特許第6114083号(P6114083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114083
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】油中水型固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20170403BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20170403BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20170403BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20170403BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/60
   A61K8/37
   A61K8/92
   A61K8/06
   A61Q1/00
   A61Q17/04
   A61Q19/00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-65013(P2013-65013)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-227295(P2013-227295A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-69978(P2012-69978)
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 由利子
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−145733(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102123(WO,A1)
【文献】 特開2000−072646(JP,A)
【文献】 特開2011−225562(JP,A)
【文献】 特開2001−58922(JP,A)
【文献】 特開2003−119107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を配合することを特徴とする油中水型固形化粧料。
成分(A)デキトスリンの水酸基に脂肪酸を付加させたデキストリン脂肪酸エステルとして、全脂肪酸誘導体に対して、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、該炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、該炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び該炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を0mol%以上50mol%未満反応させたものであり、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、グルコース単位当りの脂肪酸の置換度が1.5〜2.7であるデキストリン脂肪酸エステル 0.1〜5質量%
成分(B)不揮発性のジエステル油剤及び/又はトリエステル油剤 3〜40質量%
成分(C)融点75℃以上の固形ワックス 0.1〜25質量%
成分(D)水 3〜80質量%
【請求項2】
前記成分(B)がトリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、コハク酸ジ(2−エチルへキシル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸プロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上のエステル油であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型固形化粧料。
【請求項3】
さらに成分(E)0.1μm以下の微粒子金属酸化物を配合することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の油中水型固形化粧料。
【請求項4】
成分(A)が、デキトスリンの水酸基に脂肪酸を付加させたデキストリン脂肪酸エステルとして、全脂肪酸誘導体に対して、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を55mol%以上100mol%以下、及び、該炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、該炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び該炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を0mol%以上45mol%以下反応させたものである、請求項1〜3のいずれかの項記載の油中水型固形化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のデキストリン脂肪酸エステルを配合する油中水型固形化粧料に関し、特に、塗布膜の均一性に優れ、溶融充填時に粘度が高くなることによる流動性の改善や、充填冷却固化後の強度に優れる油中水型固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油中水型固形化粧料は、肌上に滑らかな化粧膜を形成できるため、化粧持続性に優れエモリエント性の高い化粧料として、ファンデーション、口紅、フェイスカラー、日焼け止め料等に汎用されてきた。近年では高年齢女性の化粧意識の高まりに伴い、保湿性を重視する傾向があり、閉塞性の高いこの剤型は注目を集めつつある。また、内層に水を配合することで、みずみずしさと同時に粉を肌に付着させる効果も付与できるため、化粧膜の均一性を向上させる効果をもたせることができる特徴を有するものである。従来より、油中水型固形化粧料は様々な検討がなされ、粉体の表面処理に注目し、有機チタネート処理粉体を含有し、コンパクト容器等への充填成形性と経時安定性を検討した技術(特許文献1参照)や、粉体の肌への密着性、粉体の分散性を高めるために、油溶性樹脂の配合が検討した技術があった(特許文献2参照)。一方、デキストリン脂肪酸エステルは油ゲル化剤として開発されてきた(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−203788号公報
【特許文献2】特開2002−363029号公報
【特許文献3】特許第3019191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固形油を配合した油中水型固形化粧料は、溶融充填時に固形油の融点以上に加熱して溶融充填を行うが、内水相の量や粉体量が増えると溶融充填時に粘度が上昇し、流動性が低下する現象が起き、化粧料が容器中にうまく広がらず固化後にノズル跡や充填むらが残ってしまう等の問題が発生することがあった。また、充填後に冷却・固化させて形状を保持するが、塗布するときの圧力で形状を維持できず、小道具で擦ったときに、崩れてしまい、一定量を均一にとることができなくなる問題もあった。一方、粉体の肌への密着性を高めるために、油溶性樹脂を配合した場合、硬い皮膜を形成するものが多く柔軟性にかけることがあり、肌への密着性が高く、化粧持続性もありつつ柔軟性も満たすべく様々な樹脂が開発されてきたが、その水準は十分ではなかった。そこで、塗布膜の均一性に優れ、高温溶融して充填する際のバルクの粘度を低くすることで流動性を改善しつつ、充填冷却固化後の強度に優れる油中水型固形化粧料の開発が望まれていた。また、油剤のゲル化剤として、従来使用されてきたデキストリン脂肪酸エステルは、固形油によるオイルのゲル化を妨げることがあり、ワックスオイルゲルの強度を向上させる効果は持っていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のデキストリン脂肪酸エステルと、不揮発性ジエステル油剤及び/又はトリエステル油剤を組み合わせることにより、融点75℃以上の固形ワックスを配合する油中水型固形化粧料の、加熱溶融充填時に粘度が高くなることによる流動性の改善、充填冷却固化後の強度、塗布膜の均一性にも優れることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D);
成分(A)デキトスリンの水酸基に脂肪酸を付加させたデキストリン脂肪酸エステルとして、全脂肪酸誘導体に対して、該炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、該炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、該炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び該炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を0mol%以上50mol%未満反応させたものであり、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、グルコース単位当りの脂肪酸の置換度が1.5〜2.7であるデキストリン脂肪酸エステル、
成分(B)不揮発性ジエステル油剤及び/又はトリエステル油剤、
成分(C)融点75℃以上の固形ワックス、
成分(D)水、
を配合することを特徴とする油中水型固形化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、油中水型固形化粧料に関し、塗布膜の均一性に優れ、溶融充填時の流動性が改善された充填成形性の良い、充填冷却固化後の強度に優れる油中水型固形化粧料に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の油中水型固形化粧料に使用される成分(A)は、デキトスリンの水酸基に脂肪酸を付加させたデキストリン脂肪酸エステルとして、全脂肪酸誘導体に対して、該炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、該炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、該炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び該炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を0mol%以上50mol%未満反応させたものであり、デキストリンのグルコースの平均重合度が3〜150であり、グルコース単位当りの脂肪酸の置換度が1.5〜2.7であるデキストリン脂肪酸エステルである。(以下、単に「特定のデキストリン脂肪酸エステル」ということもある。)
【0009】
本発明に使用される成分(A)の特定のデキストリン脂肪酸エステルは、次の構造を有する。
【0010】
本発明において、成分(A)に用いられるデキストリンは、グルコース平均重合度3〜150であり、特に10〜100のデキストリンが好ましい。グルコース平均重合度が2以下では、得られたデキストリン脂肪酸エステルがワックス様となって油剤への溶解性が低下する。また、グルコース平均重合度が150を超えると、デキストリン脂肪酸エステルの油剤への溶解温度が高くなる、又は溶解性が悪くなる等の問題を生ずることがある。デキストリンの糖鎖は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0011】
本発明において、成分(A)に用いられる脂肪酸は、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸誘導体に対して50mol%より多く100mol%以下であることを必須とし、さらに炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸、及び炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよいものである。さらに、分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上が好ましくは55mol%以上100mol%以下であり、その他の脂肪酸は、0mol%以上50mol%未満、好ましくは、0mol%以上45mol%以下である。
該炭素数12〜26の分岐飽和脂肪酸としては、例えば、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択又は組み合わせて使用することができる。これらのうち、特にイソステアリン酸が好ましく、構造の違い等の限定は特にない。
本発明において、イソステアリン酸とは、分岐したステアリン酸の1種、又は2種以上の混合物を意味する。例えば5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン酸は、イソブチレン2量体のオキソ反応により炭素数9の分岐アルデヒドとし、次いでこのアルデヒドのアルドール縮合により炭素数18の分岐不飽和アルデヒドとし、次いで水素添加、酸化することにより製造することができ(以下、「アルドール縮合型」と略す)、これは例えば日産化学工業社より市販されている。2−ヘプチルウンデカン酸はノニルアルコールをガーベット反応(Guerbet反応、ゲルベ反応ともいう)により二量化し、酸化することにより製造することができ、これは例えば三菱化学社より市販されており、分岐位置の若干異なる類似混合物として、日産化学工業社より市販され、さらに出発アルコールが直鎖飽和ではない2箇所メチル分岐したタイプも同様に日産化学工業社より市販されている(以下総じて「ガーベット反応型」と略す)。また、メチル分岐イソステアリン酸は、例えばオレイン酸のダイマー製造時の副産物として得られるもので〔例えばJ.Amer.Oil Chem.Soc.51,522(1974)に記載〕、例えば米国エメリー社などから市販されていたものがあげられる(以下「エメリー型」と略す)。エメリー型イソステアリン酸の出発物質であるダイマー酸のさらに出発物質は、オレイン酸だけでなく、リノール酸、リノレン酸等も含まれる場合がある。本発明においては特にこのエメリー型がより好ましい。
【0012】
本発明において、特定のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸のうち炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明において、特定のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸のうち炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸としては、例えば、モノエン不飽和脂肪酸としては、シス−4−ドデセン(リンデル)酸、シス−4−テトラデセン(ツズ)酸、シス−5−テトラデセン(フィセテリン)酸、シス−9−テトラデセン(ミリストレイン)酸、シス−6−ヘキサデセン酸、シス−9−ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス−9−オクタデセン(オレイン)酸、トランス−9−オクタデセン酸(エライジン酸)、シス−11−オクタデセン(アスクレピン)酸、シス−11−エイコセン(ゴンドレイン)酸、シス−17−ヘキサコセン(キシメン)酸、シス−21−トリアコンテン(ルメクエン)酸等が挙げられ、ポリエン不飽和脂肪酸としては、リノール酸、ヒラゴ酸、プニカ酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等が挙げられる。
【0014】
本発明において、特定のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸のうち炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸は、環状構造を基本骨格の少なくとも一部に有する炭素数12〜30の飽和又は不飽和脂肪酸を意味し、例えば9,10−メチレン−9−オクタデセン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、5(6)−カルボキシ−4−ヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オクタン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸などが挙げられる。
【0015】
本発明において、特定のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸単独の場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリンイソデカン酸エステル
デキストリンイソパルミチン酸エステル
デキストリンイソステアリン酸エステル
デキストリンイソアラキン酸エステル
デキストリン(イソ吉草酸/イソステアリン酸)エステル
【0016】
本発明において、特定のデキストリン脂肪酸エステルに用いられる脂肪酸として分岐飽和脂肪酸とその他の脂肪酸との混合脂肪酸を用いた場合のデキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの等が挙げられる。
デキストリン(イソアラキン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ミリスチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/イソ吉草酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソデカン酸/パルミチン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/ステアリン酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/アラキン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/アラキドン酸)エステル
デキストリン(イソパルミチン酸/カプリル酸/リノール酸)エステル
デキストリン(イソステアリン酸/ステアリン酸/オレイン酸)エステル
デキストリン(イソアラキン酸/パルミチン酸/ショールムーグリン酸)エステル
【0017】
特定のデキストリン脂肪酸エステルのデキストリンへの脂肪酸の置換度は、グルコース単位当たり1.5.〜2.7である。この置換度が1.5未満であると液状油等への溶解温度が100℃以上と高くなり、着色や特異な臭いが生じ、好ましくない。
【0018】
(デキストリン脂肪酸エステルの製造方法)
次に、本発明に使用される特定のデキストリン脂肪酸エステルの製造方法について説明する。
製造方法としては、特に限定されず、公知の製法を採用することができるが、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0019】
(1)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を全脂肪酸誘導体に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸誘導体、炭素数12〜30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸誘導体及び炭素数12〜30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸誘導体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(以下、これらの脂肪酸誘導体をまとめて表すときは「その他の脂肪酸誘導体」という)を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満を含有する脂肪酸誘導体を反応させる。
【0020】
(2)グルコースの平均重合度が3〜150であるデキストリンと、炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上とを反応させ、次いで、その生成物とその他の脂肪酸誘導体とを反応させる。
その場合、全脂肪酸誘導体に対して炭素数12〜22の分岐飽和脂肪酸誘導体の1種又は2種以上を50mol%より多く100mol%以下、及び、その他の脂肪酸誘導体を全脂肪酸誘導体に対して0mol%以上50mol%未満使用する。
【0021】
本発明において、上記デキストリンとのエステル化反応に使用される脂肪酸誘導体としては、例えば、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等が用いられる。
(1)及び(2)のいずれの場合も、まず、デキストリンを反応溶媒に分散し、必要に応じて触媒を添加する。これに、上記脂肪酸のハロゲン化物、酸無水物等を添加して反応させる。(1)の製造法の場合は、これらの酸を混合して同時に添加反応させ、(2)の製造法の場合は、まず反応性の低い分岐飽和脂肪酸誘導体を反応させた後、次いでその他の脂肪酸誘導体を添加反応させる。
【0022】
製造にあたり、これらのうちの好ましい方法を採用することができる。反応溶媒にはジメチルホルムアミド、ホルムアミド等のホルムアミド系;アセトアミド系;ケトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系;ジオキサン等の溶剤を適宜使用することができる。反応触媒としてはピリジン、ピコリン等の3級アミノ化合物などを用いることができる。反応温度は原料脂肪酸等により適宜選択されるが、0℃〜100℃の温度が好ましい。
【0023】
成分(A)の配合量は、特に限定されないが、0.1〜5%が好ましく、0.3〜3%が特に好ましい。この範囲であると、塗布膜の均一性に優れ、高温で溶融充填する際の粘度上昇を押さえ、充填時の広がりがよくなり、充填表面の凹凸を改善する効果に優れ、なおかつ充填冷却固化時のワックスの結晶成長を均一化し、強度を向上させる効果を付与することができる点において好ましい。
【0024】
本発明に使用される成分(B)の不揮発性ジエステル油剤、またはトリエステル油剤としては極性油,非極性油または合成油、半合成油,動植物油等の極性や由来を問わず、25℃にて液状であればよく、本発明においては固形時の強度に大きく影響する。ここで不揮発性液状油剤の不揮発性とは、25℃で揮発しないことであるが、例えば常圧での沸点が260℃以上である油剤をいう。具体的には、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル,ジイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、テトライソミリスチン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、クエン酸トリ2−エチルヘキシル、クエン酸トリイソセチル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル、ダイマー酸とダイマージオールとのオリゴマーエステル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸PEG−3グリセリル、トリイソステアリン酸PEG−3グリセリルなどのエステル油が挙げられる。中でも、充填冷却固化後の強度に優れる点において、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、コハク酸ジ(2−エチルへキシル)、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸プロピレングリコールから選ばれる1種又は2種以上のエステル油が好ましい。例えば、市販品としては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルは、TRIFAT S−308(日本サーファクタント工業社製)、トリイソステアリン酸ジグリセリルは、コスモール43V(日清オイリオ社製)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルはトリエスターF−810J(日本サーファクタント工業社製)、コハク酸ジ(2−エチルへキシル)はクロダモルOSU(クローダジャパン社製)、リンゴ酸ジイソステアリルはコスモール222(日清オイリオ社製)、ジカプリン酸プロピレングリコールはニッコールPDD(日本サーファクタント工業社製)等が挙げられる。
【0025】
成分(B)は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、配合量は化粧料中に3〜40%、特に5〜30%であると、使用感やツヤ感に優れた油中水型固形化粧料を得ることができ好ましい。
【0026】
本発明に使用される成分(C)融点75℃以上の固形ワックスは、成分(B)の不揮発性液状油剤をゲル化するものであれば特に限定されず使用することができる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレンコポリマー、パラフィンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、ビーズワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、シリコーンワックス、ライスワックス等の固形状ワックス等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。中でも、ポリエチレン、エチレン・プロピレンコポリマーが、塗布時の重さがなく滑らかな使用感を付与する点でより好ましい。また、ポリエチレンの市販品としては、PERFORMALENE500(融点約88℃、ニューフェーズテクノロジー社製)、エチレン・プロピレンコポリマーとしては、EP−700(融点約95℃、ニューフェーズテクノロジー社製)などが挙げられる。
【0027】
本発明に使用される成分(C)の配合量は特に制限されないが、化粧料中に0.1%〜25%であり、特に2〜15%である。この範囲であると、塗布膜の均一性に優れ、溶融充填時の粘度が低いことによる流動性の改善や、充填冷却固化後の強度に優れる点で好ましい。
【0028】
本発明の油中水型固形化粧料は、成分(D)として水を配合する。成分(D)の配合量は、3〜80%が好ましく、さらには10〜50%であれば、この範囲で用いると、使用感と膜の均一性に優れる点で好ましい。
【0029】
本発明の油中水型固形化粧料は、更に成分(E)として0.1m以下の微粒子金属酸化物の1種以上を配合することが出来る。金属酸化物の種類としては、特に限定されるものではないが、酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも紫外線遮蔽効果を有する、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムからなる群から選ばれる一種又は二種以上が好ましい。なお、これらの粒子がお互いに複合化、焼結化、ドープ化、または他の粉体と複合化していても特に構わない。例えば、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、二酸化珪素・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等が挙げられる。
【0030】
本発明の油中水型固形化粧料には、上記成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、成分(B)以外の油剤、界面活性剤、油ゲル化剤、粉体、水性成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、ベントナイト,ヘクトライト,スメクタイト等の水性ゲル化剤、酸化防止剤、パラオキシ安息香酸誘導体,フェノキシエタノール等の防腐剤、ビタミンA,B6,B12,C,E等のビタミン類、キレート剤、ローズマリーエキス,カミツレエキス,ニンジン抽出物,センブリ抽出物,カテキン,カテキン誘導体,カンゾウ抽出物,ソウハクヒ抽出物,ホップ抽出物,コラーゲン,ヒアルロン酸,ヒアルロン酸誘導体,トレハロース,アロエエキス等の美容成分、メントール,カンファ,ソルビトール等の清涼剤、香料等の通常化粧料に汎用される成分を配合することができる。
【0031】
本発明の油中水型固形化粧料には、感触調整剤、エモリエント剤等の目的で、成分(B)以外の通常化粧料に用いられる油剤を配合することができる。ここで用いられる油剤としては、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等の油剤が挙げられる。具体的には、流動パラフィン,スクワラン,ワセリン、融点75℃未満のワックス(パラフィンワックス,セレシンワックス,マイクロクリスタリンワックス,モクロウ,モンタンワックス,フィッシャートロプシュワックス)等の炭化水素類、オリーブ油,ヒマシ油,ホホバ油,ミンク油,マカデミアンナッツ油等の油脂類、融点75℃未満のミツロウ,カルナウバワックス,キャンデリラワックス,ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート,ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル,ミリスチン酸オクチルドデシル,イソノナン酸イソトリデシル、ロジン酸ペンタエリスリットエステル,コレステロール脂肪酸エステル,N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール,セチルアルコール,ラウリルアルコール,オレイルアルコール,イソステアリルアルコール,ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、パーフルオロポリエーテル,パーフルオロデカン,パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、ラノリン,酢酸ラノリン,ラノリン脂肪酸イソプロピル,ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン、フッ素変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、高級アルコール変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン等の変性シリコーン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。この中でも、低分子量の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性のシリコーン油を選択すると、化粧持続性が特に優れる油中水型固形化粧料を得ることができる。本発明における油剤の配合量は、乳化安定性、使用感の観点より、1〜60%が好ましく、5〜40%がより好ましい。
【0032】
本発明の油中水型固形化粧料には、上記成分の他に、乳化剤及び分散剤として界面活性剤を配合させることができる。このような界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。具体的には、陰イオン性界面活性剤として、ステアリン酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,ベヘン酸,イソステアリン酸,オレイン酸,12−ヒドロキシステアリン酸、ポリ12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸と、さらにナトリウム,カリウム,トリエタノールアミン等のアルカリ物質により形成される脂肪酸石鹸類、アシルグルタミン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレン付加アルキルリン酸塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン、リン脂質等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。本発明の油中水型固形化粧料に前記界面活性剤を配合する場合は、界面活性剤の種類、油剤の量及び質により変動するが、概ね0.01〜20%が好ましい。
【0033】
本発明の油中水型固形化粧料には、上記成分の他に、安定化剤及び感触調整剤として、油ゲル化剤を配合することができる。このような油ゲル化剤としては、成分(A)以外のデキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸カルシウム,部分架橋型オルガノポリシロキサン、有機変性ベントナイト、煙霧状無水ケイ酸、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。本発明の油中水型固形化粧料に前記油ゲル化剤を配合する場合、概ね0.1〜10%が好ましい。
【0034】
本発明の油中水型固形化粧料には、上記成分の他に、感触調整剤、保湿剤、清涼剤、防腐剤等として、水性成分を配合することができる。このような水性成分としては、プロピレングリコール,1,3−ブチレングリコール,ジプロピレングリコール類、グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール,マルチトール,ショ糖,デンプン糖等の糖類、グアーガム,スクレロチウムガム,ジェランガム,ペクチン,寒天,コンドロイチン硫酸ナトリウム,ヒアルロン酸,アラビアガム,アルギン酸ナトリウム,カラギーナン,キサンタンガム,ローカストビーンガム,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,カルボキシビニルポリマー,アルキル変性カルボキシビニルポリマー,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ナトリウム,塩化マグネシウム,乳酸ナトリウム等の塩類、アロエベラ,ハマメリス,キュウリ,レモン,ラベンダー,ローズ等の植物抽出液等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。本発明の油中水型固形化粧料に前記水性成分の配合量は、概ね0.1〜30%が好ましい。
【0035】
本発明の油中水型固形化粧料には、上記成分の他に、紫外線吸収剤を配合することができる。一般に化粧料に用いられているものであれば特に制限されないが、例えば、ケイ皮酸誘導体、パラ−アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、β,β−ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4−ジアリールブタジエン誘導体等である。具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリアニリノ−パラ−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1、3、5−トリアジン、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル、p−メトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシ桂皮酸−2−エトキシエチル、、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン系、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリシンプロピオン酸−2−エチルヘキシル等があり、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0036】
本発明の油中水型固形化粧料には、上記成分(E)以外の粉体を配合することにより、塗布時の感触の調整や着色をすることができる。ここで用いる粉体としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に制約なく使用することができ、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、煙霧状無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、コンジョウ、群青、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良い。
【0037】
本発明の油中水型固形化粧料は特に限定されないが、次のように製造することができる。成分(A)、(B)及び(C)を含む油性成分を固形油の融点以上に加熱混合したものに、粉体成分を添加し、混合分散する。その後攪拌しながら、成分(D)を含む水性成分を添加し、乳化する。乳化温度は特に限定しない。乳化したものを固形油が再溶解する温度に加熱溶融し、充填に適した各温度で容器に充填した後、室温に冷却し油中水型固形化粧料を得る。
【0038】
本発明の油中水型固形化粧料は、スキンケア化粧料、メーキャップ化粧料、頭髪化粧料の何れの化粧料にも応用可能であるが、本発明の効果が顕著に発揮される化粧料は、ファンデーション、下地料、コントロールカラー、コンシーラー、アイカラー、口紅等のメーキャップ化粧料や日焼け止め化粧料である。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0040】
《本発明の特定のデキストリン脂肪酸エステルの参考製造例》
以下に本発明に用いる特定のデキストリン脂肪酸エステルの参考製造例を示す。また、下記方法で置換度、構成脂肪酸のmol%、粘度、タック性を測定した。
【0041】
(置換度、構成脂肪酸のmol%の測定方法)
参考製造例のデキストリン脂肪酸エステルのIRスペクトルを測定し、アルカリ分解後の脂肪酸量とガスクロマトグラフィーから、置換度と、構成脂肪酸のmol%を求めた。
【0042】
[参考製造例1:デキストリンイソステアリン酸(エメリー型)エステル]
平均グルコース重合度30のデキストリン21.41g(0.132mol)をジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62g(0.666mol)とからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソステアリン酸クロライド(エメリー型)120g(0.396mol)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応終了後、反応液をメタノールに分散させ、上層を除去した。半固形分をメタノールで数回洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質107gを得た。(仕込み時分岐飽和脂肪酸60mol%)
尚、エメリー型の出発原料はコグニス社製のEMARSOL873を用いた。本原料の脂肪酸組成は分岐飽和脂肪酸が60mol%、その他の脂肪酸が40mol%(パルミチン酸10mol%を含む)のものを用いた。(以下同様)
置換度は2.2、分岐飽和脂肪酸60mol%、その他の脂肪酸40mol%(内パルミチン酸10mol%)であった。
【0043】
《実施例1〜10、比較例1〜2:ファンデーション》
【表1】
※1:PERFORMALENE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
※2:合成セレシンJNP-81(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※3:ムルチワックスW-445(SONNEBORN,INC.社製)
※4:TOWAX-1F6(東亜化成社製)
※5:コスモール43(日清オイリオ社製)
※6:シリコーンKSG-15(信越化学工業社製)
※7:ABILEM90(ゴールドシュミット社製)
※8:シリコーンKF−6038(信越化学工業社製)
※9:17〜22のシリコーン処理 シリコーンKF−9901(信越化学工業社製)
【0044】
(製造方法)
A:成分1〜16を90℃で混合溶解する。
B:Aに成分17〜22を添加して、35℃で混合分散し、23〜26を添加する。
C:成分27〜30を混合溶解する。
D:Bを攪拌しながら、Cを添加し、乳化する。
E:Dを85℃溶融後75℃にて皿に充填した後、室温に冷却してファンデーションを得た。
【0045】
<評価項目>
(イ)表面硬度
(ロ)充填成形性
(ハ)塗布膜の均一性
(評価方法)
(イ)表面硬度については、各試料を、化粧用スポンジで使用したときに、適切な量が取れたかどうか、試料の表面が崩れて多く取れすぎることがないかどうかを評価し下記判定基準にて判定した。
<表面硬度判定基準>
◎:非常に良好
○:良好
△:やや不良
×:不良

(ロ)充填成形性については、各試料に充填ムラやノズル跡がないかどうかを目視にて下記判定基準にて評価した。
<充填成形性判定基準>
◎:充填ムラやノズル跡がみられない
○:充填ムラやノズル跡がわずかに見られる
△:充填ムラやノズル跡がやや見られる
×:充填ムラやノズル跡が目立つ

(ハ)塗布膜の均一性については
各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。各試料を顔に塗布し、パネル各人が、塗布時に化粧料がムラ付きせず、毛穴に落ち込むことなく均一に塗布できるかどうかについて、下記絶対評価にて6段階に評価し、評点をつけ、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
<6段階絶対評価>
(評点):(評価)
5:非常に良い
4:良い
3:やや良い
2:普通
1:やや悪い
0:悪い
<4段階判定基準>
◎:4点以上 :非常に良好
○:3点以上で4点未満 :良好
△:1.5点以上で3点未満 :やや不良
×:1.5点未満 :不良
【0046】
実施例1〜10について評価を行った結果、充填冷却固化後の強度に優れ、使用時に化粧料表面の崩れがなかった。また、充填成形性も良好であり、充填むらやノズル跡等の充填跡がほとんど見られず、塗布膜の均一性にも優れるものであった。
比較例1〜2に関しては、成分(A)を配合しない比較例1においては充填むらやノズル跡等の充填跡が目立ち、使用時の表面硬度も劣り着手時に化粧料表面に崩れがみられた。また崩れることで塗布量が一定にならない傾向にあった。一方、成分(B)の代わりに不揮発性モノエステル油剤を使用した比較例2は表面硬度が十分でなく、使用時に表面が崩れてしまった。
尚、実施例1と比較例1の、溶融時75℃での粘度を測定したところ、実施例1は粘度値が4.8Pa・s、比較例1では7.2Pa・sと明らかな差を示した。他の実施例も同様に粘度を低くすることができた。
粘度はADVANCED RHEOMETER AR2000(TA Instruments Ltd.社製)にて、40mm2°傾斜Alminium Coneを用い、75℃でShear Rate 3(1/S)の時の値を測定した。
【0047】
《実施例11》スティック状日焼け止め(金型成型)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス(融点85〜91℃) ※1 2
2.エチレン・プロピレンコポリマー(融点90〜98℃) ※10 9
3.キャンデリラワックス(融点70〜75℃) 1
4.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.ジカプリン酸プロピレングリコール 10
6.コハク酸ジ2−エチルヘキシル 5
7.トリイソステアリン酸ジグリセリル 5
8.参考製造例1のデキストリンイソステアリン酸エステル 3
9.p−メトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシル 5
10.2,4,6−トリアニリノ−パラ−(カルボ−2’−エチルヘキシル1’−
オキシ)−1、3、5−トリアジン 0.5
11.微粒子酸化亜鉛(0.03μm) 10
12.酸化チタン(0.8μm) 0.5
13.ジメチコンコポリオールクロスポリマー30%ジメチコン混合物 ※11

14.デカメチルシクロペンタシロキサン 5
15.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン ※12 0.1
16.グリセリン 2
17.1,3−ブチレングリコール 5
18.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
19.1,2−ペンタンジオール 0.1
20.精製水 30
21.香料 0.1
※10:EP−700(ニューフェーズテクノロジー社製)
※11:シリコーンKSG−21(信越化学工業社製)
※12:シリコーンKF−6028P(信越化学工業社製)
(製造方法)
A:成分16〜20を90℃で均一溶解する。
B:成分1〜7を110℃にて均一溶解し、成分8〜12を加え、室温まで均一に混合分散する。
C:BにAを室温で攪拌しながら加え乳化する。
D:Cに成分13〜15までを加え、成分21を均一に混合し、85℃まで溶解後、70℃で金型容器(アルミニウム製)に流し込み、冷却固化して容器に装着しスティック状日焼け止めを得た。
実施例11について、実施例1〜10で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、充填冷却固化後の強度に優れ、充填成形性も良好であり、充填むらやノズル跡等の充填跡が見られず、塗布膜の均一性に優れるものであった。
【0048】
《実施例12:コントロールカラー》
(成分) (%)
1.マイクロクリスタリンワックス(融点77〜82℃) ※3 3
2.硬化油 0.3
3.ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 10
4.参考製造例1のデキストリンイソステアリン酸エステル 1.5
5.流動パラフィン 5
6.有機変性粘土鉱物 ※13 0.7
8.ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン ※14 2
7.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
8.モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.3
9.ジカプリン酸プロピレングリコール 5
10.シリコーン処理ベンガラ被覆雲母チタン ※15 5
11.シリコーン処理タルク ※16 2
12.シリコーン処理ベンガラ ※16 0.1
13.フェノキシエタノール 0.3
14.エタノール 10
15.精製水 残量
※13:ベントン38(NLインダストリー社製)
※14:シリコーンKF−6015(信越化学工業社製)
※15:ジェムトーンタンオパール(三好化成社製)メチルハイドロジェン5%処理
※16:メチルハイドロジェン5%処理
A:成分1〜12を85℃で混合分散する。
B:成分13〜15を30℃で混合分散する。
C:Aを攪拌しながら、Bを添加し、乳化する。
D:Cを80℃に溶解し、容器に充填し室温まで冷却後、コントロールカラーを得た。
実施例12について、実施例1〜10で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、充填冷却固化後の強度に優れ、充填成形性も良好であり、充填むらやノズル跡等の充填跡が見られず、塗布膜の均一性に優れるものであった。
【0049】
《実施例13:流し込みリップ下地(金皿成型)》
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス(融点85〜91℃) ※1 3
2.エチレン・プロピレンコポリマー(融点90〜98℃) ※10 5
3.マイクロクリスタリンワックス(融点77〜82℃) ※3 1
4.イソノナン酸イソトリデシル 5
5.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 20
6.水添アビエチン酸グリセリル 1
7.ワセリン 10
8.ポリブテン 5
9.重質流動イソパラフィン 10
10.デカメチルシクロペンタシロキサン 2
11.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
12.参考製造例1のデキストリンイソステアリン酸エステル 0.5
13.ポリヒドロキシステアリン酸 ※17 1
14.デカイソステアリン酸デカグリセリル 10
15.フェノキシエタノール 0.1
16.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
17.ジメチルシリル化処理煙霧状無水ケイ酸 ※18 2
18.ジメチルジステアリルヘクトライト ※19 0.2
19.ホホバ油 0.1
20.1,3−ブチレングリコール 1
21.精製水 5
※17:サラコスHS−6C(日清オイリオ社製)
※18:エアロジルR-972(日本エアロジル社製)
※19:BENTON38V(エレメンティス社製)
(製造方法)
A:成分1〜12を100℃にて均一溶解する。
B:Aに成分13〜19を加え、50℃にて均一に混合分散し、20,21を添加し乳化する。
C:Bを110℃に加熱溶解して、90℃で金皿(アルミニウム製)に流し込み、冷却固化して流し込みリップ下地を得た。
実施例13について、実施例1〜10で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、充填冷却固化後の強度に優れ、充填成形性も良好であり、充填むらやノズル跡等の充填跡が見られず、塗布膜の均一性に優れるものであった。
【0050】
《実施例14:アイカラー》
(成分) (%)
1.スクワラン 10
2.デカメチルシクロペンタシロキサン 15
3.ジメチルポリシロキサン 5
4.2−エチルヘキサン酸セチル 7
5.参考製造例1のデキストリンイソステアリン酸エステル 1
6.長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン
変性オルガノポリシロキサン※7 3
7.セスキオレイン酸ソルビタン 1
8.トリカプリル酸グリセリル 3
9.ポリエチレンワックス 3
10.フッ素化合物処理雲母チタン ※20 5
11.シリコーン処理赤色226号 ※21 1
12.無水ケイ酸 3
13.1,3−ブチレングリコール 3
14.エタノール 2
15.精製水 残量
※20:パーフルオロトリエトキシシラン3%処理
※21:メチルハイドロジェン5%処理
(製造方法)
A:成分1〜8を90℃にて混合する。
B:Aに成分9〜12を添加して、40℃にて混合分散する。
C:成分13〜15を30℃にて混合溶解する。
D:Bを攪拌しながら、Cを添加し、乳化する。
E:Dを容器に85℃に加熱溶解した後75℃で充填し、アイカラーを得た。
実施例14について、実施例1〜10で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、充填冷却固化後の強度に優れ、充填成形性も良好であり、充填むらやノズル跡等の充填跡が見られず、塗布膜の均一性に優れるものであった。