(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シランカップリング剤の使用量を一定量以下としても、シリカがゴム組成物中に良好に分散し、未加硫ゴムの粘度が上がらず、良好な低発熱性と耐破壊性の両方を維持しつつ、加工性も良好となるゴム組成物及びそれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分(A)100質量部に対して、シリカを含む白色充填剤(B)を20質量部以上含有し、シランカップリング剤(C)を全シリカ含有量に対して7.5質量%以下の量で含有し、または含有せず、炭素数6以上のヒドロカルビル基と極性基とを有し、ケイ素原子を有さない化合物(D)を全シリカ含有量に対して2.5質量%以上含有し、前記化合物(D)の含有量がシランカップリング剤(C)の質量に対して65質量%以上であ
り、前記化合物(D)が、下記式(I)で表されるモノアルカノールアミドの少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【化1】
〔上記式(I)中において、R1は、炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、R2はヒドロキシアルキル基またはオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基である。〕
ゴム組成物中のシリカ量、シランカップリング剤量に対する、化合物(D)の配合量を一定量以上とすることで、使用するシリカ量及びシランカップリング剤量を減じ、かつ、ゴムの加工性を向上させることが可能である。化合物(D)が配合されることで、ゴムの粘度を低く保つことができるため、シランカップリング量を減じてもシリカを高度に分散させることが可能である。したがって、シリカ量を減じてもシリカの有する低発熱性を十分に発揮することが可能である。また、比較的少量のシリカ量でその効果を奏しやすいことから、加硫速度の遅延、ゴムの加工性の低下を生じにくい、という効果を有する
。
【0006】
特に上記式(I)で表されるモノアルカノールアミドを使用した場合に、ゴムの加工性向上の効果が高いことが、発明者らの検討により明らかとなった。
【0007】
前記化合物(D)には、下記式(II)で表される3級アミン化合物を含有させることができる。
【化2】
〔上記式(II)において、R
3、R
4、R
5は、それぞれメチル基、炭素数8〜36のアルキル基、炭素数8〜36のアルケニル基、シクロヘキシル基、及びベンジル基のいずれか一つを表し、R
3、R
4、R
5は同じであっても異なっていてもよい。〕
上記式(II)で表される3級アミンを使用した場合においても、ゴム加工性向上効果がみられることが判明した。
【0008】
前記化合物(D)には、分子中にカルボキシル基を少なくとも一つ有する、脂肪族多価カルボン酸またはその無水物と(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのエステルを含有させることができる。
分子中にカルボキシル基を少なくとも一つ有する、脂肪族多価カルボン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのエステルを使用した場合においても、ゴム加工性向上効果がみられることが判明した。
【0009】
前記式(I)のR
1の炭素数が13以下であることが好ましい。R
1の炭素数を13以下とすることで、ゴムの加工性向上効果がより高まりやすい。
【0010】
前記化合物(D)の含有量は、シランカップリング剤(C)の含有量に対して100質量%以上とすることが好ましい。化合物(D)の配合量を多くすることで、より加工性向上効果を高めることが可能である。
【0011】
前記ゴム成分(A)は、天然ゴムを含むことが好ましい。本発明は、特に天然ゴムを高度に配合したゴム組成物において、高い加工性向上効果を奏するものである。
【0012】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のゴム組成物をタイヤ部材に用いてなる、ことを特徴とするタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シランカップリング剤の使用量を一定量以下としても、シリカがゴム組成物中に良好に分散し、未加硫ゴムの粘度が上がらず、良好な低発熱性と耐破壊性の両方を維持しつつ、加工性も良好となるゴム組成物及びそれを用いたタイヤを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムから選択される少なくとも一種のゴム成分(A)100質量部に対して、シリカを含む白色充填剤(B)を20質量部以上含有し、シランカップリング剤(C)を全シリカ含有量に対して7.5質量%以下含有し、または含有せず、炭素数6以上のヒドロカルビル基と極性基とを有し、ケイ素原子を有さない化合物(D)を全シリカ含有量に対して2.5質量%以上含有し、前記(D)化合物の含有量がシランカップリング剤(C)の質量に対して65%以上であ
り、前記化合物(D)が、上記式(I)で表されるモノアルカノールアミドの少なくとも一種を含有することを特徴とするものである。
【0015】
<ゴム成分(A)>
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分(A)は、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムからなる。ここで、ジエン系合成ゴムとしては、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム成分は、一種単独で用いても、二種以上をブレンドして用いてもよい。特に、ORタイヤにおいては、耐久性、耐破壊性、低発熱性の観点から、天然ゴムを高度に配合することが好ましく、100%天然ゴムにすることがより好ましい。
【0016】
<シリカを含む白色充填剤(B)>
本発明のゴム組成物に用いる白色充填剤(B)は、シリカを含有するものとする。また、前記白色充填剤(B)は、シリカの他に水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム等を含んでいてもよい。
用いることができるシリカとしては、特に制限はなく、市販のゴム組成物に使用されているものが使用でき、中でも湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等を使用することができ、特に、湿式シリカの使用が好ましい。
【0017】
白色充填剤(B)の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上であり、より好ましくは20〜60質量部の範囲であり、更に好ましくは20〜40質量部の範囲である。
白色充填剤(B)の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上であると、耐摩耗性、耐破壊性、発熱性の高度な両立を十分に奏することが可能である。一方で、ゴムの加工性を向上させる観点から、60質量部以下とすることが好ましい。
【0018】
<シランカップリング剤(C)>
また、シリカのゴム中の分散性を向上させ、ゴム組成物の粘度を低減させるために、通常はシランカップリング剤(C)が用いられる。なお、本発明は、シランカップリング剤(C)が含まれない形態も包含する。
用いることができるシランカップリング剤(C)は、特に制限なく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−ニトロプロピルジメトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
これらのシランカップリング剤(C)の含有量は、シリカ含有量に対し、7.5質量%以下とし、より好ましくは0〜6質量%とし、更に好ましくは、0〜4質量%とする。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ含有量に対し、カップリング剤を入れる効果の観点から5質量%以上とすることが好ましい。一方、補強性、発熱性を維持する観点から、また、製造コスト低減の観点から、7.5質量%以下とする。
【0020】
<化合物(D)>
本発明のゴム組成物は、さらに、炭素数6以上のヒドロカルビル基と極性基とを有し、ケイ素原子を有さない化合物(D)を含む。化合物(D)の配合により、シリカ配合ゴムの未加硫粘度を低減し、加工性を改良することが可能である。
【0021】
前記化合物(D)の炭素数6以上のヒドロカルビル基としては、ヘキシル基、イソヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ドコシル基、テトラコシル基などのアルキル基、オレイル基、テトラコシリレン基などのアルケニル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0022】
前記化合物(D)の極性基は、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基からなる群から選択されることが好ましい。特に、シリカとの親和性という観点から、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選択させることが好ましい。
【0023】
a.モノアルカノールアミド
前記化合物(D)
は、下記式(I)で表されるモノアルカノールアミド
の少なくとも一種を含有
する。
【化3】
〔上記式(I)中において、R
1は、炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、また、R
2はヒドロキシアルキル基またはオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基である。〕
【0024】
上記式(I)において、R
1は、炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、例えば、ヘキシル基、イソヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソセチル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ドコシル基、テトラコシル基などのアルキル基、オレイル基、テトラコシリレン基などのアルケニル基が挙げられ、好ましくは、炭素数6〜18、さらに好ましくは炭素数11〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、該アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよく、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセニル基等である。モノアルカノールアミドの原料となる脂肪酸としては、好ましくは、オクタン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
特に、上記アルキル基またはアルケニル基は、炭素数13以下とすることが、シリカとの親和性の観点から好ましい。
【0025】
また、式(I)において、R
2はヒドロキシアルキル基またはオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基である。前記アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基が好ましく、炭素数2〜3がより好ましい。
更に、上記式(I)中のR
2は、下記式(III)で表されるものが好ましく、R
3は炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは1〜5となる数であることが好ましい。
−(R
6O)n−H ………(III)
中でも、R
6は、エチレン基やプロピレン基が好ましく、nは1〜3となるものが好ましく、1がより好ましい。なお、n個のR
6は同一でも異なっていてもよい。
【0026】
具体的に用いることができる上記記式(I)で表されるモノアルカノールアミドとしては、オクタン酸モノエタノールアミド、オクタン酸モノイソプロパンプロパノールアミド、POE(2)オクタン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、POE(2)ラウリン酸モノエタノールアミドの少なくとも1種を挙げることができ、中でもラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、POE(2)ラウリン酸モノエタノールアミドの使用が望ましい。なお、上記式(I)で表されるモノアルカノールアミドの合成法は、既知であり、種々の製法により得ることができ、また、市販のものを使用してもよい。
【0027】
b.3級アミン化合物
前記化合物(D)としては、下記式(II)で表される3級アミン化合物を含有させてもよい。
【化4】
〔上記式(II)において、R
3、R
4、R
5は、それぞれ、メチル基、炭素数8〜36のアルキル基、炭素数8〜36のアルケニル基、シクロヘキシル基、及びベンジル基のいずれか一つを表し、R
3、R
4、R
5は同じであっても異なっていてもよい。〕
具体的には、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジメチルオクタデセニルアミン、ジメチルヘキサデセニルアミンなどが挙げられる。好ましくは、R
3 、R
4 がメチル基で、R
5 が炭素数12〜36のジメチルアルキルアミンである3級アミン化合物であり、更に好ましくは、引火点と低発熱性、分散改良の面からジメチルステアリルアミンである。
【0028】
c.分子中にカルボキシル基を少なくとも一つ有する、脂肪族多価カルボン酸またはその無水物と(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのエステル
前記化合物(D)としては、分子中にカルボキシル基を少なくとも一つ有する、脂肪族多価カルボン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのエステルを含有させてもよい。具体的には、下記式(IV)で表されるものを好適に使用できる。
【化5】
〔式(IV)中、mは平均重合度を表わす1以上の数であり、n及びpはそれぞれ1以上の整数を示し、Aは飽和または不飽和の脂肪族鎖、R
7はアルキレン基、R
8 は炭素数6以上のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアシル基である。〕
前記一般式(IV)において、より好ましくは、Aが不飽和結合を有する脂肪族鎖であり、更に好ましくはn=1、p=1、R
7 が炭素数2〜4のアルキレン基、R
8が炭素数6〜28のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくはAが不飽和結合を有する炭素数2〜8の脂肪族鎖であり、mが1〜10、R
7 がエチレン基またはプロピレン基、R
8が炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基である。
【0029】
前記エステルは、(i)脂肪族多価カルボン酸、即ち2価以上の脂肪族カルボン酸またはその無水物と、(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体とを反応させることで得られる。ここで、(i)脂肪族多価カルボン酸またはその無水物としては、(無水)コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族二価カルボン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、(無水)アルケニルコハク酸などの不飽和脂肪族二価カルボン酸、マレイン化脂肪酸などの脂肪族三価カルボン酸またはこれらの無水物などが挙げられるが、不飽和結合を有する二価のカルボン酸またはその無水物であることが好ましく、無水マレイン酸であることが最も好ましい。上記(i)脂肪族多価カルボン酸またはその無水物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体としては、例えば、1個以上の水酸基を持った平均重合度1以上の(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物が挙げられ、好ましくは1〜2個の水酸基を持った(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物であり、特に好ましくは1個の水酸基を持った(ポリ)オキシアルキレン基を有する化合物である。(ポリ)オキシアルキレン誘導体としては、(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル型;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸モノエステルなどのエステル型;(ポリ)オキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸アミド、(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミンなどの含窒素型などが挙げられるが、本発明で使用する(ポリ)オキシアルキレン誘導体としてはエーテル型とエステル型が好ましく、エーテル型が特に好ましい。
【0031】
エーテル型の(ポリ)オキシアルキレン誘導体としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレン脂肪族エーテル;ポリオキシエチレンベンジルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテルなどのポリオキシアルキレン芳香族エーテルなどが挙げられるが、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルが好ましい。さらにはポリオキシエチレンアルキルまたはアルケニルエーテル及びポリオキシプロピレンアルキルまたはアルケニルエーテルが好ましく、特にポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンの平均重合度が1〜10、アルキル基またはアルケニル基の炭素数が8〜18であることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンをPOE(q)、ポリオキシプロピレンをPOP(r)と略し、q,rを各々平均重合度とすれば、POE(3)オクチルエーテル、POE(4)2−エチルヘキシルエーテル、POE(3)デシルエーテル、POE(5)デシルエーテル、POE(3)ラウリルエーテル、POE(8)ラウリルエーテル、POE(1)ステアリルエーテル、POP(3)ラウリルエーテル、POP(5)ミリスチルエーテルなどが挙げられる。上記(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。また、本発明の(i)脂肪族多価カルボン酸またはその無水物と(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのエステル(b)は、原料の(i)脂肪族多価カルボン酸またはその無水物を含有してもよい。該脂肪族多価カルボン酸またはその無水物の含有量は好ましくはエステル(b)に対して10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。一方、(i)脂肪族多価カルボン酸またはその無水物と(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのエステル(b)は、原料の(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体を含有してもよい。該(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体の含有量は好ましくは40質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0032】
上記a.〜c.の化合物(D)の具体例のうち、特にa.モノアルカノールアミドを含有させることが、ゴム加工性の向上効果の観点で好ましい。
【0033】
本発明のゴム組成物における化合物(D)の含有量は、シリカ含有量に対して、2.5質量%以上、特に好ましくは2.5〜50質量%、更に好ましくは10〜50質量%とする。また、ゴム成分100質量部に対しては、0.5〜15質量部、特に1〜10質量部、さらに2〜10質量部、よりさらに3〜10質量部の化合物(D)を配合することが好ましい。
この化合物(D)の含有量を、シリカ含有量に対して2.5質量%以上とすることで、未加硫粘度低減効果を奏することができる。一方で、化合物(D)の含有量をシリカ含有量に対して75質量%以下することで、ゴム組成物の加硫速度への影響を小さく維持することができる。
【0034】
また、本発明のゴム組成物における化合物(D)の含有量は、シランカップリング剤(C)の含有量に対して、65質量%以上、より好ましくは100質量%以上、さらに好ましくは125質量%以上とする。シランカップリング剤の量に対して、化合物(D)を65質量%以上含有させることで、未加硫ゴムの作業性と、耐破壊性の高度な両立という効果が得られる。
【0035】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分(A)、シリカを含む白色充填剤(B)、シランカップリング剤(C)、炭素数6以上のヒドロカルビル基と極性基とを有し、ケイ素原子を有さない化合物(D)の他に、ゴム組成物の製造に通常使用される配合剤、例えば、補強性充填剤、老化防止剤、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜選択して含有することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0036】
前記補強性充填剤としては、例えば、カーボンブラックなどが使用できる。用いることができるカーボンブラックは、特に制限なく、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFなどのグレードを用いることができる。これらのカーボンブラックの含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、前記ゴム成分100質量部に対し、0〜60質量部、更に好ましくは、10〜50質量部であることが望ましい。なお、発熱性を維持する観点から、60質量部以下が好ましい。
【0037】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)と、シリカの含む白色充填剤(B)と、シランカップリング剤(C)と、炭素数6以上のヒドロカルビル基と極性基とを有し、ケイ素原子を有さない化合物(D)と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練り、熱入れ、押出等することにより得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部分等のタイヤ部材の用途をはじめ、防振ゴム、ベルト,ホースその他の工業製品等の用途にも用いることができる。
【0038】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種配合剤を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でタイヤ部材として、例えば、トレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。このようにして得られた本発明のタイヤは、低発熱性に優れるので、低燃費性が良好であると共に、該ゴム組成物の加工性が良好であるので、生産性にも優れたものとなる。特に、天然ゴムを高度に使用するORタイヤにおいては、低発熱性を損なうことなく使用するシランの量を減じることができることから、シラン量に由来する欠け等の破壊を有効に防止することも可能となる。
【実施例】
【0039】
次に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
〔化合物(D)の調製〕
(モノアルカノールアミド:製造例1)
500mLの4つ口フラスコにラウリン酸メチル350g(1.63モル)、及び2−アミノ−1−プロパノール122.6g(1.63モル)を仕込み、得られた混合物の0.05質量%のナトリウムメトキシドを加えて、減圧(45mmHg)/窒素雰囲気下、85℃で7時間攪拌して反応により生成したメタノールを除去した。その後、触媒のナトリウムメトキシドを当量のリン酸で中和、濾過を行い、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド396gを得た。
【0041】
(3級アミン化合物)
3級アミン化合物としては、ファーミンDM8098(ジメチルステアリンアミン、花王社製)を使用した。
【0042】
(エステル化合物)
エステル化合物としては、マレイン酸モノエステル[花王社製]を使用した。
【0043】
〔実施例1〜
4、参考例5〜8、実施例9及び比較例1,2〕
下記表1に示す配合処方で常法により、ゴム組成物を調製した。表中の数値は質量部である。得られた各ゴム組成物について、下記測定方法により、未加硫ゴム粘度の測定を行った。また、得られたゴム組成物を145℃で33分間加硫し、得られた加硫ゴムに対し、下記測定方法により低発熱性(tanδ)、耐摩耗性、耐破壊性の試験を行った。
これらの結果を下記表1
に示す。
【0044】
〔未加硫ゴム粘度の測定方法〕
未加硫ゴム粘度、スコーチタイムの測定は、JIS K 6300−1:2001(ムーニー粘度、ムーニースコーチタイム)に準拠して行った。
【0045】
〔低発熱性(tanδ)の試験方法〕
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzでtanδを測定し、各表における比較例1の値をそれぞれ100として指数表示した。この値が小さい程、低発熱性が良好であることを示す。
【0046】
〔耐摩耗性の試験方法〕
表1に示す配合処方のゴム組成物をトレッドに用い、通常の加硫条件で加硫して、サイズ1000R20 14PRの重荷重用タイヤを作成し、下記に示す方法で耐摩耗性を評価した。
供試タイヤを悪路上で6000km走行させた後、タイヤの摩耗1mm当りの走行距離から、下記の式:
耐摩耗性指数=(供試タイヤの走行距離/摩耗量)/(比較例1のタイヤの走行距離/摩耗量)
により耐摩耗性指数を算出した。指数値が大きい程、摩耗が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0047】
〔耐破壊性の試験方法〕
各加硫ゴムについて、JIS K 6301−1995に準拠して室温で引張試験を行って引張り強さ(Tb)を測定し、各表における比較例1の引張り強さをそれぞれ100とした場合の指数を示した。指数値が大きい程、耐破壊性が良好であることを示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1の*1〜*11は下記のとおりである。
*1)RSS#3
*2)シースト7HM〔東海カーボン社製〕
*3)東ソーシリカ株式会社製「ニプシールVN3」
*4)ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*5)ノクラック6C〔大内新興化学工業社製〕
*6)ノンフレックスRD−S〔精工化学社製〕
*7)ノクセラーDM〔大内新興化学工業社製〕
*8)サンセラーCM−G〔三新化学工業社製〕
*9)製造例1の化合物
*10)ファーミンDM8098〔ジメチルステアリルアミン、花王社製〕
*11)マレイン酸モノエステル[花王社製]
【0050】
上記表1から明らかなように、化合物(D)を含まない比較例1と比して、実施例1,2,4
,9において、未加硫ゴムの粘度が低く抑えられることが分かった。シランカップリング剤の量を減じても、一定量以上の化合物(D)を添加することで、未加硫ゴムの粘度が低く抑えられ、良好な加工性を奏することが判明した。また、シランカップリング剤を配合していない場合においても(実施例3)、未加硫ゴムの粘度は比較例1と同等に抑えられ、その加工性が損なわれないことが判明した。さらに、シランカップリング剤の量を減じても、また、シランカップリング剤を添加しなくても、良好な低発熱性、耐摩耗性を奏すると共に、比較例と比して同等以上の良好な耐破壊性を奏することが判明した。以上より、本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤の使用量が一定以下であっても、未加硫ゴムの粘度を上げず、また、加硫速度を遅延させることなく、良好な低発熱性と耐破壊性を維持しつつ、良好な加工性を有するゴム組成物となることが判明した。