特許第6113883号(P6113883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113883受容体に対する親和性が増大した変異型LIGHT分子を使用する癌療法のための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113883
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】受容体に対する親和性が増大した変異型LIGHT分子を使用する癌療法のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/525 20060101AFI20170403BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20170403BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20170403BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20170403BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170403BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 13/08 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 15/00 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 37/06 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   C07K14/525ZNA
   A61K37/02
   A61K39/395 T
   A61K35/76
   A61K31/7088
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
   C07K19/00
   !C12N15/00 A
   !C07K16/28
   !A61P1/04
   !A61P1/16
   !A61P11/00
   !A61P13/08
   !A61P13/12
   !A61P15/00
   !A61P17/00
   !A61P37/06
【請求項の数】35
【外国語出願】
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2016-55140(P2016-55140)
(22)【出願日】2016年3月18日
(62)【分割の表示】特願2014-547350(P2014-547350)の分割
【原出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-117766(P2016-117766A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/576,222
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399019892
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−シン フー
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/144029(WO,A1)
【文献】 特表2007−516694(JP,A)
【文献】 MORISHIGE, T. et al.,"Creation of a LIGHT mutant with the capacity to evade the decoy receptor for cancer therapy.",BIOMATERIALS,2010年 4月,Vol.31, No.12,pp.3357-3363,(ISSN 0142-9612)
【文献】 MAURI, D.N. et al.,"LIGHT, a new member of the TNF superfamily, and lymphotoxin alpha are ligands for herpesvirus entry mediator.",IMMUNITY,1998年 1月,Vol.8, No.1,pp.21-30,(ISSN 1074-7613)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を有する変異体LIGHT分子であって、前記配列は、
i)野生型ヒトLIGHTと比較して増大した親和性でLIGHTのネズミ受容体に結合し、かつ
ii)野生型ヒトLIGHTと比較して少なくとも同じ親和性でLIGHTのヒト受容体に結合する能力を、前記分子に付与し、
ここで、前記能力は、LIGHTの細胞外ドメインのコーディング配列内の変異に起因し、前記変異体LIGHT分子は、配列番号3〜25のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するLIGHTの細胞外ドメインを含み、
前記LIGHTのネズミ受容体および前記LIGHTのヒト受容体は、LTβRおよびHVEMから成る群より選択される、変異体LIGHT分子。
【請求項2】
前記細胞外ドメインが、配列番号3〜25で指定されたアミノ酸配列から成る群より選択される、請求項1に記載の変異体LIGHT分子。
【請求項3】
変異体LIGHTタンパク質、ペプチド、タンパク質またはペプチドの断片、および変異体LIGHTをコードする核酸分子の発現産物から成る群より選択される、請求項1に記載の変異体LIGHT分子。
【請求項4】
ヒトLIGHT配列に由来するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の変異体LIGHT分子。
【請求項5】
請求項1に記載の変異体LIGHT分子を含む免疫学的組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の変異体LIGHT分子に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物であって、前記組成物は、腫瘍細胞に対して細胞傷害性のTリンパ球を刺激する、医薬組成物。
【請求項7】
前記薬剤が、前記変異体LIGHT分子に化学的に結合体化されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬剤が、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記薬剤が、キメラ抗体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬剤が、ヘテロミニボディである、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記薬剤が、一本鎖抗体である、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬剤が、腫瘍抗原を認識するために十分な抗体断片である、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
前記変異体LIGHT分子が、細胞傷害性T細胞を刺激するために十分な細胞外ドメインのセクションを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記セクションが、LIGHTの100〜150個のアミノ酸をヒトLIGHTアミノ酸の順序で含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記セクションが、ヒトLIGHTタンパク質の85〜240位からのアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
変異体LIGHTが、プロテアーゼ認識配列EQLI(残基81〜84)(配列番号1)に変異を含み、それによって前記プロテアーゼ認識配列が不活性化される、請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
変異体LIGHTが、欠失を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項18】
前記変異体LIGHTが、アミノ酸配列
【化42】
を含む細胞外ドメインに変異を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項19】
配列番号3、配列番号5、配列番号4、または配列番号20で指定された配列を有する変異体LIGHT細胞外ドメイン。
【請求項20】
原発性腫瘍の成長の低減に使用するためのまたは癌転移の処置のための、請求項1に記載の変異体LIGHT分子に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物。
【請求項21】
(i)配列番号3〜25で指定されたアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列から成るヒト(hLIGHT)変異体分子と(ii)Her−2に対する抗体とを含む融合タンパク質。
【請求項22】
腫瘍細胞を特異的に認識する薬剤との組み合わせで請求項3に記載のLIGHTタンパク質の断片を含む組成物。
【請求項23】
前記薬剤が、腫瘍抗原に対する抗体である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記薬剤が、腫瘍表面受容体を結合するリガンドである、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
LIGHT分子と連結、融合または結合体化された腫瘍抗原を認識するアミノ酸領域を含むキメラタンパク質であって、前記LIGHT分子が、請求項1に記載の変異体LIGHT分子である、キメラタンパク質。
【請求項26】
請求項1に記載の変異体LIGHT分子を患者中の腫瘍に送達するための組成物であって、前記組成物は:(a)前記変異体LIGHT分子をコードする核酸分子を有するアデノウイルス、または;(b)前記変異体LIGHT分子を有するナノ粒子;または(c)前記変異体LIGHT分子、を含む、組成物。
【請求項27】
原発性腫瘍の成長または癌転移を、前記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させるための、請求項6に記載の医薬組成物であって、前記組成物は、LIGHTポリペプチド変異体または断片に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含み、ここで、前記組成物は、細胞傷害性Tリンパ球の生産を刺激するために十分なものである、医薬組成物。
【請求項28】
前記薬剤が、表面腫瘍抗原を認識する抗体である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記薬剤が、HER2、HER4、HERB、EGFR、STEAP、c−MET、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA−125、MUC−1;rasまたはp53の異常産物;およびDcR3から成る群より選択される腫瘍抗原に特異的な抗体である、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記薬剤が、前記LIGHT断片に化学的に結合体化されているか、または前記LIGHT断片に組換え融合されている抗体である、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記LIGHT断片が、前記ヒトLIGHTタンパク質のアミノ酸85−240を含むLIGHTの細胞外ドメインを含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記医薬組成物が、静脈内投与されることを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
前記癌転移が、ケモカイン、接着分子、およびナイーブT細胞をプライミングするための共起刺激分子の少なくとも1つの生産を刺激することにより低減される、請求項27に記載の組成物。
【請求項34】
前記癌が、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、腎癌、肝臓癌、白血病および皮膚癌から成る群より選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が、化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2011年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/576,222号に対する優先権の利益を主張する。関連出願で示された開示は、米国特許商標庁にもともと提出された全ての情報を含む、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、EFS−Web経由でASCII形式で提出した配列表を含み、該配列表はその全体が参照により本明細書に援用されている。2012年12月5日に作成した前記ASCIIコピーの名称は、700286_SEQ_ST25.txtであり、サイズは54,899バイトである。
【0003】
標的化薬剤に連結、融合または結合体化されたLIGHTタンパク質の実施形態を用いて腫瘍細胞に標的化させるための方法および組成物を開示する。これらの組成物は、前臨床および臨床試験を行うために十分な親和性で、および野生型ヒトLIGHTタンパク質と比較して増大した親和性で、ヒト受容体とマウス受容体の両方に結合する。LIGHTの実施形態の腫瘍細胞への標的化は、腫瘍成長を低減させ、および転移を低減させる。
【背景技術】
【0004】
免疫適格宿主における定着腫瘍に浸潤する活性化T細胞の不足は、宿主が腫瘍を処理できないことを説明するのに役立つ。動物モデルでの実験はもちろん、臨床研究も、免疫系が個々の腫瘍細胞を認識し、致死させることはできるが、宿主が定着した固形腫瘍を根絶させることは一般にできないことを示す。宿主が定着腫瘍に対して有効に応答できないことについては幾つかの説明があり得る:1)リンパ組織に移動する不適切な数の腫瘍細胞(特に、非造血器官由来のもの)のためのリンパ組織における不良な直接的または間接的提示に起因する早期T細胞プライミングの欠如;2)腫瘍組織の周りの生体バリアに起因して腫瘍部位に移動する不適切な数の免疫細胞;3)限られたレパートリーに起因して腫瘍成長に対処することができない消耗したまたは短命の活性化抗原特異的T細胞;4)腫瘍に対するT細胞の不応答または無視;5)阻害性微小環境、または免疫系を活性化するような腫瘍細胞内の刺激の欠如。
【0005】
臨床的には、腫瘍部位へのT細胞の浸潤の増加は、より良好な予後と密接に関連づけられる。予防的ワクチン接種は、接種された腫瘍細胞の拒絶反応の誘導に有効であったという報告がある。しかし、腫瘍成長が定着してしまった後の治療的ワクチン接種は、通常、腫瘍を拒絶することができない。腫瘍の外科的縮小は、腫瘍に対する免疫応答をブーストしない。さらに、リンパ組織における過剰数の抗原特異的T細胞の存在にもかかわらず、腫瘍細胞上での強力な抗原の発現でさえ定着腫瘍の拒絶反応の促進には不十分であることが報告された。定着腫瘍をプライミングするおよび/または定着腫瘍に浸潤するT細胞の欠如は、抗原性の癌に対する自然または治療的アプローチについての大きな障害の1つである。加えて、腫瘍組織内での共起刺激分子の不十分な発現は、浸潤性T細胞を活性化できないことがあり、その結果、腫瘍活性T細胞のアネルギーが生じることになり得る。
【0006】
早期T細胞プライミングの欠如は、直接提示のために固形組織からリンパ組織に移動したほんの少数の腫瘍細胞にことによると起因する。骨髄キメラを使用する遺伝子解析は、MHC−1制限CD8T細胞のプライミングについての2つの抗原提示モデルを明らかにした。直接プライミングは、T細胞と抗原エピトープを有するタンパク質を合成する細胞との会合によって媒介され、これに対してクロスプライミングは、他の細胞によって合成された抗原を取り込む宿主抗原提示細胞によって媒介される。腫瘍特異的T細胞がプライミングされるメカニズムは、激しく論議されており、今のところまだ結論に達していない。腫瘍抗原がどのようにおよびどこでT細胞を提示するのかを理解することは、腫瘍に対する治療作用の発見に役立つだろう。
【0007】
LIGHT(リンホトキシンに対して相同であり、誘導性発現を呈示し、およびヘルペスウイルス侵入媒介因子、Tリンパ球によって発現される受容体、についてHSV糖タンパク質Dと競合する)は、TNFリガンドスーパーファミリーのII型膜貫通型糖タンパク質である。LIGHT(TNFSF14)は、間質細胞およびT細胞上でそれぞれ主として発現されるリンホトキシンβ受容体(Lymphotoxin β Receptor:LTβR)およびヘルペスウイルス侵入媒介因子(herpes virus entry mediator:HVEM)と相互作用する、腫瘍壊死因子(tumor−necrosis factor:TNF)ファミリーメンバーである。LTβRシグナル伝達は、組織化リンパ構造の形成に必要とされ、これは、リンパ器官におけるナイーブT細胞および樹状細胞(dendritic cells:DC)を誘引するケモカインおよび接着分子の発現を誘導することができるその能力に少なくとも一部は起因し得る。in vivoでのLIGHTによる間質細胞上のLTβRの刺激は、CCL21の発現につながり、このCCL21は、LRαβ(LTβRのもう1つのリガンド)の不在下で脾臓のT細胞エリア内のナイーブT細胞を誘引する。これらの結果は、LIGHTがLTβRと相互作用してCCL21ケモカイン発現を調節できることの証拠となる。加えて、LIGHTは、腫瘍に対するT細胞免疫強化および/または自己免疫増加につながる、T細胞プライミングおよび発現のための強力な、CD28非依存性共刺激活性を呈示する。LTβR経由でのシグナル伝達は、組織化されたリンパ組織の形成に必要である。リンホトキシンβ受容体(LTβR)は、リンパ構造の形成に重要な役割を果たす。LTβRは、TNFファミリーの2つのメンバー、膜リンホトキシンαβおよびLIGHT、によって活性化される。LTβRは、リンパ節(lympho nodes:LNs)の形成および二次リンパ器官におけるT、Bゾーンの別個の組織化に枢要な役割を果たす。LTβR経由でのシグナル伝達は、二次リンパ器官内でのケモカインおよび接着分子の発現を調節する。ケモカインおよび接着分子は、脾臓におけるDCおよびリンパ球の移動および位置決めを制御する。非リンパ組織における可溶性LTまたはTNFの過発現は、機能的リンパ系新生を促進するために十分なものであった。
【0008】
LIGHTは、HVEM−LおよびLT−γとも呼ばれてきた。新たなTNF命名法のもとでは、それをTNFSF14と呼ぶ。LIGHTは、240アミノ酸(amino acid:aa)タンパク質であって、37aa細胞質ドメインと22aa膜貫通領域と181aa細胞外ドメインとを含有するタンパク質である。他のTNFリガンドファミリーメンバーと同様に、LIGHTは、ホモ三量体として組み立てられると予測される。LIGHTは、活性化T細胞によって生産され、最初、HVEM結合についてHSV糖タンパク質Dと競合するその能力によって同定された。LIGHTは、リンホトキシンβ受容体(LTβR)およびデコイ受容体(DcR3TR6)に結合することも証明されている。
【0009】
LIGHTは、T細胞活性化およびリンパ組織の形成にユニークな役割を果たす。LIGHTとLTβR間の相互作用は、LTα−/−マウスの脾臓においてリンパ構造を回復させる。加えて、LIGHTのアップレギュレーションは、リンパ様構造の形成に備えて、T細胞活性化および非リンパ組織への移動を生じさせる。逆に、LIGHT−/−マウスは、T細胞活性化不全および遅延型心拒絶反応を示した。したがって、LIGHTは、リンパ組織の形成も促進して局所免疫応答を強化する、強力な共起刺激分子である。流入領域リンパ組織におけるナイーブT細胞の効率的プライミングの欠如および腫瘍内での腫瘍特異的T細胞の拡大不能は、癌の根絶の妨げになる。
【0010】
微小転移(顕微鏡で見ることができる癌細胞の小さな集合体)は、異種原発性腫瘍の発生の非常に早期に確立され、それらの臨床的検出前に遠位組織部位に播種し得る。例えば、乳癌における検出可能な転移は、その原発性腫瘍サイズが非常に小さいときに観察することができる。それ故、診断時に多くの癌患者は、既に顕微鏡的転移を有し、この観察が、固形腫瘍を有する患者のための術後アジュバント療法の開発につながった。これらの利点にもかかわらず成功は限られており、転移性疾患の最適な処置は、癌療法において有意な課題を提起し続けている。
【0011】
様々なヒトおよびネズミの癌は、抗原性であることおよびT細胞によって認識され得ることが証明されている。腫瘍反応性T細胞は、理論上は、腫瘍抗原陽性癌細胞を見つけ出して破壊し、周囲の健常組織を残すことができる。しかし、ヒトにおける悪性疾患に対した自然に存在するT細胞の応答は、腫瘍、原発性のものまたは転移、の退縮を生じさせるには十分でないことが多い。散在性自然発生性だが免疫原性の腫瘍は、T細胞寛容を誘導することによって破壊を回避することが報告されている。しかしながら、腫瘍抗原特異的T細胞の活性化は、自然発生腫瘍の発達を完全に防止することができない。したがって、寛容性の破壊、および原発性腫瘍の処置の前後に腫瘍を拒絶することが可能なかかるT細胞の産生は、転移性腫瘍細胞を作り出す潜在的アプローチである。抗原喪失改変体は、免疫学的圧力下でエスケープできるので、免疫療法は、特異的腫瘍抗原の知識とは無関係に利用可能であるはずである。
【0012】
免疫学的見地から、現在の臨床戦略は、悪性疾患に対する免疫防御を妨げ、およびさらに免疫療法の有効性を低下させる。腫瘍の除去は、腫瘍誘導免疫抑制を逆転させることができるが、免疫療法前の原発性腫瘍の外科的切除は主要な抗原源も除去し、その結果、細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T−lymphocytes:CTL)の活性化が低減されることがある。プライミング効率は負荷される腫瘍抗原と相関するからである。加えて、残留腫瘍細胞を致死させることを意図したものである現行のアジュバント処置(化学療法および放射線療法を含む)は、実際には、T細胞を破壊または阻害することにより抗腫瘍免疫応答を損なわせることがある。
【0013】
転移性疾患は、癌における罹病率および死亡率の主原因である。外科手術、化学療法または放射線は、多くの場合、原発性腫瘍成長を制御することができるが、播種性転移の根絶成功は、まだ稀である。1つの未解明の問題は、かかる奏効により、入ってくるCTLが教育されることおよびその後、腫瘍部位から出て行くことが可能になるかどうかである。もう1つの未解明の問題は、その後、これらのCTLが、パトロールすること、および周辺の自然転移腫瘍細胞を有効に排除することができるかどうかである。LIGHTでの腫瘍の局所処置は、原発性腫瘍から出て、遠位腫瘍に浸潤して、既存の自然転移を完全に根絶する、多量の腫瘍特異的CTLを産生させる。
【0014】
上に示したように、ヒトにおける悪性疾患に対して自然に発生するT細胞応答は、腫瘍、原発性のものまたは転移細胞、の退縮を生じさせるために十分なものでないことが多い。免疫療法は、周囲の健常組織を残しながら播種性腫瘍抗原陽性癌細胞を捜して破壊することができる、腫瘍反応性T細胞を潜在的に惹起することになるが、腫瘍保有宿主に対する能動的ワクチン接種は、限られた恩恵しか示さない。大部分の腫瘍において明確に定義された抗原がないことで、能動的ワクチン接種または養子移入療法のいずれかが限定される。特異的腫瘍抗原の決定なしでも有効である免疫療法は、より利用でき、より治療に適しているだろう。しかし、腫瘍組織に対する能動免疫応答をいつおよびどのようにブーストするのかは、まだ曖昧である。
【0015】
ナイーブまたはエフェクター−メモリーT細胞は、その周辺を離れ、能動プロセスによって流入領域リンパ節に入ることができる。原発性腫瘍に動員された腫瘍特異的CTLのうちの十分な数が生き残り、その微小環境から出て周辺組織をパトロールすることおよび播種性転移を根絶することができるかどうかは、まだ分っていない。加えて、有効な免疫療法の開発における課題は、それらが臨床的に有意義になる前に顕微鏡的転移細胞を検出して破壊することができる循環腫瘍特異的T細胞の数を増加させるまたは該T細胞の機能を強化するアプローチを考案することである。原発性腫瘍へのLIGHTの送達は、CTLの産生を助長することができ、その後、そのCTLは、その局所腫瘍から出て、周辺組織をパトロールして、転移を、それらが臨床的に有意義になる前に根絶することができる。
【0016】
承認されている乳癌療法としては、外科手術、放射線、化学療法(例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル)、シグナル伝達阻害剤(例えば、ラパチニブ、ネラチニブ)、およびモノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ)が挙げられる。Herceptin(トラスツズマブ)は、乳癌のための承認抗Her−2抗体療法である。Her2(ヒト上皮成長因子受容体2(c−erbB2またはneu)は、ヒト乳癌の25〜30%において増幅される。Her2の過発現は、より不良な予後と関連づけられる。
【0017】
ヒトIgGフレームワーク上のネズミ抗原結合残基を利用してHer2に標的化するヒト化モノクローナル抗体は、1998年にFDAによって単剤療法に承認された。単剤療法についての全奏効率は、11.6〜35%の間である。
【0018】
しかし、抗Her2抗体療法には問題がある。抗Her2/neu療法では、処置の成功が望まれるものより少なく、非奏効率が高い。抗Her2/neu療法は、有効であるために、化学療法を伴う長期の処置を必要とする。患者の大多数は、耐性を発現し、1年以内に再発し、および処置には$100,000USDを超える費用がかかることもある。
【0019】
幾つかの戦略は、治療用抗体の効力を改善することができる:
a.細胞傷害性または免疫修飾性免疫サイトカイン(IL−2、LIGHTなど);
b.薬物結合体(化学療法薬)
c.Fc媒介効果の修飾:例えば、抗体アイソタイプの交換;親和性の修飾またはFc受容体結合の変更;および半減期の増加。
【0020】
抗原−抗体結合または設計に対する改善が、
a.より高い親和性
b.内在化増加または減少
c.抗体安定性増加
d.二重特異性、三重特異性抗体
によって求められることがある。
【0021】
本開示において、野生型LIGHTばかりでなくLIGHTの様々な実施形態での腫瘍への標的化は、野生型LIGHTでの以前の結果と比較して、原発性腫瘍および転移に対する強い免疫を生じさせる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1A)
核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を有する変異体LIGHT分子であって、上記配列は、
i)野生型ヒトLIGHTと比較して増大した親和性でLIGHTのネズミ受容体に結合し、かつ
ii)野生型ヒトLIGHTと少なくとも同じ親和性でLIGHTのヒト受容体に結合する能力を、上記分子に付与し、
ここで、上記能力は、LIGHTの細胞外ドメインのコーディング配列内の変異に起因する、変異体LIGHT分子。
(項目3A)
上記細胞外ドメインが、出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25と指定されるアミノ酸配列から成る群より選択される、項目1に記載の変異体LIGHT分子。
(項目5A)
変異体LIGHTタンパク質、ペプチド、タンパク質またはペプチドの断片、および変異体LIGHTをコードする核酸分子の発現産物から成る群より選択される、項目1に記載の変異体LIGHT分子。
(項目6A)
ヒトLIGHT配列に由来するアミノ酸配列を含む、項目1に記載の変異体LIGHT分子。
(項目7A)
項目1に記載の変異体LIGHT分子を含む免疫学的組成物。
(項目8A)
項目1に記載の変異体LIGHT分子に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物であって、上記組成物は、腫瘍細胞に対して細胞傷害性のTリンパ球を刺激する、医薬組成物。
(項目9A)
上記薬剤が、上記変異体LIGHT分子に化学的に結合体化されている、項目8に記載の組成物。
(項目10A)
上記薬剤が、ヒト化モノクローナル抗体である、項目8に記載の組成物。
(項目11A)
上記薬剤が、キメラ抗体である、項目8に記載の組成物。
(項目12A)
上記薬剤が、ヘテロミニボディである、項目8に記載の組成物。
(項目13A)
上記薬剤が、一本鎖抗体である、項目8に記載の組成物。
(項目14A)
上記薬剤が、腫瘍抗原を認識するために十分な抗体断片である、項目8に記載の組成物。
(項目15A)
上記変異体LIGHT分子が、細胞傷害性T細胞を刺激するために十分な細胞外ドメインのセクションを含む、項目8に記載の組成物。
(項目16A)
上記セクションが、LIGHTの約100〜150個のアミノ酸をヒトLIGHTアミノ酸の順序で含む、項目15に記載の組成物。
(項目17A)
上記セクションが、ヒトLIGHTタンパク質の約85〜240位からのアミノ酸配列を含む、項目15に記載の組成物。
(項目18A)
変異体LIGHTが、プロテアーゼ認識配列EQLI(残基81〜84)(配列番号1)に変異を含み、それによって上記プロテアーゼ認識配列が不活性化される、項目8に記載の組成物。
(項目19A)
変異体LIGHTが、欠失を含む、項目8に記載の組成物。
(項目20A)
上記変異体LIGHTが、アミノ酸配列
【化42】
を含む細胞外ドメインに変異を含む、項目8に記載の組成物。
(項目21A)
m4−14、m4−7およびm4−16と称する変異体LIGHT細胞外ドメイン配列。
(項目22A)
原発性腫瘍の成長の低減に使用するためのまたは癌転移の処置のための、項目1に記載の変異体LIGHT分子に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物。
(項目23A)
出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25と指定されるアミノ酸配列から成る群より選択されるヒト(hLIGHT)変異体分子。
(項目24A)
項目23に記載の分子とHer−2に対する抗体とを含む融合タンパク質。
(項目25A)
腫瘍細胞を特異的に認識する薬剤との組み合わせでプロテアーゼ耐性LIGHTタンパク質の断片を含む組成物。
(項目26A)
上記薬剤が、腫瘍抗原に対する抗体である、項目25に記載の組成物。
(項目27A)
上記薬剤が、腫瘍表面受容体を結合するリガンドである、項目25に記載の組成物。
(項目28A)
LIGHT分子と連結、融合または結合体化された腫瘍抗原を認識するアミノ酸領域を含むキメラタンパク質であって、上記LIGHT分子が、腫瘍環境でプロテアーゼ消化に対して耐性であるか、または変異体LIGHT分子である、キメラタンパク質。
(項目29A)
項目1に記載の変異体LIGHT分子を患者中の腫瘍に送達するための方法であって、上記方法は:(a)上記分子を必要とする患者に、上記分子をコードする核酸分子を有するアデノウイルスを投与する工程、または;(b)上記分子を必要とする患者に、上記分子を有するナノ粒子を投与する工程;または(c)上記分子を必要とする患者への上記分子の直接移入(direct transfer)を含む、方法。
(項目30A)
原発性腫瘍の成長または癌転移を低減させる方法であって、上記方法は:(a)LIGHTポリペプチド変異体または断片に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む、項目8に記載の医薬組成物を投与する工程であって、ここで、上記組成物は、細胞傷害性Tリンパ球の生産を刺激するために十分なものである、工程;および(b)上記原発性腫瘍の成長または癌転移を、上記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程を含む、方法。
(項目31A)
上記薬剤が、表面腫瘍抗原を認識する抗体である、項目30に記載の方法。
(項目32A)
上記薬剤が、HER2、HER4、HERB、EGFR、STEAP、c−MET、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA−125、MUC−1;rasまたはp53の異常産物;およびDcR3から成る群より選択される腫瘍抗原に特異的な抗体である、項目30に記載の方法。
(項目33A)
上記薬剤が、上記LIGHT断片に化学的に結合体化されているか、または上記LIGHT断片に組換え融合されている抗体である、項目30に記載の方法。
(項目34A)
上記LIGHT断片が、ヒトLIGHTタンパク質のアミノ酸85−240を含むLIGHTの細胞外ドメインを含む、項目30に記載の方法。
(項目35A)
上記医薬組成物が、静脈内投与される、項目30に記載の方法。
(項目36A)
上記癌転移が、ケモカイン、接着分子、およびナイーブT細胞をプライミングするための共起刺激分子の少なくとも1つの生産を刺激することにより低減される、項目30に記載の方法。
(項目37A)
上記癌が、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、腎癌、肝臓癌、白血病および皮膚癌から成る群より選択される、項目30に記載の方法。
(項目38A)
化学療法薬または放射線療法を投与する工程をさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目39A)
腫瘍の成長および癌転移を低減させる方法であって、上記方法は:(a)項目8に記載の組成物を投与する工程;または(b)LIGHTをコードする核酸分子もしくはその断片を個体の腫瘍部位に導入する工程であって、上記LIGHTは、細胞外ドメインに変異を含むか、プロテアーゼ耐性であり、かつLIGHTは、腫瘍細胞表面に安定して存在する、工程;および(c)上記原発性腫瘍の成長・癌転移を、上記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することにより低減させる工程を含む、方法。
(項目40A)
核酸が、既存の腫瘍部位に送達されるか、または既存の腫瘍部位に対して遠位の部位に送達される、項目39に記載の方法。
(項目41A)
原発性腫瘍の成長および癌転移を低減させる方法であって、上記方法は:(a)腫瘍特異的抗体を含む医薬組成物を投与する工程;(b)LIGHTタンパク質をコードする核酸分子を腫瘍部位に導入する工程であって、上記LIGHTは、ヒトLIGHTタンパク質またはその変異体もしくは断片であるか、あるいはプロテアーゼ耐性である、工程;(c)腫瘍細胞の表面で上記LIGHTタンパク質またはその断片を安定して発現させる工程;および(d)上記腫瘍の成長および癌転移を、上記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程を含む、方法。
LIGHTの実施形態、例えば、腫瘍に対する標的化薬剤に連結、融合または結合体化された変異体LIGHTタンパク質、ペプチド、またはそれらの断片、での腫瘍への標的化は、腫瘍の成長を低減させ、転移(微小転移を含む)も低減させる。標的化薬剤は、抗体を含む。さらに、腫瘍抗原に対する抗体に連結されたサイトカインは、微小転移に対して有用である。
【0023】
LIGHT(TNFファミリーメンバー)は、複合分子ネットワークの一部であり、および免疫サイトカインとして使用するための卓越した候補である(図8)。
【0024】
LIGHT(TNFSF14)は、リンパ組織、未成熟DCおよび活性化T細胞上で三量体として発現される。
【0025】
LIGHTは、標的細胞上のLTbRおよびHVEMを結合する。
【0026】
LIGHTは、ヒトでは、多くの腫瘍によって分泌される可溶性デコイ受容体3も結合する。
【0027】
TNFファミリーメンバーの相互作用は、免疫調節を制御する。LIGHTの三部構成の活性が、それを免疫サイトカインとして使用するための卓越した候補にする:LIGHTは、免疫修飾のためにLTβRとHVEMの両方を結合する;LTβRと相互作用して、ケモカインおよび接着分子を増加させる;ならびにT細胞を誘引する。LIGHTは、増加された免疫機能および腫瘍免疫のためHVEMによってT細胞およびNK細胞を活性化させ;ならびにLTβRまたはHVEM発現性腫瘍のアポトーシスを命令する(図9)。
【0028】
アデノウイルスアプローチを用いる、融合タンパク質の形態でのLIGHTの腫瘍への送達は、腫瘍サイズの縮小および転移の制御に有効であった(図10、11)(表1)。しかし、LIGHTを使用する融合構築物の生産には問題があった。scFV(neu)−mLIGHT融合に関しては凝集および低生産問題があった。加えて、ヒトLIGHT構築物、例えば抗neu(Fab)−hLIGHTは、野生型LIGHTまたはマウスLIGHTと比較して、マウス受容体に対する減少された結合親和性を有したので、ネズミモデルにおいて有効性を証明することは困難であった。
【0029】
したがって、安定性および親和性が増加されたLIGHT分子であって、in vitroおよびin vivoで疾患のマウスモデルにおいてもヒトにおいても試験することができるscFV(neu)−LIGHT融合タンパク質または他の融合タンパク質を産生させるために使用することができるものであるLIGHT分子を、作出した。
【0030】
さらに、新規変異体ヒトLIGHT分子であって、野生型ヒトLIGHT(hLIGHT)より大きい親和性でLIGHTのマウス受容体に結合し、およびLIGHTのヒト受容体への結合を野生型ヒトLIGHTと比較して同じまたはそれ以上に有するものであるLIGHT分子を開示する。抗体媒介癌療法に対する改善および癌の処置のための免疫療法に対する改善を開示する。本明細書において用いる場合の「野生型」は、供給源哺乳動物、例えばヒト、マウス、における配列に特有のアミノ酸または核酸配列を指す。
【0031】
改善されたLIGHTおよび改善されたLIGHT−標的化薬剤融合構築物の生産の解決策を、1つには、次の工程によって得た:ヒトLIGHT(hLIGHT)(「野生型」)はマウスLIGHTより安定しているので、それを作出のためのプラットホームとして使用した。生産を容易にするためおよび治療効力を増加させるために、ネズミLTbRおよびHVEM(mLTbRおよびmHVEM)ならびにヒトLTbRおよびHVEM(hLTbRおよびhHVEM)への同等またはそれ以上の結合、ならびに改善された発現および安定性を有するように、hLIGHTを作出した(図17、18)。その意味で、作出されたLIGHT分子は、LIGHTに「由来した」。
【0032】
hLIGHTを作出し、増加されたLTβRおよびマウスHVEM結合(図21)ならびにヒトLTβRおよびヒトHVEMへの好適な結合(図23)を有するクローンを同定した。前記マウスおよびヒト受容体への結合の確認を、CHO細胞において生産されたscFV−LIGHT融合体において行った(図23)。ヒト変異体LIGHT構築物を融合タンパク質としてin vitroで試験した。scFV(neu)に融合させた新規のより高親和性のヒト変異体LIGHT分子の1つである、7164−m4−14LIGHTは、細胞カウントおよびMTSによって測定したところ、7164抗体単独またはLIGHT単独と比較して有意に良好なTUBO細胞の成長を示した(図25、26)。
【0033】
ヒト変異体LIGHT構築物を、アデノウイルス構築物で、宿主免疫応答を刺激するその潜在的機能についてin vitroおよびin vivoで試験した(図29)。ヒトLIGHT変異体m4−14細胞外ドメインを、抗neu抗体断片をコードする一本鎖断片(scFV)とともに送達した(ad−neu−変異体LIGHT)。ad−neu−変異体LIGHTは、in vitroでもin vivoでもneuに対するCD8+ CTL応答を、未修飾ヒトLIGHT細胞外ドメインを含有する構築物(ad−neu−ヒトLIGHT)と比較して改善した(図30〜32、35)。ad−neu−変異体LIGHTはまた、ad−neu−ヒトLIGHTを含有する構築物と比較して増加された数の抗neu抗体の生産を刺激する(図33)。抗癌ワクチンとして試験したとき、ad−neu−変異体LITHTは、neuしか含有しないワクチンより腫瘍を予防する点で有効であり(図34)、neu特異的細胞致死を増加させた(図36)。LIGHTは、HVEM受容体によりIFNを生産するようにNK細胞を刺激することができ、同時に、LTbRによりIL−6を生産するようにMEFを刺激することができる。図37は、変異体LIGHTが、Rag−1−脾細胞においてWtLIGHTよりはるかに高度のIFN−γ生産を誘導したことを明示する。図38は、変異体LIGHTが、MEF細胞においてWtヒトLIGHTより高度のIL−6生産を誘導したことを明示する。したがって、変異体LIGHTは、WtLIGHTより強力な刺激因子である。
【0034】
腫瘍組織において抗体−ヒト変異体LIGHT融合体により免疫応答を誘導するための、外科手術前のヒト変異体LIGHT、または結合体化組成物のアデノウイルス送達は、その腫瘍から出て転移を根絶させる十分な、プライミングされた、抗原特異的エフェクターT細胞を産生させる。癌抗原に特異的な抗体と、プロテアーゼ消化に耐性であるLIGHT(例えば、LIGHTの81〜84位領域における変異体LIGHTの1形態)とを別々に投与することもできる。外科的切除前のTNFSF14(LIGHT)での原発性腫瘍への標的化は、自然転移の根絶のためにより良い免疫応答を惹起するための新戦略である。ヒト変異体LIGHT処置剤での処置は、悪性の腫瘍の成長を減速させる。
【0035】
癌療法に適する組成物は、ヒトLIGHTタンパク質の断片に連結、融合または結合体化された腫瘍特異的抗体を含み、前記LIGHT断片は、腫瘍環境でプロテアーゼ消化に対して耐性であり、および腫瘍細胞に対して細胞傷害性のTリンパ球を刺激するために十分なものである。
【0036】
適する組成物は、腫瘍特異的標的化薬剤とヒト野生型配列に比べて変異を有する変異体LIGHTアミノ酸配列とを含む(図6および7)か、ヒト変異体LIGHTタンパク質の断片に連結された腫瘍特異的標的化薬剤を含む。前記標的化薬剤と、前記ヒト変異体LIGHTタンパク質の断片は、融合タンパク質を形成することができ、または前記LIGHTタンパク質の断片を前記標的化薬剤にもしくは前記標的化薬剤の断片に化学的に結合体化させるもしくは別様に連結させることができる。
【0037】
組成物は、適する方法、例えば、直接注入、アデノウイルスベクター、マイクロスフェアまたはナノ粒子によって腫瘍に送達される能力を含む。
【0038】
組換えペプチド、合成ペプチド、組換えLIGHTタンパク質、変異体LIGHTタンパク質、トランケート型LIGHTタンパク質、LIGHTの細胞外ドメイン、LIGHTの保存ドメイン、LIGHTドメインに似ているペプチドミメティック、アミノ酸が修飾されたLIGHTタンパク質またはそれらのペプチドをはじめとする、LIGHTタンパク質に由来するいずれのペプチド断片も、それらを、例えば抗体またはその断片などの腫瘍特異的薬剤に連結、融合または結合体化させることで免疫応答の誘導における使用に適するが、但し、そのLIGHT断片が、腫瘍細胞上に安定して存在することが可能であること、ならびにLIGHTのマウスおよびヒト受容体に対する親和性増加を有することを条件とする。
【0039】
適する組成物は、ヒト化モノクローナル抗体またはキメラ抗体またはヘテロミニボディまたは一本鎖抗体を含む。
【0040】
LIGHTとの結合体化に使用する抗体断片は、腫瘍抗原を認識するために十分なものである。前記断片は、細胞傷害性Tリンパ球を刺激するために十分なものである。
【0041】
LIGHTの断片は、LIGHTの約100〜150個のアミノ酸を含むことがある。LIGHTの断片は、LIGHTの約85〜240位に対応するアミノ酸配列を有することがある。LIGHTの断片は、LIGHTの約100〜150個のアミノ酸を含むこともある。LIGHTの断片は、LIGHTの約90〜240位からのアミノ酸配列を含むことがある。LIGHTの断片は、LIGHTの約84〜240、または83〜240、または82〜240位からのアミノ酸配列を含むことがある。
【0042】
LIGHTの断片はまた、その断片が腫瘍細胞に対して免疫応答を誘導することが可能であるという条件で、LIGHTの約100〜150個のアミノ酸を含むことある。LIGHTの断片は、LIGHTの約90〜235位からのアミノ酸配列を含むことがある。
【0043】
LIGHTの断片は、プロテアーゼ耐性断片を含む。LIGHTの断片は、プロテアーゼ認識配列EQLI(配列番号1)に変異を含むことがある。
【0044】
新規ヒト変異体LIGHT細胞外ドメインを含む組成物は、癌処置に適している。前記LIGHT断片が、以下のアミノ酸配列:
【0045】
【化1】
【0046】
のうちの少なくとも1つを有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0047】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0048】
【化2】
【0049】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0050】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0051】
【化3】
【0052】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0053】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0054】
【化4】
【0055】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0056】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0057】
【化5】
【0058】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0059】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0060】
【化6】
【0061】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0062】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0063】
【化7】
【0064】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0065】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0066】
【化8】
【0067】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0068】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0069】
【化9】
【0070】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0071】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0072】
【化10】
【0073】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0074】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0075】
【化11】
【0076】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0077】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0078】
【化12】
【0079】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0080】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0081】
【化13】
【0082】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0083】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0084】
【化14】
【0085】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0086】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0087】
【化15】
【0088】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0089】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0090】
【化16】
【0091】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0092】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0093】
【化17】
【0094】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0095】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0096】
【化18】
【0097】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0098】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0099】
【化19】
【0100】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0101】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0102】
【化20】
【0103】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0104】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0105】
【化21】
【0106】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0107】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0108】
【化22】
【0109】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0110】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0111】
【化23】
【0112】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0113】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0114】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0115】
【化24】
【0116】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0117】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0118】
【化25】
【0119】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0120】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0121】
【化26】
【0122】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0123】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0124】
【化27】
【0125】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0126】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0127】
【化28】
【0128】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0129】
前記LIGHT断片が、アミノ酸配列:
【0130】
【化29】
【0131】
を有する細胞外ドメインを含む組成物を開示する。
【0132】
ヒトおよびマウス受容体に結合する新規ヒトLIGHT細胞外ドメインを図6、7および28に列挙する。本明細書に開示するLIGHT変異体は、それらの生物学的特性に関してもそれらの効力に関しても予想外である。図21(「hLIGHT変異体は、mLTbRおよびmHVEMに対する結合親和性増加を有する」)に示すように、これらの新たな変異体は、野生型ヒトLIGHTと比較して、マウスLIGHT受容体に対する結合親和性増加を有するばかりでなく、ヒトLIGHT受容体に対する有意な結合親和性増加も有する。加えて、これらの変異体は、野生型ヒトLIGHTと比較して、安定性増加を有する。それらの有意に改善された異種間親和性に加えて、これらのタンパク質はまた、図31および32(Super LIGHTは、neuに対するCD8 CTL応答−−−−in vivo致死−−−−を改善することができる」)に示すように、細胞致死の点で実質的に野生型ヒトLIGHTより効果的である。これらの特定を保有するであろうLIGHTの変異体を産生させることができることは、本発明の時点では、当業者には予測できなかった。図6および7は、前記変異体の多くが、マウス配列内にあるものでもあるEに変異したKを214に有することを示す。変異体m4−14、m4−7、およびm4−16は、特に興味深い。
【0133】
原発性腫瘍の成長および/または癌転移を低減させる1つの方法は、次の工程を含む:
LIGHTの実施形態のうちの少なくとも1つに、例えば断片に、連結された腫瘍特異的抗体を含む医薬組成物を投与する工程;および
前記原発性腫瘍の成長および/または癌転移を、その腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程。
【0134】
前記抗体は表面腫瘍抗原を認識し、および前記抗体を前記LIGHT断片に化学的に結合体化させることができ、または前記LIGHT断片に組換え融合もしくは別様に連結させることができる。
【0135】
前記抗体−LIGHTを含む医薬組成物を静脈内投与することができ、または当業者に公知のもしくは本明細書に開示する他の方法によって投与することができる。
【0136】
原発性腫瘍の成長および/または癌転移を低減させる1つの方法は、次の工程を含む:
(a)LIGHTの少なくとも1つの実施形態に連結された腫瘍特異的抗体を含む医薬組成物を投与する工程;
(b)そのLIGHT実施形態をコードする核酸分子を個体の腫瘍部位に導入する工程(この場合のLIGHTは、プロテアーゼ耐性である);および
(c)前記原発性腫瘍成長・癌転移の低減を、その腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程。
【0137】
前記核酸を既存の腫瘍部位に送達することができ、または既存の腫瘍部位に対して遠位の部位に送達することができる。
【0138】
化学療法薬を抗体−LIGHT療法中または前または後に投与することもできる。
【0139】
放射線療法をLIGHT療法中または前または後に投与することもできる。
【0140】
腫瘍抗原に特異的な抗体の実施形態は、HER2、HER4、HERB、STEAP、c−MET、EGFR、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)、CA−125、MUC−1、上皮腫瘍抗原(epithelial tumor antigen:ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(meranoma−associated antigen:MAGE);rasまたはp53の異常産物;DcR3および任意の他の抗癌抗原から成る群より選択することができる。
【0141】
原発性腫瘍の成長および/または癌転移を低減させる1つの方法は、次の工程を含む:
(a)腫瘍特異的抗体を含む医薬組成物を投与する工程;
(b)LIGHTタンパク質またはその断片をコードする核酸分子を腫瘍部位に導入する工程(この場合のLIGHTは、プロテアーゼ耐性である);および
(c)前記LIGHTタンパク質またはその断片を腫瘍細胞の表面で発現させる工程;および
(d)前記原発性腫瘍成長および/または癌転移の低減を、その腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程。
【0142】
腫瘍抗原を認識するペプチド領域とLIGHTタンパク質の断片とを含むキメラタンパク質を開示する。この薬剤は、腫瘍表面受容体を結合するリガンドであることもある。
【0143】
LIGHTタンパク質の断片と腫瘍細胞を特異的に認識する薬剤とを含む組成物を記載する。
【0144】
ある医薬組成物は、腫瘍特異的成分とカップリングしているLIGHTタンパク質断片を含む。前記腫瘍特異的成分は、腫瘍細胞表面における受容体に対するリガンドを含むことがあり、または腫瘍細胞表面のリガンドを認識する受容体を含むことがある。
【0145】
腫瘍(特に固形腫瘍)を処置するための1つの新規方法は、ケモカインと、接着分子と、ナイーブT細胞のプライミングおよび活性化T細胞の拡大のために必要とされる共起刺激分子とを発現するリンパ様微小環境を、変異体LIGHT分子の使用によって作ることである。より広範なT細胞を腫瘍に対して産生させる。抗体−LIGHT融合体または結合体の直接送達は、腫瘍および転移に対して有効である。抗体−LIGHT結合体または融合産物を腫瘍に標的化させると、対照で処置した腫瘍と比較して腫瘍体積がin vivoで低減される。
【0146】
様々な実施形態において、前記変異体ヒトLIGHTには、天然LIGHTタンパク質の81〜84位からのアミノ酸配列EQLI(配列番号1)を含むタンパク質分解部位のアミノ酸に変更がある。ある実施形態において、前記変異体LIGHTは、タンパク質分解部位、天然LIGHTタンパク質の81〜84位からのアミノ酸配列EQLI(配列番号1)、を有さない。
【0147】
様々な実施形態において、前記変異体ヒトLIGHTには、214位のアミノ酸に変更があり、この場合、214位のリシンがグルタミン酸に変更される。
【0148】
開示する核酸分子は、細胞外ドメイン:
【0149】
【化30】
【0150】
を含む組換えLIGHTをコードする。
【0151】
癌転移は、細胞傷害性Tリンパ球の刺激により、ならびに/またはケモカイン、接着分子、およびナイーブT細胞のプライミングのための共起刺激分子の発現により、低減される。T細胞は、腫瘍部位内で活性化され、血液中を循環することができる。循環T細胞は、好ましくは癌特異的である。前記T細胞産生は、CD8+依存性であり得る。
【0152】
単離された組換え核酸は、プロテアーゼ消化耐性変異体LIGHTをコードするヌクレオチド配列を含む。前記ヌクレオチド配列の1つの実施形態は、
【0153】
【化31】
【0154】
であり、この場合、前記プロテアーゼ消化部位をコードする配列GAGCAGCTGATA(配列番号28)は、変異されている。
【0155】
野生型ヒトLIGHT DNA配列(プロテアーゼ部位をコードする配列EQLI(配列番号1)を太字で示す):
【0156】
【化32】
【0157】
天然ヒトLIGHTアミノ酸配列(プロテアーゼ消化部位を太字下線付きで示す):
【0158】
【化33】
【0159】
変異体ヒトLIGHTアミノ酸配列の1つの態様(EQLI(配列番号1)は、不在であり、それを点々で示す):
【0160】
【化34】
【0161】
マウス変異体LIGHTについてのコドン最適化ヌクレオチド配列、開始ATGを太字で強調する:
【0162】
【化35】
【0163】
ヒト変異体LIGHTについてのコドン最適化ヌクレオチド配列、開始ATGを太字で強調する:
【0164】
【化36】
【図面の簡単な説明】
【0165】
図1図1は、AG104A腫瘍特異的ヘテロ二量体(heterodireic)構築物の略図を示す。ヒトCκを、ヒトIgG3の可撓性上側ヒンジ領域を介して、癌抗原に由来するscFv断片のC末端に融合させた。
図2図2は、Adv−mmlitがneu+ N202腫瘍成長を阻害することを明示する。約8x10 N202 1A細胞を(皮内(i.c.))注射した。約2x1010 vp adv−laczまたはadv−mmlitの腫瘍内注射を第18日および第20日に行った。腫瘍にサイズを週2回モニターした。
図3図3は、scFv−LIGHT融合タンパク質構造設計を示す。図3は、「SL:短鎖リンカー」および「LL:長鎖リンカー」配列をそれぞれ配列番号41および42として開示する。
図4図4は、10 TUBO腫瘍細胞をBABL/cマウスに皮下(s.c.)接種する抗Her2およびAd−LIGHT処置後の腫瘍成長の抑制を示す。Ad−LIGHTまたはAd−LacZの1010 VPを腫瘍接種後第18日に腫瘍内注射した。50μgの抗Her2抗体またはアイソタイプIgGを腫瘍接種後第18および25日に腹腔内(i.p.)注射した。示されている時点で腫瘍成長をモニターした。処置群のすべてに、第21日の後、アイソタイプIgG群と比較して有意な差があった。Ad−LIGHTと抗Her2の併用処置群には、第25日の後、Ad−LIGHT単独の群または抗Her2単独の群のいずれかと比較して有意な相互依存的な差があった。両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行った。示すデータは、平均+SEMであった。p<0.05を有意差と見なした。
図5図5は、抗Her2処置後の腫瘍成長の抑制を示す。10 TUBO腫瘍細胞をBALB/cマウスに皮下接種した。100μgの抗Her2抗体またはアイソタイプIgGを腫瘍接種後第10および17日に腹腔内注射した。示されている時点で腫瘍成長をモニターした。抗Her2で処置した5匹のマウスのうち3匹において腫瘍が再成長した。
図6-1】図6は、新規ヒトlight変異体のタンパク質配列を示す。変異されたアミノ酸を太字、イタリック体および下線付きで記す。ヒト野生型LIGHTに比べて変異体の多くが、214位にEに変異したKを有する−マウス配列に類似している。図6は、出現順に、それぞれ、配列番号43−44、6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図6-2】図6は、新規ヒトlight変異体のタンパク質配列を示す。変異されたアミノ酸を太字、イタリック体および下線付きで記す。ヒト野生型LIGHTに比べて変異体の多くが、214位にEに変異したKを有する−マウス配列に類似している。図6は、出現順に、それぞれ、配列番号43−44、6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図6-3】図6は、新規ヒトlight変異体のタンパク質配列を示す。変異されたアミノ酸を太字、イタリック体および下線付きで記す。ヒト野生型LIGHTに比べて変異体の多くが、214位にEに変異したKを有する−マウス配列に類似している。図6は、出現順に、それぞれ、配列番号43−44、6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図6-4】図6は、新規ヒトlight変異体のタンパク質配列を示す。変異されたアミノ酸を太字、イタリック体および下線付きで記す。ヒト野生型LIGHTに比べて変異体の多くが、214位にEに変異したKを有する−マウス配列に類似している。図6は、出現順に、それぞれ、配列番号43−44、6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図6-5】図6は、新規ヒトlight変異体のタンパク質配列を示す。変異されたアミノ酸を太字、イタリック体および下線付きで記す。ヒト野生型LIGHTに比べて変異体の多くが、214位にEに変異したKを有する−マウス配列に類似している。図6は、出現順に、それぞれ、配列番号43−44、6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図7-1】図7は、新規ヒトLIGHT変異体についてのアミノ酸配列を列挙している。m4−14、m4−7およびm4−16は、特に興味深い。図7は、出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図7-2】図7は、新規ヒトLIGHT変異体についてのアミノ酸配列を列挙している。m4−14、m4−7およびm4−16は、特に興味深い。図7は、出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図7-3】図7は、新規ヒトLIGHT変異体についてのアミノ酸配列を列挙している。m4−14、m4−7およびm4−16は、特に興味深い。図7は、出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25を開示する。
図8図8は、ヒトにおけるLIGHTネットワークを図示する。LIGHT(TNFSF14)は、リンパ組織、未成熟DCおよび活性化T細胞上で三量体として発現され、標的細胞上のLTbRおよびHVEMを結合する。LIGHTはまた、ヒトにおいて、胃腸、骨、胚および軟部組織腫瘍をはじめとする多数の癌によって分泌される可溶性デコイ受容体3(DcR3)を結合する。示されているようなTNFファミリーメンバーの相互作用が、免疫調節を制御する。
図9図9は、LIGHTの3部構成の活性を図示する。LIGHTは、免疫修飾のためにLTβRおよびHVEM両方を結合し、LTβRとの相互作用が、ケモカインおよび接着分子を増加させ、T細胞を誘因する。LIGHTは、増加された免疫機能および腫瘍免疫のためにHVEMによってT細胞およびNK細胞を活性化する。最終的に、LIGHTは、LTβRまたはHVEM発現腫瘍のアポトーシスを命令することができる。
図10図10は、哺乳動物腫瘍付近でのLIGHTのin vivoでの発現が転移を制御することを示す。(C)4T1(通常はあまり免疫原性でない乳癌腫細胞系)は、マウスの乳腺脂肪帯に注射すると、乳癌に似た症状を呈する。それは、肺をはじめとする様々な器官に転移することができる。in vivo培養4T1乳癌腫(1X10細胞)をAd−LIGHTまたはAd−対照(2×10PFU/mL)で24時間感染させ、その後、1X10細胞をBALB/cマウスの側腹部に皮下注射した。(B)コロニー形成(colonogenic)アッセイでの肺転移の分析ために腫瘍接種後第35日にマウスを屠殺するまで、(A)腫瘍成長をモニターした。
図11図11は、Ad−LIGHTが確立した転移を根絶することを示す。BALB/cマウスの側腹部に皮下注射した4T1乳癌腫細胞を、腫瘍接種後第14および17日に1×10PFU Ad−LIGHT(黒色)またはAd対照(白色)で腫瘍内処置した。1つのマウス群を腫瘍負荷後第14日に外科手術のみで処置した(点々模様)。他の4T1腫瘍保有マウスを同じようにAd−LIGHTで処置したが、原発性腫瘍接種後第14日に開始する抗CD8 Ab(YTS.169.4.2)によるCD8枯渇を伴った(灰色)。マウスを分析のために屠殺するまで週に1回、125μg/マウスの抗CD8 Abをマウスに腹腔内投与した。末梢血のFACS染色により確認したところ、CD8+ T細胞の90%より多くが枯渇された。外科手術のみで処置したマウスを除き、他のマウスの原発性腫瘍(約150mm3)を第24日に外科的に切除し、第35日にコロニー形成(colonogenic)アッセイでの肺転移の分析のためにマウスを屠殺した。データは、多数の独立した実験のプールである。
図12図12は、CDR1、CDR2およびCDR3領域を強調した、T細胞受容体のモデルを示す。図12は、配列番号35を開示する。
図13図13は、CDR変異体のペプチド特異性、様々なCDR変異体のQL9/Ld結合およびペプチド−Ld特異性を示す。QL9/Ldで選択された、酵母にディスプレイされた2C変異体のペプチド特異性。(A)CDR3a、(B)CDR3b、(C)CDR1bおよび(D)CDR2aにおける変異体を、(0.4mM)示されているペプチド/Ld/Ig二量体で、または二次試薬(PE)のみでアッセイした。MCMV、YPHFMPTNL(配列番号34);QL9、QLSPFPFDL(配列番号35);QL9改変体は、5位(野生型、F)に単一アミノ酸置換を含有した。酵母細胞をフローサイトメトリーによりpep−Ld複合体の結合についてアッセイした(MFU、平均蛍光単位)。
図14図14は、結晶学的Ly49C二量体(矢印)が2つのHMCクラスI分子を架橋している、変異体Ly49C−H−2Kb複合体のリボン図である。
図15図15は、pepMHC結合および特異性に対するペプチドの「ドミノ」効果を図示する。Ly49C接触領域に段階的に接続する水素結合相互作用のネットワークがある。様々なペプチドが、MHC配座を改変でき、Ly49C結合を変化させることができる。
図16図16は、2B4−CD48の結晶化、およびマウスNK細胞免疫系シナプスを図示する。Ly49C−H−2Kb複合体(1P4L)の構造は、Ly49Cホモ二量体をNK細胞膜に接続する70残基枝領域を含まない。
図17図17は、酵母ディスプレイ(Yeast Display:YD)を使用する新規ヒトLIGHT変異体の作出を図示する。ヒトLIGHTを接合接着受容体Aga2に融合させた。蛍光エピトープタグを正規化に使用し、平衡、動態および熱安定性分析をフローサイトメトリーによって評価した。
図18図18は、酵母ディスプレイ(Yeast Display:YD)を使用する新規ヒトLIGHT変異体の作出を図示する。ヒトLIGHTを接合接着受容体Aga2に融合させた。蛍光エピトープタグを正規化に使用し、平衡、動態および熱安定性分析をフローサイトメトリーによって評価した。
図19図19は、YDにおいて使用するためのLIGHTライブラリーの産生の仕方を示す。ヒトLIGHTを可変エラー率エラープローンPCRに付し、それにより4.5×10クローンが産生された。マウスおよびヒトLIGHT受容体mLTβR、mHVEMおよびhLTβR、hHVEMをそれぞれ使用して選択を行った。
図20-1】図20は、マウスおよびヒトLTβRおよびHVEMに対して試験したときの単離された変異体(構築物)の結合特性を示す。
図20-2】図20は、マウスおよびヒトLTβRおよびHVEMに対して試験したときの単離された変異体(構築物)の結合特性を示す。
図20-3】図20は、マウスおよびヒトLTβRおよびHVEMに対して試験したときの単離された変異体(構築物)の結合特性を示す。
図21図21は、mLTβRおよびmHVEMに対するヒトLIGHT変異体の結合親和性増加を示す。
図22図22は、scFV(neu)−LIGHT融合タンパク質を図示する。ウエスタンブロット、フローサイトメトリーおよびELISAによる検出向上のためにならびに高特異性、一工程精製のためにc末端ストレプトアビジンタグIIを用いて、この融合タンパク質を産生させた。
図23-1】図23(A〜D)は、mLTβR、mHVEMおよびhLTβR、hHVEMに対する4つの変異体ヒトLIGHTクローンの好適な結合を示す。
図23-2】図23(A〜D)は、mLTβR、mHVEMおよびhLTβR、hHVEMに対する4つの変異体ヒトLIGHTクローンの好適な結合を示す。
図24図24は、scFVおよびLIGHTが、scFV−LIGHT融合タンパク質として生産されたときにそれらのそれぞれのリガンドを結合することを示す。
図25図25および26は、scFV(neu)−LIGHT融合タンパク質が、培養中のTUBO細胞の成長を低下させることを示す。TUBOは、BALB−neuTマウスからの自然発生乳腺腫瘍から産生されたクローン化細胞系であり、その細胞膜上でHER−2タンパク質を高度に発現する。(A)TUBO細胞を培養し、5ug/mLのタンパク質で処置し、4日後、成長について評価した。(B)抗neu一本鎖抗体から産生された融合タンパク質7164m4−14LIGHT、および変異体ヒトLIGHT m4−14は、抗体処置または未処置細胞と比較してTUBO細胞の成長を有意に低下させた。
図26図25および26は、scFV(neu)−LIGHT融合タンパク質が、培養中のTUBO細胞の成長を低下させることを示す。TUBOは、BALB−neuTマウスからの自然発生乳腺腫瘍から産生されたクローン化細胞系であり、その細胞膜上でHER−2タンパク質を高度に発現する。(A)TUBO細胞を培養し、5ug/mLのタンパク質で処置し、4日後、成長について評価した。(B)抗neu一本鎖抗体から産生された融合タンパク質7164m4−14LIGHT、および変異体ヒトLIGHT m4−14は、抗体処置または未処置細胞と比較してTUBO細胞の成長を有意に低下させた。
図27図27は、7164m4−14LIGHTに起因する細胞死が、LIGHTとLTβR間の相互作用によって媒介されることを示す。
図28図28は、ヒトLIGHT細胞外ドメイン(配列番号46)の核酸配列およびヒトLIGHT m4−14(配列番号47)核酸配列を示す。
図29図29は、scFV−LIGHT(85−239)融合タンパク質の図である。
図30図30は、スーパーLIGHT(neu配列をIRESによってヒト変異体LIGHT m4−14に連結させるアデノウイルス構築物)が、新規ICSに対するCD8−CTL応答を向上させることを示す。WT B/Cマウスを5×10IFU ad−neu−ヒトLIGHTまたはad−neu−変異体LIGHTで免疫処置し、10日後、脾細胞を単個細胞にし、neu−HISタンパク質もしくはペプチドRatP66で刺激した、または刺激せずに放置した。ICSを行って、IFN−ガンマ陽性CD8細胞を検出した。
図31図31および32は、スーパーLIGHT(m4−14変異体)が、neu in vivo致死に対するCD8 CTL応答を改善することを示す。WT B/Tマウスを(B)5×10IFU ad−neu−ヒトLIGHTまたは(c)ad−neu−変異体LIGHTで免疫処置した。10日後、(A)ナイーブ脾細胞を0.5uMおよび5uMのCFSEで標識し、0.5uM細胞にはペプチドRatp66も負荷し、同数のそれらの細胞を互いに混合し、ナイーブマウスまたは免疫マウスに尾静脈注射した。16時間後、脾臓および流入領域リンパ節(lymph node:LN)をCFSE陽性細胞について分析した。
図32図31および32は、スーパーLIGHT(m4−14変異体)が、neu in vivo致死に対するCD8 CTL応答を改善することを示す。WT B/Tマウスを(B)5×10IFU ad−neu−ヒトLIGHTまたは(c)ad−neu−変異体LIGHTで免疫処置した。10日後、(A)ナイーブ脾細胞を0.5uMおよび5uMのCFSEで標識し、0.5uM細胞にはペプチドRatp66も負荷し、同数のそれらの細胞を互いに混合し、ナイーブマウスまたは免疫マウスに尾静脈注射した。16時間後、脾臓および流入領域リンパ節(lymph node:LN)をCFSE陽性細胞について分析した。
図33図33は、スーパーLIGHTが、NAワクチン後により高度の抗neu抗体を誘導することを示す。ナイーブマウス(各群に4匹のマウス)を14日間隔で2回、ハイドロダイナミックインジェクションによりPcDNA−neuまたはPcDNA−neu−LIGHT(ヒトもしくは変異体)で免疫処置した。第二回免疫の7日後、マウス血清を採集し、細胞ELISAを用いて抗neu抗体を試験した。
図34図34は、10匹の腫瘍のないマウスにおける新規スーパーLIGHT DNAワクチンの改善された効率(in vivo)を示す。ナイーブマウス(各群に4匹のマウス)をハイドロダイナミックインジェクションによりPcDNA−neuまたはPcDNA−neu−LIGHT(変異体)で免疫処置した。44日後、それらの免疫処置マウスに5×10TUBO細胞を接種した。さらに40日後、腫瘍のないマウスを屠殺し、分析した。
図35図35および36は、スーパーLIGHTがhLIGHTに対してneu特異的致死化合物を改善することを示し、ナイーブBalb/cマウスに幾つかの異なる用量のアデノウイルスを皮下的にワクチン接種した。11日後、ICSを次のように行う:ナイーブ脾細胞を0.5uMまたは5uM CFSEで標識し、低CFSE細胞にher2/neuペプチドを負荷し、その後、同数の低CFSE細胞および高CFSE細胞をそれらの免疫マウスに尾静脈経由で注射し、20時間後、ワクチン接種マウスの脾臓におけるCFSE陽性細胞をFACSによって分析した。
図36図35および36は、スーパーLIGHTがhLIGHTに対してneu特異的致死化合物を改善することを示し、ナイーブBalb/cマウスに幾つかの異なる用量のアデノウイルスを皮下的にワクチン接種した。11日後、ICSを次のように行う:ナイーブ脾細胞を0.5uMまたは5uM CFSEで標識し、低CFSE細胞にher2/neuペプチドを負荷し、その後、同数の低CFSE細胞および高CFSE細胞をそれらの免疫マウスに尾静脈経由で注射し、20時間後、ワクチン接種マウスの脾臓におけるCFSE陽性細胞をFACSによって分析した。
図37図37は、LIGHTがRag−1−脾細胞においてIFN−γを誘導したことを明示する。
図38図38は、LIGHTがMEF細胞においてIL−6を誘導したことを明示する。
【発明を実施するための形態】
【0166】
転移性疾患は、癌患者の間での死亡率の主因である。転移または小さな原発性腫瘍の初期休眠は、CD8+ T細胞のプライミングに利用可能な十分な抗原レベルに起因し得る。LIGHT、およびヒトLIGHTの変異体を用いる治療方法は、CD8+ T細胞に有効に標的化することができる。腫瘍細胞によって発現される抗原を認識する抗体とLIGHTまたはヒト変異体LIGHT(抗体−LIGHT)の併用は、かかる抗体−LIGHTを静脈内(i.v.)注射によって全身導入すると、移動性腫瘍細胞に特異的かつ有効に標的化することができる。
【0167】
一例として、マウスモデルにおいて、腫瘍細胞に対する高親和性モノクローナル抗体は、静脈内注射後、in vivoで腫瘍内に高濃度で蓄積する。(結合体化または遺伝子連結による)ヘテロミニボディLIGHTは、その全身導入後、様々な遠位部位の腫瘍組織へのLIGHTの特異的送達を可能にする。
【0168】
LIGHT融合タンパク質(例えば、抗体−LIGHTカップル)は、in vitroでは、腫瘍内部に選択的に蓄積し、腫瘍に特異的に結合する。
【0169】
LIGHTとカップリングさせた、腫瘍細胞によって発現される抗原を認識する抗体(抗体−LIGHT)を利用する治療方法を、その抗体−LIGHTを静脈内注射によって全身導入すると移動性腫瘍細胞に特異的かつ有効に標的化するように設計する。腫瘍細胞の表面で発現される、または腫瘍特異的抗体によって認識されることが可能である、いずれの腫瘍抗原も、LIGHTまたはその機能性断片とのカップリングに適している。
【0170】
プロテアーゼ耐性LIGHT(例えば、変異体LIGHT、またはLIGHTの細胞外ドメイン)の局所送達は、抗原特異的T細胞への腫瘍抗原の直接提示を増進し、腫瘍微小環境内の浸潤T細胞のアネルギーを防止する。加えて、LIGHTは、in vivoで腫瘍アポトーシスを増進することができる。
【0171】
現在利用できる癌処置による転移の根絶成功は依然として稀である。外科的切除前の原発性腫瘍組織における免疫応答の発生は、遠隔転移を根絶するために十分な腫瘍特異的エフェクターT細胞を生じさせる。例えば原発性腫瘍における抗体−LIGHT送達による、腫瘍特異的CD8T細胞のプライミングは、遠位腫瘍に帰巣する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のその後の退出を促進する。外科的切除前の原発性腫瘍への標的化は、自然転移の免疫媒介根絶を惹起する。
【0172】
転移は、多くの場合、固形悪性疾患の進行における致命的段階である。播種性転移性腫瘍細胞は、原発性腫瘍の外科的切除後何ヶ月間もまたはさらには何年間も休眠状態のままであることがあり、臨床的に検出できずに後の臨床疾患再発につながることがある。免疫療法戦略は、この微小転移性疾患の排除に適している。一例として、抗体−LIGHTの原発性腫瘍内への送達は、転移の形成を低減させ、周辺組織における転移確立を拒絶する。例えば、抗体−LIGHT融合タンパク質の形態でのLIGHTの腫瘍(例えば、原発性腫瘍)への直接送達は、遠位部位に移動する腫瘍組織から十分な数のエフェクター/メモリーT細胞を産生させ、それにより、免疫応答の強度が全体的に増加され、より炎症性が高いサイトカインが生産され、そして自然転移が根絶される。内因性腫瘍抗原の存在下で腫瘍特異的免疫応答を誘発および持続することを目的とした、原発性腫瘍組織を使用する免疫療法は、既に播種された腫瘍細胞を一掃するために必要なCTLを産生させる。
【0173】
腫瘍の表面のLIGHTの存在下でCTLは効率的にプライミングされ、その後、循環してLIGHT陰性遠位腫瘍に浸潤する。原発性腫瘍内に存在するLIGHTの恩恵なしに、二次腫瘍部位で発現される活性化T細胞は殆どない。LIGHTの存在下で局所腫瘍部位において産生されるこれらのエフェクター/メモリーT細胞は、腫瘍から出て行くことができ、周辺をパトロールすることができ、転移性腫瘍細胞を識別することができる。ケモカイン受容体(CCR7)は、T細胞が炎症部位をはじめとする周辺組織を出て行くためにおよび流入領域LNへの通行のために重要な分子であることが最近証明された。LIGHT発現腫瘍から出て行く2C T細胞をCCR7によって制御することができる。
【0174】
例えば、LIGHT分子の細胞外ドメインを、組換え形態がタンパク質分解性部位をすべて一緒に有さないように、または該組換え形態をプロテアーゼ消化耐性(変異体LIGHT)にする1つ以上のアミノ酸変更を有するように、組換え発現させることができる。加えて、LIGHTの細胞外ドメインまたは細胞外ドメインの機能的等価誘導体をテザーまたはリンカーまたはスペーサー配列に連結させて、腫瘍細胞の膜内の細胞外ドメインに係留することができる。図2〜3は、抗体−LIGHT融合または結合体化の一部の態様を図示する。
【0175】
LIGHTの細胞外ドメインは、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインが本質的にない形態のLIGHTポリペプチドを指す。LIGHTの前記細胞外ドメインは、1%未満のかかる膜貫通および/または細胞質ドメインを有し、好ましくは、0.5%未満のかかるドメインを有することになる。LIGHTポリペプチドについて同定されるいずれの膜貫通ドメインも、そのタイプの疎水性ドメインの同定のために当該技術分野において常例的に用いられている基準に従って同定されることは、理解されるはずである。膜貫通ドメインの正確な境界は様々であり得るが、本明細書において最初に同定するようなそのドメインのいずれかの末端における約2〜5以下のアミノ酸である可能性が最も高い。LIGHTポリペプチドの細胞外ドメインは、本明細書において同定するような膜貫通ドメイン/細胞外ドメイン境界の両側に約5以下のアミノ酸を含有することができる。
【0176】
適するLIGHTタンパク質、そのタンパク質およびペプチド断片は、例えば、タンパク質分解性部位EQLI(81−84)(配列番号1)を表すアミノ酸の1つ以上がないLIGHTのアミノ酸位置1−240;タンパク質分解性部位EQLI(81−84)(配列番号1)を表すアミノ酸の1つ以上が変異または別様に不活性化されているLIGHTのアミノ酸位置1−240;LIGHTの82−240;LIGHTの83−240;LIGHTの84−240;LIGHTの85−240;LIGHTの90−240;LIGHTの95−240;LIGHTの100−240;LIGHTの85−235;LIGHTの85−230;LIGHTの85−225;LIGHTの85−220;LIGHTの85−215;LIGHTの85−200;細胞内および膜ドメインがないLIGHT断片;ならびにプロテアーゼ消化に対して耐性であるLIGHTの長さ約100−150アミノ酸である任意の断片を含む。
【0177】
「抗体−LIGHT」は、LIGHTタンパク質の断片に融合しているか結合体化している、腫瘍抗原に対して特異的な抗体またはその断片であって、前記LIGHTタンパク質の断片が、腫瘍細胞に対する免疫応答を誘発するために十分なものである、および天然LIGHTタンパク質と比較してプロテアーゼ消化に対して耐性であることにより腫瘍細胞表面に安定して存在することが可能であるものである、抗体またはその断片を指す。
【0178】
本明細書において用いる場合、抗体−LIGHTカップルにおける用語「LIGHT」は、プロテアーゼ認識配列を含有しないLIGHTの細胞外ドメインを指すか、プロテアーゼ部位(EQLI))(配列番号1)が全欠失によりまたはそのプロテアーゼ部位を非感受性もしくは不活性にする1つ以上のアミノ酸における変異により不活性化されている変異体LIGHTを指すか、プロテアーゼ消化に対して耐性であり、かつT細胞を刺激することが可能であるトランケート形態のLIGHTを指す。LIGHTは、図6および7における新規配列も指す。
【0179】
「変異体LIGHT」は、タンパク質分解性切断に対して耐性であり、腫瘍細胞の表面で安定して発現されることが可能であり、かつ、正常または天然LIGHTタンパク質と比較して増加された腫瘍特異的T細胞活性化を呈示する、LIGHTタンパク質またはLIGHTタンパク質由来ペプチドを指す。前記「変異体LIGHT」は、プロテアーゼ消化に対して耐性であるか、でなければ、タンパク質分解性部位EQLI(配列番号1)を不活性にする変異のため腫瘍細胞をはじめとする細胞の表面で安定して発現されることが可能である、LIGHTタンパク質またはLIGHTタンパク質由来ペプチドを指す。変異体LIGHTを産生させる幾つかの方法がある。例えば、プロテアーゼ部位(例えば、EQLI)(配列番号1)を、そのプロテアーゼ部位を全体として除去するように変異させることができ、またはそのプロテアーゼ部位の1つ以上のアミノ酸を変更すること(例えば、挿入、欠失、置換)によりその部位をプロテアーゼ消化に対して耐性にするように変異させることができる。
【0180】
「トランケート型LIGHT」タンパク質は、天然LIGHTと比較すると完全長でなく、プロテアーゼ消化に対して耐性であり、かつ腫瘍細胞に対してT細胞を刺激することが可能である、LIGHT断片を指す。例えば、LIGHTの細胞外ドメイン(約85−240)は、適するトランケート型LIGHTである。トランケート型LIGHTは、プロテアーゼ消化に対して耐性であり、その結果、天然LIGHTタンパク質と比較して長期間にわたって細胞表面に存在する能力を呈示する、LIGHTタンパク質の断片/誘導体を含む。
【0181】
プロテアーゼ耐性LIGHTタンパク質(例えば、変異体LIGHT)もしくは断片、またはプロテアーゼ部位が不活性化されているLIGHTタンパク質もしくはLIGHTペプチドの断片を産生させるために、例えば、プロテアーゼ認識配列EQLI(配列番号1)の中のアミノ酸グルタミン酸(E)を欠失させるまたは置換することができる。同様に、プロテアーゼ認識配列EQLI(配列番号1)の中のアミノ酸グルタミン(Q)を欠失させるまたは別のアミノ酸で置換する。同様に、アミノ酸LまたはIを欠失させるまたは他のアミノ酸で置換することができる。プロテアーゼ耐性アミノ酸類似体を使用して、プロテアーゼ耐性である合成LIGHT断片を産生させることもできる。例えば、ペプチドへのβ−アミノ酸の組み込みの使用は、タンパク質分解を減少させ、およびプロテアーゼ感受性部位EQLI(配列番号1)を置換するためにそれを用いることができる。前記プロテアーゼ部位内および前記プロテアーゼ部位付近でβ−アミノ酸の合理的組み込みを行うことができ、結果として生じた変異体をプロテアーゼ耐性について試験することができる。部位特異的変異誘発をはじめとする様々な技法を用いて、プロテアーゼ消化に対して耐性であるLIGHT断片を産生させることができる。
【0182】
用語「不活性化された」は、プロテアーゼ認識部位が1つ以上のアミノ酸における変異によってまたはEQLI(配列番号1)の欠失によってまたは1つ以上のアミノ酸のα−もしくはβ−アミノ酸での置換によってまたは任意の適する方法によって選択的にサイレンシングされているため、LIGHTタンパク質またはその断片が腫瘍環境においてプロテアーゼ消化に対して耐性であることを意味する。
【0183】
用語「耐性の」は、プロテアーゼ認識部位が1つ以上のアミノ酸における変異によってまたはEQLI(配列番号1)の欠失によってまたは1つ以上のアミノ酸のα−もしくはβ−アミノ酸での置換によってまたは任意の適する方法によって不活性化/変異されているため、LIGHTタンパク質またはその断片が腫瘍環境においてプロテアーゼ消化に対して感受性でないことを意味する。
【0184】
用語「腫瘍環境」は、タンパク質分解カスケードによるマトリックス分解および腫瘍細胞侵入に協同して影響を及ぼし得る細胞外プロテアーゼをはじめとする細胞プロテアーゼであって、個々のプロテアーゼが、腫瘍成長、腫瘍の侵入、移動、血管新生、転移および拡大において別個の役割を有するものである細胞プロテアーゼの存在および発現および活性を指す。
【0185】
「Ad−LIGHT」または「Ad−変異体LIGHT」は、変異体LIGHTをコードする核酸を含有する、およびそれらの核酸配列の腫瘍部位への送達に適している、または腫瘍細胞に影響を及ぼすことが可能である、組換えアデノウイルス・ベクター・システムを指す。「転移(単数または複数)」は、癌が腫瘍として開始した位置から1つ以上の癌性細胞の移動により体内の1つ以上の遠隔位置に癌が拡大するプロセスを指す。これらの用語は、遠位の位置での腫瘍の構造が、顕微鏡により見ることができる癌細胞の小さな凝集体に相応する、微小転移も含む。これらの用語は、原発性腫瘍の原位置からの拡大の結果として生ずる二次的癌性成長も指す。
【0186】
「転移を低減させることまたは制御すること」は、対照と比較しての転移性腫瘍の数の低減を指す。
【0187】
「養子移入」は、T細胞のレシピエントへの移入を指す。
【0188】
「腫瘍部位」は、腫瘍細胞を含有するまたは含有すると推測されるin vivoまたはex vivoでの位置を意味する。腫瘍部位は、固形腫瘍を含み、および腫瘍成長に隣接するまたは腫瘍成長の直ぐ近くである位置も含む。
【0189】
「腫瘍特異的」は、正常細胞より腫瘍細胞に対して選好性を示す抗体または任意の他のリガンド/受容体を指す。例えば、腫瘍細胞上に存在する抗原に標的化された抗体は、腫瘍特異的と見なされる。腫瘍特異的抗体は、たとえより低い程度であっても標的抗原が存在する場合には正常な細胞にも結合し得る。
【0190】
本明細書において用いる場合、用語「投与」は、全身投与および/または局所投与を指す。用語「全身投与」は、投与された物質が全身の幾つもの器官もしくは組織に作用することができるような、または投与された物質が標的部位に達する際に全身の幾つもの器官もしくは組織を横断するような、非限局投与を指す。例えば、被験体の循環への投与は、投与されたベクターから1つより多くの組織もしくは器官において治療用生成物が発現される結果となることもあり、または例えば、組織特異的プロモーター要素の天然の指向性もしくは作動可能な連結のため、投与されたベクターから特定の部位で治療用生成物が発現される結果となることもある。非経口投与に包含される投与形態、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内および皮下投与、をはじめとする様々な投与形態が全身投与に包含されることは、当業者には理解されるであろう。一部の実施形態では、全身投与を用いて、局所性または全身性疾患または病態の処置に付随する全身作用を惹起することができる。全身作用は、局所性疾患または病態に、例えば該疾患または病態の拡大を予防するために、望ましいことがある。用語「局所投与」は、特定の部位でのまたは特定の部位付近での投与を指す。特定の部位へのまたは特定の部位付近への直接注射などの様々な投与形態が局所投与に包含されることは、当業者には理解されるであろう。一部の実施形態において、局所投与は、局所作用が望まれる疾患または病態の処置に付随する(例えば、肺癌の処置のための肺への投与)。局所性または全身性疾患または病態いずれかに関連して局所作用が望まれることもある。全身性疾患または病態の局所的状況を処置するために全身性疾患または病態に関連して局所作用が望まれることもある。
【0191】
LIGHT、LIGHTポリペプチドもしくはペプチド、またはそれらの断片、LIGHT融合産物、またはLIGHT結合体、およびこれらに類するものの「有効量」は、具体的に述べる目的を遂行するために十分な量を指す。「有効量」を、その述べる目的に関連して、実験によりおよび常例的手法で決定することができる。例えば、抗体−LIGHT構築物についての適する目的は、腫瘍サイズもしくは成長を縮小すること、および/または転移低減である。
【0192】
用語「治療有効量」は、被験体または哺乳動物における特定の疾患または障害を処置するために有効な、LIGHT、LIGHTポリペプチドもしくはペプチドまたはそれらの断片、LIGHT融合産物または結合体の量を指す。癌の場合、本明細書に開示する組成物の治療有効量は、癌細胞の数を低減させることができ;腫瘍サイズを縮小することができ;周辺器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、減速するおよび/または停止させる)ことができ;腫瘍転移を阻害する(すなわち、減速するおよび/または停止させる)ことができ;腫瘍成長を阻害することができ;および/または癌に関連づけられる症状の1つ以上を軽減することができる。
【0193】
用語「抗体」は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、抗体の断片(下記参照)を、それらが所望の生物学的または免疫学的活性を呈示する限り包含する。用語「免疫グロブリン」(Ig)を本明細書では抗体と交換可能に用いている。抗体は、腫瘍抗原、例えば、表面腫瘍抗原、例えばHer2/neuおよびCD20などに特異的に標的化することができる。
【0194】
「単離された抗体」は、同定され、その天然の環境の成分から分離および/または回収されたものである。前記抗体は、ローリー(Lowry)法によって判定して95重量%より高度に、および99重量%より高度に精製される。
【0195】
本明細書において用いる場合の用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、前記集団の個々の抗体は、少量で存在することがある可能性のある自然発生変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高特異性であり、単一抗原部位またはエピトープに対して作られたものである。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法論によって調製することができ、または細菌、真核動物もしくは植物細胞において組換えDNA法を用いて作製することができる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたし)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら、Nature、352:624−628(1991)およびMarksら、J.Mol.Biol、222:581−597(1991)に記載されている技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0196】
本明細書に記載するモノクローナル抗体は、重および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、その(それらの)鎖の残部は、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ抗体」はもちろん、かかる抗体の断片も、それらが所望の生物活性を呈示する限り含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984))。ここで対象となるキメラ抗体には、非ヒト霊長類に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0197】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分、例えば、インタクト抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab、F(ab、一本鎖FおよびF断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号明細書;Zapataら、Protein Eng.8(10):1057−1062[1995]を参照されたし);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から成る多重特異性抗体が挙げられる。
【0198】
非ヒト(例えば、齧歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体である。その大部分については、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(framework region:FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中またはドナー抗体中で見つけられない残基を含むことがある。これらの修飾を行って、抗体性能をさらに洗練する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、および典型的には2つの、可変ドメインの実質的にすべてを含み、この場合、それらの超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに応答し、およびそれらFRのすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。前記ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも、場合により含む。
【0199】
用語「癌」および「癌性の」は、未制御の細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理状態を指すまたは記述する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽種、肉腫および白血病またはリンパ系悪性疾患が挙げられる。かかる癌のより詳細な例としては、扁平細胞癌(例えば、扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌腫を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃部の癌または胃癌(胃腸の癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、メラノーマ、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、脳および頭頚部癌、ならびに関連した転移が挙げられる。
【0200】
抗体−LIGHT融合体または結合体を用いて標的化させることができる適切な表面腫瘍抗原には、上皮成長因子受容体ファミリー(epidermal growth factor receptor:EGFR)であって、HER1、HER2、HER4およびHER8(Nam,N.H.およびParang,K.(2003)、「Current targets for anti−cancer drug discovery」、Current Drug Targets、4(2)、159−179)、STEAP(前立腺の6回膜貫通型上皮抗原;Hubertら、「STEAP:a prostate−specific cell−surface antigen highly expressed in human prostate tumors.」、Proc Natl Acad Sci USA、1999;96(25):14523−8)、CD55(Hsuら、「Generation and characterization of monoclonal antibodies directed against the surface antigens of cervical cancer cells.」、Hybrid Hybridomics、2004;23(2):121−5)を含むファミリーが含まれる。他の適する抗体としては、リツキシマブ(Rituxan(商標)、キメラ抗CD20抗体)、Campath−1H(抗CD52抗体)、および任意の癌特異的細胞表面抗原が挙げられる。以下は、LIGHTタンパク質との使用に適している特定の癌タイプに対して承認されているモノクローナル抗体薬の例示的リストである:慢性リンパ球性白血病のためのアレムツズマブ(Campath(商標));結腸癌および肺癌のためのベバシズマブ(Avastin(商標));結腸癌および頭頚部癌のためのセツキシマブ(Erbitux(商標));急性骨髄性白血病のためのゲムツズマブ(Mylotarg(商標));非ホジキンリンパ腫のためのイブリツモマブ(Zevalin(商標));結腸癌のためのパニツムマブ(Vectibix(商標));非ホジキンリンパ腫のためのリツキシマブ(Rituxian(商標));非ホジキンリンパ腫のためのトシツモマブ(Bexxar(商標));ならびに乳癌のためのトラスツズマブ(Herceptin(商標))。
【実施例】
【0201】
以下の実施例は、単に例証を目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0202】
実施例1−腫瘍標的化薬剤へのLightのカップリングまたは結合体化
変異体LIGHT送達システムまたは等価の送達システムの送達を可能にするために、変異体LIGHTを腫瘍標的化薬剤、例えば腫瘍特異的抗体にカップリングするまたは結合体化させることができる。例えば、LIGHTまたは変異体LIGHTに結合体化させた腫瘍特異的抗体を使用して、腫瘍部位に融合タンパク質を選択的に送達することができる。加えて、腫瘍特異的抗体を、ウイルス送達システムまたはリポソームビヒクル送達システムとカップリングするように設計することができる。変異体LIGHTを発現するおよび腫瘍標的化薬剤を内部に持つ送達ビヒクルは、先ず、特定の腫瘍細胞に標的化し、その後、その腫瘍細胞を、その細胞の表面で変異体LIGHTを発現するように形質転換させることになる。腫瘍細胞の表面でのこの標的化された変異体LIGHT発現は、その腫瘍の周囲の間質細胞上のケモカインを誘導して、T細胞を誘引し、T細胞のプライミングを開始させることになる。かかる処置は、固形腫瘍を含めて、すべての腫瘍に適している。4T1、MC38、B16および肥満細胞腫をAd−LIGHTで処置し、それらは、原発性および/または続発性腫瘍の低減を示した。したがって、抗体−LIGHTを使用して、様々な腫瘍に、特に、遠隔部位への原発性腫瘍細胞移動の結果として形成する転移に、標的化させることができる。例えば、全身注射により、抗her2/neu抗体とLIGHTは、her2/neuを発現する転移性腫瘍にLIGHTを運び、その後、局所免疫応答を発生させて腫瘍を一掃することができる。したがって、前記融合タンパク質を任意の全身および局所経路によって送達することができ、前記融合タンパク質は、抗体または別の薬剤の腫瘍抗原に対する特異性のため、より多く腫瘍に局在することになる。
【0203】
実施例2−LIGHT結合体化抗体の機能活性
LIGHT、LTβRおよびHVEMの受容体に結合する抗体−LIGHTの能力を、LTβR−IgおよびHVEM−Igをそれぞれ用いてフローサイトメトリーによって判定する。抗体−LIGHTの機能活性を、先ず、最適未満の用量のプレート結合抗CD3の存在下でT細胞を共刺激するその能力についてin vitroで試験する。抗体−LIGHTの機能性は、抗CD28のものに匹敵するようである。
【0204】
抗体−LIGHT融合タンパク質が、in vivoで腫瘍成長を阻害するかどうかを試験するために、マウスに5×10腫瘍細胞を10日間、皮下注射し、その後、10μgの前記融合タンパク質で処置する。腫瘍成長の阻害が、小用量、すなわち10μg、の融合タンパク質で実証され、この用量で腫瘍に対する強い免疫が可能になる。
【0205】
この実施例は、LIGHT、LTβRおよびHVEMの受容体に結合する抗体−LIGHTの能力を、LTβR−IgおよびHVEM−Igをそれぞれ用いてフローサイトメトリーによって実証し、ならびにLIGHTとカップリングさせた腫瘍特異的抗体が免疫を刺激して腫瘍成長を低減させることを実証する。
【0206】
実施例3−抗体−LIGHTカップルの併用処置およびアデノウイルス発現LIGHTの局所送達
抗体−LIGHT融合タンパク質または結合体の重要な有用性は、かかる標的化薬剤が、免疫系を有効に刺激しない少数の転移性腫瘍細胞または残留癌細胞の一掃に非常に効くことができることである。抗体−LIGHTと、アデノウイルス発現LIGHT、すなわちAd−LIGHTとを含む併用療法を試験する。
【0207】
腫瘍細胞を2部位に、一方には10個を用いて、他方の側には1×10個を用いて接種した。2週間後、大きいほうの腫瘍(10個)をAd−LIGHTで処置し、処置の2週間後に外科的に除去する。本明細書に記載する用量の抗体−LIGHTでマウスを全身処置する。このモデルは、原発性腫瘍へのAd−LIGHTの局所送達と併用での抗体−LIGHTが、遠位腫瘍の処置によく効く試薬であるかどうかを判定するものである。腫瘍特異的CD8T細胞のためのモデルとして、クロノタイプ抗体(1B2)によって容易に同定される2C T細胞を腫瘍保有マウスに養子移入することができる。養子移入した2C T細胞の輸送、増殖および活性化をモニターし、別の治療戦略と比較する。
【0208】
2つの臨床的に意義のある送達システム、Ad−LIGHTおよび抗体−LIGHTは、LIGHTを腫瘍組織に有効に標的化させ、その後、原発性腫瘍ばかりでなく遠位転移も破壊すると予想される。LIGHT媒介リンパ様構造の作製のために十分な長さのLIGHTの持続発現が、所望の抗腫瘍CD8T細胞応答を誘導する。
【0209】
実施例4−乳癌のための抗Her2/neu抗体−LIGHT療法
乳癌および結腸癌患者の五分の一は、Her2/neuを発現する。一般に、Her2に対する抗体は、これらの腫瘍の成長を減速させるが、それらを根絶しない。LIGHTとカップリングさせた抗Her2/neu抗体は、LIGHTを転移性腫瘍部位に標的化させる。前記抗Her2/neu抗体は、腫瘍成長を減速させ、アポトーシスを誘導し、それにより、そのカップリングされたLIGHTは、T細胞のLIGHT媒介動員および活性化が腫瘍内部で起こるように誘導することが可能になる。加えて、LIGHTはまた、FcR+ 細胞を動員して抗neu抗体の治療効果を強化する。ある実験モデルでは、LIGHTと連結させた抗体の10μgほども低い用量によりマウスにおいて腫瘍の成長が減速された。他のより低いまたはより高い用量が企図される。抗Her2/neu抗体−LIGHTは、乳癌転移のための新規処置剤である。図2は、Adv−mmlitがneu+ N202腫瘍成長を阻害することを示す。
【0210】
実施例5−抗体−LIGHT融合体または結合体と化学療法薬の併用
腫瘍特異的抗体−LIGHT融合タンパク質または結合体を、抗腫瘍剤、例えばドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、メトトレキサート、シクロホスファミド、5−フルオロウリジン、ロイコボリン、イリノテカン(CAMPTOSAR(商標)もしくはCPT−11もしくはカンプトテシン−11もしくはカンプト)、カルボプラチン、フルオロウラシル・カルボプラチン、エダトレキサート、ゲムシタビン、もしくはビノレルビン、またはこれらの組み合わせなどと、さらにカップリングさせることができる。これらの薬物を別々に投与することができ、または抗体−LIGHT融合タンパク質または結合体との結合体化またはカップリングによって併用投与することができる。
【0211】
この併用療法を遺伝子療法と併用投与し、それによってプロテアーゼ耐性LIGHTを発現することが可能な核酸を腫瘍内部に送達することもできる。LIGHT核酸配列を内部に持つアデノウイルスベクター、すなわちAd−LIGHTが適している。
【0212】
実施例6−抗Her2抗体およびAd−LIGHT処置による腫瘍の相乗的抑制
抗neu抗体とLIGHT.TUBOの相乗作用。TUBOは、BALB−neuTマウスからの自然発生乳腺腫瘍から産生されるクローン化細胞系であり、細胞膜上でHER−2タンパク質を高度に発現する。この腫瘍系統は、in vitroおよびin vivoでの抗neu抗体処置に対して感受性である。しかし、腫瘍が十分に定着すると、抗体またはLIGHTいずれかのみの効果は、減少される。抗neu細胞を中断すると、3〜4週間以内にTUBO細胞は回復することができる。この2つの間に相乗作用があるかどうかを判定するために、TUBO細胞を18日間、定着させ、その後、ad−LIGHTと抗neu抗体の両方で週1回、3週間にわたって処置した。印象的に、この併用で検出できる癌はなく、その一方でいずれかの単独処置では腫瘍が漸進的に成長する(図4〜5)。前記併用処置を投与したものを除き、各群の5匹のマウスすべてが腫瘍を有した。
【0213】
したがって、LIGHT媒介療法、例えば、Ad−LIGHT発現ベクターによるまたは腫瘍細胞への別の安定したLIGHT提示による療法と、任意の他の抗癌療法の併用は、相乗的腫瘍抑制治療法になる。
【0214】
実施例7−抗体−LIGHT融合タンパク質の産生
sc−Fv−LIGHTを発現させるために、scFV−58LIGHT(アミノ酸位置58−240を有するLIGHT断片)およびscFV−85LIGHT(81−84のプロテアーゼ部位を迂回してアミノ酸位置85−240を有するLIGHT断片)を構築した。抗Flag抗体は、非常に特異的かつ感受性であるので、ウエスタンブロット法に従ってFlag tapを前記LIGHT断片に取り付けた。かかるプラスミドを293細胞系にトランスフェクトした。それらの細胞を1週間後に回収し、溶解産物を調製し、抗flag抗体でブロットした。抗Flagウエスタンブロットの可視化により、scFV−85LIGHT発現の発現が、scFV−58LIGHTより高度であることが証明される。
【0215】
これは、抗体−LIGHT融合構築物が、融合タンパク質を産生すること、および結果として生ずる融合タンパク質を単離することができ、精製することができ、それを使用して、抗体−LIGHT融合タンパク質が腫瘍細胞に特異的に標的化し、それらの腫瘍細胞に対するT細胞の生産を刺激することを実証できることの証拠となる。LIGHTの同様の融合タンパク質を、腫瘍細胞表面抗原に対して作られるおよび好ましくは腫瘍特異的細胞表面抗原に標的化する任意の他の抗体を用いて作製することができる。
【0216】
実施例8−抗体−LIGHT融合構築物
腫瘍標的化抗体−LIGHT免疫サイトカインを産生させるために、次の工程を踏んだ:
a.LIGHTを安定性/親和性増加のために作出した;
b.scFV(neu)−LIGHT融合タンパク質を生産のために産生させた;および
c.そのscFV(neu)−LIGHT融合タンパク質をin vitroおよびin vivoで試験した。
【0217】
LIGHTを作出するために:
ヒトLIGHTをその作出のプラットホームとして使用した。
ヒトLIGHTは、マウスLIGHTより安定しているようであり(YDおよび事前発現);および
ヒトLIGHTは、ネズミ受容体と(弱く)交差反応する。
【0218】
LIGHTの作出の基準
a.ネズミおよびヒトLTbRおよびHVEMへの同等の結合、および可能であれば、DcR3への結合減少;および
b.生産を容易にするための改善された発現/安定性。
【0219】
酵母ディスプレイを使用して作出したタンパク質は、次のものを含む:2C T細胞受容体;Ly49C−c型レクチンNKR、2B4(CD244)−Ig様NKR、CD48−Ig様NKRならびにネズミおよびヒトKLRG1−c型レクチンNKR。他のCDRにおけるより親和性の高いクローンは、卓越したペプチド特異性を示す(図12〜13)。
【0220】
LY49Cの作出は、LY49C−OVA/K複合体の高分解能結晶構造を可能にした(図14)。pepMHC結合および特異性に対するペプチドの影響には「ドミノ効果」がある。そのペプチドから下方のLy49C接触領域まで水素結合ネットワークが相互作用する(図15)。
【0221】
作出したCD48は、2B4−CD48複合体の結晶化を助長した(図16)。
【0222】
酵母ディスプレイを使用してhLIGHTを作出した。正規化のためにエピトープタグを使用して、hLIGHTを接合接着受容体Aga2に融合させた。平衡、動態および熱安定性分析は、フローサイトメトリーによった(図17〜19)。
【0223】
ヒトLIGHTの変異体は、マウスおよびヒトLTβRおよびHVEMに対して試験したとき、改善された結合特性および親和性を有した(図20〜21)。
【0224】
scFV(neu)−LIGHT融合タンパク質を産生させた。グルタミンシンセターゼベクターは、MSXでの遺伝子増幅を可能にし、アデノE1aコトランスフェクションを転写増進のために使用した。C末端Strep−Tag II配列は、ウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリーおよび高特異性1工程精製による検出をもたらす(図22)。
【0225】
4つの所望の受容体すべてについて好適な結合を有するクローンの新たなセットを単離した。scFV−LIGHT融合体をCHO細胞において生産した。scGVおよびLIGHTの両方がそれらのそれぞれのリガンドを結合した(図23〜24)。
【0226】
scFV(neu)−LIGHT融合タンパク質は、培養中のTubo細胞の成長を低下させる。融合タンパク質媒介細胞死は、腫瘍細胞上で発現されたLTβRに対するLIGHTの直接的効果のためであった(図25〜27)。
【0227】
材料および方法
抗体−LIGHTの融合タンパク質の産生。標準的なプロトコルを用いて、腫瘍抗原または腫瘍細胞に高親和性で結合する抗体へのLIGHTの特異的標的化を可能にするヘテロミニボディと称する組換え抗体構築物を開発した。
【0228】
マウス、細胞系、および試薬。メスC3HXC57BL/6 F1(C3B6F1)マウス、4〜8週齢を米国国立癌研究所(National Cancer Institute)フレデリック癌研究施設(Frederick Cancer Reserch
Facility)(メリーランド州フレデリック)から購入した。C57BL/6−RAG−1−欠損(RAG−1−/−)マウスをJackson Laboratory(メイン州バーハーバー)から購入した。RAG−2欠損/B6バックグラウンドのH−Y TCRトランスジェニックマウス(H−−Yマウス)をTaconic Farms(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から購入した。10世代にわたって交配してB6にしたRAG−1欠損バックグラウンドの2C TCRトランスジェニックマウス(2Cマウス)は、J.Chen(マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)、マサチューセッツ州ボストン)によって提供された。OT−1 TCRトランスジェニックマウス(OT−1マウス)は、A.Ma(シカゴ大学(The University of Chicago))によって提供された。RAG−1−/−、H−Y、2C、OT−1マウスをシカゴ大学の特定病原体除去施設において繁殖させ、維持した。動物の管理および使用は、施設のガイドラインに従った。
【0229】
AG104細胞のトランスフェクタントである、AG104A発現ネズミH−2L(AG104−L)は、以前に記載されている(Wick M、1997、JEM 186:229−38)。これらの腫瘍細胞系を、10%FCS(Sigma−Aldrich)と、100U/mL ペニシリンと、100μg/mL ストレプトマイシン(BioWhittaker)とを補足したDMEM(Mediatech)中で維持した。抗L(クローン30−5−7)および抗2C TCR(1B2)抗体を生産するハイブリドーマ細胞系を、D.Sachs(米国国立衛生研究所(National Institute of Health)、メリーランド州ベセズダ)およびT.Gajweski(シカゴ大学)からそれぞれ得た。
【0230】
プロテインGカラムを用いて、当業者に公知の手順により、ハイブリドーマによって生産されたモノクローナル抗体を培養上清から精製した。その前駆1B2抗体は、シカゴ大学のモノクローナル抗体施設(Monoclonal Antiboy Facility)によってFITCまたはビオチンに結合体化された。PE結合抗CD8抗体、Cy−クロム(CyC)結合ストレプトアビジン、CyC結合抗CD44抗体、PE結合抗CD62L抗体、およびPE結合Th1.2抗体をBD Biosciencesから購入した。FITC結合体化ヤギ抗マウスIgGをCaltagから購入した。PE結合ストレプトアビジンをImmunotechから購入した。PE結合ロバ抗ヒトIgGをJackson Immunological Rsearch Lab(ペンシルバニア州ウエストグローブ)から購入した。ビオチン化ヤギ抗SLC抗体をR&D system Inc.(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。AP結合体化ウサギ抗ヤギIg抗体をVector Laboratories Inc.(カリフォルニア州バーリンゲーム)から購入した。精製されたヤギ抗SLC抗体をPeproTech(ニュージャージー州ロックヒル)から購入した。コラゲナーゼ(4型)をSigma−Aldrichから購入した。CFSEをMolecular Probeから購入した。
【0231】
in vivoでの腫瘍成長。腫瘍細胞をマウスの下背、すなわち尾の付け根の0.5〜1cm上、に皮下注射した。キャリパーで3から4日おきに腫瘍成長を測定した。立方センチメートルでのサイズを式πabc/6(式中、a、bおよびcは、直交する3つの直径である)によって計算した。
【0232】
組織学。組織学的検査のための腫瘍組織を示されている時間に採取し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋用に処理し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。SLCの免疫組織化学染色のために、腫瘍組織を回収し、OCT化合物(Miles−Yeda、イスラエル国レホヴォト)に包埋し、−70℃で凍結した。凍結切片(5〜10μm厚)をPBS中2%の冷ホルマリンで固定し、0.1%サポニン/PBSで透過性化した。それらの切片を加湿チャンバの中で半時間、室温で、0.1%サポニン/PBS中の5%ヤギ血清でプレブロックした。SLCの染色は、ブロッキングバッファ中、1/25希釈でのビオチン化ヤギ抗SLC抗体(R&D systems Inc.ミネソタ州ミネアポリス)とともに先ずインキュベートすることによって行った。アルカリホスファターゼ結合体化抗ヤギIg抗体(Vector Laboratories Inc.カリフォルニア州バーリンゲーム)を2時間後に添加した。免疫蛍光染色のために、切片を加湿チャンバの中で半時間、室温で、PBS中の2%正常マウス血清、ウサギ血清およびヤギ血清でブロックした。ブロッキング溶液を50μLの一次Absと交換した。ブロッキング溶液で1/100希釈したPE結合体化抗Th1.2(BD PharMingen)またはPE結合体化抗CD8(BD PharMingen)と切片とを加湿チャンバの中で1時間、室温でインキュベートした。10%1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンを含有するMowiol 4−88(BD Biosciences、カリフォルニア州ラホーヤ)に検査試料を入れた。Zeiss Axioplan顕微鏡(Zeiss、ドイツ国オーバーコッヘン)およびPhotometrics PXL CCDカメラ(Photometrics、アリゾナ州トゥーソン)を使用して、48時間以内に試料を分析した。Openlab v2.0.6(Improvision、マサチューセッツ州レキシントン)を使用して、無近接デコンボリューション(no−neighbor deconvolution)を行った。
【0233】
CCL21についてのELISA。腫瘍ホモジネートを調製し、CCL21について分析した。腫瘍保有マウスから匹敵する量の腫瘍組織を採取し、計量し、プロテアーゼ阻害剤を含有するPBS中で均質化し、上清を遠心分離によって回収した。ポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレート(Immulon 4、Dynatech Laboratories、バージニア州シャンティリー)をPBS中の2μg/mLのヤギ抗マウスCCL21でコーティングし、その後、PBS中の0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)で30分間、室温でブロックした。洗浄後、既知濃度の標準物質(組換えCCL21、50ng/mL、R&D)および試料の系列希釈物を添加し、2時間、室温でインキュベートした。3回の洗浄後、ビオチン化ウサギ抗SLC Abをウェルに添加した。2時間のインキュベーションおよび洗浄の後、50μLの1/1000希釈アルカリホスファターゼ結合体化アビジン(Dako)を1時間にわたって添加し、その後、現像した。自動プレートリーダー(Spectra−Max 340、Molecular Devices、カリフォルニア州サニーヴェール)を用いて405nmで発色現像を測定し、CCL21の量をELISAにより標準曲線から決定し、組織重量に従って正規化した。データは、平均+−標準偏差である。
【0234】
T細胞共刺激アッセイ。製品(Miltenyi Biotec、カリフォルニア州オーバン)による指図どおりに磁場でのネガティブ選択法によってT細胞を精製した。単離されたT細胞の純度は、CD3に対するモノクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価して95%より高かった。CD3に対するモノクローナル抗体(0.2g/mL)をコーティングしたプレートを37℃で4時間、さらに変異体LIGHT−flagでコーティングした。洗浄した後、精製されたT細胞(1×10細胞/mL)をそれらのウェルで培養した。CD28に対するモノクローナル抗体(1μg/mL)を可溶性形態で使用した。すべてのアッセイにおいて、3日培養の最後の15時間の間、1Ci/ウェルのH−チミジンの添加によりT細胞の増殖を評価し、H−チミジン組み込みをTopCountマイクロプレート・シンチレーション・カウンター(Packard instrument、コネチカット州メリデン)で測定した。
【0235】
腫瘍組織からの細胞単離。先ず、マウスを出血させて腫瘍組織の血液濃度を低下させた。それらの腫瘍組織を採取し、PBSで洗浄し、細片に切断し、2%FCSと1.25mg/mLのコラゲナーゼD(コラゲナーゼD溶液)とを補足したDMEMに40分間、37℃振盪インキュベーターにおいて再浮遊させた。その単個細胞浮遊液を40分後に回収し、すべての腫瘍組織が単個細胞浮遊液に分解されるまで細胞集塊をさらに40分間、コラゲナーゼD溶液中で消化した。
【0236】
医薬組成物。ここで用いる治療用組成物を、所望の送達方法に適する担体を含む医薬組成物に調合することができる。適する担体は、その治療用組成物と併せたときにその治療用組成物の抗腫瘍機能を保持する材料を含む。例としては、多数の標準的医薬担体、例えば、滅菌リン酸緩衝食塩溶液、静菌水、およびこれらに類するものが挙げられる。治療調合物を可溶化することができ、その治療用組成物の腫瘍部位への送達に適する任意の経路によって投与することができる。潜在的に有効な投与経路としては、静脈内投与経路、非経口投与経路、腹腔内投与経路、筋肉内投与経路、腫瘍内投与経路、皮内投与経路、器官内投与経路、同所投与経路およびこれらに類するものが挙げられる。静脈内注射のための調合物は、保存静菌水、滅菌非保存水の溶液中の、および/または注射用の滅菌塩化ナトリウムが入っているポリ塩化ビニルもしくはポリエチレンバッグの中で希釈された、治療用組成物を含む。治療用タンパク質製剤を凍結乾燥させ、滅菌粉末として、好ましくは真空下で保管することができ、その後、注射の前に静菌水(例えば、ベンジルアルコール保存薬を含有するもの)中でまたは滅菌水で再構成することができる。本明細書に開示する方法を用いる癌の処置のための投薬量および投与プロトコルは、その方法およびその標的癌によって様々であり得、一般に、当該技術分野において正しく認識されているおよび了解されている多数の因子に依存する。
【0237】
脾臓および腫瘍におけるサイトカインの測定。腫瘍および脾臓ホモジネートを記載されている(Yuら、2003、JEM197:985−995)ように調製した。簡単に言うと、匹敵する量の腫瘍または脾臓組織を採取し、計量し、プロテアーゼ阻害剤を含有するPBS中で均質化し、上清を遠心分離によって回収した。それらの上清の中のサイトカインの量を、CellQuestProおよびCBAソフトウェア(Becton Dickinson)を装備したFACS Caliberサイトメーターでサイトメトリック・ビーズ・アレイ・キット(cytometric bead array:CBA)(BD Biosciences)をその製品の使用説明書に従って使用して定量した。
【0238】
腫瘍成長の差についての統計分析。腫瘍成長をある期間にわたって繰り返し同じマウスで観察したため、長期的データのための変量モデルを用いてかかるデータを分析した。各実験について、腫瘍成長は、処置に依存すると、およびある期間にわたって線形成長速度に従うと想定した。このモデルにより、各群についての線形成長の切片および傾きの総合推定値を得た。その切片および傾きの両方を個々のマウス間で変化させる。傾き、すなわち、成長速度を比較し、異なる処置群間で異なった。なぜなら、実際の腫瘍成長は、全追跡調査期間にわたっては線形成長傾向に従わないことがあるからである。一部の実験では、腫瘍成長の増加は、初期に遅く、後期に早くなった。上記ランダム効果モデルにおける追跡調査時間に二次項を追加した。
【0239】
変異体LIGHT発現ベクターおよびクローンpcDNA3.1−LIGHTの産生をテンプレートとして使用して、PCRにより2つのdsDNA断片AおよびBを産生させた。断片A(約500b.p.)の産生のために、センスプライマー
【0240】
【化37】
【0241】
(太字は、BamHI部位を示す)およびアンチセンスプライマー
【0242】
【化38】
【0243】
を使用した。断片B(約200b.p.)を産生させるために、センスプライマー
【0244】
【化39】
【0245】
およびアンチセンスプライマー
【0246】
【化40】
【0247】
(下線付きのテキストはXbaI部位を示す)を使用した。断片Aについてのアンチセンスプライマーは、アミノ酸(a.a.)73−87についての配列であって、その中のa.a.79−82が欠失されている配列をカバーする断片Bについてのセンスプライマーと相補的(complimentary)である。断片AおよびBを混合し、94℃で変性させ、室温に冷却して2つのDNA断片をアニールした。アニールされたDNA産物をPCR反応のためのテンプレートとして使用し、BamHIおよびXbaIを使用してその産物をpcDNA3.1にクローニングした。a.a.79−82の欠失をシークエンシングによって検証した。pMFG−変異体LIGHTを産生させるために、pcDNA3.1−変異体LIGHTをNcoIおよびBamHIで消化し、NcoIおよびBamHIで消化されたpMFG−S−TPAプラスミド(Mulligan R C、マサチューセッツ工科大学、マサチューセッツ州ボストン)にライゲートした。
【0248】
変異体ヒトLIGHTをコードする核酸の患者への送達は、直接的であることがあり、この場合は前記患者を前記核酸もしくは核酸担持ベクターに直接曝露し、または間接的であることもあり、この場合は、生検から得た腫瘍細胞を先ずin vitroで前記核酸で形質転換し、照射し、その後、前記患者に移植する。これらのアプローチは、腫瘍の抑制または他の病気の処置のための遺伝子療法において常例的に実施されている。
【0249】
核酸の送達。核酸配列をin vivoで直接投与し、投与された場所でそれらの核酸は発現され、コードされている産物を生産する。これは、当該技術分野において公知の非常に多くの方法のうちのいずれかにより、例えば、それらを適切な発現ベクターの一部として構築し、それを、それらが細胞内になるように投与することによって、例えば、欠陥もしくは弱毒レトロウイルスまたは他のウイルスベクターを使用する感染(米国特許第4,980,286号明細書)によって、または裸のDNAの直接注射によって、または微粒子ボンバードメントの使用、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト剤でのコーティング、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセル内への封入によって、または核に侵入することが公知であるペプチドに連結した状態でそれらを投与することによって、受容体媒介エンドサイトーシスを受けるリガンドに連結した状態でそれを投与すること(これを用いて、前記受容体を特異的に発現する細胞タイプに標的化させることができる)によって果たすことができる。あるいは、前記核酸を細胞内に導入することができ、発現のために宿主細胞DNA内に相同組換えによって組み込むことができる。
【0250】
生体分解性マイクロスフェアは、核酸を封入するものであり、遺伝子送達においても使用されている。ジヒドラジドで誘導体化され、核酸に架橋されて徐放性マイクロスフェアを形成するヒアルロン酸(HA)を含むマイクロスフェア、例えば、マトリックス、フィルム、ゲルおよびヒドロゲルは、核酸を送達するために使用されている。米国特許第6,048,551号明細書には、遺伝子ベクターを封入するためにポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースおよびコポリマーマイクロスフェアを利用する制御放出遺伝子送達システムが開示されている。
【0251】
上述の方法の実施の際に使用する治療用組成物を、所望の送達方法に適する担体を含む医薬組成物に調合することができる。適する担体は、その治療用組成物と併せたときにその治療用組成物の抗腫瘍機能を保持する材料を含む。例としては、多数の標準的医薬担体、例えば、滅菌リン酸緩衝食塩溶液、静菌水、およびこれらに類するものが挙げられる。治療調合物を可溶化することができ、その治療用組成物の腫瘍部位への送達が可能な任意の経路によって投与することができる。潜在的に有効な投与経路としては、静脈内投与経路、非経口投与経路、腹腔内投与経路、筋肉内投与経路、腫瘍内投与経路、皮内投与経路、器官内投与経路、同所投与経路およびこれらに類するものが挙げられる。静脈内注射のための好ましい調合物は、保存静菌水、滅菌非保存水の溶液中の、および/または注射用の滅菌塩化ナトリウムが入っているポリ塩化ビニルもしくはポリエチレンバッグの中で希釈された、治療用組成物を含む。治療用タンパク質製剤を凍結乾燥させ、滅菌粉末として、好ましくは真空下で保管することができ、その後、注射の前に静菌水(例えば、ベンジルアルコール保存薬を含有するもの)中でまたは滅菌水で再構成することができる。上述の方法を用いる癌の処置のための投薬量および投与プロトコルは、その方法およびその標的癌によって様々であり得、一般に、当該技術分野において正しく認識されている多数の因子に依存することになる。
【0252】
ウイルスベクターを使用する送達。本発明の抗体をコードする核酸配列を含有するウイルスベクターを特定の核酸の送達に使用する。例えば、レトロウイルスベクターを使用することができる。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組み込みに必要な成分を含有する。遺伝子療法に使用される所望のタンパク質をコードする核酸配列を、遺伝子の患者への送達を助長する1つ以上のベクターにクローニングする。アデノウイルスは、遺伝子療法において使用することができる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、気道上皮に遺伝子を送達するための特に魅力的なビヒクルであり、アデノウイルス系送達システムの他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスには、非分裂細胞を感染させることが可能であるという利点がある。アデノ関連ウイルス(adeno−associated virus:AAV)も遺伝子療法での使用に提案されている(米国特許第5,436,146号明細書)、レンチウイルスは、遺伝子療法での使用に有望である。
【0253】
組織培養中の細胞のトランスフェクション、その後の患者への送達。遺伝子療法へのもう1つのアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、またはウイルス感染などの方法による組織培養中の細胞への遺伝子の移入を含む。通常、前記移入方法は、選択可能マーカーの細胞への移入を含む。その後、それらの細胞を選択下に置いて、移入遺伝子を取り込んだおよびその移入遺伝子を発現する細胞を単離する。その後、それらの細胞を患者に送達する。この方法では、核酸を細胞に導入した後、結果として生ずる組換え細胞をin vivo投与する。かかる導入を当該技術分野において公知の任意の方法によって行うことができ、その方法としては、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、前記核酸配列を含有するウイルスもしくはバクテリオファージでの感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、微小核細胞融合法、スフェロプラスト融合などが挙げられるが、これらに限定されない。前記技法は、前記核酸が前記細胞によって発現可能であるような、好ましくはその細胞の子孫によって遺伝可能および発現可能であるような、前記核酸の前記細胞への安定した移入に備えるものである。
【0254】
結果として得られる組換え細胞を照射してもよく、および当該技術分野において公知の様々な方法によって患者に送達することができる。組換え細胞(例えば、造血幹または前駆細胞)を好ましくは静脈内投与する。使用が考えられる細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者はそれを決めることができる。遺伝子療法を目的として核酸を導入することができる細胞は、任意の所望の、利用可能な細胞タイプを包含し、それらとしては、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞、血球、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;様々な幹または前駆細胞、特に、造血幹または前駆細胞、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0255】
ワクチン。本明細書において用いる場合、用語「ワクチン」は、腫瘍特異的免疫応答を惹起する組成物(例えば、変異体ヒトLIGHT抗原およびアジュバント)を指す。これらのワクチンは、予防用(新たな腫瘍を防止する)ワクチンおよび治療用(親腫瘍を根絶する)ワクチンを含む。変異体ヒトLIGHTをコードするDNAワクチンなどのワクチンベクターを使用して、腫瘍に対する免疫応答を惹起することができる。その応答をある部位(例えば、腫瘍から遠隔の部位)へのワクチン組成物の投与によって被験者自体の免疫系から惹起する。その免疫応答が、結果として、体内の腫瘍細胞(例えば、原発性腫瘍細胞と転移性腫瘍細胞の両方)を根絶させることになり得る。腫瘍ワクチンの産生方法は、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第5,994,523号および同第6,207,147号明細書を参照されたし。これらの参照資料の各々が参照により本明細書に援用されている)。
【0256】
前記ワクチンは、医薬組成物中に1つ以上の腫瘍抗原を含むことがある。一部のケースでは、前記腫瘍抗原は、投与前に不活性化される。他の実施形態では、前記ワクチンは、1つ以上の追加の治療薬(例えば、サイトカインまたはサイトカイン発現細胞)をさらに含む。
【0257】
一定のケースでは、例えば常例的皮膚生検から得た、線維芽細胞などの、患者からの選択された細胞を、1つ以上の所望のタンパク質を発現するように遺伝子修飾する。あるいは、免疫系において通常は抗原提示細胞としての役割を果たす患者細胞、例えば、マクロファージ、単球およびリンパ球もまた、1つ以上の所望の抗原を発現するように遺伝子修飾することができる。その後、それらの抗原発現細胞を、患者の腫瘍細胞(例えば、腫瘍抗原)、例えば、照射腫瘍細胞の形態でのもの、または代替的に、精製された自然もしくは組換え腫瘍抗原の形態でのものと混合し、免疫処置において例えば皮下的に用いて、全身性の抗腫瘍免疫を誘導する。上に記載したものをはじめとする(しかしそれらに限定されない)任意の適する方法によって、前記ワクチンを投与することができる。
【0258】
ケモカイン、接着分子、およびナイーブT細胞のプライミングのための共起刺激分子を含む、以下のもののうちの少なくとも1つの刺激によって、癌転移を低減させることができる。癌タイプとしては、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌および皮膚癌が挙げられる。
【0259】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「移入」残基と呼ばれ、これらの残基は、典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、Winterおよび共同研究者[Jones ら、Nature、321:522−525(1986);Riechmannら、Nature、 332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534−1536(1988)]の方法に従って、齧歯動物CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行うことができる。したがって、かかる「ヒト化」抗体は、インタクトヒト可変ドメインより実質的に少ないヒト可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)である。実際、ヒト化抗体は、典型的に、一部のCDR残基およびことによると一部のFR残基が齧歯動物抗体における類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0260】
様々な形態のヒト化抗体−LIGHT融合体または結合体が企図される。例えば、前記ヒト化抗体は、LIGHTまたはその細胞外断片と結合体化している抗体断片、例えばFabであってもよい。あるいは、前記ヒト化抗体は、インタクト抗体、例えばインタクトIgG1抗体であってもよい。
【0261】
ヒト化の代案として、ヒト抗体を産生させることができる。例えば、免疫処置により内因性免疫グロブリン生産不在下で様々ヒト抗体を生産することが可能であるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を生産することができる。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255−258(1993)を参照されたし。
【0262】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら。Nature 348:552−553(1990))を用いて、免疫処置を受けたドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をin vitroで生産することができる。この技法によると、抗体Vドメイン遺伝子を糸状バクテリオファージ、例えばM13またはfd、のメジャーまたはマイナーコートタンパク質いずれかにインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面に機能性抗体断片としてディスプレイさせる(例えば、Johnson、Kevin S、およびChiswell,David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564−571 (1993)を参照されたし)。ヒト抗体をin
vitro活性化B細胞によって産生させることもできる(例えば、米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号明細書を参照されたし)。
【0263】
抗体断片の生産のために様々な技術が開発されている。伝統的に、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解性消化によって誘導された。しかし、これらの断片を組換え宿主細胞によって直接生産することもできる。Fab、FvおよびScFv抗体断片すべてを大腸菌(E.coli)において発現させ、大腸菌から分泌することができ、かくして大量のこれらの断片の容易な生産を可能にすることができる。抗体断片を抗体ファージライブラリーから単離することができる。例えば、前記抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号明細書に記載されているような「線状抗体」であることもある。かかる線状抗体断片は、単一特異性であることもあり、または二重特異性であることもある。
【0264】
抗体と共起刺激分子、例えばLIGHT、の結合体を、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジピミド酸ジメチル・HCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン(tolyene)2,6−ジイソシアナート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して、作製することができる。LIGHTまたはその断片の細胞外ドメインを、腫瘍抗原、好ましくは表面腫瘍抗原、に特異的である抗体または抗体断片に結合体化させる。
【0265】
あるいは、抗腫瘍抗原抗体とLIGHTとを含む融合タンパク質を例えば組換え法またはペプチド合成によって作製することができる。DNAの長さは、前記結合体の2つの部分をコードしているそれぞれの領域を含むことができ、これらの領域は、互いに隣接しているか、前記結合体の所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域によって隔てられている。
【0266】
本明細書に開示する抗体−LIGHT複合体を免疫リポソームとして調合することもできる。「リポソーム」は、哺乳動物への薬物の送達に有用である様々なタイプの脂質、リン脂質および/または界面活性剤で構成された小胞である。リポソームの成分は、一般に、生体膜の脂質配列に類似した二層構成で配列されている。抗体を含有するリポソームを当該技術分野において公知の方法、例えば、米国特許第4,485,045号明細書および第4,544,545号明細書ならびに1997年10月23日に公開された国際公開第97/38731号パンフレットに記載されている方法によって調製する。循環時間が増されたリポソームは、米国特許第5,013,556号明細書に開示されている。
【0267】
疾患の予防または処置のための投薬量および投与方式は、医師により公知の基準に従って選ばれることになる。LIGHT、抗体−LIGHT結合体または融合産物の適切な投薬量は、処置すべき癌のタイプ、疾患の重症度および経過、腫瘍のサイズ、転移の程度、抗体を予防目的で投与するのかまたは治療目的で投与するのか、以前の治療、患者の臨床履歴および抗体に対する応答、ならびに担当医の裁量に依存し得る。LIGHTまたは抗体−LIGHT組成物を患者に1回でまたは一連の処置を用いて適切に投与することができる。好ましくは、前記組成物を静脈内注入によってまたは皮下注射によって投与する。疾患のタイプおよび重症度に依存して、約1μg/kgから約50mg/kg体重(例えば、約0.1〜15mg/kg/用量)の抗体が、例えば、1回以上の別々の投与によろうと、または持続注入によろうと、患者への投与のための初期の候補投薬量であり得る。ある投薬レジメンは、約5mg/kgの初期負荷用量、続いて、約2mg/kgの週間維持用量の抗TAT抗体の投与を含むことがある。しかし、他の投薬レジメンが有用であることもある。典型的な日用量は、上で言及した要因に依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上にわたり得る。数日以上にわたる反復投与については、その病態に依存して、疾患の症状の所望の抑制、例えば腫瘍サイズ/体積の縮小および転移の低減、が起こるまで、処置を継続する。この治療の進捗を従来の方法およびアッセイによって、ならびに医師または他の当業者に公知の基準に基づいて、モニターすることができる。
【0268】
【表1】
【0269】
(項目1)
核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を有する変異体LIGHT分子であって、
i)野生型ヒトLIGHTと比較して増大した親和性でLIGHTのネズミ受容体に結合し、かつ
ii)野生型ヒトLIGHTと少なくとも同じ親和性でLIGHTのヒト受容体に結合する、
変異体LIGHT分子。
(項目2)
変異が、LIGHTの細胞外ドメインのコーディング配列内にある、項目1に記載の変異体LIGHT分子。
(項目3)
上記細胞外ドメインが、図6または7に列挙されているアミノ酸配列(出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25)から成る群より選択される、項目2に記載の変異体LIGHT分子。
(項目4)
野生型ヒトLIGHTタンパク質の細胞外ドメインの214位にリシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換を有する、項目2に記載の変異体LIGHT分子。
(項目5)
変異体LIGHTタンパク質、ペプチド、タンパク質またはペプチドの断片、および変異体LIGHTをコードする核酸分子の発現産物から成る群より選択される、項目1に記載の変異体LIGHT分子。
(項目6)
ヒトLIGHT配列に由来するアミノ酸配列を含む、項目1に記載の変異体LIGHT分子。
(項目7)
項目1に記載の変異体LIGHT分子を含む免疫学的組成物。
(項目8)
項目1に記載の変異体LIGHT分子に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物であって、腫瘍細胞に対して細胞傷害性のTリンパ球を刺激するために十分なものである、医薬組成物。
(項目9)
上記薬剤が、上記変異体LIGHT分子に化学的に結合体化されている、項目8に記載の組成物。
(項目10)
上記薬剤が、ヒト化モノクローナル抗体である、項目8に記載の組成物。
(項目11)
上記薬剤が、キメラ抗体である、項目8に記載の組成物。
(項目12)
上記薬剤が、ヘテロミニボディである、項目8に記載の組成物。
(項目13)
上記薬剤が、一本鎖抗体である、項目8に記載の組成物。
(項目14)
上記薬剤が、腫瘍抗原を認識するために十分な抗体断片である、項目8に記載の組成物。
(項目15)
上記変異体LIGHT分子が、細胞傷害性T細胞を刺激するために十分な細胞外ドメインのセクションを含む、項目8に記載の組成物。
(項目16)
上記セクションが、LIGHTの約100〜150個のアミノ酸をヒトLIGHTアミノ酸の順序で含む、項目15に記載の組成物。
(項目17)
上記セクションが、ヒトLIGHTタンパク質の約85〜240位からのアミノ酸配列を含む、項目15に記載の組成物。
(項目18)
変異体LIGHTが、プロテアーゼ認識配列EQLI(残基81〜84)(配列番号1)に変異を含み、それによって上記プロテアーゼ認識配列が不活性化される、項目8に記載の組成物。
(項目19)
変異体LIGHTが、欠失を含む、項目8に記載の組成物。
(項目20)
上記変異体LIGHTが、アミノ酸配列
【0270】
【化41】
【0271】
を含む細胞外ドメインに変異を含む、項目8に記載の組成物。
(項目21)
m4−14、m4−7およびm4−16と称する変異体LIGHT細胞外ドメイン配列。
(項目22)
原発性腫瘍の成長の低減に使用するためのまたは癌転移の処置のための、項目1に記載の変異体LIGHT分子に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物。
(項目23)
図6および7(出現順に、それぞれ、配列番号6−8、8−10、10、4、3、5、5、11−13、12、14−17、20、19−23、45、20、および25)に記載のヒト(hLIGHT)変異体分子。
(項目24)
項目23に記載の分子とHer−2に対する抗体とを含む融合タンパク質。
(項目25)
腫瘍細胞を特異的に認識する薬剤との組み合わせでプロテアーゼ耐性LIGHTタンパク質の断片を含む組成物。
(項目26)
上記薬剤が、腫瘍抗原に対する抗体である、項目25に記載の組成物。
(項目27)
上記薬剤が、腫瘍表面受容体を結合するリガンドである、項目25に記載の組成物。
(項目28)
LIGHT分子と連結、融合または結合体化された腫瘍抗原を認識するアミノ酸領域を含むキメラタンパク質であって、上記LIGHT分子が、腫瘍環境でプロテアーゼ消化に対して耐性であるか、または変異体LIGHT分子である、キメラタンパク質。
(項目29)
項目1に記載の変異体LIGHT分子を腫瘍に送達するための方法であって、上記方法は:(a)上記分子をコードする核酸分子を有するアデノウイルスまたは;(b)ナノ粒子;または(c)直接移入(direct transfer)を含む、方法。
(項目30)
原発性腫瘍の成長または癌転移を低減させる方法であって、上記方法は:(a)LIGHTポリペプチド変異体または断片に連結、結合体化または融合された腫瘍特異的薬剤を含む医薬組成物を投与する工程であって、ここで、上記組成物は、細胞傷害性Tリンパ球の生産を刺激するために十分なものである、工程;および(b)上記原発性腫瘍の成長または癌転移を、上記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程を含む、方法。
(項目31)
上記薬剤が、表面腫瘍抗原を認識する抗体である、項目30に記載の方法。
(項目32)
上記薬剤が、HER2、HER4、HERB、EGFR、STEAP、c−MET、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、CA−125、MUC−1;rasまたはp53の異常産物;およびDcR3から成る群より選択される腫瘍抗原に特異的な抗体である、項目30に記載の方法。
(項目33)
上記薬剤が、上記LIGHT断片に化学的に結合体化されているか、または上記LIGHT断片に組換え融合されている抗体である、項目30に記載の方法。
(項目34)
上記LIGHT断片が、ヒトLIGHTタンパク質のアミノ酸85−240を含むLIGHTの細胞外ドメインを含む、項目30に記載の方法。
(項目35)
上記医薬組成物が、静脈内投与される、項目30に記載の方法。
(項目36)
上記癌転移が、ケモカイン、接着分子、およびナイーブT細胞をプライミングするための共起刺激分子の少なくとも1つの生産を刺激することにより低減される、項目30に記載の方法。
(項目37)
上記癌が、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、腎癌、肝臓癌、白血病および皮膚癌から成る群より選択される、項目30に記載の方法。
(項目38)
化学療法薬または放射線療法を投与する工程をさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目39)
腫瘍の成長および癌転移を低減させる方法であって、上記方法は:(a)項目8に記載の組成物を投与する工程;または(b)LIGHTをコードする核酸分子もしくはその断片を個体の腫瘍部位に導入する工程であって、上記LIGHTは、細胞外ドメインに変異を含むか、プロテアーゼ耐性であり、かつLIGHTは、腫瘍細胞表面に安定して存在する、工程;および(c)上記原発性腫瘍の成長・癌転移を、上記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することにより低減させる工程を含む、方法。
(項目40)
核酸が、既存の腫瘍部位に送達されるか、または既存の腫瘍部位に対して遠位の部位に送達される、項目39に記載の方法。
(項目41)
原発性腫瘍の成長および癌転移を低減させる方法であって、上記方法は:(a)腫瘍特異的抗体を含む医薬組成物を投与する工程;(b)LIGHTタンパク質をコードする核酸分子を腫瘍部位に導入する工程であって、上記LIGHTは、ヒトLIGHTタンパク質またはその変異体もしくは断片であるか、あるいはプロテアーゼ耐性である、工程;(c)腫瘍細胞の表面で上記LIGHTタンパク質またはその断片を安定して発現させる工程;および(d)上記腫瘍の成長および癌転移を、上記腫瘍に対する腫瘍特異的T細胞の活性化を刺激することによって低減させる工程を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図20-3】
図21
図22
図23-1】
図23-2】
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]