(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113855
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】骨片を整形するためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-541040(P2015-541040)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公表番号】特表2016-500018(P2016-500018A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2013056325
(87)【国際公開番号】WO2014072082
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年3月8日
(31)【優先権主張番号】61/724,529
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515124864
【氏名又は名称】イーベーベー テクノロジー−エントヴィックルン−フォンズ ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー(テーエーエフ)
【氏名又は名称原語表記】IBB Technologie−Entwicklungs−Fonds GmbH & Co. KG (TEF)
(73)【特許権者】
【識別番号】315017351
【氏名又は名称】ハーベルル,エルンスト−ヨハンネス
【氏名又は名称原語表記】HABERL, Ernst−Johannes
(73)【特許権者】
【識別番号】315017362
【氏名又は名称】スマート,ニコラス パトリック
【氏名又は名称原語表記】SMARTT, Nicholas Patrick
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】ハーベルル,エルンスト−ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】スマート,ニコラス パトリック
【審査官】
毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−280519(JP,A)
【文献】
米国特許第06331180(US,B1)
【文献】
米国特許第06132437(US,A)
【文献】
特表2006−518643(JP,A)
【文献】
米国特許第05147358(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋の奇形部位の外科的矯正を助けるためのシステムであって、前記システムが、患者の大きさおよび所望の頭部形状に対応する頭蓋テンプレートの周りに配置され、保持フレームが自由に回転可能であり任意の角度で固定可能であるように、前記保持フレームをその横方向端部で固定するための支持スタンドを前記システムが備え、前記頭蓋テンプレートが前記保持フレームに堅固に接続され、前記保持フレームが、少なくとも1つの弓状クランプ・フレームを固定するための手段を提供し、クランプ・プランジャを取り上げるための少なくとも1つのクランプ・ホルダおよび骨片を固定するための少なくとも1つの固定ピンを、前記少なくとも1つの弓状クランプ・フレームに固定することができるシステム。
【請求項2】
前記頭蓋の奇形部位が頭蓋骨縫合早期癒合症により生じたものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが矩形横断面を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが、少なくとも1つの半径方向凹部を有して、前記少なくとも1つのクランプ・ホルダのための少なくとも1つの所定の締付位置を提供する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのクランプ・ホルダが前記少なくとも1つの弓状クランプ・フレームの両側に配置され得るように、前記少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが構成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくともクランプ・ホルダ、クランプ・プランジャ、および固定ピンが、クランプ・アセンブリとして予め組み立てられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのクランプ・ホルダ内のラチェットにより、前記少なくとも1つのクランプ・プランジャを前記クランプ・ホルダ内に固定することができる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのクランプ・プランジャが、前記頭蓋テンプレート側を向いた端部にシリコーン・リングを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのクランプ・ホルダが、前記少なくとも1つのクランプ・フレームにクリップ留めされて、前記少なくとも1つの弓状クランプ・フレーム下方のアンダーカットに係合する、ばね押しフックを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの固定ピンが金属から作製される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの固定ピンが、前記頭蓋テンプレートの反対の端部にキャップを有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくともクランプ・ホルダおよび前記クランプ・プランジャが、プラスチックもしくはシリコーンから作製されるか、またはプラスチックもしくはシリコーンで被覆される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記頭蓋テンプレートが、シリコーン・ストライプをその表面に有して、取り付けられた骨片を高摩擦保持している、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記頭蓋テンプレートが、凹部領域をシリコーン・ストライプ間に有して、固定ピン先端が前記頭蓋テンプレートに確実に接触しないようにしている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記頭蓋テンプレートが、前記保持フレームにねじ留めする剛性金属板にクリップ留めされている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが、前記保持フレームに堅固に取り付けられ、または予め組み込まれている、請求項1〜15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが、前記頭蓋テンプレートの周りで横方向に延びる、請求項1〜16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが仮想水平線に平行である、請求項1〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
支持スタンドと、保持フレームと、頭蓋テンプレートを取り付けるための金属板と、少なくとも1つの弓状クランプ・フレームと、少なくともクランプ・ホルダ、クランプ・プランジャ、および少なくとも1つの固定ピンを備えた少なくとも1つのクランプ・アセンブリとを備える、頭蓋の奇形部位の外科的矯正を助けるためのシステムを含むキット。
【請求項20】
様々な大きさおよび形状の頭蓋テンプレートを含む、請求項16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に頭蓋の再形成の際に、骨片を整形することにより、頭蓋の奇形部位の外科的矯正を助けるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋骨縫合早期癒合症は、乳児の脳が完全に形成される前に、乳児の頭蓋骨間の接合部の1つまたは複数が早期に閉じる先天性欠損症である。頭蓋骨縫合早期癒合症を抱える小児は、頭蓋が自然な形状で発育できないため、頭部が奇形になる。頭蓋骨縫合早期癒合症は、乳児の頭蓋の接合部の1つまたは複数に影響し得る。頭蓋骨縫合早期癒合症は、脳の適切な発育を妨げる、根本的な脳の異常に関連する場合がある。
【0003】
頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、通常、癒合した骨を分離して整形するための手術が乳児に必要であることを意味する。根本的な脳の異常がなければ、手術によって脳の十分な空間を発育および発達させることができる。
【0004】
頭蓋骨縫合早期癒合症を抱える乳児の手術に関連する共通の問題は、頭蓋の患部を適切に再形成することである。外科手術のうちの時間のかかる重要ないくつかの局面には、今までのところ対処がなされていない。
【0005】
1つの局面は、このような手術の主な目的が、患者の頭蓋の仮想の「健康な」形状に可能な限り最も完全に近似するものを実現することである点である。「最適な」形状の再形成は、手術をする外科医の形状感覚または外科医の自由裁量による美的基準に完全に置かれるが、これらは患者の頭蓋の仮想の自然な形状に適合しないおそれがある。別の局面は、最適な形状を探るという意味で繰り返し行う必要がある矯正によって、手術時間が長くなるおそれがある点である。生後1年以内に、乳児の頭蓋の個々の形状に関して、成功を客観的に確認することはほとんど不可能である。
【0006】
材料の剛性のため、様々な湾曲度を表す頭蓋冠の部位、例えば前頭部における形状の選択および実現は、手術を行う熟練した外科医にとっても難易度が高い。
【0007】
したがって、外科医は、特に生後1年以内の小児の頭蓋または頭蓋部位の個々の形状に関して、頭蓋の奇形部分からの骨片の再形成を可能にするシステムを有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、頭蓋の一部を整形して再埋込みに備えるための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の意味の範囲内で、頭部テンプレート、頭部モデル、頭蓋テンプレート、および頭蓋モデルという用語は、同意語として理解すべきである。
【0010】
独立請求項の特徴が、本発明の目的を解決する。本発明は、頭蓋の奇形部位の外科的矯正を助けるためのシステムであって、システムが、患者の大きさおよび所望の頭部形状に対応する頭蓋テンプレートの周りに配置され、保持フレームが自由に回転可能であり任意の角度で固定可能であるように、保持フレームをその横方向端部で固定するための支持スタンドをシステムが備え、頭蓋テンプレートが保持フレームに堅固に接続され、前記保持フレームが、少なくとも1つの弓状クランプ・フレームを固定するための手段を提供し、クランプ・プランジャを取り上げるための少なくとも1つのクランプ・ホルダおよび骨片を固定するための少なくとも1つの固定ピンを、少なくとも1つの弓状クランプ・フレームに固定することができるシステムを提供する。
【0011】
システムは、頭蓋骨縫合早期癒合症によって生じる頭蓋の奇形部位を矯正するためのものである。
【0012】
少なくとも1つの弓状クランプ・フレームは矩形横断面を有することができ、これにより、固定されたクランプ・ホルダのねじれを有利に防止する。少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが少なくとも1つの半径方向凹部を有して、少なくとも1つのクランプ・ホルダのための少なくとも1つの所定の締付位置を提供することが意図される。さらに、少なくとも1つのクランプ・ホルダが少なくとも1つの弓状クランプ・フレームの両側に配置され得るように、弓状クランプ・フレームを構成してもよい。これにより、締付位置が二重になる。
【0013】
本発明によるシステムの使用を容易にするために、少なくとも1つのクランプ・ホルダ、クランプ・プランジャ、および固定ピンを、クランプ・アセンブリとして予め組み立ててもよい。少なくとも1つのクランプ・プランジャをクランプ・ホルダ内に固定するために、ラチェットが設けられる。
【0014】
少なくとも1つのクランプ・プランジャが、より高い摩擦をもたらすために、頭蓋テンプレート側の端部にシリコーン・リングを有していてもよい。
【0015】
少なくとも1つのクランプ・ホルダが、少なくとも1つの弓状クランプ・フレームにクリップ留めされるばね押しフックを有することができ、フックが少なくとも1つの弓状クランプ・フレーム下方のアンダーカットに係合することが意図される。
【0016】
少なくとも1つの固定ピンの材料が金属から作製されてもよいことがさらに意図され、少なくとも1つの固定ピンが頭蓋テンプレートの反対の端部にキャップを有することがさらに意図される。キャップは、待機位置または締付位置に固定するために、クランプ・プランジャの上端部に係合する。
【0017】
少なくともクランプ・ホルダおよびクランプ・プランジャについて、これらをプラスチックもしくはシリコーンから作製するか、またはプラスチックもしくはシリコーンで被覆してもよいことが意図される。
【0018】
頭蓋テンプレートは、シリコーン・ストライプをその表面に有して、取り付けられた骨片を高摩擦保持することができる。さらに、頭蓋テンプレートは、凹部領域をシリコーン・ストライプ間に有して、固定ピン先端が頭蓋テンプレートに確実に接触しないようにすることができる。
【0019】
安定して固定するように保持フレームにねじ留め可能な剛性金属板に、頭蓋テンプレートをクリップ留めしてもよい。
【0020】
少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが保持フレームに堅固に取り付けられ、または予め組み込まれるシステムがさらに提供される。少なくとも1つの弓状クランプ・フレームは、頭蓋テンプレートの周りで横方向に延びることができる。少なくとも1つの弓状クランプ・フレームが仮想水平線に平行であってよいことも意図される。
【0021】
支持スタンドと、保持フレームと、頭蓋テンプレートを取り付けるための金属板と、少なくとも1つの弓状クランプ・フレームと、少なくともクランプ・ホルダ、クランプ・プランジャ、および少なくとも1つの固定ピンを備えた少なくとも1つのクランプ・アセンブリとを備える、頭蓋の奇形部位の外科的矯正を助けるためのシステムを含むキットが、本発明によりさらに提供される。キットは、様々な大きさおよび形状の頭蓋モデルを含むことができる。
以下で図面を参照する。ここでは、本発明が以下に記載された実施形態に限定されないことが当業者に自明である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】頭蓋テンプレートが取り付けられたシステム全体を示す図である。
【
図6】固定ピンによりクランプ・ホルダ内に配置されたクランプ・プランジャを示す図である。
【
図9】保持フレームに配置された頭蓋テンプレートを示す図である。
【
図10】弓状クランプ・フレームに取り付けられたクランプ・アセンブリを詳細に示す図である。
【
図13】頭蓋テンプレートの周りに横方向に延びる弓状クランプ・フレームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、特に乳児の頭蓋骨縫合早期癒合症の頭蓋の外科的矯正を助けるためのシステムを提供する。
【0024】
システムが1組の使い捨て3次元頭蓋テンプレート80に基づくが、滅菌され再利用可能な頭蓋テンプレート80を使用することも本発明の範囲内に含まれることが意図される。患者の大きさおよび所望の頭部形状に対応する頭蓋テンプレート80を、頭蓋冠を再形成するためのテンプレートとして使用する。
【0025】
前頭の水平曲率、前頭の垂直曲率、前頭の幅、前頭鼻骨角度、前頭後頭径、両頭頂骨径、および後頭モジュールの水平曲率半径を含む特徴群から、小児の頭蓋の形状特性を設定し、設定された特徴の1つまたは複数を選択し、選択された特徴から小児の頭蓋または頭蓋の一部の3次元モデルを準備することにより、個々の頭蓋テンプレート80を準備することができる。
【0026】
外科的処置では、頭蓋の奇形部位を患者から取り出して、複数の断片に切り分け、この断片に穴を開けるか、または断片を軟化させて、断片を柔軟にする。骨片を整形し、(中空)固定ピンを用いて頭蓋テンプレート80に締め付け、または手術用ねじ(例えばシャンツねじ)を各クランプの中心孔に貫通させて締め、下にある骨片をねじクランプ上に引く。骨片をクランプおよびねじまたはピンにより定位置に安定して保持した状態で、再構築された頭蓋冠を、頭蓋テンプレート80から取り外すことができ、回転可能な保持フレームのすべての位置で再形成することもできる。また、骨片を固定するためにキルシュナー鋼線を使用することも意図される。
【0027】
良好な適合を達成するために、必要であれば少し調節を行うことができ、その後、例えば再吸収可能な板および超音波により溶融した再吸収可能なピンを用いて、整形された骨片を内側から共に接合する。その後、再形成された頭蓋冠を患者の頭部に再び埋め込み、外科縫合により定位置に固定することができる。
【0028】
本発明によるシステムを含むキットは、様々な年齢の患者および様々な自然な頭部形状に対応する、様々な形状および大きさの頭蓋テンプレート80を含むことができる。その後、外科医は、最良の適合形状を有するモデルを選択することができる。したがって、提供されるシステムは、手術時間の最短化を助ける。
【0029】
システムは、ハンドツール、ドリル、および超音波ピン作動ツール等の市販の手術用ツールと共に、標準的な市販の再吸収可能で埋込み可能な板および付属品と組み合わせて使用することができる。
【0030】
通常の手作業による頭蓋再構築技術と比べて、新しいシステム、およびシステムの全体または一部としてシステムを含むキットは、外科的処置の時間を大幅に短縮して、患者に与えるリスクを低下させるべきである。加えて、手術の美的な成功を個々の外科医の技能に頼ることが少なくなり、経験の浅い外科医が患者に対して良好な結果を出すことができる。
【0031】
本発明を図により説明する。本発明が記載された実施形態に限定されないことが、当業者には自明である。
【0032】
図1は、保持フレーム10、弓状クランプ・フレーム30、クランプ・アセンブリ40(以下参照)、および頭蓋テンプレート80が支持スタンド10に取り付けられた、システム全体を示す図である。
【0033】
保持フレーム20(
図2)は、弓状クランプ・フレーム30が挿入される剛性構造を提供する。保持フレーム20(
図2)と支持スタンド10との接続部21によって、好ましくは高品質の鋼から作製された弓状クランプ・フレーム30と再構築された頭蓋冠と共に、保持フレーム20全体が所望の作業角度まで回転することができる。頭蓋テンプレート80上に再形成された、固定され再構築された骨片を反転させて、頭蓋冠の内側への接近を容易にすることも可能である。接続部21の回転点は、作業領域の横方向に位置して、再配置された骨片の内側で作業するときに、外科医の妨げとなるシステムの部品がないようにすることが好ましい。
【0034】
少なくとも1つ、または好ましくは3つの弓状クランプ・フレーム30を保持フレーム20に堅固に取り付け、または予め組み付けることも意図される。弓状クランプ・フレーム30の1つは、仮想水平線、好ましくは、最下部の弓状クランプ・フレーム30に平行であってよい。
【0035】
弓状クランプ・フレーム30は、矩形横断面を有することができ、締め付けられたクランプ・ホルダ50が弓状クランプ・フレーム30の周りでねじれないようにする。クランプ・フレーム30は、締付け荷重に耐えるように垂直高さが比較的大きく、かつ外科的処置中に外科医の視界を遮ることのないように水平寸法が比較的小さくなるように構成される。
【0036】
弓状クランプ・フレーム30(
図3)は、半径方向凹部31を備えて、いくつかの別個の締付位置をもたらすことができる。クランプ・ホルダ50(図示せず)はこれらの凹部31に嵌入し、固定ピン70(
図7参照)の先端72が頭蓋テンプレート80(
図8参照)に接触できない画定された位置のみに、骨を確実に締め付けることができるようにする。
【0037】
クランプ・ホルダ50を弓状クランプ・フレーム30の両側に配置して、外科医に締付位置の選択肢を与えることができる。クランプ・ホルダ50を180度反転させることにより、凹部31の各位置がクランプ・ホルダ50のための2つの異なる位置となる。
【0038】
弓状クランプ・フレーム30は、クランプ・ホルダ50および固定ピン70と共に、予め組み立てられた使い捨てサブアセンブリを形成するためのものである。固定ピン70を金属から作製することが好ましく、キャップ71はプラスチックから作製することができる。クランプ・アセンブリ40のすべての他の部品を、プラスチックまたはシリコーンから作製することがさらに好ましい。この場合も、使用される材料は特定の必要に応じて変えることができる。プラスチックという用語は、特に、ポリアミド等の合成ポリマーを含む。
【0039】
クランプ・アセンブリ40(
図4)を片手で弓状クランプ・フレーム30に配置し、弓状クランプ・フレーム30から解放することができる。
【0040】
クランプ・プランジャ50を片手で骨片に押し付けることができると有利である。骨片が後方へ動くことを防止するラチェット61を使用することが意図される。
【0041】
クランプ・ホルダ50(
図5)は、射出成形プラスチックから作製することができ、使い捨てにすることができる。頭蓋テンプレート側のクランプ・プランジャの端部は、高摩擦面を設けるために、シリコーンまたはシリコーン・リングまたはその他の等価の材料を含むことができる。
【0042】
クランプ・ホルダ50が(ばね押し)フック51を用いてクランプ・フレーム30にクリップ留めされ、フック51が弓状クランプ・フレーム30下方のアンダーカットに係合することが意図される。クランプ・プランジャ60を弓状クランプ・フレーム30から離して偏倚させる、クランプ・ホルダ50側のばねアーム52は、フック51を確実に係合したままにするためのものであり、また、正しいフック係合の可聴フィードバックをクリックの形で確実に与え、触覚フィードバックをレバーの動きの形で確実に与える。解放レバー54を設けて、クランプ・ホルダ50を弓状クランプ・フレーム30から解放し、例えば、クランプ・プランジャ50を再位置決めすることができる。
【0043】
ラチェット爪53(
図6b参照)およびラチェット解放レバー62と、クランプ・ホルダ解放レバー54、フック51、およびばねアーム52を有するクランプ・フレーム・クリップとを備えたクランプ・ホルダ50は、
図5aに示すように単一の射出成形部品であってよい。
【0044】
図5bは、弓状クランプ・フレーム30に固定されたクランプ・アセンブリ40の横断面を示す。フック51が、弓状クランプ・フレーム30に重なる「成形時」位置に示されることに注目すべきである。固定ピン70はクランプ・プランジャ60に挿入される。
【0045】
クランプ・プランジャ60を、クランプ・ホルダ50(
図6)の貫通孔に予め組み付けることができる。外科医は、クランプ・プランジャ60を頭蓋テンプレート80側に押すことができ、クランプ・プランジャ60をラチェット61上に摺動させる。ラチェット61は、クランプ・プランジャ60の望ましくない外方への動きを防止し、締付力を確実に維持できるようにする。ラチェット解放レバー62を設けてラチェットを解放することができるため、希望に応じて、ラチェットを解放し、クランプ・プランジャ60を後退させることができる(
図6b)。
【0046】
初期位置では、ラチェット爪53をより深い凹部に位置させることができる。凹部は、使用前の保管中にラチェット爪53における応力緩和を防止し、通常の使用中にラチェット爪53がラチェット61に対して確実にばね押しされるようにする。
【0047】
骨固定ピン70(
図7)の端部におけるキャップ71の意図した使用により、道具を使用せずにピン70を締めることができ、さらに、追加のトルクを加えて、骨片をねじ留めするときの外科医の感触を強化する。
【0048】
固定ピン70は、各クランプ・アセンブリ40に予め組み付けられる。バヨネット機能を使用して、ピン先端72を最初に後退させる、すなわち、骨から離して保持する。予め組み付けられた固定ピン70は、手術中に装置を組み立てるのに必要な時間を短縮するという利点を有し、後退した固定ピン先端72により、処置中に外科医が怪我をする危険性が低下する。
【0049】
固定ピン・キャップ71は、バヨネット結合を含むことができる。これにより、クランプを配備したときに、固定ピン70が意図せず骨に押し込まれることを防止する。固定ピン70を骨に挿入するために、外科医は、固定ピン・キャップ71をわずかに引いてねじった後に、軸方向および半径方向に自由に動く位置まで固定ピン・キャップ71を内方へ押さなければならない。
【0050】
頭蓋冠の再構築後、固定ピン70を初期位置に引き戻すことができ、鋭利な固定ピン先端72で外科医または患者が怪我をするおそれが確実になくなる。したがって、クランプ・プランジャ60のヘッドで解放されなければならないバヨネット結合を使用することが意図される。
【0051】
本発明による頭蓋テンプレート80は、高摩擦保持をもたらすためにシリコーン・ストライプ81の使用を含んでもよい(
図8)。骨をシリコーン・ストライプ81間で締め付けることができるため、骨が滑りにくくなる。頭蓋テンプレート80はシリコーン・ストライプ81間に凹部領域を有し、固定ピン先端72(図示せず)が確実に頭蓋テンプレート80に接触しなくなる。
【0052】
外科医は様々な頭蓋テンプレート80から選択することができ、これらの頭蓋テンプレート80は、保持フレーム20にねじ留めされる剛性金属板82に適切な頭蓋テンプレート80をクリップ留めする共通の取付けシステム(クリップイン板)を共有する(
図9)。
【0053】
骨片を頭蓋テンプレート80に配置した後、頭部形状を取り外す前に、再構成された頭蓋または頭蓋の一部を反転させることができ、これにより、骨が固定ピン70にしっかりと保持されていない場合に、骨片が落下する危険性が低下する。
【0054】
図10は、弓状クランプ・フレーム30に取り付けられたクランプ・アセンブリ40の別の実施形態を示す。
図11aおよび
図11bでは、クランプ・アセンブリ40の両側がより詳細に示される。一側で、クランプ・ホルダ50は、弓状クランプ・フレーム30(図示せず)に堅固に組み付けるためのフック51を提供する。
図11aに見られるように、クランプ・ホルダ解放レバー54はフック51を解放することができる。
【0055】
ラチェット解放レバー62によって、クランプ・プランジャ60をクランプ・ホルダ50内で調節することができる。クランプ・ホルダ50内のクランプ・プランジャ60の選択位置を安全かつ堅固に固定するために、ラチェット・ロック55が追加され、
図11aおよび
図11bに見られるように、クランプ・プランジャ60をクランプ・ホルダ50内に固定するために、このラチェット・ロック55を押すことができる。
【0056】
図12は、クランプ・アセンブリ40全体の横断面を示し、ここでは固定ピン70がクランプ・プランジャ60に挿入済みである。クランプ・アセンブリ40の左側に見られるように、クランプ・プランジャ60をクランプ・ホルダ50内に固定するために、ラチェット・ロック55が押し下げられる。クランプ・アセンブリ40を弓状クランプ・フレーム30上に固定するために、クランプ・ホルダ50のフック51(図示せず)が弓状クランプ・フレーム30(図示せず)にしっかりと係合するまで、クランプ・ホルダ50を弓状クランプ・フレーム30上へ押し下げる。次のステップでは、固定される骨片に接触するまでクランプ・プランジャ60を押さなければならない。クランプ・プランジャ60をこの位置に固定するために、ラチェット・ロック55を押し下げて、クランプ・プランジャ60をクランプ・ホルダ50内にロックしなければならない。次のステップでは、固定ピン70を時計方向に少なくとも4分の1回転させて、その「待機」位置から解放しなればならない。次に、固定する骨片に固定ピン70を押し込むことができ、固定ピン70のキャップ71を時計方向に回転させる。
図10〜
図12では、骨片を固定する固定ピン70として、キルシュナー鋼線を使用する。
【0057】
固定ピン70を固定された骨片から解放するために、例えば、キルシュナー鋼線を反時計方向に4分の1回転させることにより、キルシュナー鋼線を緩めてその待機位置から引き上げ、固定ピン70を再びその待機位置に固定しなければならない。固定ピン70をクランプ・プランジャ60から完全には取り外す必要がないことが、反転したクランプ・アセンブリ40の利点である。
【0058】
クランプ・プランジャ60の位置を調節しなければならない場合、ラチェット・ロック55を上方に引くことによって簡単に解放しなければならない。ラチェット解放レバー62をクランプ・ホルダ50の側に引くことにより、ラチェット61を解放することができる。次のステップで、クランプ・プランジャ60を上方または下方に調節することができる。必要に応じて、クランプ・ホルダ解放レバー54(図示せず)を押すことにより、クランプ・ホルダ50を弓状クランプ・フレーム30(図示せず)から解放することができる。
【0059】
図13は、頭蓋テンプレート80の周りで横方向に延びる弓状クランプ・フレーム30を示す。頭蓋テンプレート80の一側で弓状クランプ・フレーム30にクリップ留めされたクランプ・アセンブリ40が示される。頭蓋テンプレート80の周りで横方向に延びるこのような弓状クランプ・フレームを、予め組み込むことができる。固定ピン70(図示せず)を頭蓋テンプレート80の側部で使用可能であることが有利である。
【0060】
本発明によるシステムは、以下の利点を有する。
・装置に対する初期設定時間が最短になる。
・複数のクランプおよび固定具と比べて、部品数が減少する。
・フレームに対してクランプを迅速に片手で取り付け、取り外せる。
・骨片を締め付けるための、解放可能なラチェット・プランジャ。
・骨片の初期の締付け中に、ピン先端が後退し、しっかりと保持される。
・ピン先端が頭蓋または頭部テンプレートに接触して、頭蓋テンプレートの断片を追いやることを避ける。
・ヒトの組織に接触するすべての部品が使い捨て(頭蓋テンプレート80、クランプ)であるため、骨および脳組織からの相互汚染の危険性が低下する。
・手術の骨設定部分の間に作業角度を自由に設定できるため、希望に応じて、水平または略水平の作業面に骨を配置することができる。
・プランジャ足部と頭蓋テンプレートと間の高摩擦面により、骨が定位置から滑り出ることがない。
・クランプの軸方向位置の調節が迅速かつ容易であるため、初期の位置決めについては緩い締付力を加えることができ、骨片の最終の位置決めについては強い締付力を加えることができる。
【0061】
以下の設計代替案が本発明の範囲内に含まれる。
・剛性保持フレーム20の代わりとしての、クランプ・フレーム30両側の別個の保持板。
・骨固定ピン・ヘッドをバヨネット機能にしっかりと保持するためのばねラム(戻り止め)。骨固定ピン・ヘッドは、戻り止めばね力に逆らってねじることにより解放される。
【符号の説明】
【0062】
10 支持スタンド
20 保持フレーム
21 接続部
30 弓状クランプ・フレーム
31 半径方向凹部
40 クランプ・アセンブリ
50 クランプ・ホルダ
51 フック
52 ばねアーム
53 ラチェット爪
54 クランプ・ホルダ解放レバー
55 ラチェット・ロック
60 クランプ・プランジャ
61 ラチェット
62 ラチェット解放レバー
70 固定ピン
71 キャップ
72 固定ピン先端
80 頭蓋テンプレート
81 シリコーン・ストライプ
82 金属板