(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113867
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/18 20060101AFI20170403BHJP
H01H 73/12 20060101ALI20170403BHJP
H01H 73/20 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
H01H73/18 Z
H01H73/12
H01H73/20 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-560516(P2015-560516)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-510161(P2016-510161A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】CN2013072788
(87)【国際公開番号】WO2014134844
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】201320105054.5
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515244335
【氏名又は名称】何成祥
【氏名又は名称原語表記】HE,Chengxiang
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】何成祥
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−138173(JP,A)
【文献】
実開平05−070123(JP,U)
【文献】
特開2007−330044(JP,A)
【文献】
実開平03−060734(JP,U)
【文献】
特開2007−30768(JP,A)
【文献】
特開2001−180372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/18−73/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、前記筐体に位置する入力側の配線端子と出力側の配線端子、及び前記筐体内に位置する可動接点と固定接点を含む遮断器において、前記筐体内部において隣接する2極の配線端子のうちの1極の入力側の配線端子と、もう1極の出力側の配線端子との間には通路が備えられ、前記通路内にはこれら2つの配線端子を接続する導体が設けられており、前記通路は、前記筐体の背部に開設された凹溝であり且つ絶縁プレートで被覆されて構成され、前記導体は前記凹溝に位置する、ことを特徴とする遮断器。
【請求項2】
前記導体は銅ブスバーである、ことを特徴とする請求項1記載の遮断器。
【請求項3】
前記配線端子は孔付き銅柱及び銅ブスバーに接続されることを特徴とする請求項2記載の遮断器。
【請求項4】
前記遮断器は3極交流直流遮断器であり、前記筐体内における入力側の第3極配線端子と出力側の第2極配線端子の間、或いは入力側の第1極配線端子と出力側の第2極配線端子の間には通路を備え、前記銅ブスバーが前記通路内に位置し、両端が対応する配線端子にそれぞれ接続される、ことを特徴とする請求項2記載の遮断器。
【請求項5】
前記遮断器は4極交流直流遮断器であり、前記筐体内における入力側の第2極配線端子と出力側の第1極配線端子の間、入力側の第1極配線端子と出力側の第2極配線端子の間、入力側の第3極配線端子と出力側の第4極配線端子の間、入力側の第4極配線端子と出力側の第3極配線端子の間にはそれぞれ通路を備え、
2本の銅ブスバーが2つの通路内に位置して対応する配線端子にそれぞれ接続される、ことを特徴とする請求項2記載の遮断器。
【請求項6】
前記筐体内にはパイロットランプが設けられており、前記パイロットランプは制限抵抗と直列に遮断器における出力側の回路に接続されており、前記筐体のパネルにおける前記パイロットランプに対応する位置にはウィンドウが備えられる、ことを特徴とする請求項1記載の遮断器。
【請求項7】
前記遮断器は直流遮断器であり、前記パイロットランプは制限抵抗と直列に遮断器における出力側の正極と負極の間に接続される、ことを特徴とする請求項6記載の遮断器。
【請求項8】
前記遮断器は交流遮断器であり、前記パイロットランプと制限抵抗が直列に遮断器における出力側の各極間に接続される、ことを特徴とする請求項6記載の遮断器。
【請求項9】
前記パイロットランプはネオンランプ又はLEDランプである、ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮断器の技術分野に関し、特に、開放時のアーク放電の消滅が可能な遮断器に関する。
背景技術
【0002】
周知のように、直流遮断器は交流遮断器のように零点でのアーク放電の消滅機能を有さないため、直流の場合には短絡電流(ひいては倍数の大きくない故障電流)の遮断、アーク放電の消滅のいずれにおいても困難が伴う。よって、直流遮断器における開放時のアーク放電の消滅は交流遮断器よりもはるかに難しく、現在のところ、一般的には可動接触子と固定接触子間の距離を拡大するという解決策がとられている。通常は、3極又は4極の交流遮断器のうち2極を直列接続して2極直流遮断器を形成し、うち1極又は2極を2接点として、このような接点直列方式で可動接触子と固定接触子の距離を拡大する。そして、各接点によりアークエネルギーの一部を負担することで、アーク放電の消滅(アーク消滅)という目的を達成している。現在一般的な接続方式を、
図1,
図2,
図3に示す。
【0003】
図1では、3極遮断器を外部配線であるケーブル又は銅ブスバー400を用いて直流遮断器としており、配線方式として、スイッチの上下(入力端子と出力端子の間)を直列接続している。この方式では電流方向は一致するものの配線が複雑であり、且つ入力線とケーブルの外部配線とが交差することから十分に安全とはいえず、取り付けにも不便である。
【0004】
図2では、4極遮断器を外部配線であるケーブル又は銅ブスバー400を用いて直流遮断器としているが、外部に露出する銅ブスバー400が十分に安全とはいえず、絶縁材や保護対策を別途施す必要がある。また、配線方式として、スイッチの下と下(出力端子間)を直列接続及び上と上(入力端子間)を直列接続しており、電流方向も一致しない。
【0005】
図3では、4極遮断器を外部配線であるケーブル又は銅ブスバー400を用いて直流遮断器としており、配線方式として、スイッチの上下を直列接続している。この方式では電流方向は一致するものの配線が複雑であり、且つ入力線とケーブルの外部配線とが交差することから十分に安全とはいえず、取り付けにも不便である。
【0006】
以上の各種遮断器は、外部直列ケーブル又は銅ブスバー或いは導線によって直流遮断器とされているが、以下のような欠点がある。
【0007】
1.配線が複雑であり、絶縁材や保護対策を別途施す必要がある。
【0008】
2.銅ブスバー又は導線が外部と接触するため安全性に劣る。
【0009】
3.見栄えが悪く、より広い取り付けスペースを必要とする。
【0010】
4.遮断器の開閉状態を明確に示すことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術における不備を解消すべく、配線がシンプルであり、安全性に優れ、省スペース且つ見栄えの良いアーク放電の消滅機能を備えた遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的課題を解決するために、本発明では以下の技術方案を用いた。
【0013】
筐体、筐体に位置する入力側の配線端子と出力側の配線端子、及び筐体内に位置する可動接点と固定接点を含む遮断器において、前記筐体内部における導体を接続するための2つの配線端子の間には通路が備えられ、前記通路内には、2つの配線端子を接続する導体が設けられている、ことを特徴とする遮断器。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、前記通路は筐体の背部に開設された凹溝であって、絶縁プレートで被覆されてなり、前記導体は前記凹溝に位置する。このような構造には、加工や組み立てがしやすいとの利点がある。
【0015】
具体的な実施例において、前記導体は銅ブスバーである。
【0016】
具体的な実施例において、前記配線端子には孔付き銅柱と前記銅ブスバーの端部が接続されている。
【0017】
本発明の一実施例において、前記遮断器は3極交流直流遮断器であって、前記筐体内における入力側の第3極配線端子と出力側の第2極配線端子(或いは入力側の第1配線端子と出力側の第2配線端子)の間に通路を備え、前記銅ブスバーが前記通路内に位置し、両端が対応する配線端子にそれぞれ接続される。
【0018】
本発明におけるその他の実施例において、前記遮断器は4極交流直流遮断器であって、前記筐体内における入力側の第2極配線端子と出力側の第1極配線端子(或いは入力側の第1極配線端子と出力側の第2極配線端子)の間と、入力側の第3極配線端子と出力側の第4極配線端子(或いは入力側の第4極配線端子と出力側の第3極配線端子の間)とに通路を備え、2本の銅ブスバーが2つの通路内に位置して対応する配線端子にそれぞれ接続される。
【0019】
遮断器の開閉状態をより明瞭かつ正確に示せるよう、前記筐体内にはパイロットランプが設けられ、前記パイロットランプが制限抵抗と直列に出力側の回路に設けられる。また、前記筐体のパネルにおける前記パイロットランプに対応する位置にはウィンドウが備えられる。
【0020】
直流遮断器の場合、パイロットランプと制限抵抗は直列に遮断器における出力側の正極と負極の間に接続される。スイッチが閉じられると、当該直流遮断器がオンとなったことがパイロットランプの発光により示される。
【0021】
交流遮断器の場合、パイロットランプと制限抵抗は出力側の極(相)と極(相)の間に直列に接続されて、交流遮断器におけるA、B、C三相の欠相の有無を示す。スイッチが閉じられるとパイロットランプは発光し、いずれかの相の電源供給が遮断されると、当該相のパイロットランプが消灯していずれかの相に電源異常が発生したこと、即ち欠相を示す。
【0022】
前記パイロットランプはネオンランプ又はLEDランプである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、遮断器の筐体内部に通路を開設し、通路内において銅ブスバーを用いて配線端子を直列接続することで、電流の方向を一致させられるとともに、配線が規則正しく簡潔となるため、感電の危険が回避され、外部と接触しないことから非常に安全となる。また、パネルにスイッチ状態表示装置が配置され、スイッチの開閉状態を示すことが可能である。
【0024】
以上より、本発明は、配線がシンプルで安全性に優れ、省スペースであるとともに見栄えが良く、開閉状態の表示が明瞭且つ正確との利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下に、図面と具体的実施形態を組み合わせて、本発明について詳細に説明する。
【0026】
【
図1】
図1は、3極遮断器の外部配線回路を示す図である。
【0027】
【
図2】
図2は、4極遮断器の外部配線における第1の形態を示す図である。
【0028】
【
図3】
図3は、4極遮断器の外部配線における第2の形態を示す図である。
【0029】
【
図4】
図4は、実施例1の3極交流直流遮断器を示す斜視図である。
【0030】
【
図5】
図5は、実施例1の3極交流直流遮断器を示す正面図である。
【0031】
【
図6】
図6は、実施例1の3極交流直流遮断器を示す背面図である。
【0032】
【
図7】
図7は、実施例1の直流遮断器の内部配線を示す回路図である。
【0033】
【
図8】
図8は、実施例1の交流遮断器の内部配線を示す回路図である。
【0034】
【
図9】
図9は、実施例2の4極交流直流遮断器を示す斜視図である。
【0035】
【
図10】
図10は、実施例2の4極交流直流遮断器を示す正面図である。
【0036】
【
図11】
図11は、実施例2の4極交流直流遮断器を示す背面図である。
【0037】
【
図12】
図12は、実施例2の直流遮断器の内部配線を示す回路図である。
【0038】
【
図13】
図13は、実施例2の交流遮断器の内部配線を示す回路図である。
【0039】
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の遮断器は、筐体、筐体に位置する入力側の配線端子と出力側の配線端子、及び筐体内に位置する可動接点と固定接点を含み、筐体内部における導体を接続するための2つの配線端子の間に通路が備えられ、前記通路内に2つの配線端子を接続する導体が設けられている。遮断器の筐体内部に通路を開設し、通路内において銅ブスバーを用いて配線端子を直列接続することで、電流の方向を一致させられるとともに、配線が規則正しく簡潔となるため、感電の危険が回避され、外部と接触しないため非常に安全となる。
【0041】
加工や組み立てがしやすいよう、通路は筐体の背部に開設された凹溝であって、絶縁プレートで被覆されてなり、導体が前記凹溝に位置する。
【実施例】
【0042】
本発明の技術方案及びその特徴を明確に説明すべく、以下に実施例により詳述する。
【0043】
実施例1
【0044】
図4〜
図6は3極交流直流遮断器を示す。当該3極交流直流遮断器は筐体100を含み、筐体100は上部に入力側の第1極配線端子111、第2極配線端子112、第3極配線端子113を備え、下部に出力側の第1極配線端子121、第2極配線端子122、第3極配線端子123を備え、内部に固定接点201及び可動接点202を備える(
図7参照)。
【0045】
図4〜
図6に示すように、筐体100背部における入力側の第3極配線端子113と出力側の第2極配線端子122の間には凹溝300が開設されており、凹溝300内には銅ブスバー400が配置されている。当該銅ブスバー400の両端は、入力側の配線端子113と出力側の配線端子122にそれぞれ接続されている。
【0046】
具体的には、
図14に示すように、銅ブスバー400の両端が孔付き銅柱401とともに配線端子113及び配線端子122にそれぞれ固定されている。銅ブスバー400は筐体100背部の凹溝300内に嵌合しており、筐体100の背部はエポキシ絶縁プレート(図示しない)で被覆されて保護及び隔絶されている。遮断器の内部は直列に配線されており、安全且つ見栄えが良い。内部配線については
図7に示す。
【0047】
図7に示すように、直流遮断器の開閉状態を示せるよう、更に状態表示装置を含む。
図7に示すように、当該状態表示装置は直列に接続されたパイロットランプ501及び制限抵抗502からなり、遮断器の出力側における正極と負極(即ち、出力側の第2極と第1極)の間に接続されて、直流スイッチの開閉を示す。パイロットランプ501は、ネオンランプ又はLEDランプとすればよい。
【0048】
図8に示すように、交流遮断器については、状態表示装置のパイロットランプ501と制限抵抗502を出力側回路の各極間(即ち、出力側の第1極と第2極、第2極と第3極、第3極と第1極の間)に設けて交流スイッチの開閉を表示してもよい。
【0049】
更に、
図5に示すように、筐体100のパネルにおけるパイロットランプ501に対応する位置には、パイロットランプを発光させるためのウィンドウ503が備えられ、遮断器が閉じられると、回路がオンとなったことをウィンドウ503から発光される光によって示すことができる。
【0050】
実施例2
【0051】
図9〜
図11は4極交流直流遮断器を示しており、入力側と出力側に幾つかの極を備えている点で実施例1とは異なる。即ち、筐体100の上部には、入力側の第1極配線端子131、第2極配線端子132、第3極配線端子133、第4極配線端子134がそれぞれ備えられ、筐体100の下部には、出力側の第1極配線端子141、第2極配線端子142、第3極配線端子143、第4極配線端子144がそれぞれ備えられる。
【0052】
図9と
図11に示すように、筐体100背部における入力側の配線端子134と出力側の配線端子143の間、及び入力側の配線端子131と出力側の配線端子142の間には凹溝300がそれぞれ開設されている。そして、2本の銅ブスバー400が当該2つの凹溝300内にそれぞれ嵌合されている。第1の銅ブスバー400の両端は、入力側の配線端子131と出力側の配線端子142とにそれぞれ接続されており、第2の銅ブスバー400の両端は、出力側の配線端子134と出力側の配線端子142とにそれぞれ接続されている。なお、内部配線については
図12に示す。
【0053】
図12に示すように、直列接続されるパイロットランプ501と制限抵抗502は、遮断器における出力側の正極と負極(即ち、出力側の第3極と第2極)の間に接続されて、直流スイッチの開閉を示す。
【0054】
図13に示すように、状態表示装置のパイロットランプ501と制限抵抗502は、出力側回路の各段におけるL線とN線の間(即ち、出力側の第1極と第2極、第2極と第3極、第3極と第1極の間)に設けられて交流スイッチの開閉を表示してもよい。
【0055】
その他の構造及び実施例については同様のため、ここでは重複に説明しない。
【0056】
ただし、当業者としては、以上の実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明を限定する主旨ではないものと解釈すべきである。本発明の実質的思想の範囲内であれば、以上の実施例に対する変更、変形はいずれも本発明における特許請求の範囲に含まれる。