(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0020】
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0021】
この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0022】
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。
【0023】
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層を含んで構成されている。上記粘着シートの典型的な一態様は、基材フィルム(支持体)の少なくとも一方の表面に粘着剤層を有する形態の基材付き粘着シートである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。また、基材フィルムはなくてもよい。
【0024】
ここに開示される粘着シートは、例えば、
図1に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。この粘着シート1は、基材フィルム10と、その基材フィルム10の第1面10Aおよび第2面10Bにそれぞれ支持された第1粘着剤層21および第2粘着剤層22とを備える。第1面10Aおよび第2面10Bは、いずれも非剥離性の表面(非剥離面)である。粘着シート1は、第1粘着剤層21の表面(第1粘着面)21Aおよび第2粘着剤層22の表面(第2粘着面)22Aをそれぞれ被着体に貼り付けて使用される。すなわち、粘着シート1は両面粘着シート(両面接着性の粘着シート)として構成されている。使用前の粘着シート1は、第1粘着面21Aおよび第2粘着面22Aが、少なくとも該粘着剤面側が剥離性を有する表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。あるいは、剥離ライナー32を省略し、剥離ライナー31として両面が剥離面となっているものを使用して、粘着シート1を巻回して第2粘着面22Aを剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、第2粘着面22Aもまた剥離ライナー31によって保護された構成としてもよい。
【0025】
ここに開示される技術は、基材フィルムの一方の面のみに粘着剤層を有する片面粘着シートの形態でも実施され得る。片面粘着シートの一例を
図2に示す。この粘着シート2は、基材フィルム10と、その第1面10Aに支持された第1粘着剤層21を有し、第1粘着剤層21の表面(第1粘着面)21Aを被着体に貼り付けて使用される。使用前の粘着シート2は、第1粘着面21Aが、少なくとも該粘着剤面側が剥離面となっている剥離ライナー31によって保護された構成を有している。あるいは、剥離ライナー31を省略し、基材フィルム10として第2面10Bが剥離面となっているものを使用して、粘着シート2を巻回して第1粘着面21Aを基材フィルム10の第2面10Bに当接させることにより第1粘着面21Aを保護する構成としてもよい。あるいは、ここに開示される粘着シートは、特に図示しないが、粘着剤層のみからなる基材レスの両面粘着シートであってもよい。
【0026】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含む粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する。上記粘着シートは、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の表面に上記粘着剤層を有する基材付き粘着シートであり得る。ここで、ベースポリマーとは、粘着剤層に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)の主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0027】
(アクリル系ポリマー)
上記アクリル系ポリマーは、C
1−6アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー成分の重合物である。ここで主モノマーとは、モノマー成分の主成分、すなわち50重量%超を占める成分をいう。
【0028】
C
1−6アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらC
1−6アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
C
1−6アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとするアクリル系ポリマーは、より炭素原子数の多いアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとするアクリル系ポリマーに比べて、概して油に対する親和性が低い。したがって、かかるアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む上記粘着剤層は、該粘着剤層内に油分を吸収しにくい傾向にある。
【0030】
粘着剤層の油親和性をより低くする観点から、上記アクリル系ポリマーは、主モノマーがC
1−5アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、C
1−4アルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。好ましい一態様に係るアクリル系ポリマーは、被着体に対する密着性や、基材フィルムを有する構成において該基材フィルムに対する密着性を高める観点から、主モノマーがC
2−6アルキル(メタ)アクリレートであり、より好ましくはC
4−6アルキル(メタ)アクリレートである。好ましい他の一態様に係るアクリル系ポリマーは、上記密着性向上の観点から、主モノマーがC
1−6アルキルアクリレートであり、より好ましくはC
1−4アルキルアクリレート(例えばC
2−4アルキルアクリレート)である。
【0031】
上記C
1−6アルキル(メタ)アクリレートとしては、粘着剤層の油親和性低減および被着体や基材フィルムに対する密着性向上の観点から、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が概ね20℃以下(典型的には概ね10℃以下、好ましくは概ね0℃以下、より好ましくは概ね−10℃以下、さらに好ましくは概ね−15℃以下)であるC
1−6アルキル(メタ)アクリレートを好ましく採用し得る。ここに開示される技術は、例えば、上記アクリル系ポリマーの主モノマーがn−ブチルアクリレート(BA)である態様で好ましく実施され得る。
【0032】
また、粘着剤層の油親和性を低くする観点から、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうちC
1−6アルキル(メタ)アクリレート(典型的にはC
1−6アルキルアクリレート、例えばBA)の占める割合は、好ましくは凡そ60重量%以上、より好ましくは凡そ75重量%以上、より好ましくは凡そ85重量%以上である。ここに開示される技術は、例えば、上記モノマー成分の凡そ70重量%以上(より好ましくは凡そ80重量%以上、さらに好ましくは凡そ85重量%以上であり、凡そ90重量%以上または凡そ95%以上であってもよい。)がBAである態様で好ましく実施され得る。
【0033】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、必要に応じて上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのTgの調整、凝集力の向上、初期接着性の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのうちの好適例としてビニルエステル類が挙げられる。ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。なかでもVAcが好ましい。
【0034】
また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは剥離強度の向上に寄与し得るその他モノマーとして、水酸基(OH基)含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0035】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの一好適例として、上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。これにより、凝集力の高い粘着剤層が得られやすくなる傾向にある。モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含むことは、粘着剤層と被着体や基材フィルムとの密着性向上にも有利に寄与し得る。カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。なかでも好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。AAが特に好ましい。
【0036】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの他の好適例として、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。水酸基含有モノマーは、カルボキシ基含有モノマーとともに共重合されていてもよい。水酸基含有モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも好ましい水酸基含有モノマーとして、2−ヒドロキシエチルアクリレートや4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のような、炭素原子数2〜4程度の直鎖アルキル基の末端に水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記その他モノマーとして、C
1−6アルキル(メタ)アクリレート以外のヒドロカルビル(メタ)アクリレートが共重合されていてもよい。そのような(メタ)アクリレートの例には、エステル末端に脂環式基を有する脂環式(メタ)アクリレートや、エステル末端に炭素原子数7以上(典型的には7〜20)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。脂環式(メタ)アクリレートの例としては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。C
7−20アルキル(メタ)アクリレートの例としては、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
上記「その他モノマー」は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。その他モノマーの合計含有量は、例えば、全モノマー成分の凡そ50重量%未満(典型的には、0.001〜40重量%程度)とすることができ、通常は凡そ25重量%以下(典型的には0.01〜25重量%程度、例えば0.1〜20重量%程度)とすることが適当である。
【0039】
上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その使用量は、通常、全モノマー成分の凡そ0.1〜20重量%(好ましくは0.1〜15重量%程度、典型的には0.2〜12重量%程度、例えば0.5〜10重量%程度)とすることが適当である。カルボキシ基含有モノマーの使用量が多くなると、粘着剤層の凝集力は概して向上する傾向にある。カルボキシ基含有モノマーの使用量を上記範囲とすることにより、後述する粘着付与樹脂の配合効果が適切に発揮され、被着体および基材フィルムに対して良好な密着性を示す粘着剤層が好適に実現され得る。一態様において、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分の凡そ1〜8重量%(例えば凡そ2〜7重量%)とすることができる。
また、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、通常、全モノマー成分の凡そ0.001〜10重量%(例えば凡そ0.01〜5重量%、典型的には凡そ0.02〜2重量%)とすることが適当である。
【0040】
アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのTgが凡そ−15℃以下(典型的には凡そ−70℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当である。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーの合成に用いられるモノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0041】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0042】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。
【0043】
上記文献にもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδ(損失正接)のピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0044】
特に限定するものではないが、被着体や基材フィルムに対する密着性の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ−25℃以下であることが有利であり、好ましくは凡そ−35℃以下、より好ましくは凡そ−40℃以下である。また、粘着剤層の凝集力の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ−65℃以上であることが有利であり、好ましくは凡そ−60℃以上、より好ましくは凡そ−55℃以上である。ここに開示される技術は、上記アクリル系ポリマーのTgが凡そ−65℃以上−35℃以下(例えば、凡そ−55℃以上−40℃以下)である態様で好ましく実施され得る。アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
【0045】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜170℃程度(典型的には40℃〜140℃程度)とすることができる。好ましい一態様において、重合温度を凡そ75℃以下(より好ましく凡そ65℃以下、例えば凡そ45℃〜65℃程度)とすることができる。
【0046】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1〜4の一価アルコール類);tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0047】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005〜1重量部程度(典型的には凡そ0.01〜1重量部程度)の範囲から選択することができる。
【0048】
上記溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施して得られたアクリル系ポリマー溶液を含む粘着剤組成物から形成されたものであり得る。上記アクリル系ポリマー溶液としては、上記重合反応液を必要に応じて適当な粘度(濃度)に調製したものを使用し得る。あるいは、溶液重合以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)でアクリル系ポリマーを合成し、該アクリル系ポリマーを有機溶媒に溶解させて調製したアクリル系ポリマー溶液を用いてもよい。
【0049】
ここに開示される技術におけるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば凡そ10×10
4〜500×10
4の範囲であり得る。粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、凡そ30×10
4〜200×10
4(より好ましくは凡そ45×10
4〜150×10
4、典型的には凡そ65×10
4〜130×10
4)の範囲にあることが好ましい。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
【0050】
(架橋剤)
上記架橋剤は、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを含む。これら2種の架橋剤を組み合わせて用いることにより、粘着剤層の凝集力を十分に向上させることができる。また、基材フィルム(支持基材)を含む構成において、該基材フィルムに対する良好な密着性を確保することができる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記架橋剤を、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で含有し得る。上記架橋剤は、典型的には、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。
【0051】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3〜5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
特に限定するものではないが、エポキシ系架橋剤の具体例として、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD−C」および商品名「TETRAD−X」、DIC社製の商品名「エピクロンCR−5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC−G」等が挙げられる。
【0053】
エポキシ系架橋剤の使用量は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0重量部を超えて凡そ1重量部以下(典型的には凡そ0.001〜0.5重量部)とすることができる。凝集力の向上効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.002重量部以上とすることが適当であり、凡そ0.005重量部以上が好ましく、凡そ0.008重量部以上がより好ましい。また、被着体や基材フィルムに対する密着性が低下しすぎることを避ける観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.2重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.1重量部以下とすることが好ましく、凡そ0.05重量部未満がより好ましく、凡そ0.03重量部未満(例えば凡そ0.025重量部以下)がさらに好ましい。
【0054】
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2−エチレンジイソシアネート;1,2−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0056】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2−シクロペンチルジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0057】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
好ましい多官能イソシアネートとして、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA−100」、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0059】
イソシアネート系架橋剤の使用量は特に限定されない。イソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0重量部を超えて凡そ10重量部以下(典型的には凡そ0.01重量部以上10重量部以下)とすることができる。通常、イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、凡そ0.1重量以上8重量部以下が適当であり、凡そ0.3重量以上5重量部以下が好ましく、凡そ0.5重量部以上4重量部未満(例えば凡そ0.7重量部以上3.5重量部以下)がさらに好ましい。かかる量のイソシアネート系架橋剤をエポキシ系架橋剤と組み合わせて用いることにより、被着体および基材フィルムに対する密着性と凝集力とが高レベルで両立され得る。これにより、良好な油分浸透防止性(耐油性)を示し、かつ保持性能(粘着剤層の凝集力)にも優れた粘着シートが実現され得る。
【0060】
ここに開示される技術において、エポキシ系架橋剤の含有量とイソシアネート系架橋剤の含有量との関係は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の含有量は、例えば、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/50以下とすることができる。被着体および基材フィルムに対する密着性と凝集力とをより好適に両立する観点から、エポキシ系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/75以下とすることが適当であり、凡そ1/100以下(例えば1/150以下)とすることが好ましい。また、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いることによる効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/1000以上、例えば凡そ1/500以上とすることが適当である。
【0061】
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、本発明の効果を顕著に損なわない限度で、エポキシ系架橋剤およびイソシアネート系架橋剤に加えて、他の架橋剤を必要に応じて含んでいてもよい。そのような他の架橋剤の例としては、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。あるいは、上記他の架橋剤を含有しない粘着剤組成物であってもよい。
【0062】
(粘着付与樹脂)
上記粘着付与樹脂としては、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、変性テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0063】
フェノール系粘着付与樹脂の例には、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂およびロジンフェノール樹脂が含まれる。
テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン−フェノール共重合体樹脂)と、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類の好適例としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水添テルペンフェノール樹脂と称されることもある。
アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドから得られる樹脂(油性フェノール樹脂)である。アルキルフェノール樹脂の例としては、ノボラックタイプおよびレゾールタイプのものが挙げられる。
ロジンフェノール樹脂は、典型的には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のフェノール変性物である。ロジンフェノール樹脂の例には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合する方法等により得られるロジンフェノール樹脂が含まれる。
【0064】
テルペン系粘着付与樹脂の例には、α−ピネン、β−ピネン、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン類(典型的にはモノテルペン類)の重合体が含まれる。1種のテルペン類の単独重合体であってもよく、2種以上のテルペン類の共重合体であってもよい。1種のテルペン類の単独重合体としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性したものが挙げられる。具体的には、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。
【0065】
ここでいうロジン系粘着付与樹脂の概念には、ロジン類およびロジン誘導体樹脂の双方が包含される。ロジン類の例には、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水素添加、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);が含まれる。
【0066】
ロジン誘導体樹脂は、典型的には上記のようなロジン類の誘導体である。ここでいうロジン系樹脂の概念には、未変性ロジンの誘導体および変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジンおよび重合ロジンを包含する。)の誘導体が包含される。例えば、未変性ロジンとアルコール類とのエステルである未変性ロジンエステルや、変性ロジンとアルコール類とのエステルである変性ロジンエステル等のロジンエステル類;例えば、ロジン類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;例えば、ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;例えば、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;例えば、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体の金属塩;等が挙げられる。ロジンエステル類の具体例としては、未変性ロジンまたは変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)のメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0067】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0068】
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。凝集力向上の観点から、一態様において、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。ここに開示される技術は、上記軟化点を有する粘着付与樹脂が、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体のうち50重量%超(より好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)である態様で好ましく実施され得る。例えば、このような軟化点を有するフェノール系粘着付与樹脂(テルペンフェノール樹脂等)を好ましく用いることができる。好ましい一態様において、軟化点が凡そ135℃以上(さらには凡そ140℃以上)のテルペンフェノール樹脂を用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されない。被着体や基材フィルムに対する密着性の観点から、一態様において、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0069】
上記粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して10重量部を超える量とすることが好ましい。このことによって、被着体に対する密着性を向上させる効果が好適に発揮され、良好な油浸透防止性を示す粘着シートが実現され得る。より高い密着性を得る観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、凡そ15重量部以上が好ましく、凡そ18重量部以上(例えば凡そ20重量部以上)がより好ましい。ここに開示される技術は、アクリル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量が凡そ25重量部以上である態様でも好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の含有量の上限は特に限定されない。ベースポリマー(アクリル系ポリマー)との相溶性や初期接着性の観点から、一態様において、通常、アクリル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、凡そ70重量部以下とすることが適当であり、凡そ55重量部以下とすることが好ましく、凡そ45重量部以下(例えば凡そ40重量部以下)とすることがより好ましい。
【0070】
好ましい一態様として、上記粘着付与樹脂が1種または2種以上のフェノール系粘着付与樹脂(典型的にはテルペンフェノール樹脂)を含む態様が挙げられる。フェノール系粘着付与樹脂の使用により、被着体に対する粘着剤層の密着性を改善し、被着体との界面からの油分の浸入を効果的に抑制することができる。また、フェノール粘着付与樹脂は、例えばロジン系粘着付与樹脂に比べて油に対する親和性が低い傾向にある。したがって、フェノール粘着付与樹脂を含有させることは、粘着剤層内への油分の浸入(吸油)の抑制にも役立ち得る。ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂の総量の凡そ25重量%以上(より好ましくは凡そ30重量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の総量の凡そ50重量%以上がテルペンフェノール樹脂であってもよく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95〜100重量%、さらには凡そ99〜100重量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。フェノール系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、凡そ5〜55重量部(例えば、凡そ10重量部を超えて55重量部以下)の範囲内であることが適当であり、凡そ15〜45重量部(例えば凡そ20〜40重量部)の範囲内であることが好ましい。
【0071】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術における粘着付与樹脂としては、水酸基価が20mgKOH/gより高いものを用いることができ、なかでも水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。以下、水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を「高水酸基価樹脂」ということがある。このような高水酸基価樹脂を含む粘着付与樹脂によると、被着体に対する密着性に優れ、かつ凝集力の高い粘着剤層が実現され得る。高水酸基価樹脂の使用は、粘着剤層の油親和性の低減にも役立ち得る。好ましい一態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が50mgKOH/g以上(より好ましくは70mgKOH/g以上)の高水酸基価樹脂を含んでいてもよい。
【0072】
ここで、上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)〜(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B−C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の重量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
【0073】
高水酸基価樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを用いることができる。高水酸基価樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、高水酸基価樹脂として、水酸基価が30mgKOH/g以上のフェノール系粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。好ましい一態様では、粘着付与樹脂として、少なくとも水酸基価30mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を使用する。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好都合である。
【0074】
高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。ベースポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、通常、凡そ200mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ180mgKOH/g以下、より好ましくは凡そ160mgKOH/g以下、さらに好ましくは凡そ140mgKOH/g以下である。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂が水酸基価30〜160mgKOH/gの高水酸基価樹脂(例えばフェノール系粘着付与樹脂、好ましくはテルペンフェノール樹脂)を含む態様で好ましく実施され得る。
【0075】
特に限定するものではないが、高水酸基価樹脂を使用する場合、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、例えば凡そ25重量%以上とすることができ、凡そ30重量%以上が好ましく、凡そ50重量%以上(例えば凡そ80重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)がより好ましい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95〜100重量%、さらには凡そ99〜100重量%)が高水酸基価樹脂であってもよい。
【0076】
高水酸基価樹脂として、水酸基価が70mgKOH/g未満の樹脂R1と、水酸基価が70mgKOH/g以上の樹脂R2とを組み合わせて用いてもよい。特に限定するものではないが、樹脂R2の含有量は、樹脂R1の含有量の0.2倍〜5倍程度とすることができ、通常は0.3倍〜3倍程度とすることが適当である。樹脂R2の含有量を樹脂R1の含有量の1倍〜3倍程度としてもよい。
【0077】
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてレベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0078】
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
【0079】
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)または非剥離性の表面に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。基材フィルムを有する構成の粘着シートでは、例えば、該基材フィルムに粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材フィルムに転写する方法(転写法)を採用してもよい。生産性の観点から、転写法が好ましい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材フィルム背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0080】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度とすることができ、通常は60〜130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材フィルムや粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0081】
粘着剤層の厚さは特に制限されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは凡そ70μm以下、より好ましくは凡そ50μm以下、さらに好ましくは凡そ30μm以下である。好ましい一態様において、粘着剤層の厚さは、凡そ28μm以下であってよく、凡そ25μm以下(例えば25μm未満)であってもよく、さらには凡そ20μm以下であってもよい。一般に、粘着剤層の厚さが小さくなると、被着体に対する密着性は低下し、該被着体との界面からの油分浸入が起こりやすくなる傾向にある。したがって、ここに開示される技術を適用して上記界面からの油分浸入を防止することが特に有意義である。かかる厚さの粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に有する粘着シートであってもよい。
粘着剤層の厚さの下限は特に制限されないが、被着体に対する密着性の観点からは、凡そ4μm以上とすることが有利であり、好ましくは凡そ6μm以上、より好ましくは凡そ10μm以上(例えば凡そ15μm以上)である。かかる厚さの粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に有する粘着シートであってもよい。
【0082】
<基材フィルム>
基材フィルムを含む態様の粘着シートにおいて、該基材フィルムとしては、ベースフィルムとして樹脂フィルムを含むものを好ましく用いることができる。上記ベースフィルムは、典型的には、独立して形状維持可能な(非依存性の)部材である。ここに開示される技術における基材フィルムは、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材フィルムは、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、上記ベースフィルムの表面に設けられた下塗り層、帯電防止層、着色層等が挙げられる。
【0083】
上記樹脂フィルムは、樹脂材料を主成分(当該樹脂フィルム中に50重量%を超えて含まれる成分)とするフィルムである。樹脂フィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂フィルム;塩化ビニル系樹脂フィルム;酢酸ビニル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリアミド系樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。樹脂フィルムは、天然ゴムフィルム、ブチルゴムフィルム等のゴム系フィルムであってもよい。なかでも、ハンドリング性、加工性の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、そのなかでもPETフィルムが特に好ましい。なお、本明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のシートであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(換言すると、不織布や織布を除く概念)である。
【0084】
上記樹脂フィルム(例えばPETフィルム)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤、分散剤(界面活性剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は凡そ30重量%未満(例えば凡そ20重量%未満、典型的には凡そ10重量%未満)程度である。
【0085】
上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造を有するものであってもよい。形状安定性の観点から、樹脂フィルムは単層構造であることが好ましい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は上記樹脂(例えばポリエステル系樹脂)の連続構造を有する層であることが好ましい。樹脂フィルムの製造方法は、従来公知の方法を適宜採用すればよく、特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0086】
基材フィルムを含む態様の粘着シートにおいて、該基材フィルムの厚さは特に限定されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、基材フィルムの厚さは、例えば凡そ200μm以下、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ100μm以下とすることができる。粘着シートの使用目的や使用態様に応じて、基材フィルムの厚さは、凡そ70μm以下であってよく、凡そ50μm以下でもよく、凡そ30μm以下(例えば凡そ25μm以下)でもよい。一態様において、基材フィルムの厚さは、凡そ20μm以下であってよく、凡そ15μm以下でもよく、凡そ10μm以下(例えば凡そ5μm以下)でもよい。基材フィルムの厚さを小さくすることにより、粘着シートの総厚さが同じであっても粘着剤層の厚さをより大きくすることができる。このことは、基材との密着性向上の観点から有利となり得る。基材フィルムの厚さの下限は特に制限されない。粘着シートの取扱い性(ハンドリング性)や加工性等の観点から、基材フィルムの厚さは、通常は凡そ0.5μm以上(例えば1μm以上)、好ましくは凡そ2μm以上、例えば凡そ4μm以上である。一態様において、基材フィルムの厚さは、凡そ6μm以上とすることができ、凡そ8μm以上でもよく、凡そ10μm以上(例えば10μm超)でもよい。
【0087】
基材フィルムの表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材フィルムと粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材フィルムへの投錨性を向上させるための処理であり得る。
【0088】
<剥離ライナー>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に、剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0089】
<粘着シート>
ここに開示される粘着シート(粘着剤層を含み、基材フィルムを有する構成ではさらに基材フィルムを含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されない。粘着シートの総厚さは、例えば凡そ500μm以下とすることができ、携帯機器の薄型化の観点から、通常は凡そ350μm以下が適当であり、凡そ250μm以下(例えば凡そ200μm以下)が好ましい。ここに開示される技術は、総厚さが凡そ150μm以下(より好ましくは凡そ100μm以下、さらに好ましくは凡そ60μm未満、例えば凡そ50μm以下)の粘着シート(典型的には両面粘着シート)の形態で好ましく実施され得る。粘着シートの厚さの下限は特に限定されないが、通常は凡そ10μm以上が適当であり、凡そ20μm以上が好ましく、凡そ30μm以上がより好ましい。
【0090】
ここに開示される粘着シートの粘着力は特に限定されない。好ましい一態様に係る粘着シートは、180度剥離強度が凡そ17N/25mm以上である。このような粘着力を示す粘着シートは、被着体に対する密着性が高く、したがって油分の浸透を防止する性能に優れたものとなり得る。180度剥離強度が凡そ17.5N/25mm以上(より好ましくは凡そ18N/25mm以上、例えば凡そ18.5N/25mm以上)である粘着シートがより好ましい。被着体に対する密着性は高ければ高いほど良いという観点から、180度剥離強度の上限は特に制限されないが、通常は凡そ80N/25mm以下(典型的には凡そ70N/25mm以下、例えば凡そ50N/25mm以下)が適当である。
【0091】
ここで、上記180度剥離強度とは、ステンレス鋼板に対する180度剥離強度(180度引き剥がし粘着力)を指す。180度剥離強度は、次のようにして測定することができる。具体的には、粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/25mm)を測定する。万能引張圧縮試験機としては、例えばミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG−1kN」を用いることができる。後述の実施例においても同様の測定方法が採用される。
【0092】
<用途>
ここに開示される粘着シートは、保持性能が高く、かつ粘着剤層自体への油分吸収に加えて粘着剤層と被着体との界面からの油分浸入が抑制された良好な耐油性(油分浸透防止性)を示す。このような特徴を活かして、上記粘着シートは、各種の携帯機器(ポータブル機器)において部材の固定に好ましく利用され得る。例えば、携帯電子機器における部材の固定用途に好適である。上記携帯電子機器の非限定的な例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。携帯電子機器以外の携帯機器の非限定的な例には、機械式の腕時計や懐中時計、懐中電灯、手鏡、定期入れ等が含まれる。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0093】
ここに開示される粘着シート(典型的には両面粘着シート)は、種々の外形に加工された接合材の形態で、携帯機器を構成する部材の固定に利用され得る。特に好ましい用途として、携帯電子機器を構成する部材を固定する用途が挙げられる。なかでも液晶表示装置を有する携帯電子機器に好ましく使用され得る。例えば、このような携帯電子機器において、表示部(液晶表示装置の表示部であり得る。)または表示部保護部材と筐体とを接合する用途等に好適である。
【0094】
このような接合材の好ましい形態として、幅4.0mm以下(例えば2.0mm以下、典型的には2.0mm未満)の細幅部を有する形態が挙げられる。ここに開示される粘着シートは、耐油性に加えて凝集力にも優れることから、このような細幅部を含む形状(例えば枠状)の接合材として用いられても、部材を良好に固定することができる。一態様において、上記細幅部の幅は、1.5mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよく、0.5mm程度またはそれ以下であってもよい。細幅部の幅の下限は特に制限されないが、粘着シートの取扱い性の観点から、通常は0.1mm以上(典型的には0.2mm以上)が適当である。
【0095】
上記細幅部は、典型的には線状である。ここで線状とは、直線状、曲線状、折線状(例えばL字型)等の他、枠状や円状等の環状や、これらの複合的または中間的な形状を包含する概念である。上記環状とは、曲線により構成されるものに限定されず、例えば四角形の外周に沿う形状(枠状)や扇型の外周に沿う形状のように、一部または全部が直線状に形成された環状を包含する概念である。上記細幅部の長さは特に限定されない。例えば、上記細幅部の長さが10mm以上(典型的には20mm以上、例えば30mm以上)である形態において、ここに開示される技術を適用することの効果が好適に発揮され得る。
【0096】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 携帯機器において部材の固定に用いられる粘着シートであって、
基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置されている粘着剤層とを備え、
上記粘着剤層は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含む粘着剤組成物を用いて形成されており、
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、C
1−6アルキル(メタ)アクリレートを凡そ50重量%より多く含み、
上記粘着付与樹脂の含有量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部を超える量(例えば、凡そ10重量部を超えて55重量部以下)であり、
上記架橋剤は、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを含む、粘着シート。
(2) 上記粘着付与樹脂はフェノール系粘着付与樹脂を含む、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記フェノール系粘着付与樹脂の含有量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部を超える量である、上記(2)に記載の粘着シート。
(4) 上記粘着付与樹脂は、水酸基価が凡そ30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着シート。
(5) 上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを凡そ0.5重量%〜凡そ10重量%含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート。
(6) 上記エポキシ系架橋剤の含有量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.05重量部未満である、上記(1)〜(5)のいずれか記載の粘着シート。
(7) 上記エポキシ系架橋剤の含有量が上記イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/100以下である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート。
(8) 上記粘着剤層の厚さが凡そ25μm以下である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着シート。
(9) 180度剥離強度が凡そ17N/25mm以上である、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着シート。
(10) 上記粘着剤層を上記基材フィルムの一方の表面および他方の表面に有する両面粘着シートとして構成されている、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の粘着シート。
【0097】
(11) 上記C
1−6アルキル(メタ)アクリレートの凡そ80重量%以上(例えば凡そ95重量%以上)は、エステル末端に炭素原子数3〜6の直鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートである、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記モノマー成分は、ブチルアクリレートを凡そ50重量%より多く(好ましくは80重量%以上)含む、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の粘着シート。
(13) 上記モノマー成分は、C
7−18アルキル(メタ)アクリレートの含有量が0〜10重量%程度(例えば0〜5重量%程度)である、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の粘着シート。
(14) 上記粘着剤層は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ15重量部以上のテルペンフェノール樹脂を含む、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) 上記粘着剤層は、水酸基価が凡そ30mgKOH/g以上(例えば凡そ50mgKOH/g以上)の粘着付与樹脂を、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ15重量部以上含む、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の粘着シート。
(16) 上記基材フィルムは単層構造のPETフィルムである、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) 上記粘着シートは、細幅部を有し、該細幅部の幅が凡そ0.2mm以上凡そ2.0mm未満である、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着シート。
【0098】
(18) 携帯機器において部材の固定に用いられる粘着シートであって、
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の表面および他方の表面に配置されている粘着剤層とを備える両面粘着シートとして構成されており、
上記粘着剤層の厚さが凡そ10μm以上凡そ25μm以下であり、上記両面粘着シートの総厚が凡そ30μm以上凡そ60μm未満であり、
上記基材フィルムはPETフィルムであり、
上記粘着剤層は、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂と、架橋剤とを含む粘着剤組成物を用いて形成されており、
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、ブチルアクリレートを80重量%より多く含み、かつC
7−18アルキル(メタ)アクリレートの含有量が0〜5重量%程度であり、
上記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを3〜8重量%程度含み、
上記テルペンフェノール樹脂の含有量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して15〜45重量部程度であり、
上記架橋剤は、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを含み、
上記エポキシ系架橋剤の含有量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.05重量部未満であり、
上記イソシアネート系架橋剤の含有量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ4重量部未満であり、かつ
上記エポキシ系架橋剤の含有量が上記イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/100以下である、粘着シート。
【0099】
(19) 上記(1)〜(18)のいずれかに記載の粘着シートを用いて固定されている部材を有する、携帯機器。
(20) 上記携帯機器はウェアラブル機器(例えば、リストウェア型のウェララブル機器)である、上記(19)に記載の携帯機器。
【実施例】
【0100】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0101】
<粘着剤組成物の調製>
[例1]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのBA95部およびAA5部と、重合溶媒としての酢酸エチル233部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.2部の2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを加え、60℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは約70×10
4であった。
上記アクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターT−115」、軟化点約115℃、水酸基価30〜60mgKOH/g、ヤスハラケミカル社製;以下「粘着付与樹脂A」という。)20部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業社製;以下「イソシアネート系架橋剤A」という。)2部およびエポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン、三菱瓦斯化学社製;以下「エポキシ系架橋剤B」という。)0.01部とを加え、攪拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0102】
[例2〜10]
例1に係る粘着剤組成物の調製において、使用する粘着付与樹脂の種類および使用量、ならびに使用する架橋剤の種類および使用量を表1,2に示すように設定した。その他の点については例1と同様にして、例2〜10に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製した。ここで、表1,2中の粘着付与樹脂Bはヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターS−145」(テルペンフェノール樹脂、軟化点約145℃、水酸基価70〜110mgKOH/g)であり、粘着付与樹脂Cは荒川化学工業社製の商品名「タマノル803L」(テルペンフェノール樹脂、軟化点約145〜160℃、水酸基価1〜20mgKOH/g)である。また、表1,2中の「(部)」は、いずれも、アクリル系ポリマー100部に対する使用量を示している。
【0103】
[例11,12]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としての2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90部およびAA10部と、重合溶媒としての酢酸エチル199部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.2部のベンゾイルパーオキサイドを加え、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは約120×10
4であった。
上記アクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、表2に示す種類および量の粘着付与樹脂および架橋剤を使用して、例11,12に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0104】
[例13〜15]
例1に係る粘着剤組成物の調製において、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤のいずれか一方のみを表2に示す量で使用した。その他の点については例1と同様にして、例13〜15に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0105】
<粘着シートの作製>
[例1〜15]
剥離ライナーとして、片面が剥離処理された剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル社製)を2枚用意した。これらの剥離ライナーの剥離面に、各例に係る粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ19μmの粘着剤層を形成した。上記2枚の剥離ライナー上に形成された粘着剤層を、厚さ12μmの透明な基材フィルムの第1面および第2面にそれぞれ貼り合わせて、総厚50μmの両面粘着シートを作製した。上記剥離ライナーはそのまま粘着剤層上に残し、粘着剤層の表面(接着面)の保護に使用した。基材フィルムとしては、東レ社製のPETフィルム(樹脂フィルム)、商品名「ルミラー」を使用した。
【0106】
[例16]
上記厚さ38μmのポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ポリエステル社製)の剥離面に例4に係る粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ25μm、三菱ポリエステル社製)の剥離面を貼り合わせた。このようにして、両面が上記2枚のポリエステル製剥離フィルムで保護された厚さ25μmの基材レス両面粘着シートを得た。
【0107】
得られた両面粘着シートを23℃、50%RHの環境下で1日間養生した後、該両面粘着シートについて以下の評価試験を行った。
【0108】
<評価試験>
[180度剥離強度]
23℃、50%RHの測定環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けて裏打ちし、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。その測定サンプルの他方の粘着面について、上述した方法で180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0109】
[保持力]
JIS Z 0237(2004)に準じて保持力試験を行った。すなわち、23℃、50%RHの環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ50μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅10mmにカットして測定サンプルを作製した。その測定サンプルの他方の粘着面を、被着体としてのベークライト板に、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて貼り付けた。このようにして被着体に貼り付けられた測定サンプルを80℃の環境下に垂下して30分間放置した後、上記測定サンプルの自由端に1kgの荷重を付与した。上記荷重が付与された状態で80℃の環境下に1時間放置した後の測定サンプルについて、最初の貼付け位置からのズレ距離(mm)を測定した。
【0110】
[油浸入距離]
23℃、50%RHの環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ50μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、30mm角の正方形にカットして測定サンプルを作製した。この測定サンプルの他方の粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)に貼り付けて30分間放置した後、上記測定サンプルの背面(上記PETフィルムの表面)全体から該測定サンプル周囲のステンレス鋼板までオレイン酸をまんべんなく塗布し、65℃、95%RHの環境下に72時間保持した。その後、オレイン酸を拭き取り、測定サンプルの外縁から該測定サンプルの内側にオレイン酸が浸入した距離(油浸入距離)を測定した。具体的には、測定サンプルの外縁を構成する4辺の各々につき、当該辺においてオレイン酸が最も内部まで浸入した距離を測定し、それらの平均値を算出した。
【0111】
[投錨性]
例1〜15に係る両面粘着シートを縦100mm、横20mmのサイズにカットし、一方の粘着面をステンレス鋼板に貼り付けて固定した。他方の粘着面を露出させ、この粘着面を試験者が指で一方向に軽く擦った。この操作を連続して30回繰り返した後に、基材フィルムからの粘着剤層の脱落の程度を、粘着剤層の脱落が認められなかった場合はE(Excellent)、当初の70面積%以上の粘着剤層が残っていた場合はG(Good)、当初の50面積%以上70面積%未満の粘着剤層が残っていた場合はA(Acceptable)、基材フィルム上に残っている粘着剤層が当初の50面積%未満であった場合はP(Poor)と評価した。
得られた結果を、各例に係る粘着シートの概略構成と併せて表1,2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
表1,2に示すように、C
1−6アルキル(メタ)アクリレートを50重量%より多く含むアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、エポキシ系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを組み合わせて使用した例1〜8および例16の粘着シートは、いずれも、油分浸入距離が5mm以下であり、良好な油分浸透防止性を示した。また、これらの粘着シートはいずれも、保持力評価におけるズレが2.5mm以下であり、優れた凝集力(保持特性)を示すことが確認された。例1〜7に係る粘着シートでは特に良好な結果が得られた。
【0115】
これに対して、アクリル系ポリマー100部に対する粘着付与樹脂の使用量が10部以下である例9,10および該アクリル系ポリマーの主モノマーがC
8アルキルアクリレートである例11,12は、いずれも油浸入距離が長く、油分浸透防止性が低かった。また、イソシアネート系架橋剤を単独で使用した例13,14は保持力が低かった。エポキシ系架橋剤を単独で使用した例15は、油浸入距離が長く、投錨性も低かった。
【0116】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を
限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々
に変形、変更したものが含まれる。