(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113890
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ホップ酸化反応産物、その製造法および用途
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20170403BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20170403BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20170403BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20170403BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P3/04
A61P3/06
A23L33/105
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-91484(P2016-91484)
(22)【出願日】2016年4月28日
(62)【分割の表示】特願2012-548835(P2012-548835)の分割
【原出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-175928(P2016-175928A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-279931(P2010-279931)
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】眞 鍋 簡 利
(72)【発明者】
【氏名】谷 口 慈 将
(72)【発明者】
【氏名】小 林 夕美恵
(72)【発明者】
【氏名】形 山 幹 生
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−212041(JP,A)
【文献】
国際公開第03/68205(WO,A1)
【文献】
Hertel,Marcus et al,Targeted isomerization: studies on increasing hop yield,Brauindustrie,2010年10月,95(10),pp.38-40,(abstract)[online]STN,CAPLUS,AN.2010:1347325,DN.154:257717
【文献】
LYASHENKO N I,STUDY OF BITTER SUBSTANCE CONTENT IN HOP LUPULIN AND THEIR EFFECTIVE USE,Prikladnaya Biokhimiya i Mikrobiologiya,1978年,Vol.14,No.1,pp.144-149,(abstract)[online]STN,BIOSIS,AN.1978:233125,DN.PREV197866045622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/105
A61P 3/04
A61P 3/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPLC分析による総ピーク面積に対するイソα酸、α酸およびβ酸のピーク面積の割合が20%以下である、ホップ酸化反応産物またはその抽出物を有効成分として含んでなる、脂肪蓄積抑制用または体重増加抑制用の組成物。
【請求項2】
食品組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記HPLCの測定条件が以下の通りである、請求項1または2に記載の組成物:
カラム:Alltima C18 2.1mm I.D. x 100mm 粒子径3μm
流速:0.6mL/min
溶出溶媒A:水/リン酸、1000/0.2, (v/v) + EDTA(free) 0.02%(w/v)
溶出溶媒B:アセトニトリル
溶出溶媒C:水
注入量:3μL
カラム温度:40℃
検出波長: 270nm(酸化反応産物、イソα酸、α酸、β酸)
グラジエントプログラム:
【表1】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本特許出願は、先に出願された日本国特許出願である特願2010−279931号(出願日:2010年12月15日)に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ホップ酸化反応産物、その製造法および用途に関し、詳細には、ホップの酸化反応産物またはその抽出物を用いた食品および食品添加剤並びにそれを有効成分とする脂肪蓄積抑制剤および体重増加抑制剤に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、健康を意識した飲食品が多く開発され、市販もされている。健康機能の実感がある本物の製品を得るためには、当然有効量を上回る配合が必要となる。古くから「良薬口に苦し」といわれているように、人体に有用な効果を与える、いわゆる機能性成分は苦味を伴うことがたびたびある。その際、飲食品に有効量以上を配合した場合、嗜好性が低下して、製品としての魅力が低下してしまう。
【0004】
ビール中の苦味成分の起源であるホップは、古くから民間薬としても用いられており、鎮静効果、健胃効果などの様々な健康機能が知られている。このホップから得られる抽出物を飲食品に対して一定量以上配合すると独特の強烈な苦味が生じてしまい、嗜好性を損なう恐れがある。
【0005】
このような苦味を除去あるいは抑制するために、多くの試みが報告されている。苦味低減素材として用いられる物質として、フォスファチジン酸(商品名「ベネコートBMI」花王株式会社)、L−オルニチン(食の科学 No.317 p54 2004)などが挙げられる。しかし、いずれも単独では効果が必ずしも強くなく、特に上記ホップ抽出物の苦味を抑制することは難しかった。また、スクラロースやソーマチンなどの甘味料添加によるマスキング技術(特開2008−99682号公報)では、甘味によって苦味が多少マスクされるものの、その強い甘味のため用途が限られたものになる。
【0006】
医薬品の場合は、錠剤の場合では通常糖衣が主に行われ、その他フィルムコーティング技術やマイクロカプセル化等が用いられているが、完全に苦味のマスキングをすることは難しかった。さらに、液剤の場合は飲料と同様にこれらの技術を使用することができず、飲食品や医薬品の分野では苦味の抑制は依然として大きな課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−99682号公報
【特許文献2】特許第4503302号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】食の科学 No.317 p54 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでにホップ由来のイソフムロン類、フムロン類およびルプロン類にPPARアゴニスト作用があり、この作用を介して脂質代謝改善機能があることが報告されている(特許第4503302号公報)。しかし、これらのホップ由来成分には強烈な苦味があり、飲食品や医薬品へ応用する際にはその苦味の抑制が課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ホップを酸化処理して得られた分解産物がそのフムロン類等の含量を大幅に低下させているにも関わらず、脂肪蓄積抑制作用および体重増加抑制作用を有すること、該分解産物の苦みが大幅に低減されることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0011】
そして、本発明によれば、HPLC分析による総ピーク面積に対するイソα酸、α酸およびβ酸のピーク面積の割合が20%以下である、ホップ酸化反応産物が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、ホップ酸化反応産物を含んでなる食品添加剤(以下、単に「本発明の食品添加剤」ということがある)、およびそれらを添加してなる食品(以下、単に「本発明の食品」ということがある)が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、また、ホップ酸化反応産物を有効成分として含んでなる、脂肪蓄積抑制剤または体重増加抑制剤(以下、単に「本発明の抑制剤」ということがある)が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、更に、ホップを酸化処理し、所望により酸化反応産物を抽出することを含んでなる、本発明の抑制剤の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、更に、ホップ酸化反応産物をヒトを含む哺乳動物に投与することを含んでなる、脂肪蓄積の抑制方法および体重増加の抑制方法が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、脂肪蓄積抑制剤または体重増加抑制剤の製造のためのホップ酸化反応産物の使用が提供される。
【0017】
本発明のホップ酸化反応産物またはその抽出物は脂肪蓄積抑制作用および/または体重増加抑制作用を有するとともに、異性化されたホップのような強烈な苦味がない。従って、本発明の食品や本発明の抑制剤は脂肪蓄積抑制や体重増加抑制などの生理活性を期待しつつ、苦味のマスキング手段を講じずにそのまま摂取できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】ホップを酸化処理して得られた生成物(実施例1)のHPLCチャート)である。
【
図1B】ホップを酸化処理して得られた生成物(実施例1)のHPLCチャートの拡大図である。
【
図2A】酸化処理されていないホップのHPLCチャートである。
【
図2B】酸化処理されていないホップのHPLCチャートの拡大図である。
【
図3】低温で酸化処理して得られた生成物(実施例5)のHPLCチャートである。
【
図4】生理作用評価(実施例8)に用いた、ホップを酸化処理し、エタノール抽出して得られた抽出物(実施例6)のHPLCチャートである。
【
図5】ホップを酸化処理し、エタノール抽出して得られた抽出物(実施例2)が高脂肪食摂取マウスの体重変化に与える影響を示した図である。
【
図6】ホップを酸化処理し、エタノール抽出して得られた抽出物(実施例2)で得られた生成物が高脂肪食摂取マウスの皮下脂肪重量の変化に与える影響を示した図である。
【
図7】ホップを酸化処理し、エタノール抽出して得られた抽出物(実施例2)が高脂肪食摂取マウスの腎周囲脂肪重量の変化に与える影響を示した図である。
【
図8】ホップを酸化処理し、エタノール抽出して得られた抽出物(実施例2)の膵リパーゼ阻害活性を示した図である。
【
図9】ホップを酸化処理し、エタノール抽出して得られた抽出物(実施例6)の50%膵リパーゼ活性阻害濃度(IC50)を示した図である。
【0019】
[ホップ酸化反応産物]
本発明により提供されるホップ酸化反応産物は、ホップを空気中の酸素に接触させて酸化することにより得ることができる。本発明において酸化処理とは特に限定されるものではないが、酸化効率の観点から、好ましくは60℃〜80℃、8時間〜120時間の条件下で酸化処理を行うことができる。酸化処理の手法は後述する。また、本発明においてホップは、ルプリン部を含有するものであれば任意の形態のものでよく、収穫して乾燥させる前のもの、収穫して乾燥したもの、圧縮したもの、粉砕したもの、ペレット状に加工したもの等用いることができる。また、ルプリン部を選択的に濃縮したペレットを用いることもできる。さらに、異性化処理をしたペレットを用いることもできる。
【0020】
ホップには、α酸(フムロン類)、β酸(ルプロン類)、イソα酸(イソフムロン類)などの酸性樹脂成分が含まれている。本発明において「フムロン類」は、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンを含む意味で用いられる。また、本発明において「ルプロン類」はルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン及びプレルプロンを含む意味で用いられる。さらに、本発明において「イソフムロン類」は、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン、Rho-イソフムロン、Rho-イソアドフムロン、Rho-イソコフムロン、Rho-イソポストフムロン、Rho-イソプレフムロン、テトラハイドロイソフムロン、テトラハイドロイソアドフムロン、テトラハイドロイソコフムロン、テトラハイドロイソプレフムロン、テトラハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソアドフムロン、ヘキサハイドロイソコフムロン、ヘキサハイドロイソポストフムロン、ヘキサハイドロイソプレフムロンを含む意味で用いられる。なお、イソフムロン類にはシスおよびトランス立体異性体が存在するが、特に断りがない限りその両者を含む意味で用いられる。
【0021】
後記実施例によると、ホップを酸化処理に付すことによりα酸、β酸、イソα酸の含有量が低減され、これら以外の成分の含有量が増加する。従って、「ホップ酸化反応産物」の例としては、実施例1のHPLC分析を実施した場合に、酸化反応産物のうちHPLC総ピーク面積に対するα酸、β酸およびイソα酸のピーク面積の割合が20%以下、好ましくは10%以下であるものが挙げられる。
【0022】
本発明の酸化反応産物に含まれるα酸、β酸、イソα酸以外の成分は、HPLC等の周知の分析手段により容易に検出することができる。例えば、実施例1に記載の手順で調製されたホップ酸化反応産物には、α酸、β酸およびイソα酸以外の化合物が含まれており、この化合物(
図1のα酸、β酸およびイソα酸以外のピーク)は実施例7および8に示されているように生理活性を奏しうる。従って、本発明の酸化反応産物の例としては、実施例1のHPLC分析を実施した場合に、酸化反応産物のうちHPLCの総ピーク面積に対するα酸、β酸およびイソα酸以外の成分のピーク面積の割合が80%以上、好ましくは90%以上であるものが挙げられる。
【0023】
本発明のホップ酸化反応産物には、例えば、処理条件あるいは摂取の態様によっては、フムロン類等の酸化反応により生成した脂肪酸等が含まれる可能性があり、酸化臭やコゲ臭と表現されるような不快臭により摂取が妨げられる可能性があることが判明した。
従って、本発明の酸化反応産物は、好ましくは、酸化産物中から不快臭が除去されたものである。不快臭の除去の手法は後述する。
【0024】
本発明のホップ酸化反応産物は水あるいは各種有機媒体等を含む溶媒による抽出や、超臨界二酸化炭素等を用いる超臨界抽出に供して得られる抽出物として利用することが可能であり、本発明は、かかる態様も包含する。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコ−ル;酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類;その他アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼンやヘキサン等の炭化水素;エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒等が挙げられる。抽出物とすることにより本発明のホップ酸化反応産物を高濃度で利用可能となるほか、保存時の安定性が増すことなどから有利である。
【0025】
[ホップ酸化反応産物の調製]
酸化処理
本発明の酸化反応産物は、ホップを酸化処理することにより製造することができる。
【0026】
酸化処理は、好ましくはホップを空気中で加熱することにより行われる。加熱温度は特に限定されないが、好ましい上限は100℃であり、より好ましい上限は80℃である。
加熱温度を100℃以下とする場合には異性化よりも酸化を優先的に進行させる上で有利である。また、好ましい加熱温度の下限は60℃である。加熱温度を60℃以上とする場合には酸化反応を効率的に進行させる上で有利である。また、反応期間も特に限定されるものではなく、ホップの品種や反応温度により適宜決定することができる。例えば、60℃であれば48〜120時間、80℃であれば8〜24時間が好ましい。さらにホップの形態は空気中の酸素と接触できれば特に限定されるものではないが、好ましくは粉末状にすることにより、反応時間を短縮できる。また、高湿の環境下で保管してもよい。
【0027】
酸化処理により、ホップに含まれているα酸、β酸およびイソα酸は酸化物へ変化しうる。これらの成分の酸化の程度はHPLC等により分析し確認することができる。
【0028】
酸化処理に付されるホップはビール添加物として市販されており、本発明では市販品を使用することができる。例えば、ホップ毬花を圧縮しペレット状にしたもの(Type90ペレット)、ルプリン部分が選択的に濃縮されたペレット(Type45ペレット)、または異性化処理したホップペレット(例えば、Isomerized Pellets (HopSteiner社))、などを用いることができる。
【0029】
不快臭除去処理
ホップを酸化処理に付して得られた酸化反応産物には不快臭があり、摂取の態様によっては悪影響を及ぼしうることから、該処理により生成した不快臭を除去する処理を実施してもよい。
【0030】
ホップ酸化反応産物を水性有機媒体で抽出することで、不快臭を除去することができる。この方法は極めて簡便で、かつ効率的である点で非常に有利である。水性有機媒体は通常食品製造に使用されるものであれば特に限定されるものではないが、抽出効率の面からエタノールが好ましい。抽出温度は特に限定されないが、好ましくは60℃以下であり、抽出効率を勘案すれば、50〜60℃がより好ましい。抽出されたホップの酸化反応産物は、不溶性成分をろ紙等で除去し、濃縮して抽出エキスとすることができる。該抽出物は、ホップ酸化反応産物と同様に、本発明の食品添加剤、本発明の食品および本発明の抑制剤に有利に利用することができる。
【0031】
[ホップ酸化反応産物の用途]
後記実施例5〜6に示される通り、ホップの酸化反応産物またはその抽出物は、高脂肪食摂取マウスにおいて体重を有意に抑制するとともに、高脂肪食摂取マウスの皮下脂肪重量を有意に減少させた。
【0032】
従って、本発明の酸化反応産物は、脂肪蓄積抑制剤(特に皮下脂肪蓄積抑制剤)および体重増加抑制剤として有用である。また、本発明の酸化反応産物または抽出物は肥満の予防および/または治療に有用である。
【0033】
本発明の酸化反応産物にはフムロン類やイソフムロン類のような強烈な苦味がない(実施例3)。従って、本発明の分解産物は上記のような生理活性作用を期待しつつ、飲食品や医薬品において苦味のマスキング手段を講じずにそのまま利用できる点で有利である。
【0034】
[医薬品および食品]
本発明の酸化反応産物を医薬品として提供する場合には、本発明の分解産物を薬学上許容される添加物と混合することにより製造できる。本発明の酸化反応産物はフムロン類やイソフムロン類のような強烈な苦味を有さないことから、苦味をマスキングするための手段を講じずに、あるいは既存のマスキング手段を用いて苦味を十分にマスキングした状態で所定の効能を期待する製剤とすることができる点で有利である。
【0035】
本発明の酸化反応産物は経口剤または非経口剤として用いることができるが、好ましくは経口剤である。経口投与剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターを担体として使用できる。
【0036】
製剤は、例えば、下記のようにして製造できる。
経口剤は、有効成分に、例えば賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)または滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などを用いることができる。
【0037】
注射剤は、有効成分を分散剤(例えば、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などと共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。
【0038】
外用剤は、有効成分を固状、半固状または液状の組成物とすることにより製造することができる。例えば、上記固状の組成物は、有効成分をそのまま、あるいは賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、白糖)、増粘剤(例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体)などを添加、混合して粉状とすることにより製造できる。上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様にして製造できる。半固状の組成物は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟骨状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれもpH調節剤(例えば、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム)などを含んでいてもよい。坐剤は、有効成分を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造できる。該組成物に用いる油性基剤としては、高級脂肪酸のグリセリド〔例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)〕、中級脂肪酸〔例えば、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製)〕、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油)が挙げられる。水性基剤としては、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコールが挙げられる。また、水性ゲル基剤としては、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体が挙げられる。
【0039】
本発明の食品添加剤は、食品への添加が意図された本発明の酸化反応産物である。本発明の酸化反応産物は前記のように脂肪蓄積抑制効果および体重増加抑制効果などの生理的作用を発揮する。従って、本発明の食品添加剤には、本発明の酸化反応産物の生理的作用を期待した食品への添加が意図されたものも含まれる。添加対象や添加態様は本発明の食品に関する記載に従うことができる。
【0040】
本発明の食品は、本発明の酸化反応産物を有効量含有した飲食品である。ここで、本発明の酸化反応産物を「有効量含有した」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲でホップ酸化反応産物が摂取されるような含有量をいう。
【0041】
本発明のホップ酸化反応産物を食品として提供する場合には、本発明の酸化反応産物をそのまま食品に配合することができる。より具体的には、本発明の食品は、本発明の酸化反応産物をそのまま飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を更に配合したもの、液状、半液体状若しくは固体状にしたもの、カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶液状にしたもの、一般の飲食品へ添加したものであってもよい。本発明の酸化反応産物または抽出部鬱はフムロン類やイソフムロン類のような強烈な苦味を有さないことから、苦味をマスキングするための手段を講じずに、あるいは既存のマスキング手段を用いて苦味を十分にマスキングした状態で所定の生理作用が期待される食品とすることができる点で有利である。
【0042】
なお、本発明の酸化反応産物を水性有機媒体で抽出して得られる抽出物を食品に使用する場合には、酸化反応により生じる不快臭がほとんど除去されていることから、抽出物を高濃度で食品に使用しても酸化臭やコゲ臭と表現される不快臭を生じない点でとりわけ有利である。
【0043】
本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品を含む意味で用いられる。
【0044】
また「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であってもよい。
【0045】
本発明の酸化反応産物は、脂肪蓄積抑制作用および体重増加抑制作用を有するため、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する健康食品や機能性食品、好適には脂質を含有する食品や高カロリーの食品等に本発明の酸化反応産物またはその抽出物を配合することにより、健康の維持・増進に役立つ食品、具体的には、脂肪蓄積抑制作用や体重増加抑制作用といった機能を併せ持つ食品として提供することができる。すなわち、本発明の食品は、脂肪の蓄積(特に、体脂肪および内臓脂肪の蓄積)が気になる消費者や体重の増加が気になる消費者に適した食品、特に特定保健用食品、として提供することができる。
【0046】
かかる飲食品として具体的には、飯類、麺類、パン類およびパスタ類等炭水化物含有飲食品;クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルトやプリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類;ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、その他雑酒、酎ハイなどのアルコール飲料;果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、清涼飲料水、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、ドリンクタイプのゼリー、コーヒー、ココア、茶飲料、栄養ドリンク、スポーツ飲料、ミネラルウォーターなどの非アルコール飲料;卵を用いた加工品、魚介類(イカ、タコ、貝、ウナギなど)や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品(珍味を含む)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
茶飲料としては、例えば、紅茶、緑茶、麦茶、玄米茶、煎茶、玉露茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ウコン茶、プーアル茶、ルイボスティー茶、ローズ茶、キク茶、ハーブ茶(例えば、ミント茶、ジャスミン茶)が挙げられる。
【0048】
果汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる果物としては、例えば、リンゴ、ミカン、ブドウ、バナナ、ナシ、およびウメが挙げられる。また、野菜汁入り飲料や果汁および野菜汁入り飲料に用いられる野菜としては、例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、およびスイカが挙げられる。
【0049】
本発明の医薬品および食品は、人類が飲食品として長年摂取してきたホップを原料とするものであり、毒性も低く、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いることができる。
本発明の酸化反応産物の投与量または摂取量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明の酸化反応産物を医薬として経口投与する場合、体重60kgの成人1人1日当たりイソフムロン類換算で10〜600mg、好ましくは20〜200mg、非経口投与する場合は1〜100mg、好ましくは3〜30mgの範囲となるように、1日1〜3回に分けて投与することができる。本発明の酸化反応産物と組み合わせて用いる他の作用機序を有する薬剤も、それぞれ臨床上用いられる用量を基準として適宜決定できる。また、食品として摂取する場合に、体重60kgの成人1人1日当たりイソフムロン類換算で、25〜9600mgの範囲、好ましくは、25〜780mgの範囲の摂取量となるよう本発明の酸化反応産物を食品に配合することができる。
【実施例】
【0050】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1:ホップペレット酸化反応産物の調製
ホップとしては、ペレット状のハラタウペルレ種(HPE種)を用いた。このホップをミルで粉砕し、80℃で24時間まで加熱反応時間を保持した。得られた生成物について以下のように前処理を実施した後、HPLC分析に供した。
〔反応物分析前処理〕
採取した生成物を10%w/vとなるようエタノールに添加し、50℃で1時間抽出を行った。得られた抽出液をエタノールで10倍に希釈した。
[HPLC構成装置]
ホンプ:LC-10ADvp×3(SHIMADZU)
デガッサー:DGU-20A5(SHIMADZU)
システムコントローラー:CBM-20A(SHIMADZU)
オートサンプラー:SIL-20ACHT(SHIMADZU)
カラムオーブン:CTO-20AC(SHIMADZU)
フォトダイオードアレー検出器:SPD-M20A(SHIMADZU)
波形解析ソフトウェア:LCSolution(SHIMADZU)
[HPLC条件]
カラム:Alltima C18 2.1mm I.D. x 100mm 粒子径3μm
流速:0.6mL/min
溶出溶媒A:水/リン酸、1000/0.2, (v/v) + EDTA(free) 0.02%(w/v)
溶出溶媒B:アセトニトリル
溶出溶媒C:水
注入量:3μL
カラム温度:40℃
検出波長: 270nm(酸化反応産物、イソα酸、α酸、β酸)
グラジエントプログラム:
【表1】
【0052】
上記分析条件にて、検出波長270nmで検出される全ピークの合計面積値(mAU・min)中のα酸、β酸、イソα酸のピークの面積値の比率(%)を算出した。波形解析にあたって、溶媒ピークやインジェクションショックによる負ピークが生じる領域は解析除外領域とした。
【0053】
上記実施例1の生成物の分析時のHPLCクロマトグラムを
図1Aに示す。また、
図1Bに拡大図を示し、30分以降の解析時に用いた面積を斜線で示す。
【0054】
酸化処理を行わなかった際の分析時クロマトグラムを
図2Aに示す。また、
図2Bに拡大図を示した。α酸、β酸のピークについては、この分析時のα酸(a1、a2、a3)、β酸(b1、b2)の保持時間を基準とした。a1、a2、a3は順にコフムロン、フムロン、アドフムロンであり、b1、b2はそれぞれコルプロン、ルプロンおよびアドルプロンである。
【0055】
各分析サンプルにおける検出波長270nmで検出される全ピークの合計面積値(mAU・min)中のα酸、β酸、イソα酸のピークの面積値の比率(%)は表2の通りであった。
【表2】
【0056】
上記結果から明らかなように、酸化処理して得られた生成物ではα酸、β酸およびイソα酸の全ピークに対する比率がかなり低下しており、未処理に比べα酸、β酸およびイソα酸が90%程度減少していた。
【0057】
また、酸化反応によりα酸、β酸およびイソα酸以外のピークが新たに出現していた。
すなわち
図1において矢印Aで分画される範囲のピーク(α酸、β酸のピークを除く)がこれに該当する。検出波長270nmで検出される全ピークの合計面積値(mAU・min)中の矢印Aで分画される範囲のピーク(α酸、β酸のピークを除く)の面積値の比率(%)は表3の通りであった。
【表3】
【0058】
上記分析方法にてホップまたは上記生成物に含まれるα酸、β酸、イソα酸の定量分析が可能である。定量分析用の標準品としては、α酸、β酸、イソα酸は、例えばAmerican Society of Brewing Chemists(ASBC)から入手可能なInternal Calibration StandardsのICE-2、ICS-I2、ICS-T2などが利用できる。
【0059】
実施例2:ホップの酸化反応産物の抽出(不快臭の除去)
実施例1の生成物は酸化反応に起因する脂肪酸等を含んでおり、摂取する態様によっては、この不快臭のため快適な摂取が困難であると考えられた。そこで、不快臭の除去を検討した。
【0060】
実施例1の生成物100gにエタノールを1Lとなるように添加し、55℃で1時間攪拌し、エタノール抽出物を得た。
【0061】
次いで、ろ過により抽出残渣を除去し、濃縮を行うことで22gの深緑色固形物を得た。
【0062】
上記抽出による実施例2の抽出物(深緑色固形物)、および実施例1の生成物(コントロール)の不快臭について、以下の方法で6人の社内パネラーを用いて官能評価を行った。実施例2の抽出物またはコントロールを10mMクエン酸バッファー溶液(pH5.5程度)に添加し、1時間煮沸して溶解させた。この溶液をろ過し、実施例2の抽出物またはコントロールがイソフムロン換算で約50ppm含まれるよう調製した溶液にて評価を実施した。
【0063】
官能評価は、数秒にわたり溶液の臭気を確認し、評価基準に従い評価した。結果は6名の評価点の平均値として求め、以下の基準に従って記号化した。
[評価基準]
【表4】
【0064】
[評価結果]
【表5】
【0065】
その結果、実施例2の抽出物はコントロールに対して不快臭が低減しおり、飲用に適した香味であることが示唆された。
【0066】
実施例3:苦味官能評価
実施例2の抽出物について、その苦味を官能評価にて比較した。
【0067】
[苦味官能評価の評価方法]
実施例2の抽出物および未酸化ホップペレットより実施例2と同様の方法で抽出して得られた生成物(コントロール)の苦味について、以下の方法で6人の社内パネラーを用いて官能評価を行った。抽出物については10mMクエン酸バッファー(pH5.5)中で煮沸溶解し、実施例2の抽出物またはコントロールがイソフムロン換算で50ppmとなるように希釈して官能評価に用いた。
【0068】
官能評価はサンプル数mLを口に含み、評価基準に従い評価した。結果は6名の評価点の平均値として求めた。
【0069】
[評価基準]
【表6】
【0070】
[評価結果]
【表7】
【0071】
その結果、実施例2の抽出物について苦味が低減しており、飲用に適した香味であることが示唆された。
【0072】
実施例4:酸化反応温度、時間の検討
実施例1の方法に従い、ホップペレットを60℃または80℃で酸化処理し、経時的に生成物を採取しHPLCにて測定し、ピーク全体の面積に対するα酸、β酸およびイソα酸のピーク面積の合計のピーク面積比1、および、ピーク全体の面積に対するフムロン類、ルプロン類およびイソフムロン類以外のピーク面積のピーク面積比2を算出した。また、実施例3に記載された方法に従って官能評価を実施した。結果は以下の通りであった。
【表8】
【0073】
その結果、苦味スコアはピーク面積比とほぼ相関しており、反応温度・時間に比例し、加熱温度が上昇するとピーク面積比2が80%以上(ピーク面積比1が20%以下)に到達する時間は短縮され、効率よく苦味の低減が図れることが明らかとなった。
実施例5:低温での酸化処理検討
実施例1の方法に従い、ザーツ種のホップを4℃で5年間保管し、酸化処理を行った。
得られた生成物について、HPLC分析に供した。
【0074】
上記実施例5の生成物の分析時のHPLC分析クロマトグラムを
図3に示す。ホップの品種や反応温度によらず、同様の生成物を得られることが確認された。
【0075】
実施例6:生理作用評価サンプルの調製
本発明による生成物の生理作用を評価するために、以下の方法によりサンプルの調製を行った。
【0076】
実施例1および2記載の方法に従い、ホップを60℃32時間、48時間、120時間加熱反応させて抽出物を得た。このように調製した抽出物および実施例2の抽出物を生理作用評価に用いた。また、各抽出物を希釈してHPLC分析に供し、ホップ酸化反応産物が抽出されていることを確認した(
図4)。
【0077】
実施例7:脂肪酸蓄積等への影響の評価
実施例2の抽出物について、マウスを用いて生理評価を実施した。1群6匹の5週齢 雄性C57BL/6Jマウス(日本チャールズリバー)を、AIN93G飼料にて1週間程度馴化後、高脂肪食群、高脂肪食に実施例2の抽出物を固形分量0.5%(W/W)となるように添加した群の計2群を設定した。投与開始時より毎週体重を測定し、37日間まで投与を継続し、解剖時に皮下脂肪重量及び腎周囲脂肪重量を測定した。
【表9】
【0078】
その結果、高脂肪食群に対し、実施例2の抽出物0.5%添加群において有意な体重増加の抑制作用が認められ(
図5:体重;平均値±標準偏差;*:P<0.05(コントロール群と比較))、有意な皮下脂肪重量の低下および腎周囲脂肪重量の低下傾向(P=0.05)も認められた(
図6、
図7:それぞれ皮下脂肪重量、腎周囲脂肪重量;平均値±標準偏差;*:P<0.05(コントロール群と比較))。以上の結果から、ホップ酸化反応産物は脂肪蓄積抑制作用を持つことが確認された。一般的に脂肪蓄積抑制作用のメカニズムの1つとして試験食中の脂質吸収抑制が考えられる。そこで次に、実施例2の抽出物の脂質吸収抑制作用を評価するために、中性脂肪の吸収に大きく寄与する膵リパーゼの活性阻害作用を評価した。
【0079】
実施例8:ホップ酸化反応産物の膵リパーゼ活性阻害作用の評価
実施例2の抽出物の膵リパーゼ活性阻害作用を評価した。膵リパーゼ活性の測定はすでに報告された方法(J.Agric.Food Chem.,53,4593−4598(2005))に従って以下の通りに実施した。測定試薬には4−methylumbelliferyloleate(シグマアルドリッチ)を使用し、酵素源にはブタ膵リパーゼ(シグマアルドリッチ)を、1検体当たり10U使用した。実施例2の抽出物は4%ジメチルスルホキシドを用いて所定の固形分濃度に溶解し、試験に供した。活性は4%ジメチルスルホキシドのみを添加した場合に得られる酵素活性を100%として表示した。
【0080】
その結果、ホップ酸化反応産物は膵リパーゼ活性を阻害し、終濃度82.8μg/mlで添加した時に約50%までリパーゼ活性が低下した(
図8:ホップ酸化反応産物の膵リパーゼ阻害活性;平均値±標準偏差)。以上の結果から、実施例2の抽出物が膵リパーゼ活性の阻害作用を持つことが確認された。
【0081】
次に、実施例6で得られた抽出物について同様に膵リパーゼ活性阻害作用を評価した。
測定の結果、実施例6で得られた抽出物はすべて膵リパーゼ活性を阻害し、固形分の終濃度37.9〜133.3μg/mlで添加したときに約50%までリパーゼ活性が低下した。また、実施例6で得られた抽出物の50%膵リパーゼ活性阻害濃度(IC50)は
図9に示される通りであった。以上の結果から、実施例6で得られた抽出物は全て膵リパーゼ活性の阻害作用を持つことが確認された。