(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113826
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】(S)−エクオールを生成するための改善された方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/04 20060101AFI20170403BHJP
C07C 59/52 20060101ALI20170403BHJP
C07C 211/27 20060101ALI20170403BHJP
C07C 39/12 20060101ALN20170403BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
C07D311/04
C07C59/52CSP
C07C211/27
!C07C39/12
!C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-502526(P2015-502526)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公表番号】特表2015-516384(P2015-516384A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】IB2013052428
(87)【国際公開番号】WO2013144857
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】1197/CHE/2012
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】512276315
【氏名又は名称】ドクター レディズ ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダハヌカ, ヴィラス ハレシュワ
(72)【発明者】
【氏名】クニモン, シアム クマー ウニアラン
(72)【発明者】
【氏名】ティンマナ, ウパッダヤ
(72)【発明者】
【氏名】パル, アビル クマー
(72)【発明者】
【氏名】マチャ, マヘンダ
(72)【発明者】
【氏名】ミーサラ, ベンカタ マドゥバブ
(72)【発明者】
【氏名】タラバツラ, クリシュナ モハン
(72)【発明者】
【氏名】ラマナサン, シャンカー
【審査官】
三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/018199(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/069774(WO,A1)
【文献】
特表2007−509135(JP,A)
【文献】
Tetrahedron,2010年,Vol.66,p.197-207
【文献】
化学大辞典9縮刷版,共立出版株式会社,1989年 8月15日,p.217-218
【文献】
Organic Letters,2006年,Vol.8(24),p.5441-5443
【文献】
Tetrahedron,1999年,Vol.55(11),p.3365-3376
【文献】
Heterocycles,1993年,Vol.36(8),p.1743-1746
【文献】
Heterocycles,1998年,Vol.48(7),p.1373-1394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/04
C07C 59/52
C07C 211/27
C07B 61/00
C07C 39/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)−エクオール(1):
【化34】
を調製するための方法であって、前記方法は、以下:
(a)酸無水物および塩基の存在下で、4−ヒドロキシフェニル酢酸および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドを反応させることによって、式(3):
【化35】
の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートを得るステップと、
(b)塩基の存在下で、式(3)の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートのアセチル基を加水分解することによって、式(4):
【化36】
の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを得るステップと、
(c)式(4)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを水素化することによって、式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート:
【化37】
の混合物を得るステップと、
(d)式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートの前記混合物を塩基で加水分解することによって、式(7):
【化38】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得るステップと、
(e)キラルアミンとのジアステレオマー塩の形成を介して、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を、その対応する(S)−異性体(7A):
【化39】
に分割するステップと、
(f)式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を還元することによって、式(9):
【化40】
の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを得るステップと、
(g)式(
9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを環化することによって、(S)−エクオール(1)を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)の前記酸無水物が無水酢酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記塩基がジイソプロピルエチルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の前記塩基が水酸化リチウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)の水素化が触媒の存在下で実施され、前記触媒が木炭担持パラジウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(d)の前記塩基が水酸化カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(e)の前記キラルアミンが、N−tert−ブチルベンジルアミン、N−ベンジルメチルアミン、α−メチルベンジルアミン、α−エチル−ベンジルアミン、2−アミノ−3−メチルブタン、N−オクチル−D−グルカミン、L−プロリノール、シンコニジン、シンコニン、N−boc−3−アミノピペリジンおよび3−アミノピペリジンの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(f)の還元剤が、ボランと硫化ジメチルの複合体(BH3−DMS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式(7):
【化41】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸である化合物。
【請求項10】
式(7A):
【化42】
の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸である化合物。
【請求項11】
(S)−エクオール(1)を調製するための、式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の使用。
【請求項12】
式(8):
【化43】
の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の(S)−α−メチルベンジルアミンの塩である化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、(S)−エクオール(1)の生成のための改善された方法に関する。本出願はまた、実質的に純粋な(S)−エクオール(1)に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)−エクオール(1)は、4’,7−イソフラバンジオールとして化学的に公知である。これは、ダイゼイン(2)の細菌性代謝によりヒト腸内で生成される。しかし、人口の約30〜50%しかダイゼインをエクオールに変換する細菌を保持していない。(S)−エクオール(1)は、エストロゲン受容体−βに結合し、前立腺がんの予防に有用であると考えられている。(S)−エクオール(1)はまた、骨の健康の維持および閉経期の間の生理学的変化に関与していると考えられている。
【0003】
【化1】
【0004】
Takashimaら(Tetrahedron Letters、2008年、49巻、5156〜5158頁)は、天然の乳酸エチルから出発して(S)−エクオール(1)を調製するための方法を開示している。開示されている方法は、11のステップの方法であり、この方法により得られた全収率はほんの31.6%である。また、この手法で生成された(S)−エクオール(1)は、91%という低いエナンチオマー純度を有する。
【0005】
Takashimaら(Tetrahedron Letters、2010年、66巻、197〜207頁)は、2,4−ジメトキシベンズアルデヒドから出発して(S)−エクオール(1)を調製するための方法をさらに開示している。この手法で生成された(S)−エクオール(1)もまた、91%のエナンチオマー純度を有する。
【0006】
Muthyalaら(Bioorganic & Medicinal Chemistry、2004年、12巻、1559〜1567頁)は、(S)−エクオール(1)の調製のための方法を教示している。本方法は、パラジウム木炭の存在下でギ酸アンモニウムによりダイゼイン(2)を還元することによって、ラセミエクオールを生成することを含む。次いで、キラル液体クロマトグラフィーにより、ラセミエクオールをエナンチオマーとして純粋な異性体に分離する。本方法は、ラセミエクオールのエナンチオマーを分離するためにキラル液体クロマトグラフィー技法を必要とするため、(S)−エクオール(1)の商業的調製には受け入れられない。
【0007】
Hemstraら(Organic Letters、2006年、8巻、5441〜5443頁)は、2−ブロモ−4−メトキシベンジルクロリドから出発して(S)−エクオール(1)を調製するための方法を開示している。この方法は約99.9%エナンチオマーとして純粋な(S)−エクオール(1)を生成するが、この方法の主な欠点は、その乏しい収率、すなわち、収率が9.8%しかないことにある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Takashimaら、Tetrahedron Letters、2008年、49巻、5156〜5158頁
【非特許文献2】Takashimaら、Tetrahedron Letters、2010年、66巻、197〜207頁
【非特許文献3】Muthyalaら、Bioorganic & Medicinal Chemistry、2004年、12巻、1559〜1567頁
【非特許文献4】Hemstraら、Organic Letters、2006年、8巻、5441〜5443頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(S)−エクオール(1)の合成のための先行技術の方法は、これらの収率が低いため、および/または生成物のエナンチオマー純度が低いため、商業生産に対して適切ではない。したがって、(S)−エクオール(1)の調製のための効率的な方法に対する必要性が当技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の一実施形態は、(S)−エクオール(1):
【0011】
【化2】
【0012】
を調製するための方法に関し、この方法は、以下:
(a)酸無水物および塩基の存在下で、4−ヒドロキシフェニル酢酸および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドを反応させることによって、式(3):
【0013】
【化3】
【0014】
の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートを得るステップと、
(b)塩基の存在下で、式(3)の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートのアセチル基を加水分解することによって、式(4):
【0015】
【化4】
【0016】
の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを得るステップと、
(c)式(4)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを水素化することによって、式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート:
【0017】
【化5】
【0018】
の混合物を得るステップと、
(d)式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートの混合物を塩基で加水分解することによって、式(7):
【0019】
【化6】
【0020】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得るステップと、
(e)キラルアミンとのジアステレオマー塩の形成を介して、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を、その対応する(S)−異性体(7A):
【0021】
【化7】
【0022】
に分割するステップと、
(f)式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を還元することによって、式(9):
【0023】
【化8】
【0024】
の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル(hydroxyohenyl))プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを得るステップと、
(g)式(9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを環化することによって、(S)−エクオール(1)を得るステップとを含む。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、式(7):
【0026】
【化9】
【0027】
の化合物、および(S)−エクオール(1)の合成のためのその使用に関する。
【0028】
さらに別の実施形態では本発明は、式(7A):
【0029】
【化10】
【0030】
の化合物、および(S)−エクオール(1)の合成のためのその使用に関する。
【0031】
さらに別の実施形態では、本発明は、式(8):
【0032】
【化11】
【0033】
の化合物および(S)−エクオール(1)の合成のためのその使用に関する。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、式(9):
【0035】
【化12】
【0036】
の化合物および(S)−エクオール(1)の合成のためのその使用に関する。
【0037】
さらに別の実施形態では、本出願は、(S)−エクオール(1)を含む医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本出願の一実施形態は、(S)−エクオール(1):
【0040】
を調製するための方法に関し、この方法は、以下:
(a)酸無水物および塩基の存在下で、4−ヒドロキシフェニル酢酸および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドを反応させることによって、式(3):
【0042】
の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートを得るステップと、
(b)塩基の存在下で、式(3)の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートのアセチル基を加水分解することによって、式(4):
【0044】
の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを得るステップと、
(c)式(4)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを水素化することによって、式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート:
【0046】
の混合物を得るステップと、
(d)式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートの混合物を塩基で加水分解することによって、式(7):
【0048】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得るステップと、
(e)キラルアミンとのジアステレオマー塩の形成を介して、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を、その対応する(S)−異性体(7A):
【0050】
に分割するステップと、
(f)式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を還元することによって、式(9):
【0052】
の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを得るステップと、
(g)式(9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを環化することによって、(S)−エクオール(1)を得るステップとを含む。
【0053】
(S)−エクオール(1)を調製するための本発明の方法の概略表示がスキームIにおいて示されている。
【0055】
(S)−エクオール(1)の調製のための方法の第1のステップは、酸無水物および塩基の存在下での、4−ヒドロキシフェニル酢酸と2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドの間のPerkin反応を含む。最も適切な酸無水物は無水酢酸であるが、ただし、他の酸無水物も反応に使用することができる。塩基は、有機アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、N−メチルピペリジン、および無機塩基、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重リン酸カリウム、重リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムの群から選択することができる。具体的には、塩基は、有機アミンの群から選択することができ、さらに具体的には塩基はジイソプロピルエチルアミンであってよい。反応は、約100℃〜約200℃の温度で、約30時間〜約60時間の期間の間行う。具体的には、反応は約90℃〜約150℃の温度で、約35時間〜約45時間の期間の間行い、さらに具体的には、反応は約115℃〜約120℃の温度で、約38時間〜約42時間の期間の間行う。反応完了後、反応混合物を約10℃〜約30℃、具体的には約20℃〜約25℃に冷却し、水を加える。沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、場合によって乾燥させることによって、式(3)の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートを得る。
【0056】
次のステップでは、塩基の存在下で式(3)の化合物のアセチル基を加水分解する。塩基は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウムの群から選択することができる。具体的には、塩基は水酸化リチウムである。加水分解反応のための溶媒は、水、アルコール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(ACN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、水を溶媒として使用する。加水分解反応は、約30℃〜約100℃の温度で、約30分間〜約5時間の期間の間行う。具体的には、反応は約50℃〜約80℃の温度で、約1時間〜約4時間の期間の間行い、さらに具体的には、反応は約60℃〜約70℃の温度で、約1時間〜約2時間の期間の間行う。反応完了後、水の添加により反応混合物を希釈し、酸の水溶液を加えることにより酸性化する。酸は、酢酸、塩酸、硫酸、シュウ酸、硝酸、リン酸および臭化水素酸の群、具体的には塩酸から選択することができる。沈殿した固体を濾過で収集し、場合によって乾燥させることによって、式(4)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを得る。
【0057】
次いで、式(4)の化合物を水素化することによって、式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンおよび式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートの混合物を得る。式(4)の化合物は、アルコール、DMF、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン、THF、DMSO、アセトニトリルおよびこれらの混合物の群から選択される適切な溶媒中に溶解することができる。具体的には、溶媒は、アルコール、DMFおよびこれらの混合物の群から選択される。アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、tert−ブタノールおよびアミルアルコールの群から選択することができる。具体的には、水素化に対して適切な溶媒はメタノールである。水素化は、固体担体上パラジウム、ラネーニッケル、白金、ロジウムおよびルテニウムの群から選択される不均一な触媒の存在下で実施する。固体担体は例えば炭素であってよい。具体的には、不均一な触媒は木炭担持パラジウムである。水素化は、約5バール〜約15バールの水素圧力で、約30℃〜約100℃で約5時間〜約24時間の期間の間行う。具体的には、水素化は、約7バール〜約12バールの水素圧力で、約40℃〜約80℃で、約7時間〜約15時間の期間の間行い、さらに具体的には、水素化は、約8バール〜約10バールの水素圧力で、約60℃〜約65℃で、約10時間〜約12時間の期間の間行う。反応が完了した後、反応混合物を濾過することによって、触媒を除去し、濾液を蒸留することによって、式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンおよび式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートの混合物を得る。生成した生成物はさらなる精製なしで次の反応へと持ち込む。
【0058】
式(5)の化合物および式(6)の化合物の混合物を、塩基の存在下で加水分解することによって、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得る。塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、塩基は水酸化カリウムである。加水分解反応のための溶媒は、水、アルコール、THF、アセトニトリル、DMF、DMSOおよびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、溶媒は水である。加水分解は約0℃〜約50℃の温度で行う。具体的には、加水分解は、20℃より下の温度で行う。反応完了後、酸を加えることにより反応混合物を酸性化する。酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸および臭化水素酸の群から選択することができる。具体的には、酸は塩酸である。反応混合物のpHは約1〜約4に調整する。具体的には、反応混合物のpHは約2〜約3に調整する。生成物は、水に不混和性の有機溶媒で抽出する。有機溶媒は、エステル、エーテルおよび炭化水素溶媒の群から選択することができる。具体的には、有機溶媒はエステルである。さらに具体的には、有機溶媒は酢酸エチルである。有機溶媒を真空下で蒸留することによって、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得る。
【0059】
本出願の一つの好ましい実施形態は、式(7):
【0061】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸に関する。
【0062】
本出願の別の好ましい実施形態は、(S)−エクオール(1)の調製における、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の使用に関する。
【0063】
キラルアミンとジアステレオマー塩を形成することによって、式(7)のラセミ酸をそのエナンチオマーに分割することができる。キラルアミンは、α−メチルベンジルアミン、N−オクチル−D−グルカミン、L−プロリノール、シンコニジン、シンコニン、N−Boc−3−アミノピペリジンおよび3−アミノピペリジンの群から選択することができる。具体的には、キラルアミンはα−メチルベンジルアミンである。式(7)のラセミ酸およびキラルアミンは、適切な条件で適切な溶媒中に溶解する。溶媒は、エーテル、アルコール、水、炭化水素およびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tet−ブタノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、ヘキサン、水およびこれらの混合物の群から選択される。さらに具体的には、溶媒はアルコールであり、最も具体的には、溶媒はイソプロパノールである。反応塊を、約40℃〜約80℃、具体的には約50℃〜約70℃の温度に加熱する。さらに具体的には、反応塊は、約55℃〜約65℃の温度に加熱する。反応は約30分間〜約2時間維持し、具体的には、反応塊は約45分間〜約1.5時間維持する。さらに具体的には、反応塊は約1時間維持する。反応塊は約0℃〜約30℃に冷却し、具体的には、反応塊は約15℃〜約25℃に冷却する。反応塊はこの温度で約2時間〜約10時間の期間の間維持する。具体的には、反応塊はこの温度で約4時間〜約8時間の期間の間維持し、さらに具体的には反応塊はこの温度で約5時間〜約6時間の期間の間維持する。生成した(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸のジアステレオマー塩を公知の技術、例えば濾過などにより単離する。
【0064】
ジアステレオマー塩は、場合によって結晶化することによって、純粋な生成物を得ることができる。結晶化のための溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、水、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランおよびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、結晶化のための溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、水およびこれらの混合物の群から選択される。さらに具体的には、結晶化のための溶媒は、イソプロパノールと水の混合物である。粗製の固体を溶媒と混合し、約40℃〜約80℃、具体的には約50℃〜約70℃に加熱することによって、溶媒中に固体を溶解する。溶媒中への固体の完全な溶解後、反応塊を約−30℃〜約10℃、具体的には約−10℃〜約0℃に冷却する。生成した固体を濾過することによって、(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の純粋なジアステレオマー塩を得る。
【0065】
本出願の一つの好ましい実施形態は、(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸のキラルアミン塩に関し、このキラルアミンは、N−tert−ブチルベンジルアミン、N−ベンジルメチルアミン、α−メチルベンジルアミン、α−エチルベンジルアミン、2−アミノ−3−メチルブタン、N−オクチル−D−グルカミン、L−プロリノール、シンコニジン、シンコニン、N−Boc−3−アミノピペリジンおよび3−アミノピペリジンの群から選択することができる。
【0066】
本出願の別の好ましい実施形態は、式(8):
【0068】
の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の(S)−α−メチルベンジルアミン塩に関する。
【0069】
本出願のさらに別の好ましい実施形態は、(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン酸(8)の実質的に純粋な(S)−α−メチルベンジルアミン塩に関する。式(8)の実質的に純粋な化合物とは、化合物がHPLCによる少なくとも約95%のジアステレオマー純度(ジアステレオマー過剰、d.e.)を有することを意味する。具体的には、式(8)の化合物は、HPLCによる少なくとも97%のジアステレオマー純度を有し、さらに具体的には、式(8)の化合物は、HPLCによる約99%超のジアステレオマー純度を有する。
【0070】
本出願のさらに別の好ましい実施形態は、(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸のジアステレオマー塩の、(S)−エクオール(1)の調製のための使用に関する。
【0071】
本出願の別の好ましい実施形態は、式(8)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の(S)−α−メチルベンジルアミン塩の、(S)−エクオール(1)の調製のための使用に関する。
【0072】
(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸のキラルアミン塩(このキラルアミンは、N−tert−ブチルベンジルアミン、N−ベンジルメチルアミン、α−メチルベンジルアミン、α−エチルベンジルアミン、2−アミノ−3−メチルブタン、N−オクチル−D−グルカミン、L−プロリノール、シンコニジン、シンコニン、N−Boc−3−アミノピペリジンおよび3−アミノピペリジンの群から選択されてもよい)は、適切な溶媒中、適切な酸で処理することによって、式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得ることができる。具体的には、式(8)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の(S)−α−メチルベンジルアミン塩を適切な溶媒中で、適切な酸で処理することによって、式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得ることができる。酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸およびリン酸の群から選択することができる。具体的には、酸は、塩酸、硫酸および硝酸の群から選択される。さらに具体的には、酸は塩酸である。溶媒は、エステル、アルコール、エーテル、水およびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、溶媒は、エステル溶媒と水の混合物である。さらに具体的には、溶媒は、酢酸エチルと水の混合物である。有機溶媒を水相から分離し、真空下で蒸発させることによって、式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得る。
【0073】
本出願の一つの好ましい実施形態は、式(7A):
【0075】
の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸に関する。
【0076】
本出願の別の好ましい実施形態は、(S)−エクオール(1)の調製における、式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の使用に関する。
【0077】
本出願のさらに別の好ましい実施形態は、実質的に純粋な(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン酸(7A)に関する。式(7A)の実質的に純粋な化合物とは、化合物が、HPLCによる少なくとも約95%のエナンチオマー純度(エナンチオマー過剰、e.e.)を有することを意味する。具体的には、式(7A)の化合物は、HPLCによる少なくとも97%のエナンチオマー純度を有し、さらに具体的には、式(7A)の化合物は、HPLCによる約99%超のエナンチオマー純度を有する。
【0078】
溶媒の存在下、式(7A)の光学的に活性な酸を適切な還元剤と反応させることによって、式(9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを得る。還元剤は、ボランと硫化ジメチルの複合体(BH
3−DMS)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、三フッ化ホウ素エーテレート(BF
3:Et
2O)、水素化ジイソブチルアルミニウムおよび水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(REDAL)の群から選択することができる。具体的には、還元剤はBH
3−DMSである。溶媒は、メタノール、エタノール、1,4−ジオキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、溶媒は、1,4−ジオキサンおよびテトラヒドロフランの群から選択される。さらに具体的には、溶媒は1,4−ジオキサンである。1,4−ジオキサン中に式(7A)の光学的に活性な酸を含む溶液を1,4−ジオキサンおよびBH
3−DMSを含む混合物に加える。代わりに、1,4−ジオキサンおよびBH
3−DMSを含む混合物を、1,4−ジオキサン中の式(7A)の光学的に活性な酸を含む溶液に加えてもよい。反応塊は、50℃〜約200℃の温度に、約2時間〜約10時間の期間の間加熱する。具体的には、反応塊は、80℃〜約150℃の温度に、約4時間〜約8時間の期間の間加熱し、さらに具体的には、反応塊は、90℃〜約95℃の温度に、約5時間〜約6時間の期間の間加熱する。
【0079】
驚くことに、反応完了後、反応塊は、約70%の所望の式(9)のアルコールを、約30%の対応する式(10):
【0081】
のアルデヒドと共に含有することが、本出願の発明者らにより観察された。
【0082】
必要とされる生成物の収率および品質を改善するために、別の適切な還元剤をワークアップ前に反応塊に加える。還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなどの群から選択される。具体的には、本出願の別の還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。還元剤の添加後、反応は約30分間〜約3時間の期間の間維持する。具体的には、反応塊は、約1時間〜約2時間の期間の間維持する。反応塊を希塩酸によってクエンチし、水不混和性の有機溶媒で抽出する。水不混和性の有機溶媒は、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、メチルtert−ブチルエーテル、ジエチルエーテルおよび酢酸エチルの群から選択することができる。具体的には、水不混和性の有機溶媒は酢酸エチルである。有機溶媒を約1〜約2体積まで蒸留し、ジクロロメタンを生成物に加える。反応塊は約3時間〜約10時間維持し、具体的には約5時間〜約6時間維持する。沈殿した固体を濾過で単離することによって、式(9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを得る。
【0083】
本出願の一つの好ましい実施形態は、式(9):
【0085】
の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールに関する。
【0086】
本出願の別の好ましい実施形態は、(S)−エクオール(1)の調製のための、式(9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールの使用に関する。
【0087】
式(9)のアルコールを、Mitsunobu条件下で環化することによって、(S)−エクオール(1)を得ることができる。反応のために使用する溶媒は、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびこれらの混合物の群から選択することができる。具体的には、溶媒はテトラヒドロフランである。式(9)のアルコールを含む反応塊に、トリフェニルホスフィンおよび適切な溶媒、アゾジカルボキシレートのアルキル誘導体を加える。アゾジカルボキシレートの添加は、単一ロットでも、または何回かに分けてもよい。アゾジカルボキシレートのアルキル誘導体は、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(diispropyl)、アゾジカルボン酸ジエチルなどの群から選択される。具体的には、アゾジカルボキシレートのアルキル誘導体は、アゾジカルボン酸ジイソプロピルである。反応塊は、約5℃〜約25℃の温度で、約30分間〜約3時間の期間の間維持する。具体的には、反応塊は、約15℃〜約20℃の温度で、約1時間〜約2時間の期間の間維持する。反応塊を水酸化リチウムの水溶液でクエンチし、水不混和性の有機溶媒で抽出することによって、副生成物を除去する。水不混和性の有機溶媒は、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、トルエンおよびクロロホルムの群から選択することができる。具体的には、水不混和性の有機溶媒はメチルtert−ブチルエーテルである。水層は酸で酸性化する。酸は、塩酸、硫酸、硝酸およびプロピオン酸の群から選択することができる。具体的には、酸は希塩酸である。水層のpHは、約pH0.5〜約pH5に調整する。具体的には、水層のpHは、約pH1〜約pH4に調整する。反応塊は、約2時間〜約10時間維持する。具体的には、反応塊は約3時間〜約8時間維持する。さらに具体的には、反応塊は約5時間〜約6時間維持する。固体を濾過で単離することによって、(S)−エクオール(1)を得る。単離した固体を溶媒で場合によってスラリー洗浄することによって、精製した生成物を得る。適切な溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アセトン、THF、1,4−ジオキサン、水、酢酸、プロピオン酸およびこれらの混合物の群から選択される。具体的には、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アセトン、水およびこれらの混合物の群から選択される。さらに具体的には、溶媒は、イソプロパノールおよび水の混合物である。反応塊は、約5時間〜約20時間の期間の間維持する。具体的には、反応塊は約7時間〜約15時間の期間の間維持し、さらに具体的には、約12時間〜約14時間の期間の間維持する。固体を濾過で単離することによって、(S)−エクオール(1)を得る。
【0088】
本出願の方法は、改善された収率、およびHPLC技法で測定した場合、改善された化学純度もエナンチオマー純度も有する(S)−エクオール(1)を提供している。本出願の方法は、先行技術の方法よりはるかに良好な、約22%超の全収率を提供する。
【0089】
本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)は、HPLC技法で測定した場合、約95%超の化学純度を有する。具体的には、本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)は約97%超の純度を有し、さらに具体的には、本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)は約98%超の純度を有する。
【0090】
本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)は、HPLC技法で測定した場合、約95%超のエナンチオマー純度を有する。具体的には、本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)は約97%超のエナンチオマー純度を有し、さらに具体的には、本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)は約99%超のエナンチオマー純度を有する。
【0091】
本出願の一実施形態は、本出願の方法で得た(S)−エクオール(1)を含む医薬組成物に関する。
【0092】
ある特定の実施形態は、以下の実施例においてさらに説明されることになるが、以下の実施例は、例示の目的のためだけに提供されるもので、本出願の範囲はこれらに制限されない。
【実施例】
【0093】
実施例1:4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテート(3)の合成
4−ヒドロキシフェニル酢酸(50g)および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(45.46g)の混合物に、無水酢酸(250mL)およびジイソプロピルエチルアミン(200mL)を加え、反応混合物を115〜120℃で約40±2時間加熱した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、次いで水(1000mL)を加えた。反応塊をRTで4〜5時間維持した。固体を濾別し、水で洗浄し(250mL)、70〜75℃で12〜14時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:103g
【0094】
【化26】
【0095】
実施例2:7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オン(4)の合成
DMF(400mL)中の式(3)の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテート(80gm)の溶液に、水酸化リチウム(29.8g、0.71mol)の水溶液をRTで加え、60〜70℃で1〜2時間維持した。反応完了後、水(800mL)および希塩酸(112mL)を反応塊に加えた。反応塊をRTで1〜2時間維持した。固体を濾過し、70〜75℃で6〜8時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:57g
【0096】
【化27】
【0097】
実施例3:7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−2−オン(5)およびメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート(6)の合成
DMF(320mL)およびメタノール(320mL)中の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オン(4)(57gm)の溶液に、パラジウム木炭(6.4g)を加えた。次いで、反応が完了するまで、反応混合物を8〜10バールの水素圧力で、60〜65℃で12〜16時間水素化した。反応混合物をRTに冷却し、パラジウム木炭を濾別した。濾液を真空下、55℃より下で、5体積まで蒸留し、粗製の濃縮した反応混合物を、任意のさらなるワークアップまたは精製なしに工程の次のステージへと持ち込んだ。
【0098】
7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン−2−オン(5)のスペクトルデータ:
【0099】
【化28】
【0100】
メチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート(6)のスペクトルデータ:
【0101】
【化29】
【0102】
実施例4:3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸(7)の合成
水(800mL)中の水酸化カリウム(39.76g)を、20℃より下で、実施例3で得た粗塊に加えた。反応完了後、反応塊のpHを、希塩酸を使用して2〜3に調整した。生成物を酢酸エチル(2×400mL)で抽出した。有機層を10%ブライン溶液(800mL)で洗浄した。有機層を、真空下、45℃より下で、1〜1.5体積まで蒸留し、粗製の濃縮した反応混合物を、任意のさらなるワークアップまたは精製なしに、工程の次のステージへと持ち込んだ。
【0103】
【化30】
【0104】
実施例5:(S)−3−(2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸(8)の(S)−α−メチルベンジルアミン塩の合成
イソプロピルアルコール(IPA、1040mL)を、実施例4で得た粗塊に加え、真空下、45℃より下で、11〜12体積まで蒸留した。(S)−(−)−α−メチルベンジルアミン(25.7g)を反応塊に加えた。反応塊を55〜65℃に加熱し、1時間維持した。次いで反応混合物をRTに冷却し、その温度で5〜6時間維持した。生成物を濾別し、粗生成物をIPA(5体積)と水(5体積)の混合物中に取り入れた。反応塊を55〜65℃に加熱し、1時間維持した。次いで反応混合物を−10℃に冷却し、その温度で5〜6時間維持した。固体を濾別し、70〜75℃で6〜8時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:26g
【0105】
【化31】
【0106】
キラル純度(HPLCによる):99.5%d.e. 。
【0107】
実施例6:(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸(8A)の(S)−3−アミノピペリジン塩の合成
IPA(20mL)を、実施例4で得た粗塊に加え、真空下、45℃より下で、10体積まで蒸留した。(S)−(−)−アミノピペリジン塩酸塩(0.602gm)を、メタノール(15mL)中メタノール水酸化ナトリウム(0.27gm)で遊離塩基にその場で変換し、メタノールを完全に蒸留した。この残渣へ、式(7)の酸のIPA溶液を加え、反応塊を55〜65℃に加熱し、1時間維持した。次いで反応混合物をRTに冷却し、その温度で5〜6時間維持した。固体を濾別し、IPA(1mL)で洗浄し、70〜75℃で6〜8時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:0.51g
キラル純度(HPLCによる):64.8%d.e. 。
【0108】
実施例7:(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸(8B)のシンコニン(chinchonine)塩の合成
IPA(20mL)を、実施例4で得た粗塊に加え、真空下、45℃より下で、9〜10体積まで蒸留した。シンコニン(1.03g)を反応塊に加えた。反応塊を55〜65℃に加熱し、1時間維持した。次いで、反応混合物をRTに冷却し、その温度で5〜6時間維持した。生成物を濾別し、IPA(1mL)で洗浄し、70〜75℃で6〜8時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:0.26g
キラル純度(HPLCによる):36.9%d.e. 。
【0109】
実施例8:(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオール(9)の合成
希塩酸(25mL)を、酢酸エチル(250mL)および水(250mL)中の式(8A)の化合物(50g)の混合物に加えた。水層を酢酸エチルで抽出した(150mL)。合わせた有機層を10%ブライン溶液(150mL)で洗浄した。有機層を真空下、45℃より下で、1〜1.5体積まで蒸留し、1,4−ジオキサン(2×50mL)で再蒸留することによって、残渣として(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得た。残渣を1,4−ジオキサン(400mL)中に溶解した。これを、1,4−ジオキサン(250mL)中のBH
3:DMS(252mL)の混合物にゆっくりと加えた。添加が終わった後、反応塊を90〜95℃で5〜6時間維持した。反応が完了したら、反応塊をRTに冷却し、メタノール(150mL)および水素化ホウ素ナトリウム(3.58g)を加えた。反応塊をRTで1〜2時間維持した。反応完了後、反応塊を希塩酸(25mL)で酸性化し、真空下で約5体積まで蒸留した。約20%のブライン溶液(250mL)を上記反応塊に加え、酢酸エチルで抽出した(2×250mL)。有機層を重炭酸塩溶液、続いてブライン溶液で洗浄した。有機層を、真空下、50℃より下で、1〜2体積まで蒸留し、ジクロロメタン(500mL)を加えた。反応塊をRTで5〜6時間維持した。固体を濾別し、85〜90℃で10〜12時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:24g
【0110】
【化32】
【0111】
実施例9:(S)−エクオール(1)の合成
THF(2.5L)中の式(9)のアルコール(50g)およびトリフェニルホスフィン(151g)の混合物に、THF(500mL)中アゾジカルボン酸ジイソプロピル(116.5g)を15〜20℃で加え、その温度で1〜2時間維持した。約5%の水酸化リチウム溶液(1000mL)を反応塊に加え、MTBE(3×750mL)で抽出することによって、有機不純物を除去した。水層のpHを希塩酸(250mL)で1〜4に調整した。反応塊をRTで5〜6時間維持し、生成物を濾別した。粗生成物をIPA(7.5体積)と共に取り、水(22.5体積)を加えた。次いで、反応塊をRTで12〜14時間維持した。固体を濾過し、50〜55℃で10〜12時間乾燥させることによって、表題化合物を得た。
収量:36g
化学純度(HPLCによる):98.9%。
キラル純度(HPLCによる):99.7%e.e.
【0112】
【化33】
本発明の好ましい実施形態においては、例えば、以下が提供される。
(項1)
(S)−エクオール(1):
【化34】
を調製するための方法であって、前記方法は、以下:
(a)酸無水物および塩基の存在下で、4−ヒドロキシフェニル酢酸および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドを反応させることによって、式(3):
【化35】
の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートを得るステップと、
(b)塩基の存在下で、式(3)の4−(7−アセトキシ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)フェニルアセテートのアセチル基を加水分解することによって、式(4):
【化36】
の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを得るステップと、
(c)式(4)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−2−オンを水素化することによって、式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート:
【化37】
の混合物を得るステップと、
(d)式(5)の7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロマン−2−オンと式(6)のメチル3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパノエートの前記混合物を塩基で加水分解することによって、式(7):
【化38】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を得るステップと、
(e)キラルアミンとのジアステレオマー塩の形成を介して、式(7)の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を、その対応する(S)−異性体(7A):
【化39】
に分割するステップと、
(f)式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸を還元することによって、式(9):
【化40】
の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを得るステップと、
(g)式(8)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールを環化することによって、(S)−エクオール(1)を得るステップと
を含む、方法。
(項2)
ステップ(a)の前記酸無水物が無水酢酸である、上記項1に記載の方法。
(項3)
ステップ(a)の前記塩基がジイソプロピルエチルアミンである、上記項1に記載の方法。
(項4)
ステップ(b)の前記塩基が水酸化リチウムである、上記項1に記載の方法。
(項5)
ステップ(c)の水素化が不均一な触媒の存在下で実施される、上記項1に記載の方法。
(項6)
前記不均一な触媒が木炭担持パラジウムである、上記項5に記載の方法。
(項7)
ステップ(d)の前記塩基が水酸化カリウムである、上記項1に記載の方法。
(項8)
ステップ(e)の前記キラルアミンが、N−tert−ブチルベンジルアミン、N−ベンジルメチルアミン、α−メチルベンジルアミン、α−エチル−ベンジルアミン、2−アミノ−3−メチルブタン、N−オクチル−D−グルカミン、L−プロリノール、シンコニジン、シンコニン、N−boc−3−アミノピペリジンおよび3−アミノピペリジンの群から選択される、上記項1に記載の方法。
(項9)
ステップ(f)の還元剤が、ボランと硫化ジメチルの複合体(BH3−DMS)である、上記項1に記載の方法。
(項10)
式(7):
【化41】
の3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸である化合物。
(項11)
式(7A):
【化42】
の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸である化合物。
(項12)
(S)−エクオール(1)を調製するための、式(7A)の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の使用。
(項13)
式(8):
【化43】
の(S)−3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸の(S)−α−メチルベンジルアミンの塩である化合物。
(項14)
式(9):
【化44】
の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールである化合物。
(項15)
(S)−エクオール(1)を調製するための、式(9)の(S)−4−(3−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル)ベンゼン−1,3−ジオールの使用。