(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片としたときに、JIS K7171(2008)に準拠する、試験速度2mm/分、支点間距離64mmの条件の3点曲げ試験によって測定される曲げ強さが110MPa以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の義歯床用材料。
JIS K7111−1(2012)に規定される形状Aのノッチが設けられた、長さ80mm、幅10mm、残り幅8mm、厚さ4mmのシングルノッチ付き試験片としたときに、JIS K7111−1(2012)に準拠する、エッジワイズ衝撃の条件のシャルピー衝撃試験によって測定される衝撃強さが、1.41kJ/m2以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の義歯床用材料。
JIS K7111−1(2012)に規定される形状Aのノッチが設けられた、長さ80mm、幅10mm、残り幅8mm、厚さ4mmのシングルノッチ付き試験片としたときに、JIS K7111−1(2012)に準拠する、エッジワイズ衝撃の条件のシャルピー衝撃試験によって測定される衝撃強さが2.0kJ/m2以上であり、かつ、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片としたときに、JIS K7171(2008)に準拠する、試験速度2mm/分、支点間距離64mmの条件の3点曲げ試験によって測定される曲げ強さが100MPa以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の義歯床用材料。
長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片としたときに、JIS K7171(2008)に準拠する、試験速度2mm/分、支点間距離64mmの条件の3点曲げ試験によって測定される曲げ強さが110MPa以上であり、スルホン系樹脂及びエーテルケトン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である高分子成分を含有する義歯床用材料。
JIS K7111−1(2012)に規定される形状Aのノッチが設けられた、長さ80mm、幅10mm、残り幅8mm、厚さ4mmのシングルノッチ付き試験片としたときに、JIS K7111−1(2012)に準拠する、エッジワイズ衝撃の条件のシャルピー衝撃試験によって測定される衝撃強さが、1.41kJ/m2以上である請求項15又は請求項16に記載の義歯床用材料。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「数値A〜数値B」は、「数値A以上数値B以下」と同義である。
また、本明細書において、圧縮試験の降伏点強度を、単に「降伏点強度」と略称することがある。即ち、本明細書中において、単なる「降伏点強度」との語は、圧縮試験の降伏点強度を意味する。
【0014】
〔義歯床用材料〕
以下、本発明の義歯床用材料の第1態様及び第2態様について説明する。
【0015】
≪第1態様≫
第1態様の義歯床用材料は、アクリル系樹脂を含む重量平均分子量120万以上の高分子成分を含有する。
第1態様の義歯床用材料によれば、義歯床としたときの耐久性(圧縮試験の降伏点強度;以下、「降伏点強度」と略称することがある)が向上する。これにより長期間の使用による義歯床の破断が抑制される。この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
即ち、義歯床の形状は、義歯使用者の口腔に合わせた複雑な形状となっている。このため、咬み合せによって有床義歯にかかる力が義歯床の一部に局所的に集中し、その結果、義歯床用材料として硬い材料(弾性率が高い材料)を用いた場合であっても、義歯床が破断する場合があると考えられる。また、使用中に何らかの原因によって義歯床に微細なクラックが発生すると、クラックを起点として義歯床が破断しやすくなるとも考えられる。
これらの点に関し、義歯床用材料として、単純に「硬い材料」(弾性率が高い材料)というだけでなく、多方向からかかる力に対して耐久性が高い、または多方向から力がかかってもクラックが発生しにくい材料、即ち、3点曲げ試験における曲げ強さ(以下、単に「曲げ強さ」ともいう)が高い材料を用いることで、義歯床としたときの耐久性(降伏点強度)を向上でき、ひいては、有床義歯を長期間使用した時の義歯床の破断を抑制できると考えられる。
上記曲げ強さに関し、本発明者等は、アクリル系樹脂を含む重量平均分子量120万以上の高分子成分を含有する義歯床用材料が、高い曲げ強さを示すことを見出した。
従って、第1態様の義歯床用材料によれば、義歯床としたときの耐久性(降伏点強度)を向上でき、ひいては、有床義歯を長期間使用した時の義歯床の破断を抑制できると考えられる。
【0016】
また、第1態様の義歯床用材料によれば、義歯床としたときの耐久性(降伏点強度)を向上できるので、石膏型を用いる従来の方法によって作製される義歯床と比較して、厚みが薄い義歯床(即ち、軽量でかつ装着感に優れた義歯床)を作製することができる。
【0017】
ここで、義歯床用材料の「3点曲げ試験における曲げ強さ」とは、義歯床用材料を、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片としたときに、JIS K7171(2008)に準拠する、試験速度2mm/分、支点間距離64mmの条件の3点曲げ試験によって測定される曲げ強さを指す(以下、同様である)。
上記3点曲げ試験における曲げ強さは、例えば、インテスコ社製の5本曲げ試験機2001−5型を用いて測定することができる。
上記試験片は、第1態様の義歯床用材料から、切削などの方法により採取することができる。
以下では、「3点曲げ試験における曲げ強さ」を、単に「曲げ強さ」ということがある。
また、以下では、「長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm」を、「80mm×10mm×4mmサイズ」ということがある。
【0018】
第1態様における高分子成分の重量平均分子量(Mw)は120万以上である。
高分子成分のMwが120万以上であることにより、義歯床用材料の曲げ強さが向上し、ひいては義歯床としたときの耐久性(降伏点強度)が向上する。
また、第1態様における高分子成分のMwが120万以上であることは、切削によって義歯床を作製する際の切削加工性の点(例えば、切削時の割れ及び欠けの少なくとも一方を抑制する点)でも有利である。
【0019】
高分子成分のMwとしては、上記曲げ強さをより向上させる観点から、150万以上が好ましく、200万以上が更に好ましく、250万以上が更に好ましく、300万以上が更に好ましく、350万以上が更に好ましく、400万以上が更に好ましい。
また、高分子成分のMwは、生産性の観点から、800万以下に調整されるのが好ましい。
【0020】
第1態様の義歯床用材料の曲げ強さは、義歯床としたときの耐久性(降伏点強度)をより向上させる観点から、100MPa以上であることが好ましく、110MPa以上であることがより好ましく、120MPa以上であることが更に好ましく、120MPa超であることが更に好ましく、121MPa以上であることが更に好ましい。
一方、曲げ強さの上限には特に制限はないが、切削加工性の観点から、上記曲げ強さは200MPa以下であることが好ましい。
【0021】
また、第1態様の義歯床用材料は、義歯床としたときの耐衝撃性の観点から、衝撃強さが1.41kJ/m
2以上であることが好ましい。
【0022】
ここで、義歯床用材料の「衝撃強さ」とは、義歯床用材料を、JIS K7111−1(2012)に規定される形状Aのノッチが設けられた、長さ80mm、幅10mm、残り幅8mm、厚さ4mmのシングルノッチ付き試験片としたときに、JIS K7111−1(2012)に準拠する、エッジワイズ衝撃の条件のシャルピー衝撃試験によって測定されるシャルピー衝撃強さを指す(以下、同様である)。
上記衝撃強さ(シャルピー衝撃強さ)は、例えば、東洋精機製作所社製の恒温槽付き衝撃試験機DG−UB型を用いて測定することができる。
上記シングルノッチ付き試験片は、第1態様の義歯床用材料から、切削などの方法により採取することができる。
【0023】
上記衝撃強さが1.41kJ/m
2以上であると、義歯床としたときの耐衝撃性がより向上する。
上記衝撃強さは、2.0kJ/m
2以上であることがより好ましい。
上記衝撃強さの上限には特に制限はないが、上限は、例えば11.0kJ/m
2とすることができる。衝撃強さの上限は、6.0kJ/m
2であってもよく、また、4.0kJ/m
2であってもよい。
【0024】
また、第1態様の義歯床用材料は、曲げ弾性率が、2500MPa〜3700MPaであることが好ましく、2650MPa〜3700MPaであることがより好ましく、2700MPa〜3700MPaであることが更に好ましい。
また、上記曲げ弾性率の上限は3200MPaであってもよい。
ここで、「曲げ弾性率」とは、上述した「曲げ強さ」と同様の条件の3点曲げ試験によって測定される曲げ弾性率を指す。曲げ弾性率の算出方法は、「割線法」とする。
【0025】
<高分子成分>
第1態様における高分子成分は、アクリル系樹脂を含み、かつ、重量平均分子量(Mw)が120万以上である。
ここでいうMwは、高分子成分(全体)のMwを意味する。
言うまでもないが、高分子成分がアクリル系樹脂のみからなる場合には、高分子成分のMwとアクリル系樹脂のMwとが一致する。
高分子成分のMwの好ましい範囲は前述したとおりである。
【0026】
また、第1態様における高分子は、分子量分布(Mw/Mn)が、1.1〜20であることが好ましく、1.1〜15であることがより好ましく、1.1〜10であることが更に好ましく、1.1〜7.0であることが更に好ましく、1.5〜6.0であることが更に好ましく、2.0〜5.5であることが特に好ましい。
【0027】
本明細書中における重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、下記GPC測定方法により、測定された値を指す。
−GPC測定装置−
Shimadzu社製 LC−10AD
−カラム−
Shodex K−806L 30cm×2本
−サンプルの調製−
測定対象となる高分子成分を室温(20℃〜30℃)で溶媒(テトラヒドロフラン)へ溶解させ、濃度0.1%(w/v)のサンプル溶液を用意する。
−測定条件−
サンプル溶液100μLを移動相(例えば、テトラヒドロフラン)、カラム温度40℃、1.0mL/min.の流速でカラムに導入する。
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折率計(RI−101)で測定する。ポリメチルメタクリレート標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、高分子成分の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
なお、解析は、例えばデータ処理ソフトEmpower2 (Waters社製)を用いることができる。
【0028】
また、高分子成分の重量平均分子量(Mw)を120万以上としやすい点で、高分子成分に含まれるアクリル系樹脂としては、モノマーを重合させて得られたアクリル系樹脂、オリゴマー若しくはプレポリマーを重合させて得られたアクリル系樹脂、又は、オリゴマー若しくはプレポリマーと、モノマーと、の混合物を重合させて得られたアクリル系樹脂が好ましい。上記オリゴマー又は上記プレポリマーとしては、室温で流動性があるオリゴマー又はプレポリマーが特に好適である。
【0029】
通常の義歯用アクリル系樹脂は、室温で固体状であるポリマーと、モノマーと、の混合物を重合したアクリル系樹脂である。
しかし、第1態様におけるアクリル系樹脂として、室温で固体状であるポリマーと、モノマーと、の混合物を重合したアクリル系樹脂を用いた場合、アクリル系樹脂を含む高分子成分のMwを、120万以上(好ましくは150万以上)とすることが難しい傾向がある。
例えば、通常の義歯用アクリル系樹脂からなる義歯床は、室温で固体状の粉体となっている分子量が比較的高いアクリル系ポリマーと、アクリル系化合物のモノマーと、重合開始剤と、を混合し、流動性がある状態まで重合させた後、石膏型などに入れて加熱等によって硬化させることによって作製される。この義歯床の作製方法は、通常、歯科技工士によって実施される方法であり、重合速度が速いため、歯科技工士にとって都合が良いという利点がある。しかし、この方法では、出発原料である粉体とモノマーとの分子量の差が大きいため、アクリル系樹脂のMwが大きくなり難いと推測される。
上記通常の方法に対し、例えば、室温で流動性がある状態のオリゴマー若しくはプレポリマーのみ、又は、オリゴマー若しくはプレポリマーにモノマーを添加したものを、オリゴマー又はプレポリマーの重合温度近傍で数日〜数週間かけて重合することにより、重合度や重合の均一性を向上させることができる。これにより、アクリル系樹脂のMwを120万以上とすることができ、ひいては高分子成分のMwを120万以上とすることができると考えられる。
また、第1態様における高分子成分がゴムを含む場合には、オリゴマー若しくはプレポリマー、又は、オリゴマー若しくはプレポリマーにモノマーを添加したものと、ゴムと、を混合した後に重合させてもよい。
【0030】
(アクリル系樹脂)
高分子成分は、アクリル系樹脂を含む。
第1態様の義歯床用材料は、透明性が高いアクリル系樹脂を含有するため、着色の自由度が大きいという利点を有する。また、第1態様の義歯床用材料は、アクリル系樹脂を含有するため、市販のアクリル系人工歯との接着性に優れるという利点も有する。
第1態様における高分子成分は、アクリル系樹脂を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
本明細書中において、アクリル系樹脂とは、アクリル酸に由来する構造単位、メタクリル酸に由来する構造単位、アクリル酸エステルに由来する構造単位、及びメタクリル酸エステルに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種を含む重合体を指す。
即ち、本明細書中におけるアクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「アクリル系単量体」ともいう)を含む単量体成分を重合して得られた重合体である。
【0032】
アクリル系樹脂の原料の少なくとも一部であるアクリル系単量体は、単官能アクリル系単量体であってもよいし、多官能アクリル系単量体であってもよい。
単官能アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、一分子中にアクリロイル基を1つ含むアクリル酸エステル、一分子中にメタクリロイル基を1つ含むメタクリル酸エステル、等が挙げられる。
多官能アクリル系単量体としては、一分子中にアクリロイル基を2つ以上含むアクリル酸エステル、一分子中にメタクリロイル基を2つ以上含むメタクリル酸エステル、等が挙げられる。
【0033】
上記アクリル系樹脂として、より具体的には、
アクリル酸の単独重合体、
メタクリル酸の単独重合体、
アクリル酸エステルの単独重合体、
メタクリル酸エステルの単独重合体、
アクリル酸と他のモノマー(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、α−オレフィン(例えばエチレン)、等)との共重合体、
メタクリル酸と他のモノマー(例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、α−オレフィン(例えばエチレン)、等)との共重合体、
アクリル酸エステルと他のモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、α−オレフィン(例えばエチレン)、等)との共重合体、
メタクリル酸エステルと他のモノマー(例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、α−オレフィン(例えばエチレン)、等)との共重合体などが挙げられる。
【0034】
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸の直鎖アルキルエステル又は分岐鎖アルキルエステルがより好ましく、アクリル酸の直鎖アルキルエステルが更に好ましい。
また、アクリル酸エステルは、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子を含まないことが好ましい。
アクリル酸エステルとしては、アルキルエステルの部位に含まれるアルキル基の炭素数が1〜4であるアクリル酸アルキルエステルが更に好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが更に好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0035】
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸の直鎖アルキルエステル又は分岐鎖アルキルエステルがより好ましく、メタクリル酸の直鎖アルキルエステルが更に好ましい。
また、メタクリル酸エステルは、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子を含まないことが好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、アルキルエステルの部位に含まれるアルキル基の炭素数が1〜4であるメタクリル酸アルキルエステルがより好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが更に好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0036】
また、アクリル系樹脂は、反応性や生産性の観点から、単官能アクリル系単量体を含む単量体成分を重合して得られた重合体であることが好ましい。
アクリル系樹脂は、単官能アクリル系単量体を50質量%以上(好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上)含む単量体成分を重合して得られた重合体であることがより好ましい。
【0037】
単官能アクリル系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
義歯床用材料及び義歯床の物性(耐熱性)の観点からみると、単官能アクリル系単量体は、メタクリル酸及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルのそれぞれの好ましい範囲は前述のとおりである。
【0038】
アクリル系樹脂の好ましい形態として、上記単官能アクリル系単量体がメタクリル酸アルキルエステルである形態が挙げられる。以下、この形態のアクリル系樹脂を、「アクリル系樹脂X」ともいう。
アクリル系樹脂Xとして、好ましくは、メタクリル酸メチルを含む単量体成分を重合して得られた重合体(即ち、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む重合体)であり、特に好ましくはメタクリル酸メチルの単独重合体(ポリメタクリル酸メチル、即ち、ポリメチルメタクリレート(PMMA))である。
【0039】
アクリル系樹脂の別の好ましい形態として、上記単官能アクリル系単量体がメタクリル酸及びメタクリル酸アルキルエステルからなり、メタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとの合計量に対するメタクリル酸の量が、0質量%超15質量%以下(より好ましくは0.1質量%〜15質量%、更に好ましくは1質量%〜15質量%、更に好ましくは5質量%〜15質量%)である形態も挙げられる。以下、この形態のアクリル系樹脂を、「アクリル系樹脂Y」ともいう。
アクリル系樹脂Yは、アクリル系樹脂X(例えばPMMA)と比較して、義歯床用材料の曲げ強さ及び義歯床の耐久性(圧縮試験の降伏点強度)の点で有利である。
アクリル系樹脂Yとしては、メタクリル酸に由来する構造単位の含有量が15質量%以下である、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体が特に好ましい。
【0040】
第1態様における高分子成分は、アクリル系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
また、第1態様における高分子成分は、アクリル系樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。
但し、第1態様の義歯床用材料中におけるアクリル系樹脂の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、義歯床用材料の全量に対し、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0041】
(ゴム)
第1態様における高分子成分は、ゴムを含んでいてもよい。
第1態様における高分子成分がゴムを含む場合には、義歯床用材料の衝撃強さがより向上し、義歯床としたときの耐衝撃性がより向上する。
ゴムの種類としては、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、ブタジエン−アクリル系ゴム、ブタジエン−スチレン系ゴム、シリコーン系ゴム、等が挙げられる。
第1態様における高分子成分がゴムを含む場合、ゴムの種類は、適宜物性を考慮して選択すればよいが、硬度、耐衝撃性等の諸物性のバランスを考慮すると、ブタジエン系ゴム又はブタジエン−アクリル系ゴムが好ましい。
なお、第1態様における高分子成分がゴムを含む場合、高分子成分に含まれるゴムは、1種のみであっても2種以上であってもよい。
【0042】
上記ゴムは、ゴム状重合体(好ましくは架橋構造を有するゴム状重合体)に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られた重合体を含むことが好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂成分としては、ゴム状重合体とグラフト重合可能な単量体成分であれば特に制限されず、例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、N−置換マレイミド化合物、α,β−不飽和カルボン酸化合物、それらの無水物(例えば無水マレイン酸等)、等が挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を包含する概念である(以下、同様である)。
【0044】
ゴム状重合体としては、アクリル系(共)重合体、ブタジエン系(共)重合体、シリコーン系重合体等が挙げられ、中でも、ブタジエン系(共)重合体が好ましい。ゴム状重合体がブタジエン系(共)重合体であると、義歯床用材料の衝撃強さがより向上し、義歯床としたときの耐衝撃性がより向上する。
ここで、「(共)重合体」は、単独重合体と共重合体との両方を包含する概念である(以下、同様である)。
【0045】
アクリル系(共)重合体としては、アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステル1種以上と多官能性単量体1種以上とを含む混合物を重合させて得られた共重合体が好ましい。
上記混合物は、必要に応じ、スチレン;α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体;アクリロニトリル;メタクリル酸メチル;等の共重合可能な単量体(好ましくは、スチレン、又は、スチレンとスチレン誘導体との混合物)を含んでいてもよい。
アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられ、これらの中ではアクリル酸n−ブチルがより好ましい。
多官能性単量体としては、公知のアクリル系多官能性単量体、公知の多価芳香族ビニル単量体(例えば、ジビニルベンゼン)、等が挙げられる。
【0046】
アクリル系(共)重合体を構成する成分の量は特に限定されないが、アクリル系(共)重合体としては、アクリル酸アルキルエステル50.0質量%〜99.9質量%、多官能性単量体0.1質量%〜10質量%、および共重合可能な単量体0質量%〜49.9質量%を共重合させて得られた共重合体が好ましい。
このようなアクリル系(共)重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムは市販されており、例えば、三菱レイヨン株式会社「メタブレン(登録商標)W−450」などがある。
【0047】
ブタジエン系(共)重合体としては、ブタジエン−アクリル酸n−ブチル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、等が挙げられる。
ブタジエン系(共)重合体としては、1,3−ブタジエン5質量%以上と、1,3−ブタジエンと共重合性を有する少なくとも1種の単量体95質量%以下と、を共重合させて得られた共重合体が好ましい。
1,3−ブタジエンと共重合性を有する単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、前述したアルキル基の炭素数2〜8のアクリル酸アルキルエステル、等が挙げられる。
【0048】
1,3−ブタジエンと、1,3−ブタジエンと共重合性を有する単量体と、の共重合の際、多官能性単量体を併用してもよい。
ここで、多官能性単量体としては、公知のアクリル系多官能性単量体、公知の多価芳香族ビニル単量体(例えば、ジビニルベンゼン)等が挙げられる。
【0049】
義歯床用材料の衝撃強さをより向上させ、得られる義歯床の耐衝撃性をより向上させる観点から、ブタジエン系(共)重合体は、ブタジエンと、アクリル酸n−ブチルと、を共重合させて得られたブタジエン−アクリル酸n−ブチル共重合体であることが好ましい。
このようなブタジエン系(共)重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムは市販されており、例えば、ユーエムジー・エービーエス株式会社「MUX−60」、株式会社カネカ「カネエース(登録商標)M−521」などがある。
【0050】
シリコーン系重合体としては、例えば、室温硬化型シリコーンゴム、熱硬化型シリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ジメチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。シリコーン系重合体としては、公知のシリコーンゴムを用いてもよい。
シリコーン系重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムは市販されており、例えば、三菱レイヨン株式会社「メタブレン(登録商標)S−2001」などがある。
【0051】
上記ゴムは、ゴム粒子であることが好ましい。
第1態様における高分子成分が、ゴムとしてゴム粒子を含む場合には、アクリル系樹脂にゴム粒子が分散するので、義歯床用材料の衝撃強さがより向上する。
ゴム粒子としては、単層構造からなるゴム粒子、多層構造からなるゴム粒子、等が挙げられる。
多層構造からなるゴム粒子としては、例えば、上述したアクリル系(共)重合体、上述したブタジエン系(共)重合体、上述したシリコーン系重合体などのゴム状重合体からなる内層と、内層の周りに上述した熱可塑性樹脂成分を重合させてなる樹脂からなる外層と、を備えていてもよい。
また、ゴム状重合体に架橋性の多官能性単量体が少量共重合されているものを使用してもよい。
熱可塑性樹脂成分を重合させてなる樹脂としては、ガラス転移温度が室温以上のポリマーが好ましい。
【0052】
例えば、アクリル系ゴム粒子としては、メタクリル酸メチルを主成分とするゴム状重合体からなる単層構造のもの、アクリル酸n−ブチルなどのアクリル酸アルキルエステルを主成分とする弾性樹脂層である内層の周りに、メタクリル酸メチルを主成分とする熱可塑性樹脂層を設けた多層構造のもの等であってもよく、公知のアクリル系ゴム粒子を使用してもよい。
【0053】
また、ゴム粒子としては、ゴム状重合体(好ましくは架橋構造を有するゴム状重合体)に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られたゴム粒子であることがより好ましい。
また、前述のとおり、ゴム状重合体としては、アクリル系(共)重合体、ブタジエン系(共)重合体、シリコーン系重合体、等が挙げられ、中でも、ブタジエン系(共)重合体が好ましい。
【0054】
ゴム粒子の平均粒子径は、0.03μm〜2.0μmの範囲にあることが好ましい。これにより、義歯床用材料中にてゴム粒子の分散状態を好適に維持することができる。このような粒径のゴム粒子は乳化重合法で製造することができる。
【0055】
第1態様における高分子成分がゴムを含む場合、ゴムの含有量は、義歯床用材料の全量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
ゴムの含有量が1質量%以上であると、義歯床用材料の衝撃強さがより向上し、義歯床としたときの耐衝撃性がより向上する。
ゴムの含有量が10質量%以下であると、義歯床用材料の曲げ強さがより向上し、義歯床としたときの耐久性(圧縮試験の降伏点強度)がより向上する。更に、ゴムの含有量が10質量%以下であると、義歯床用材料の曲げ弾性率がより向上するためより変形しにくくなり、義歯床を作製する際の加工性がより向上する。
上記ゴムの含有量の上限は、8質量%であることがより好ましく、7質量%であることが更に好ましい。
上記ゴムの含有量の下限は、1.5質量%であることが好ましく、2質量%であることがより好ましく、3質量%であることが特に好ましい。
【0056】
<その他の成分など>
第1態様の義歯床用材料は、必要に応じ、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、着色剤が挙げられる。
着色剤としては特に制限は無く、顔料、染料、着色ファイバー等を用いることができるが、顔料、染料が好ましく、顔料が特に好ましい。
第1態様の義歯床用材料が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、上記高分子100質量部に対し、0.001質量部〜0.20質量部が好ましく、0.001質量部〜0.15質量部が好ましく、0.001質量部〜0.10質量部がより好ましい。
着色剤の含有量が0.20質量部以下であると、義歯床用材料の曲げ強さ100MPa以上をより達成しやすい。
【0057】
また、第1態様の義歯床用材料は、血管を模した材料を含有してもよいが、短径が20μm以上の上記材料の含有量は、上記高分子100質量部に対し、0.001質量部未満であることが好ましく、0.0005質量部未満であることがより好ましい。短径が20μm以上の上記材料の含有量を上記範囲内に調整することで、曲げ強さを100MPa以上に調整しやすくなる。
なお、上記材料が繊維状の場合、短径は繊維の平均直径となる。
【0058】
なお、本発明の義歯床は、第1態様の義歯床用材料としての無着色の義歯床用材料を切削して無着色の義歯床を得、その後、無着色の義歯床に着色剤を用いて着色を施して得られたものであってもよい。この場合には、第1態様の義歯床用材料は、必ずしも着色剤を含有する必要はない。
【0059】
また、第1態様の義歯床用材料は、無機ファイバー及び無機ウイスカの含有量が、義歯床用材料の全量に対し、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であること(即ち、第1態様の義歯床用材料が、無機ファイバー及び無機ウイスカを含有しないこと)が特に好ましい。
ここで、「無機ファイバー及び無機ウイスカの含有量が、義歯床用材料の全量に対し、0.5質量%以下である」とは、第1態様の義歯床用材料が無機ファイバー及び無機ウイスカを実質的に含有しないことを意味する。この場合、作製される義歯床も無機ファイバー及び無機ウイスカを実質的に含有しないので、微視的に見ても義歯床の表面が極めて平滑となる効果、これにより義歯床の装着感が極めて良好となる効果、等が期待される。
【0060】
第1態様の義歯床用材料において、上記高分子成分の含有量は、義歯床用材料の全量に対し、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
上記高分子成分の含有量が90質量%以上であると、義歯床用材料の曲げ強さがより向上する。
【0061】
第1態様の義歯床用材料は、切削による義歯床の作製に用いられる義歯床用材料であることが好ましい。
この場合、第1態様の義歯床用材料は、義歯床用材料の製造し易さ(原料の重合し易さ)の観点、及び、義歯床を削り出す際の廃棄部分を減らす観点から、厚さ10mm以上40mm以下のブロック体であることが好ましい。ブロック体の厚さとしては、20mm以上40mm以下がより好ましい。
また、ブロック体の大きさは、切削により義歯床を得ることが可能な大きさであれば特に制限はない。
また、ブロック体の形状にも特に制限はないが、切削機に固定しやすい点から、上面及び下面(即ち、互いに対向する二つの面)を有する立体形状が好ましい。ブロック体の形状は、切削プログラムを作成しやすい点から、直方体形状がより好ましく、複数個を一度に切削できる大型の直方体形状が更に好ましい。
例えば、後述の実施例における、230mm×190mm×30mmの直方体形状のブロック体であれば、一度に4個の全部床義歯床を得ることができ効率的である。
【0062】
第1態様の義歯床用材料の製造方法には特に制限はないが、オリゴマーもしくはプレポリマー、または、オリゴマーもしくはプレポリマーとモノマーとの混合物を原料として用い、重合温度近傍で、数日〜1週間程度の時間をかけてゆっくりと重合させる方法が好適である。かかる製造方法によれば、アクリル系樹脂を含むMw120万以上の高分子成分を含有する義歯床用材料を製造しやすい。
また、第1態様の義歯床用材料がゴムを含む場合、上記ゴムを、オリゴマー若しくはプレポリマー、又は、オリゴマー若しくはプレポリマーにモノマーを添加したものと混合して原料を得た後、この原料を、重合温度近傍で、数日〜1週間程度の時間をかけてゆっくりと重合させて義歯床用材料を製造することが好ましい。
上記原料には、必要に応じその他の成分(着色剤、開始剤等)が含まれていてもよい。
【0063】
次に、第1態様の義歯床用材料の好ましい実施形態について説明する。
但し、各実施形態間に、一部、重複する部分が存在していてもよい。
【0064】
<実施形態A>
実施形態Aの義歯床用材料は、アクリル系樹脂を含むMw150万以上の高分子成分を含有し、曲げ強さが110MPa以上である義歯床用材料である。
実施形態Aは、義歯床用材料の曲げ強さを特に重視した実施形態であり、実施形態Aの義歯床用材料によれば、耐久性に特に優れた義歯床を製造できる。
実施形態Aに係る義歯床用材料の更に好ましい範囲は、ゴムの含有量(下記参照)を除き、第1態様の義歯床用材料の好ましい範囲として既に示したとおりである。
【0065】
実施形態Aに係る義歯床用材料は、義歯床用材料全量に対するゴムの含有量が、1質量%未満であることが更に好ましく、0質量%であること(義歯床用材料がゴムを含有しないこと)が特に好ましい。
【0066】
<実施形態B>
実施形態Bの義歯床用材料は、アクリル系樹脂を含むMw150万以上の高分子成分を含有し、衝撃強さが2.0kJ/m
2以上であり、曲げ強さが100MPa以上である義歯床用材料である。
実施形態Bは、義歯床用材料の曲げ強さと義歯床用材料の衝撃強さとのバランスを特に重視した実施形態であり、実施形態Bの義歯床用材料によれば、耐久性と耐衝撃性とのバランスに特に優れた義歯床を製造できる。
【0067】
実施形態Bにおける高分子成分は、衝撃強さの観点から、ゴムを含むことが好ましい。
実施形態Bにおけるゴムの種類及び含有量の好ましい範囲は、第1態様におけるゴムの種類及び含有量の好ましい範囲として既に示したとおりである。
【0068】
実施形態Bの義歯床用材料の曲げ強さは、衝撃強さをより向上させる観点から、200MPa以下であることが好ましい。実施形態Bの義歯床用材料の曲げ強さは、150MPa以下であることが好ましく、120MPa以下であることがより好ましく、110MPa未満であることが更に好ましい。
【0069】
その他、実施形態Bに係る義歯床用材料の好ましい範囲は、第1態様の義歯床用材料の好ましい範囲として既に示したとおりである。
【0070】
<実施形態C>
実施形態Cの義歯床用材料は、前述のアクリル系樹脂Yを含むMw120万以上の高分子成分を含有し、曲げ強さが110MPa以上である。
アクリル系樹脂Yとして、好ましくは、メタクリル酸に由来する構造単位の含有量が15質量%以下である、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体である。
【0071】
実施形態Cは、義歯床用材料の曲げ強さを特に重視した実施形態であり、実施形態Cの義歯床用材料によれば、耐久性に特に優れた義歯床を製造できる。
【0072】
実施形態Cにおける高分子成分は、ゴムを含んでいてもよい。
実施形態Cがゴムを含む場合における、ゴム及びその含有量の好ましい範囲は、第1態様におけるゴム及びその含有量の好ましい範囲として既に示したとおりである。
また、実施形態Cに係る義歯床用材料は、義歯床用材料全量に対するゴムの含有量が、1質量%未満であってもよく、0質量%であってもよい(即ち、義歯床用材料がゴムを含有しなくてもよい)。
【0073】
その他、実施形態Cに係る義歯床用材料の好ましい範囲は、第1態様の義歯床用材料の好ましい範囲として既に示したとおりである。
【0074】
≪第2態様≫
第2態様の義歯床用材料は、曲げ強さが110MPa以上であり、スルホン系樹脂及びエーテルケトン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である高分子成分を含有する。
第2態様における「曲げ強さ」は、第1態様における「3点曲げ試験による曲げ強さ」と同義である。
第2態様の義歯床用材料によっても、第1態様の義歯床用材料と同様の効果、即ち、義歯床としたときの耐久性向上(圧縮試験の降伏点強度向上)の効果が奏される。
更に、第2態様の義歯床用材料によれば、義歯床用材料の衝撃強さ、及び義歯床としたときの耐衝撃性がより向上する。
【0075】
第2態様の義歯床用材料の曲げ強さは、義歯床としたときの耐久性(降伏点強度)をより向上させる観点から、120MPa以上であることが好ましく、120MPa超であることがより好ましく、121MPa以上であることが更に好ましい。
一方、上記曲げ強さの上限には特に制限はないが、切削加工性の観点から、上記曲げ強さは200MPa以下であることが好ましい。
【0076】
第2態様の義歯床用材料は、衝撃強さが1.41kJ/m
2以上であることが好ましい。
第2態様の義歯床用材料の衝撃強さが1.41kJ/m
2以上であると、義歯床としたときの耐衝撃性がより向上する。
第2態様における「衝撃強さ」は、第1態様における「衝撃強さ」と同義である。
【0077】
第2態様の義歯床用材料の衝撃強さの好ましい範囲は、第2態様の義歯床用材料の衝撃強さと同様である。
但し、第2態様の義歯床用材料の衝撃強さは、2.0kJ/m
2以上とすることもでき、更には3.0kJ/m
2以上とすることもでき、更には3.5kJ/m
2以上とすることもできる。
【0078】
スルホン系樹脂を含有する場合の第2態様の義歯床用材料は、スルホン系樹脂の透明度が高いことから、着色の自由度が大きい利点を有する。この場合に含有されるスルホン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ここで、スルホン系樹脂とは、スルホニル基(−SO
2−基)を有する構造単位を含む重合体を指し、好ましくは、スルホニル基(−SO
2−基)及びフェニレン基を有する構造単位を含む重合体である。
上記スルホン系樹脂としては、より具体的には、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)が挙げられ、ポリスルホン(PSU)又はポリフェニルスルホン(PPSU)が好ましい。
中でも、義歯床用材料の衝撃強さ(即ち、義歯床としたときの耐衝撃性)の観点から、ポリフェニルスルホン(PPSU)が特に好ましい。
【0079】
エーテルケトン系樹脂を含有する場合の第2態様の義歯床用材料は、曲げ強さが特に高いという利点を有する。この場合に含有されるエーテルケトン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ここで、エーテルケトン系樹脂とは、エーテル基(−O−基)及びケトン基(−C(=O)−基)を有する構造単位を含む重合体を指し、好ましくは、エーテル基(−O−基)、フェニレン基、及びケトン基(−C(=O)−基)を有する構造単位を含む重合体である。
上記エーテルケトン系樹脂として、より具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂が挙げられ、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が特に好ましい。
【0080】
第2態様における高分子成分は、義歯床用材料の衝撃強さ(即ち、義歯床としたときの耐衝撃性)の観点から、ポリフェニルスルホン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0081】
その他、第2態様の義歯床用材料の好ましい範囲は、第1態様の義歯床用材料の好ましい範囲と同様である。
【0082】
〔義歯床、有床義歯〕
本発明の義歯床は、本発明の義歯床用材料を含む。
ここで、「本発明の義歯床用材料」とは、本発明の第1態様又は第2態様の義歯床用材料を意味するものとする(以下、同様である)。
従って本発明の義歯床は、耐久性(降伏点強度)に優れる。
【0083】
本発明の義歯床は、全部床義歯(いわゆる総入れ歯)用の義歯床であってもよいし、局部床義歯(いわゆる部分入れ歯)用の義歯床であってもよい。
また、本発明の義歯床は、上顎用義歯の義歯床(以下、「上顎用義歯床」ともいう)であってもよいし、下顎用義歯の義歯床(以下、「下顎用義歯床」ともいう)であってもよいし、上顎用義歯床と下顎用義歯床とのセットであってもよい。
【0084】
また、本発明の義歯床は、一部分のみが本発明の義歯床用材料によって構成されていてもよいし、全体が本発明の義歯床用材料によって構成されていてもよい。
一部分のみが本発明の義歯床用材料によって構成されている義歯床の例としては、金属部分と樹脂部分とを含む義歯床(いわゆる金属床)のうちの樹脂部分の少なくとも一部が本発明の義歯床用材料によって構成されている義歯床;樹脂部分のみからなる義歯床(いわゆるレジン床)のうちの一部分のみが本発明の義歯床用材料によって構成されている義歯床;等が挙げられる。
全体が本発明の義歯床用材料によって構成されている義歯床の例としては、樹脂部分のみからなる義歯床が挙げられる。
【0085】
本発明の義歯床は、本発明の義歯床用材料の好ましい形態である、厚さ10mm以上40mm以下のブロック体である義歯床用材料を切削して得られた義歯床であることが特に好ましい。
【0086】
本発明の有床義歯は、上記本発明の義歯床と、前記義歯床に固定された人工歯と、を備える。
従って本発明の有床義歯は、義歯床の耐久性(降伏点強度)に優れる。
本発明の有床義歯は、局部床義歯であってもよいし、全部床義歯であってもよい。即ち、本発明の有床義歯は、人工歯を少なくとも1本備えていればよい。
また、本発明の有床義歯は、上顎用義歯であってもよいし、下顎用義歯であってもよいし、上顎用義歯と下顎用義歯とのセットであってもよい。
【0087】
人工歯の材質としては、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂の例については前述のとおりである。また、人工歯は、アクリル系樹脂に加え、フィラー等を含有していてもよい。
【0088】
図1は、本発明の有床義歯の一例を概念的に示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の有床義歯の一例である上顎用義歯10は、本発明の義歯床の一例である上顎用義歯床20と、上顎用義歯床20に固定された人工歯12と、を備える。
図1では、複数本の人工歯のうちの一本のみに符号12を付している。
上顎用義歯床20は、本発明の義歯床用材料を切削することにより作製される。そして上顎用義歯10は、上顎用義歯床20に人工歯12を固定することにより作製される。
【0089】
なお、図示は省略するが、義歯床が複数の部分に分割されており、その一部分のみが、本発明の義歯床用材料を切削することにより作製されたものであってもよい。
また、本発明の義歯床及び有床義歯は、上顎用の義歯床及び上顎用の有床義歯であることには限定されず、下顎用の義歯床及び下顎用の有床義歯であってもよいことはもちろんである。
【0090】
〔義歯床の製造方法、有床義歯の製造方法〕
本発明の義歯床の製造方法は、上記本発明の義歯床用材料の好ましい形態である、厚さ10mm以上40mm以下のブロック体である義歯床用材料を切削して義歯床を得る切削工程を有する。
切削工程は、上記ブロック体である義歯床用材料を、CAD(Computer Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)システムによって切削して義歯床を得る工程であることが好ましい。
CAD/CAMシステムによる切削は、例えば、CAD/CAMソフトにて作成された切削プログラムに従い、CNC(Computer Numerical Control)切削機を用いて行うことができる。
切削プログラムは、患者の口腔内の3次元形状に基づき、公知の方法によって作成することができる。また、患者に合った義歯床が既に作製されていた場合には、この義歯床を光学的にスキャンすることにより3次元(3D)データを得、得られた3Dデータに基づいて切削プログラムを作成してもよい。
また、複数個の義歯床用材料を一度に切削する観点から、CNC切削機には、義歯床用材料を自動交換できるチェンジャー装置を併設することが好ましい。
【0091】
本発明の義歯床の製造方法は、必要に応じ、切削工程以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、義歯床を着色する着色工程等が挙げられる。
【0092】
また、本発明の有床義歯の製造方法は、本発明の義歯床用材料を切削することにより義歯床を得る切削工程と、上記義歯床に人工歯を固定する固定工程と、を有する。
切削工程の好ましい形態は前述のとおりである。
固定工程における人工歯の固定は、接着剤を用いた通常の方法によって行うことができる。接着剤としては、例えば、サンメディカル社製の歯科用接着性レジンセメント「スーパーボンド」(登録商標)等を用いることができる。
また、接着剤を用いて義歯床へ人工歯を固定するに先立って、義歯床及び人工歯の少なくとも一方の表面(接着面)に、予め、公知の表面処理(易接着処理)を施してもよい。
【0093】
本発明の有床義歯の製造方法は、必要に応じ、切削工程及び固定工程以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、有床義歯の義歯床を着色する着色工程等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下において、「wt%」は、質量%と同義である。
また、以下において、実施例1A〜3Aは、第1態様の実施形態Aの義歯床用材料の実施例であり、実施例1B〜6Bは、第1態様の実施形態Bの義歯床用材料の実施例であり、実施例1Cは、第1態様の実施形態Cの義歯床用材料の実施例であり、実施例1D〜3Dは、第2態様の義歯床用材料の実施例である。
【0095】
〔実施例1A〕
<曲げ試験用試験片の作製>
第1態様の実施形態Aの義歯床用材料として樹脂ブロック(カナセ工業社製の「カナセライト」;材質はポリメチルメタクリレート(PMMA);形状は230mm×190mm×30mmサイズの直方体状)を準備し、この樹脂ブロックを切削することにより、80mm×10mm×4mmサイズの直方体状の曲げ試験用試験片を得た。
【0096】
<3点曲げ試験(曲げ強さ及び曲げ弾性率の測定)>
上記曲げ試験用試験片について、インテスコ社製の5本掛け曲げ試験機2001−5型を用い、JIS K7171(2008)に準拠して3点曲げ試験を行い、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。
ここで、試験速度は2mm/minとし、支点間距離は64mmとした。また、曲げ弾性率の算出方法は、割線法とした。
結果を下記表1に示す。
【0097】
<衝撃試験用試験片の作製>
上記曲げ試験用試験片と同サイズの樹脂片を同様の方法で作製し、この樹脂片に対し、JIS K7111−1(2012)に規定される形状Aのノッチを、残り幅が8.0mmとなるように1つ設け、衝撃試験用試験片(シングルノッチ付き試験片)を得た。
【0098】
<シャルピー衝撃試験(衝撃強さの測定)>
上記衝撃試験用試験片について、東洋精機製作所社製の恒温槽付き衝撃試験機DG−UB型を用い、JIS K7111−1(2012)に準拠し、エッジワイズ衝撃の条件でシャルピー衝撃試験を行い、衝撃強さを測定した。
更に、この試験において、試験片に振り子が衝突した後、振り子が振れた角度(°)を測定した。この角度は、数字が小さいほど、衝突時のエネルギー吸収が大きいこと、即ち、耐衝撃性に優れることを示す。
以上の結果を下記表1に示す。
【0099】
<高分子成分の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)>
上記樹脂ブロック中の高分子成分(実施例1AではPMMA)について、前述のGPC測定方法に従い、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
結果を下記表1に示す。
【0100】
<義歯床の作製>
後述する比較例1で作製した上顎用義歯床の3Dデータを、3Dスキャナを用いて取得した。
この3Dデータから、CAD/CAMソフトを用いて、義歯床用材料としての上記樹脂ブロック(カナセライト)を切削して上顎用義歯床を得るための切削プログラムを作成した。
この切削プログラムに従い、CNC切削機を用いて上記樹脂ブロックを切削し、上顎用義歯床を得た。
【0101】
<義歯床の圧縮試験(降伏点強度の測定)>
島津製作所社製の恒温槽付き万能材料試験機AG−100kNXを用い、上記上顎用義歯床の圧縮試験(降伏点強度の測定)を行った。
詳細には、上記上顎用義歯床を粘膜面(顎堤および口蓋部と接触する面)が上側になるように試験台に置き、次いで、この上顎用義歯床の中央部を、直径20mmの円柱状の棒(材質:炭素鋼S45C)の底面によって1mm/分の速度で圧縮した。
上記圧縮において、変位と強度とを記録し、強度の最大点を降伏点強度とした。
結果を下記表1に示す。
【0102】
<義歯床用材料の切削加工性の評価>
義歯床用材料としての上記樹脂ブロックを切削して義歯床を得るまでの過程において、下記評価基準に基づき、切削加工性の評価を行った。
結果を下記表1に示す。
【0103】
−切削加工性の評価基準−
A:切削時に割れも欠けも発生せず、切削加工性が良好であった。
B:切削時に割れ及び欠けの少なくとも一方が発生し、切削加工性が悪かった。
【0104】
〔実施例2A〕
実施例1Aにおいて、「カナセライト」を、日東樹脂工業社製の「CL−000」(樹脂ブロック;材質はPMMA;形状は230mm×190mm×30mmサイズの直方体状)に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
【0105】
〔実施例3A〕
実施例1Aにおいて、曲げ試験用試験片、衝撃試験片用試験片、及び樹脂ブロック(カナセライト)を、以下のようにして作製された曲げ試験用試験片、衝撃試験片用試験片、及び樹脂ブロックに変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
【0106】
<曲げ試験用試験片の作製(製造例1)>
室温において流動性のある予備重合されたメチルメタクリレートシラップ95質量部に対し、A液(5質量部のメチルメタクリレートモノマーに、0.075質量部の白色顔料、0.013質量部の赤色顔料、及び0.002質量部のAIBN(2,2'-Azobis(isobutyronitrile);重合開始剤)を添加し室温下で混合し均一化した液)5.09質量部を加え、室温下で混合して均一化した後、脱泡した。脱泡後の組成物を、2枚の無機ガラスの間にガスケットを介在させた型に注入し、40℃で48時間、120℃で5時間重合し、厚さ30mmの直方体状の樹脂ブロックを作製した。
この樹脂ブロックを切削することにより、80mm×10mm×4mmサイズの曲げ試験用試験片(材質はPMMA)を得た。
【0107】
<衝撃試験用試験片の作製>
上記で得られた曲げ試験用試験片と同サイズの樹脂片を同様の方法で作製し、この樹脂片に対し実施例1Aの衝撃試験片用試験片と同様に形状Aのノッチを設け、衝撃試験片用試験片とした。
【0108】
<義歯床作製用の樹脂ブロックの作製>
上記の曲げ試験用試験片の作製の際に作製した、厚さ30mmの直方体状の樹脂ブロックから切り出すことにより、義歯床作製用の樹脂ブロック(230mm×190mm×30mmサイズ)を作製した。
【0109】
〔実施例1D〕
実施例1Aにおいて、「カナセライト」を、第2態様の義歯床用材料であるポリスルホン(PSU)製の樹脂ブロック(日本エクストロン社製「ナチュラルカラー」;形状は厚さ30mmサイズの直方体状)に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
【0110】
〔実施例2D〕
実施例1Aにおいて、カナセライトを、第2態様の義歯床用材料であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製の樹脂ブロック(日本エクストロン社製「ナチュラルカラー」;形状は厚さ30mmサイズの直方体状)に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
【0111】
〔比較例1〕
実施例1Aにおいて、曲げ試験用試験片、衝撃試験片用試験片、及び上顎義歯床を、以下のようにして作製された曲げ試験用試験片、衝撃試験片用試験片、及び上顎義歯床に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表2に示す。
【0112】
<曲げ試験用試験片の作製>
(曲げ試験用試験片用の石膏型の作製)
まず、義歯作製用フラスコ(フラスコ下型とフラスコ上型とのセット)を準備した。
次に、樹脂ブロックから、80mm(長さ)×10mm(幅)×4mm(厚さ)サイズよりも、長さ、幅、厚さともやや大きめの直方体状の板を削り出した。削り出した板全体に義歯床用レジン分離剤NEW ACROSEP(ジーシー社製)を塗布した。
次に、フラスコ下型の中に、所定量の水と混ぜ合わせた石膏デンタルブラスター(ノリタケ社製)を一杯まで流し込んでしばらく放置した。石膏が固まってきた段階で、石膏の中央部を押し、上記の板が十分入る大きさの窪みを形成した。
石膏が完全に固まった後、上記窪みに、所定量の水と混ぜ合わせた歯科用硬質石膏ニューダイヤストーンナチュラルグレー(モリタ社製)を流し込んでしばらく放置した。硬質石膏が固まってきた段階で、上記の分離剤を塗布した板を、板の上面のみが露出するようにして硬質石膏中に埋め、硬質石膏の表面をならした。
硬質石膏が完全に固まった後、上記分離剤を、この硬質石膏を含む石膏の全面に塗布した。
次に、このフラスコ下型の上にフラスコ上型を取り付けた後、所定量の水と混ぜ合わせた硬質石膏ニューダイヤストーンナチュラルグレーを上記の板が隠れるように盛った。
次いで定量の水と混ぜ合わせた石膏デンタルブラスターを歯科用フラスコから溢れるくらい流し込んだ後、蓋をした。石膏が固まった後、フラスコ下型とフラスコ上型とを分離し、板を取り外した。
以上により、義歯作製用フラスコ内に、曲げ試験用試験片用の石膏型(石膏型上型と石膏型下型とのセット)を得た。
ここで、石膏型上型はフラスコ上型内に作製され、石膏型下型はフラスコ下型内に作製された。石膏型上型及び石膏型下型は、この2つが組み合わさったときに、上記の板の形状の空間が形成されるようになっている。
次いで、石膏型上型及び石膏型下型の石膏面全体に上記分離剤を塗布した。
【0113】
(曲げ試験用試験片の作製)
上記曲げ試験用試験片の石膏型が作製された義歯作製用フラスコを用い、石膏型内でMMAを重合させることにより、PMMAからなる板を得、得られた板を研磨することにより、80mm×10mm×4mmサイズの曲げ試験用試験片を作製した。詳細な操作を以下に示す。
まず、床用レジン材料アクロンクリアNo.5(ジーシー社製)を用意し、その粉材6gと液材2.5gとを容器に量り取り、混ぜ合わせた。得られた混合物をしばらく放置して餅状になったところで、餅状になった混合物を、フラスコ下型内に作製された石膏型下型の窪みの上に多めに載せて形を整えた。
次に、このフラスコ下型の上に、内部に石膏型上型が作製されたフラスコ上型を載せ、プレス機で圧力を掛けた。次に、このフラスコ上型を外し、窪みからはみ出た餅状床用レジン材料を取り除き、再び上記フラスコ上型を載せ、プレス機で圧力を掛けた。その後、フラスコクランプで、フラスコ(上記フラスコ上型と上記フラスコ下型とが組み合わさったフラスコ)を固定した。
このフラスコを水の入った鍋に入れ、ガスレンジで100℃迄30分以上かけてゆっくり加熱した。100℃に達してから30〜40分加熱した後、加熱を終了し30℃まで冷却した。
次いでフラスコ下型とフラスコ上型とを分離し、次いで石膏型を割り、出来上がった板(PMMA製)を取り出した。取り出した板を研磨し、80mm×10mm×4mmサイズの直方体状の板を得、これを曲げ試験用試験片(材質はPMMA)とした。
【0114】
<衝撃試験用試験片の作製>
上記で得られた曲げ試験用試験片と同サイズの樹脂片を同様の方法で作製し、この樹脂片に対し実施例1Aの衝撃試験片用試験片と同様に形状Aのノッチを設け、衝撃試験片用試験片とした。
【0115】
<義歯床の作製>
(ワックス製の義歯の作製)
患者の上顎及び下顎の概形印象を採り、その概形印象から患者に合った形のトレーを作製し、得られたトレーを用いて患者の精密印象を採得した。採得された精密印象に基づき、患者に合った形の、上下別個の石膏模型を作製した。
次に、石膏模型の上下を連結し、上下の咬み合わせを再現するための、ベースプレートとワックスとからなる咬合床を作製した。
次に、患者の口腔を見て顎運動の様子を観察し、その顎運動を上記咬合床で再現して咬合状態を三次元的に採得して咬合位置を決定し、ワックス製の義歯床(上顎用義歯床と下顎用義歯床とのセット)を作製した。
得られたワックス製の義歯床に、予めワックスパターン分離剤SEP(松風社製)を塗布しておいた人工歯を並べ、次いで試適及び調整を行うことにより、ワックス製の義歯(上顎用義歯と下顎用義歯とのセット)が完成した。
【0116】
(義歯床用の石膏型の作製)
まず、フラスコ下型とフラスコ上型とから構成される義歯作製用フラスコを準備した。
更に、上記ワックス製の義歯から人工歯を取り外し、ワックス製の義歯床を準備した。
次に、ワックス製の義歯床と上述の石膏模型とを組み合わせた状態でフラスコ下型の中に入れ、そこに所定量の水と混ぜ合わせた石膏デンタルブラスターを一杯まで流し込んでしばらく放置した。石膏が固まった後に、上述の分離剤を石膏の上に垂らし、筆を用いて全体に塗布した。その後、上記フラスコ下型の上にフラスコ上型を乗せ、そこに石膏を枠一杯まで流し込み、蓋をして石膏が完全に固まるまで放置した。
石膏が固まった後、フラスコ上型とフラスコ下型とを分離し、お湯で温めてワックスを溶かし出しベースプレートを取り外した。
以上により、石膏型上型と石膏型下型とからなる、義歯床用の石膏型を得た。
ここで、石膏型上型はフラスコ上型内に作製され、石膏型下型はフラスコ下型内に作製された。石膏型上型及び石膏型下型は、この2つが組み合わさったときに、上記ワックス製の義歯床の形状の空間が形成されるようになっている。
次いで、石膏型上型及び石膏型下型の石膏面全体に上記分離剤を塗布した。
【0117】
(義歯床の作製)
本比較例1の曲げ試験用試験片の作製において、曲げ試験用試験片の石膏型を上記義歯床用の石膏型に変更したこと以外は曲げ試験用試験片の作製と同様にして、義歯床(上顎義歯床と下顎義歯床とのセット;材質はいずれもPMMA)を得た。
このうち、上顎義歯床を、圧縮試験(降伏点強度の測定)に用いた。
【0118】
〔比較例2〜6〕
比較例1において、アクロンクリアNo.5(ジーシー社製)を、下記表2に示すように、アクロンピンクNo.3(ジーシー社製)、アクロンライブピンクNo.8(ジーシー社製)、パラエクスプレスウルトラクリアNo.7(ヘレウスクルツァー社製)、パラエクスプレスウルトラピンクNo.1(ヘレウスクルツァー社製)、又はパラエクスプレスウルトラピンクライブNo.34(ヘレウスクルツァー社製)に変更したこと以外は比較例1と同様の操作を行った。なお、いずれの例においても、義歯床用材料及び義歯床の材質はPMMAである。
結果を下記表2に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
−表1及び表2の説明−
・「N.D.」は、「データ無し」(No Data)を意味する(表3以降も同様である)。
・シャルピー衝撃試験の「角度」は、試験片に振り子が衝突した後に、振り子が振れた角度(°)を指す(表3以降も同様である)。
【0122】
表1及び表2に示すように、第1態様の実施形態Aの義歯床用材料に該当する実施例1A〜3Aの義歯床用材料、及び、第2態様の義歯床用材料に該当する実施例1D及び2Dの義歯床用材料を用いて作製された義歯床は、いずれも耐久性(降伏点強度)に優れていた。また、これらの義歯床用材料は、切削加工性にも優れていた。
これに対し、含有される高分子成分(PMMA)のMwが120未満である義歯床用材料を用いて作製された比較例1〜6の義歯床は、耐久性(降伏点強度)が低かった。
【0123】
また、表1及び表2から、義歯床用材料の曲げ強さが100MPa以上(特に、110MPa以上)であると、義歯床としたときの圧縮試験の降伏点強度が顕著に向上することがわかる。
また、表1から、実施例1Dの義歯床用材料は、曲げ弾性率が2533MPaでも降伏点強度が高いことがわかる。これに対し、表2から、比較例1〜6は曲げ弾性率が2590MPa以上であっても降伏点強度が低いことがわかる。これらのことから、曲げ弾性率が高い場合であっても、義歯床の降伏点強度が低い場合があることがわかる。
【0124】
更に、実施例1D及び2Dの義歯床用材料は、いずれもシャルピー衝撃強さが高いことから、得られる義歯床の耐衝撃性が高いことが期待される。
【0125】
〔実施例1B〕
第1態様の実施形態Bの義歯床用材料に該当する樹脂ブロックを作製した。以下、詳細を示す。
まず、ゴムとしてMUX−60(ユーエムジー・エービーエス株式会社製)2質量部と、AIBN(2,2'-Azobis(isobutyronitrile;重合開始剤)0.002質量部と、メタクリル酸メチル48質量部と、を室温下で混合しゴムを分散させた分散液を得た。
この分散液を、室温において流動性のある予備重合されたメチルメタクリレートシラップ50質量部に添加し、室温下で混合して均一化した。
均一化した組成物を脱泡し、脱泡後の組成物を、2枚の無機ガラスの間にガスケットを介在させた型に注入し、40℃で48時間、120℃で5時間重合し、厚さ30mmの直方体状の樹脂ブロック(義歯床用材料)を作製した。
ここで、MUX−60(ユーエムジー・エービーエス株式会社製)は、架橋構造を有するゴム状重合体であるブタジエン系(共)重合体に、熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムである。
また、得られた樹脂ブロックは、PMMAとゴム(MUX−60)との混合物である高分子成分からなる樹脂ブロックである。
【0126】
実施例1Aにおいて、「カナセライト」を、上記樹脂ブロックに変更したこと以外は、実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表3に示す。
【0127】
〔実施例2B〕
実施例1Bにおいて、MUX−60(ユーエムジー・エービーエス株式会社製)の量を4質量部に、メタクリル酸メチルの量を46質量部に、それぞれ変更したこと以外は実施例1Bと同様の操作を行った。
結果を下記表3に示す。
【0128】
〔実施例3B〕
実施例1Bにおいて、MUX−60(ユーエムジー・エービーエス株式会社製)の量を6質量部に、メタクリル酸メチルの量を44質量部に、それぞれ変更したこと以外は実施例1Bと同様の操作を行った。
結果を下記表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
−表3の説明−
・MUX−60は、架橋構造を有するゴム状重合体であるブタジエン系(共)重合体に、熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムである。
【0131】
表3に示すように、第1態様の実施形態Bに該当する実施例1B〜3Bの義歯床用材料を用いて作製された義歯床は、前述の比較例1〜6の義歯床(表2)と比較して、いずれも耐久性(降伏点強度)に優れていた。また、実施例1B〜3Bの義歯床用材料は、切削加工性にも優れていた。
更に、実施例1B〜3Bの義歯床用材料はシャルピー衝撃強さが高いことから、得られる義歯床の耐衝撃性が高いことが期待される。
【0132】
〔実施例1C〕
第1態様の実施形態Cの義歯床用材料に該当する樹脂ブロックを作製した。以下、詳細を示す。
実施例3A中の製造例1において、メチルメタクリレートシラップの量を90質量部に変更し、5質量部のメチルメタクリレートモノマーを10質量部のメタクリル酸に変更したこと以外は実施例3A中の製造例1と同様の操作を行い、厚さ30mmの直方体状の樹脂ブロックを作製した。得られた樹脂ブロックの材質は、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(以下、「MMA−MAA共重合体」ともいう)である。
【0133】
実施例1Aにおいて、「カナセライト」を、上記樹脂ブロックに変更したこと以外は、実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を下記表4に示す。
【0134】
〔実施例4B〕
実施例2Bにおいて、「MUX−60」を、同質量の「M−521」に変更したこと以外は実施例2Bと同様の操作を行った。
ここで、「M−521」は、株式会社カネカ「カネエース(登録商標)M−521」であり、架橋構造を有するゴム状重合体であるブタジエン系(共)重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合したゴムである。
結果を下記表4に示す。
【0135】
〔実施例5B〕
実施例2Bにおいて、「MUX−60」を、同質量の「W−450」に変更したこと以外は実施例2Bと同様の操作を行った。
ここで、「W−450」は、三菱レイヨン株式会社「メタブレン(登録商標)W−450」であり、架橋構造を有するゴム状重合体であるアクリル系(共)重合体に、熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムである。
結果を下記表4に示す。
【0136】
〔実施例6B〕
実施例2Bにおいて、「MUX−60」を、同質量の「S−2001」に変更したこと以外は実施例2Bと同様の操作を行った。
ここで、「S−2001」は、三菱レイヨン株式会社「メタブレン(登録商標)S−2001」であり、シリコーン系重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合したゴムである。
結果を下記表4に示す。
【0137】
〔実施例3D〕
実施例1Aにおいて、「カナセライト」を、第2態様の義歯床用材料であるポリフェニルスルホン(PPSU)製の樹脂ブロック(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン社製「レーデルR5000」;形状は厚さ30mmサイズの直方体状)に変更したこと以外は実施例1Aと同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【0138】
〔比較例7〕
アクロンクリアNo.5(ジーシー社製)を原料とし、以下のようにして樹脂ブロックを作製した。
アクロンクリアNo.5の粉材60質量部と液材25質量部とを容器に量り取り、両者を混ぜ合わせた。得られた混合物をしばらく放置して餅状になったところで、餅状になった混合物を、あらかじめ用意していた内部にポリオレフィン製のフィルムを張ったアクリル製の型(内部が120mm×130mm×35mmの直方体状)の中に流し込み、蓋をした。次いでこの型を、水が入った加圧釜に入れた後、加圧釜内を加圧した。加圧された加圧釜を、100℃となるまで60分以上かけてゆっくり加熱した。加圧釜の温度が100℃に達してからも加熱を維持し、加圧釜の温度を30〜40分間、100℃に維持した。次いで加圧釜の加熱を終了し、加圧釜を30℃まで冷却した。
次に、加圧釜内の圧力を常圧まで戻し、加圧釜から型を取出し、型から出来上がったブロックを取り出した。このブロックを研磨することにより、110mm×120mm×30mmサイズの直方体状の樹脂ブロックを得た。
【0139】
次に、実施例1Aにおいて、「カナセライト」を、上記樹脂ブロックに変更したこと以外は、実施例1Aと同様の操作を行った。但し、3点曲げ試験及びシャルピー衝撃試験は省略した。
結果を下記表4に示す。
【0140】
〔比較例8〕
比較例7において、アクロンクリアNo.5(ジーシー社製)を、アクロンライブピンクNo.8(ジーシー社製)に変更したこと以外は比較例7と同様の操作を行った。
結果を下記表4に示す。
【0141】
【表4】
【0142】
−表4の説明−
・M−521は、ブタジエン系(共)重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合したゴムである。
・W−450は、アクリル系(共)重合体に、熱可塑性樹脂成分をグラフト重合することにより得られるゴムである。
・S−2001は、シリコーン系重合体に熱可塑性樹脂成分をグラフト重合したゴムである。
【0143】
表4に示すように、各実施例の義歯床用材料を用いて作製された義歯床は、比較例1〜8の義歯床(比較例1〜6は表2参照)と比較して、いずれも耐久性(降伏点強度)に優れていた。また、各実施例の義歯床用材料は、切削加工性にも優れていた。各実施例の中でも、実施例1C、4B、6B、及び3Dの義歯床は、耐久性(降伏点強度)に特に優れていた。
【0144】
各実施例に対し、Mw120未満のPMMAからなる比較例7及び8の義歯床用材料を用いて作製された義歯床は、耐久性(降伏点強度)が低かった。また、比較例7及び8の義歯床用材料は、各実施例の義歯床用材料と比較して、切削加工性に劣っていた(即ち、切削時に割れ及び欠けの少なくとも一方が発生した)。
【0145】
〔参考例1〕
参考例1として、義歯床に基づき、その義歯床の原料として用いた義歯床用材料の曲げ強さを推定する方法の一例を示す。
義歯床からは、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を削り出すことは、実際上、困難である。
しかし、義歯床について以下の微小曲げ試験を行うことにより、義歯床の原料として用いた義歯床用材料の曲げ強さを推定することができる。
【0146】
−微小曲げ試験−
義歯床から、長さ25mm、幅2mm、厚さ2mmの微小試験片を削り出し、得られた微小試験片について、試験速度1mm/分、支点間距離20mmの条件で3点曲げ試験を実施した。この3点曲げ試験を「微小曲げ試験」とし、得られた曲げ強さを「微小曲げ強さ」とする。
「微小曲げ試験」の測定条件のうち、上記条件以外の条件は、義歯床用材料の3点曲げ試験の条件と同様である。
【0147】
実施例1A、1B、2B、3B、1D、及び2Dのそれぞれの義歯床について、微小曲げ強さを測定した。
得られた結果を、下記表5に示す。
下記表5には、各実施例の義歯床用材料の曲げ強さも示す。
【0148】
【表5】
【0149】
図2は、表5の結果に基づいて作成した、義歯床の微小曲げ強さと義歯床用材料の曲げ強さとの関係を示すグラフである。
図2に示すように、義歯床用材料の曲げ強さは、義歯床の微小曲げ強さに正比例することがわかった。従って、義歯床の微小曲げ強さを測定することにより、その義歯床の原料として用いた義歯床用材料の曲げ強さを推定できることがわかった。
図2のグラフより、例えば、微小曲げ強さが95MPa以上である義歯床は、曲げ強さが100MPa以上の義歯床用材料を原料として作製されたものであると推定される。この微小曲げ強さが95MPa以上である義歯床は、耐久性(圧縮試験の降伏点強度)に優れた義歯床であることが期待される。
【0150】
〔参考例2〕
参考例2として、義歯床に基づき、その義歯床の原料として用いた義歯床用材料の衝撃強さ(シャルピー衝撃強さ)を推定する方法の一例を示す。
義歯床からは、長さ80mm、幅10mm、残り幅8mm、厚さ4mmのシングルノッチ付き試験片を削り出すことは、実際上、困難である。
しかし、義歯床について以下の微小衝撃試験を行うことにより、義歯床の原料として用いた義歯床用材料の衝撃強さ(シャルピー衝撃強さ)を推定することができる。
【0151】
−微小衝撃試験−
義歯床から、長さ25mm、幅2mm、厚さ2mmの微小試験片を削り出し、得られた微小試験片に対し、東洋精機製作所製の新ダインスタットテスターを用いて、フラットワイズ垂直での打撃方向、ハンマー容量20kgf・cm、空振り角度90°、持ち上げ角度90°、ノッチ無しの条件で、上記微小試験片の下端から7.5mm上方の位置に打撃を加え、ダインスタット衝撃試験を実施した。
このダインスタット衝撃試験を「微小衝撃試験」とし、得られた衝撃強さを「微小衝撃強さ」とする。
【0152】
実施例3A、1B、2B、及び3Bのそれぞれの義歯床について、微小衝撃強さを測定した。
得られた結果を、下記表6に示す。
下記表6には、各実施例の義歯床用材料の衝撃強さも示す。
【0153】
【表6】
【0154】
図3は、表6の結果に基づいて作成した、義歯床の微小衝撃強さと義歯床用材料の衝撃強さとの関係を示すグラフである。
図3に示すように、義歯床用材料の衝撃強さは、義歯床の微小衝撃強さに正比例することがわかった。従って、義歯床の微小衝撃強さを測定することにより、その義歯床の原料として用いた義歯床用材料の衝撃強さを推定できることがわかった。
図3のグラフより、例えば、微小衝撃強さが13kJ/m
2以上である義歯床は、衝撃強さが2.0kJ/m
2以上の義歯床用材料を原料として作製されたものであると推定される。この微小衝撃強さが13kJ/m
2以上である義歯床は、耐衝撃性に優れた義歯床であることが期待される。
【0155】
日本出願2014−020634及び日本出願2014−265370の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。