特許第6113954号(P6113954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113954
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】医薬として使用するための脂肪酸
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/20 20060101AFI20170403BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A61K31/20
   A61K9/02
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K31/201
   A61K47/40
   A61P1/10
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-533936(P2011-533936)
(86)(22)【出願日】2009年10月30日
(65)【公表番号】特表2012-507505(P2012-507505A)
(43)【公表日】2012年3月29日
(86)【国際出願番号】IS2009000012
(87)【国際公開番号】WO2010049954
(87)【国際公開日】20100506
【審査請求日】2012年10月29日
【審判番号】不服2015-22374(P2015-22374/J1)
【審判請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】61/110,093
(32)【優先日】2008年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/174,144
(32)【優先日】2009年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511109674
【氏名又は名称】リピッド ファーマシューティカルズ イーエイチエフ.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ロフトソン トルスタイン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファンソン アイナール
【合議体】
【審判長】 内藤 伸一
【審判官】 山本 吾一
【審判官】 穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1999/17737(WO,A1)
【文献】 特開昭62−267222(JP,A)
【文献】 特開平5−155806(JP,A)
【文献】 特開平5−179284(JP,A)
【文献】 特開平9−238693(JP,A)
【文献】 特開平10−120561(JP,A)
【文献】 特開2008−247792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直腸投与により排便のプロセスを誘発するための医薬の製造における脂肪酸の混合物の使用であって、前記脂肪酸は、C14〜C22の範囲の炭素鎖長を有する遊離脂肪酸の形態であり前記混合物は、前記混合物の少なくとも5重量%が多価不飽和脂肪酸である不飽和脂肪酸を前記混合物の少なくとも20重量%含む前記使用。
【請求項2】
前記脂肪酸の混合物は、魚油グリセリドから加水分解された遊離脂肪酸を含む、請求項に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬は、5〜75重量%の範囲の前記脂肪酸を活性成分として含み、前記脂肪酸はシクロデキストリンとの錯体として調合されている、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排便のプロセスを惹起し、下剤として作用する直腸粘膜の脂肪酸刺激に関する。
【背景技術】
【0002】
下剤は、便秘、すなわち定期的な排便の不存在、結腸での糞便の蓄積および/または少量の硬い、乾いた糞便の通過を処置するために使用される。便秘をしている人々は、便通があるのは困難で痛みを伴う場合がある。また下剤は、結腸の直腸鏡検査(proctoscopy)、直腸鏡検査法(rectoscopy)、大腸内視鏡検査、x線撮像または類似の診断手順の前に腸下部を浄化にするためにも使用される。いくつかの種類の下剤がある。表1の概説を参照のこと。下剤は副作用を引き起こす可能性があるが、通常それは重篤なものではない。刺激性下剤および刺激物質は、他の種類の下剤よりも、腹部不快感、失神型めまいおよび筋痙攣などの副作用を引き起こす可能性が高い。下剤は、経口投与のために、例えば錠剤、カプセルおよび液剤、または直腸投与のために、例えば座薬および浣腸であってもよい。経口投与された下剤は、薬物および栄養素のバイオアベイラビリティーを低下させる可能性がある。
【0003】
ヒマシ油は周知の下剤であり、下剤効果についての通常の治療用の成人用量は、経口投与の場合で15〜60mLである。ヒマシ油の中の脂肪酸含有量の約90%は、一価不飽和脂肪酸であるリシノール酸(12−ヒドロキシ−9−cis−オクタデセン酸)から形成されるトリグリセリドであり、このリシノール酸は、ヒマシ油の有効成分であり、小腸での液体および電解質の分泌を促進することによって下剤として作用する。1回または2回の大量の半液体の糞便が、投与の2〜6時間以内に放出される。リシノール酸は、多くの種類のウイルス、細菌、酵母およびカビの増殖を予防することにおいて有効であり、かつリシノール酸は、いくらかの抗炎症性作用をも有する(非特許文献1;非特許文献2)。乳酸、酢酸、酪酸およびプロピオン酸などの短鎖脂肪酸は、浸透圧を高めることによって結腸の運動を促進することができる(すなわち高浸透圧薬、表1)。
【0004】
ルビプロストン(ジフルオロペンチル−2−ヒドロキシ−6−オキソオクタヒドロシクロペンタ−ヘプタン酸)は、プロスタグランジンE1の代謝産物から誘導される二環式脂肪酸である。経口投与後、ルビプロストンは消化管の中の特定の塩素イオンチャネル(CIC−2チャネル)を活性化し、腸液分泌を促進し、消化管通過を高め、便秘の症候を改善する(非特許文献3)。このように、ルビプロストンは受容体特異的な効果を有する。
【0005】
【表1】
【0006】
飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸は抗菌活性および抗ウイルス活性の両方を有するということ、およびそれらの脂肪酸は粘膜および皮膚における感染に対する自然免疫能においてある役割を果たすということが文献に記載されている。例えば非特許文献4を参照。インビトロでの研究は、遊離脂肪酸がエンベロープウイルス(単純ヘルペス−1型および単純ヘルペス−2型など)、グラム陽性菌、グラム陰性菌(ピロリ菌など)、および真菌を死滅させるということを示した(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7を参照)。
【0007】
必須脂肪酸の食事に関する恩恵および栄養に関する恩恵は周知であり、魚油などの栄養補助食品は長い間使用されてきており、トリグリセリドとも呼ばれるトリアシルグリセリド(TAG)の形態で、高度不飽和脂肪酸(HUFA)とも呼ばれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)を与えてきた。いわゆる必須オメガ3脂肪酸は特に有益である。
【0008】
特許文献1は、脂肪ベースの座薬、特に非ラウリン酸ココアバター代用物に基づく座薬は、この脂肪基剤によって誘導される刺激作用を引き起こす可能性があるということを論じている。この特許文献は、この脂肪基剤によって引き起こされる刺激作用を低減するために、座薬に脂肪酸、脂肪酸塩または脂肪酸エステルを添加することを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第420056号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.Vieira、S.Evangelista、R.Crillo、A.Lippi、C.A.MaggiおよびS.Manzini、「Effect of ricinoleic acid in acute and subcronic experimental models of inflammation」、Med.Inflammation、2000年、第9巻、223−228頁
【非特許文献2】G.A.Burdock、I.G.CarabinおよびJ.C.Griffiths、「Toxicology and pharmacology of sodium ricinoleate」、Food Chem.Tox.、2006年、第44巻、1689−1698頁
【非特許文献3】B.E.LacyおよびL.C.Levy、「Lubiprostone:a novel treatment for chronic constipation」、Clin.Interv.Aging、2008年、第3巻、357−364頁
【非特許文献4】J.J.Kabara、「Fatty acids and derivatives as antimicrobial agents」、「The pharmacological effect of lipids」中、J.J.Kabara編、The American Oil Chemists Society、ミズーリ州、セントルイス、1978年、1−13頁。
【非特許文献5】S.Khulushi、H.A.Ahmed、P.Patel、M.A.Mendall、T.C.Northfield、「The effect of unsaturated fatty acids on Helicobacter pylori in vitro」、J.Med.Microbiol.、1995年、第42巻、276−282頁
【非特許文献6】H.Thormar、H.Hilmarsson、「The role of microbicidal lipids in host defense against pathogens and their potential as therapeutic agents」、Chem.Phys.Lip.、2007年、第150巻、1−11頁
【非特許文献7】N.M.Carballeira、「New advances in fatty acids as antimalarial,antimycobacterial and antifungal agents」、Prog.Lipid Res.、2008年、第47巻、50−61頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ほとんど副作用および不快感を与えない新しい下剤は高く評価されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脂肪酸は明らかでかつ顕著な下剤効果を有し、かつ便秘および/もしくは硬い糞便に悩んでいる対象において、または直腸および腸下部の浄化の場面で、排便を惹起するために有益に使用することができるという驚くべき発見に基づく。本願明細書に提示される実施例は、これに関する脂肪酸の明らかでかつ説得力のある効果を実証する。これらの知見に基づいて医薬品剤形および医療方法が提供される。
【0013】
消化管壁(直腸粘膜)は、様々な機械的、化学的、または浸透圧の刺激によって活性化されて、一次求心性ニューロンを介して腸管神経系へ(内因性の神経支配)、および交感神経経路および副交感神経経路を介してCNSへ(外因性の神経支配)と情報を送る多モード侵害受容器を含有する。本発明者らは、遊離脂肪酸および脂肪酸混合物が直腸粘膜の中にある多モード侵害受容器に対して化学的腸刺激性下剤として作用して、排便のプロセスを惹起するということを見出した。
【0014】
脂肪酸の抗炎症作用、抗ウイルス作用および抗菌作用に基づいて、他の病状のための医薬品剤形も提示される。痔、裂肛および肛門周囲掻痒症を含めた疾患および状態の処置のための剤形が、本願明細書に提示される。安定でかつ有効であることが示される、脂肪酸とシクロデキストリン類との組成物を含めた脂肪酸の新しくかつ有用な組成物が開示される。
【0015】
痔核、裂肛および肛門周囲掻痒症は、すべて、従来は処置のためにコルチコステロイドベースの薬物療法に頼っている一般的な良性の肛門疾患である。本発明は、ステロイド含有薬物を、魚油などの天然供給源由来の非ステロイド系の生成物で置き換え、加えてこれらの生成物を下剤として使用する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、第1の態様で、排便(便通)を誘発する、すなわちこのプロセスを誘発および/または促進するために、直腸および/または大腸への投与のための医薬品剤形を提供する。この剤形は、活性成分として1以上の脂肪酸を含む。この1以上の脂肪酸は、遊離脂肪酸、脂肪酸と薬学的に許容できる対イオンとの塩、脂肪酸エチルエステルおよび脂肪酸モノグリセリドから選択される形態にあることが適切である。遊離脂肪酸は、現在のところ、好ましい実施形態である。
【0017】
この1以上の脂肪酸は、好ましくは4〜36の炭素原子の範囲の鎖長、例えば4〜24の範囲の鎖長、より好ましくは8〜24の炭素の範囲の鎖長を有する。より好ましくは、この1以上の脂肪酸は脂肪酸の混合物を含み、この脂肪酸の混合物は、動物由来または植物由来の油、その画分またはその混合物などの適切な天然の脂質物質から誘導することができる。本発明において有用な脂肪酸としては、ヘキサン酸(カプロン酸)(6:0)、ヘプタン酸(エナント酸)(7:0)、オクタン酸(カプリル酸)(8:0)、ノナン酸(ペラルゴン酸)(9:0)、カプリン酸(10:0)、ウンデシレン酸(11:0)、ラウリン酸(12:0)、トリデシル酸(13:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、およびステアリン酸(18:0)などの飽和脂肪酸が挙げられる。有用な不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸(16:1 n−7)、オレイン酸(18:1 n−9)、エライジン酸(18:1)、リノール酸(18:2 n−6)、リノレン酸(18:3)、アラキドン酸(20:4 n−6)、ガドレイン酸(20:1 n−11)、ゴンド酸(gondoic acid)(20:1 n−9;cis−11 エイコセン酸)、エルカ酸(22:1 n−9)およびセトレイン酸(22:1 n−11)が挙げられる。
【0018】
本発明の脂肪酸のための原料として有用な植物油としては、サフラワー油、トウモロコシ油、アーモンド油、ゴマ油、大豆油、アマニ油、菜種油、ブドウ種子油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、大麻油、およびいずれかのこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、当該脂肪酸は、薬学的に許容できる油物質から誘導され、薬局方標準に従って定義される(医薬品等級油)。このような油としては、オメガ3魚油(Lysi、アイスランド)などの海洋性のオメガ油が挙げられる。
【0019】
好ましい実施形態では、当該1以上の脂肪酸は、少なくとも約20重量%の不飽和脂肪酸および少なくとも約5重量%の多価不飽和脂肪酸を含む脂肪酸の混合物を含む。用語「多価不飽和脂肪酸」は、そのアシル側鎖に複数の二重結合を有する脂肪酸を表し、本願明細書では用語「高度不飽和脂肪酸」またはHUFAとほとんど同義で使用される。多くの天然油はこのような脂肪酸組成物を与え、これには例えば上記の植物油、および魚油および他の海産油などがあり、これらは高分率のPUFAを与える。本発明において有用な多価不飽和脂肪酸としては、オメガ3脂肪酸α−リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:3)、モロクチン酸(18:4 n−3)、エイコサトリエン酸(20:3)、エイコサテトラエン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5;EPA)、ドコサペンタエン酸(22:5)、ドコサペンタエン酸(22:5)、およびドコサヘキサエン酸(22:6;DHA)、テトラコサペンタエン酸(24:5)、およびテトラコサヘキサエン酸(24:6)がある。他の有用な多価不飽和脂肪酸はオメガ6脂肪酸であり、これにはリノール酸(18:2 n−6)、γ−リノレン酸(18:3 n−6)、エイコサジエン酸(20:2)が含まれる。括弧の中の表示は、アシル鎖の中の炭素原子の総数および二重結合の数を示し、従って18:3は、18個の炭素原子および3つの二重結合を有する脂肪酸である。オメガ数値は、最初の二重結合がアシル鎖の親油性末端からどのくらい離れて位置しているかを示し、これは、上記の他の不飽和脂肪酸について使用されているように、nでも示される。有用な実施形態では、当該医薬品剤形は海洋生物由来の脂肪酸の混合物を含む。脂肪酸物質の供給源として有用な海洋生物としては、魚肝油(タラ肝油、マグロ油が挙げられる);魚肉または魚粉(ニシン、カラフトシシャモ、サバ、メンハーデン、イワシ、カタクチイワシ、アジ、アオギス、およびマグロ由来の肉または粉末が挙げられる);プランクトン生物、イカおよび軟体動物
から選択される動物源から誘導される海産動物油が挙げられる。上記のものなどの油は、加水分解によって直ちに遊離脂肪酸へと変換される。
【0020】
上記のように、下剤作用のための本発明の医薬品剤形は、直腸および/または腸管下部への投与用に適切に調合される。その結果として、上記の部位での投与に適したいずれの種類の剤形は本発明の範囲内にある。目下企図される剤形としては、座薬、軟膏剤、クリーム、ローション剤、ペースト、ゲル、および浣腸投与用の製剤が挙げられる。座薬は当該技術分野で周知であり、それらは、一般に、室温および少なくとも約30℃までで固体であるが、37℃という正常なヒトの体温よりも低い融点を有するように調合される。それゆえ、上記の融点基準を満たす脂肪基剤(ココアバターなど)を用いて座薬を調合することが一般的である。ココアバターは、室温では固体形態で取り扱うことができるが体温で完全に融解する飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸のトリグリセリドの混合物である。より新しい物質としてはいわゆるココアバター代用物(CBS)が挙げられ、このココアバター代用物(CBS)は、以下のカテゴリーを含む:エステル交換された完全硬化パーム核油、完全硬化パーム核ステアリン、トランス脂肪酸に富む硬化植物油の中間留分(mid fractions)および半合成のグリセリド。本発明に適した有用な市販の脂肪基剤としては、Suppocire(商標) (Gattefosse) 親油性基剤、いくつかの等級(Suppocire(商標) AS、AS2X、NAを含む)で入手できる半合成の植物ベースの油基剤、Novata(商標) (Henkel Int.)(Novata A、Novata B、およびNovata BCを含む)、Witepsol(商標) (Dynamit Nobel Ab)(Witepsol(商標) H5、H12、H15、H32、H35、W25、W31、W32、W32、W35、およびW45など);Massa Estarinum(商標) (SASOL)(等級B、BC,Eおよび299のMassa Estarinum(商標)を含む)が挙げられる。本発明の座薬は、適切に上記の物質のいずれかを基剤として含み得る。ポリエチレングリコール(例えばPEG 1500、PEG 3000、PEG 4000およびこれらの混合物)などの親水性のワックスも、本発明で使用することができる。Suppocire APは、飽和ポリグリコール化(polyglycolysed)グリセリドを含む両親媒性の基剤である。
【0021】
蜜ろう、カルナウバロウなどのさらなる基剤成分が適切に添加されてもよい。座薬剤形はまた、いくつかの実施形態では、結合剤および接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色料および増量剤など(これらに限定されない)の賦形剤をさらに含んでもよい。
【0022】
本発明の座薬剤形は、一般に、50〜2000mgの範囲、好ましくは50〜1000mgの範囲、例えば100〜750mgの範囲(約100mg、約200mg、約300mg、約400mgまたは約500mgを含む)の脂肪酸活性成分を含むことになろう。小児用途のより小型の座薬も本発明の範囲内であり、これは、一般に、より小さいであろうし、50〜750mgの範囲、例えば50〜500の範囲、例えば約50mg、約75mg、約100mg、約200mg、約300mgまたは約400mgの脂肪酸活性薬剤を含むことになろう。所望の用量および座薬の所望の全体のサイズに応じて、脂肪酸活性成分の量は、当該剤形の総重量の約5重量%〜約75重量%の範囲、例えば5〜50重量%の範囲(約10〜50重量%の範囲、例えば約10〜40重量%の範囲を含む)を占めてもよい。
【0023】
本発明に係る成人用途の成形されたまたは混練された座薬の一般的なサイズは、約2〜3mLの範囲、例えば約2.0mL、約2.2mLまたは約2.5mLである。賦形剤の組成に応じて、これは、一般に約1.5〜約3gの範囲の重量に対応することになり、従って、本発明に係る座薬は、適切に上記重量範囲にある、例えば約1.8g、約2.0g、約2.2gまたは約2.5gである。小児用の座薬の適切なサイズは、一般に上記のサイズの約半分、例えば0.5〜1.5mLの範囲、例えば約0.5mL、約0.8mL、約1.0mL、約1.2または約1.5mLであろう。
【0024】
医薬の作用および便通の間の不快感を低減するために、トリアシルグリセリド油(用語「トリアシルグリセリド油」は、本願明細書中では、主として、上記の油のいずれかなどのトリグリセリドを含むが、いくらかの割合のジアシルグリセリドおよびモノアシルグリセリドをも含んでもよい天然油、合成油または混合油を意味する)などの賦形剤油成分を本発明の座薬剤形の中に含めることが有用であることが見出された。従って、本発明の剤形は、好ましくは、約5〜35重量%の範囲、例えばより好ましくは約5〜25重量%の範囲、例えば約5重量%、約10重量%、約15重量%または約20重量%のトリアシルグリセリド油を含めた、約5〜50重量%の範囲のトリアシルグリセリド油を含む。これらの実施形態では、この基剤は、剤形の組成物全体の所望の融点を得るために、それに応じて構成される。好ましくは、トリアシルグリセリド油は、上記のような魚油由来のオメガ油、またはいずれかの他の適切な明確な薬学的に許容できる油などの、医薬品等級の油である。
【0025】
ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸またはその塩、スルファチド塩、クエン酸、没食子酸プロピル、α−トコフェロール、およびパルミチン酸アスコルビルなどの(これらに限定されない)抗酸化物質を本発明の剤形の中に含めることが、有用である。選択された抗酸化性化合物に応じて、適切な量は、例えば、約0.05〜0.5重量%の範囲、例えば0.1〜0.3重量%の範囲である。さらに、いくつかの実施形態では、防腐剤が含まれてよく、その例としては、メチル−p−ヒドロキシ−安息香酸、エチル−p−ヒドロキシ−安息香酸、プロピル−p−ヒドロキシ−安息香酸、ブチル−p−ヒドロキシ−安息香酸などのC1〜6−アルキル−p−ヒドロキシ−安息香酸、およびこれらの混合物を含めた安息香酸またはその誘導体からなる群の防腐剤のいずれかが挙げられる。特に興味深い実施形態では、防腐剤は、重量で約3:1〜約5:1の割合の、好ましくは重量で約4:1の割合のメチル−p−ヒドロキシ−安息香酸およびプロピル−p−ヒドロキシ−安息香酸の混合物である。
【0026】
この防腐剤(1種または複数種)は、好ましくは当該製剤の中に、その防腐剤が実質的な程度まで上記脂質の活性を損なわないような、製剤に対して算出される約0.05〜0.2重量%のような濃度で存在する。
【0027】
本発明の座薬剤形は、好ましくは、アルミニウム−アルミニウムのブリスター包装、Duma容器などの空気酸化をさらに抑制するための隔離されたパッケージで与えられる。
【0028】
浣腸製剤は、一般に、適切な医薬品等級の浣腸直腸アプリケーターを用いて投与される液体または半液体の製剤である。好ましいアプリケーターは、例えば米国特許第4,657,900号明細書に記載されているもののような密封された剤形容器を壊して開けることにより、当該製剤の適切な用量を送達するものである。
【0029】
別の態様では、本発明は、排便のプロセスを促進および/または惹起するための方法であって、直腸および/または腸管下部に1以上の脂肪酸を投与することを含む方法を提供する。この方法は、直腸粘膜の中にある多モード侵害受容器に対する当該脂肪酸の刺激的効果に基づく。この脂肪酸は、好ましくは上記の脂肪酸のいずれかおよび脂肪酸の混合物から選択され、上記の形態のいずれかなどの適切な形態で調合することができる。
【0030】
上記の議論から理解することができるように、遊離脂肪酸は、当該方法における脂肪酸の好ましい形態であるが、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸の塩および脂肪酸モノグリセリドなどの他の形態も企図される。
【0031】
この方法は、一般に、約100〜2000mgの範囲、例えば100〜1000mgの範囲の脂肪酸、または上記の範囲および量のいずれかを投与することを含むことになる。目下好ましい実施形態では、この方法は、当該活性成分の直腸および/または腸管下部への投与を含む。従って、この方法は、好ましくは、座薬、浣腸または肛門を通って導入される他の製剤の種類を含めた上記のとおりの剤形を投与することを含む。
【0032】
本発明のさらなる態様は、排便のプロセスを促進および誘発するための医薬としての使用のための脂肪酸を提供する。本願明細書に提示される実施例は、記載された医学的適応および臨床行動のための活性成分として作用する脂肪酸の明らかな臨床効果を実証する。実施例6に例証されるように、この効果は、脂肪酸に帰属されるが、賦形剤として使用されるトリアシルグリセリド油には帰属されない。本発明の脂肪酸は、好ましくは遊離脂肪酸の形態または上記の他の明記された形態のいずれかにあり、好ましくはこの脂肪酸は脂肪酸の混合物として与えられる。適切で実用的な混合物は、天然の供給源から得ることができ、上記のものなどの動物油もしくは植物油またはそれらの混合物から誘導することができる。
【0033】
下記の実施例1には、遊離脂肪酸の好ましい抽出物がどのように海洋性の魚油の酸加水分解によって製造されるかが記載される。従って、下剤医薬としての使用のための、天然油の加水分解から、例えば植物油または魚油から得ることができる脂肪酸混合物は本発明に含まれる。本発明の脂肪酸は、好ましくは、本発明の剤形の中で、例えば特に座薬として、好ましくは本願明細書にさらに記載されるとおりに、調合される。
【0034】
本発明で使用するための脂肪酸は、上記のものなどの天然油の加水分解によって適切に与えることができる。トリグリセリドの加水分解は、酸または塩基で触媒されうる。付随する実施例に例証されるように、魚油などの天然油の酸加水分解は有用な脂肪酸を与え、得られる脂肪酸混合物の組成はその油原料の脂肪酸組成と実質的に同様であるが、天然の供給源によって変わることになり、いずれの所望の組成物も、異なる供給源を混合することにより、加水分解の前に天然油を混合するかまたは個々の脂肪酸または脂肪酸混合物を混合するかのいずれかにより、誘導することができる。異なる魚の種類および魚油の脂肪酸組成物は十分に文書に記載されており、当業者に公知である。本発明で使用するための脂肪酸のエチルエステルは、例えば適切なリパーゼを用いる遊離脂肪酸のエステル化によって得ることができ、このリパーゼとしては、Rhizomucor miehei由来のリパーゼ(MML)、Pseudomonas sp.リパーゼ(PSL)およびPsedomonas fluoresceinsリパーゼ(PFL)が挙げられるが、これらに限定されない。例えばHalldorssonら(2004)、国際公開第95/24459号パンフレット、国際公開第00/49117号パンフレットおよび米国特許第7,491,522号明細書を参照。モノグリセリドは、適切な反応条件下でのリパーゼを用いたグリセロールとの選択的なエステル化によって得ることができる。総説として、Osmanら(2006)を参照。
【0035】
本発明のさらなる態様は、脂肪酸およびシクロデキストリン類を用いた医薬製剤および剤形を提供する。シクロデキストリン類は環状オリゴ糖であり、疎水性分子とホスト−ゲスト錯体を形成するために有用である。本発明者らは、シクロデキストリン類と組み合わせて、乾燥脂肪酸粉末を容易に提供することができるということを見出した。本発明において有用なシクロデキストリン化合物としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンおよびそれらの誘導体、例えば2−ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル γ−シクロデキストリンが挙げられる。有用な乾燥脂肪酸粉末は、約1:1の比の脂肪酸およびシクロデキストリン類、または1:2〜2:1の範囲の脂肪酸 対 シクロデキストリン類、例えば約2:1(67:33)の比の脂肪酸:シクロデキストリン、または約3:2、または約1:1、または約2:3、または2:1の比を含むことができる。本発明に係るシクロデキストリン−脂肪酸組成物は、その脂肪酸よりも実質的に安定であるということが見出された。
【0036】
当該剤形は、いくつかの実施形態では、錠剤、サシェ剤(sachet)またはカプセル剤などの経口投与のための剤形である。このような剤形は、本願明細書に記載されるようにして乾燥形態へと変換された脂肪酸−シクロデキストリン錯体を用いて、従来の方法によって調合することができる。
【0037】
錠剤は好ましい実施形態であり、錠剤は、例えば直接圧縮、乾式造粒(スラグにすること(slugging)またはローラー圧縮(roller compaction)または湿式造粒によって容易に調合することができ、直接圧縮が本発明にとって好ましい。乾式造粒は、ブレンドすること、成分をスラグにすること、乾式ふるい分け、潤滑、および圧縮からなる。湿式造粒方法は、粉末混合物を、製錠のための適切な流動特性および凝集特性を有する顆粒へと変換するために使用される。この手順には、乾燥成分を適切なブレンダーの中で混合し、次いでせん断下にある造粒溶液を混合された粉末に加えて、顆粒化を得ることを含む。湿った塊は適切な篩を通して篩い分けされ、そしてトレイ乾燥(tray drying)または流動床乾燥によって乾燥される。あるいは、その乾いていない塊は、乾燥されて製粉機に通されてもよい。全体のプロセスには、秤量、乾燥粉末をブレンドすること、湿式造粒、乾燥、製粉、混合潤滑および圧縮が含まれる。直接圧縮は、粉末材料が、その薬物の物理的特性および化学的特性を変えることなく直接圧縮される、比較的迅速なプロセスである。当該脂肪酸化合物、直接圧縮賦形剤および流動促進剤および滑沢剤などのいずれかの他の助剤物質が、例えばツインシェルブレンダー(twin shell blender)または類似の低せん断装置の中でブレンドされ、その後、錠剤へと圧縮される。
【0038】
存在してもよい賦形剤としては、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤および着色料のうちの1以上が挙げられる。ホッパーの中でのおよび錠剤ダイ(tablet die)への粉末ブレンドの流動を改善するために、流動促進剤が加えられてもよい。滑沢剤は、典型的には、製錠物質が抜き型に固着することを防止するため、錠剤圧縮の間の摩擦を最小にするため、およびダイからの圧縮された錠剤の取り出しを可能にするために、加えられる。滑沢剤は、最終の錠剤ミックスの中に通常1重量%未満の量で一般に含まれる。本発明で使用することができる滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、硬化油、およびステアリルフマル酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の錠剤は、ブレンドのかさ重量を増やして圧縮のための実用的なサイズをもたらすため、および/または圧縮のためにブレンドの特性に影響を及ぼすために加えられる1以上の希釈剤をさらに含むことができる。使用することができる典型的な希釈剤としては、例えばリン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、デキストレート(dextrates)、デキストリン類、セルロース(好ましくは微結晶セルロース)、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、アルファ化デンプンおよび他の糖類が挙げられる。結合剤は、粉末物質に凝集性を賦与するために使用される。有用な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、スクロース、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、およびラクトースなどの糖類、天然および合成のゴム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロースおよびワックス類が挙げられる。崩壊剤は、錠剤が許容できる崩壊速度を有することを確かにするために組み込まれてもよい。典型的な崩壊剤としては、デンプン誘導体、クロスポビドン、クロスカルメロース(croscaramelose)およびカルボキシメチルセルロースの塩が挙げられる。デンプンおよびセルロースなどのいくつかの結合剤も、優れた崩壊剤である。
【0039】
別の有用な本発明の剤形はカプセル剤である。与えられた投薬量サイズのための適切なサイズの適切なカプセルは当業者にとっては周知であり、硬ゼラチンカプセル、軟ゼラチンが挙げられるが、これらに限定されず、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルである。本発明の剤形では、活性成分の量は、例えば約100〜2000mgの範囲、例えば約100〜1000mgの範囲など、約200〜1000mgなど(約200mg、約250mg、約300mg、約500mg、約750mgまたは約1000mgを含む)を含めた約50〜2000mg脂肪酸の範囲のように、相対的に高くてもよい。結果として、本発明の錠剤またはカプセル剤の中の賦形剤の総量は、あまりに多すぎる量を剤形に加えないことが好ましい。従って、賦形剤は約25重量%未満、例えば約20重量%未満、より好ましくは約15重量%未満を構成することが好ましい。
【0040】
さらに有用な実施形態としては、軟膏剤、クリーム、ローション剤、ゲル、エマルション、リポソーム、またはペーストなど(これらに限定されない)の局所投与用の剤形が挙げられる。これらの剤形は、従来の成分および賦形剤と適切に調合される。例えばイオントフォレーシス用のゲル、懸濁液およびエマルション(油/水(w/o)、w/o、o/w/o、w/o/wエマルションまたはマイクロエマルションが挙げられる。これらの剤形は、疎水性のまたは親水性の基剤の中で脂肪酸−シクロデキストリン錯体の乾燥粉末を適切な成分と混合することにより、適切に提供される。この基剤は、硬パラフィン、パラフィンパラフィンまたは流動パラフィンなどの炭化水素、グリセロール、ワックス(例えば、蜜ろう、カルナウバワックス)、金属石鹸、粘液、天然由来の油(トウモロコシ油、アーモンド油、ヒマシ油、もしくはオリーブ油、鉱油、動物油(ペルヒドロキシスクアレン)など)を;またはエタノール、イソプロパノール、およびプロピレングリコールなどのアルコールと一緒にステアリン酸もしくはオレイン酸などの脂肪酸を含んでもよい。当該製剤は、ソルビタンエステル類またはそのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン性、カチオン性、または非イオン性の界面活性剤などのいずれの適切な表面活性剤を含んでもよい。天然ゴム、セルロース誘導体または無機材料(シリカ(silicaceous silica)など)などの懸濁剤も、含まれてもよい。当該製剤は、当該技術分野で公知の吸収促進剤、安定剤、例えばタンパク質安定化剤をさらに含んでもよい。
【0041】
局所用剤形は、好ましくは、経口用剤形について上に記載したもののいずれかなどの抗酸化物質を含む。
【実施例】
【0042】
実施例1:脂肪酸抽出物の調製
魚油からの脂肪酸混合物の調製:脂肪酸混合物を、水性媒体中での加水分解後の魚油(魚肝油など、例えばタラ肝油)から抽出する。水酸化ナトリウム(130グラム)を1.0リットルのエタノールおよび1.5リットルの精製水の混合物の中に溶解する。次いで1000グラムのタラ肝油を加え、この混合物を還流下、85℃で8時間加熱する。5℃まで冷却した後、800mLの6M塩酸を加え、油相を水溶液から分離する。次いでこの油を50℃の800mlの精製水で4回洗浄し、最後に真空下で、室温で乾燥する。この抽出物およびこの抽出物を調製するために使用したタラ肝油の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィによって決定する。この抽出物の相対的脂肪酸組成は、未加水分解の油の組成とほぼ同じである(表4)。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例2:脂肪酸抽出物を用いた座薬
座薬を融合方法により調製した。白ろう(Apifil Gattefosse、フランス;50グラム)、ジベヘン酸グリセロール(Compritol 888、Gattefosse;19グラム)および硬質脂肪(Suppocire NA 0、Gattefosse;530グラム)を融解させ、約75℃で混合し、50℃まで冷却した。次いでトコフェロール抗酸化物質混合物(Coviox T70、Cognis、ドイツ;1グラム)、タラ肝油(100グラム)および上記脂肪酸抽出物(300グラム)を加え、十分に混合し45℃に冷却した後、この混合物を座薬金型(2.2ml)の中へと注ぎ込み、室温で冷却した。10%および20%脂肪酸抽出物を含有する座薬、ならびにタラ肝油(100グラム)または脂肪酸抽出物(300グラム)のいずれかを含有する座薬(この場合、さらなる量のSuppocire NA 0で他の成分を置き換えた)を、同じ方法によって調製した。
【表3】
【0045】
実施例3:脂肪酸抽出物を用いた軟膏剤
軟膏剤を融合方法により調製した。蜜ろう(Apifil、Gattefosse;49グラム)、ジステアリン酸グリセリル(Precirol ATO、Gattefosse;20グラム)およびワセリン(白色の軟パラフィン 欧州薬局方(Ph.Eur);330グラム)を、65〜75℃の水浴の上で一緒に融解させた。50℃へ冷却後、タラ肝油(300グラム)、脂肪酸抽出物(300グラム)およびトコフェロール抗酸化物質混合物(Coviox T70、Cognis;1グラム)をこの基剤に加えた。次いで、室温まで冷却後、この軟膏剤を30mlのアルミニウムチューブに充填した。
【0046】
実施例4:座薬を用いた二重盲検試験
二重盲検試験を30人の健常な志願者に対して行った。1日目に、参加者は肛門検査を受け、当該活性成分(30% オメガ富化された脂肪酸混合物を含有する座薬および軟膏剤、表2および実施例2および実施例3を参照)を投与される研究グループ、ならびに2週間の全研究期間の間、プラセボ(魚肝油および当該脂肪酸混合物を含まない同一の座薬および軟膏剤)を投与される対照群に無作為化された。研究グループは3人の男性および12人の女性からなり、平均年齢は46歳であった。対照群は、6人の男性および9人の女性からなり、平均年齢は43歳であった。参加者は、1日2回直腸に上記座薬を投与され、かつ肛門周囲領域に上記軟膏剤を塗布され、第1週後に肛門検査とともに臨床検査を受け、その際に紅斑、炎症、出血またはヒリヒリした感じのいずれかの徴候を記録した。第2週の後、志願者は最終検査を受けた。また参加者は、1週間および2週間後、管理検査の間の自分の便通に対する当該座薬の効果についての質問表に答えた。
【0047】
1週間後におよび最終の管理で行った肛門検査では、いずれのグループでも毒性の皮膚反応はまったく現われていなかった。グループ間で、かゆみまたは軽度の疼痛という病状に関しては統計的な有意差はなかった。研究グループでは、93%が排便の欲求を感じ、ほとんどが座薬の投与後10分間以内に、糞便を排泄した。対照群では、37%のみが座薬の投与後に排便の欲求を感じた。この差は統計的に有意であった(P=0.000)。この座薬は、明らかに便通を促進し、下痢、粘膜分泌、または排便後の何らの長期の効果を引き起こすことなく、排便を引き起こす。
【0048】
実施例5:比較 − 脂肪酸を用いた座薬 対 TAG油
5人の健常な志願者がこの研究に参加した。1日目に、この志願者らは、10% オメガ富化された魚肝油および30% オメガ富化された脂肪酸混合物を含有する1つの座薬(表2および実施例2を参照)を直腸に投与され、7日目に、志願者らは、魚肝油(40%)のみを含有するが遊離脂肪酸を含有しない同一の座薬を投与された。上記魚肝油および上記脂肪酸混合物を含有する座薬は、便通を促進し、すべての参加者で排便を引き起こしたが、他方で魚肝油のみを含有する座薬は排便を引き起こさなかった。
【0049】
実施例6:脂肪酸およびシクロデキストリンを用いた錠剤
10グラムのγ−シクロデキストリン、3グラムのカルボキシメチルセルロースナトリウム(分子量90,000Da)および0.02グラムの塩化ベンザルコニウムをガラスのビーカーの中で秤量することにより、遊離脂肪酸を含有する乾燥粉末を調製し、純水を90mlまで加えた。次いで9グラムのタラ肝油および1グラムの遊離脂肪酸混合物(実施例1)を、この溶液に加えた。十分に混合した後、生成したエマルションを凍結乾燥し、乾燥した錯体粉末を形成した。次いで98.5グラムのこの錯体粉末を0.5グラムの二酸化ケイ素および1グラムのステアリン酸マグネシウムと混合し、錠剤(直径15mm、重量0.75グラム)を直接圧縮によって調製した。
【0050】
実施例7:脂肪酸およびシクロデキストリンを用いた乾燥粉末
γ−シクロデキストリン(ガンマ−シクロデキストリン;15グラム)を85mlの水に溶解し、15グラムの脂肪酸混合物(実施例1)をこの溶液(pH 7.4)に加えた。十分に混合した後、生成したエマルションを凍結乾燥し、乾燥した錯体粉末を形成した。
【0051】
実施例8:脂肪酸抽出物および脂肪酸−シクロデキストリン錯体の殺ウイルス活性
96穴細胞培養プレート(Nunc、デンマーク)の中のCV−1細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞株)の単分子層を使用して、ウイルス感染価を決定した。細胞培養培地は、10% ウシ胎仔血清(FBS)を加えたイーグル最小必須培地(MEM)であり、維持培地(MM)は2% FBSを加えたMEMであった。タラ肝油由来の脂肪酸抽出物、脂肪酸抽出物(実施例1)または脂肪酸抽出物/γ−シクロデキストリン錯体(実施例7)を、1分間ボルテックスにかけることにより、所望の濃度(0.5%および1.0%)までMMの中に溶解した。MMの中での抽出物の希釈物を単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)の原液と4:1の比で混合し、室温で10分間インキュベーションした。次いでこの混合物の中でのウイルス感染力を、CV−1単分子層を含むウェルの中への、MMの中での10倍希釈物の接種によって直ちに滴定した。1ウェルあたり100μL、および1つの希釈物あたり4つのウェルで行った。この細胞培養プレートを、5% CO空気中で、37℃で5日間インキュベーションした。次いでウイルス感染価を読み取り、100μLあたりのlog10 CCID50(50%細胞培養感染量)として表した。脂肪酸抽出物との混合物における力価を、HSV−1がMMの中で4:1に希釈された対照混合物の力価から差し引いた。その差、すなわち力価の減少、を抗ウイルス活性の尺度として使用した(表5を参照)。
【0052】
【表4】
【0053】
(参考文献)
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