aには、内周面に内嵌可能なリング状の永久磁石54が固着されている。
この永久磁石54は、例えば、樹脂をバインダーとしたボンド(プラスチック)磁石が用いられる。そして、永久磁石54には、周方向に6極の磁極が形成されている。
このように構成した場合であっても、ヨークが断面略6角形状に形成され、セグメント型の永久磁石4が用いられている場合と同様の効果を奏することができる。
【0079】
(ヨークの第2変形例)
図10は、ヨークの第2変形例を示し、
図2に対応している。
同図に示すように、ヨーク62の筒部62aは、略円筒状に形成されている。筒部52aには、瓦状に形成された6つの永久磁石64が周方向に等間隔で、磁極が順番になるように固着されている。この永久磁石64としては、例えば、焼結フェライト磁石が用いられる。このように構成した場合であっても、前述の第1変形例と同様の効果を奏することができる。
【0080】
(第2巻装工程の変形例)
また、上述の第4実施形態では、第2巻装工程として、
図8に示すような方法により、所定のスロット11,11間に、−U相小コイル172U、−V相小コイル172V、−W相小コイル172W、−X相小コイル172X、及び−Y相小コイル172Yを形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、以下の
図10に示すような方法により、所定のスロット11,11間に、−U相小コイル172U、−V相小コイル172V、−W相小コイル172W、−X相小コイル172X、及び−Y相小コイル172Yを形成してもよい。
【0081】
図11は、アーマチュア3の展開図であって、第2巻装工程の変形例を示している。
ここで、第4実施形態における第2巻装工程(
図8参照)と、第2巻装工程の変形例(
図11参照)との相違点は、同電位となるセグメント14同士を接続する接続線25の配索方法が異なる点にある。
すなわち、
図8に示す第2巻装工程では、所定のスロット11,11間に形成される−U相小コイル172U、−V相小コイル172V、−W相小コイル172W、−X相小コイル172X、及び−Y相小コイル172Yが紙面の左側に存在する相の小コイルから順に形成されているのに対し、接続線25を形成する際の巻線12の配索方向が紙面の右側から左側に向かう方向になっている。
【0082】
より具体的には、
図8に示す第2巻装工程では、紙面の左側に存在する−Y相小コイル172Yを形成し、続いて、−X相小コイル172X、−W相小コイル172W、−V相小コイル172V、及び−U相小コイル172Uをこの順に形成している。すなわち、
図8において、アーマチュアコア6への巻線12の巻装方向は、紙面の左側から右側に向かっているのに対し、接続線25を形成する際の巻線12の配索方向は、紙面の右側から左側に向かう方向になっている。
【0083】
これに対し、
図11に示すように、第2巻装工程の変形例においては、接続線25を形成する際の巻線12の配索方向が、アーマチュアコア6への巻線12の巻装方向と同様に、紙面の左側から右側に向かう方向になっている。
このように、アーマチュアコア6への巻線12の巻装方向と、接続線25を形成する際の巻線12の配索方向とを同じ方向に設定することにより、各セグメント14のライザ15に巻線12がα巻きにより掛け回される。このため、セグメント14に対する巻線12の接続状態を良好なものにすることができる。
【0084】
(アーマチュアコアの変形例)
また、上述の実施形態で示したアーマチュアコア6は、各ティース9の形状が全て同一形状であるが、以下の
図12に示すような所謂異形コアであってもよい。
図12は、アーマチュアコア6の変形例である異形アーマチュアコア91の平面図である。
同図に示すように、異形アーマチュアコア91のティース92は、一対の異形ティース93a,93bからなるティース組み94(
図12における2点鎖線部参照)が周方向に5組並べてなる。一対の異形ティース93a,93bは、それぞれ径方向外側に向かって延び、巻線12が巻装される巻胴部95a,95bと、各巻胴部95a,95bの先端から周方向に沿って延びる外周部96a,96bとにより構成されている。
【0085】
各異形ティース93a,93bの外周部96a,96bは、それぞれ周方向に等間隔となるように配置されている。一方、各異形ティース93a,93bの巻胴部95a,95bは、互いに径方向外側に向かうに従って徐々に離間するように形成されている。
これにより、一対の異形ティース93a,93b間には、径方向外側に向かうに従って徐々に開口部が広くなる様に、末広がりスロット97aが形成される。一方、隣接するティース組み94,94間には、径方向全体に亘って開口部がほぼ同一幅になっている直スロット97bが形成される。ここで、直スロット97bを形成する異形ティース93a,93bは、これらの巻胴部95a,95bが略平行に延びた状態になっている。
【0086】
ここで、異形アーマチュアコア91に巻線12を巻装するにあたって、ティース92に番号を付けるが、このとき、5組みのティース組み94のうちの1つに1番、2番の番号を付け、その他の4組みのティース組み94に、それぞれ2番〜10番までの番号を周回り方向に付けるようになっている。このため、1番−2番異形ティース93a,93b間、3番−4番異形ティース93a,93b間、5番−6番異形ティース93a,93b間、7番−8番異形ティース93a,93b間、及び9番−10番異形ティース93a,93b間には、末広がりスロット97aが形成される。一方、2番−3番異形ティース93b,93a間、4番−5番異形ティース93b,93a間、6番−7番異形ティース93b,93a間、8番−9番異形ティース93b,93a間、及び10番−1番異形ティース93b,93a間には、直スロット97bが形成される。
【0087】
続いて、
図13に基づいて、上述のように形成された異形アーマチュアコア91に、前述の第4実施形態における巻線12の巻線方法を採用した場合について説明する。
図13は、異形アーマチュアコア91への巻線12の巻装状態を示す説明図であって、(a)は、第4実施形態における第1巻装工程が終了した状態を示し、(b)は、第4実施形態における第2巻装工程が終了した状態を示す。
【0088】
図13(a)に示すように、第1巻装工程におけるU相小コイル171U、V相小コイル171V、W相小コイル171W、X相小コイル171X、及びY相小コイル171Yは、それぞれ直スロット97b,97b間、つまり、一対の異形ティース93a,93bに跨るように巻線12を巻装することにより、形成される。一対の異形ティース93a,93bの巻胴部95a,95bは、互いに径方向外側に向かうに従って徐々に離間するように形成されているので、各異形ティース93a,93bの根元に巻線12が寄り易い。換言すれば、各異形ティース93a,93bの根元に巻線12を巻装することができる。このため、各相小コイル171U〜171Yの径方向外側に第2巻装工程における巻線12の巻装スペースを十分確保することができる。
【0089】
このような状態で、
図13(b)に示すように、第2巻装工程における−U相小コイル172U、−V相小コイル172V、−W相小コイル172W、−X相小コイル172X、及び−Y相小コイル172Yを、それぞれ末広がりスロット97a,97a間に巻装する。ここで、末広がりスロット97a,97a間に存在する異形ティース93a,93b、つまり、直スロット97bを形成する異形ティース93a,93bは、これらの巻胴部95a,95bが略平行に延びた状態になっている。このため、各相小コイル172U〜172Yを形成する際、これら相小コイル172U〜172Yが径方向内側に寄っていくことがない。
【0090】
したがって、この異形アーマチュアコア91を採用することにより、前述の第4実施形態において、第1巻装工程における各相小コイル171U〜171Yと、第2巻装工程における各相小コイル172U〜172Yが重なってしまうことを抑制できる。このため、異形アーマチュアコア91の軸方向端部における巻線12の高さを低く抑えることができ、線材コストの低減、巻線12の銅損の低減、及び異形アーマチュアコア91の軸長を低減させることが可能になる。さらに、巻線12の重なりが抑えられる分、異形アーマチュアコア91に巻線12が直接接触する量が多くなり、巻線12の放熱性、つまり、巻線12の熱引きを向上させることができる。
【0091】
(セグメントとブラシの寸法関係)
次に、セグメント14とブラシ21の寸法関係について、
図14〜
図18に基づいて説明する。
ここで、従来においては、セグメント14とブラシ21との接触状態が3つの状態に変化する。すなわち、2つのブラシ21が、それぞれ1つずつセグメント14に接触している状態(以下、跨ぎ無し状態という)、2つのブラシ21のうち、1つのブラシ21が2つのセグメント14に跨るように接触している状態(以下、1ブラシ短絡状態という)、2つのブラシ21が、それぞれ2つのセグメント14に跨るように接触している状態(以下、2ブラシ短絡状態という)の3つに、セグメント14とブラシ21との接触状態が変化する。以下、各状態についてより具体的に説明する。
【0092】
図14は、従来のセグメント114とブラシ121とが跨ぎ無し状態で接触している場合を示し、(a)は巻線12の通電状態を示す説明図、(b)はセグメント114とブラシ121の簡略図である。
図14(a)、
図14(b)に示すように、跨ぎ無し状態にあっては、隣接するセグメント114,114間が全て短絡されないので、全ての巻線12に電流が供給される。
【0093】
図15は、従来のセグメント114とブラシ121とが1ブラシ短絡状態で接触している場合を示し、(a)は巻線12の通電状態を示す説明図、(b)はセグメント114とブラシ121の簡略図である。
図15(a)、
図15(b)に示すように、1ブラシ短絡状態にあっては、2つのブラシ121のうち、1つのブラシ121より、隣接するセグメント114,114間が短絡される1箇所がある。このため、その短絡されたセグメント114,114に接続されている巻線12に電流が供給されない。
【0094】
図16は、従来のセグメント114とブラシ121とが1ブラシ短絡状態で接触している場合を示し、(a)は巻線12の通電状態を示す説明図、(b)はセグメント114とブラシ121の簡略図である。
図16(a)、
図16(b)に示すように、2ブラシ短絡状態にあっては、2つのブラシ121により、隣接するセグメント114,114間が短絡される2箇所がある。このため、各短絡されたセグメント114,114に接続されている巻線12に電流が供給されない。
【0095】
図17は、縦軸を拘束電流[A]とし、横軸を時間[s]としたときの、従来のブラシ121から従来のセグメント114に供給される拘束電流の変化を示す。
同図に示すように、セグメント114とブラシ121との接触状態が3つの状態に変化することにより、電流が供給される巻線12の量が大きく変化するので、ブラシ121からセグメント114に供給される拘束電流の差が大きくなる。このため、モータ特性のばらつきが大きくなってしまう。
そこで、本実施形態においては、セグメント14とブラシ21の寸法を以下の関係を満たすように設定した。
【0096】
図18は、セグメント14とブラシ21との寸法関係を示す説明図である。
同図に示すように、セグメント14の周方向の幅をW1とし、隣接するセグメント14,14間のスリット幅をW2とし、ブラシ21の周方向の幅をW3としたとき、各幅W1,W2,W3は、
W1/2+W2−W3/2≧W3/2−W2/2・・・(3)
を満たすように設定されている。尚、W1/2+W2−W3/2は、
図18におけるXの寸法であり、W3/2−W2/2は、
図18におけるYの寸法である。
【0097】
各幅W1,W2,W3が式(3)を満たすことにより、セグメント14とブラシ21とが2ブラシ短絡状態で接触することが防止される。このため、2ブラシ短絡状態が防止できる分、ブラシ121からセグメント114に供給される拘束電流の差が小さくなり、モータ特性のばらつきを抑えることが可能になる。
【0098】
尚、2ブラシ短絡状態を防止するために、セグメント14の周方向の幅W1、スリット幅W2、及びブラシ21の周方向の幅W3を規定した場合について説明したが、以下の
図19に示すように、セグメント14、及びブラシ21の寸法を規定してもよい。
【0099】
図19は、セグメント14とブラシ21との寸法関係を示す説明図である。
すなわち、同図に示すように、セグメント14の周方向の角度をθ1とし、隣接するセグメント14,14間のスリットの角度をθ2とし、ブラシ21のセグメント14に接触している箇所の最大角度をθ3としたとき、角度θ1,θ2、及び最大角度θ3を、
θ1/2+θ2−θ3/2≧θ3/2−θ2/2・・・(4)
を満たすように設定してもよい。
このように設定しても、セグメント14とブラシ21とが2ブラシ短絡状態で接触することを防止でき、モータ特性のばらつきを抑えることが可能になる。