特許第6113946号(P6113946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113946
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】シェービング補助物質
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20170403BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170403BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20170403BHJP
   B26B 21/44 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61Q9/02
   B26B21/44 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-549908(P2010-549908)
(86)(22)【出願日】2009年3月6日
(65)【公表番号】特表2011-513430(P2011-513430A)
(43)【公表日】2011年4月28日
(86)【国際出願番号】US2009036330
(87)【国際公開番号】WO2009114420
(87)【国際公開日】20090917
【審査請求日】2012年3月1日
【審判番号】不服2015-4330(P2015-4330/J1)
【審判請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/034,633
(32)【優先日】2008年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315017030
【氏名又は名称】エッジウェル パーソナル ケア ブランズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Edgewell Personal Care Brands, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】クープ エプスタイン ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】ジャヌシュ レオナード
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 齊藤 光子
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/056509(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0111262(US,A1)
【文献】 国際公開第96/32922(WO,A1)
【文献】 特表2002−514937(JP,A)
【文献】 米国特許第5174992(US,A)
【文献】 特表2007−522218(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/124220(WO,A1)
【文献】 特開2005−185918(JP,A)
【文献】 特表2002−540129(JP,A)
【文献】 特表平10−506647(JP,A)
【文献】 特表平6−509319(JP,A)
【文献】 特開2005−154316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ内に配置されたレーザブレードの回りの一部又は全部の肌に接する部分に配置されたストリップ形状のシェービング補助部材であって、前記シェービング補助部材は、
水溶性シェービング補助剤としてのポリエチレンオキシド(PEO)と、
45℃を上回る融点を有し、25,000未満の分子量を有する、非水溶性受食性媒質としての脂肪アルコール又は脂肪酸と、
を含み、
前記PEOは、前記脂肪アルコール又は脂肪酸に少なくとも部分的に可溶であるか又は混じり合い、使用時には前記非水溶性受食性媒質と共に侵食される、
ことを特徴とするシェービング補助部材。
【請求項2】
前記シェービング補助部材は水溶性熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシェービング補助部材。
【請求項3】
前記水溶性熱可塑性ポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、及びヒドロキシプロピルスターチのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項2に記載のシェービング補助部材。
【請求項4】
前記シェービング補助部材は可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシェービング補助部材。
【請求項5】
前記可塑剤は、イソステアリン酸、トリアセチン、オレイルアルコール、及びイソステアリルアルコールのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項4に記載のシェービング補助部材。
【請求項6】
前記脂肪アルコール又は脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、アラキジルアルコール、C20-40及びC30-50の直鎖アルコールのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシェービング補助部材。
【請求項7】
カートリッジ内に配置された少なくとも1つのレーザブレードと、
前記レーザブレードの周りの一部又は全部の肌に接する部分に配置されたストリップ形状のシェービング補助部材と、
を含み、
前記シェービング補助部材は、
水溶性シェービング補助剤としてのポリエチレンオキシド(PEO)と、
45℃より高い融点を有し、25,000未満の分子量を有する非水溶性受食性媒質としての脂肪アルコール又は脂肪酸と、
を含み、
前記PEOは、前記脂肪アルコール又は脂肪酸に少なくとも部分的に溶解するか又は混じり合い、使用時には前記非水溶性受食性媒質と共に侵食される、
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項8】
前記シェービング補助部材は、少なくとも1つのレーザブレードの後方部に配置されることを特徴とする、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記シェービング補助部材は、少なくとも1つのレーザブレードの前方部に配置されることを特徴とする、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記レーザブレードの周りの一部又は全部の肌に接する部分に配置されたストリップ形状の前記シェービング補助部材は、前記カートリッジに付着されていることを特徴とする、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記シェービング補助部材が配置されたカートリッジは、ハンドルに対して相対的に可動であることを特徴とする、請求項7に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にシェービング器具に関し、具体的にはウェット環境においてシェービング器具と共に用いるシェービング補助剤に関する。
本出願は、2008年3月7日出願の米国仮特許出願第61/034,633号の利益を主張するものであり、その内容の全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
現代の安全レーザは、ハンドルにピボット運動可能に又は固定して取り付けられたカートリッジの内部に配置された複数のブレードを含む。幾つかの安全レーザは、再使用可能なハンドルと共に用いるための使い捨てカートリッジを有し、一方他のレーザは、使い捨ての一体型に一体化したハンドルとカートリッジを有する。様々なレーザカートリッジ構成が存在するが、大部分はシート及びキャップを含む硬質プラスチック製のフレームを含む。カートリッジはブレードの前方部に配置されたガードを包含することが多い。ガード及びキャップは、ブレードのシェービング動作を最適にするように、ブレードに対して人の皮膚を配向させる。幾つかのカートリッジは、シェービング作業を向上させるためのシェービング補助剤(例えば、潤滑剤、抵抗減少剤、脱毛剤、洗浄剤、薬剤など)を含むシェービング補助ストリップ(「快適ストリップ」と呼ばれることもある)を含む。インチュイション(登録商標)のような他のシェービングシステムには、レーザカートリッジの周り全体に配置されたシェービング補助物質の本体が用いられている。本明細書で用いる用語「前方部」及び「後方部」は、安全レーザ(即ち、レーザ組立体)の構造体の間の相対的位置を定める。例えば、レーザブレードの前方部の構造体は、レーザ組立体を意図した剃毛方向に往復運動させる場合、剃毛する表面がレーザブレードに接触する前にその「構造体」に接触するように配置される(例えば、ガードがレーザブレードの前方部にある)。レーザブレードの後方部の構造体は、レーザ組立体を意図した剃毛方向に往復運動させる場合、剃毛する表面がレーザブレードに接触した後にその構造体に接触するように配置される(例えば、キャップがレーザブレードの後方部に配置される)。
【0003】
特定のレーザによりもたらされる快適さ及び性能は、そのレーザの商業的成功にとって重要である。レーザの快適さ、性能、及び使い易さをもたらす改善は、いかに大幅又は僅かであろうとも、レーザの商業的成功に決定的な影響を有し得る。例えば、カートリッジの使用可能時間はシェービング補助ストリップの使用可能時間によって制限されることが多い。ひとたびシェービング補助ストリップが消費されると、レーザもまた交換の必要があるはずと考えられる。実際には、現在入手可能なレーザ組立体中のレーザブレードは、シェービング補助ストリップが消費された後もなお使用に適することが非常に多い。
【0004】
シェービング補助ストリップは、少なくとも1つのポリエチレンオキシドのような水溶性ポリマー成分と、例えばポリスチレンを含む非水溶性ポリマーマトリックスとを含んだ固体に形成することができることが知られている。水に曝されると、水溶性シェービング補助剤が複合物から皮膚に浸出し、それによりシェービングプロセスを助長する物質を付着させる。この型のシェービング補助ストリップは、水溶性シェービング補助物質が実質的に枯渇するまで良好に働き、その後は非水溶性ポリマーマトリックスが残り、水溶性物質の補助が殆ど又は全くない状態でユーザの皮膚に接触する。その結果は望ましくない剃毛経験となる。
【0005】
望ましくない使用可能時間をもたらすことに加えて、比較的高分子量のポリマー材料をマトリックスとして(例えば、ポリスチレン)含むシェービング補助物質はまた、ポリエチレンオキシドのようなシェービング補助物質、及び可塑剤、保湿剤、香料、及びビタミンのような機能性添加剤を劣化させる処理温度を必要とする。従来技術のシェービングストリップの押出しのための通常の処理温度は約200℃であることが多い。シェービングストリップを、例えばコア-シース構造に製造することにより処理温度を下げる努力がなされてきた。例えばTsengによる特許文献1は130℃のような低い押出し温度を開示している。しかし、シェービング補助物質の劣化はこれらの低い温度においてもなお生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,298,558号
【特許文献2】米国特許第7,266,895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、必要とされるのは、長時間持続し、望ましいシェービング経験を与え、原料の認め得るほどの熱的劣化を避けるのに十分に低い温度で製造することができる、レーザシェービング補助物質である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の目的は、高品質の望ましい感覚をもたらすレーザ組立体のカートリッジを提供することである。
【0009】
本発明により、非水溶性受食性媒質(erodable medium)と組み合せた水溶性潤滑シェービング補助剤を含むシェービング補助物質を提供する。幾つかの実施形態において、シェービング補助物質は、水溶性熱可塑性ポリマーをさらに含み、また可塑剤を含むこともできる。随意の添加成分には、以下で説明するように、乳化剤、界面活性剤、皮膚調整剤、香料、脱毛剤、洗浄剤、薬剤などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】レーザ組立体の斜視図である。
図2】レーザブレードの後方部、キャップ内に配置されたシェービング補助ストリップを含む、レーザカートリッジの実施形態の上面図である。
図3】レーザブレードの外周を囲むカートリッジ内に配置されたシェービング補助ストリップを含む、レーザカートリッジの実施形態の上面図である。
図4】シェービング補助物質の配置を明確に示すように、カートリッジ内に配置されるシェービング補助の実施形態を除いた、図3に示すレーザカートリッジの斜視図である。
図5】レーザカートリッジの周囲に配置されたシェービング補助ボディを有するレーザ組立体の斜視図である。
図6図5に示すレーザカートリッジ及びシェービング補助ボディの部分的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6を参照すると、レーザ組立体10は、ハンドル12及びカートリッジ14を含む。ハンドル12はカートリッジ14に固定して又はピボット運動可能に取り付けることができる。カートリッジ14は再使用可能ハンドルと共に使用する使い捨てカートリッジにすることができ、或は、ハンドル12とカートリッジ14は一体化して一体の使い捨てレーザ組立体にすることができる。カートリッジ14は、シート16及びキャップ18を有するフレーム、及びシート16とキャップ18の間に配置された1つ又はそれ以上のレーザブレード20を含む。レーザブレード20の各々は、長手方向に延びた刃先を有する。用途に応じて、カートリッジ14には、さらに、フレームに取り付けられたガード22を含めることもできる。図2に示す実施形態においてカートリッジは、キャップ18の表面の上又は表面に接触して配置されたシェービング補助物質のストリップ24(「快適ストリップ」と呼ばれることもある)を含む。図3及び図4に示す実施形態においては、シェービング補助物質のストリップ24は、レーザブレード20の外周の回りに延びるカートリッジ14の中に配置されたチャネル25の中に配置される。これらの型の実施形態において、シェービング補助ストリップ24は何れかの既知の手段(例えば、ピン、機械的締結具、接着剤など)によりキャプ18に取り付けることができる。図5図6は、レーザカートリッジ14、シェービング補助ボディ26、ハンドル28、及び連結部品(図示せず)を含む、レーザ組立体10の代替の実施形態を示す。レーザカートリッジ14は連結部品に接続され、この連結部品がレーザカートリッジ14とシェービング補助ボディ26の間の相対運動の手段を与える。シェービング補助ボディ26は、内部にレーザカートリッジ14が配置される中央開口を有する単一の長円体である。即ち、シェービング補助ボディ26は、レーザカートリッジ14を取り囲む。レーザ組立体10のこの実施形態及び他の実施形態は、その全体が本明細書に組み入れられる特許文献2に与えられている。図1乃至図6に示すレーザ組立体の実施形態は、本発明のシェービング補助物質をレーザ組立体内部でどのように用いることができるかの例を示す。しかし、本発明のシェービング補助物質はこれらの用途に限定されない。
【0012】
シェービング補助物質は、非水溶性受食性媒質と組み合せた水溶性潤滑シェービング補助剤を含む複合物である。幾つかの実施形態においてシェービング補助物質は、水溶性熱可塑性ポリマーをさらに含み、また可塑剤を含むこともできる。随意の添加成分には、以下で説明するように、乳化剤、界面活性剤、皮膚調整剤、香料、脱毛剤、清浄剤、薬剤などが含まれる。
【0013】
満足できる水溶性シェービング補助剤はポリエチレンオキシド(「PEO」)である。PEOは、例えば、ダウ化学社からポリオックス(登録商標)の商標のもとで、ポリオックスWSR凝固剤、ポリオックスWSR N−750などを含む様々な異なる分子量のものが市販されている。当業者であれば、シェービング補助剤として有用なPEOは、実際には異なる型のPEOの混合物(例えば、低分子量PEOと組み合せた高分子量PEO)であり得ることを認識するであろう。PEOに加えて、或は場合によりPEOの代わりに、水溶性シェービング補助剤は以下の構成物質のうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。それらは(A)レーザと皮膚の間の摩擦力を減らすための潤滑剤、例えば、マイクロカプセル化シリコーン油、(B)レーザ部分とシェーバ面の間の抵抗を減らす薬剤、例えば、グアーガムのような植物性材料から誘導される天然多糖、(C)毛髪の化学構造を変えて、レーザブレードが非常に容易にひげを通過できるようにする薬剤、例えば脱毛剤、(D)シェービング中にレーザ部分からひげ及び皮膚破片を容易に洗浄できるようにする洗浄剤、例えば、シリコーンとポリエチレンオキシドのブロックコポリマー及び、ラウリル硫酸ナトリウムのような洗剤、(E)殺菌のため又は皮膚損傷及び擦り傷を修復するための薬剤、(F)皮膚を柔らかにし、滑らかにし、調整し又は改善するための化粧薬品、(G)切り傷から起こり得る出血を抑制するための血液凝固剤、及び(H)血管を収縮させて、シェービング中に炎症を起こした皮膚からにじみ出る可能性のあるリンパ液のような体液の流れを止めるための収斂剤である。水溶性シェービング補助剤は、それら自体では部分的に又は完全に非水溶性であるが、他のシェービング補助剤成分との組合せで許容できる程度に水溶性となる成分を含むことができる。
【0014】
許容できる受食性媒質(erodable medium)は、通常の周囲温度において展性があると記述し得るもので、約45℃(113°F)より高い融点を有し、溶融したとき比較的低い粘度(温度がそのガラス転移温度より高くなったときに高い粘度を有するポリマー物質とは対照的に、例えば、約1000センチポアズより低い)を有し、疎水性又は非水溶性であり、約25,000未満の分子量を有する。好ましい実施形態において受食性媒質は、両親媒性物質、即ち、疎水性末端及び親水性末端を有する分子からなる物質を含む。両親媒性物質は、PEOのような「極性」物質との親和性を高める「極性」を有し、物質がより親密に混じり合うことを可能にする。即ち、両親媒性物質の性質は、PEOが少なくとも部分的に両親媒性物質と混じり合い、それにより少なくとも部分的に受食性媒質と溶解し得ることであり、このことによりPEOの溶融粘度が低下し、それにより「ワックス様」物質中のPEOの溶液が生成される。これは、水溶性シェービング補助剤(例えばPEO)及び非水溶性マトリックス材料(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンなど)の混合物から形成される複合物を含む従来のシェービング補助物質とは対照的である。それら従来技術のシェービング補助物質においては、PEO及び非水溶性ポリマーの溶解度パラメータにより、それらは実質的に互いに不相溶になる。従来のシェービング補助物質中では、非水溶性ポリマーはPEOと結合せず、むしろ独立したままでPEOを支持するマトリックスとして働く。
【0015】
本発明のシェービング補助物質内の、水溶性物質と非水溶性受食性媒質の親和性は、シェービング補助物質の寿命に好ましい影響を与える。従来のシェービング補助物質が水にさらされるとき、水溶性PEOは非水溶性ポリマーマトリックスから浸出し、後に非水溶性ポリマーマトリックスが残る。実際には、水溶性シェービング補助物質が従来のシェービング補助剤のマトリックスから望ましい速さよりも速く浸出する。残りのポリマーマトリックスは、シェービング中にユーザの皮膚の上で浸食され得るが、シェービング補助物質として満足できるようには機能しないことになる。対照的に、本発明の親密に混合した水溶性シェービング補助剤と非水溶性受食性媒質(水溶性シェービング補助剤が少なくとも部分的に非水溶性受食性媒質と混和し、従って少なくとも部分的にそれと溶け合う)とは一緒にユーザの皮膚表面に塗布される。非水溶性受食性媒質と溶け合わない水溶性シェービング補助剤(即ち、「フリー」な水溶性シェービング補助剤)の幾つかは、受食性媒質とは独立にユーザの皮膚に塗布され得る。しかし、溶け合うシェービング補助剤は、非水溶性受食性媒質と共に浸食される。その結果、1)非水溶性受食性物質の浸食は促進され、2つの組合せは、例えば従来のシェービング補助物質を用いたときに残るポリマーマトリックスよりも、著しく優れた品質のシェービング補助物質をもたらし、2)本発明のシェービング補助物質の寿命は、従来のシェービング補助物質の寿命よりも実質的に長い。本発明のシェービング補助物質の浸食機構はまた、水溶性ポリマーマトリックスをPEOのような水溶性シェービング補助剤とともに用いる従来技術のシェービング補助物質に比較して有益である。
【0016】
両親媒性物質には脂肪アルコール及び脂肪酸が含まれる。脂肪アルコールは植物由来の天然油脂及び天然油から誘導される脂肪族アルコールであるが、動物及び藻の中でも合成される。小分子の脂肪アルコールは化粧品及び食品に用いられ、工業用溶媒としても用いられる。それらの両親媒性により脂肪アルコールは非イオン界面活性剤として機能する。それらは化粧品及び食品工業において乳化剤、皮膚軟化剤、及び増粘剤として広く用いられている。脂肪アルコールはワックスの共通成分であり、大部分は脂肪酸とのエステルとして存在するがアルコール自体としても存在する。脂肪酸は、炭素及び水素からなる鎖並びに分子の一末端にカルボン酸(COOH)基を有することによって特徴付けられる化合物の一群として記述することができる。それらは炭素の個数及び鎖内の二重結合の位置で互いに異なる。それらが他の化合物に結合せずに存在するとき、それらは遊離脂肪酸と呼ばれる
【0017】
界面活性剤として機能することができる両新媒性物質は、通常同じ分子中に親液性及び疎液性基(性質)の両方を有する。これらの物質はまた両新媒性であると言うことができる。
【0018】
容認できる非水溶性受食性媒質の例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール(オクタデカノールとも呼ばれる)、セチルアルコール(ヘキサデカノールとも呼ばれる)、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、アラキジルアルコール、ニューフェーズテクノロジー(New Phase Technologies)社からのパフォーマコール(Performacol)の商品名のC20-40及びC30-50直鎖アルコール、パラフィンワックスのみ又は微結晶ワックスとの組合せ、密ロウ、カルナバワックス、カンデリラ、及び大豆ワックスを含む天然ワックス、ダウコーニング(Dow Corning)AMS−C30、ダウコーニング2503コスメチックワックス(Cosmetic Wax)、ダウコーニングシルキーワックス(Silky Wax)などのC30−45アルキルメチコンのようなシリコーンワックス、ガーテフォッセ社からのエマリウムカッパ(Emulium Kappa)のような特製ワックス、クローダ(Croda)社からのシンクロワックス(Synchrowaxes)のようなワックスエステル、カスターワックス(Castorwax)のような水素化ひまし油及びグリセリルモノヒドロキシステアレートのようなエステル(例えば、CasChemからのNatureChem GMHS)、並びにベーカー-ペトロライト社ポリマー部から提供されるポリワックス400、ポリワックス850、及びポリワックス1000のようなポリエチレンワックスが挙げられる。
【0019】
幾つかの実施形態において、本発明のシェービング補助物質は水溶性熱可塑性ポリマーをさらに含む。水溶性熱可塑性ポリマーの主な機能は、物質の抗張力を高めることである。第2の機能は物質の受食性を高めることである。有用なポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、アクアロン(Aquaron)社からのクルーセル(Klucel))、ポリビニルピロリドン(例えば、ISPからのPVP)及びポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(例えば、ISPからのプラスドン(Plasdone))及びポリ(2−エチル-2−オキサゾリン)(例えば、ポリマーケミストリーイノベーションズ社からのアクアゾール)、ヒドロキシプロピルスターチ、グレインプロセッシング社のZeina B860が挙げられる。
【0020】
幾つかの実施形態において、本発明のシェービング補助物質は1つ又はそれ以上の可塑剤を処理補助剤としてさらに含み、物質の可撓性を向上させる。例としては、イソステアリン酸、トリアセチン、並びに、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールのような液体脂肪アルコールが挙げられる。
【0021】
上記のように、シェービング補助様式の構成、レーザカートリッジに対するその適用位置、取り付けの様式及び/又は他の手段、並びに組込み方法は、特定の設計要件を満たすように様々に変化させることができる。
【0022】
以下のシェービング補助物質の配合は、本発明のシェービング補助物質の実施例を示すものであり、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下のグループは一般につぎのように記述される。グループ1の実施例は、少なくとも脂肪アルコール、熱可塑性ポリマー、PEO、及び随意に乳化剤を含む。グループ1は実施例A、B、C、D、E及びKを含む。グループ2の実施例は、少なくとも脂肪アルコール、乳化剤及びPEOを含む。グループ2は実施例F、G、H、及びLを含む。グループ3の実施例は、少なくとも脂肪アルコール(又は脂肪酸)及びPEOを含む。グループ3は実施例I及びJを含む。グループ4の実施例は、少なくとも脂肪アルコール(又は脂肪酸)、PEO及び陰イオン界面活性剤を含む。グループ4は実施例M、N、及びOを含む。グループ5の実施例は、少なくとも脂肪アルコール、陽イオン界面活性剤、及びPEOを含む。グループ5は実施例Pを含む。
【実施例】
【0023】
実施例A
実施例Aにおいて、シェービング補助物質は、受食性媒質(ステアリルアルコール、グリセリルヒドロキシステアレート)、水溶性シェービング補助剤(ポリオックス凝固剤、ポリオックスN-10)、イソステアリン酸、及びヒドロキシプロピルセルロースから、以下の表1に与えられる割合で形成した。
表1
材料はシグマブレードミキサー内で処理した。ステアリルアルコール、グリセリルヒドロキシステアレート、及びイソステアリン酸を融解するまで約225°Fに加熱した。ヒドロキシプロピルセルロースを添加して溶解するまで混合し、次にポリオックス材料を混合物中に撹拌しながら加えた。この物質を次ぎに剥離紙の上に注ぎプレスした。次にこの物質の性能試験を行った。
【0024】
実施例B−D
実施例B−Dにおいて、シェービング補助物質は、受食性媒質(ステアリルアルコール)、水溶性シェービング補助剤(ポリオックス凝固剤、ポリオックスN-10)、及びヒドロキシプロピルセルロースから、以下の表2に与えられる割合で形成した。
表2
実施例B−Dにおけるシェービング補助物質は、実施例Aに関して上述したのと同じ方法で処理した。
【0025】
実施例E
実施例Eにおいて、シェービング補助物質は、受食性媒質(ステアリルアルコール)、水溶性シェービング補助剤(ポリオックス凝固剤)、PVA/VAコポリマー、イソステアリン酸、及びグリセロールトリアセテートから、以下の表3に与えられる割合で形成した。
表3
実施例Eにおけるシェービング補助物質の材料は、ダブルアームミキサー内で処理した。ステアリルアルコール、グリセリルヒドロキシステアレート、イソステアリン酸及びグリセロールトリアセテートを融解するまで約185°Fに加熱し、PVA/VAコポリマーを添加した。混合物の温度を約285°FまでPVA/VAコポリマーが完全に溶解するまで上昇させ、そしてポリオックスを混合物中に撹拌しながら加えた。この物質を次ぎに剥離紙の上に注ぎプレスした。次にこの物質の性能試験を行った。
【0026】
実施例F−H
実施例F−Hにおいて、シェービング補助物質は、受食性媒質(ステアリルアルコール)、水溶性シェービング補助剤(ポリオックス凝固剤)、ポリダームPPI−CO−200、トリアセチン、及びマカダミアナッツオイルから、以下の表4に与えられる割合で形成した。
表4
実施例F−Hにおけるシェービング補助物質の材料は、ダブルアームミキサー内で処理した。ステアリルアルコール、ポリダーム及びトリアセチンを約165°Fに加熱した。次にこの混合物にポリオックス及びマカダミアナッツオイルを撹拌しながら添加し、混合物の温度を約185°Fまで上昇させた。混合を続けると、物質は増粘し、多量のポリオックスが溶解した。
【0027】
実施例I及びJ
実施例Iにおいて、50%のステアリルアルコール及び50%のPEOを含むシェービング補助物質を混ぜ合せた。実施例Jにおいては、50%のステアリン酸及び50%のPEO凝固剤を含むシェービング補助物質を混ぜ合せた。両方の実施形態において、シェービング補助物質は、最高温度80℃及び圧力36,000psiにおいて射出成形した。
【0028】
実施例K
実施例Kにおいて、シェービング補助物質は、受食性媒質(ステアリルアルコール、グリセリルヒドロキシステアレート)、水溶性シェービング補助剤(ポリオックス凝固剤)、イソステアリン酸、グリセロールトリアセテート、及びPVA/VAコポリマーから、以下の表5に与えられる割合で形成した。
表5
実施例Kにおいて、シェービング補助物質は約140°F-160°Fの範囲の温度で混ぜ合せ、射出成形した。
【0029】
実施例Lにおいて、25%のステアリルアルコール、61%のC20-40パレス−40(ニューフェーズテクノロジー社からのPerfomathox480)及び15%のポリオックス凝固剤を含むシェービング補助物質を、混合物を約90℃で融解させ、鋳型に流し込むことにより調製した。
【0030】
実施例M及びNにおいて、以下の成分を加熱し、混合し、射出成形してシェービングストリップにした。
【0031】
実施例Oは、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、セテアリルアルコール、小麦胚芽(小麦)スターチ、ステアリン酸グリセリル、パラフィン、二酸化チタン(Zschimmer & SchwartzからのZetasp ST 5251)の市販の混合物85%と、15%のPEO凝固剤を含む混合物質を押出し成形した。
【0032】
本発明がその詳細な実施形態に関して示され説明されたが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、その形態及び細部に様々な変更をなし得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0033】
10:レーザ組立体
12、28:ハンドル
14:カートリッジ
16:シート
18:キャップ
20:レーザブレード
22:ガード
24:ストリップ
25:チャネル
26:シェービング補助ボディ
図1
図2
図3
図4
図5
図6