特許第6113927号(P6113927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113927
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】摩擦ライニングの熱処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/14 20060101AFI20170403BHJP
   F16D 69/00 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   C08J5/14
   F16D69/00 M
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-532705(P2016-532705)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公表番号】特表2016-529359(P2016-529359A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2015058020
(87)【国際公開番号】WO2015158686
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】102014105484.9
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511198863
【氏名又は名称】テーエムデー フリクション サービシス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバッハ、カイ
(72)【発明者】
【氏名】フーバー、トマス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ペリン、パウロ
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/147807(WO,A1)
【文献】 特表2002−520560(JP,A)
【文献】 特開2009−192097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0046789(US,A1)
【文献】 国際公開第2003/052022(WO,A1)
【文献】 特開2001−049242(JP,A)
【文献】 特開平02−276184(JP,A)
【文献】 特公昭63−054031(JP,B1)
【文献】 特開平10−017366(JP,A)
【文献】 赤外放射,日本,ウシオ電機株式会社,2010年10月 6日,[平成28年12月16日検索],インターネット,,URL,https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_sa/infrared_radiation.html
【文献】 赤外線加熱,日本,岩崎電気株式会社,2007年 1月19日,[平成28年12月16日検索],インターネット,,URL,http://www.iwasaki.co.jp/chishiki/ir/12.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
F16D 49/00−71/04
C04B 35/56−35/599
B29C 35/00−35/18
B29C 71/04
C08J 7/00−7/02;7/12−7/18
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IR線による摩擦ライニングの熱処理装置であって、
IR線源として、2260〜3000nmの波長範囲のIR線を生成する1又は2以上のセラミック型IR放射体又はセラミック型IR発熱領域を有すること
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記IR線源は10〜80kW/mの面出力を有する、
請求項1の装置。
【請求項3】
前記IR線源は20〜40kW/mの面出力を有する、
請求項2の装置。
【請求項4】
前記セラミック型IR放射体は、セラミック基板に取付けられた電気抵抗発熱体である、
請求項1〜3の何れかの装置。
【請求項5】
前記セラミック型IR発熱領域は、ガス加熱型セラミック多孔放射体である、
請求項1〜3の何れかの装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの装置が使用されることを特徴とする、IR線による摩擦ライニングの熱処理方法。
【請求項7】
前記装置における摩擦ライニングの処理時間は300〜2400秒である、
請求項6の方法。
【請求項8】
摩擦ライニングに対し、300〜500℃の表面温度が生成される、
請求項6又は7の方法。
【請求項9】
摩擦ライニングの熱処理のための、2260〜3000nmの波長領域にあるIR線を生成するセラミック型IR放射体ないしセラミック型IR発熱領域の使用。
【請求項10】
請求項1〜5の何れかの装置における請求項9の使用。
【請求項11】
請求項6〜8の何れかの方法における請求項9の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ライニングの熱処理のための、従って更にはその硬化のための、方法及び相応の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に挙示したタイプの方法及び装置は、例えばEP 1 085 231 B1及びDE 100 63 256 C2及びこれらに記載された従来技術から知られている。しかしながら、これらは、とりわけ原動機付き車両のブレーキないしブレーキライニングにおいて使用されるような摩擦ライニングの表面の処理のためにのみ利用される。
【0003】
この種の摩擦ライニングは、従って摩擦ライニング表面も、一般的に、有機結合剤(バインダ)を含有する。摩擦ライニングは、好ましくは、高圧・高温下でプレスされた有機及び無機物質の混合物から製造される。ブレーキ及びクラッチ(Kupplung)のためのライニングとしては、例えば、補強材料(Festigkeitstraeger)(例えばアラミド繊維)、1以上の結合剤及び所望の摩擦値に調節するための極めて多様な無機、更には有機充填物(フィラー)からなるプラスチックが使用される。ディクスブレーキ及びブロックブレーキ(Klotzbremse)のために、しばしば、焼結材料(Sinterwerkstoff)を用いて製造される摩擦ライニングが使用される。
【0004】
初めてブレーキを使用する際の相応の発熱によるブレーキのいわゆるグリーンフェーディング(Greenfading)、これはとりわけ摩擦ライニング表面に含まれる有機結合剤に起因し得るものであるが、を阻止するために、摩擦ライニング表面は、ブレーキライニングの取付けの前に、熱処理を即ちいわゆる「スコーチ(Scorchen)」を受ける。この処理は、摩擦ライニング及びその表面に含まれる有機材料のいわゆる炭化によるライニング表面の気孔率の向上に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 1 085 231 B1
【特許文献2】DE 100 63 256 C2
【特許文献3】EP 0 799 391 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知のタイプのスコーチでは、摩擦ライニング表面はガスの炎で処理される。その際、表面の温度は、ガス炎に、とりわけ使用される燃料ガスの種類と処理中における酸素供給(の方法)に大きく依存する。この場合、炎が過度に高温であれば、摩擦ライニング表面の無機成分ないし金属が溶融する可能性があり、これに対し、炎が低温であれば、処理時間の過度の長時間化や摩擦ライニング表面の煤汚染が引き起こされる可能性がある。
【0007】
EP 0 799 391 B1は、スコーチの際に、高温のプレートをライニング表面に載置することによって上述の問題を阻止しようとしている。この方法は大きな投資コストを必要とするが、表面の加熱の不均一性の問題は満足できるほどには解決されない。更に、ライニング表面に高温プレートを押し付けることにより発生するガスを十分にはそこから排出することはできない。
【0008】
摩擦ライニング表面の処理の際の上述の欠点を回避するために、EP 1 085 231 B1は、この目的のために修正された方法を提案している。この場合、摩擦ライニング表面は、限定された時間の間に、以下の措置によって、その温度が上昇される:

a)不活性の、酸化性の又は還元性の雰囲気中で、摩擦ライニング表面がIR線(赤外線)で処理される、

b)該IR線の波長は780〜1400nm(1200nmで最大強度をとる)であり、そのパワー密度は150〜800kW/mである。
【0009】
このようにして、ライニング表面は、5〜40秒の間に、700〜900℃に加熱される。
【0010】
更に、このEP公報には上述の方法を実行するための装置が記載されているが、この装置はIR炉又はIRトンネルである。この装置は、とりわけ、スコーチの際に発生するガスを排出するために処理空間(炉空間)に吸引装置を有する。摩擦ライニングは、移送システムによって、好ましくはベルトコンベアによって、連続的に炉空間内を通して案内される。炉空間内には、表面の熱処理に必要なIR線を生成するためのIRモジュールがある。このモジュールは、典型的な態様で、5〜40の個別のIR放射体から構成される。これらのIR放射体は、装置の保護のために及び省エネルギのために、凡そ5秒の時間の間にオンオフ切り替え可能に構成されている。
【0011】
DE 100 63 256 C2も、炭化によって摩擦ライニングの表面気孔率を大きくするために、以ってその材料特性ないしその制動作用を改善するために、摩擦ライニングの熱処理のための改善された方法を提案している。
【0012】
EP 1 085 231 B1による上述の方法に非常に似ているが、DE公報によれば、そのために、ライニング表面はIR線で処理される。このIR線は、800〜1500nmの波長と、300〜700kW/mの(ライニング表面における)パワー密度を有する。これによって、2〜5秒の処理時間中に550〜850℃の表面温度が形成される。その際に使用される装置は、上述のEP特許から既知であるようなIR炉又はIRトンネルに概ね相当する。この場合、IR線を生成するために、処理空間において、1又は2以上のハロゲンランプが使用される。
【0013】
従って、IR線を用いて摩擦ライニング表面を熱処理するための従来技術から既知の方法は、この処理が短波長の赤外線によってライニング表面上で極めて大きなパワー密度で実行される点で共通する。短波長の赤外線の利点としては、とりわけ以下のことが挙示される:

(a)この赤外線は熱エネルギを非常に効率的にかつ媒体なしで輸送するが、このため、表面処理は減圧運転(Unterdruckbetrieb)時にも実行することができると共に、スコーチの際に発生するブレーキライニング混合物の有機成分からの分解産物を強力な吸引装置によって排出することができる、及び、

(b)赤外線を生成するために使用される放射体は1〜3秒の極めて短い応答時間を有するため、装置は、必要な温度を達成するために、常に運転状態にある必要があるということはない。
【0014】
しかしながら、上述の方法は、とりわけブレーキライニングを大量生産する場合、製品品質を一定に維持しつつ生産方法の容易な操作可能性及び堅牢性という意味において及びコスト及びエネルギ効率の観点において改善を要するようにみえるという欠点を有する。かくして、例えばIR放射体の大きなパワー密度、短い処理時間及びその際(短時間に)発生する大きな表面温度のために、そのように処理された摩擦ライニングの材料特性に不均一性をもたらす相応の温度差が摩擦ライニング表面に形成され得る。更に、既述の装置は、スコーチング及び省エネルギのために、頻繁にオンオフ切り替えされる必要がある。最後に、従来技術において記述された方法は摩擦ライニング表面の炭化を引き起こすだけであり、他方、その組成が表面の組成と異ならない摩擦ライニング(の全体)のより大幅な硬化は行われない。
【0015】
それゆえ、本発明の課題は、従来技術から既知の欠点を回避するないしは従来の方法及び装置を改善する、摩擦ライニングの熱処理(更には硬化又は気孔率の増大)のための方法及び該方法に適合する装置ないし配置(Anordnung)を提供することである。更に、摩擦ライニングの熱処理は、単なる摩擦ライニング表面の炭化以上のものであることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題は、とりわけ、赤外線源としていわゆる赤外放射体(IR放射体)を使用する方法及び装置ないし装置要素の配置(Anordnung)によって解決される。即ち、本発明に係る装置の一視点において、IR線による摩擦ライニングの熱処理装置が提供される。この装置は、IR線源として、2260〜3000nmの波長範囲のIR線を生成する1又は2以上のセラミック型IR放射体又はセラミック型IR発熱領域を有することを特徴とする(第1基本構成・形態1)。この線源は、IR炉又はIRトンネルにおいて使用されるのが好ましく、更に、このIR炉又はIRトンネルにおいて、特別なプロセスパラメータで制御されることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における赤外放射体は、好ましくは適切なセラミック材料に載置された又は当該材料に取付けられた電気抵抗発熱体である。これは、発熱体を過熱から保護し、その寿命を、とりわけ装置が長時間運転される場合であっても、長期化することを可能にする。これは、本発明に応じて有利であり、赤外線源の繰り返されるオンオフ切り替えを回避する。かくして、本発明の装置(本発明のIR炉又はIRトンネル)の内部において、摩擦ライニングのための適切に一様な処理温度を使用することができる。
【0018】
発熱体を固定するために使用される材料は電気的に不導性であり、所望のIR波長領域において良好な放射特性(Emissionseigenschaften)を有することが望まれる。この基準を考慮して、IR放射体は極めて多様なジオメトリ(幾何学的形態)で製造することができる。かくして、本発明に応じ、炉ないし処理室を適切に構成することができ、以って、炉空間における適切な温度制御及び温度安定化(一定化)を保証することができる。本発明の目的のために、とりわけ、電気的発熱体と組み合わせたセラミック材料が適切であることが分かった。この場合、金属帯又は金属線と組み合わせたセラミック基板(Unterlage)ないしセラミック板片(Fliese)を使用するのが好ましい。
【0019】
処理の際に発生するガスのための吸引装置を含み及び処理されるべき材料を炉空間を通して移送するための移送装置を含む、セラミック型の放射体又は発熱領域(Heizfeld)を備えたそのようなIR炉又はIRトンネルないし相応の炉コンセプトは市場で入手可能である。
【0020】
本発明のIR放射体/発熱領域は、通常、好ましくは2260〜3000nmの波長領域にあるIR線を好ましくは10〜80kW/mの面出力(単位面積当たりの出力ないし面パワー:Flaechenleistung)で放射するが、とりわけ好ましい値は20〜40kW/mである。これらの値から、通常は原動機付き車両用ブレーキライニング、とりわけディスクブレーキライニングのために使用される摩擦ライニング混合物について、300〜2400秒の、好ましくは600〜1200秒の摩擦ライニングの熱処理又は硬化のための処理時間が、本発明に応じてもたらされる。この場合、300〜500℃の、好ましくは350〜450℃の摩擦ライニングの表面温度が形成される。
【0021】
上述の電気抵抗型赤外放射体の他に、例えば(セラミック多孔(質)放射体(Porenstrahler)のような)ガスで加熱される(ガス加熱型)セラミック発熱領域もIR放射体として使用することができる。本発明において本質的でありかつ好ましいことは、上述のプロセスパラメータを遵守することであって、これらの基になるIR放射体のタイプではない。
【0022】
かくして、IR炉/赤外線源(ガス加熱型セラミック発熱領域又は電気的IR放射体)を有する装置を本発明に応じて使用することにより、とりわけ、以下の利点が得られる:IR放射体/発熱領域の追加的な冷却は不要;炉空間は簡単な構造態様で形成可能;適切な温度制御とそれに応じて再現可能な製品品質;低い処理温度による顕著な省エネルギ。更に、処理時間、IR強度/温度(放射体距離)を変化することにより、摩擦ライニングの個々の任意の硬化プロフィール(表面硬化から摩擦ライニング全体の硬化まで)を、従ってその機械的特性を、簡単なルーチンワークで調節することができる。
【0023】
摩擦ライニングの熱処理のための本発明の装置の更なる形態は、その都度の運転の個別の要求に容易に適合することが可能であり、また、市場で入手可能な製品や例えばEP 1 085 231 B1又はDE 100 63 256 C2のような従来技術において備えられているような装置構成要素を含むことも可能である。例えば以下のものがこれに含まれる:
【0024】
熱処理により生じるガス状物質を排出するための、有利には炉空間ないし処理空間に設けられる、吸引装置;熱処理後に摩擦ライニングを冷却するための冷却装置;例えば炉空間/処理空間を通して摩擦ライニング/摩擦ライニング表面を移送するためのベルトコンベアのような移送手段;プロセス監視センサ、とりわけ摩擦ライニング表面の温度センサ。かくして、例えば炉空間/処理空間に関連して、赤外線源の制御に関係しかつ摩擦ライニングの所望の製品表面温度が遵守されるよう監視及び制御することが可能な温度センサを設けることができる。この温度検出により、欠陥摩擦ライニングを製造プロセスから直接的に除去することもできる。本発明の方法/装置の更なる制御のために、処理空間内に入る前後における物体検出のためのセンサを使用することもできる。
【0025】
本発明の装置及び対応する方法は、EP 1 085 231 B1及び/又はDE 100 63 256 C2に応じた装置及び方法に相当に相応するが、これらとは、とりわけ、上述の赤外線源を備えて構成されるIR炉/IRトンネルの使用及び該IR炉/IRトンネルを支配ないし制御するプロセスパラメータによって、相違する。ここで挙示したこれらの刊行物の開示事項は、相応する限りにおいて、構成要素として本願に記載されているものとする。
【0026】
以下に、本発明の方法の特徴及び利点を例示的に記載する。これらは、本発明の説明のためのものに過ぎず、如何なる観点においても本発明を限定することは意図していない。パラメータ及び/又は装置構成要素の当業者によって容易になし得る技術的に意味のある任意の組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。
【0027】
摩擦ライニングの熱処理のための本発明の方法は、従来技術と比べた著しく延長された処理時間及びIR放射体のより小さい面出力のために、摩擦ライニングの表面だけに留まらず、摩擦ライニング全体を加熱する。摩擦ライニングの厚みに沿って相対的に緩やかな温度勾配が形成され、最高温度は摩擦ライニング表面に形成され、最低温度はその対向側(IR放射体の反対を向く側)に形成されるが、そこでは好ましくは常に少なくとも300℃である。即ち、摩擦体(ライニング)全体が相対的に一定の温度に加熱され、そのため、摩擦ライニングの厚みに沿って一様な硬化プロフィールが形成される。摩擦ライニングの表面(の部分)及び内部において熱処理中に温度が大きく異なることにより引き起こされる製品の不均一性は大幅に回避される。均一な(一定の)製品品質の再現性は著しく改善される。
【0028】
本発明に応じた熱処理により例えば以下のような更なる利点が得られる:
IR放射体は、その面出力が比較的小さいため、処理されるべき摩擦ライニングに顕著により近くに配することができる;エネルギ(熱)は摩擦ライニングに効率的に伝達され、そのため、エネルギは節約される;処理中における不所望の排気ガスは顕著に減少される。
【0029】
最後に、本発明は以下の摩擦ライニングの熱処理方法も含む。その方法では、中程度の温度での長い処理時間による上述の熱処理に続けて、例えば引用した従来技術に記載されているような、短時間の第2処理を行う。この第2処理では、IR放射体の発熱パワーが短時間上昇され、この増強された加熱によって、摩擦ライニングの表面のみをより高い温度にする。この場合、第1工程(処理)は摩擦ライニング全体を通した効果に相当し、第2工程(処理)は摩擦ライニング表面のみのスコーチに相当する。
【0030】
ここに、本発明の好ましい実施の形態を示す:
(形態1)上記基本構成参照。
(形態2)上記形態1の装置において、前記IR線源は10〜80kW/mの面出力を有することが好ましい。
(形態3)上記形態2の装置において、前記IR線源は20〜40kW/mの面出力を有することが好ましい。
(形態4)上記形態1〜3の何れかの装置において、前記セラミック型IR放射体は、セラミック基板に取付けられた電気抵抗発熱体であることが好ましい。
(形態5)上記形態1〜3の何れかの装置において、前記セラミック型IR発熱領域は、ガス加熱型セラミック多孔放射体であることが好ましい。
(形態6)本発明の方法に係る一視点において、IR線による摩擦ライニングの熱処理方法が提供される。この方法は、上記形態1〜5の何れかの装置が使用されることを特徴とする(第2基本構成)。
(形態7)上記形態6の方法において、前記装置における摩擦ライニングの処理時間は300〜2400秒であることが好ましい。
(形態8)上記形態6又は7の方法において、摩擦ライニングに対し、300〜500℃の表面温度が生成されることが好ましい。
(形態9)摩擦ライニングの熱処理のための、2260〜3000nmの波長領域にあるIR線を生成するセラミック型IR放射体ないしセラミック型IR発熱領域の使用も有利に提供される。
(形態10)上記形態9の使用は、上記形態1〜5の何れかの装置において使用されることが好ましい。
(形態11)上記形態9の使用は、上記形態6〜8の何れかの方法において使用されることが好ましい。