(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113973
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】γ線放射性物質収容部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 4/08 20160101AFI20170403BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20170403BHJP
C23C 4/137 20160101ALI20170403BHJP
C23C 4/18 20060101ALI20170403BHJP
C23C 4/06 20160101ALN20170403BHJP
C23C 4/10 20160101ALN20170403BHJP
C23C 4/12 20160101ALN20170403BHJP
C23C 24/04 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
C23C4/08
C23C4/134
C23C4/137
C23C4/18
!C23C4/06
!C23C4/10
!C23C4/12
!C23C24/04
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-173415(P2012-173415)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-31554(P2014-31554A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109875
【氏名又は名称】トーカロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143122
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 功雄
(72)【発明者】
【氏名】神野 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】寺谷 武馬
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義康
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−020200(JP,A)
【文献】
特開2004−198431(JP,A)
【文献】
特開2001−273998(JP,A)
【文献】
特開平08−021432(JP,A)
【文献】
特開2012−042317(JP,A)
【文献】
特開昭61−166914(JP,A)
【文献】
特開昭56−090969(JP,A)
【文献】
特開2003−268527(JP,A)
【文献】
特開平03−094048(JP,A)
【文献】
特開平06−212379(JP,A)
【文献】
特開2004−162147(JP,A)
【文献】
特公平08−027388(JP,B2)
【文献】
日本溶射協会,溶射用語事典,日本,産報出版株式会社,1994年 6月10日,初版,p.51−52,63−64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00−6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材の表面に被覆されたW材料からなる溶射皮膜とで構成されるγ線遮蔽コーティング部材を備えるγ線放射性物質収容部材の製造方法であって、
前記溶射皮膜は、大気プラズマ溶射法および減圧プラズマ溶射法のいずれかによって形成されることを特徴とするγ線放射性物質収容部材の製造方法。
【請求項2】
前記溶射皮膜は、封孔剤によって封孔処理されることを特徴とする請求項1に記載のγ線放射性物質収容部材の製造方法。
【請求項3】
前記封孔剤は、Co、Ni、Cr、Al、Zn、SiO2、硅酸塩、嫌気性メタクリル酸塩、リン酸塩、ゾルゲル剤、金属アルコキシドの群から選択される1種以上の材料を含むことを特徴とする請求項2に記載のγ線放射性物質収容部材の製造方法。
【請求項4】
前記封孔剤は、高分子材料、パラフィン、防錆油、グリース、コールタールから選択される1種以上の材料を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のγ線放射性物質収容部材の製造方法。
【請求項5】
前記基材と前記溶射皮膜との間にボンドコートが設けられており、このボンドコートは、Fe、Al、Ti、Ni、Cr、Zn、Co、Yの群から選択される金属、又はこれら組み合わせの合金よりなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のγ線放射性物質収容部材の製造方法。
【請求項6】
前記基材は、Fe、Al、Ti、Mg、Ni、及びこれらの合金、コンクリート、金属を含むセラミックス、炭素繊維を含むセラミックス、高分子材料、金属を含む高分子材料、炭素繊維を含む高分子材料のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のγ線放射性物質収容部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ線を遮蔽するための皮膜を備え
るγ線放射性物質収容部
材の製造方法に関し、特に放射線施設や、放射線廃棄物、核燃料、ラジオアイソトープ等の貯蔵容器、輸送容器、又は放射線関連機器を構成するのに適し
たγ線放射性物質収容部
材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故により、セシウムなどの放射性物質で汚染されたガレキ、汚染水、汚泥、草木など放射性廃棄物の処理が問題となっている。そのため、放射性廃棄物の収集、運搬、さらには長期貯蔵、中間貯蔵する放射性遮蔽特性に優れた容器(キャスク)などを構成する放射線遮蔽部材の開発が喫緊の課題となっている。
【0003】
γ線、X線、電子線の遮蔽には一般的に、鉛、鉄、コンクリートなどが用いられている。例えばコンクリートを遮蔽部材として用いる場合、十分な遮蔽効果を得るために相当の壁厚を必要とし、容器の使用可能容積が小さくなるといった問題がある。またコンクリート構造体は、その吸水性により汚染水を吸水してしまう恐れもある。
【0004】
鉛、鉄、コンクリートなどとポリエチレンやパラフィンなどを組み合わせた遮蔽部材も知られているが、ポリエチレンやパラフィンの接着性が悪く、製造及び施工が困難となる。さらに、両者の熱膨張係数が著しく異なるために、温度差によって歪や反り、脱離が生じ、製造及び施工後の温度管理にかなりの注意を要する。また昨今の環境問題により、鉛に代表される人体に有害な材料は、可能な限り使用を控える傾向にある。
【0005】
例えば特許文献1には、中性子減速材と中性子吸収材とγ線遮蔽材からなる混合粉末を、鉄粉末に混合して成形した放射線遮蔽部材が記載されている。特許文献2には、放射線吸収率の高い材料と加硫ゴムとからなる放射線遮蔽材が記載されており、特許文献3には、樹脂中に、アンチモン、スズの金属単体粉末又は化合物粉末が配合された放射線遮蔽材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−27388号公報
【特許文献2】特開平10−153687号公報
【特許文献3】特開2002−365393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1のようにγ線遮蔽材を鉄粉末に混合した放射線遮蔽部材を用いて、例えば放射性廃棄物の容器を構成する場合、放射性廃棄物に塩分を含む汚染水が含まれていると、その汚染水に腐食され易くなる。そのため、腐食による汚染水漏れが懸念される。特許文献2及び特許文献3のように、樹脂を多く配合した放射線遮蔽材の場合、高エネルギーのγ線の照射や水分環境によって、高分子の結合が次第に切れていき、比較的早期に樹脂劣化が生じてしまう。そのため、耐久性が低く、長期貯蔵、中間貯蔵には適さない。さらに、樹脂を多く配合した放射線遮蔽材では、容易に摩耗して減肉してしまうといった問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、汚染水による影響が少なく、それと共に高エネルギーのγ線の照射や水分環境によって耐久性が低下せず、かつ摩耗し難
いγ線放射性物質収容部
材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、次の技術的手段を講じた。
即ち本発明の
γ線放射性物質収容部材の製造方法は、基材と、この基材の表面に被覆された
W材料からなる溶射皮膜とで構成されるγ線遮蔽コーティング部材を備え
るγ線放射性物質収容部材の製造方法であって、前記
溶射皮膜は、
大気プラズマ溶射法および減圧プラズマ溶射法のいずれかによって形成されることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の
γ線放射性物質収容部材の製造方法によれば、基材の表面にγ線遮蔽皮膜が被覆され、このγ線遮蔽皮膜が、W材料からなるので、放射性廃棄物に塩分を含む汚染水が含まれている場合であっても、その汚染水に腐食されることはない。そのため、腐食による汚染水漏れを生じないようにできる。樹脂のように、高エネルギーのγ線の照射や水分環境による劣化が起こらないので、高い耐久性を得ることができる。さらに基材の表面を覆うγ線遮蔽皮膜は、樹脂よりも硬質の材料からなるので耐摩耗性を向上させることができる。
【0017】
前記
γ線遮蔽皮膜
を構成する皮膜層間の隙間が、封孔剤によって埋められていてもよく、このような封孔剤として、Co、Ni、Cr、Al、Zn、SiO
2、硅酸塩、嫌気性メタクリル酸塩、リン酸塩、ゾルゲル剤、金属アルコキシドの群から選択される1種以上の材料を含むものが挙げられる。さらに、封孔剤として、高分子材料、パラフィン、防錆油、グリース、コールタールから選択される1種以上の有機系材料を含むものとしてもよい。
【0018】
前記
γ線遮蔽皮膜
を構成する皮膜層間の隙間が封孔剤によって埋められていれば、汚染水の侵入を確実に防ぐことができ、水分環境による基材の劣化をも抑えることができる。これにより、耐久性を格段に向上させることができる。
【0019】
前記基材と前記
γ線遮蔽皮膜との間にボンドコートを設けてもよく、このボンドコートは、Fe、Al、Ti、Ni、Cr、Zn、Co、Yから選択される金属、又はこれら組み合わせの合金よりなることが好ましい。基材と
γ線遮蔽皮膜との間に上記材料のボンドコートを設ければ、
γ線遮蔽皮膜が基材から脱離し難くなり、密着力を向上させることができる。
【0020】
前記基材は限定されず、例えばFe、Al、Ti、Mg、Ni、及びこれらの合金、コンクリート、金属を含むセラミックス、炭素繊維を含むセラミックス、高分子材料、金属を含む高分子材料、炭素繊維を含む高分子材料のいずれかであることが好ましい。
【0021】
本発明
の製造方法によれば、優れた施工性が得られ、そのため現地施工が可能となり、かつ高品質
のγ線放射性物質収容部材を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
上記の通り本発明によれば、基材の表面に被覆された
γ線遮蔽皮膜が、
W材料で形成されているので、放射性廃棄物に塩分を含む汚染水が含まれている場合であっても、その汚染水に腐食されることはない。そのため、長期に渡って腐食による汚染水漏れを生じないようにできる。高エネルギーのγ線の照射や水分環境による劣化が起こらないので、耐久性を高めることができる。基材の表面を覆う
γ線遮蔽皮膜は、樹脂よりも硬質の材料からなるので耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽コーティング部材の断面模式図である。
【
図4】γ線透過率と遮蔽体厚みとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽コーティング部材1を示す断面模式図である。本実施形態の放射線遮蔽コーティング部材1は、放射性廃棄物の収集、運搬、長期貯蔵、中間貯蔵用の容器を構成するためのものであり、基材2と、この基材2の表面2aに被覆された放射線遮蔽皮膜3とを備えている。
【0025】
放射線遮蔽皮膜3を被覆する基材2は限定されない。基材2の具体例として、例えば、Fe、Al、Ti、Mg、Niの金属単体、及びこれらの合金、コンクリート、金属を含むセラミックス、炭素繊維を含むセラミックス、高分子材料、金属を含む高分子材料、CFRPなどの炭素繊維を含む高分子材料が挙げられる。
【0026】
本実施形態の基材2の厚みは約6mmであり、放射線遮蔽皮膜3の厚みは約1mmとなっているが、基材2及び放射線遮蔽皮膜3の厚みは、放射線遮蔽コーティング部材1によって構成する構造体や放射性廃棄物などに応じて適宜変更される。
【0027】
放射線遮蔽皮膜3を形成する材料は限定されず、例えばW(タングステン)材料に代表される、比重が10〜20g/cm
3の高密度の金属材料が好適に用いられる。放射線遮蔽皮膜3を形成する材料として、W、Mo(モリブデン)のうち1種以上の元素を主成分とする材料や、W、Moのうち1種以上の元素を含む合金が好適である。
図2に、W材料からなる放射線遮蔽皮膜3の断面SEM写真を示す。上記の合金としては、W−Mo合金、W−Ni(ニッケル)合金、W−Cu(銅)合金、W−Fe(鉄)合金、Mo−W合金、Mo−Ni合金、Mo−Cu合金、Mo−Fe合金、及びこれらを主体とする合金が好適に用いられる。
【0028】
さらに放射線遮蔽皮膜3を形成する材料として、WB、WC、W
2C、MoB、MoSi
2、及びこれらを主体とする化合物が好適である。これらの材料は、単体で用いてもよく、バインダー材に配合して用いてもよい。その中でも、WC(タングステンカーバイド)系材料(例えばWC系サーメット)が特に好適である。
図3に、WC−CrNi材料からなる放射線遮蔽皮膜3の断面SEM写真を示す。このように、放射線遮蔽皮膜3は、W材料やWC材料などの硬質材料が主成分となるので、放射線遮蔽コーティング部材1の表面硬度を高くすることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0029】
バインダー材の具体例としては、例えばCo、Ni、Cr、Fe、Al、Y、Ti、P、Mo、W、Si、Mn、V、Nb、Bの群から選択される元素単体、又はこれら元素の1種以上を主成分とする合金が挙げられる。より具体的には、MCrAlY、Cr−Ni、Co−Cr、ハステロイ合金、Ni−Pが挙げられる。放射線遮蔽皮膜3に上記のバインダー材を用いた場合、バインダー材とWCなどの硬質粒子の作用によって、耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0030】
遮蔽効果に関し、W(比重:18.5g/cm
3)及びWC系サーメット(比重:11.3g/cm
3)で、鉛以上のγ線遮蔽能力を示す。例えばW材料からなる放射線遮蔽皮膜3(膜厚:2mm)のγ線遮蔽効果は、同じ厚みの鉛板の1.4倍、鋼板の2.2倍、コンクリートの9倍を示す。
【0031】
放射線遮蔽皮膜3は、大気プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法、ガスフレーム溶射法、アーク溶射法、爆発溶射法、コールドスプレー法のいずれかの方法で形成されている。
【0032】
これら溶射法又はコールドスプレー法を用いることによって、耐久性に優れ、かつ高品質の放射線遮蔽皮膜3を得ることができる。一般的なスプレー塗布などによって放射線遮蔽皮膜3を形成してもよい。なお、各溶射法及びコールドスプレー法による成膜条件は、基材、原料粉末、膜厚、製造環境などに応じて適宜設定すればよい。
【0033】
W材料からなる放射線遮蔽皮膜3を、大気プラズマ溶射法で溶射する場合の条件と、WC−CrNi材料からなる放射線遮蔽皮膜3を、高速フレーム溶射法で溶射する場合の条件を以下に示す。なお、以下の条件は一例であって、上述のように溶射条件は適宜設定される。
【0034】
W(大気プラズマ溶射法)
溶射装置:Sulzer Metco−F4
ノズル:φ6mm
アルゴンガス流量:50NLPM
水素ガス流量:10NLPM
トーチ入力:40kW
溶射距離:150mm
【0035】
WC−CrNi(高速フレーム溶射法)
溶射装置:TAFA−JP5000
バレル長さ:8inch
酸素流量:2000scfh
灯油流量:6.0gph
溶射距離:400mm
【0036】
本実施形態の放射線遮蔽皮膜3は、封孔剤によって封孔処理されている。封孔処理の方法としては、はけ塗り、ディッピング、スプレー、ローラー塗布等、従来の方法が用いられる。放射線遮蔽皮膜3を封孔剤によって封孔処理すれば、放射線遮蔽皮膜3を構成する皮膜層間の僅かな気孔や割れによる隙間が封孔剤によって埋められ、汚染水の侵入を防ぐことができ、水分環境による基材の劣化をも抑えることができる。これにより、耐久性を格段に向上させることができる。
【0037】
上記封孔剤の具体例として、Co、Ni、Cr、Al、Zn、SiO
2、ナトリウム硅酸塩やエチル硅酸塩などの硅酸塩、嫌気性メタクリル酸塩、リン酸塩、ゾルゲル剤、金属アルコキシドから選択される1種以上の無機材料を含むものが挙げられる。さらに、封孔剤として、高分子材料、パラフィン、防錆油、グリース、コールタールから選択される1種以上の有機系材料が挙げられる。
【0038】
高分子材料としては、例えばビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、シリコン樹脂、エポキシフェノール樹脂、アミド樹脂、エポキシメラミン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。封孔剤としては、上記無機材料のみ、上記有機材料のみ、又は上記無機材料と上記有機材料を混合したものが好適である。なお、放射線遮蔽皮膜3が高分子材料などの有機系の封孔剤で処理されている場合であっても、当該放射線遮蔽皮膜3に含まれる封孔剤の含有量は僅かであるので、耐摩耗性には殆ど影響を及ぼさない。
【0039】
本実施形態では、基材2と放射線遮蔽皮膜3との間にボンドコートが設けられている。ボンドコートとしては、Fe、Al、Ti、Ni、Cr、Zn、Co、Yから選択される金属、又はこれら組み合わせの合金が好適である。基材2と放射線遮蔽皮膜3との間に上記材料からなるボンドコートを設ければ、放射線遮蔽皮膜3が基材2から脱離し難くなり、放射線遮蔽コーティング部材1の密着性を向上させることができる。
【0040】
例えば、基材をSS400鋼とし、その表面にW材料からなる放射線遮蔽皮膜を形成した場合の密着力は、所定の試験条件下で5MPaを示す。これに対し、基材をSS400鋼とし、その表面にボンドコートとしてAlボンドコートを塗布し、塗布した表面にW材料からなる放射線遮蔽皮膜を形成した場合の密着力は、同じ試験条件下で10MPaを示す。このようにボンドコートを介在させた場合、基材と放射線遮蔽皮膜との密着力が格段に向上する。
【0041】
上記本実施形態の放射線遮蔽コーティング部材1によれば、基材2の表面2aに放射線遮蔽皮膜3が被覆され、この放射線遮蔽皮膜3が、W、WC系材料など上記各種の材料で形成されているので、放射性廃棄物に塩分を含む汚染水が含まれている場合であっても、その汚染水に腐食されることはない。そのため、腐食による汚染水漏れを生じないようにできる。樹脂のように、高エネルギーのγ線の照射や水分環境による劣化が起こらないので、高い耐久性を得ることができる。さらに、放射線遮蔽皮膜3は、W材料やWC材料などの硬質材料が主成分となるので、表面硬度が高くなり、耐摩耗性を向上させることができる。放射線遮蔽皮膜3にバインダー材を用いた場合、バインダー材とWCなどの硬質粒子の作用によって、耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0042】
放射線遮蔽皮膜3は、上記の各種溶射法などで形成されるため、皮膜厚さ:0.01mmから数10mmの範囲で自由に選択可能であり、容易に施工可能である。このような優れた施工性から、工場のみならず現地施工によって、放射線遮蔽皮膜3を基材2の表面2aへ形成することができる。円筒構造物の内面や、複雑な形状の構造物など、いかなる形状の構造物にも、放射線遮蔽皮膜3の形成が可能である。そのため、従来では被覆できなかった箇所への放射線遮蔽皮膜3の形成が可能となり、ひいてはセシウムなどの放射性物質で汚染されたガレキ、汚染水、汚泥、草木など放射性廃棄物の処理を効率良く進めることができる。さらに、
図2及び
図3に示すように柔軟性に優れたミクロな層構造の皮膜が得られ、高品質の放射線遮蔽コーティング部材1を得ることができる。
【0043】
放射線遮蔽皮膜3が、W、WC系材料など上記各種の材料で形成されていることにより、鉛が含まれず人体に悪影響を及ぼすことが殆どなく、安全性が高い。また、十分な強度、高い耐熱性、疎水性、高い耐薬品性、高い耐摩耗性を有する放射線遮蔽コーティング部材1を得ることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明にかかる実施例、及び比較例の試料を製作してγ線透過率を測定した。実施例として、150×150×6mmのSS400鋼の片面に、大気プラズマ溶射法を用いて上記成膜条件でW皮膜(W材料からなる放射線遮蔽皮膜)を被覆した試料片を製作した。W皮膜の膜厚は1mmとした。比較例として、150×150×6mmのコンクリート、SS400鋼、鉛の試料片を製作した。
【0045】
試験方法は、各試験片の片側からγ線を照射し、反対側に透過したγ線量を線量計で測定した。各試験片を1枚の場合、2枚並べた場合、3枚並べた場合、4枚並べた場合で測定した。γ線透過率と遮蔽体厚み(mm)との関係を
図4のグラフに示す。ここでいう遮蔽体厚みとは、実施例では放射線遮蔽皮膜の厚み、比較例では各試料の厚みをいう。この試験結果から、γ線遮蔽効果は、W皮膜(膜厚:2mm)で15%を示し、SS400鋼(板厚:6mm、23%のγ線遮蔽)にW皮膜(膜厚:2mm)の被覆で、34%程度のγ線遮蔽効果を得ることが解る。
【0046】
次に、摩耗試験及び硬度測定を実施した。実施例として、試験規格で設定された所定寸法のSS400鋼の片面(試験面)に、高速フレーム溶射法を用いて上記成膜条件でWC−NiCr皮膜を被覆した試験片を製作した。比較例として所定寸法のSS400鋼、SUS304鋼の試験片を製作した。摩耗試験はスガ式摩耗試験(SiC#320−3.25kgf−2000回往復)で実施し、硬度測定はビッカース硬度測定で実施した。
【0047】
摩耗試験及び硬度測定の結果を以下に示す。
(摩耗試験)
比較例 SS400鋼 198
SUS304鋼 168
実施例 WC−NiCr皮膜 6
【0048】
(硬度測定)
比較例 SS400鋼 170
SUS304鋼 180
実施例 WC−NiCr皮膜 1100
上記のとおり、WC−NiCr皮膜では、SS400鋼及びSUS304鋼に比べて、約30倍の耐摩耗性を示し、約6倍の硬さを有している。
【0049】
上記実施形態及び実施例は例示であり制限的なものではない。本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等となる範囲における全ての変更が含まれる。本発明の放射線遮蔽コーティング部材は、放射性廃棄物の収集、運搬などに用いられる容器だけでなく、あらゆる用途へ用いることができる。例えば、原子力関連施設の放射線遮蔽付き設備、各種の放射線装置(工業用検査、フィルム表面改質、医療診断・治療、殺菌処理)、各種の放射線照射作業(γ線、X線、電子線)における放射線遮蔽部材などへの幅広い適用が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 放射線遮蔽コーティング部材
2 基材
2a 表面
3 放射線遮蔽皮膜