(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、被写体中に点滅部分が含まれている場合であっても、この点滅部分による外乱の影響を除去して、偏光フィルタの回転角度位置を精密に制御することができる撮影装置及び偏光フィルタの回転角度位置制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、偏光フィルタを予備回転駆動したときの被写体輝度信号をそのまま利用して偏光フィルタの回転角度位置を制御するという従来の技術常識を見直して、偏光フィルタを所定の周期パターンで予備回転駆動(非等速回転もしくは等速回転またはこれらの組み合わせ)したときの被写体輝度信号を検出し、この被写体輝度信号のうち上記所定の周期パターンと異なる周期パターンの周波数成分を除去した回転制御用信号を生成し、この回転制御用信号に基づいて偏光フィルタの回転角度位置を制御する、という着眼に基づいて完成されたものである。
【0007】
本発明の撮影装置は、撮像素子を備えた撮影光学系と、前記撮影光学系の光路上で光軸を中心に回転する偏光フィルタと、前記偏光フィルタを
所定の非等速周期パターンで予備回転駆動させる回転駆動部と、前記偏光フィルタを
前記所定の非等速周期パターンで予備回転駆動させたときに、前記偏光フィルタを透過して前記撮像素子で得られる被写体の輝度信号を検出する検出部と、前記検出部が検出した被写体輝度信号のうち、
前記所定の非等速周期パターンと異なる周期パターンの周波数成分を除去した回転制御用信号を生成する生成部と、前記生成部が生成した回転制御用信号に基づいて、前記偏光フィルタの回転角度位置を制御する制御部と、を
備え、前記回転駆動部は、前記所定の非等速周期パターンによる予備回転駆動において、前記偏光フィルタを第1の回転速度で第1の回転角度だけ回転させた後に、この第1の回転速度と異なる第2の回転速度で第2の回転角度だけ回転させる、ことを特徴としている。
【0008】
より具体的に、前記生成部は、前記検出部が検出した被写体輝度信号のうち、前記偏光フィルタを
前記所定の非等速周期パターンで予備回転駆動したときの偏光状態に対応する輝度信号と周期または位相が異なる周波数成分を除去した回転制御用信号を生成することが好ましい。
【0009】
「
偏光フィルタを所定の非等速周期パターンで予備回転駆動させる」とは、偏光フィルタの異なる回転速度を連続的に切り替える態様のほか、この偏光フィルタの回転速度の切り替え時に所定の回転停止期間を設ける態様を含む概念で使用する。例えば前記回転駆動部は、
前記所定の非等速周期パターンによる予備回転駆動において、前記偏光フィルタを第1の回転速度で90°回転させた後に、この第1の回転速度を2倍にした第2の回転速度で90°回転させることができる。この場合、第1の回転速度と第2の回転速度の切り替えは必ずしも連続的に行う必要はなく、第1の回転速度と第2の回転速度の切り替え時に所定の回転停止期間を設けてもよい。
【0011】
本発明の偏光フィルタの回転角度位置制御方法は、
撮像素子を備えた撮影光学系の光路上で光軸を中心に回転する偏光フィルタの回転角度位置制御方法において、前記偏光フィルタを
所定の非等速周期パターンで予備回転駆動させるステップと、前記偏光フィルタを
前記所定の非等速周期パターンで予備回転駆動させたときに、前記偏光フィルタを透過して前記撮像素子で得られる被写体の輝度信号を検出するステップと、検出した被写体輝度信号のうち、
前記所定の非等速周期パターンと異なる周期パターンの周波数成分を除去した回転制御用信号を生成するステップと、生成した回転制御用信号に基づいて、前記偏光フィルタの回転角度位置を制御するステップと、を
有し、前記偏光フィルタを前記所定の非等速周期パターンで予備回転駆動させるステップでは、前記偏光フィルタを第1の回転速度で第1の回転角度だけ回転させた後に、この第1の回転速度と異なる第2の回転速度で第2の回転角度だけ回転させる、ことを特徴と
している。
【0012】
より具体的に、前記回転制御用信号を生成するステップでは、前記検出部が検出した被写体輝度信号のうち、前記偏光フィルタを
前記所定の非等速周期パターンで予備回転駆動したときの偏光状態に対応する輝度信号と周期または位相が異なる周波数成分を除去した回転制御用信号を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被写体中に点滅部分が含まれている場合であっても、この点滅部分による外乱の影響を除去して、偏光フィルタの回転角度位置を精密に制御することができる撮影装置及び偏光フィルタの回転角度位置制御方法が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明によるデジタルカメラ(撮影装置)100のブロック図である。デジタルカメラ100は、撮影光軸Z上に位置させて、物体側から順に、固定レンズ101と、可動のフォーカシングレンズ102と、CCD(撮像素子)103とからなる撮影光学系を備えている。固定レンズ101とフォーカシングレンズ102は、入射した被写体光束をCCD103の撮像面103aに結像させる。フォーカシングレンズ102は、フォーカシングモータを含むフォーカシングレンズ駆動部102aにより駆動されて、フォーカシング時に撮影光軸Z方向に移動する。
【0018】
デジタルカメラ100は、CCD103の前方の固定レンズ101とフォーカシングレンズ102の間に、偏光フィルタ110を備えている。偏光フィルタ110は、図示しない挿脱機構によって、撮影光軸Z上(撮影光路内)に位置する挿入位置と、撮影光軸Z(撮影光路)から脱した離脱位置との間で挿脱自在である。偏光フィルタ110を挿脱する挿脱機構は、例えば特開2007−3970号公報に記載されているように周知である。
【0019】
偏光フィルタ110は、その挿入位置において、偏光フィルタ駆動部(回転駆動部)111により駆動されて、撮影光軸Z回りに回転自在である。図示していないが、偏光フィルタ駆動部111は、偏光フィルタ110を所定角度ずつステップ駆動するステッピングモータと、このステッピングモータを回転制御するモータドライバとを備えている。
【0020】
偏光フィルタ110は、例えば自身の偏光方向(偏光格子の方向)に振動する光のみを透過させる機能を持つ直線偏光フィルタである。従って、偏光フィルタ110を撮影光軸Z回りに回転させてその偏光方向(偏光格子の方向)を調整することで、CCD103に入射する被写体光束の偏光状態を変化させて、被写体の反射を低減または除去することができる。
【0021】
デジタルカメラ100は、CPU(回転駆動部、制御部)104と、A/D変換器105と、信号処理回路106と、画像記録部107と、LCDモニタ108と、撮影操作部109とを備えている。CPU104は、デジタルカメラ100の全体の機能を制御する。A/D変換器105は、CCD103の撮像面103aに結像した被写体像をアナログ信号からデジタル信号に変換して信号処理回路106に送る。信号処理回路106は、A/D変換器105から送られたデジタル信号に所定の画像処理を施して画像信号とする。この画像信号は、CPU104を介して、画像記録部107に記録され、LCDモニタ108に表示される。撮影操作部109は、例えば電源レバー、ズームスイッチ、シャッターボタン、モードダイヤルなどの撮影操作を行うものである。
【0022】
本実施形態では、偏光フィルタ110の回転制御モードとして、偏光フィルタ110の偏光効果をデジタルカメラ100が判定して自動的に回転制御するオートモードを備えている。このオートモードにおいてCPU(回転駆動部)104は、偏光フィルタ駆動部(回転駆動部)111を介して、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動(スキャニング)させる。以下では、偏光フィルタ110を180°回転(1/2回転)させるために必要な時間を「周期」と定義する。
【0023】
より具体的にCPU104は、
図2に示すように、180°(1周期)回転させるのに時間tを要する(周期t)偏光フィルタ110を360°回転(1回転)させる(要する時間は2t)。つまりCPU104は偏光フィルタ110を等速回転させる。
【0024】
あるいはCPU104は、
図3に示すように、180°(1周期)回転させるのに時間tを要する(周期t)偏光フィルタ110を90°回転(1/4回転)させた後に(要する時間は1/2t)、その回転速度を2倍にした180°(1周期)回転させるのに時間1/2tを要する(周期1/2t)偏光フィルタ110を90°回転(1/4回転)させる(要する時間は1/4t)。つまりCPU104は偏光フィルタ104を非等速回転させる。なお、
図3中では、偏光フィルタ110の回転速度を2倍にする前後で回転角のスケールが変化するため、偏光フィルタ110を周期tで回転させているときの回転角を括弧なしで示し、偏光フィルタ110を周期1/2tで回転させているときの回転角を括弧付きで示している。
【0025】
さらにデジタルカメラ100は、輝度信号検出部(検出部)120を備えている。この輝度信号検出部120は、信号処理回路106からCPU104に入力した画像信号の各画素を周波数成分として演算することで、偏光フィルタ110を透過してCCD103で得られる被写体の輝度信号を検出する。
【0026】
輝度信号検出部120が検出する被写体輝度信号は、理想的には、
図2、
図3に示すように、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターン(偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動したときの理想的な偏光状態に対応する輝度信号の周期及び位相)と同期していることが好ましい。
【0027】
ところが、
図4に示すように、被写体中に偏光部分(人物が映ったショーウインドウ)
と点滅部分(交通信号)とが含まれていると、この点滅部分が被写体輝度信号に及ぼす外乱の影響が著しく大きくなってしまう。
【0028】
すなわち、輝度信号検出部120が実際に検出する被写体輝度信号には、
図5、
図6に示すように、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと異なる周期パターンの周波数成分が外乱(ノイズ)として含まれることになる。
図5、
図6の例ではともに、偏光フィルタ110による偏光状態の理想曲線の周期tとは異なる周期1/4tで点滅を繰り返す「被写体点滅1」の周波数成分(一点鎖線)と、偏光フィルタ110による偏光状態の理想曲線と周期は同じだが異なる位相で点滅を繰り返す「被写体点滅2」の周波数成分(二点鎖線)とが外乱として含まれている。
【0029】
このため、仮にCPU104が、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号をそのまま利用すると、被写体の点滅部分による被写体輝度信号の変化を偏光フィルタ110の偏光効果によるものであると誤判定する結果、偏光フィルタ110の回転角度位置を精密に制御することができなくなってしまう。
【0030】
そこで本実施形態のデジタルカメラ100は、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号のうち、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動したときの理想的な偏光状態に対応する輝度信号(
図5、
図6の理想曲線)と周期または位相が異なる周波数成分を除去した回転制御用信号を生成する回転制御用信号生成部(生成部)130を備えている。つまり回転制御用信号生成部130は、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号のうち、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと異なる周期パターンの周波数成分を除去した回転制御用信号を生成する。この回転制御用信号生成部130は、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)などのアルゴリズムを利用することにより、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号の周波数成分を解析して、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと同期する周波数成分だけを抽出する。
【0031】
図5の例では、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号に「被写体点滅1」の周波数成分(一点鎖線)と「被写体点滅2」の周波数成分(二点鎖線)が含まれている。回転制御用信号生成部130は、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号のうち、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動したときの理想的な偏光状態に対応する輝度信号(
図5の理想曲線)と周期が異なる「被写体点滅1」の周波数成分(一点鎖線)を完全に除去することができる一方、位相は異なるが周期が一致している「被写体点滅2」の周波数成分(二点鎖線)は完全には除去することができない。それでも高速点滅を繰り返す「被写体点滅1」の周波数成分を除去することができるため、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンとある程度同期した回転制御用信号を生成することができる。
【0032】
回転制御用信号生成部130は、
図6の例では、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号のうち、回転速度を2倍にする前後を通じて、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動したときの理想的な偏光状態に対応する輝度信号(
図6の理想曲線)と周期が異なる「被写体点滅1」の周波数成分(一点鎖線)を完全に除去することができ、さらに回転速度を2倍にした後において、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動したときの理想的な偏光状態に対応する輝度信号(
図6の理想曲線)と周期が異なる「被写体点滅2」の周波数成分(二点鎖線)も完全に除去することができる。このように、「被写体点滅1」と「被写体点滅2」の周波数成分を完全に除去することで、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと完全に同期した、
図3に示すような理想的な回転制御用信号を生成することができる。
【0033】
およそ世の中に存在する点滅部分(例えば、交通信号、車のウインカー、点滅ネオンなど)は、その点滅速度に差こそあれ同一の周期で点滅を繰り返すものが多い。このため、
図2、
図5に示すように、偏光フィルタ110を等速回転させるときには、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと被写体中の点滅部分の周期パターンとが偶然一致してしまうことが有り得る。これに対し、
図3、
図6に示すように、偏光フィルタ110を非等速回転させるときには、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンに被写体中の点滅部分の周期パターンが追従して一致することは考えられないため、如何なる点滅部分を含む被写体を撮影する場合であっても、被写体中の点滅部分の周波数成分を完全に除去して、良好な撮影画像を得ることが可能になる。
【0034】
CPU(制御部)104は、回転制御用信号生成部130が生成した回転制御用信号に基づいて、偏光フィルタ110の回転角度位置を制御する。例えば、
図2、
図3中の被写体輝度信号が水面の輝度状態を示しており、水面からの反射を無くしたいときには、CPU104は、偏光フィルタ110の回転角度位置を、その被写体輝度信号の出力が最も小さい135°まで回転させる。
【0035】
続いて、
図7のフローチャートを参照して、本発明による偏光フィルタ110の回転角度位置制御方法について説明する。
【0036】
CPU104は、偏光フィルタ駆動部111を介して、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動(非等速回転もしくは等速回転またはこれらの組み合わせ)させる(ステップS1)。
【0037】
輝度信号検出部120は、偏光フィルタ110を所定の周期パターンで予備回転駆動させたときに、偏光フィルタ110を透過してCCD103で得られる被写体の輝度信号を検出する(ステップS2)。
【0038】
CPU104は、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号の中に、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと異なる周期パターンで点滅する周波数成分が含まれているか否かを判定する(ステップS3)。
【0039】
CPU104は、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号の中に、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと異なる周期パターンで点滅する周波数成分が含まれていないと判定したときは(ステップS3:NO)、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号をそのまま回転制御用信号として使用することを決定し(ステップS4)、被写体輝度信号に基づいて偏光フィルタ110の回転角度位置を制御する(ステップS5)。
【0040】
一方、CPU104は、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号の中に、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと異なる周期パターンで点滅する周波数成分が含まれていると判定したときは(ステップS3:YES)、回転制御用信号生成部130に、輝度信号検出部120が検出した被写体輝度信号のうち、偏光フィルタ110を予備回転駆動する所定の周期パターンと異なる周期パターンで点滅する周波数成分を除去した回転制御用信号を生成させる(ステップS6)。そしてCPU104は、回転制御用信号生成部130が生成した回転制御用信号に基づいて、偏光フィルタ110の回転角度位置を制御する(ステップS7)。
【0041】
以上の実施形態では、偏光フィルタ110を非等速回転させるときに、偏光フィルタ110を周期tで90°回転させた後に、その回転速度を2倍にした周期1/2tで90°回転させた場合を例示して説明した。しかし、偏光フィルタ110を非等速回転させる態様はこれに限定されず、例えば偏光フィルタ110の回転速度を3段階以上に亘って切り替える態様なども可能である。
【0042】
以上の実施形態では、主として被写体中の点滅部分による外乱の影響を除去して良好な撮影画像を得る場合を例示して説明した。しかし本発明は手ぶれ補正等による外乱の影響を除去するために用いることも可能である。例えば一般的なAFのように画面内の所定エリアを信号取得エリアとして固定したときに、この信号取得エリアから光源被写体が手ぶれによって出たり入ったりして被写体輝度信号の外乱(ノイズ)が発生することがある。本実施形態によれば、このような手ぶれ起因の外乱の影響を除去して良好な撮影画像を得ることができる。