特許第6114022号(P6114022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6114022-積層不織布 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114022
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】積層不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20170403BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20170403BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20170403BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20170403BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20170403BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   D04H3/147
   D01F8/06
   D01F8/14 Z
   B32B5/26
   A61L9/16 D
   B01D53/26 200
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-272466(P2012-272466)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-118641(P2014-118641A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森岡 辰太
(72)【発明者】
【氏名】永塚 裕介
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−240989(JP,A)
【文献】 特開2007−197028(JP,A)
【文献】 特開2004−154760(JP,A)
【文献】 特開2007−307729(JP,A)
【文献】 特開昭60−173152(JP,A)
【文献】 特開平08−216310(JP,A)
【文献】 特開2004−043985(JP,A)
【文献】 特表2006−528735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00− 18/04
D01F 8/00− 8/18
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と中間層と裏面層とを具備する積層不織布であり、
表面層と裏面層が、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなり、
中間層が、前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体からなり、
前記表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによって前記表面層と前記中間層とが貼合されていると共に、前記中間層の反対側に位置する前記表面層の面は比較的平滑になっており、
前記裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは芯成分から分離せず軟化又は溶融して固化し、前記裏面層と前記中間層とが貼合されていると共に、前記中間層の反対側に位置する前記裏面層の面に前記裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンが露出していることにより、前記裏面層がヒートシール層として機能しうることを特徴とする積層不織布。
【請求項2】
表面層及び裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点は120℃〜140℃であり、芯成分であるポリエステルの融点250℃〜260℃であり、極細繊維を構成するポリプロピレンの融点は150℃〜170℃であり、また極細繊維を構成するポリブチレンテレフタレートの融点は220℃〜240℃である請求項1記載の積層不織布。
【請求項3】
耐水圧が400mmHO以上であることを特徴する請求項1〜2のいずれかに記載の積層不織布。
【請求項4】
通気度が1cc/cm・秒以上であることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の積層不織布。
【請求項5】
平均孔径が1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層不織布。
【請求項6】
請求項1〜5記載の積層不織布の裏面層同士を重ね合わせ、ヒートシールによって接合されてなる袋状物。
【請求項7】
吸湿性微粉末が収納されてなる請求項6記載の袋状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性、透湿性、耐水性に優れ、脱臭剤や乾燥剤等の粉末を良好に収納して袋状物を得る際に好適な積層不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール処理によって製袋加工を行うことができる不織布としては、鞘部にポリエチレン、芯部にポリエステルを配した芯鞘型繊維からなる不織布が知られている(例えば、特許文献1)。このような芯鞘型繊維からなる不織布は、例えば、一種のポリマーからなる単相の繊維からなる不織布と比較して、ヒートシール部分の強度に優れ、接着強力が高い。このような芯鞘型繊維からなる不織布をヒートシールにより得られた袋状物は、各種用途に用いられるが、例えば、袋の口から粉末を収納して用いる用途では、繊維間の空隙から粉末が漏れる恐れがある。
【0003】
一方、長繊維不織布層、極細繊維不織布層及び複合長繊維不織布層の順で積層されたものが提案されている(特許文献2の請求項1)。この積層不織布は、複合長繊維不織布層をヒートシール層とするものであり、極細繊維不織布層が袋状物に収納した粉末が外部に飛散しないようにするためのフィルター層となっているものである。しかしながら、この積層不織布は極細繊維不織布層によって、長繊維不織布層及び複合長繊維不織布層を接合するもので(特許文献2の段落0026)、極細繊維不織布層が溶融しフィルム状となるものである(特許文献2の段落0042)。かかる積層不織布は極細繊維不織布層がフィルム化されるので、通気性が低下するということがあった。このため、脱臭剤や乾燥剤等の粉末を収納した袋状物として使用する場合、脱臭性能や乾燥性能が低下するということがあった。また、フィルム化された箇所に亀裂が入ると、袋状物に収納した粉末(特に微粉末)が外部に飛散する恐れがあった。
【0004】
また、特許文献2に記載された積層不織布は、長繊維不織布層、極細繊維不織布層及び複合長繊維不織布層を部分的熱圧着 (エンボスロールと平滑ロールとを用いて行う熱圧着)で一体化するもので、長繊維不織布層表面が凹凸状態となっており、印刷適性に劣るということがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平8−14069号公報
【特許文献2】再公表WO2007/086429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記問題に鑑みて、特許文献2記載と同様の三層構造の積層不織布でありながら、特定の素材からなる芯鞘型複合長繊維と特定の素材からなる極細繊維を用いて、極細繊維不織布層をフィルム化させることなく一体化でき、通気性の低下や粉末の外部飛散を防止しうる積層不織布を提供するものである。さらには、表面が平滑で印刷適性の良好な積層不織布を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面層と中間層と裏面層とを具備する積層不織布であり、
表面層と裏面層が、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなり、
中間層が、前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体からなり、
前記表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによって前記表面層と前記中間層とが貼合されていると共に、前記中間層の反対側に位置する前記表面層の面は比較的平滑になっており、
前記裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは芯成分から分離せず軟化又は溶融して固化し、前記裏面層と前記中間層とが貼合されていると共に、前記中間層の反対側に位置する前記裏面層の面に前記裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンが露出していることにより、前記裏面層がヒートシール層として機能しうることを特徴とする積層不織布を要旨とするものである。
【0008】
[表面層について]
表面層は、本発明に係る積層不織布を用いて、例えば袋状物を得たとき、袋状物の外層となるものである。表面層は、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。高密度ポリエチレンの融点は140℃以下であるのが好ましい。高密度ポリエチレンの融点が140℃を超えると、積層不織布を製造する際に、極細繊維の軟化又は溶融を防止しながら、高密度ポリエチレンを溶融させて極細繊維相互間に食い込ませにくくなる。なお、高密度ポリエチレンの下限は120℃程度がよい。
【0009】
芯成分であるポリエステルの融点は、250℃〜260℃であるのが好ましい。この程度の融点であると、高密度ポリエチレンとの融点差が大きく、高密度ポリエチレンが溶融し芯成分であるポリエステルから分離して、極細繊維相互間に食い込んでいくような熱量を与えても、ポリエステルが軟化あるいは溶融することなく、また劣化することなく、当初の繊維形態を維持する。これにより、表面層における表面(中間層の反対側に位置する面)のフィルム化を防止しうるので好ましい。また、表面層における表面には、高密度ポリエチレンが溶融し極細繊維相互間に食い込んでいくような熱量が与えられるため、これら表面は平滑化され、印刷適性に優れたものとなる。
【0010】
芯鞘型複合長繊維の芯成分と鞘成分の重量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=0.25〜4:1であるのが好ましく、特に芯成分:鞘成分=0.4〜2.5:1であるのがより好ましく、芯成分:鞘成分=1:1であるのが最も好ましい。鞘成分の重量比がこの範囲を超えて少なくなると、鞘成分が極細繊維相互間に食い込みにくくなる傾向が生じる。また、鞘成分の重量比がこの範囲を超えて多くなると、表面層がフィルム化する恐れが生じる。
【0011】
芯鞘型複合長繊維の繊維径は任意であるが、引張強度等の物性面から、1〜7dtexであるのが好ましい。繊維径が1dtex未満であると、表面層の引張強度が低下する傾向が生じる。また、繊維径が7dtexを超えると、芯鞘型複合長繊維相互間の間隙が大きくなり、表面層の表面を平滑化しにくくなる傾向が生じ、また、表面に存在する長繊維が剥がれて毛羽立ちやすくなって耐摩耗性が低下する傾向にある。
【0012】
表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、中間層を構成している極細繊維相互間に食い込んでいるので、表面層と中間層を明確に分離することは困難である。しかしながら、概ね表面層と中間層とを分離した場合、表面層の繊維量は、それぞれ10〜50g/m2であるのが好ましい。表面層の繊維量が10g/m2未満になると、中間層を隠蔽し保護する効果が低下する傾向が生じる。また、表面層の繊維量が50g/m2を超えると、過剰品質であり、得られる袋状物の重量が重くなる傾向が生じ、また、表面層の厚みが大きくなるため、中間層と積層する際の熱処理工程で、表面層の裏面(中間層側に位置する面)の鞘成分に十分に熱が伝わらない場合があり鞘成分の溶融が不足する傾向となると、中間層に鞘成分が溶融により食い込みにくい傾向となる。
【0013】
[中間層について]
中間層は、表面層と裏面層の間に挟持されているものであり、袋状物内に収納した粉末(特に微粉末)を外部へ飛散させないようにするため、フィルター層として機能するものである。また、袋状物内に流動性を有する樹脂や液体を収納して使用する場合や、オムツの各種部材の一部として使用する場合に、浸透による染み出しを抑制する機能を担うものである。すなわち、中間層は極細繊維の集積体で構成されており、極細繊維相互間の間隙は微細になっており、微粉末が透過して外部に飛散する、あるいは液状物等の浸透による染み出しを防止する。極細繊維の繊維径は、0.1〜10μmであるのが好ましく、特に0.5〜6μmであるのが好ましい。極細繊維の繊維径を0.1μm未満とするのは、製造上困難であり、得られたとしても生産性が極端に劣る。また、極細繊維の繊維径が10μmを超えると、極細繊維相互間の間隙が大きくなって、袋状物内に収納される微粉末が外部に飛散する、あるいは液状物が浸透して染み出す傾向が生じやすくなる。このような極細繊維で構成される中間層は、いわゆるメルトブロー法により得られるメルトブロー不織布が好ましく用いられる。
【0014】
極細繊維はポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる。ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の融点は、表面層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも高くなっている。 したがって、高密度ポリエチレンが溶融して、極細繊維相互間に食い込んでも、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維は、軟化又は溶融せずに、当初の極細繊維形態を維持している。よって、極細繊維の集積体が持つフィルター機能を十分に発揮するのである。ポリプロピレンよりなる極細繊維の融点は、表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも約10℃〜50℃高く、150℃〜170℃であるのが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の融点は、当該高密度ポリエチレンの融点よりも約80℃〜120℃高く、220℃〜240℃であるのが好ましい。
【0015】
中間層の繊維量は、5〜100g/m2であるのが好ましく、特に10〜50g/m2であるのが好ましい。中間層の繊維量が5g/m2未満であると、極細繊維相互間で形成された微細な間隙が少なくなり、フィルター機能が低下する傾向が生じる。また、中間層の繊維量が100g/m2を超えると、中間層の内部にまで、溶融した高密度ポリエチレンが食い込みにくくなり、中間層自体が層剥離する傾向が生じる。
【0016】
[裏面層について]
裏面層は、本発明に係る積層不織布を用いて、例えば袋状物を得るとき、ヒートシール層として機能するものである。裏面層は、上述した表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の集積体と同様の芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。すなわち、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。裏面層は、ヒートシール層として機能するものであるので、芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、積層不織布の表面層に熱源を当接してヒートシールする際に、溶融する。
【0017】
裏面層と表面層とは、同様の芯鞘型複合長繊維の集積体からなるものであるが、両者は、中間層との貼合の形態が異なる。表面層は、表面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによって表面層と中間層とが貼合されていると共に、中間層の反対側に位置する表面層の面は比較的平滑になっている。これに対して、裏面層は、裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くが芯成分から分離せずに軟化又は溶融して固化することによって、中間層と貼合されている。したがって、裏面層を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは、裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)に露出しており、ヒートシールする際の接着成分として有効に機能するのである。
【0018】
裏面層における高密度ポリエチレンの融点は140℃以下であるのが好ましい。また、裏面層における高密度ポリエチレンの融点は、表面層における高密度ポリエチレンの融点と同等もしくは表面層における高密度ポリエチレンの融点以下であることが好ましい。表面層における高密度ポリエチレンの融点よりも高いと、ヒートシール時に表面層における高密度ポリエチレンが溶融して、熱源に付着する恐れがある。
【0019】
裏面層における芯鞘型複合長繊維の芯成分であるポリエステルの融点は、鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも高く、250℃〜260℃であるのが好ましい。この程度の融点であると、ヒートシール時に高密度ポリエチレンが溶融して、ポリエステルが軟化あるいは溶融することなく、また劣化することなく、当初の繊維形態を維持する。これにより、ヒートシール箇所に芯成分が繊維形態で残存しており、ヒートシール箇所の引裂強力の低下を防止しうる。
【0020】
裏面層における高密度ポリエチレンのメルトフローレート(JIS K 6922に記載の方法に準拠し、温度190℃で荷重21.18Nで測定した。)は、30g/10分以下であるのが好ましい。メルトフローレートが30g/10分を超えると、高密度ポリエチレンの流動性が高くなり、芯成分から分離する傾向が生じ、好ましくない。すなわち、裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)に残存しにくくなって、当該表面に高密度ポリエチレンが露出しにくくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。なお、メルトフローレートの下限は、芯鞘型複合長繊維の製造しやすさを考慮して、10g/10分程度がよい。
【0021】
裏面層における芯鞘型複合長繊維の芯成分と鞘成分の重量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=0.25〜4:1であるのが好ましく、特に芯成分:鞘成分=0.6〜2.5:1であるのがより好ましく、芯成分:鞘成分=1:1であるのが最も好ましい。鞘成分の重量比がこの範囲を超えて少なくなると、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、鞘成分の重量比がこの範囲を超えて多くなると、裏面層がフィルム化する恐れが生じる。
【0022】
裏面層における芯鞘型複合長繊維の繊維径は任意であるが、1〜7dtexであるのが好ましい。繊維径が1dtex未満であると、芯鞘型複合長繊維の鞘成分の絶対量が少なくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、繊維径が7dtexを超えると、裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)に凹凸が生じやすくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。
【0023】
裏面層と中間層も明確に分離することは困難であるが、概ね裏面層と中間層とを分離した場合、裏面層の繊維量は、10〜70g/m2であるのが好ましい。裏面層の繊維量が
10g/m2未満になると、裏面層における芯鞘型複合長繊維の鞘成分の絶対量が少なくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、裏面層の繊維量が70g/m2を超えると、過剰品質であり、得られる袋状物の重量が重くなる傾向が生じる。
【0024】
[積層不織布の製造方法について]
本発明に係る積層不織布は、たとえば、以下の方法で得ることができる。まず、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる芯鞘型複合長繊維の集積体(表面層用)及び同様の芯鞘型複合長繊維の集積体(裏面層用)、高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体(中間層用)を準備する。集積体(表面層用)及び集積体(裏面層用)は、芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸法で形成し、これを集積して長繊維相互間を接着する、いわゆるスパンボンド法で得ることができる。長繊維相互間の接着は、芯鞘型複合長繊維の鞘成分の軟化又は溶融により、行うことができる。集積体(中間層用)は、溶融させた樹脂を高速高温空気で吹き付けて細化し極細繊維として集積する、いわゆるメルトブロ一法で得ることができる。極細繊維相互間は、紡糸時の極細繊維自体の粘着性によって接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。
【0025】
次に、集積体(裏面層用)と集積体(中間層用)を積層した二層積層体を、集積体(裏面層用)が金属製加熱平滑ロール側に位置するようにして、弾性非加熱平滑ロールと金属製加熱平滑ロールとの間に挟んで加熱および加圧し、集積体(裏面層用)中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分を溶融させるが鞘成分の多くが芯鞘型複合長繊維の芯成分から分離することなく、集積体(中間層用)に貼合せる。ここで集積体(中間層用)側を、弾性非加熱平滑ロールに接触させる理由は、この加熱加圧工程によって、集積体(中間層用)の繊維相互間が密着して集積体(中間層用)表面がフィルム化したり、ぺーパーライクにならないようにするためである。よって、この加熱加圧工程によって、集積体(中間層用)を構成する繊維相互間は密着せずに繊維形態を保持した状態で堆積されており、通気性は低下しない。
【0026】
その後、得られた2層積層体の集積体(中間層用)面に集積体(表面層用)を積層し、集積体(表面層用)が加熱ロール側に位置するように供給し、3層の集積体が積層してなる積層体を加熱ロールに沿わせ、集積体(表面層)に最も多くの熱が加わるように加熱処理し、集積体(表面層)中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分を、鞘成分の多くを芯成分から分離する程度に溶融させ、集積体(中間層)中の極細繊維相互間に食い込ませるように加熱し、次いで、3層の積層体を金属製加熱平滑ロールと弾性非加熱平滑ロールとの間に挟み加熱および加圧し、集積体(表面層)中の芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが溶融させて芯成分から分離させ、その溶融した鞘成分を集積体(中間層)中の極細繊維相互間に食い込ませ、かつ3層として一体化させる。このとき、金属製加熱平滑ロール側に集積体(表面層)が接するように配置する。なお、集積体(表面層)を加熱ロールに沿わせて加熱する工程と、3層を一体化させるための金属製加熱平滑ロールと弾性非加熱平滑ロールとの間で加熱加圧処理する工程は、同一工程とし、加熱ロールと金属製加熱平滑ロールとして同一のものを用いることもできる。すなわち、三層の集積体が積層してなる積層体を加熱ロールに沿わせて加熱熱処理し、加熱ロールの周面から離れる直前に、弾性非加熱平滑ロールと加熱ロールの間に挟んで加圧することもできる。
【0027】
その後、集積体(表面層)、集積体(中間層)及び集積体(裏面層)の順で積層された三層積層体を冷却し、集積体(表面層)及び集積体(裏面層)の芯鞘型複合長繊維の鞘成分を固化させる。このときの圧力は、集積体(中間層)自体が層剥離しない程度、かつ、通気性が本発明の範囲に収まるように適宜調整する。
【0028】
これによって集積体(表面層)の芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、集積体(中間層)中の極細繊維相互間に食い込んだ状態で固化し、また、集積体(裏面層)の芯鞘型複合長繊維の鞘成分は溶融固化することにより集積体(中間層)と貼り合わされて、集積体(表面層)、集積体(中間層)及び集積体(裏面層)の順で貼合され一体化された積層不織布が得られるのである。
【0029】
本発明に係る積層不織布は、表面層、中間層及び裏面層の順で積層されてなるものであり、裏面層がヒートシール層として機能するものである。したがって、この裏面層同士を重ね合わせて、周縁をヒートシールして接着すると袋状物となる。また、この袋状物の中に炭や活性炭、クレイ(粘土)等の吸湿性粉末や脱臭性粉末を収納しておけば、各種食品等と共に包装することによって、吸湿材や脱臭材となる。特に、中間層が極細繊維の集積体よりなるため、吸湿性微粉末や脱臭性微粉末を収納してもこれが外部に飛散しにくく、好ましい。さらには、袋状物の中に流動性を有する樹脂や液体を収納して使用する場合や、オムツの各種部材の一部として使用する場合に、浸透による染み出しを抑制しやすく、好ましい。また、極細繊維の集積体がフィルム化していないので、1cc/cm2・秒以上の通気度(JIS L1096A法フラジール形法)があり、吸湿性能や脱臭性能が低下しない。なお、通気度の上限は、20cc/cm2・秒程度がよい。また、耐水圧(JIS L1092静水圧法)が400mmH2O(mmAq)以上であり、液状物の浸透による染み出しを抑制することが可能である。
【0030】
さらに、積層不織布における平均孔径(ASTM F−361−86に基づき測定されるミーン・フロー・ポアサイズ(MFP)を平均孔径とする。本発明においては、パーム・ポロメーター(POROUS MATERIALS,INC製)を用いて測定した。)が1〜20μmであることが好ましい。より好ましくは5〜15μmである。平均孔径が20μmを超えて大きいと、通気度及び耐水圧を上記の範囲を保ちにくい傾向となり、また微細な粉末の漏れが生じる傾向となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る積層不織布は、表面層、中間層及び裏面層の順で積層されてなり、表面層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分の一部が芯成分から分離して中間層の極細繊維相互の間隙に食い込んで中間層の極細繊維と貼合され、表面層、中間層及び裏面層が一体化している。したがって、中間層を構成している極細繊維は溶融固化しておらず繊維形態を維持しており、また表面層及び裏面層の芯鞘型複合長繊維の芯成分も当初の繊維形態を維持した状態で、 表面層、中間層及び裏面層が一体化している。この積層不織布は、各層がフィルム化しておらず、特に中間層がフィルム化していないため、通気性の低下が少ない。
【0032】
よって、本発明に係る積層不織布を用い、脱臭剤や乾燥剤等の粉末を収納して袋状物とした場合、脱臭性能や乾燥性能が低下しにくいという効果を奏する。また、フィルム化されておらず、当初の繊維形態を維持しているので、折り曲げ等によって亀裂が入りにくく、袋状物に収納した粉末(特に微粉末)が外部に飛散しにくいという効果を奏する。また、耐水性も有することから、液状物の浸透による染み出しも抑制することができる。
【0033】
さらに、裏面層の芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くは、芯成分から分離せずに残存しているため、ヒートシール層として有効に機能し、十分な接着力を実現しうるものである。
【0034】
また、表面層の表面は平滑性に優れているため、印刷適性も良好であり、また、滑り性が良いため摩擦抵抗が少なく、毛羽立ちにくいという効果を奏する。
【実施例】
【0035】
実施例1
[繊維集積体(裏面層用)の準備]
融点256℃のポリエステルと融点134℃でありMFRが24g/分の高密度ポリエチレンを、複合溶融紡糸装置に導入し、ポリエステルを芯成分とし高密度ポリチレンを鞘成分とする芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸すると共に、コンベア上に集積して長繊維ウェブを得た後、エンボス装置に長繊維ウェブを導入し、芯鞘型複合長繊維相互間を部分的に圧接して繊維集積体を、スパンボンド法により得た。なお、芯鞘型複合長繊維の繊維径は3.3dtexであり、芯成分と鞘成分の重量比は1:1であった。また、繊維集積体の目付は20g/m2であった。
【0036】
[繊維集積体(表面層用)の準備]
融点256℃のポリエステルと融点134℃の高密度ポリエチレンを、複合溶融紡糸装置に導入し、ポリエステルを芯成分とし高密度ポリチレンを鞘成分とする芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸すると共に、コンベア上に集積して長繊維ウェブを得た後、エンボス装置に長繊維ウェブを導入し、芯鞘型複合長繊維相互間を部分的に圧接して繊維集積体を、スパンボンド法により得た。なお、芯鞘型複合長繊維の繊維径は3.3dtexであり、芯成分と鞘成分の重量比は1:1であった。また、繊維集積体の目付は20g/m2であった。
【0037】
[繊維集積体(中間層)の準備]
融点163℃のポリプロピレンをメルトブローダイに導入し、ダイ中から加熱空気を吹き付けて極細繊維を形成し、コンベア上に集積して繊維集積体を得た。極細繊維の繊維径は3μmであり、繊維集積体の目付は20g/m2であった。
【0038】
[3層の積層]
繊維集積体(裏面層用)と繊維集積体(中間層用)を積層した二層積層体を、繊維集積体(裏面層用)が金属製加熱平滑ロール側となるように、弾性非加熱平滑ロールと金属製加熱平滑ロールで挟んで加圧した。金属製加熱平滑ロールの周面温度は140℃とした。
【0039】
次いで、この二層積層体の繊維集積体(中間層用)側に繊維集積体(表面層用)を積層し、3層積層体を、金属製加熱平滑ロールの周面に当接させて加熱処理を施した。このとき、繊維集積体(表面層)側が金属製加熱平滑ロールに当接するようにして処理した。なお、金属製加熱平滑ロールの周面温度は135℃とした。
【0040】
次に、三層積層体が当該周面に沿って搬送されると共に加熱され、金属製加熱平滑ロールの周面から離れる直前に、弾性非加熱平滑ロールと金属製加熱平滑ロールの間に挟んで加圧した。 加圧後、搬送すると共に冷却され、巻取ロールに巻き取って積層不織布を得た。なお、この積層不織布は、通気度が4cc/cm2・秒程度、耐水圧が600mmH20、平均孔径が9μm程度であった。
【0041】
実施例2
繊維集積体(中間層)の極細繊維の繊維径を1μmとした他は、実施例1と同一の方法により、積層不織布を得た。なお、この積層不織布は、通気度が2cc/cm2・秒、耐水圧が800mmH2Oであった。
【0042】
実施例3
繊維集積体(中間層)の目付を30g/m2とした他は、実施例1と同一の方法により、積層不織布を得た。なお、この積層不織布は、通気度が2cc/cm2・秒、耐水圧が800mmH2Oであった。
【0043】
実施例4
融点226℃のポリブチレンテレフタレートをメルトブローダイに導入し、ダイ中から加熱空気を吹き付けて極細繊維を形成し、コンベア上に集積して繊維集積体(中間層用)を得た。極細繊維の繊維径は4μmであり、繊維集積体(中間層用)の目付は20g/m2であった。
実施例1で用いた繊維集積体(中間層)に代えて、上記のポリブチレンテレフタレート極細繊維からなる織維集積体(中間層)を用いる他は、実施例1と同一の方法により、積層不織布を得た。
【0044】
実施例1〜4で得られた積層不織布は、表面層、中間層、裏面層(素材構成は表面層と同じ)の順で積層一体化されたものである中間層を構成している極細繊維は、当初の繊維形態を維持しており、フィルム化されていないため、通気性と耐水圧に富んだ状態が維持されていた。
【0045】
図1は、積層不織布の表面層の表面(中間層の反対側に位置する面)側からの電子顕微鏡写真である。表面層を構成している芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが溶融し、背後の中間層を構成する極細繊維相互間に食い込んでいるのが観察される。図2は、積層不織布の裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)側からの電子顕微鏡写真である。裏面層を構成している芯鞘型複合長繊維は、表面層を構成している第一芯鞘型複合長繊維のように鞘成分の多くが、背後の中間層に食い込んでいないのが観察される。また、図1及び2から、中間層を構成している極細繊維は、当初の繊維形態を維持しており、フィルム化されていないことが観察される。
【0046】
比較例1
融点130℃のポリエチレンをメルトブローダイに導入し、ダイ中から加熱空気を吹き付けて極細繊維を形成し、コンベア上に集積して繊維集積体(中間層用)を得た。極細繊維の繊維径は5μmであり、繊維集積体(中間層用)の目付は30g/m2であった。
【0047】
実施例1で用いた繊維集積体(中間層用)に代えて、このポリエチレンからなる極細繊維によって構成される織維集積体(中間層用)を用いた他は、実施例1と同様にして繊維積層体を得た。得られた繊維積層体は、表裏面の鞘部が溶けて、かつ中間層の繊維も溶融して繊維形状が残存していなかった。
【0048】
そこで、2層積層体を得る加熱加圧処理の際の金属製加熱平滑ロールの周面温度を115℃に設定し、3層積層体を得る際の金属加熱平滑ロールの周面温度も115℃に設定し、繊維積層体を得た。得られた繊維積層体を観察すると、それぞれの層間の界面での接着は強固であり、剥離しなかった。中間層の繊維集積体を観察すると、極細繊維は残存せず、溶融または軟化して、表面層と裏面層とを接着する熱接着剤として機能したことが確認された。なお、中間層のポリエチレンの極細繊維は、メルトブロー法に適用するために一般に分子量が低く溶融粘度が低いため、影響を受け易すく、融点以下の加熱条件での熱処理であっても過剰に溶融流動が生じたことによる現象であると推定する。
得られた繊維積層体の通気度は4cc/cm2・秒であり、耐水圧は180mmH2Oであった。また、中間層が熱の影響により繊維形状を維持できず溶融して表裏層内へ流動により入り込んでしまい、極細繊維による細密な構造が破壊されてしまったので、耐水圧が下がったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の一例に係る積層不織布を表面層の表面(中間層の反対側に位置する面)側から観察した電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の一例に係る積層不織布を裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)側から観察した電子顕微鏡写真である。
図1
図2