(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114112
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】包装材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/133 20060101AFI20170403BHJP
B65D 85/34 20060101ALI20170403BHJP
B65D 65/04 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
B65D81/133 A
B65D85/34 Z
B65D65/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-112053(P2013-112053)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-231364(P2014-231364A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】396014050
【氏名又は名称】株式会社イケックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(72)【発明者】
【氏名】池口 武徳
【審査官】
佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−504891(JP,A)
【文献】
実開昭53−100367(JP,U)
【文献】
特開2012−030847(JP,A)
【文献】
特開平10−114364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/133
B65D 65/04
B65D 85/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡体を主体とするシート状物からなり、平坦な中央載置部を挟んで対向する2つの持ち上げ膨出部が一体に形成された包装材であって、
前記各持ち上げ膨出部は、持ち上げ上面部と、該持ち上げ上面部から下方へ放射状に延設された反転傾斜部とを有し、
前記中央載置部に被包装物を載置し、前記各持ち上げ膨出部を被包装物側へ屈曲させて、前記反転傾斜部を反転させ、該反転した反転傾斜部と前記持ち上げ上面部によって被包装物の両側から包着することを特徴とする包装材。
【請求項2】
前記持ち上げ膨出部の持ち上げ上面部が中央載置部と平行方向が長径側となる楕円形状である請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記反転された各反転傾斜部が前記被包装物の全周に亘って包着される請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
前記各反転傾斜部の外面側に複数のリブが放射状に形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂発泡体を主体とするシート状物からなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、果物や野菜等の傷付きやすい物品は、外部からの衝撃や表面への損傷等から守るために、物品(被包装物)の外側のほぼ全体を個別的に軟らかく包み込むことができる包装材が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この包装材は、合成樹脂発泡体を主体とするシート状物よりなり、被包装物の底部が載置される中央座部と、前記中央座部を上方に持ち上げかつ該中央座部の下降とともに内方へ反転するように、当該中央座部から下部外方へ傾斜をもって延設された反転傾斜部と、前記反転傾斜部より外方へ放射状に形成された包着片とからなる。
【0004】
上記従来の包装材では、被包装物を中央座部に配置してその底部を押し付け反転傾斜部を反転させるだけで被包装物を包装することができ、特に、桃やリンゴ、メロン等の略球形状の果物の包装に適している。また、保管及び輸送時には、シート状のままで積み重ねが可能であるため、収納や保管の際に省スペース化を図ることができて有利である。
【0005】
しかるに、従来の包装材にあっては、パイナップルやマンゴー等の比較的大きな被包装物を包装した場合、被包装物の重量により転倒しやすくなって被包装物に不要な衝撃を与える等、安定性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2739675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、比較的大きな被包装物を包装した場合であっても転倒しにくく安定性に優れるとともに、保護性をより向上させた包装材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、合成樹脂発泡体を主体とするシート状物からなり、平坦な中央載置部を挟んで対向する2つの持ち上げ膨出部が一体に形成された包装材であって、前記各持ち上げ膨出部は、持ち上げ上面部と、該持ち上げ上面部から下方へ放射状に延設された反転傾斜部とを有し、前記中央載置部に被包装物を載置し、前記各持ち上げ膨出部を被包装物側へ屈曲させて、前記反転傾斜部を反転させ、該反転した反転傾斜部と前記持ち上げ上面部によって被包装物の両側から包着することを特徴とする包装材に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記持ち上げ膨出部の持ち上げ上面部が中央載置部と平行方向が長径側となる楕円形状である請求項1に記載の包装材に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記反転された各反転傾斜部が前記被包装物の全周に亘って包着される請求項1又は2に記載の包装材に係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記各反転傾斜部の外面側に複数のリブが放射状に形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装材に係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る包装材は、合成樹脂発泡体を主体とするシート状物からなり、平坦な中央載置部を挟んで対向する2つの持ち上げ膨出部が一体に形成された包装材であって、前記各持ち上げ膨出部は、持ち上げ上面部と、該持ち上げ上面部から下方へ放射状に延設された反転傾斜部とを有し、前記中央載置部に被包装物を載置し、前記各持ち上げ膨出部を被包装物側へ屈曲させて、前記反転傾斜部を反転させ、該反転した反転傾斜部と前記持ち上げ上面部によって被包装物の両側から包着するため、比較的大きな被包装物を包装した場合であっても十分な安定性が確保されて転倒を抑制することができるとともに、被包装物を両側から包み込んで効果的に保護することが可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記持ち上げ膨出部の持ち上げ上面部が中央載置部と平行方向が長径側となる楕円形状であるため、球形ではない被包装物の包着に最適である。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記反転された各反転傾斜部が前記被包装物の全周に亘って包着されるため、被包装物を全体的に保護することが可能となる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし3において、前記各反転傾斜部の外面側に複数のリブが放射状に形成されているため、反転傾斜部に腰強さを付与して内側方向への反転を確実かつ効果的に行わせるとともに、包装時の被包装物の上部近傍及び下部近傍における緩衝性及び保温(保冷)性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例に係る包装材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜
図4に示す本発明の一実施例に係る包装材10は、シート状物11からなり、中央載置部20と、2つの持ち上げ膨出部30,30が一体に形成されたものである。この包装材10は、
図5に示すように、果物や野菜等の傷付きやすい物品、特にパイナップルやマンゴー等の比較的大きな被包装物Mの包装に好適である。
【0018】
シート状物11は、被包装物Mを包み込むことが可能な柔軟性を有するとともに、その表面の損傷を抑制する保護性及び緩衝性を有する材料によって形成される。このシート状物11にあっては、柔軟性、保護性、緩衝性に加え、優れた保温(保冷)性を得るために、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の公知の合成樹脂発泡体を主体とする材料が好適に用いられる。
【0019】
中央載置部20は、
図3,4,6に示すように、シート状物11の略中央部分に平坦に形成され、被包装物Mの包装時に被包装物Mが載置される。この中央載置部20は平坦であるため、被包装物Mを安定して載置することができ、特に、パイナップルやマンゴー等の比較的大きく球形ではない被包装物Mの場合に転倒しにくくなる。実施例の中央載置部20は、
図3に示すように、一側の縁部が立ち上げられた立ち上げ縁部21と、他側の縁部が平坦な平坦縁部22とからなる。ここで、
図5,7に示すように、立ち上げ縁部21は、被包装物Mの包装時において包装材10の一端側に所定高さの壁部として構成され、被包装物Mの一端側の下部近傍に包着されて、被包装物Mの載置時の横ずれを抑制することができる。また、平坦縁部22は、被包装物Mの包装時において包装材10の他端側を開放する開口部25として構成され、特に
図5に示すように、パイナップル等の被包装物Mの葉(へた)M1等の余剰部分を包装材10の外部に露出させて包装の妨げとならないようにすることができる。
【0020】
2つの持ち上げ膨出部30,30は、
図1,2,4に示すように、平坦な中央載置部20を挟んで対向して形成され、持ち上げ上面部31,31と、反転傾斜部35,35とを有する。持ち上げ上面部31は、内側(非包装時では上側)に持ち上がった台座形状からなり、被包装物Mの包装時にその側部に包着される部分である。持ち上げ上面部31の形状としては、略円形状、略楕円形状、略三角形状や略四角形状等の略他多角形状等、被包装物Mの形状に応じて適宜決定される。実施例の持ち上げ上面部31は、
図2に示すように、中央載置部20と平行方向が長径側となる楕円形状であり、パイナップルやマンゴー等の球形ではない被包装物Mの包着に最適である。
【0021】
反転傾斜部35は、
図1〜
図4に示すように、持ち上げ上面部31から下方へ放射状に延設されており、内方へ反転することにより被包装物Mの上部近傍及び下部近傍に包着される部分である。また、反転傾斜部35は、中央載置部20と環状段差部36を介して一体に形成されているとともに、対向する他の反転傾斜部35と一体に連接されることによって中央載置部20を形成している。環状段差部36は、中央載置部20と反転傾斜部35との境界部分に沿って環状に全周に亘って形成された段部であり、反転傾斜部35の反転箇所を規定するものである。
【0022】
上記2つの持ち上げ膨出部30,30では、
図4〜
図6に示すように、中央載置部20に被包装物Mを載置し、各持ち上げ膨出部30,30を被包装物M側(内側)へ屈曲させて、持ち上げ上面部31から下方へ延設された反転傾斜部35,35を内方へ反転(裏返し)させて内側に湾曲した状態とし、該反転した反転傾斜部35,35と持ち上げ上面部31,31によって被包装物Mの両側から包着するように構成されている。この時、各反転傾斜部35,35が被包装物Mを両側から包み込むようにして略全周に亘って包着されるため、被包装物Mを全体的に保護することが可能となる。また、反転傾斜部35は環状段差部36から反転するため、持ち上げ膨出部30の持ち上げ上面部31の変形が抑制されて、被包装物Mの側部を効果的に包着することができる。
【0023】
また、
図4,5,7に示すように、反転傾斜部35の外面側には、複数のリブ37が放射状に形成されている。反転傾斜部35にリブ37を形成することにより、反転傾斜部35に腰強さを付与して内側方向への反転を確実かつ効果的に行わせるとともに、包装時の被包装物Mの上部近傍及び下部近傍における緩衝性及び保温(保冷)性を高めることができる。
【0024】
次に、包装材10の製造方法について説明する。包装材10の製造方法は、成形性や経済性の観点から、
図8に示すように、真空成形型50を用いた真空プレス成形が好適に実施される。図において、符号51は包装材10の形状を規定する型面52を有する下型、53は下型51の型面52に対応する型面54を有する上型、55は下型51の型面52に開口した真空吸引孔、56は真空吸引孔55に接続された真空ポンプ等の吸引装置である。
【0025】
この製造方法では、予熱されたシート状物11を下型51に配置し、真空吸引孔55を介して吸引装置56を作動させてシート状物11を下型51の型面52に密着させ、上型53を下型51上のシート状物11に対して押圧させて、下型51と上型53とで真空プレス成形が行われて、シート状物11に所定形状が付与される。このように、真空プレス成形を行うことにより、シート状物11に対してリブ37等の細かな形状を容易に賦形することができる。
【0026】
以上図示し説明したように、本発明の包装材10では、合成樹脂発泡体を主体とするシート状物11からなり、平坦な中央載置部20を挟んで対向する2つの持ち上げ膨出部30,30が一体に形成されたものであって、各持ち上げ膨出部30,30は、持ち上げ上面部31,31と、該持ち上げ上面部31,31から下方へ放射状に延設された反転傾斜部35,35とを有し、中央載置部20に被包装物Mを載置し、各持ち上げ膨出部30,30を被包装物M側へ屈曲させて、反転傾斜部35,35を反転させ、該反転した反転傾斜部35,35と持ち上げ上面部31,31によって被包装物Mの両側から包着するため、比較的大きな被包装物Mを包装した場合であっても平坦な中央載置部20により十分な安定性が確保されて転倒を抑制することができるとともに、各持ち上げ膨出部30,30の持ち上げ上面部31,31と反転傾斜部35,35とで被包装物Mを両側から包み込んで効果的に保護することが可能となる。さらに、シート状であることから、保管時や輸送時に積み重ねが可能であり、収納や保管の際に省スペース化を図ることができる。
【0027】
また、持ち上げ膨出部30の持ち上げ上面部31が中央載置部20と平行方向が長径側となる楕円形状であるため、球形ではない被包装物の包着に最適である。
【0028】
さらに、反転された各反転傾斜部35,35が被包装物Mの全周に亘って包着されるため、被包装物を全体的に保護することが可能となる。
【0029】
加えて、各反転傾斜部35,35の外面側に複数のリブ37が放射状に形成されているため、反転傾斜部35,35に腰強さを付与して内側方向への反転を確実かつ効果的に行わせるとともに、包装時の被包装物Mの上部近傍及び下部近傍における緩衝性及び保温(保冷)性を高めることができる。
【0030】
なお、本発明の包装材は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 包装材
11 シート状物
20 中央載置部
30 持ち上げ膨出部
31 持ち上げ上面部
35 反転傾斜部
37 リブ
M 被包装物