特許第6113916号(P6113916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6113916青色染料化合物、それを含むカラーフィルター用青色樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113916
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】青色染料化合物、それを含むカラーフィルター用青色樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   C07C 251/30 20060101AFI20170403BHJP
   C07C 249/02 20060101ALI20170403BHJP
   C09B 11/16 20060101ALI20170403BHJP
   C09B 69/02 20060101ALI20170403BHJP
   C09B 67/22 20060101ALI20170403BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170403BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20170403BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170403BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   C07C251/30CSP
   C07C249/02
   C09B11/16
   C09B69/02
   C09B67/22 F
   G02B5/20 101
   G03F7/004 505
   G02F1/1335 505
   C09B67/20 F
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-516459(P2016-516459)
(86)(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公表番号】特表2016-527333(P2016-527333A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】KR2014004884
(87)【国際公開番号】WO2014196770
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0063399
(32)【優先日】2013年6月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514244158
【氏名又は名称】キュン−イン シンセティック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KYUNG−IN SYNTHETIC CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク・スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョンノク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョンギ
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ヒョンジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ドギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ユナ
【審査官】 伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−025194(JP,A)
【文献】 特開2013−010814(JP,A)
【文献】 特開2000−095960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2〜化学式7のいずれかで表されることを特徴とするトリアリールメタン青色染料化合物。
【化1】
【請求項2】
青色染料化合物;バインダー樹脂;反応性不飽和化合物;重合開始剤;有機溶剤;及び添加剤を含み、
前記青色染料化合物は、請求項1に記載の前記化学式2〜化学式7のいずれかで表される青色染料化合物であることを特徴とするカラーフィルター用青色樹脂組成物。
【請求項3】
前記青色染料化合物は、キサンテン染料、シアニン染料、及びアザポルフィリン染料のうちから選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のカラーフィルター用青色樹脂組成物。
【請求項4】
前記青色染料化合物は、青色樹脂組成物総重量に対して0.01重量%〜50重量%であることを特徴とする請求項に記載のカラーフィルター用青色樹脂組成物。
【請求項5】
前記青色樹脂組成物は、青色顔料をさらに含み、前記青色顔料は、銅フタロシアニン系青色顔料であることを特徴とする請求項に記載のカラーフィルター用青色樹脂組成物。
【請求項6】
前記反応性不飽和化合物は、熱硬化性単量体やオリゴマー;光硬化性単量体やオリゴマー;及びこれらの組合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項に記載のカラーフィルター用青色樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤、及びこれらの組合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項に記載のカラーフィルター用青色樹脂組成物。
【請求項8】
請求項に記載のカラーフィルター用青色樹脂組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用青色染料化合物に関し、より詳細には、従来の染料に比べて改善された溶解度、高耐熱性を有する新規のトリアリールメタン染料化合物、それを含むカラーフィルター用青色樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶物質の光学的・電気的性質を用いてイメージを表示する。液晶表示装置は、CRT、プラズマディスプレイパネルなどと比較して、軽量、低電力、低駆動電圧などの長所を有する。液晶表示装置は、ガラス基板の間に位置した液晶層を含む。光源から発生した光は、前記液晶層を通過し、液晶層は、光の透過率を調節する。液晶を通過した光は、カラーフィルター層を通過し、カラーフィルター層を通過した光を用いて加法混色によってフルカラー画面を具現する。
【0003】
一般的に、液晶表示素子に使われるカラーフィルターの製造方法として、染色法、印刷法、電着法、及び顔料分散法が知られている。従来から染料を使う方法について検討されてきたが、染料を使った場合、耐熱性、耐光性、耐化学性などが顔料に比べて低いという問題があるため、染料法の適用は制限される。その上、染色法の場合、複雑な工程を要するため経済的とは言えない。そこで、現在は顔料分散法が一般的に適用されている。顔料は、染料に比べて透明性は落ちるという短所があるが、その短所は顔料の微細化及び分散技術の進歩によって克服されてきた。顔料分散法で製作されたカラーフィルターは、顔料を使うために、光、熱、溶剤などに対して安定しており、フォトリソグラフィー法によってパターニングする場合、大画面及び高精度のカラーディスプレイ用カラーフィルターを製作しやすくて、現在最も広範囲に使われている。
【0004】
顔料分散型カラーレジストに使われる顔料は、RGBカラーフィルターを形成する場合、赤色、緑色、及び青色顔料をそれぞれ含む。一般的に、色相をさらに効果的に表現するために、黄色顔料、紫色顔料などをさらに含みうる。顔料分散法によってカラーフィルターを製作する方法は、まずスピンコータでカラーレジスト溶液を基板上に塗布し、乾燥させて、塗布膜を形成させる。引き続き、塗布膜のパターン露光及び現像によって着色画素を得て、高温で加熱処理して、最初の色相のパターンを得て、色相数に相応して、その操作を繰り返すことによって、カラーフィルターを製作する。カラーレジストの性能を左右する最も重要な要素は、着色剤として使われる顔料の特性及びその分散性、分散状態である。最近、LCDの大型化、高精細化に同伴して着色層の高透過率化、高明暗比化、ブラックマトリックス幅の狭小化、高信頼性化などカラーフィルターの要求特性は、毎年増加している。このような要求条件を満足させるための手段として、現在までは顔料を最大限微細化することによって、輝度と明暗比などの色特性を満足させた。
【0005】
しかし、顔料分散液を製造するためには、安定した分散状態及び微細化を容易にするために、合成によって得られた顔料粉末をそのまま使うことができない。そのため、ソルトミリングなどの微細化工程が必要であり、このような後処理工程は、環境保護の側面でも好ましくない。その上、分散状態を安定させるために、分散剤、顔料誘導体など多様な添加剤が必要であり、非常に難しくて、煩わしい製造工程を経て初めて生産可能となる。そして、顔料分散液は、最適の品質状態を保持するために、複雑な保管、運送条件を必要とする。
【0006】
顔料分散液の場合、顔料が粒子状態で存在して、光を散乱させるだけではなく、顔料の微細化によって顔料表面積が急増し、これによる分散安定性の悪化による不均一な顔料粒子の生成などによって、カラーレジスト製作に難点がある。
【0007】
また、顔料を用いて、最近、高輝度、高明暗比、高解像度を果たすために、多様な研究が進められているが、前述した顔料微細化及び分散安定性などの問題によって、顔料を着色剤とするカラーフィルターの製作の物性の改善は、微々たる実情である。
【0008】
その代案として、顔料と染料とを混合して物性を改善するHybrid形態の着色剤を用いて、輝度、明暗比などの改善を進行する研究も進められ、これを通じて一定レベルの輝度及び明暗比の改善がなされたが、これも、顔料に一部染料を添加する程度であって、物性改善の効果はあまり大きくない。
【0009】
このような問題点を解決し、高輝度、高明暗比及び高解像度を果たすために、最近、着色剤として顔料の代わりに、染料の使用が検討されている。そのうち、青色着色剤としてトリアリールメタン染料を用いた試みが多く行われた。一般的に、トリアリールメタン染料は、カラーフィルターの420〜450nmに透過率が高くてカラーフィルター用青色着色剤として色特性に優れているが、カラーフィルター用着色組成物に使われる溶剤に対する溶解度が落ち、耐熱性が多く落ちるという短所がある。カラーフィルター用着色組成物に使われる溶剤としては、一般的にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(Cyclohexanone)などが主に使われており、一般的に知られた染料の場合、シクロヘキサノンに対する溶解度は確保しやすいが、PGMEAまたはPGMEに対する溶解度は低いという問題がある。しかし、そのうち、シクロヘキサノンの場合、環境有害物質であって、その使用が禁止されている趨勢にあり、PGMEAまたはPGMEに対する高溶解度を有した染料が必要な状況である。
【0010】
既存のトリアリールメタン染料についての研究の多様な研究のうち、一例として、溶解度及び耐熱性の改善のために、トリアリールメタン染料陽イオンに、ナフタレンスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸陰イオンの塩化合物、及びそれを含む着色樹脂組成物、及びカラーフィルターについて言及されている。しかし、前記化合物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などに対する溶解度が低く、耐熱性も落ちるという問題点を有している。
【0011】
さらに他の一例として、トリアリールメタン陽イオンと他の染料の陰イオンとの化合物についての研究も進められているが、これら化合物は、耐熱性を一部改善したが、依然としてPGMEAのようなエステル有機溶媒に対する溶解度が落ちるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、前記の問題点を解決するためのものであって、青色化合物として色特性に優れたトリアリールメタン染料のPGMEAに対する低溶解度及び耐熱性などの問題を解決して、溶解度、耐熱性に優れた青色染料化合物を提供することである。
【0013】
また、本発明は、前記青色染料化合物を含むカラーフィルター用青色樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するために、下記化学式1で表されるトリアリールメタン青色染料化合物を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
前記化学式1において、
は、トリフルオロメタンスルホン酸またはビストリフルオロメタンスルホンイミド陰イオンである。R〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜10の芳香族炭化水素のうちから選択される1つであり、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して下記構造式1で表されるRであり、前記R、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、構造式1で表されるRである。
【0017】
【化2】
【0018】
前記構造式1において、nは、1〜10の整数であり、Rは、水素またはメチルである。また、RはRと、RはRと互いに連結されて飽和または不飽和環を形成してもよい。前記化学式1において、a、b及びcは、それぞれ独立して0〜4の整数であり、mは、1〜10の整数である。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記R及びRは、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基またはハロゲンであってもよい。
【0020】
また、本発明は、前記課題を解決するために、青色染料化合物、バインダー樹脂、反応性不飽和化合物、重合開始剤、有機溶剤、及び添加剤を含み、前記青色染料化合物は、前記化学式1で表されるトリアリールメタン青色染料化合物であることを特徴とするカラーフィルター用青色樹脂組成物を提供する。
【0021】
本発明の青色染料化合物は、前記化学式1で表されるトリアリールメタン青色染料化合物と共に選択的にキサンテン染料、シアニン染料、及びアザポルフィリン染料のうちから選択される1種以上をさらに含んでもよい。
【0022】
前記青色染料化合物は、青色樹脂組成物総重量に対して0.01重量%〜50重量%とすることができる。
【0023】
本発明のカラーフィルター用青色樹脂組成物は、必要に応じて青色顔料をさらに含んでいてもよく、当該青色顔料としては、銅フタロシアニン系青色顔料とすることができる。
【0024】
本発明のカラーフィルター用青色樹脂組成物において、前記バインダー樹脂としては、結着力を表わすことができる樹脂であれば特に制限されず、特に、公知のフィルム形成樹脂であってもよい。
【0025】
本発明のカラーフィルター用青色樹脂組成物において、前記反応性不飽和化合物としては、熱硬化性単量体やオリゴマー、光硬化性単量体やオリゴマー、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものとすることができる。
【0026】
本発明のカラーフィルター用青色樹脂組成物において、前記重合開始剤としては、熱硬化開始剤、光硬化開始剤、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものとすることができる。
【0027】
また、本発明は、前記課題を解決するために、前記カラーフィルター用青色樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルターを提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によるトリアリールメタン青色染料化合物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する優れた溶解性、高耐熱性を有する。したがって、本発明によるトリアリールメタン青色染料化合物を利用する場合、既存の顔料を用いたカラーフィルターに比べて、高輝度、高明暗比のカラーフィルターの製作が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
最近、カラーフィルターの着色剤として、顔料に比べて輝度が高い染料に対する開発がなされているが、染料は、一般的に顔料に比べて耐熱性が極めて低く、カラーフィルターに使われる有機溶剤に対する溶解度も一般的に低い。これにより、染料は、カラーフィルターの着色剤としての要求、すなわち有機溶剤に対する高い溶解性、高耐熱性、及び高輝度を同時に満足させるのは困難である。また、信頼性を満足する染料は稀である。
【0031】
本発明による青色染料化合物は、カラーフィルター用青色着色剤として色特性に優れたトリアリールメタンの溶解度、耐熱性を改善したものであって、カラーフィルターの青色組成物への使用に適している。
【0032】
本発明に係る青色染料化合物は、下記化学式1で表されるトリアリールメタン化合物であることを特徴とする。
【0033】
【化3】
【0034】
前記化学式1において、
は、トリフルオロメタンスルホン酸またはビストリフルオロメタンスルホンイミド陰イオンであり、R〜Rは、互いに同一または異なり、それぞれ独立して水素、置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6〜10の芳香族炭化水素のうちから選択される1つであり、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して下記構造式1で表されるRであり、前記R、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、構造式1で表されるRである。
【0035】
【化4】
【0036】
前記構造式1において、nは、1〜10の整数であり、Rは、水素またはメチルである。
【0037】
また、RはRと、RはRと互いに連結されて飽和または不飽和環を形成してもよい。
【0038】
前記化学式1において、a、b及びcは、それぞれ独立して0〜4の整数であり、mは、1〜10の整数である。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記R及びRは、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数1〜10のアルコキシ基またはハロゲンであってもよい。
【0040】
本発明のカラーフィルター用青色樹脂組成物は、前記青色染料化合物とバインダー樹脂、反応性不飽和化合物、重合開始剤、有機溶剤、及び添加剤を含み、必要に応じて青色顔料をさらに含んでもよい。
【0041】
前記青色染料化合物は、化学式1で表されるトリアリールメタン化合物と共に選択的に1種以上の他の染料をさらに含んでいてもよく、他の染料としては、一般的にカラーフィルター青色樹脂組成物に使われるキサンテン染料、シアニン染料、アザポルフィリン染料などが挙げられる。
【0042】
前記化学式1による化合物と共に選択的に1種以上の他の染料を含む青色染料化合物は、青色樹脂組成物総重量に対して0.01%〜50重量%で含まれ、青色染料化合物が前記範囲に含まれれば、溶剤に対する溶解性及び耐熱性に優れる。
【0043】
前記青色顔料としては、従来のカラーフィルター用着色樹脂組成物に一般的に使われる青色顔料のうち、1種以上を選択して用いてもよい。特に、当該青色顔料としては、銅フタロシアニン系青色顔料を含んでもよい。前記銅フタロシアニン系青色顔料の例としては、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)でピグメントに分類されている化合物が挙げられる。具体的な例としては、C.I.青色顔料(Color Index Pigment Blue)1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60などが挙げられる。
【0044】
前記バインダー樹脂は、結着力を表わすことができる樹脂であれば、特に制限されない。特に公知のフィルム形成樹脂が有用である。
例えば、セルロース樹脂、特に、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリアミド−イミン、ポリイミドなどのバインダーなどが有用である。
【0045】
また、バインダーには、アクリル樹脂のような光重合性不飽和結合を有する樹脂が含まれる。特に、重合性単量体の単独重合体及び共重合体、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、スチレン及びスチレン誘導体、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルのようなカルボキシ基を含有した重合性単量体、及びメタクリル酸、スチレン及びスチレン誘導体のような重合性単量体の共重合体が有用である。
【0046】
そのような例としては、オキシラン環とエチレン系不飽和化合物とをそれぞれ含有する化合物、例えば、グリシジルメタクリレート、アクリロイルグリシジルエーテル及びイタコン酸モノアルキルグリシジルなどとカルボキシル−含有重合化合物の反応生成物、また、ヒドロキシル基とエチレン系不飽和化合物(不飽和アルコール)とをそれぞれ含有する化合物(例えば、アリルアルコール、2−ブテン−4−オール、オレイルアルコール、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミドなど)とカルボキシル−含有重合化合物の反応生成物があり、このようなバインダーは、イソシアネート基のない不飽和化合物を含有してもよい。
【0047】
前記バインダーの不飽和度の当量(不飽和化合物当たりバインダーの分子量)は、十分な光重合性及びフィルム硬度を提供するために、一般的に200〜3,000であり、特に、230〜1,000範囲であり得る。フィルム露光後、十分なアルカリ現像性を提供するために、酸価は、一般的に20〜300であり、特に、40〜200であり得る。バインダーの平均分子量は、1,500〜200,000、特に、10,000〜50,000g/molが好ましい。
【0048】
前記反応性不飽和化合物は、熱硬化性単量体やオリゴマー、光硬化性単量体やオリゴマー、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、好ましくは、前記光硬化性単量体であり、分子内に1つ以上の反応性二重結合及び追加反応性基を含有してもよい。
【0049】
それと関連して、有用な光硬化性単量体は、特に、反応性溶媒または反応性希釈剤、例えば、モノ−、ジ−、トリ−、及び多官能性アクリレート及びメタクリレート、ビニルエーテル、グリシジルエーテルなどである。追加反応性基には、アリール、ヒドロキシル、ホスフェート、ウレタン、2次アミン、N−アルコキシメチル基などが含まれる。
【0050】
このような種類の単量体は、当業者に公知されており、例えば、文献[Roempp,Lexikon,Lacke und Druckfarben,Dr.Ulrich Zorll,Thimem Verlag Stuttgart−New York,1998,p491/492]に言及されている。単量体の選択は、特に、使われる照射の種類及び強度、光開始剤による目的反応及びフィルム特性に左右される。これら光硬化性単量体は、単独で、または単量体の組合わせで使うことも可能である。
【0051】
前記重合開始剤としては、熱硬化開始剤、光硬化開始剤、又はこれらの組合わせとすることができる。当該重合開始剤としては光硬化開始剤が好ましく、このような光硬化開始剤は、可視光線又は紫外線を吸収すると、単量体及び/又はバインダーなどに対して重合反応を誘導し得る反応中間体を生成する化合物である。重合開始剤は、例えば、文献[Roempp,Lexikon,Lacke und Druckfarben,Dr.Ulrich Zorll,Thimem Verlag Stuttgart−New York,1998,p445/446]に記載されている。
【0052】
前記有機溶剤は、例えば、ケトン、アルキレングリコールエーテル、アルコール、及び芳香族化合物である。ケトン群には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどがあり、アルキレングリコールエーテル群には、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールt−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールt−ブチルエーテルアセテートなどがあり、アルコール群には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどがあり、芳香族溶媒群には、ベンゼン、トルエン、キシレン、N−メチル−2−ピロリドン、エチルN−ヒドロキシメチルピロリドン−2アセテートなどがある。追加の他の溶剤としては、1,2−プロパンジオールジアセテート、3−メチル−3−メチル−3メトキシブチルアセテート、エチルアセテート、テトラヒドロフランなどがある。この溶媒は、単独で、または混合物として用いることができる。
【0053】
前記添加剤は、それぞれの目的に適合するものであれば、制限なしに使用可能である。好ましい例として、表面質感を向上させるために、脂肪酸、脂肪アミン、アルコール類、Bean oil、ワックス、ロジン、レジン類、ベンゾトリアゾール誘導体などが使われる。さらに好ましくは、前記脂肪酸としては、ステアリン酸(Stearic acid)またはベヘン酸(Behenic acid)などが使われ、脂肪アミンとしては、ステアリルアミン(Stearylamine)などが使われる。
【実施例】
【0054】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲が、これらに制限されず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であるということは、当業者に自明である。
【0055】
1.中間体化合物の合成
(1)化学式Iで表わされる化合物の合成
下記反応式1に従い、化学式Iで表わされる化合物を合成した。
【0056】
【化5】
【0057】
トルエン100gにN,N−ジエチルアミノ安息香酸0.249molを添加して撹拌した。次いで、塩化チオニル0.400molを滴下した後、80℃に昇温した後に、1時間反応させた。反応後、減圧蒸留して塩化チオニルとトルエンとを除去して、N,N−ジエチルアミノベンゾイルクロリドを得た。
【0058】
無水塩化アルミニウム0.310mmolをジクロロエタン120gと混合して、その混合物を撹拌して冷却した。上述のようにして得られたN,N−ジエチルアミノベンゾイルクロリドをジクロロエタン120gに溶解し、前記混合物に滴下した後、5℃以下に保持しながら30分間撹拌した。その後、N,N−ジエチルメタトルイジン0.249molを反応液に滴下した。反応液が室温になった後、氷水を投入して反応を終了させた。次いで、水酸化ナトリウム溶液を投入して、pH11以上にした後、珪藻土濾過を行って、不溶分を除去した。反応混合物が層分離した後、有機層を減圧下で濃縮した。得られた化合物に対してカラムクロマトグラフィーを行い、上記化学式Iで表わされる化合物0.075molを得た。
【0059】
(2)化学式IIで表わされる化合物の合成
下記反応式2に従い、化学式IIで表わされる化合物を合成した。
【0060】
【化6】
【0061】
N,N−ジエチルメタトルイジンの代わりに、N,N−ジエチルメタクロロアニリンを用いたことを除き、化学式Iの合成と同様にして上記化学式IIで表わされる化合物0.068molを得た。
【0062】
(3)化学式IIIで表わされる化合物の合成
下記反応式3に従い、化学式IIIで表わされる化合物を合成した。
【0063】
【化7】
【0064】
N,N−ジエチルメタトルイジンの代わりに、N,N−ジエチルメタメトックシアニリンを用いたことを除き、化学式Iの合成と同様にして化学式IIIで表わされる化合物0.053molを得た。
【0065】
(4)化学式IVで表わされる化合物の合成
下記反応式4に従い、化学式IVで表わされる化合物を合成した。
【0066】
【化8】
【0067】
N−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−ナフチルアミン0.220molと、トリエチルアミン0.242molとをジクロロメタン50mLに添加して撹拌し溶解した。次いで、メタクリル酸無水物0.242molを添加し、40℃に昇温して保持した。反応終了後、反応混合物に水を添加し、層分離した。さらに、飽和塩化ナトリウム溶液20mLを追加して30分間撹拌した。層分離後、有機層を減圧乾燥し、精製して、化学式IVで表わされる化合物0.190molを得た。
【0068】
(5)化学式Vで表わされる化合物の合成
下記反応式5に従い、化学式Vで表わされる化合物を合成した。
【0069】
【化9】
【0070】
化学式Iで表わされる化合物0.030molをクロロホルム140gを添加して撹拌した。次いで、オキシ塩化リン0.045molを追加し、15分間撹拌した。4−メトキシフェノール0.001molと化学式IVで表わされる化合物0.030molとを投入し、昇温して、4時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却して、水を追加した後、撹拌した。層分離後、減圧濃縮し、得られた化合物を精製して、化学式Vで表わされる化合物0.025mmolを得た。
【0071】
(6)化学式VIで表わされる化合物の合成
下記反応式6に従い、化学式VIで表わされる化合物を合成した。
【0072】
【化10】
【0073】
化学式Iで表わされる化合物の代わり、化学式IIで表わされる化合物を用いたことを除き、化学式Vで表わされる化合物の合成と同様にして、化学式VIで表わされる化合物0.023molを得た。
【0074】
(7)化学式VIIで表わされる化合物の合成
下記反応式7に従い、化学式VIIで表わされる化合物を合成した。
【0075】
【化11】
【0076】
化学式Iで表わされる化合物の代わり、化学式IIIで表わされる化合物を用いたことを除き、化学式Vで表わされる化合物の合成と同様にして、化学式VIIで表わされる化合物0.022molを得た。
【0077】
2.本発明によるトリアリールメタン青色染料化合物の合成
(1)合成例1:化学式2で表わされる化合物の合成
下記反応式8に従い、化学式2で表わされる化合物を合成した。
【0078】
【化12】
【0079】
化学式Vで表わされる化合物0.010molをMeOH 50gに溶解した後、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド0.011molを20%水溶液に添加して、塩を置換した。濾過後、得られた化合物をクロロホルムに溶解後、水で洗浄し、減圧濃縮して、化学式2で表わされる化合物0.009molを得た。
【0080】
(2)合成例2〜6:化学式3〜化学式7で表わされる化合物の合成
前記合成例1と同じ方法で、下記表1のように、化学式V〜化学式VIIで表わされる化合物をリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(A)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(B)に置換して合成した。
【0081】
【表1】
【0082】
【化13】
【0083】
(3)比較例1
下記反応式9に従い、比較例1の化合物を合成した。
【0084】
【化14】
【0085】
Basic Blue7 0.010molをメタノール50mLを加えて溶解後、p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩0.011molを20%水溶液に添加して、塩を置換した。濾過後、得られた化合物をクロロホルムに溶解後、水で洗浄し、減圧濃縮して、比較例1の化合物0.005molを得た。
【0086】
3.実験例1:溶解度の評価
合成例1〜6と比較例1、比較例2(Basic Blue7)染料化合物をPGMEAに溶解して、それぞれの溶解度を確認し、その結果を下記表2に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
前記表2より、本発明による合成例1〜6の化学式2〜化学式7の青色染料化合物は、PGMEAに5%以上の高溶解度を有することが分かる。比較例2の場合、PGMEAに対する溶解度が1%未満であり非常に低いことが分かる。また、比較例2においてp−トルエンスルホン酸ナトリウム塩に置換した比較例1の場合にも、溶解度が比較例2に比べては改善されたが、本発明による化合物に比べては非常に低いということが分かる。このように、本発明による青色染料化合物は、PGMEAのような有機溶媒に対して優れた溶解度を有することを確認することができる。
【0089】
4.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造及び耐熱性の測定
実施例1.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造
次のような組成で感光性青色樹脂組成物を製造した。
(a)バインダー樹脂:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(60:40質量比)の共重合体(Mw=20000) 2.7g
(b)アクリルモノマー:ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート 10g
(c)青色染料化合物:合成例1 2.3g
(d)光重合開始剤:BASF社のIrgacure OXE−01 2g
(e)溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 83g
【0090】
実施例2.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造
青色染料化合物として合成例2の化合物2.3gを用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様にして感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0091】
実施例3.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造
青色染料化合物として合成例3の化合物2.3gを用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様に感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0092】
実施例4.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造
青色染料化合物として合成例4の化合物2.3gを用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様に感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0093】
実施例5.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造
青色染料化合物として合成例5の化合物2.3gを用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様に感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0094】
実施例6.カラーフィルター用青色樹脂組成物の製造
青色染料化合物として合成例6の化合物2.3gを用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様に感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0095】
比較例3.
合成例1の化合物の代わりに、前記比較例1の化合物を用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様に感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0096】
比較例4.
合成例1の化合物の代わりに、Basic Blue7の化合物を2.3gを用いたことを除き、前記実施例1の組成と同様に感光性青色樹脂組成物を製造した。
【0097】
実験例2.耐熱性の測定
耐熱性の測定のために、10cm×10cmのガラス基板上に前記実施例及び比較例で製造したカラーフィルター用青色樹脂組成物を、スピンコーティングによりそれぞれ2μmの厚さに塗布した。次いで、90℃のホットプレートで3分間プリベーク(pre−bake)を行った後、室温で1分間冷却した。それを露光器を用いて100mJ/cmの露光量(365nm基準)で露光した。
【0098】
次に、コンベクションオーブン(convection oven)で220℃、30分間ポストベーク(postbake)を行い、分光光度計Otsuka electronic社のMCPD3700を使って、色特性を確認した。220℃のコンベクションオーブンで1時間さらに熱処理を進行した後、再び色特性を確認して、ΔEab値を求めた。結果を下記表3に示した。
【0099】
【表3】
【0100】
一般的に、ΔEabの数値が3以下であると信頼性を満足することが知られている。
実施例1〜6においては、ΔEabの数値が3以下であり信頼性を満足していることが分かる。比較例3と比較例4の場合、耐熱性が大きく落ちることが分かる。従って、本発明によるカラーフィルター用青色樹脂組成物の場合、耐熱性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によるトリアリールメタン青色染料化合物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する優れた溶解性、高耐熱性を有する。したがって、本発明によるトリアリールメタン青色染料化合物を利用する場合、既存の顔料を用いたカラーフィルターに比べて、高輝度、高明暗比のカラーフィルターの製作が可能である。