(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ装置の作動によるサービスブレーキ時はリーディング・トレーリング(LT)式のドラムブレーキ装置として作動し、パーキングブレーキレバーの操作によるパーキングブレーキ時はデュオサーボ(DS)式のドラムブレーキ装置として作動するデュアルモード構造を備えたドラムブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図15に示すこの種のデュアルモードドラムブレーキ装置501は、図示しないブレーキドラムの内周面に対向するよう配置して一対の第1シュー503及び第2シュー505を設ける。これら第1シュー503及び第2シュー505は、第1シューホールド装置507及び第2シューホールド装置509によりバッキングプレート511に制限範囲内で相対移動可能に弾性支持されると共に、一対の第1シューリターンスプリング513及び第2シューリターンスプリング515により相互に接近する方向に弾性付勢されている。
図15の下方における第1シュー503及び第2シュー505の隣接端は、それぞれバッキングプレート511に取り付けた固定のアンカ517に当接させられている。
図15の上方における第1シュー503及び第2シュー505の隣接端は、それぞれバッキングプレート511に取り付けた流体式アクチュエータとしてのホイールシリンダ519の第1ピストン521及び第2ピストン523により押動可能とされ、これらにより第1シュー503と第2シュー505とを拡開させるように構成している。
【0004】
第2シュー505には、ホイールシリンダ519に近い端部側において第2ウエブ525にピン527を介しフォワードプル型の第1パーキングブレーキレバー529が枢支され、当該機械式アクチュエータ(拡開機構)を構成する第1パーキングブレーキレバー529をドラム軸直角面内で回動可能としている。第1パーキングブレーキレバー529の遊端531には図示しないパーキングブレーキケーブルが接続されており、このパーキングブレーキケーブルをパーキングブレーキ操作力により牽引することにより、第1パーキングブレーキレバー529の遊端531がWで示す方向へ変位される。これにより、第1パーキングブレーキレバー529がピン527の周りで対応方向へ回動されるように構成されている。
【0005】
この第1パーキングブレーキレバー529は、一方でピン527を介して第2シュー505をアンカ517との当接点周りに拡開させ、他方でストラット533を介し第2パーキングブレーキレバー535を突起537の周りで時計回り方向へ回動させようとして突起537を介し第1シュー503をアンカ517との当接点周りに拡開させる拡開機構を構成している。
【0006】
ドラム回転方向後方側の第1シュー503及び第2シュー505の端部はブレーキドラムに連れ回され、ドラム回転力がストラット533を介し第1シュー503及び第2シュー505に伝達されてアンカ517で受け止められ、デュオサーボ式のドラムブレーキとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のデュアルモードドラムブレーキ装置501では、パーキングブレーキ時にデュオサーボ式のドラムブレーキとなるために、拡開機構を構成する第1パーキングブレーキレバー529が、一方でピン527を介して第2シュー505をアンカ517との当接点周りに拡開させ、他方でストラット533を介し第2パーキングブレーキレバー535を回動させようとして突起537を介し第1シュー503をアンカ517との当接点周りに拡開させる。そこで、第1パーキングブレーキレバー529に押圧されたストラット533は、第2パーキングブレーキレバー535を押圧するが、この時、第1シュー503は、第2パーキングブレーキレバー535と回動中心となる突起537とに回動可能に嵌合していることから、アンカ517に当接するためには第1シューリターンスプリング513の荷重が、第2シューリターンスプリング515の荷重より大きい必要がある。従って、第1シュー503と第2シュー505のアンカ517への当接力が大きくなってしまう。その為、サービスブレーキ時に制動力の安定化を図るため、図中下方における第1シュー503及び第2シュー505の隣接端が当接するアンカ517に傾きを設けた場合には、走行時の振動等で第2シュー505及び第1シュー503がホイールシリンダ519側へ移動して引きずりを発生する虞がある。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、デュアルモードブレーキ構造におけるパーキング制動力の安定性を高めることができるドラムブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ブレーキドラムの内周面に対向するよう配置されてバッキングプレートに移動可能に弾性支持される一対のブレーキシューと、前記一対のブレーキシューの一方の隣接端間に介装され、前記一対のブレーキシューのそれぞれを拡開させるホイールシリンダと、前記バッキングプレートに固定され、前記一対のブレーキシューの他方の隣接端が当接されるアンカ部と、前記ホイールシリンダの近傍における前記一対のブレーキシューの一方の隣接端間に介装され、シュー間隔を調整するアジャスタと、前記アジャスタと直列に配置され、操作力が入力されることで前記一対のブレーキシューのそれぞれを拡開させる拡開機構と、一方のブレーキシューに回転自在に設けられ、前記拡開機構の所定以上の作用力
のみにより回転される切替レバーと、前記一対のブレーキシューのアンカ部側の隣接端間に設けられ、前記切替レバーの回転に従動して前記一対のブレーキシューのアンカ部側の隣接端を拡開させる切替ストラットと、を備えることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0011】
上記(1)の構成のドラムブレーキ装置によれば、パーキングブレーキ作動時に、拡開機構からの入力によりアジャスタを介して一対のブレーキシューの一方の隣接端が拡開される。拡開された一対のブレーキシューの一方の隣接端がブレーキドラムの内周面に当接し、内周面からの反力が一対のブレーキシューに作用して拡開機構の作用力(拡開力)が所定以上となると、切替レバーが切替ストラットを介して一対のブレーキシューのアンカ部側の隣接端を拡開させ、一対のブレーキシューがブレーキドラムの内周面に押圧される。
即ち、パーキングブレーキのためのブレーキシューの拡開動作が、アジャスタ設置部位側のブレーキシューにブレーキドラムの内周面からの反力が作用するまでは、モード切替のために配設した切替レバーを回転させず、モード切替機構が作動しない構成である。そこで、拡開機構の作用力により、一対のブレーキシューの一方の隣接端が拡開されてブレーキドラムの内周面に当接した後、切替レバーにより一対のブレーキシューのアンカ部側の隣接端が拡開されてブレーキドラムの内周面に当接するため、一対のブレーキシューとドラム摺動面との密着性が向上する。
従って、パーキング操作終了時、一対のブレーキシューは、ホイールシリンダ側とアンカ部側の双方で開拡され、ドラム摺動面に対する密着性が向上する。その結果、パーキングブレーキ作動時には、デュオサーボとしての高いパーキング制動力が得られると共に、パーキング制動力が生じる時に発生する緩みが防止される。
【0012】
(2) 上記(1)の構成のドラムブレーキ装置であって、前記切替レバーは、前記一方のブレーキシューの第1ウエブを挟持するように折り曲げ形成された一対の挟持部を有し、これら一対の挟持部が前記第1ウエブに回転自在に支持されることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0013】
上記(2)の構成のドラムブレーキ装置によれば、切替レバーは、第1ウエブの表裏側面にそれぞれ位置する一対の挟持部が回転自在に支持されるので、切替レバーが回転された時に第1ウエブに対して偏荷重が作用することがなく、円滑な回転動作が可能となる。
【0014】
(3) 上記(1)の構成のドラムブレーキ装置であって、前記切替レバーは、前記拡開機構に係合する側端と前記切替ストラットに係合する側端とが、前記一方のブレーキシューにおける第1ウエブを挟んで互いに反対側に位置するように折り曲げ形成されることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0015】
上記(3)の構成のドラムブレーキ装置によれば、アジャスタが第1ウエブを挟んでバッキングプレートと反対側に配置されている場合、アンカ部側では拡開機構を操作するパーキングブレーキケーブル等との干渉を避けるために切替ストラットに係合する切替レバーの側端が、バッキングプレートと反対側に配置される。また、ホイールシリンダ側ではアジャスタとの干渉を避けるために拡開機構に係合する側端が、バッキングプレート側に配置される。そこで、切替レバーは第1ウエブに容易に装着することができる。
【0016】
(4) 上記(1)の構成のドラムブレーキ装置であって、前記切替レバーが、第1支点ピンによって前記一方のブレーキシューに回転自在に支持され入力側となる第1切替レバーと、第2支点ピンによって前記一方のブレーキシューに回転自在に支持され前記第1切替レバーに従動して回転する出力側となる第2切替レバーと、を有し、前記第1切替レバーが、前記第1切替レバーと前記第2切替レバーとの摺接点と前記第1支点ピンとの間で、前記拡開機構からの作用力を受けることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0017】
上記(4)の構成のドラムブレーキ装置によれば、モード切替えのために設置された切替レバーを構成する第1切替レバー及び第2切替レバーでは、作用力の伝達において、それぞれの摺接点の変位量が少なくなる。このため、摩滅等の問題が起こり難い。また、第1切替レバー及び第2切替レバーでは、第1支点ピン及び第2支点ピンの位置や、第1切替レバーと第2切替レバーとが互いに当接する摺接点位置を設定することで、第1及び第2切替レバーの適正な伝達比を容易に選定することができ、一対のブレーキシューとドラム摺動面との最適な密着性が得やすくなる。
【0018】
(5) 上記(4)の構成のドラムブレーキ装置であって、前記第2切替レバーは、前記一方のブレーキシューの第1ウエブを挟持するように折り曲げ形成された一対の挟持部を有し、これら一対の挟持部が前記第1ウエブに回転自在に支持されることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0019】
上記(5)の構成のドラムブレーキ装置によれば、第2切替レバーは、第1ウエブの表裏側面にそれぞれ位置する一対の挟持部が回転自在に支持されるので、第2切替レバーが回転された時に第1ウエブに対して偏荷重が作用することがなく、円滑な回転動作が可能となる。
【0020】
(6) 上記(4)の構成のドラムブレーキ装置であって、前記第2切替レバーは、前記第1切替レバーと接触する側端と前記切替ストラットと接触する側端が、前記一方のブレーキシューにおける第1ウエブを挟んで互いに反対側に位置するように折り曲げ形成されることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0021】
上記(6)の構成のドラムブレーキ装置によれば、アジャスタが第1ウエブを挟んでバッキングプレートと反対側に配置されている場合、アンカ部側では拡開機構を操作するパーキングブレーキケーブル等との干渉を避けるために切替ストラットに接触する第2切替レバーの側端が、バッキングプレートと反対側に配置される。また、ホイールシリンダ側ではアジャスタとの干渉を避けるために第1切替レバーがバッキングプレート側に配置されると共に第1切替レバーに接触する第2切替レバーの側端が、バッキングプレート側に配置される。そこで、第1及び第2切替レバーは第1ウエブに容易に装着することができる。
【0022】
(7) 上記(1)〜(6)の何れかの構成のドラムブレーキ装置であって、前記バッキングプレートの裏側面には、前記拡開機構に接続されたパーキングケーブルを引っ張り駆動する駆動機構が配設されていることを特徴とするドラムブレーキ装置。
【0023】
上記(7)の構成のドラムブレーキ装置によれば、バッキングプレートの裏側面に配設した駆動機構によってパーキングケーブルが引っ張られることによって、電動により拡開機構が作動可能となる。そして、パーキングブレーキ時にはデュオサーボとなるので、高効力(省電力)が実現される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るドラムブレーキ装置によれば、サービスブレーキ時にリーディング・トレーリング式、パーキングブレーキ時にデュオサーボ式として機能するデュアルモードブレーキ構造で、走行時の走行振動等で引き摺り現象を生じることなく、サービスブレーキ時の制動力の安定化を図ることができる。
【0025】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るドラムブレーキ装置11は、一対のブレーキシューである第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29と、ホイールシリンダ13と、アンカ部15と、アジャスタ17と、クロスプル型の拡開機構19と、切替レバー21と、切替ストラット23と、を主要部材として構成されている。
ドラムブレーキ装置11は、バッキングプレート25が図示しない車輪の回転軸心に対して略垂直となる姿勢で車体に一体的に固設される。バッキングプレート25には、それぞれ略円弧形状を成している一対の第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29が左右の外周縁に略沿って上下に配設される。
【0028】
それぞれの第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29は、第1シューホールド装置31および第2シューホールド装置33により、第1ウエブ35及び第2ウエブ37が移動可能に弾性支持され、拡開可能となっている。また、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29は、一対の第1シューリターンスプリング39および第2シューリターンスプリング41により相互に接近する方向に弾性付勢されている。
【0029】
図1の上方における第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の一方の隣接端間には、流体式アクチュエータとしてのホイールシリンダ13が介装される。ホイールシリンダ13は、バッキングプレート25に取り付けられ、第1ピストン43および第2ピストン45により一方の隣接端間を離反方向に押動して第1ブレーキシュー27と第2ブレーキシュー29とを拡開させる。
図1の下方における第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の他方の隣接端は、それぞれバッキングプレート25に取り付けた固定のアンカ部15に当接される。
【0030】
フットブレーキペダルの踏み込みによるサービスブレーキ時は、ホイールシリンダ13が加圧作動されてその両端より進出する第1ピストン43および第2ピストン45により、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29を
図1の位置からアンカ部15との当接点周りに拡開回転させる。これにより第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29は、図示しないブレーキドラムの内周面に摩擦係合されてこれを制動する。このとき、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の一方がブレーキドラムの回転方向に対しリーディングシューとなって自己サーボ性を有し、他方がブレーキドラムの回転方向に対しトレーリングシューとなって自己サーボ性を有しないこととなり、ドラムブレーキ装置11はリーディング・トレーリング式ドラムブレーキとして作用する。
【0031】
ホイールシリンダ13の近傍における第1ブレーキシュー27と第2ブレーキシュー29との隣接端間には、シュー間隔を調整するアジャスタ17が介装されている。このアジャスタ17には、操作力がパーキングケーブル51を介してバッキングプレート25に垂直方向で入力されることで第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のそれぞれを拡開させる拡開機構19が、直列に配置されている。アジャスタ17および拡開機構19は、アジャスタ付パーキングレバー組立体47を構成している。
図3に示すように、アジャスタ付パーキングレバー組立体47は、第1ブレーキシュー27と第2ブレーキシュー29との一方の隣接端間に跨がって配設され、パーキングレバー49が一方向へ回動させられることにより機械的に一対の第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29を離間させる。パーキングレバー49にはパーキングケーブル51が連結され、パーキングケーブル51はパーキングブレーキ操作の操作力に応じてパーキングレバー49を一方向へ回動させる。
【0032】
アジャスタ付パーキングレバー組立体47は、アジャスタ17と、拡開機構19と、を有する。更に、アジャスタ17は、アジャスタレバー53(
図1参照)と、ストラット55と、を有する。一方、拡開機構19は、レバーピン57と、パーキングレバー49と、ブラケット59と、を有する。アジャスタ17は、シュー間隙自動調整機構を備えており、アジャスタスクリュー61(
図3参照)により軸方向へ伸縮させられる。
【0033】
アジャスタレバー53は、第1支点ピン109(
図1参照)により第1ブレーキシュー27の第1ウエブ35に回動し得るよう枢支される。アジャスタレバー53と第2ブレーキシュー29との間には、第1シューリターンスプリング39が張設されており、アジャスタレバー53を
図1の反時計回り方向に回動付勢する。また、この回動付勢によりアジャスタレバー53の腕部65がストラット55の歯付輪67に回転係合させられる。
【0034】
ストラット55は、アジャスタスクリュー61を挟んで一端部側(
図3の左端側)がアジャスタソケット69とされ、他端部側(
図3の右端側)が係合板部71とされる。アジャスタソケット69は、第1ブレーキシュー27の第1ウエブ35に当接される。係合板部71は、パーキングレバー49の回動部である凹状当接部73に係合する。パーキングレバー49は、凹状当接部73の上方に、回動支点となるレバーピン57を挿通するピン係合孔75が形成される。また、パーキングレバー49は、凹状当接部73の反対側(パーキングケーブル51で駆動される側)にケーブル掛止部77が形成されている。
【0035】
そして、アジャスタ付パーキングレバー組立体47は、パーキングレバー49の回転支点であるレバーピン57が拡開機構中央側(
図3の左右方向の中央側)に配設されている。一方、パーキングレバー49のパーキングケーブル51で駆動される側は、第2ブレーキシュー29側に近接して配置される。ブラケット一端部79がパーキングレバー49の回転支点であるレバーピン57を保持すると共にブラケット他端部81が第2ブレーキシュー29に当接されるブラケット59は、パーキングケーブル51の引出部である挿通穴83(
図3参照)を挟んだ両側でバッキングプレート25側に摺動可能に当接される。
【0036】
本第1実施形態のブラケット59は、パーキングレバー49を挟む二枚の板部85を有する。ブラケット他端部81には係合凹部87が形成され、係合凹部87は第2ブレーキシュー29の第2ウエブ37に当接する。ブラケット一端部79のレバーピン57を保持する側には突出部89が形成され、突出部89はストラット55の他端部がパーキングレバー49の凹状当接部73から外れるのを防止する外れ防止機構を構成する。突出部89の上方にはレバーピン57を保持する長円保持溝91が形成される。ブラケット59の突出部89が形成される側の幅は、ストラット円筒部93の外径より狭い。これにより、ストラット円筒部93がブラケット59の突出部89に係止され、係合板部71が凹状当接部73から外れるのが防止される。
【0037】
レバーピン57が挿通されたパーキングレバー49は、凹状当接部73に、ストラット55の係合板部71が係合される。ストラット55と係合されたパーキングレバー49は、ブラケット59の一対の板部85の間に挿入される。ブラケット59に挿入されたパーキングレバー49は、レバーピン57が長円保持溝91に支持された状態で、レバーピン57を回転中心に回転される。
【0038】
ブラケット59は、バッキングプレート側当接部95(
図3参照)が、バッキングプレート25に直接または当接用部材を介して当接される。本第1実施形態では、バッキングプレート側当接部95が、当接用部材であるレバープレート97(
図3参照)を介してバッキングプレート25に当接される。バッキングプレート25には、パーキングケーブル51を挿通させるための挿通穴83(
図3参照)がパーキングケーブル51の引出部として設けられている。バッキングプレート25の車輪側の面には挿通穴83に重ねて上記のレバープレート97が装着され、レバープレート97は挿通穴83と一致する貫通孔99(
図3参照)を有している。
【0039】
バッキングプレート25の裏側面101には、挿通穴83と同一中心でパーキングケーブルアンカ用部材であるケーブルアンカ103が配設されている。ケーブルアンカ103の先端には同一中心でケーブルケース105が固定され、ケーブルケース105から導出されるパーキングケーブル51は挿通穴83、貫通孔99を通りパーキングレバー49に掛止される。ケーブルアンカ103の内方にはケーブルブーツ107(
図3参照)がケーブルケース105に固定され、ケーブルブーツ107は内方にパーキングケーブル51を挿通している。
【0040】
バッキングプレート25に固定されるケーブルアンカ103は、バッキングプレート25とケーブルケース105とに挟まれて配置される。パーキングケーブル51は、
図3の下側へ引っ張られるので、ケーブルケース105は、ケーブルアンカ103に反力としての上向きの力をケーブルアンカ103に入力する。これにより、ケーブル作用力がバッキングプレート25の板厚方向で、ケーブルアンカ103を挟んで互いに向き合う接近方向でバッキングプレート25に受けられ、ケーブルアンカ103の取り付け強度上、有利に構成することができる。
【0041】
更に、
図4および
図5に示すように、ドラムブレーキ装置11には、一方のブレーキシューである第1ブレーキシュー27に切替レバー21が回転自在に設けられ、切替レバー21は拡開機構19の所定以上の作用力(拡開力)により回転される。また、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端間には、切替ストラット23が設けられている。切替ストラット23は、切替レバー21の回転に従動して第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端を第2シューリターンスプリング41の付勢力に抗して拡開させる。
【0042】
本第1実施形態において、切替レバー21は、
図5に示すように、第1支点ピン109によって第1ブレーキシュー27の一方の端部側(ホイールシリンダ13側)に回転自在に支持され入力側となる第1切替レバー111と、第2支点ピン113によって第1ブレーキシュー27の略中間部に回転自在に支持され第1切替レバー111に従動して回転する出力側となる第2切替レバー115と、を有する。第1切替レバー111が、第1切替レバー111と第2切替レバー115との摺接点と第1支点ピン109との間で、拡開機構19からの作用力を受ける。
【0043】
第1切替レバー111および第2切替レバー115は、拡開機構19の所定以上の作用力により回転されると、第1切替レバー111および第2切替レバー115の回転に従動する切替ストラット23が第1ブレーキシュー27と第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端を第2シューリターンスプリング41の付勢力に抗して拡開させるように支点と力点と作用点との間の距離が設定されている。
【0044】
本第1実施形態では、操作部材の非操作状態において、
図5(b)に示すように、アジャスタソケット69と第1切替レバー111とは、第1摺接点117で接触し、第1切替レバー111と第2切替レバー115とは第2摺接点119で接触し、第2切替レバー115と切替ストラット23とは第3摺接点121で接触する。
【0045】
図5(b)中の左右に第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29を配置したバッキングプレート25を左右に二分割する仮想中心線123に沿う方向の第1支点ピン109と第1摺接点117との距離をA、仮想中心線123に沿う方向の第1支点ピン109と第2摺接点119の距離をB、仮想中心線123に沿う方向の第2摺接点119と第2支点ピン113との距離をC、仮想中心線123に沿う方向の第2支点ピン113と第3摺接点121との距離をDとする。そこで、それぞれの距離は、1<(A/B)×(C/D)×3に設定される。これにより、拡開機構19からの入力によって第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側を先に拡開してブレーキドラムの内周面に当接させ、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の位置を決定した後、内周面からの反力が第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29に作用して拡開機構19の作用力(拡開力)が所定以上となると、第1切替レバー111および第2切替レバー115が回転して切替ストラット23へ作用力を伝達するように構成されている。
【0046】
次に、上記構成を有するドラムブレーキ装置11の作用を説明する。
本第1実施形態に係るドラムブレーキ装置11では、パーキング操作前の状態から、パーキングケーブル51が、車室内の操作部材(操作レバーなど)の操作に従って引っ張られると、操作初期においては、アジャスタ付パーキングレバー組立体47によって第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側の隣接端が先に拡開され、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の位置が決定される。
【0047】
次いで、アジャスタ17を介して拡開された第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側の隣接端がブレーキドラムの内周面に当接し、内周面からの反力が第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29に作用して拡開機構19の作用力(拡開力)が所定以上となると、第1切替レバー111が回転し、第1切替レバー111が第2切替レバー115を押圧するので、第2切替レバー115が第2支点ピン113を中心に
図1の反時計回りに回転する。その結果、第2切替レバー115は、切替ストラット23を介して第2ブレーキシュー29を押圧する。これにより、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端が拡開し、ブレーキドラムの内周面に押圧される。
【0048】
即ち、パーキングブレーキのためのクロスプル型の拡開機構19による第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の拡開動作が、アジャスタ17設置部位側の第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29にブレーキドラムの内周面からの反力が作用するまでは、モード切替のために配設した第1切替レバー111および第2切替レバー115から成る切替レバー21を回転させず、モード切替機構が作動しない構成である。そこで、拡開機構19の作用力により、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側の隣接端が拡開されてブレーキドラムの内周面に当接した後、切替レバー21により第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端が拡開されてブレーキドラムの内周面に当接するため、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29とドラム摺動面との密着性が向上する。
【0049】
従って、本第1実施形態のドラムブレーキ装置11では、パーキング操作終了時、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29は、ホイールシリンダ13側とアンカ部15側の双方で開拡され、ドラム摺動面に対する密着性が向上する。その結果、パーキングブレーキ作動時には、デュオサーボとしての高いパーキング制動力が得られると共に、パーキング制動力が生じる時に発生する緩みが防止される。
【0050】
また、モード切替えのために設置された切替レバー21を構成する第1切替レバー111および第2切替レバー115では、作用力の伝達において、それぞれの第1〜第3摺接点117,119,121の変位量が少なくなる。このため、摩滅等の問題が起こり難い。また、第1切替レバー111および第2切替レバー115では、第1支点ピン109及び第2支点ピン113の位置や、第1切替レバー111と第2切替レバー115とが互いに当接する第1〜第3摺接点117,119,121の位置を設定することで、第1及び第2切替レバー111,115の適正な伝達比を容易に選定することができ、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29とドラム摺動面との最適な密着性が得やすくなる。
【0051】
上記した本第1実施形態に係るドラムブレーキ装置11は、バッキングプレート25の裏側面101に配設され、拡開機構19に接続されたパーキングケーブル51を引っ張り駆動する駆動機構としてのモータギアユニット125(
図3参照)を取り付けることで、電動パーキングブレーキを備えたドラムブレーキ装置とすることができる。
ドラムブレーキ装置11によれば、バッキングプレート25の裏側面101に配設したモータギアユニット125によってパーキングケーブル51が引っ張られることによって、電動により拡開機構19が作動可能となる。そして、上述したようにパーキングブレーキ時にはデュオサーボ式ドラムブレーキとなるのでら、高効力(省電力)が実現される。
【0052】
従って、本第1実施形態に係るドラムブレーキ装置11によれば、サービスブレーキ時にリーディング・トレーリング式、パーキングブレーキ時にデュオサーボ式として機能するデュアルモードブレーキ構造を安価に構成できる。
また、本実施形態に係るドラムブレーキ装置11によれば、パーキングブレーキを容易に電動化できる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態に係るドラムブレーキ装置210について説明する。
図6〜
図9に示すように、本第2実施形態に係るドラムブレーキ装置210は、上記第1実施形態に係るドラムブレーキ装置11と同様に、デュアルモードブレーキ構造を備えたものである。なお、上記第1実施形態に示したドラムブレーキ装置11の構成部材と同等の構成部材には、同一の符号を付し重複する説明は省略する。
【0054】
本第2実施形態のドラムブレーキ装置210は、上記第1実施形態に示したドラムブレーキ装置11に用いられていたクロスプル型の拡開機構19に代えて、フォワードプル型の拡開機構219が用いられており、アジャスタ217が直列に配置されている。アジャスタ217および拡開機構219は、アジャスタ付パーキングレバー組立体247を構成している。
図6及び
図7に示すように、アジャスタ付パーキングレバー組立体247は、第1ブレーキシュー27と第2ブレーキシュー29との一方の隣接端間に跨がって配設され、パーキングブレーキレバー201が一方向へ回動させられることにより機械的に一対の第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29を離間させる。
【0055】
パーキングブレーキレバー201は、第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13に近い端部側において第2ウエブ37にピン127を介しドラム軸直角面内で回動可能に枢支されている。パーキングブレーキレバー201の遊端203には図示しないパーキングブレーキケーブルが接続されており、このパーキングブレーキケーブルをパーキングブレーキ操作力により牽引することにより、パーキングブレーキレバー201の遊端203がWで示す方向へ変位される。これにより、パーキングブレーキレバー201は、一方でピン127を介して第2ブレーキシュー29をアンカ部15との当接点周りに拡開させ、他方でアジャスタ217を介し第1ブレーキシュー27をアンカ部15との当接点周りに拡開させるフォワードプル型の拡開機構219を構成している。
【0056】
アジャスタ217は、アジャスタレバー53とストラット255とを有してシュー間隙自動調整機構を備えており、アジャスタスクリュー61(
図10参照)により軸方向へ伸縮させられる。
ストラット255は、アジャスタスクリュー61を挟んで一端部側(
図10の右端側)がアジャスタソケット269とされ、第1ブレーキシュー27の第1ウエブ35に係合される。また、ストラット255は、アジャスタスクリュー61を挟んで他端部側(
図10の左端側)が係合板部271とされ、第2ブレーキシュー29の第2ウエブ37に係合される。
【0057】
更に、
図8及び
図9に示すように、ドラムブレーキ装置210には、一方のブレーキシューである第1ブレーキシュー27に切替レバー213が回転自在に設けられ、切替レバー213は拡開機構219の所定以上の作用力(拡開力)により回転される。また、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端間には、切替ストラット23が設けられている。切替ストラット23は、切替レバー213の回転に従動して第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端を第2シューリターンスプリング41の付勢力に抗して拡開させる。
【0058】
本第2実施形態において、切替レバー213は、
図8に示すように、第1支点ピン109によって第1ブレーキシュー27の一方の端部側(ホイールシリンダ13側)に回転自在に支持され入力側となる第1切替レバー211と、第2支点ピン113によって第1ブレーキシュー27の略中間部に回転自在に支持され第1切替レバー211に従動して回転する出力側となる第2切替レバー215と、を有する。第1切替レバー211が、第1切替レバー211と第2切替レバー215との摺接点と第1支点ピン109との間で、拡開機構219からの作用力を受ける。
【0059】
第1切替レバー211および第2切替レバー215は、拡開機構219の所定以上の作用力により回転されると、第1切替レバー211および第2切替レバー215の回転に従動する切替ストラット23が第1ブレーキシュー27と第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端を第2シューリターンスプリング41の付勢力に抗して拡開させるように支点と力点と作用点との間の距離が設定されている。
【0060】
本第2実施形態では、操作部材の非操作状態において、
図9に示すように、アジャスタソケット269と第1切替レバー211とは、第1摺接点227で接触し、第1切替レバー211と第2切替レバー215とは第2摺接点229で接触し、第2切替レバー215と切替ストラット23とは第3摺接点221で接触する。なお、本第2実施形態の第2切替レバー215は、第1切替レバー211と接触する側端215aが第1ウエブ35の裏側面に沿うと共に、切替ストラット23と接触する側端215bが第1ウエブ35の表側面に沿うように折り曲げ形成され、第1ウエブ35を挟持するように取り付けられている(
図11参照)。
【0061】
そこで、本第2実施形態のドラムブレーキ装置210は、拡開機構219からの入力によって第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側を先に拡開してブレーキドラムの内周面に当接させ、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の位置を決定した後、内周面からの反力が第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29に作用して拡開機構219の作用力(拡開力)が所定以上となると、第1切替レバー211および第2切替レバー215が回転して切替ストラット23へ作用力を伝達するように構成されている。
【0062】
ここで、本第2実施形態に係る第2切替レバー215は、
図11に示すように、第1切替レバー211と接触する側端215aと切替ストラット23と接触する側端215bが、第1ウエブ35を挟んで互いに反対側に位置するように折り曲げ形成されている。
そこで、
図6に示したように、アジャスタ217が第1ウエブ35を挟んでバッキングプレート25と反対側に配置されている場合、アンカ部15側では拡開機構219を操作するパーキングブレーキレバー201に接続されたパーキングブレーキケーブルとの干渉を避けるために切替ストラット23に接触する第2切替レバーの側端215bが、バッキングプレート25と反対側に配置される。また、ホイールシリンダ13側ではアジャスタレバー53との干渉を避けるために第1切替レバー211がバッキングプレート25側に配置されると共に第1切替レバー211に接触する第2切替レバー215の側端215aが、バッキングプレート25側に配置される。そこで、第1切替レバー211及び第2切替レバー215は、第1ウエブ35に容易に装着することができる。
【0063】
更に、本第2実施形態に係る第2切替レバー215は、第1ウエブ35を挟持するように折り曲げ形成された一対の挟持部218を有し、これら一対の挟持部218の貫通穴216と第1ウエブ35の支持穴36とに挿着した第2支点ピン113によって、第1ウエブ35に回転自在に支持されている。そして、一対の挟持部218を貫通した第2支点ピン113は、貫通端がCクリップ116により抜け止めされる。
そこで、第2切替レバー215は、第1ウエブ35の表裏側面にそれぞれ位置する一対の挟持部218が回転自在に支持されるので、第2切替レバー215が回転された時に第1ウエブ35に対して偏荷重が作用することがなく、円滑な回転動作が可能となる。
【0064】
次に、
図12〜14に基づいて、上記第2実施形態の切替レバー213の変形例に係る切替レバー231について説明する。なお、上記切替レバー213の構成部材と同等の構成部材には、同一の符号を付し重複する説明は省略する。
図12及び
図13に示すように、第1ブレーキシュー27に回転自在に設けられ、拡開機構219の所定以上の作用力により回転される切替レバー231は、第1切替レバー211と、第2支点ピン122によって第1ブレーキシュー27の略中間部に回転自在に支持され第1切替レバー211に従動して回転する出力側となる第2切替レバー233と、を有する。
【0065】
第2切替レバー233は、第1切替レバー211と接触する側端233aと切替ストラット23と接触する側端233bが、第1ウエブ35を挟んで互いに反対側に位置するように折り曲げ形成されている。
そこで、上記切替レバー213と同様に、切替レバー231を構成する第1切替レバー211及び第2切替レバー233は、第1ウエブ35に容易に装着することができる。
【0066】
更に、第2切替レバー233は、第1ウエブ35を挟持するように折り曲げ形成された一対の挟持部238を有し、これら一対の挟持部238の切欠き穴235,236と第1ウエブ35の支持穴36とに挿着した第2支点ピン122によって、第1ウエブ35に回転自在に支持されている。
そこで、第2切替レバー233は、上記切替レバー213と同様に、第2切替レバー233が回転された時に第1ウエブ35に対して偏荷重が作用することがなく、円滑な回転動作が可能となる。
【0067】
図12及び
図14に示すように、第2支点ピン122は、中央の大径部122aに対して両端が小径部122bとされた段付ピンである。大径部122aは、支持穴36の内径と略同等の外径を有すると共に、第1ウエブ35の板厚と略同等の軸方向幅を有している。また、小径部122bは、切欠き穴235,236の開口幅と略同等の外径を有している。
【0068】
そこで、第2切替レバー233を第1ウエブ35に取付ける際には、先ず、第2支点ピン122の大径部122aを支持穴36に嵌装する。次に、支持穴36から第1ウエブ35の表裏側面にそれぞれ突出した小径部122bが切欠き穴235,236の切欠き開口端側から挿入するようにして、一対の挟持部238を第1ウエブ35に装着する。
第1ウエブ35に装着された第2切替レバー233は、第1ウエブ35の貫通穴38を貫通する第2シューホールド装置33の軸部が貫通穴240に遊嵌されることにより、第1ウエブ35に対する移動が規制された状態で第2支点ピン122に回転自在に支持される。この際、第2支点ピン122は、大径部122aの軸方向段部が切欠き穴235,236の内側縁部に係止されて抜け止めされるので、Cクリップ116のような抜け止め部材を用いる必要がない(
図14参照)。
【0069】
次に、上記構成を有するドラムブレーキ装置210の作用を説明する。
本第2実施形態に係るドラムブレーキ装置210では、パーキング操作前の状態から、パーキングケーブルが車室内の操作部材(操作レバーなど)の操作に従って引っ張られると、操作初期においては、アジャスタ付パーキングレバー組立体247によって第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側の隣接端が先に拡開され、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の位置が決定される。
【0070】
次いで、アジャスタ217を介して拡開された第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側の隣接端がブレーキドラムの内周面に当接し、内周面からの反力が第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29に作用して拡開機構219の作用力(拡開力)が所定以上となると、第1切替レバー211が回転し、第1切替レバー211が第2切替レバー215(233)を押圧するので、第2切替レバー215(233)が第2支点ピン113(122)を中心に
図6の時計回りに回転する。その結果、第2切替レバー215(233)は、切替ストラット23を介して第2ブレーキシュー29を押圧する。これにより、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端が拡開し、ブレーキドラムの内周面に押圧される。
【0071】
即ち、パーキングブレーキのためのフォワードプル型の拡開機構219による第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29の拡開動作が、アジャスタ217設置部位側の第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29にブレーキドラムの内周面からの反力が作用するまでは、モード切替のために配設した第1切替レバー211および第2切替レバー215(233)から成る切替レバー213(231)を回転させず、モード切替機構が作動しない構成である。そこで、拡開機構219の作用力により、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のホイールシリンダ13側の隣接端が拡開されてブレーキドラムの内周面に当接した後、切替レバー213(231)により第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29のアンカ部15側の隣接端が拡開されてブレーキドラムの内周面に当接するため、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29とドラム摺動面との密着性が向上する。
【0072】
従って、本第2実施形態のドラムブレーキ装置210では、パーキング操作終了時、第1ブレーキシュー27および第2ブレーキシュー29は、ホイールシリンダ13側とアンカ部15側の双方で開拡され、ドラム摺動面に対する密着性が向上する。その結果、パーキングブレーキ作動時には、デュオサーボとしての高いパーキング制動力が得られると共に、パーキング制動力が生じる時に発生する緩みが防止される。
【0073】
上述したように、本発明のドラムブレーキ装置は、パーキングケーブルの引き方向等が異なるクロスプル型の拡開機構19及びフォワードプル型の拡開機構219の構成違いを問わず、モード切替機構を付加することができる。また、バッキングプレート25のケーブル取付け部位も一般的な位置に設けることができ、従来のようにバッキングプレート形状が複雑になることもなく大幅なコストアップになることを防げる。