(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貯留部における前記移動部材の移動方向一側端は、前記摺動部材における前記移動部材の移動方向一側端で開口されると共に、前記貯留部における前記移動部材の移動方向一側端は、前記貯留部における前記移動部材の移動方向中間部よりも、前記移動部材の移動方向及び前記貯留部と前記ガイド部材との対向方向の双方に対して交差する方向の寸法が大きい請求項3に記載のバックル装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の各実施の形態を
図1から
図6に基づいて説明する。なお、各図において矢印FRは本バックル装置10が適用された車両前側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示し、矢印UPは車両上側を示す。また、以下の各実施の形態を説明するにあたり、説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を諸略する。
【0020】
<第1の実施の形態の構成>
図1及び
図2に示されるように、本バックル装置10は、駆動手段としてのバックル駆動装置12を備えている。バックル駆動装置12は、本バックル装置10が適用されるシート14の車幅方向内側に設けられている。バックル駆動装置12は、ベースプレート16を備えている。ベースプレート16は、板状に形成されており、ベースプレート16の長手方向は、車両前後方向に沿い、ベースプレート16の厚さ方向は、車両上下方向に沿っている。ベースプレート16の車両上側には、ガイド部材としてのフレーム18が設けられている。フレーム18は、鉄やステンレス等の金属材料によって形成されており、ボルト等の締結手段によって車両の車体の床部等の車体側に固定されている。
【0021】
図4に示されるように、フレーム18は、上壁20を備えている。上壁20は板状に形成されており、上壁20の長手方向は、車両前後方向に沿い、ベースプレート16の厚さ方向は、車両上下方向に沿っている。上壁20は、車両上下方向にベースプレート16と対向されている。上壁20の車幅方向内側端からは、内側ガイド壁22が車両下側へ延出されており、上壁20の車幅方向外側端からは、外側ガイド壁24が車両下側へ延出されている。
【0022】
これらの内側ガイド壁22及び外側ガイド壁24は、板状とされている。内側ガイド壁22及び外側ガイド壁24の長手方向は、車両前後方向に沿い、内側ガイド壁22及び外側ガイド壁24の厚さ方向は、車幅方向に沿っており、内側ガイド壁22と外側ガイド壁24とは、車幅方向に対向されている。内側ガイド壁22と外側ガイド壁24との間には、駆動部としての駆動ねじ26が設けられている。駆動ねじ26の中心軸線方向は、車両前後方向に沿っており、駆動ねじ26は、中心軸線周りに回転自在とされている。
【0023】
一方、
図2に示されるように、フレーム18の車両前側には、駆動力出力手段としてのモータアクチュエータ28が設けられている。モータアクチュエータ28には、駆動ねじ26の車両前側の端部が連結されており、駆動ねじ26は、モータアクチュエータ28のモータから出力される駆動力によって駆動ねじ26の中心軸線周りに回転される。モータアクチュエータ28のモータは、モータドライバやECU等の制御手段(図示省略)に電気的に接続されており、モータアクチュエータ28のモータは、制御手段によって制御される。
【0024】
一方、
図4に示されるように、フレーム18の内側ガイド壁22と外側ガイド壁24との間には、移動部材としてのスライダ30が設けられている。スライダ30は、鉄等の金属によって形成されている。また、
図3及び
図4に示されるように、スライダ30を車両前後方向に対して直交する方向に切ったスライダ30の断面形状は、スライダ30の車両上下方向中間部よりも車両下側部分が長方形状で、スライダ30の車両上下方向中間部よりも車両上側部分が半円形状とされている。
【0025】
スライダ30には、ねじ孔32が形成されている。ねじ孔32は、車両前後方向にスライダ30を貫通している。ねじ孔32には、駆動ねじ26(
図2参照)が貫通配置されている。駆動ねじ26は、ねじ孔32に螺合されており、駆動ねじ26の中心軸線周りのスライダ30の回転が制限された状態で、駆動ねじ26が回転されることによって、スライダ30は、車両前後方向へ移動可能とされている。
【0026】
また、
図4に示されるように、バックル装置10は、連結部材としての2本のワイヤロープ34を備えている。これらワイヤロープ34は、長尺状に形成されており、車幅方向に並んで設けられている。
図2に示されるように、ワイヤロープ34の長手方向中間部よりも基端側では、ワイヤロープ34の長手方向が車両前後方向に沿っており、更に、ワイヤロープ34の長手方向基端部は、駆動ねじ26よりも車両下側でスライダ30に連結されている。このため、スライダ30が車両前後方向へ移動されると、ワイヤロープ34がその長手方向へ移動される。
【0027】
さらに、
図2に示されるように、フレーム18の車両後側には、ワイヤガイド36が設けられている。ワイヤガイド36には、溝部としてのワイヤガイド溝38が形成されている。ワイヤガイド溝38は、ワイヤガイド36の車幅方向内側面で開口されていると共に、ワイヤガイド36の車幅方向内側に設けられたカバープレート40(
図1参照)によって車幅方向内側から閉止されている。
【0028】
さらに、ワイヤガイド溝38の長手方向一端は、ワイヤガイド36の車両前側面で開口されていると共に、ワイヤガイド溝38は、長手方向中間部で車幅方向を軸方向とする軸周り方向に湾曲されており、ワイヤガイド溝38の長手方向他端は、ワイヤガイド36の車両上側面で開口されている。ワイヤガイド溝38には、ワイヤロープ34が通されており、ワイヤロープ34は、ワイヤガイド36のワイヤガイド溝38に倣って車幅方向(シート14の幅方向)を軸方向とする軸周り方向へ曲げられている。さらに、ワイヤガイド36の車両上側面で開口よりもワイヤロープ34の長手方向先端側は、車両前斜め上側(
図2の矢印A方向)へ延びている。
【0029】
一方、バックル装置10は、バックルカバー42を備えている。バックルカバー42は、長手方向が車両上下方向に対して車両前後方向へ傾斜した方向(
図2の矢印A方向及び矢印B方向)とされた筒形状とされている。バックルカバー42内における車両上側部分には、バックル44が設けられている。バックル44は、バックルボデー46を備えている。
【0030】
バックルボデー46は、車幅方向外側へ開口した断面U字形状に形成されており、バックルボデー46の内側には、ラッチ等のバックル44の構成部品(図示省略)が設けられている。
図1に示されるシートベルト装置48のウェビング50に設けられたタング52が、バックルボデー46の車両前斜め上側からバックルボデー46の内側に挿入されると、バックルボデー46に設けられたラッチが、タング52に形成された孔部に入り、これによって、タング52がバックル44に係合される。
【0031】
また、
図2に示されるように、バックル装置10は、バックルガイド54を備えている。バックルガイド54は、バックルカバー42よりも柔軟な合成樹脂材によって形成されている。バックルガイド54は、バックルカバー42の長手方向(
図2の矢印A方向及び矢印B方向)に長い筒状にとされており、バックルカバー42の車両後斜め下側部分は、フレーム18に連結されている。バックルガイド54は、バックルカバー42の車両後斜め下側の端部からバックルカバー42に挿入されており、これによって、バックルカバー42は、バックルガイド54に案内されて、車両前斜め上側(
図2の矢印A方向側)及び車両後斜め下側(
図2の矢印B方向側)へ移動できる。
【0032】
また、バックルガイド54の内側には、ワイヤロープ34が通っている。ワイヤロープ34の長手方向先端側は、バックルガイド54の車両前斜め上側の端部からバックルガイド54の外側へ延び、バックルカバー42に設けられたバックルボデー46へ連結されている。このため、ワイヤロープ34が長手方向先端側へ移動されることによって、ワイヤロープ34の長手方向先端部が、車両前斜め上側(
図2の矢印A方向側)へ移動されると、バックル44がバックルカバー42を伴って車両前斜め上側へ移動される。これに対して、ワイヤロープ34が長手方向基端側へ移動されることによって、ワイヤロープ34の長手方向先端部が車両後斜め下側(
図2の矢印B方向側)へ移動されると、バックル44がバックルカバー42を伴って車両後斜め下側へ移動される。
【0033】
一方、
図2に示されるように、本バックル装置10は、摺動部材としてのシュー56を備えている。シュー56は、スライダ30やフレーム18よりも軟質の合成樹脂材によって形成されており、
図4及び
図5に示されるように、フレーム18の内側ガイド壁22と外側ガイド壁24との間に配置されている。
【0034】
図3に示されるように、シュー56は、ベース部58を備えている。ベース部58は、板状に形成されており、ベース部58上にスライダ30が配置される。ベース部58の車両前後方向中間部よりも車両前側には内側壁部60及び外側壁部62が形成されている。内側壁部60は、シュー56のベース部58の車幅方向内側端部から車両上側へ立設されており、外側壁部62は、シュー56のベース部58の車幅方向外側端部から車両上側へ立設されている。
【0035】
内側壁部60の車幅方向内側面と外側壁部62の車幅方向外側面との間隔及びシュー56のベース部58の車幅方向寸法は、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面と外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間隔よりも僅かに小さくされている。このため、
図4及び
図5に示されるように、シュー56がフレーム18の内側ガイド壁22と外側ガイド壁24との間に配置された状態で、シュー56とフレーム18との間には、車幅方向に隙間が形成される。
【0036】
図3に示されるように、シュー56の内側壁部60及び外側壁部62の車両上側には、アーチ部64が形成されている。アーチ部64は、スライダ30の車両上側面に倣って湾曲された半円形状に形成されており、アーチ部64の車幅方向内側端は、シュー56の内側壁部60の車両上側端に繋がり、アーチ部64の車幅方向外側端は、シュー56の外側壁部62の車両上側端に繋がっている。
図4に示されるように、シュー56のベース部58上に配置されたスライダ30の車両上側面は、アーチ部64に当接され、これによって、スライダ30のシュー56に対する車両上側への相対変位が抑制される。
【0037】
また、
図3に示されるように、シュー56の内側壁部60の車両後側端からは、内側保持片66が車両後側へ延出されており、シュー56の外側壁部62の車両後側端からは、外側保持片68が車両後側へ延出されている。これらの内側保持片66及び外側保持片68の車両後側端部には保持爪70が形成されている。内側保持片66の保持爪70は、内側保持片66の車両後側端部から車幅方向外側へ突出されており、外側保持片68の保持爪70は、外側保持片68の車両後側端部から車幅方向内側へ突出されている。
図5に示されるように、これらの内側保持片66及び外側保持片68の保持爪70は、シュー56のベース部58上に配置されたスライダ30の車両後側面に当接され、これによって、スライダ30のシュー56に対する車両後側への相対変位が抑制される。
【0038】
さらに、これらの内側保持片66及び外側保持片68の保持爪70の車両後側面は、荷重受け面72とされている。内側保持片66の保持爪70の荷重受け面72に車両後側からの荷重が付与されると、内側保持片66は、車幅方向内側へ弾性変形される。これに対して、外側保持片68の保持爪70の荷重受け面72に車両後側からの荷重が付与されると、外側保持片68は、車幅方向外側へ弾性変形される。
【0039】
スライダ30がシュー56に取付けられる際には、スライダ30がシュー56の車両後側からシュー56に接近され、シュー56の内側保持片66及び外側保持片68の各保持爪70の荷重受け面72は、スライダ30によって車両後側から押圧される。これによって、シュー56の内側保持片66及び外側保持片68が車幅方向側へ弾性変形されることによって、スライダ30は、内側保持片66の保持爪70と外側保持片68の保持爪70との間を通ることができ、スライダ30をシュー56のベース部58上に配置できる。
【0040】
一方、
図3及び
図5に示されるように、シュー56は、前側当接部74を備えている。前側当接部74は、シュー56のアーチ部64よりも車両前側に形成されていると共に、シュー56のベース部58の車両上側に配置されている。さらに、前側当接部74の車幅方向内側端は、シュー56の内側壁部60の車両上側端に繋がっていると共に、前側当接部74の車幅方向外側端は、シュー56の外側壁部62の車両上側端に繋がっている。シュー56の前側当接部74の車両後側端は、シュー56のベース部58上に配置されたスライダ30の車両前側面に当接され、これによって、スライダ30のシュー56に対する車両前側への相対変位が抑制される。
【0041】
また、
図3及び
図5に示されるように、シュー56における前側当接部74よりも車両上側には、弾性変形部としての内側ばね片76及び外側ばね片78が設けられている。内側ばね片76は、シュー56の内側壁部60から車両前側へ延出されている。内側ばね片76の車両前後方向中間部には、内側第1曲げ部80が形成されており、内側ばね片76は、内側第1曲げ部80で車幅方向内側へ曲げられている。内側ばね片76は、内側ばね片76の車両後側端と内側第1曲げ部80との間でシュー56のベース部58上に配置されたスライダ30の車幅方向内側面に当接されている。
【0042】
また、内側ばね片76の内側第1曲げ部80よりも車両前側には内側第2曲げ部82が形成されている。内側ばね片76は、内側第2曲げ部82で車両前側へ曲げられており、内側ばね片76の内側第2曲げ部82よりも車両前側部分は、内側摺動部84とされている。
【0043】
これに対して、外側ばね片78は、シュー56の外側壁部62から車両前側へ延出されている。
図5に示されるように、外側ばね片78の車両前後方向中間部には、外側第1曲げ部86が形成されており、外側ばね片78は、外側第1曲げ部86で車幅方向外側へ曲げられている。外側ばね片78は、外側ばね片78の車両後側端と外側第1曲げ部86との間でシュー56のベース部58上に配置されたスライダ30の車幅方向外側面に当接されている。
【0044】
また、外側ばね片78の外側第1曲げ部86よりも車両前側には外側第2曲げ部88が形成されている。外側ばね片78は、外側第2曲げ部88で車両前側へ曲げられており、外側ばね片78の外側第2曲げ部88よりも車両前側部分は、外側摺動部90とされている。
【0045】
シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面と、外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面との間隔は、内側ばね片76及び外側ばね片78の何れにも車幅方向の荷重が作用されていない状態で、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面とフレーム18の外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間隔(すなわち、フレーム18の内側の幅寸法)以上とされている。このため、シュー56がフレーム18の内側ガイド壁22と外側ガイド壁24との間に配置されると、内側ばね片76及び外側ばね片78の少なくとも一方が、内側ガイド壁22と外側ガイド壁24との対向方向内側へ弾性変形される。
【0046】
また、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面と、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面との間の摩擦は、スライダ30の車幅方向内側面を内側ガイド壁22の車幅方向外側面へ当接させた状態でスライダ30を移動させた場合にスライダ30の車幅方向内側面と内側ガイド壁22の車幅方向外側面との間で生じる摩擦よりも小さくなるように、シュー56の材質やシュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面の粗さ等が設定されている。
【0047】
さらに、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面と、フレーム18の外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間の摩擦は、スライダ30の車幅方向外側面を外側ガイド壁24の車幅方向内側面へ当接させた状態でスライダ30を移動させた場合にスライダ30の車幅方向外側面と外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間で生じる摩擦よりも小さくなるように、シュー56の材質やシュー56の外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面の粗さ等が設定されている。
【0048】
また、
図4及び
図5に示されるように、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90の各々には、貯留部としてのグリス溜り92が形成されている。内側ばね片76の内側摺動部84のグリス溜り92は、内側摺動部84の車幅方向内側面に形成された車両前後方向に長い溝とされ、内側ばね片76の内側摺動部84の車両前側端及び車両後側端の双方で開口されている。この内側ばね片76の内側摺動部84のグリス溜り92には、潤滑剤として摩擦低減部材を構成するとしてのグリス94が設けられている。
【0049】
これに対し、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90のグリス溜り92は、外側摺動部90の車幅方向外側面に形成された車両前後方向に長い溝とされ、外側ばね片78の外側摺動部90の車両前側端及び車両後側端の双方で開口されている。この外側ばね片78の外側摺動部90のグリス溜り92には、グリス94が設けられている。また、グリス94は、グリス溜り92のみならず、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面、フレーム18の外側ガイド壁24の車幅方向内側面等にも塗布されている。
【0050】
<第1の実施の形態の作用、効果>
本バックル装置10では、例えば、本バックル装置10が適用されるシート14に対応した車両のドアが、閉状態から開状態に変化すると、このドアの開閉状態の変化によってカーテシスイッチ等のドア開閉検出手段等の検出手段によって検出される。また、例えば、乗員96がシート14に着座すると、シート14に設けられた荷重センサ等の乗員検出手段等の検出手段によってシート14への乗員96の着座が検出される。このような車両への乗員の乗車に伴うドアやシート14の状態の変化によって検出手段から制御手段へ出力される電気信号のレベルが切替わる。これによって、モータアクチュエータ28が駆動されて、駆動ねじ26が回転されると、スライダ30が駆動ねじ26と共に回転しようとする。
【0051】
ここで、スライダ30は、シュー56に設けられており、スライダ30は、シュー56に対する相対変位が制限されている。このため、スライダ30が駆動ねじ26と共に回転しようとすると、シュー56がスライダ30と共に回転しようとする。しかしながら、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84が、フレーム18の内側ガイド壁22に当接され、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90が、フレーム18の外側ガイド壁24に当接されているため、シュー56の回転が制限され、ひいては、スライダ30の回転が制限される。これによって、モータアクチュエータ28が駆動されて、駆動ねじ26が回転されると、スライダ30がシュー56と共に車両後側へスライドされる。これによって、ワイヤロープ34が長手方向先端側へ移動されると、バックルボデー46がワイヤロープ34によって車両前斜め上側へ押圧される。
【0052】
このワイヤロープ34からの押圧力がバックルボデー46を介してバックルカバー42に伝わると、
図2に示されるように、バックルカバー42は、バックルガイド54に案内されて車両前斜め上側(
図2の矢印A方向側)へ移動される。このように、バックルカバー42が移動されることによって、乗員96はタング52をバックル44へ容易に係合させることができ、ウェビング50を容易に装着できる。
【0053】
これに対し、タング52がバックル44に係合されると、バックル44のバックルスイッチから制御手段へ出力される電気信号のレベルが切替わる。これによってモータアクチュエータ28が駆動されて、駆動ねじ26が回転されると、スライダ30がシュー56と共に車両前側へスライドされる。これによって、ワイヤロープ34が長手方向基端側へ移動されると、バックルカバー42がバックルボデー46を介してワイヤロープ34に引張られる。これによって、バックルカバー42がバックルガイド54に案内され、
図1に示されるように、バックルカバー42は、車両後斜め下側(
図1の矢印B方向側)へ移動される。
【0054】
ここで、シュー56は、スライダ30やフレーム18よりも軟質の合成樹脂材によって形成されている。しかも、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面と、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面との間の摩擦は、スライダ30の車幅方向内側面を内側ガイド壁22の車幅方向外側面へ当接させた状態でスライダ30を移動させた場合にスライダ30の車幅方向内側面と内側ガイド壁22の車幅方向外側面との間で生じる摩擦よりも小さい。
【0055】
さらに、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面と、フレーム18の外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間の摩擦は、スライダ30の車幅方向外側面を外側ガイド壁24の車幅方向内側面へ当接させた状態でスライダ30を移動させた場合にスライダ30の車幅方向外側面と外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間で生じる摩擦よりも小さい。このため、スライダ30がフレーム18に当接された状態でスライダ30が車両前後方向へ移動される構成に比べて、バックル44が移動される際の音の発生を抑制できる。
【0056】
また、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90の各々のグリス溜り92にはグリス94が設けられ、更に、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面、フレーム18の外側ガイド壁24の車幅方向内側面等にもグリス94が塗布されている。このグリス94によって、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84の車幅方向内側面と、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面との間の摩擦及びシュー56の外側ばね片78の外側摺動部90の車幅方向外側面と、フレーム18の外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間の摩擦が低減される。これによって、シュー56は車両前後方向へ円滑に移動でき、バックル44が移動される際の音の発生を効果的に抑制できる。
【0057】
さらに、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90の各々にグリス溜り92が形成され、これらのグリス溜り92にグリス94が設けられる。このため、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90とフレーム18の内側ガイド壁22及び外側ガイド壁24との間でグリス94を比較的長期に亘りグリス94を保持できる。これによって、シュー56の車両前後方向への円滑な移動及びバックル44が移動される際の音の発生の抑制を比較的長期に亘って維持できる。
【0058】
また、シュー56の内側壁部60の車幅方向内側面と外側壁部62の車幅方向外側面との間隔及びシュー56のベース部58の車幅方向寸法は、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面と外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間隔よりも僅かに小さくされている。このため、シュー56をフレーム18の内側へ容易に配置できる。
【0059】
さらに、このように、シュー56の内側壁部60の車幅方向内側面と外側壁部62の車幅方向外側面との間隔及びシュー56のベース部58の車幅方向寸法は、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面と外側ガイド壁24の車幅方向内側面との間隔よりも僅かに小さい。このため、シュー56がフレーム18の内側に配置された状態では、シュー56の内側壁部60とフレーム18の内側ガイド壁22との間及びシュー56の外側壁部62とフレーム18の外側ガイド壁24との間に隙間が形成される。
【0060】
このため、例えば、駆動ねじ26が
図4の矢印C方向へ回転されると、スライダ30と共にシュー56が駆動ねじ26の中心軸線周りに
図4の矢印C方向へ回転しようとすると、シュー56の内側壁部60がフレーム18の内側ガイド壁22に接近される。
【0061】
ここで、本実施の形態では、シュー56がフレーム18の内側に配置された状態で、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84が、フレーム18の内側ガイド壁22に当接されている。このため、シュー56が
図4の矢印C方向へ回転されると、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84がフレーム18の内側ガイド壁22から押圧反力を受けることによってシュー56の内側ばね片76が弾性変形される。これによって、シュー56の回転によってシュー56の内側壁部60がフレーム18の内側ガイド壁22に当接された際に生じる衝撃を緩和でき、この衝撃による音の発生を抑制できる。
【0062】
また、駆動ねじ26が
図4の矢印D方向へ回転され、これによって、シュー56が
図4の矢印D方向へ回転された際には、シュー56の外側壁部62がフレーム18の外側ガイド壁24へ当接されるが、このときの衝撃をシュー56の外側ばね片78の弾性変形によって緩和でき、この衝撃による音の発生を抑制できる。
【0063】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0064】
図6に示されるように、本実施の形態では、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84のグリス溜り92は、車両前後方向中間部よりも車両前後方向両側で車両上下方向寸法が大きくされている。また、図示は省略するが、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90のグリス溜り92も、内側ばね片76の内側摺動部84のグリス溜り92と同様に、車両前後方向中間部よりも車両前後方向両側で車両上下方向寸法が大きくされている。
【0065】
このような構成では、シュー56のグリス溜り92とフレーム18の内側ガイド壁22及び外側ガイド壁24との車両上下方向の対向範囲が、グリス溜り92の車両前後方向中間部よりもグリス溜り92の車両前側端及び車両後側端で大きくなる。シュー56が車両前後方向へスライドされると、フレーム18の内側ガイド壁22の車幅方向外側面及び外側ガイド壁24の車幅方向内側面に塗布されているグリス94は、シュー56のグリス溜り92におけるシュー56の移動方向側端(車両前側端又は車両後側端)からグリス溜り92の内側へ溜められる。
【0066】
ここで、本実施の形態では、シュー56のグリス溜り92とフレーム18の内側ガイド壁22及び外側ガイド壁24との車両上下方向の対向範囲が、グリス溜り92の車両前後方向中間部よりもグリス溜りの車両前側端及び車両後側端で大きい。このため、シュー56が車両前後方向へスライドされた際に、フレーム18の内側ガイド壁22の及び外側ガイド壁24に塗布されているグリス94を、車両上下方向に大きな範囲からグリス溜り92に集めることができる。これによって、シュー56のグリス溜り92にグリス94を長期に亘って保持でき、シュー56にグリス溜り92を形成することによって得られる効果を長期に亘って維持できる。
【0067】
また、本実施の形態の構成は、シュー56のグリス溜り92の車両前後方向中間部よりもグリス溜り92の車両前後方向両側で車両上下方向寸法が大きくされていることを除いて基本的に前記第1の実施の形態と同じである。このため、本実施の形態は、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、上記の各実施の形態は、シュー56がフレーム18及びスライダ30よりも軟質の合成樹脂材によって形成された構成であった。しかしながら、シュー56とフレーム18との当接部分における摩擦が、スライダ30とフレーム18とが当接された状態で、スライダ30が移動された際に生じる摩擦よりも小さくなる構成であればよい。したがって、シュー56は、例えば、金属によって形成されてよく、シュー56を構成する材料に関しては特に限定されるものはない。
【0069】
また、上記の各実施の形態において、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90の各々に形成されるグリス溜り92の数については特に言及しなかったが、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90の各々に形成されるグリス溜り92の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0070】
さらに、上記の各実施の形態は、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84及び外側ばね片78の外側摺動部90にグリス溜り92が形成される構成であった。しかしながら、例えば、シュー56のアーチ部64の車両上側面の少なくとも一部を平面としてシュー56のアーチ部64の車両上側面の平面部分がフレーム18の上壁20に当接する構成とし、更に、シュー56のアーチ部64の車両上側面の平面部分にグリス溜りを形成してもよい。このように、シュー56におけるフレーム18又はフレーム18以外の部材との当接部分に適宜にグリス溜りを形成することができる。
【解決手段】本バックル装置では、スライダ30がシュー56に設けられており、シュー56の内側ばね片76の内側摺動部84がフレーム18の内側ガイド壁22に当接され、シュー56の外側ばね片78の外側摺動部90がフレーム18の外側ガイド壁24に当接されている。ここで、シュー56の内側摺動部84及び外側摺動部90とフレーム18との間の摩擦は、スライダ30がフレーム18に当接された状態でスライダ30がフレーム18に対して移動された際のスライダ30とフレーム18との間の摩擦よりも小さい。このため、シュー56がフレーム18に案内されて移動された際の音の発生を抑制できる。