(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(iii)における仕上げ処理は、1より多い段階で行われ、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンが第1段階(iii.a)において蒸留によって生成物流2から除去され、ここで、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンにおいて減少した生成物流4が得られ、少なくとも1つの更なる段階(iii.b)において純粋なイソシアネート5が蒸留によって生成物流4から得られる、請求項1に記載の方法。
工程(iii.a)が脱ホスゲン化カラムにおいて行われ、工程(iii.b)が最終精製用カラムにおいて行われ、ここで、工程(i)において生成したイソシアネートの、工程(ii)における粗生成物1の分離後、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンにおいて減少した生成物流4の工程(iii.a)における脱ホスゲン化カラムから流出までの滞留時間が、30秒〜60分である、請求項2に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは多量に製造され、ポリウレタンを製造するための開始物質として主に役立つ。これは、大部分は、対応するアミンをホスゲンと反応させることによって製造され、ここではイソシアネートに加えて、塩化水素も生成される。
【0003】
イソシアネート製造の一般的な方法は、液相における対応するアミンとホスゲンとの反応である。液相ホスゲン化(LPP)とも言われるこの方法手順は、この反応が通常不活性溶媒中で行われること、および溶媒の他に、少なくともアミン、イソシアネートおよびホスゲン反応成分が、少なくとも部分的に、好ましくは主に、選択条件下において液相に存在するように、反応条件が選択されることを特徴とする。反応において副生成物として生成される塩化水素の一部は、液相中に溶解して存在し、一部は、気体状態で反応器から出る。液相ホスゲン化は、様々な温度および圧力レベルにおいて行うことができる。例えば、0℃〜240℃の温度および1bar〜70barの圧力において液相ホスゲン化を行うことができる;一部の場合において、300℃以下の温度および300bar以下の圧力が記載されている。
【0004】
液相法において、アミンおよびホスゲンの効果的な混合が重合である。この目的のために、従来技術において静的(好ましくはノズル)および動的(機械的動作部分を含む)混合装置が用いられている。混合反応器は、EP 0 291 819 AおよびEP 0 291 820 AおよびEP 0 830 894 Aから既知であり、これは回転対称筐体から実質的になり、ここで筐体は、少なくとも2つの供給流用の別個の入口および1つの出口を有する実質的に回転対称混合チャンバーを有する。少なくとも1つの第1物質流用の入口は、混合チャンバーの軸に備えられ、少なくとも1つの第2物質流用の入口は、混合チャンバー軸に関して回転対称に配置された多数のノズルの状態で構成される。
【0005】
混合を改善するため、混合反応器は、少なくとも1つの回転子ディスク-固定子ディスクユニットおよび狭い滞留時間範囲に有利となる混合反応器における輸送動作を改善するインペラも含む。上記の混合反応器においてインペラを省くこともできる。混合チャンバー中の圧力は、それにより、EP 0 291 819 A、EP 0 291 820 AおよびEP 0 830 894 Aの技術的教示と比べて増加する。前駆体および/または生成物流を輸送するために、反応物流の初期圧力が専ら用いられる。ポンプの効果はもはや適用されない。輸送作用が反応物流または前駆体流の主な輸送方向に対して働くように、修飾誘導因子を備え付けることもできる。また、これにより混合チャンバー中の圧力が増加される。修飾誘導因子は、好ましくは回転子ディスクと同じシャフトに配置される。したがって、両手段により、EP 0 291 819 A、EP 0 291 820 AおよびEP 0 830 894 Aの技術的教示と比べて、混合チャンバー中の圧力が増加される。
【0006】
液相ホスゲン化のための全ての種々の方法に共通するのは、過剰のホスゲンおよび生成した塩化水素を、反応完了時に溶媒中に溶解した粗イソシアネートから除去することである。上記除去は、一般に、大部分は過剰のホスゲンおよび塩化水素を含む気体流および、とりわけ、溶媒および所望のイソシアネートを含む液体が、反応が生じる反応器から出るように行われる。さらに、液相ホスゲン化のための全ての種々の方法に共通するのは、気体流が塩化水素および過剰のホスゲンに分離され、後者は一般に反応に再度戻されることである。所望のイソシアネートおよび溶媒を含む液体流は、一般に蒸留精製される。反応器を出る液体流は、優勢な圧力および温度条件によって、溶解ホスゲンおよび塩化水素をまだ含む。これらは、反応器においてその生成が完全には回避することができない反応2次成分と共に、蒸留において除去される。所望のイソシアネートが、蒸留によって高純度で得られる。
【0007】
反応手順および仕上げ処理および生成物回収の種々の例の要約が、出願書類DE-A-102 60 027、DE-A-102 60 093、DE A 103 10 888、DE-A-10 2006 022 448、US-A 2007/0299279およびそこに引用される情報源に与えられる。
【0008】
イソシアネート製造の別の可能性は、気相における対応するアミンとホスゲンとの反応である。一般に気相ホスゲン化(GPP)と言われるこの方法手順は、反応条件が、少なくともアミン、イソシアネートおよびホスゲン反応成分、好ましくは全ての反応物、生成物および反応中間体が選択条件下において気体状であるように、選択されることを特徴とする。
【0009】
気相においてジ-および/またはポリアミンをホスゲンと反応させることによるジ-および/またはポリイソシアネートの種々の製造方法は、従来技術から既知である。
【0010】
GB-A-1 165 831には、気相におけるイソシアネートの製造方法が記載され、ここでは、蒸気相におけるアミンとホスゲンとの反応が、機械式攪拌機を備え、加熱ジャケットを通して温度制御可能な管式反応器において150℃〜300℃の間の温度で行われる。GB-A-1 165 831に開示される反応器は、反応チャンバーに入る気体および反応チャンバー中に存在する気体を混合し、同時に管壁上においてポリマー物質の集積を防ぐために加熱ジャケットを有する管式反応器の周囲の壁を覆う攪拌機を有する薄膜蒸発器に類似するが、これは、かかる集積が熱移動を妨げるためである。この文献は、開示された反応器によって得られる粗イソシアネートをいかにして純粋なイソシアネートに精製するか、および収率損失はどのように削減し得るかについて開示していない。
【0011】
EP-A-0 289 840には、気相ホスゲン化によるジイソシアネートの製造が記載され、ここではこの文献に、200℃〜600℃の間の温度および10
-4秒の桁のオーダーの反応時間で乱流において可動部材を有しないシリンダー形のチャンバー中でのアミンとホスゲンとの反応が開示されている。EP-A-0 289 840の教示によれば、気体流は、ノズルおよびノズルと混合管との間の環状間隙を通して管式反応器の一方の末端において反応器に導入され、それにより混合される。EP-A-0 289 840の教示によれば、管式反応器の寸法および反応チャンバーにおける流速が、乱流が少なくとも2500、好ましくは少なくとも4700のレイノルド数によって特徴付けられる反応チャンバーにおいて広がるように調節されることが、そこに開示される方法の実行可能性のために必須である。EP-A-0 289 840の教示によれば、この乱流は一般に、気体状の反応相手が90m/sより高い流速で反応チャンバー中に流れる際に確かにされる。反応チャンバーを出るこの気体混合物は、ジアミンに対応する塩化カルバモイルの分解温度より高い温度で維持される不活性溶媒中に通され、ここで、ジイソシアネートは不活性溶媒に溶解する。この文献には、そうして得られた粗ジイソシアネートが、これに対する取扱説明を与えることなく、蒸留によって仕上げ処理され得ることが記載されている。この文献には、収率損失および粗イソシアネート流における副生成物の生成をいかに避けることができるかに関してガイドラインが与えられていない。
【0012】
EP-B-0 593 334には、管式反応器が用いられた気相における芳香族ジイソシアネートの製造方法が開示されている。この反応物の混合は、壁の狭小化によって達成される。この反応は、250℃〜500℃の温度範囲において生じる。反応器出口において、反応生成物は、溶媒の供給によって液相に変換される。この文献には、そうして得られた粗イソシアネートを蒸留によって仕上げ処理し得ることは記載されているが、このための取扱説明は与えられていない。この文献には、粗イソシアネートの仕上げ処理中に収率損失を回避または減少させ得る方法が全く開示されていない。
【0013】
EP-A-0 570 799は、芳香族ジイソシアネートの製造方法であって、関連するジアミンとホスゲンとの反応が管式反応器においてそのジアミンの沸点以上で0.5〜5秒の反応物の平均接触時間内に行われることを特徴とする方法に関する。この文献において記載されるように、長すぎるまたは短すぎる反応時間の両方が、望ましくない固体生成をもたらす。したがって、平均接触時間からの平均偏差が6%未満である方法が開示されている。この方法において、とりわけ粗イソシアネートを含む液相ならびにホスゲンおよび塩化水素を含む気相が、反応器の出口において溶媒を用いることによって得られることも開示されている。この文献には、粗イソシアネートの精製に対する取扱説明が与えられていない。
【0014】
開示された接触時間分布の遵守は、反応が4000より高いレイノルド数または100より高いボーデンシュタイン数のいずれかによって特徴付けられる流管において行われるという事実によってまず達成される。EP-A-0 570 799の教示によれば、それによって約90%以下の栓流が達成される;さらに、その流の全容積部は、反応相手間の接触時間分布における可能な限り低い偏差が全容積部のおおよそ不均一な滞留時間のために生じるように、同じフロー時間を実質的に有する。
【0015】
しかし、EP-A-0 570 799の教示によれば、この方法の実用性能における平均接触時間での偏差はまた、反応相手の混合に必要な時間によって主に決定される。EP-A-0 570 799には、反応相手が均一に混合されない限り、気体の容積が反応相手との接触ができない反応チャンバーにおいてまだ存在し、そのため反応相手の異なる接触時間が不均一なフロー時間において容積部の混合に応じて得られることが記載されている。EP-A-0 570 799の教示によれば、反応相手の混合は、0.1秒〜0.3秒の期間内に10
-3の分離度以下で起こるべきであり、ここで分離度は、混合の不完全性の評価基準として機能する(例えば、Chem. Ing. Techn. 44 (1972年)、第1051頁〜;Appl. Sci. Res.(the Hague)A3(1953年)、第279頁参照)。EP-A-0 570 799には、適切に短い混合時間を得るために、可動または静的混合装置、好ましくは静的混合装置を有する混合部に基づく既知の方法が原理上用いられうることが開示され、一方で、特にEP-A-0 570 799の教示によれば、ジェット混合原理の使用が十分に短い混合時間を可能とする。
【0016】
したがって、とりわけ、生成物気体流を液化し場合により反応を停止するために用いられる溶媒に加えて、粗ジイソシアネートを含む液体流、ならびに過剰のホスゲンおよび塩化水素を主に含む気体流は、気相ホスゲン化において反応の完了時にも得られる。気体流は、一般に塩化水素およびホスゲンに分離され、ホスゲンの少なくとも一部は反応に再利用される。とりわけ反応器を出る所望のイソシアネートを含む液体流は一般に蒸留精製され、純粋なイソシアネートが得られる。
【0017】
したがって、液相ホスゲン化と気相ホスゲン化との間の方法にける必須の違いは、反応器における反応条件である。イソシアネートの製造方法の両方の例に共通するのは、反応の完了時において、まず所望のイソシアネート、不活性溶媒、2次成分、塩化水素及び未反応ホスゲンを含む粗生成物が得られ、これは気体および液体生成物流に分けられ、ここで液体生成物流は。とりわけ溶媒および粗イソシアネートを含み、この液体流は一般に蒸留によって仕上げ処理が行われることである。
【0018】
液相および気相ホスゲン化の両方での反応における顕著な改善にもかかわらず、改善された混合技術および改善された反応手順の両方によって、その反応における高沸点および低沸点反応2次成分の生成が完全に避けられる。本発明に関して、その沸点が圧力および温度の優勢な条件という状況で所望のイソシアネートの沸点より低い全ての物質または共沸物質混合物は、「低沸点物」と言われる。その沸点が圧力および温度の優勢な条件という状況で所望のイソシアネートの沸点より高い全ての物質または共沸物質混合物は、「高沸点物」と言われる。したがって、本発明に関して、「低沸点物」は、副生成塩化水素および未反応ホスゲンに当たる。本発明に関して、反応2次成分(すなわち、望ましくない副反応の生成物)は、それが上述した「低沸点物」の定義を満たせば「低沸点物」と言われ、それが上述した「高沸点物」の定義を満たせば「高沸点物」と言われる。溶媒−反応において既に用いられるか、後半まで添加されない−は通常、低沸点物質の群に分類される(しかし、それは、反応2次成分ではないため、上記の意味では「低沸点物」と考えられない)。しかし、高沸点物質の群に割り当てられる溶媒を用いてもよい(しかし、それは、反応2次成分ではないため、上記の意味では「高沸点物」と考えられない)。
【0019】
両方法において反応器中で起きる副反応に加えて、反応器を出る粗イソシアネートを含む液体生成物流において生じ得る副反応も観察される。反応器を出るこの流は、粗イソシアネート、溶媒、低沸点物および高沸点物に加えて、それぞれ、塩化水素および過剰のホスゲンも含む。特に、ホスゲンは、分離まで液体生成物流の他の成分とさらに反応し得る高反応性分子である。
【0020】
基本的な問題は、比較的長い滞留時間が純粋なイソシアネートを得るための仕上げ処理の過程で生じ、これが、価値のあるイソシアネート材料からの高沸点物生成を促進することである。さらに、反応中に既に生成した高沸点2次成分が仕上げ処理に移り、それによって価値のあるイソシアネート材料からの更なる高沸点物生成が促進される。これら2次成分は、イソシアネートと反応する性質を有し、そのためホスゲン化反応器において得られるようなイソシアネート/2次成分混合物におけるイソシアネートの割合を低下させなければならない。こにより、高沸点2次成分において豊富な残余物の生成がもたらされる。この困難な操作性およびかかる残余物の一般的な組成は、例えばDE-A-102 60 093において引用される。
【0021】
例えば、WO 2004/056759 A1において、イソシアネート/高沸点物混合物(流1)からのイソシアネートの2段階分離が記載されている。流2(底部)および3(蒸留物)は、20:l〜1:1の重量比で分布する。言い換えれば、最大50%の流1が底部から出される。その溶液は濃縮され、ニーダー乾燥機に圧送され、そこでさらに濃縮される。
【0022】
WO 2009/027418 A1によれば、適当な装置コンセプトを用いた溶媒および低沸点物の除去のための実際の一連の蒸留前または蒸留中に、粗イソシアネート混合物中に既に存在する高沸点成分、ウレアおよびホスゲン化によって生成したその転化生成物またはイソシアネートの2次反応によって生成した種、例えばカルボジイミド、イソシアヌレート、ウレトジオンを分離する場合、上記の収率損失を下げることができる。イソシアネートを含む高沸点成分の一部を、適当な予濃縮によってイソシアネートに分解し戻すことができ、それによって、蒸留カラムの底部流出物を通した収率損失を下げることができることも見出された。さらに、それにより、モノマーイソシアネートが仕上げ処理中に高沸点成分に付随し、それにより収率が低下することが避けられる。残る底部生成物は、ポリマー状で主に存在するカルボジイミドおよび多核塩化2次成分を主構成成分として含む。
【0023】
上記の種々の特許出願のまとめから、そこに記載された方法例は、ホスゲン化反応における適当な装置または方法操作および反応物の供給/提供に関するか、または低沸点物、溶媒および/または高沸点物の分離を含む反応混合物の仕上げ処理における方法操作の例に関することが明らかである。上記の全手段は、安定な方法操作を確実にする、または収率を低下させる2次成分の生成を削減するように機能するはずである。
【0024】
アミンとホスゲンとの反応を最適化するために行われた多くの努力にも関わらず、2次成分の削減に関してこのホスゲン化反応を改善する要求が依然として存在する。これに関して、反応と低沸点物質および溶媒の除去との間の反応部分には今までほとんど着目されていなかった。驚くべきことに、特にその方法の安全性、製品品質および費用有効性の観点から、この方法部分が方法操作に明白な影響を有することが、今回見出された。
【0025】
本発明によるアミンのホスゲン化方法の改善は、生じる副反応の一部の間での相関関係の理解を必要とし、それゆえ以下でより詳細に説明される。
【0026】
例えば、2つの反応経路が、カルボジイミドの生成のために重要である。まず、イソシアネートの熱分解が説明され得、ここでは2つのイソシアネート基が、CO
2を放出しながら互いに反応する。この反応は、イソシアネートが高温で存在する方法の全段階で生じ得る。
【0027】
次に、H. J. Twitchett(Chemical Society Reviews(1974年)、3(2)、第209-230頁)によれば、ホスゲン化において2次成分として生成したウレアのホスゲン化は、対応するイソシアネートだけでなくカルボジイミドももたらす;さらに、種々の塩素含有構成成分の生成もあり得、例えばクロロホルムアミジン、クロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリドおよび/またはイソシアニドジクロリドであり、これらは反応経路の間に中間体として生じる。液相および気相ホスゲン化の両方における反応手順を改善することによって、ウレアの生成は一般にあまり重要でないため、カルボジイミド経路のこの生成は、小さい役割しか果たさない。それにも関わらず、ホスゲンの存在下におけるウレアの生成および生じるカルボジイミドの生成は完全に排除できない。
【0028】
クロロホルムアミジンは、塩化水素の(可逆的)付加によってカルボジイミドから生成もされ得、例えば、これはホスゲン化の反応混合物中に存在し(例えば:A.A.R. Sayigh、J. N. Tilley、H. Ulrich、Journal of Organic Chemistry(1964)、29(11)、3344-3347参照)、次に熱的にさらに反応して、例えば3置換グアニジンヒドロクロリドを与える。同様に、クロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリドは、ホスゲンの(可逆的)付加によってカルボジイミドから生成され、例えば、これはホスゲン化の反応混合物中に存在し(例えば:H. J. Twitchett、Chemical Society Reviews(1974)、3(2)、209-230参照)、熱的に再度カルボジイミドおよびホスゲンに開裂し得る。
【0029】
提示された反応、つまりウレアのホスゲン化による熱的カルボジイミド生成およびカルボジイミド生成ならびに副生成物を与えるカルボジイミドと塩化水素および/またはホスゲンとの次の反応が、反応器および反応器を出る粗イソシアネートを含む液体生成物流の両方において生じ得るが、これは、この流において特定量の塩化水素およびホスゲンが、反応器の出口における優勢な圧力および温度条件に従って常に溶解するためである。塩化水素およびホスゲンとの次の反応は、それらが粗イソシアネートを含む液体生成物流から大部分が除去されていないのであれば、仕上げ処理および蒸留工程のおいても可能である。
【0030】
大過剰のホスゲン、良好な混合技術および従来技術から考察した手段にも関わらず、反応器におけるウレア構造を有する副生成物の生成を完全に排除することができない。ウレアのあり得る次の反応はカルボジイミド生成をもたらすため、反応器を出る粗イソシアネートを含む液体生成物流は、常にカルボジイミドも一部含む。したがって、これらのカルボジイミドと過剰のホスゲンの反応は常に、クロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリド構成成分を有する2次成分の特定の割合をもたらす。この反応は、ホスゲンが依然として液相に溶解して存在する限り、溶解ホスゲンの存在下における液相において特に、必然的に進行する。
【0031】
従来技術による文献に記載されるような収率損失を最小化するのに役立つのは、高沸点物の初期の除去だけではない。また粗イソシアネートを含む液体生成物流中に存在する低沸点物質、例えば低沸点物および特に副生成物塩化水素および未反応ホスゲンは、収率の低下をもたらし得る。
【0032】
上述したカルボジイミドおよび塩素含有種を含む2次成分の生成により、収率損失およびそれ故に経済的不利がもたらされる。塩素含有種がプロセス生成物に入ると、これにより、生成物において望ましくない高い塩素レベルがさらにもたらされる。また、ホスゲンを有する副生成物が、この方法の実際にホスゲン不含有の相に入り熱負荷下において再度ホスゲンを取り除き得るクロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリド構成成分を有し、それによりホスゲンがこの方法の実際にホスゲン不含有の相に入り得る。
【発明を実施するための形態】
【0037】
好ましい第1級アミンは、
脂肪族アミン(好ましくは1,6-ジアミノヘキサン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミンおよびヘキシルアミン、特に好ましくは1,6-ジアミノヘキサン)、
脂環族アミン(好ましくはシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2'-ジアミノジシクロヘキシルメタンおよびジアミノジシクロヘキシルメタン異性体の混合物、特に好ましくはイソホロンジアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,2'-ジアミノジシクロヘキシルメタンおよびジアミノジシクロヘキシルメタン異性体の混合物)、
芳香脂肪族アミン(好ましくはベンジルアミン)、
および
芳香族アミン(好ましくはアニリン、クロロアニリン、トルイレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン異性体の混合物およびジアミノジフェニルメタン異性体の混合物およびその高級同族体[また一般に、例えばMDA、PMDA、ポリマーMDAまたはジフェニルメタン種のジ-およびポリアミン、すなわちジ-およびポリアミンの混合物と言われ、これは、アニリンおよびホルムアルデヒドの酸触媒縮合から得られる]、特に好ましくはトルイレンジアミン)
からなる群から選択されるものである。
【0038】
本発明による方法において用いられる第1級アミンは、特に好ましくはトルイレンジアミン(TDA)である。TDAは一般に、トルエンをニトロ化してジニトロトルエン(DNT)を与え、次にその水素化によって得られる。メタ-TDA異性体(m-TDA;すなわち、2つのアミノ基が互いに対してメタ位である)を大部分に含み、78重量%〜82重量%の2,4-TDAおよび18重量%〜22重量%の2,6-TDAを含み、1重量%未満のパラ-TDA異性体(2,5-TDA)を含み得る異性体混合物が、好ましく用いられる。しかし、芳香族ジアミンとホスゲンとを反応させる本発明による方法において、そこから外れる異性体比率を有するm-TDAの異性体混合物の使用および技術的に純粋な2,4-または2,6-TDA異性体の別個の使用も可能である。TDAは潜在的に少量の不純物も含み得る。
【0039】
化学量論上過剰での反応は、反応平衡の根本的な化学量論に基づいて、計算量よりも多いホスゲンが用いられることを意味すると理解される。モル過剰のホスゲンは、存在する第1級アミノ基に基づいて、好ましくは理論の1.0%〜1000%の間、特に好ましくは10%〜500%の間、とりわけ好ましくは50%〜350%の間のである。
【0040】
反応チャンバーは、ここでは、第1級アミン(または例えばウレア等の中間体)とホスゲンとの所望のイソシアネートまたは所望のイソシアネートの混合物および対応する塩化カルバモイルへの反応のための条件が提供される(塩化水素の存在下において、イソシアネートおよび塩化カルバモイルは基本的に互いに平衡状態である)スペースを意味すると理解される。したがって、反応チャンバーは、アミンおよびホスゲンが、反応が可能となる条件下で初めに互いに接触する点で開示する。
【0041】
反応チャンバーは、液相反応の場合、反応が適当な手段の導入(例えば、温度の低下)によって停止される点で停止する。反応チャンバーは、通常、用いられる装置の内部の空間次元(spatial dimension)によって規定される。
【0042】
反応チャンバーは、気相反応の場合、生成物、2次成分、あらゆる未反応反応物および中間体および必要に応じて添加される不活性物質を含んでなる気体流を、生成したイソシアネートの液化用の装置に供給する点または反応を他の適当な手段の導入(例えば、温度の低下)によって停止する点のいずれかで停止する。
【0043】
反応チャンバーは、両方法手順において、化学反応を行うための技術的装置、すなわち反応器において位置される。平衡または直列に接続される複数の反応器を用いてもよい。最も単純な場合、反応チャンバーは、反応器または反応器の内部容積と同一である。反応器が複数の反応チャンバーを含むこともあり得る。
【0044】
液相における反応は、アミンが液相においてイソシアネートに反応し、反応の過程で、存在する成分の全て(反応物、生成物、中間体、場合により2次成分、場合により不活性物質)が、反応チャンバーを通る間に、それぞれの場合において反応チャンバー中に存在する全成分の全重量を基準として、少なくとも40.0重量%、好ましくは少なくとも55.0重量%、特に好ましくは65.0重量%、とりわけ好ましくは少なくとも80.0重量%まで液相において残ることを意味すると理解される。存在するのであれば、気相は、大部分はHClおよびホスゲンを含んでなる。
【0045】
気相における反応は、アミンが気体状態において、イソシアネートに反応し、反応の過程において、存在する成分全て(反応物、生成物、中間体、場合により2次成分、場合により不活性物質)が、反応チャンバーを通る間に、それぞれの場合において反応チャンバー中に存在する全成分の全重量を基準として、少なくとも95.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、特に好ましくは少なくとも99.0重量%、とりわけ好ましくは少なくとも99.9重量%まで気相において残ることを意味すると理解される。
【0046】
不活性溶媒−気相および液相反応に適用可能−は、温度および圧力の優勢な条件下において存在する成分(反応物、生成物、中間体、2次成分および/または副生成物)と、顕著な程度まで、好ましくは全く反応しないものである(詳細は以下を参照)。不活性溶媒は、好ましくは塩化芳香族炭化水素(好ましくはクロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびトリクロロベンゼン)、芳香族炭化水素(好ましくはトルエン、キシレンおよびベンゼン)、エーテル(好ましくはジフェニルエーテル)、スルホキシド(好ましくはジメチルスルホキシド)およびスルホン(好ましくはスルホラン)からなる群から少なくとも1つの溶媒から選択される。特に好ましくは、ここでは塩化芳香族炭化水素が挙げられる。非常に特に好ましくは、オルト-、メタ-またはパラ-ジクロロベンゼンおよびジクロロベンゼンの異性体混合物が挙げられる。極めて好ましくは、オルト-ジクロロベンゼンが挙げられる。
【0047】
驚くべきことに、本発明による方法は、収率損失および/または品質問題および/またはこの方法の実際にホスゲン不含有の相においてホスゲン発生をもたらし得る副生成物を生成する低い傾向によって特徴付けられる。
【0048】
本発明による方法において、塩素含有種の割合は、低沸点物、塩化水素およびホスゲンの可能な限りの除去の後に得られる生成物流において少なくとも著しく低下される。これは、ホスゲンキャリアとしてこの方法の実際にホスゲン不含有の相に入り、熱負荷下において再度ホスゲンを取り除き得る、上述したクロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリド構成成分を有する副生成物にも適用される。クロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリド構成成分を有する副生成物の生成が本発明による方法において可能な限り減少されるため、これは、この方法の実際にホスゲン不含有の相にホスゲンが入るのを回避する。
【0049】
本発明の実施態様は以下で詳細に記載され、ここでは、その文脈から反対のことを明確に示されない限り、個々の実施態様を互いに自由に組み合わせてよい。さらに、液相および気相法を以下に記載する。2つの方法例のいずれが好ましいかどうかは、特に用いられるアミンに依る。非常に高い沸点を有するアミン(ここでは、蒸発において分解反応が予期される)は、好ましくは液相法によって反応させる。分解が生じず蒸発し得るアミンは、基本的には両方法によって反応させることができる。この後者の場合における液相および気相法の間の選択は、様々な要因に依り、技術的だけでなく、例えば経済的な制限に依る。気相法は、1,6-ジアミノヘキサン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(全ての異性体)、ジアミノジシクロヘキシルメタン異性体の混合物、ベンジルアミン、アニリン、クロロアニリン、トルイレンジアミン(全ての異性体)、1,5-ジアミノナフタレンおよびジアミノジフェニルメタン(全ての異性体)からなる群から選択されるアミンに対して、特に好ましい。
【0050】
次の説明は、主にアミントルイレンジアミンに基づく。当業者にとって、以下に与えられる方法の詳細を、必要であれば他のアミンに対して調整することは容易である。
【0051】
工程(i)におけるトルイレンジアミンとホスゲンとの反応は、液相または気相法のいずれかによって行うことができる。気相法は、トルイレンジアミンの場合に非常に特に好ましい。
【0052】
液相法において、トルイレンジアミンを、場合により上述した不活性溶媒の1つに既に溶解させ、−10℃〜220℃、好ましくは0℃〜200℃、特に好ましくは20℃〜180℃の温度で反応チャンバーに供給する。ホスゲンを、溶媒なしに、または上述した不活性溶媒の1つに溶解させて、−40℃〜200℃、好ましくは−30℃〜170℃、特に好ましくは−20℃〜150℃の温度で反応チャンバーに供給してよい。TDAおよびホスゲンを、上述した不活性溶媒の1つに場合により既に溶解させて、好ましくは液相法において静的ミキサーまたは動的ミキサーによって混合する。適当な静的ミキサーの例は、とりわけ、例えばDE 17 92 660 A、US 4,289,732またはUS 4,419,295に記載されているノズルまたはノズル配列である。適当な動的ミキサーの例は、とりわけ、遠心力ポンプ(US 3,713,833参照)または特定のミキサー反応器(EP 0 291 819 A、EP 0 291 820 A、EP 0 830 894 A参照)等のポンプ状の装置である。
【0053】
液相法において、反応は、0℃〜250℃、好ましくは20℃〜200℃、特に好ましくは20℃〜180℃の温度において、10秒〜5時間の間、好ましくは30秒〜4時間の間、特に好ましくは60秒〜3時間の間の反応チャンバー中での反応混合物の平均滞留時間で、最大100bar、好ましくは1.0bar〜70bar、特に好ましくは1.0bar〜50barの絶対圧において、反応チャンバー中で行われる。反応チャンバーにおける反応に関して本発明に従って用いることができる方法手順の例は、例えばUS-A 2007/0299279(特に第7頁段落[0070]、[0071]、[0089])およびDE-A 103 10 888(特に第5頁段落[0038]、[0039])およびそこに引用される文献に記載されている。
【0054】
気相法においては、トルイレンジアミンをまず気相に移す。これは、好ましくは従来技術から既知であるようなエバポレーターによって行われる。TDAを、必要に応じてN
2、He、Ar等の不活性気体を用いてまたは上述した不活性溶媒の1つの蒸気を用いて希釈して、200℃〜600℃、好ましくは200℃〜500℃、特に好ましくは250℃〜450℃に加熱し、反応チャンバーに供給する。気相法においては、ホスゲンを、必要に応じてN
2、He、Ar等の不活性気体を用いてまたは上述した不活性溶媒の1つの蒸気を用いて希釈して、気体状態で200℃〜600℃、好ましくは200℃〜500℃、特に好ましくは250℃〜450℃の温度において反応チャンバーに供給する。TDAおよびホスゲンを、好ましくは気相において当業者に既知の静的または動的混合装置を用いて混合する。EP 1 449 826 B1、特に第4頁段落[0024]、[0025]、[0026]および第5頁段落[0027]、またはEP 2 199 277 B1第4頁段落[0017]、[0018]および第5頁段落[0019]に記載されているようなノズルの使用が好ましい。
【0055】
反応チャンバーにおける反応は、気相法において、200℃〜700℃、好ましくは200℃〜650℃、特に好ましくは250℃〜600℃の温度において、0.01秒〜120秒の間、好ましくは0.01秒〜30秒の間、特に好ましくは0.05秒〜15秒の間の反応チャンバー中の反応混合物の平均滞留時間で、最大5bar、好ましくは0.5bar〜3.0bar、特に好ましくは1.0bar〜2.0barの絶対圧で行われる。反応チャンバーを出た後、高温の気体状反応混合物を、100℃〜200℃、好ましくは150℃〜180℃の温度で、上述した不活性溶媒の1つを噴出またはこれに通すことによって冷却し、イソシアネートを液化する。本発明によって用いることができる方法手順の例は、とりわけEP 1 449 826 A1(特に第3頁段落[0012]、[0017]、[0018]、第4頁段落[0022]およびEP 2 199 277 A1(特に第8頁段落[0054]、[0055]、[0056]、[0057])に記載されている。
【0056】
工程(ii)において、所望のイソシアネート、不活性溶媒、低沸点物、高沸点物、塩化水素および未反応ホスゲンを含む(i)で得られた粗生成物1を、液体生成物流2、および大部分は塩化水素および過剰のホスゲンを含む気体生成物流3に分離する。これは、好ましくは気相および液相を分離するのに適当な当業者に既知の装置および容器において行われる。好ましくは、静的分離補助具を備えた、または備えない、サイクロン分離器、バッフル分離器、重力分離器等の気体および液体分離器を用いることが挙げられる。
【0057】
工程(ii)で得られた液体生成物流2は、イソシアネートおよび用いた不活性溶媒に加えて、ホスゲンおよび塩化水素等の低沸点物質、ならびに高沸点物および低沸点物を含む。液体生成物流2は一般に、それぞれの場合、液体生成物流2の全重量を基準として、10重量%〜100重量%の間のトルイレンジイソシアネート、0重量%〜90重量%の間の不活性溶媒、0重量%〜5.0重量%の間の高沸点物、10重量%〜5.0重量%の間の低沸点物、0重量%〜5.0重量%の間のホスゲン、および0重量%〜5.0重量%の間の溶解塩化水素を含む。
【0058】
工程(ii)の形態に応じて、複数のサブストリーム2a、2b等が得られることもあり、好ましくは2つのサブストリーム2aおよび2bが得られる。これは、粗生成物1をまず気相および液相を分離するための装置に通す場合であり、ここでは、液相2aおよび気相が形成され、気相を次に液滴分離用の装置に通し、ここで液相2bおよび液滴の混入のない気相3が形成される。更なる流2bは、好ましくは0重量%〜5.0重量%のイソシアネート、0重量%〜10重量%のホスゲンおよび0重量%〜100重量%の溶媒を含む。主の流2aの組成は、好ましくは上述した2の組成に対応する。
【0059】
たった1つの液体生成物流2が工程(ii)において得られる場合、これは、工程(iii)において純粋なイソシアネートを与えるように処理される。2以上の液体生成物流2a、2b等が工程(ii)において得られる場合、これらは、純粋なイソシアネートと共に組み合わされ、もしくは共に処理され、またはこれらは部分的に2以上のサブストリームにおいてさらに組み合わされ、もしくは処理され、またはそれぞれのサブストリームはさらに別個に処理され、ここで、少なくとも1つのサブストリームは、純粋なイソシアネートに処理される。ここでは、後にその更なる処理の過程においてサブストリームを組み合わせることもできる。低沸点物、塩化水素およびホスゲンの分離までの期間および工程(iii)における温度に対する本発明の要件は、それぞれの生成物流2a、2b等に同じく適用される。
【0060】
以下の工程(iii)の説明は、ちょうど1つの液体生成物流2を有する実施態様に基づく。しかし、方法の詳細は、当業者に自明である必要に応じた調整をもって、複数のサブストリーム2a、2b等の処理に同様に適用される。
【0061】
工程(ii)において得られた液体生成物流2の温度は、一般に最大250℃、好ましくは最大220℃、特に好ましくは最大200℃である。さらに、2の温度は、通常は少なくとも60℃、好ましくは少なくとも90℃、特に好ましくは少なくとも110℃である。これらの値は同じく液相および気相法に適用される。
【0062】
さらに、大部分はホスゲンおよび塩化水素を含む気体生成物流3が、工程(ii)において得られる。この流の組成は、工程(i)および(ii)における正確な方法パラメーターに依る。3の組成の詳細な情報は、本発明の理解のためには適当ではない。本発明に関して、生成物流3は、従来技術から一般的であるようにさらに処理される。他のことの中では、ホスゲンは、この方法において分離され、再利用される。塩化水素はまた、必要に応じて、それを例えば吸着後に水性塩酸として用いることができるために、または塩素回路(chlorine circuit)を閉めるために、分離され、精製され、ここでは、塩化水素が、例えば電気分解またはディーコン法における酸化によって塩素に再変換される。
【0063】
工程(iii)における液体生成物流2の仕上げ処理は、好ましくは蒸留によって行われる。または、結晶化、抽出またはメンブレイン法等の他の方法をこの仕上げ処理のために用いてもよい。もちろん、仕上げ処理のために種々の方法の組み合わせも可能である。
【0064】
工程(iii)における液体生成物流2の蒸留による好ましい仕上げ処理は、単一の段階において、または特に好ましくは複数の段階において、いずれかで行うことができる。適当な装置は、例えば必要に応じて適当な内容物および/またはランダム充填物、分離トレイおよび/または構造化充填物を付与されるカラムである。好ましくは、隔壁カラムが挙げられる。複数のカラムまたはカラム種の適当な組み合わせも可能である。隔壁カラムを用いると、2以上の分離方法および仕上げ処理のためのタスクを1つの装置において組み合わせることができる。一般に、蒸留による仕上げ処理は、60℃〜250℃、好ましくは100℃〜240℃、特に好ましくは120℃〜230℃の範囲の底部温度で行われる。絶対上部圧は、一般に1.0mbar〜1400mbar、好ましくは5.0mbar〜1013mbarの範囲である。絶対底部圧は、上部圧より高く、2.0mbar〜2000mbar、好ましくは7.0mbar〜1500mbarの範囲である。
【0065】
好ましくは蒸留による、工程(iii)における仕上げ処理は、不活性溶媒、低沸点物、高沸点物、ホスゲンおよび塩化水素を除去することによる価値のあるトルイレンジイソシアネート(TDI)の生成物を得ることを含む。不活性溶媒は、好ましくは、必要に応じて精製され、当方法中に再利用される。塩化水素は、例えば塩化カルバモイルのように化学的に結合して存在してもよく、他の塩素含有種の形態で存在してもよい。塩化水素が化学的に結合した種は、一般に高沸点物の群にある。工程(iii)における塩化カルバモイルは、イソシアネートを得るために可能な限り開裂される。
【0066】
TDIに対する今回の例示において、工程(iii)における低沸点物、塩化水素およびホスゲンは、工程(ii)における粗生成物1の生成物流2および3への分離の前に、30秒〜60分、好ましくは60秒〜50分、特に好ましくは2分〜40分の期間内に所望のイソシアネートから取り除かれ、生成物流2の温度が常に250℃以下、好ましくは100℃〜250℃の間、等に好ましくは120℃〜230℃の間に維持されることが、本発明に対して必須である。上記期間の下限値は、一方では、反応および仕上げ処理、好ましくは蒸留の間の空間距離によって支配され、他方では、もちろん、選択した分離装置、好ましくは蒸留カラムにおける最小滞留時間が上記の低沸点物質の除去に必要であるという事実によって支配される。
【0067】
低沸点物、塩化水素およびホスゲンの除去は、本発明の目的のためには、それぞれの場合において反応チャンバーを出る、低沸点物の重量、塩化水素の重量およびホスゲンの重量に基づいて、それぞれの場合において少なくとも95.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、特に好ましくは少なくとも99.0重量%、とりわけ好ましくは少なくとも99.5重量%、非常に好ましくは100重量%の低沸点物、塩化水素およびホスゲンが除去される場合に行われるであろう。
【0068】
工程(iii)における仕上げ処理の好ましい実施態様において、上記仕上げ処理は、1よりも多い段階において行われ、ここで、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンは、第1段階(iii.a)において生成物流2から蒸留によって除去され、その結果、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンについて低下された生成物流4が得られ、少なくとも1つの更なる段階(iii.b)において、純粋なイソシアネート5が生成物流4から蒸留によって得られる。これらの工程(iii.a)および(iii.b)を、従来技術から既知の装置において行うことができる。工程(iii.a)における低沸点物、塩化水素およびホスゲンが、工程(ii)における粗生成物1の生成物流2および3への分離の前に、30秒〜60分、好ましくは60秒〜50分、特に好ましくは2分〜40分の期間内に除去され、生成物流2の温度が常に250℃以下、好ましくは100℃〜250℃の間、特に好ましくは120℃〜230℃の間に維持されることが、ここではただ必須である。そのため、個々の装置の寸法および配置、連結配管のサイズおよび流速は、連係されなければならず、その結果、低沸点物、塩化水素およびホスゲンの除去までに期間は本発明に従って維持される。当業者は、単純な方法で適当なパラメーターを決定することができる;必要であれば、単純な予備実験が、付与された製造系に対して必要となってよい。いわゆる脱ホスゲン化カラムが工程(iii.a)において用いられる。当業者に既知の蒸留カラムまたは隔壁カラムが、最終の精製のために工程(iii.b)に対して用いられる。最大純度イソシアネートを得るために、異なるカラム種が組み合わされてよい複数の蒸留カラムを用いてもよい。工程(iii.a)および(iii.b)を行うための適当な装置は、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry(Johann Stichlmair;Distillation, 2. Equipment;オンライン出版2010-04-15, DOI:10.1002/14356007.o08_o01)、EP 1 546 091 A1、US 2,471,134 A、US 2003/0047438 A1、EP 1 371 633 A1、EP 1 371 634 A1、EP 1 413 571 A1、EP 2 210 873 A1、WO 2010/039972 A2、DE 19 23 214 A1、EP 1 475 367 B1に記載されている。かかる装置を基本的にどのように操作されるかは、当業者に既知である。
【0069】
工程(iii.a)および(iii.b)における好ましい複数段階の仕上げ処理において、本発明によって観察される、粗生成物1の液体生成物流2および気体生成物流3への分離間の期間は、液相および気相の分離用の装置からの流2の流出(工程(ii))および脱ホスゲン化カラム(工程(iii.a))からの不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンにおいて減少した生成物流4の流出の間に工程(i)において生成されるイソシアネートの平均滞留時間に対応する。液相および気相の分離用の装置は、工程(i)から反応器において統合されてよく、その結果、本発明に従って観察される粗生成物1の液体生成物流2および気体生成物流3への分離の間の期間は、反応器からの流2の流出および脱ホスゲン化カラムからの不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンにおいて減少した生成物流4の流出の間の工程(i)において生成されるイソシアネートの平均滞留時間に対応する。そのため、この別例において、本発明は、工程(iii.a)が脱ホスゲン化カラムにおいて行われ、工程(iii.b)最終精製用のカラムにおいて行われる方法に関し、ここで、工程(ii)における粗生成物1の分離後の、工程(iii.a)における脱ホスゲン化カラムからの不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンにおいて減少した生成物流4の流出までにおいて工程(i)において生成されるイソシアネートの滞留時間は、30秒〜60分、好ましくは60秒〜50分、特に好ましくは2分〜40分である。
【0070】
この方法において、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンにおいて減少した液体生成物流4が得られる。流4は、TDIに対するこの例示においては、それぞれの場合においてこの流の全重量を基準として、好ましくは40重量%〜100重量%、特に好ましくは60重量%〜100重量%、とりわけ好ましくは70重量%〜100重量%の所望のイソシアネートを含み、
0.10重量%〜10重量%、好ましくは0.50重量%〜7.0重量%、特に好ましくは1.0重量%〜5.0重量%の高沸点物、
0重量%〜60重量%、特に好ましくは0重量%〜40重量%、とりわけ好ましくは0重量%〜30重量%の溶媒、
0重量ppm〜1500重量ppm(0〜2%)、好ましくは0重量ppm〜1200重量ppm(0-1.2%)、特に好ましくは0重量ppm〜1000重量ppm(0-1%)の低沸点物、
0重量ppm〜1000重量ppm、好ましくは0重量ppm〜800重量ppm、特に好ましくは0重量ppm〜600重量ppmのホスゲン、
0重量ppm〜1000重量ppm、好ましくは0重量ppm〜800重量ppm、特に好ましくは0重量ppm〜600重量ppmの塩化水素を含む。
【0071】
次に、純粋なTDIに対するこの例示においては、この流4を、純粋なイソシアネート5を得るために蒸留によってさらに処理する。この精製蒸留は、従来技術から既知の全てのタイプによって行うことができる。例は、例えばEP 1 371 634 A1またはそこで引用される文献もしくは出願に記載されている。
【0072】
例えば上記の実施態様において、トルイレンジイソシアネート(TDI)が生成物として得られ、ここでは、異性体分布は実質的に用いたトルイレンジアミンのそれに対応する。
【0073】
他のアミンを対応するイソシアネートに反応させる場合、上記の個々の方法の詳細に必要に応じて修正を行ってよいが、それは当業者にとってありふれた操作である。
【0074】
工程(ii)における粗生成物1の生成物流2および3への分離と、工程(iii)における所望のイソシアネートからの低沸点物、塩化水素およびホスゲンの除去との間の温度および期間の本発明における制限によって、一方ではカルボジイミドの熱誘起生成および他方ではクロロホルムアミジン-N-カルボニルクロリド構成成分を有する2次成分の生成が大部分で避けられる。そうでなければ、かかる2次成分は、収率損失および/または品質問題および/または実際にホスゲン不含有のプロセス相におけるホスゲン発生(development)をもたらし得る。したがって、本発明による方法は、収率損失およびそれ故に経済的不利を最小限に下げる。
【実施例】
【0075】
次の実施例は、本発明による期間内における低沸点物、塩化水素およびホスゲンの除去の重要性を実証する。これらのパラメーターの重要性を実証するために、化学結合したホスゲンの含有量を全てのイソシアネートサンプルにおいて決定した。「化学結合した」とは、例えばカルボジイミド中に存在するホスゲンである。粗イソシアネート流における化学結合したホスゲンの含有量が多くなると、アミンの反応が選択的でなくなり、ホスゲンがこの方法のホスゲン不含有の相に「さらわれる」という危険性が大きくなる。
【0076】
全ての実施例において、80%の2,4-TDAおよび20%の2,6-TDAの混合物を、それぞれの場合において、EP 0 570 799 B1に記載されるような気相法においてホスゲン化した(工程(i)).
【0077】
不活性溶媒としてオルト-ジクロロベンゼン(ODB)を噴出することによって、粗生成物1を、反応抑制ゾーンにおいて液体生成物流2および気体生成物流3に分離した(工程(ii))。
【0078】
そうした得られた液体反応器流出物2は、87重量ppm(0.0087重量%)の化学結合したホスゲンを含んだ。化学結合したホスゲンの含有量を決定するために、その後、次の手順を全ての実施例において行った:
【0079】
まず全てのサンプルについて、最大30℃で8時間、乾燥窒素(40l/h)を用いてパージすることによって潜在残留量の溶解ホスゲンの存在を含まなくした。その後、そうして調製した200gのサンプルを、気体入口ラインおよび還流冷却器を備えた丸底フラスコにおいて攪拌しながら180℃で30分間加熱し、攪拌しながらこの温度でさらに90分間維持した。溶液からの熱負荷によって次に遊離される化学結合したホスゲンを放出し、規定量のメタノールを含む一連の洗瓶にそれを運ぶために、実験動作全体を通して10l/hの窒素流を、粗生成物溶液中に通した。ホスゲンはメタノールと反応してジメチルカーボネートを与え、これは、ガスクロマトグラフィ(GC)によって定量的に分析することができる。正確な定量化のために、GC分析用の内部標準としてベンゾフェノンをメタノールに添加した。
【0080】
実施例1(本発明による):
液体反応器流出物2のサンプルを、脱ホスゲン化カラムに連続的に移し、不活性溶媒、低沸点物、塩化水素およびホスゲンを含まなくし(工程(iii.a))、ここで、予精製イソシアネート流4が、脱ホスゲン化カラムから底部生成物として得られた。
【0081】
脱ホスゲン化カラムに入る際の流2の温度: 163℃.
脱ホスゲン化カラムの底部の温度: 180℃.
脱ホスゲン化カラムの上部における絶対圧: 680mbar
【0082】
反応器からの流2の流出と脱ホスゲン化カラムの底部からの流4の流出の間の平均滞留時間は、約20分であった。TDIに基づいて、流4は、58重量ppm(0.0058重量%)の化学結合したホスゲンを含んだ。この実施例では、液体生成物流2の取得と低沸点物、ホスゲンおよび塩化水素の除去との間の本発明による滞留時間において、化学結合したホスゲンの含有量は実際には変化しないことが示される(測定変動のために、公称値はさらにより低い)。
【0083】
実施例2(比較実施例):
液体反応器流出物2の更なるサンプルを、ホスゲンの連続供給下において180℃および標準圧で3時間処理し、流2の取得と現実的に可能な限りの低沸点物、ホスゲンおよび塩化水素の除去との間の本発明でない滞留時間の条件を再度作った。
【0084】
TDIに基づいて、サンプルは485重量ppm(0.0485重量%)の化学結合したホスゲンを含んだ。
【0085】
これらの実施例は、本発明による手順における化学結合したホスゲンの含有量は悪影響を受けず、一方、流2の取得と低沸点物、ホスゲンおよび塩化水素の除去との間のより大きい滞留時間において化学結合したホスゲンの含有量が顕著に増加することを実証する。