特許第6113984号(P6113984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社河野石材店の特許一覧

<>
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000002
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000003
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000004
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000005
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000006
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000007
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000008
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000009
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000010
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000011
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000012
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000013
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000014
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000015
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000016
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000017
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000018
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000019
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000020
  • 特許6113984-墓石の外柵における燈明台装置 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6113984
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】墓石の外柵における燈明台装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 13/00 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   E04H13/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-204723(P2012-204723)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58819(P2014-58819A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】507099583
【氏名又は名称】有限会社河野石材店
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3135829(JP,U)
【文献】 特開平11−117576(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3045868(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
墓石を囲んで配置される外柵において、
外柵の一部を構成する、石材製の外柵部材と、
燈明台類を配置するために、上記外柵部材の前部の内部に形成される内部空間と、
燈明台類を配置する、上記内部空間の一面のみを開口させた開口部分と、
上記一面のみの開口部分を閉塞するために形成された閉塞部材と、
内部空間への物品の出し入れを可能にするために、閉塞部材に開口した火入れ口を有するとともに、火入れ口を開閉するために装備した開閉手段と、を具備し、
前記開閉手段は、引き戸から成り、引き戸の開け閉てに必要な敷居に相当する構造と鴨居に相当する構造を、開口部分の上縁と下縁に一体構造又は別体構造とし、
上記構造に引き戸を配置するとともに、その外側に閉塞部材を設置し開口部分を閉塞するとともに、引き戸の外れ止めとした構成を有する墓石の外柵における燈明台装置。
【請求項2】
墓石を囲んで配置される外柵において、
外柵の一部を構成する、石材製の外柵部材と、
燈明台類を配置するために、上記外柵部材の前部の内部に形成される内部空間と、
燈明台類を配置する、上記内部空間の一面のみを開口させた開口部分と、
上記一面のみの開口部分を閉塞するために形成された閉塞部材と、
内部空間への物品の出し入れを可能にするために、閉塞部材に開口した火入れ口を有するとともに、火入れ口を開閉するために装備した開閉手段と、を具備し、
外柵は、墓石の正面の入り口に位置する左右一対の外柵部材を有し、
内部空間は、左右一対の外柵部材を、内側面側又は正面側の何れか一面から刳り抜くようにして形成されており、
上記内部空間の内側面側又は正面側のみを開口させた開口部分を閉塞する閉塞部材に、開閉手段が設けられ、
前記開閉手段は、引き戸から成り、引き戸の開け閉てに必要な敷居に相当する構造と鴨居に相当する構造を、開口部分の上縁と下縁に一体構造又は別体構造とし、
上記構造に引き戸を配置するとともに、その外側に閉塞部材を設置し開口部分を閉塞するとともに、引き戸の外れ止めとした構成を有する墓石の外柵における燈明台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墓石を囲んで配置される石材製の外柵における燈明台装置に関するもので、特には、外柵の一部に燈明台として使用可能な内部空間を備えるとともに、内部空間に燈明以外の物品も納められるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
本発明において、外柵とは、墓石を囲んで配置される石材製の構築物を意味しており、墓石に向かって正面の参拝口は開口し、左右両側面と背面の三方に低い囲みをめぐらしたもので、通常はそれによって墓所としての区域が画定されている。墓所内部の設備には、墓石とともに水鉢、香炉及び拝石、花立て、墓誌、灯篭などが付属しており、また、外柵の前端部分には親柱などと称する石塊が配置され、その正面に家紋を彫り込んだものが良く見受けられる。墓所はお参りするところで、墓参者は、墓参に必要なものを持参しかつ持ち帰るという観念から、墓所には上記付属物以外の何物も置かないのが普通であるが、しかし、忘れ物があれば十分な墓参ができないことは当然である。
【0003】
また、上記のような従来の墓所の設備では、墓参者は、墓石を清掃し、花立てに花を生け、線香に火を付けるなどの動作を狭い墓所にて行うことになる。特に、暗い状況において灯篭に火を点す場合には、頭など身体の一部を墓石や灯篭などにぶつける恐れがある。そこで、本発明者は墓所用燈明空間付きの羽目石を発明し、先に実用新案の登録を出願して第3135829号の実用新案登録を得ている。これによって、外柵の前部に設けた燈明の明かりで、墓所に入る前でも墓前を照明することができ、安全性が高められるようになった。
【0004】
ところが、従来の燈明の火入れ口は、石燈籠の時代の構造を引き継いでいるためか、燈明空間が吹きさらしの環境にあり、ゴミや埃の侵入を防ぐことができない。他の先行技術を見ると、例えば、特開2007−327323号があるが、このものは外部から内部を看取するため石材に窓や透孔を設けており、風雨の影響を或る程度抑制できるとしても、その効果は限定されると思われる。そこで本発明者は、内部に燈明台として使用可能な内部空間を有し、かつ、上記内部空間への物品の出し入れのために火入れ口を備えた石材製の外柵部材を具備し、上記火入れ口に、引き戸又は開き扉から成る開閉手段を装備した構成を有する燈明台装置を開発し、その成果の一部について特許出願をした。
【0005】
上記特許出願に係る発明は石材加工の観点から、最も合理的と考えられる構造を目標としてなされており、ほぼ直方体形状を有する内部空間の左(外側)又は右(内側)と正面に開放部分を有しているが、各開放部分を専用の閉塞部材によって閉塞する構造を取っていた。このため、石材の加工性は良く、経済性も良いが部品点数が多くなり、組み立てに手数が掛かるものであった。また、比較的小さい部材の接合で組み立てられるため強度上の不安もあり、外力を受けると破壊の恐れがある。よって、石材加工の面で多少の問題があっても、複数面の同時加工を必要としない技術を開発することが望まれる。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3135829号
【特許文献2】特開2007−327323号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の観点からなされたもので、その課題は、一面のみの開口部分を有することにより、強度上の不安を無くし、一面のみを覆う閉塞部材及びその接合と、部品点数削減により、施工時間の短縮を図ることができ、かつ、コストダウン効果が得られるようにすることである。また、本発明の他の課題は、よりスマートな外観を具備し得るようにした墓石の外柵における燈明台装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は墓石を囲んで配置される石材製の外柵において、外柵の一部を構成する、石材製の外柵部材と、燈明台類を配置する、上記内部空間の一面のみを開口させた開口部分と、上記内部空間に燭台類を配置し、また、取り出すために、外柵部材に設けた内部空間の一面のみを開口させる開口部分と、上記一面のみの開口部分を閉塞するために形成された閉塞部材と、内部空間への物品の出し入れを可能にするために、閉塞部材に開口した火入れ口を有するとともに、火入れ口を開閉するために装備した開閉手段を具備して構成するという手段を講じている。
【0009】
本発明の燈明台装置は、外柵の一部を構成する外柵部材の内部に、燈明台類を配置するために、内部空間を有している。本発明における「燈明台」とは、「燈明が配置される部分」というほどの意味であるが、上記内部空間は燈明台としてだけではなく、墓参に使われる燈明以外の様々な物品を納める目的も有している。燈明として用いられるローソク及び燭台以外の物品としては、例えば、ローソク以外の燈火、線香、着火用具、清掃用品などを挙げることができる。
【0010】
ここで、外柵部材とは、外柵を構成する一部の部材を意味している。外柵は、例えば、墓石に向かって左右両側面と背面の三周を囲んで設けられるが、左側面の外柵部分や右側面の外柵部分が1個の石材から成るもの、また、複数個の石材を組み合わせて成るもの、共に存在するので、どちらのものも外柵部材に該当し、かつ、内部空間を形成する対象である。内部空間の具体的形状は、自由にデザインすることができる。例えば、直方体型の内部空間であれば、これは六面体であるから一面以外には五面あり、円筒型の内部空間であるならば、一面の円形開口部分以外の面は二面のみになる。また、本発明の燈明台装置の場合は、外柵部材の前部の内部に内部空間を形成する。この位置は、外柵の前端のいわば入り口に当たる箇所であり、外観の立派さを重視した従来の設備では、特に、大型に形成されていた部分であるが、燈明を置く台として使われる程度の存在に過ぎなかった。
【0011】
本発明の燈明台装置は、燈明台類を配置する、上記内部空間の一面のみを開口させた開口部分を有する。一面のみの開口部分を有する構造にするには、左右一対の外柵部材を、内側面側又は正面側から刳り抜く(或いは彫り取る)ようにして内部空間を形成することができる。それには、コアビットなどと通称する工具を用いて加工する方法がある。一面のみの開口部分を設けることによって、上記開口部分を開閉可能に閉塞するために形成された閉塞部材は、一面のみを閉塞可能な形状で良くなり、二面又はそれ以上の開口部分とそれらの閉塞部材を有するものと比較して、閉塞部材の構造をより単純化することができる。閉塞部材は、開閉手段の安全性を高めるという意味からも必要性の高いものである。閉塞部材よりも内部に開閉手段を設置することで、開閉部材を落下させない構造となる。墓所の設備というものは恒久性が重要であり、絶対に壊れるようなものであってはならないので石造構造物が選択されていると考えられる。しかし、開閉によりその部材が外れて落下し破損したとなると、お参りする意義にも影響が出て好ましくないことはいうまでもない。
【0012】
本発明の燈明台装置は、さらに、内部空間への物品の出し入れを可能にするために、閉塞部材に開口した火入れ口を有するとともに、火入れ口を開閉するために装備した開閉手段を具備する。火入れ口は、閉塞部材の一部に、燈明台等を出し入れできるように設けられているもので、閉塞部材を開閉するには開閉手段を用いる。開閉手段として利用できるものには、大別すると引き戸又は開き扉から成る二方式があるが、どちらの方式も本発明の燈明台装置に適用し得る。
【0013】
開閉手段を構成するものが石材製の引き戸である場合、引き戸の開閉移動に必要な敷居に相当する構造と鴨居に相当する構造を、開口部分の上縁と下縁に一体構造又は別体構造として具備し、上記構造に引き戸を配置するとともに、その外側に閉塞部材を設置して外れ止めとした構成を取り得る。上記の構成は、引き戸を嵌めるいわゆる敷居に相当するものと鴨居に相当するものを、共に溝部だけで形成すること、共に桟材だけで形成することを許容するが、しかし、別部品から成る部材を接合しなくても、内部空間の一面の開口部分に、直接、敷居に相当する構造と鴨居に相当する構造を形成することができる。
【0014】
開閉手段を開き扉方式に形成することも可能である。しかしながら、その場合には、全ての部材を石材製とするのではなく、扉外枠を金属製部材から成るものとし、扉外枠に任意の部材から成る開き扉を、ヒンジ部を用いて開閉可能に取り付けた構造の扉ユニットを形成することが得策である。上記扉ユニットを、扉外枠にて火入れ口に接合することで、容易に開閉手段を閉塞部材に設けることができる。開き扉方式の場合、閉塞手段を用いて予め開閉手段を設けることができるので、直接、外柵部材に開閉手段を設けるよりも、製造をより容易に行える。
【0015】
なお、上記の引き戸又は開き扉及び石材製の閉塞部材には、任意の模様から成る開口部を設けることができるが、これらの開口部は、光を透過するシート状の素材によって閉塞されていても良い。光を透過するシート状の素材であれば、燈明の本来の機能を妨げることがなく、かつまた、塵埃や虫の侵入の防止に最も効果的である。上記の素材としては旧来の紙類の他、プラスチックシート、ガラス等を使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る墓石の外柵における燈明台装置は以上のように構成され、かつ、作用するものであるから、外柵部材が一面のみの開口部分を有することで、強度上の不安がなく、一面のみを覆う閉塞部材及びその接合と、部品点数削減により、施工時間の短縮を図ることができ、かつ、コストダウンの効果も得られ、開閉部材が閉塞部材よりも内方に設けられるので脱落の恐れも著しく少なくなるという効果を奏する。また、本発明によれば、接合箇所が少なく、よりスマートな外観を具備し得るようにした墓石の外柵における燈明台装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は本発明に係る外柵における燈明台装置10の例1を適用した墓所設備を示すものである。図中、符号11は墓石を示しており、水鉢12、花立て13、香炉14等を具備し、かつ、それらを囲んで外柵15が配置されている。外柵15は向かって左側面部分15a、背面部分15b及び右側面部分15cとから構成されている。外柵15の一部として、左右の外柵部材16、17があり、左外柵部材16は外柵の左側面部分15aの前方部分に、右外柵部材17は外柵の右側面部分15cの前方部分に設置されている。
【0018】
左外柵部材16と右外柵部材17とは、それぞれの内部に燈明台として使用可能な内部空間18を有しており(図3参照)、ここに本発明の燈明台装置10が装備されている。左外柵部材16と右外柵部材17は左右対称で左右の区別があるが、内部空間18の備えるべき構成は基本的に左右で相違がないので、以後、左側の内部空間18を主として説明し、必要が生じた場合に右側の説明を追加することとする。本発明の燈明台装置10は、装置を構成するほぼ全てが石材製品から成っている。本発明に係る装置10の例1は図1ないし図7に示されており、その石材製の外柵部材16、17の上記内部空間18は、内側面1面のみが開口部分19になっている(図5参照)。故に、内部空間18の外側壁左側面16a(但し、右外柵部材17については内部空間18の外側壁右側面17a)と、正面、上面、下面及び背面については、一部分を除いて閉塞された壁面である。
【0019】
例1の場合、内部空間18の上記開口部分19を閉塞するための閉塞部材20は、外柵部材16の内側面形状に合わせてほぼ平板状に形成されている。例1の内部空間18は、外柵部材前部に位置しているので、それより後方の外柵部材部分は柱状部分16bとして残っている(図5)。開口部分19は、内部空間18の範囲であるが、それより後方の柱状部分16bの内側には凹段部19aが形成されており、閉塞部材20は、開口部分19と柱状部分16bを合わせた大きさ、形状とほぼ一致する。また、柱状部分16bの内側面部分は、閉塞部材20を後部にて取り付けるための主要な接合部分となる。故に、閉塞部材20を外柵部材16に取り付けると、これらの内側面は面一になる(図6参照)。
【0020】
上記内部空間18は、左右一対の外柵部材16、17を、石材加工により内側面側から刳り抜いて形成されており、一面のみの開口部分19を有するだけであるから、強度上の問題がない。これは一面のみを閉塞する閉塞部材20の強度などに付いても当てはまり、燈明台装置10の幅をより小さくして外観をスマートにし、また、内側面を平面に形成することもより容易になるとともに、加工全般の容易化に寄与する。上記の外柵部材16、17は、上記内部空間18の内部が外部から見えるように、外柵部材16、17の正面又は左右の外側面側に設けた、小窓20a、20b、20cを有している。なお、閉塞部材20などの接合には、石材用接着剤が用いられる。
【0021】
図2ないし図5に示した例1の閉塞部材20は、上記開口部分19から柱状部分16bに相当する前後方向の長さと上下方向の幅を有し、かつ、その一部に火入れ口21を有している。火入れ口21は、前方から切り込んだほぼコ字状に形成され、その位置における外柵部材16側との間に、火入れ口21を開閉するために装備した開閉手段22を具備している。例1の開閉手段22は引き戸23から成り、引き戸23の開閉移動に必要な敷居に相当する構造24と鴨居に相当する構造25を、開口部分19の上縁と下縁に別体構造として具備し、上記構造24、25に引き戸23を配置するとともに、その外側に閉塞部材20を設置して閉塞し、外れ止めとした構成を有している(図6参照)。
【0022】
引き戸23は火入れ口21を閉じられるだけの長さを有するが、その長さよりも開口部分19の長さの方が大きく設定されており、具体的には、引き戸23を後方へ引いて火入れ口21を開いたときに、柱状部分16bの前面16cが戸当たりとなる(図5参照)。上記敷居に相当する構造24と鴨居に相当する構造25は、断面形状がほぼL字型に形成された細長い部材より成り、開口部分19の縁よりも閉塞部材20の板厚の程度だけ引っ込んだ位置22aに、L字又は逆L字状に配置されるとともに、接合されて取り付けられている(図5の鎖線図示及び図6参照)。なお、引き戸23に取っ手は設けていないが、小窓23aを有しており、また、指で引き戸23の縁を摘むことでも引き出すことができるので開閉操作は容易である。しかし、取っ手を設けることは、後述の例3に記載されている通り容易である。
【0023】
上記の例1では、火入れ口21は、前方からの切り込み状に形成されているが、板材を打ち抜いたような窓型形状にも形成することができる。図7はその形状を示す例1の変形例であり、閉塞部材26に窓型形状の火入れ口27が設けられている。引き戸23は、火入れ口27の大きさが例1と同じとすれば同一形状のものを使用できるが、前後の戸当たり位置を、火入れ口27の位置に合わせて調整する必要がある。何れの構造を取る場合であっても、引き戸23が外れる恐れはなく、墓所設備の恒久性が損なわれることはない。他の構成は例1の場合と全く同様で良い。
【0024】
引き戸23の開閉移動に必要な敷居に相当する構造と鴨居に相当する構造を、開口部分の上縁と下縁に一体構造として具備したものを本発明の例2の開閉手段30とし、図8及び図9を参照して説明する。例2の場合、敷居に相当する構造28と鴨居に相当する構造29は、内部空間18の一面の開口部分19の上下の縁に沿って、直接、加工を施すことによって形成されている。敷居に相当する構造28と鴨居に相当する構造29も、L字又は逆L字状の断面形状を有しており、これらの構造28、29は外柵部材16に対する石材加工により内部空間18を形成する際に得ることができる。
【0025】
例2における引き戸23及び閉塞部材20は、例1のものと同じである。つまり、柱状部分16bの内側には凹段部19aが形成されており、閉塞部材20は、開口部分19と柱状部分16bを合わせた大きさ、形状とほぼ一致する。柱状部分16bの内側面部分は、閉塞部材20を後部にて取り付けるための主要な接合部分となる。また、例2の閉塞部材20も、上記開口部分19から柱状部分16bに相当する前後方向の長さと上下方向の幅を有し、かつ、その一部にほぼコ字状の火入れ口21を有している。例2の場合、敷居に相当する構造28と鴨居に相当する構造29の上下に、柱状部分16bと同一の面を有しているので、閉塞部材20の接合部が前方へ延長される。上記の構造では、柱状部分16bの後端に達する長さを要しないので、閉塞部材20を短縮することができる。
【0026】
本発明の例3として、開閉手段32が開き扉31から成り、扉外枠33を金属製部材から成るものとし、扉外枠33に任意の部材から成る上記開き扉31を、ヒンジ部34を用いて開閉可能に取り付けた構造のものを示す(図10図12参照)。特に図12に詳細に示されているように、開き扉31は、石板31aを金属製の受け板31bに貼り付けて形成されており、ヒンジ部34の軸を、上記受け板31bと扉外枠33の端部にそれぞれ設けられた軸受31c、33cに通して開閉可能に組み立てられている。金属製部材の素材としては、例えば、ステンレススチール或いは真鍮などの、錆び難く、耐候性を有するものを使用することが望ましい。
【0027】
図示の例3におけるものは、開閉手段32が一体の扉ユニットを形成するようにしたもので、扉ユニットを一体として閉塞部材35の火入れ口36に嵌め込み、接着することで容易に取り付けることができる。図中、37は閉扉用の戸当たりで、扉外枠33に取り付けてあり、磁石を用いれば受け板31bを磁気吸着により固定することができる。38は摘みで、石板31aに取り付けられている。39a、39bは共に小窓を示す。しかし、小窓39a、39bが開口のままである場合には、摘み38の代わりに指を挿し入れ、開閉のため用いることも可能である。に上記の構成を有する例3の開き扉31から成る開閉手段32は、閉塞部材35の火入れ口36に取り付けられる。当該閉塞部材35は、外柵部材16、17の内側面に、柱状部分16bへの接合によって凹段部19aの部分に取り付けることで、本発明に係る外柵における燈明台装置10が完成する。よって、開き扉31から成る開閉手段32を閉塞部材35に、直接、作り付けることが可能であるから生産性も向上する。
【0028】
このように構成されている本発明の燈明台装置10では、内部空間18の内側面側から引き戸23及び開き扉31などによって構成されている開閉手段22、30、32を開いて、燭台53等を内部空間18に配置することができる(図3図6等参照)。燭台53の光は、例えば、外柵部材16、17の正面に形成された小窓20a、20b、23aなどを通して周囲を照らし、所期の目的を果たすことになる。目的に反して、光に引き寄せられる虫害を減少するか無くすには、上記小窓20a、20b、23aを、光を透過するシート状の素材によって閉塞することが好適である。また、内部空間18には、墓参に使われる、燈明以外の様々な物品も収納可能であり、墓参や墓の管理をつつがなく行うことができる。
【0029】
これまでの説明では、内部空間18の内側面側に開口部分19を設けた三例に付いて説明したが、内部空間18の正面側に開閉手段40を設けることも可能であるので、これを例4として図13図16とともに説明する。例4では、内部空間18は左外柵部材16の正面側にのみ開口部分19を有し(図15参照)、開口部分19の左側前端19lと右側前端19rに、引き戸41を配置可能な寸法差を付けて、開閉のための移動空間42を設けている。引き戸41は、開口部分19を囲むほぼコ字形の端面43に沿って開閉移動可能とされ、最も奥の左側前端19lの内縁19cを戸当たりとし、引き戸41に作り付けの突部44を外れ止めとし、さらに、閉塞部材45を恒久的な脱落防止手段として設けている。
【0030】
例4の閉塞部材45は窓型形状の火入れ口46を有しており、左側前端19lと上下の端面19d、19eにて接合して取り付けられている。故に、引き戸41の開け閉てに必要な敷居に相当する構造と鴨居に相当する構造は、開口部分の上縁と下縁の移動空間42に一体構造として備わることになる。従って、例4の場合、引き戸41は閉塞部材45の外柵部材16への取り付けによって内部に組み込まれ、その後、開いた際に突部44が開口部分19の右側前端19rの内側を戸当たりとして止まるので、落下する恐れはない。なお、引き戸41の開閉のために、戸板面に形成した凹凸模様41aを利用することができるが、図示していない摘みを設けても良いことは例3に記載したとおりである。
【0031】
さらに、図17図19を参照して、内部空間18の正面側に設けられた開き扉47から成る開閉手段48を有する例5について説明する。例5において、内部空間18は左外柵部材16の正面側にのみ開口部分19を有し(特に、図19参照)、この開口部分19を閉じる、閉塞部材49に火入れ口50が形成され、火入れ口50に例5の開閉手段48が装備されている。開き扉47は、石板47aを金属製の受け板47bに貼り付けて形成されており、ヒンジ部51の軸を、上記受け板47bと扉外枠52の端部にそれぞれ設けられた軸受47c、52cに通して開閉可能に組み立てられており、これらによって開閉手段48を構成している。金属製部材の素材としては、前記実施形態の例3と同様に、耐候性を有するものが使用される。
【0032】
例5において、開閉手段48は例3と同様に一体的な扉ユニットを構成しているので、扉ユニットを一体として閉塞部材49の火入れ口50に嵌め込み、接着することで容易に取り付けることができる。また、閉塞部材49は、開口部分19の左側前端19lと右側前端19r、上下の端面19d、19eの4面に接合して取り付けられている。例5においても、開き扉47の開閉のために、戸板面に形成した凹凸模様47dを利用することができる。また、摘みを設けても良いことは例3に記載したとおりであるが、そのようにすると、開閉の摘みが目立ち開閉構造が分かってしまい、また、品位も損なわれ勝ちになるので、摘みを設けるときには注意が必要である。
【0033】
本発明の燈明台装置10では、例4及び例5に示したように内部空間18の正面側から引き戸41及び開き扉47などによって構成されている開閉手段40、48を開き、燭台53等を内部空間18に配置することができる(図14図18等参照)。燭台53の光は、例えば、外柵部材16、17の正面に形成された小窓20a、20b、23a、41a、47dなどを通して周囲を照らすことになる。本発明の燈明台装置10に付いて、外柵部材16、17として石材を縦長の形状に形成したものとして示したが、これは墓所の入り口にふさわしい門柱をイメージしたためである。従って、その必要のない場合には、外柵部材16を、上部材16Aを下部材16Bの上に積み上げる方式として構成することができる(図20参照)。
【0034】
本発明の燈明台装置10では以上のように、内部空間18は左右対称であるから左右の区別があるが、備えるべき構成は基本的に左右で相違がないので、左の外柵部材16と右の外柵部材17を置き換えて読むことにより、右の外柵部材17にも左の外柵部材16と同じ構成が備えられることを、容易に理解することができるであろう。以上のように、本発明の燈明台装置10では、閉塞部材20、26、35、49が、外柵部材16、17の内部空間18の開口部分19を全体的に覆っており、開閉手段22、30、32、48の引き戸23、41や開き扉31、47が外れないように構成されているので、石造の墓所設備の恒久性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る墓石の外柵における例1の燈明台装置を示す墓所設備の斜視図である。
図2】同上における例1の燈明台装置の閉状態を示す部分斜視図である。
図3】同じく例1の開状態を示す部分斜視図である。
図4】同じく例1のものを左方から見た斜視図である。
図5】同じく例1のものを分解して示した斜視図である。
図6】本発明に係る装置の例1を図5のVI−VI線の位置で切断した状態を示す断面図である。
図7】同じく例1の変形例を示す斜視図である。
図8】同じく本発明の例2の燈明台装置を分解して示す斜視図である。
図9】本発明に係る例2の装置を図8のIX−IX線の位置で切断した状態を示す部分断面図である。
図10】同じく例3の燈明台装置の閉状態を示す部分斜視図である。
図11】同じく例3の燈明台装置の開状態を示す部分斜視図である。
図12】同じく例3の燈明台装置を分解して示す斜視図である。
図13】本発明に係る例4の装置の閉状態を示す部分斜視図である。
図14】同じく例4の燈明台装置の開状態を示す部分斜視図である。
図15】同じく例4の燈明台装置を図14のXV−XVの位置で切断した状態を示す部分斜視図である。
図16】同じく例4の燈明台装置を分解して示す部分斜視図である。
図17】本発明に係る例5の装置の閉状態を示す部分斜視図である。
図18】同じく例5の燈明台装置の開状態を示す部分斜視図である。
図19】同じく例5の燈明台装置を分解して示す部分斜視図である。
図20】本発明に係る墓石の外柵部材の変形例を分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 墓石の外柵における燈明台装置
11 墓石
12 水鉢
13 花立て
14 香炉
15 外柵
16 左外柵部材
17 右外柵部材
18 内部空間
19 開口部分
20、26、35、45、49 閉塞部材
21、27、36、46、50 火入れ口
22、30、32,40、48 開閉手段
23、41 引き戸
24、28 敷居となる部分
25、29 鴨居となる部分
31、47 開き扉
33、52 扉外枠
34、51 ヒンジ部
53 燭台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20