特許第6114126号(P6114126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114126
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20170403BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20170403BHJP
   B32B 27/30 20060101ALN20170403BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20170403BHJP
   B01D 39/14 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   B05D7/24 302M
   B05D7/02
   !B32B27/30 102
   !G02B5/30
   !B01D39/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-140345(P2013-140345)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-13242(P2015-13242A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】塘口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
(72)【発明者】
【氏名】國方 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229305(JP,A)
【文献】 特開2002−144419(JP,A)
【文献】 特開2010−280856(JP,A)
【文献】 特開2001−343521(JP,A)
【文献】 特開2002−346312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D
C08J7/04−7/06
G02B5/30
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材の片側にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布および乾燥して、ポリビニルアルコール系樹脂層を形成することを含む、積層体の製造方法であって、
塗布前の塗布液を、ろ過精度が50μm〜100μmであるデプスタイプフィルターを通過させること、および、
該デプスタイプフィルターに供給される該塗布液にかかる圧力を変動させて、該フィルター内部の気泡を除去することを含む
方法。
【請求項2】
前記圧力の変動が、前記塗布液を前記デプスタイプフィルターに供給するポンプを間欠的に停止することにより行われる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記圧力変動における最大圧力と最小圧力との差が0.10MPa〜0.25MPaである、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記塗布液の粘度が100mPa・s〜10000mPa・sである、請求項1から3のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール系樹脂層が形成された樹脂基材を延伸することをさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の積層体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な画像表示装置である液晶表示装置は、その画像形成方式に起因して、液晶セルの両側に偏光膜が配置されている。偏光膜の製造方法として、例えば、樹脂基材とポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層とを有する積層体を延伸し、次に染色液に浸漬させて偏光膜を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1)。このような方法によれば、厚みの薄い偏光膜が得られるため、近年の液晶表示装置の薄型化に寄与し得るとして注目されている。PVA系樹脂層は、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布および乾燥させて形成される。塗布液に気泡が存在していると、形成されるPVA系樹脂層にスジ状または点状の外観欠点が発生するので、塗布液から気泡を除去することが望ましい。塗布液中の気泡を除去する技術として、PVA系重合体フィルムの製造において、PVA系重合体を構成成分とする製膜原料を、フィルターを通過させる技術が知られている(例えば、特許文献2)。しかし、従来の技術では、成膜原料(すなわち、塗布液)をフィルターを通過させる際(実質的には、通過に伴い塗布液でフィルターを充填する際)、フィルター内部の気泡を除去することが困難である。結果として、塗布液から気泡を除去することが困難であり、仮に気泡を除去できたとしても当該除去に多大な時間を要し、生産性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−343521号公報
【特許文献2】特開2002−144419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、生産性に優れ、かつ、外観欠点が抑制された積層体が得られ得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層体の製造方法は、樹脂基材の片側にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布および乾燥して、ポリビニルアルコール系樹脂層を形成することを含む。本発明の積層体の製造方法においては、塗布前の塗布液を、ろ過精度が50μm〜100μmであるデプスタイプフィルターを通過させること、および、該デプスタイプフィルターに供給される該塗布液にかかる圧力を変動させて、該フィルター内部の気泡を除去することを含む。
1つの実施形態においては、上記圧力の変動は、上記塗布液を上記デプスタイプフィルターに供給するポンプを間欠的に停止することにより行われる。
1つの実施形態においては、上記圧力変動における最大圧力と最小圧力との差は0.10MPa〜0.25MPaである。
1つの実施形態においては、上記塗布液の粘度は100mPa・s〜10000mPa・sである。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記ポリビニルアルコール系樹脂層が形成された樹脂基材を延伸することをさらに含む。
本発明の別の局面によれば、積層体が提供される。この積層体は、上記の方法で得られ、ポリビニルアルコール系樹脂層の気泡欠点数が1個/m以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層を含む積層体の製造において、PVA系樹脂層を形成する塗布液を、比較的低いろ過精度を有するデプスタイプフィルターを用い、かつ、当該フィルターに供給される塗布液にかかる圧力を変動させて当該フィルター内部の気泡を除去することにより、塗布液の気泡を除去することができ、結果として、外観欠点(気泡欠点)が格段に少ない積層体を得ることができる。しかも、上記の気泡除去操作は短時間で行うことができるので、本発明の製造方法は生産性にも優れている。結果として、本発明によれば、品質および光学特性に優れた薄型偏光膜を高い生産性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の製造方法における塗布液の気泡および異物等の除去の形態の一例を示す模式図である。
図2】本発明の製造方法における気泡除去の際の圧力変動プロファイルの一例を示すグラフである。
図3】本発明の好ましい実施形態による積層体の概略断面図である。
図4】実施例および比較例の圧力変動プロファイルを比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.積層体の製造方法
A−1.製造方法の概略
本発明の1つの実施形態による積層体の製造方法は、樹脂基材の片側にポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を含む塗布液を塗布および乾燥して、PVA系樹脂層を形成することを含む。本発明の積層体の製造方法においては、塗布前の塗布液を、ろ過精度が50μm〜100μmであるデプスタイプフィルターを通過させること、および、該デプスタイプフィルターに供給される該塗布液にかかる圧力を変動させて、該フィルター内部の気泡を除去することを含む。以下、製造方法の代表的な形態を説明する。
【0009】
A−2.樹脂基材の準備
上記樹脂基材は、代表的には、熱可塑性樹脂で形成される。熱可塑性樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられる。例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリエステル系樹脂が用いられる。中でも、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。特に、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールをさらに含む共重合体が挙げられる。
【0010】
後述する延伸処理において水中延伸方式を採用する場合、上記の好ましい樹脂基材は水を吸収し得、水が可塑剤的な働きをして可塑化し得る。その結果、延伸応力を大幅に低下させることができ、高倍率に延伸することが可能となり、空中延伸時よりも樹脂基材の延伸性が優れ得る。その結果、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。1つの実施形態においては、樹脂基材は、好ましくは、その吸水率が0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。一方、樹脂基材の吸水率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。このような樹脂基材を用いることにより、製造時に樹脂基材の寸法安定性が著しく低下して、得られる偏光膜の外観が悪化するなどの不具合を防止することができる。また、水中延伸時に基材が破断したり、樹脂基材からPVA系樹脂層が剥離したりするのを防止することができる。なお、樹脂基材の吸水率は、例えば、構成材料に変性基を導入することにより調整することができる。吸水率は、JIS K 7209に準じて求められる値である。
【0011】
樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは170℃以下である。このような樹脂基材を用いることにより、PVA系樹脂層の結晶化を抑制しながら、積層体の延伸性を十分に確保することができる。さらに、水による樹脂基材の可塑化と、水中延伸を良好に行うことを考慮すると、120℃以下であることがより好ましい。1つの実施形態においては、樹脂基材のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。このような樹脂基材を用いることにより、上記PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、樹脂基材が変形(例えば、凹凸やタルミ、シワ等の発生)するなどの不具合を防止して、良好に積層体を作製することができる。また、PVA系樹脂層の延伸を、好適な温度(例えば、60℃程度)にて良好に行うことができる。別の実施形態においては、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、樹脂基材が変形しなければ、60℃より低いガラス転移温度であってもよい。なお、樹脂基材のガラス転移温度は、例えば、構成材料に変性基を導入する、結晶化材料を用いて加熱することにより調整することができる。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
【0012】
樹脂基材の厚みは、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μmである。
【0013】
樹脂基材には、予め、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよい。樹脂基材とPVA系樹脂層との密着性を向上させることができるからである。
【0014】
A−3.ポリビニルアルコール系樹脂層の形成
A−3−1.ポリビニルアルコール系樹脂
ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層を形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0015】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0016】
A−3−2.塗布液の調製
塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が用いられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、樹脂基材に密着した均一な塗布膜が設けられ得る。
【0017】
塗布液に、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。
【0018】
塗布液の粘度は、好ましくは100mPa・s〜10000mPa・sであり、より好ましくは300mPa・s〜5000mPa・sであり、さらに好ましくは500mPa・s〜3000mPa・sである。
【0019】
A−3−3.塗布液の気泡および異物等の除去
上記のとおり、本発明においては、塗布液を所定のフィルターを通過させることを含む。図1は、本発明の製造方法における気泡および異物等の除去の形態の一例を示す模式図である。図1に示すように、塗布液の気泡および異物等を除去する系は、タンクと送液ポンプとフィルターとが直列に設けられている。塗布液をポンプによってフィルターに供給し、当該フィルターにおいて塗布液をろ過することにより、塗布液中の異物等が除去され得る。さらに、詳細は後述するとおり、フィルターとして所定のろ過精度を有するデプスタイプフィルターを用い、かつ、当該フィルターに供給される塗布液にかかる圧力を変動させることにより、フィルター内部の気泡を迅速かつ十分に除去することができ、結果として、塗布液の気泡を除去することができる。図示例は、ろ過した塗布液をタンクに戻す循環系である。塗布液の気泡および異物等の除去は、図1に示すような循環系により塗布液をフィルターに複数回通過させてもよく、塗布液をフィルターに1回のみ通過させてもよい。塗布液のフィルターの通過回数(循環系の場合には、循環時間)は、目的、積層体の用途、塗布液の状態等によって適切に設定され得る。
【0020】
図1に示すような循環系における気泡および異物等の除去について、より具体的に説明する。上記のとおり、塗布前の塗布液は、ポンプによってフィルターに供給され、塗布液が当該フィルターを通過する際に当該フィルターによって異物等がろ過される。塗布液は、三方弁の開放を切り替えることにより塗工ダイに送られ、当該塗工ダイから樹脂基材に塗布(後述のA−3−4項)、または、タンクに戻されて循環される。樹脂基材への塗布を開始する際(三方弁を塗工ダイ側に開く際)には、送液系(特に、フィルター内部)が塗布液で十分に充填されていることが好ましい。すなわち、塗布液は、送液系を十分に充填した状態でフィルターを通過することが好ましい。そのような充填が不十分である場合には、塗布液中にフィルター内部から気泡が抜けてしまい、塗布液中に気泡が存在することとなる場合が多い。その結果、得られるPVA系樹脂層に欠点が生じ、品質低下につながる場合が多い。本発明によれば、後述のとおり、所定のろ過精度を有するデプスタイプフィルターを用い、かつ、当該フィルターに供給される塗布液にかかる圧力を変動させることにより、フィルター内部の気泡を迅速かつ十分に除去することができるので、結果として、塗布液中の気泡を十分に除去することができる。
【0021】
塗布液の気泡および異物等の除去は、上記のとおり、デプスタイプ(深層ろ過型)フィルターを用いて行われる。デプスタイプフィルターとしては、任意の適切な構成が採用され得る。具体例としては、ろ材の形態によって、糸を円筒コアに巻いた糸巻きタイプ、不織布を円筒コアに巻き付けた不織布積層タイプ、スポンジのような樹脂成形品を用いる樹脂成形タイプが挙げられる。ろ材の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン系複合繊維、熱接着性ポリエステル繊維が挙げられる。デプスフィルターは、代表的には、圧力容器(ハウジング)に取り付けられて、ろ過すべき液体(本発明においてはPVA系塗布液)を加圧して、ハウジング内のフィルターの外側から内側に流すことにより、ろ材の厚みで液体中の気泡および/または異物を除去する。フィルターとしては、デプスタイプフィルター以外にサーフェスタイプ(表面ろ過型)フィルター(例えば、プリーツタイプフィルター)が知られているが、本発明においては、気泡除去、ろ過能力および耐久性等の観点からデプスタイプフィルターが用いられる。
【0022】
デプスタイプフィルターは、カートリッジタイプのフィルターとして市販されている。本発明においては、このような市販のデプスタイプフィルターも好適に用いることができる。市販品の具体例としては、ポール社製のものとして、HDCII、プロファイル、プロファイルII、ウルチプリーツプロファイル、プロファイルIIプラス、ペトロソープ;チッソ社製のものとして、CPフィルター、BMフィルター、ポーラスファイン、スーパーワインドフィルター、ステムフィルター、GFフィルター;ロキテクノ社製のものとして、SLフィルター、マイクロシリアフィルター、ダイアII型フィルター、ミクロピュアフィルター;富士フィルム社製のものとして、アストロポアPPEが挙げられる。
【0023】
デスタイプフィルターのろ過精度は50μm〜100μmであり、好ましくは60μm〜100μmであり、より好ましくは70μm〜100μmである。ろ過精度とは、JIS
Z 8901に規定される試験用粉体1を純水に0.3ppm分散させた液をろ過したときに、99.9%以上分離できる最小粒子径をいう。したがって、ろ過精度の値が大きいほど、ろ過できる粒子径が大きい(すなわち、ろ過精度が低く、フィルターの目が粗い)ことを意味する。本発明に用いられるデプスタイプフィルターのろ過精度の値は、通常の精密ろ過に所望されるろ過精度(例えば20μm以下)に比べて、格段に大きい。このように、本発明は、ろ過精度が比較的低いフィルターを用いて気泡除去率を向上させるという、通常とは逆方向の技術思想に基づくものである。ここで、上記のとおり、樹脂基材への塗布を開始する際にフィルターへの塗布液の充填が不十分である場合、塗布液中にフィルター内部から気泡が抜けてしまい、得られるPVA系樹脂層に欠点が生じ、品質低下につながる場合が多い。そのため、フィルター内部の空隙を塗布液で完全に充填させる必要がある。ところが、そのような充填は、通常、長時間にわたり塗布液を循環させなければならず、生産効率が悪い。本発明においては、比較的ろ過精度の低いデプスタイプフィルターを用い、かつ、フィルターに塗布液を充填する際に、フィルターに供給される塗布液にかかる圧力を変動させることにより、フィルター内部の空隙に残った空気を膨張、合体させることができる。その結果、フィルター内の空気が抜けやすくなり、速やかに塗布液で充填することができ、生産性を向上させることができる。例えば、塗布液にかかっている0.2MPaの圧力を解放して大気圧とすると、圧力がかかっていた際には100μm程度であった気泡の平均径が、125μm程度に増大し得る。
【0024】
本発明においては、上記デプスタイプフィルターに供給される塗布液にかかる圧力を変動させることを含む。当該圧力の変動は、ポンプによる塗布液の吐出量、ポンプの出力等を変化させることにより行われる。圧力の変動は、目的や塗布液の種類に応じて、任意の適切なプロファイルで行われ得る。例えば、圧力は、図2(a)に示すようにサインカーブ状に変動させてもよく、図2(b)に示すようにパルス状に変動させてもよく、これらを組み合わせたプロファイルで変動させてもよい。1つの実施形態においては、圧力の変動は、図2(c)に示すように少なくとも一定の時間塗布液にかかる圧力が低下するようなプロファイルであればよく、好ましくは、図2(d)に示すように少なくとも一定の時間塗布液にかかる圧力がゼロとなる(塗布液が大気圧状態におかれる)ようなプロファイルであればよい。図2(d)に示すような圧力変動プロファイルは、例えば、ポンプを間欠的に停止することにより実現され得る。圧力変動における最大圧力と最小圧力との差は、好ましくは0.10MPa〜0.25MPaであり、より好ましくは0.15MPa〜0.22MPaである。所定のプロファイルで圧力を変動させることにより、および/または、圧力変動における最大圧力と最小圧力との差を上記のような範囲とすることにより、上記のようにフィルター内部の気泡の平均径が増大し得る場合に、フィルター内部の気泡が抜けやすく、速やかにフィルターに塗布液を充填することができる。結果として、塗布液中の気泡を良好に除去することができる。
【0025】
上記のとおり、本発明の実施形態によれば、塗布液にかかる圧力を変動させて比較的低いろ過精度を有するフィルターを当該塗布液で充填することにより、従来は除去困難であったフィルター内部の気泡を短時間で除去することができる。結果として、塗布液中の気泡を良好に除去することができる。塗布液における気泡除去率は、1つの実施形態においては90%以上であり、別の実施形態においては95%以上である。
【0026】
A−3−4.塗布液の塗布および乾燥
次いで、気泡が除去された塗布液を、樹脂基材に塗布する。塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
【0027】
塗布液を、乾燥後のPVA系樹脂層の厚みが、好ましくは3μm〜40μm、さらに好ましくは3μm〜20μmとなるように塗布する。上記塗布液の塗布・乾燥温度は、好ましくは50℃以上である。
【0028】
以上のようにして、樹脂基材上にPVA系樹脂層が形成される。
【0029】
A−4.樹脂基材の延伸
上記のようにして形成されたPVA系樹脂層は、偏光膜の中間体(偏光膜とするための処理を施し得る状態)であってもよいし、偏光膜(偏光膜として使用され得る状態)であってもよい。
【0030】
PVA系樹脂層が偏光膜の中間体である形態においては、本発明の製造方法は、上記偏光膜とするための処理として、PVA系樹脂層が形成された樹脂基材を延伸することをさらに含んでいてもよい。上記偏光膜とするための処理としては、延伸処理に加えて、例えば、染色処理、不溶化処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理が挙げられる。これらの処理は、目的に応じて適宜選択され得る。また、処理順序、処理のタイミング、処理回数等、適宜設定され得る。以下、各々の処理について説明する。
【0031】
(染色処理)
上記染色処理は、代表的には、PVA系樹脂層をヨウ素で染色することにより行う。具体的には、PVA系樹脂層にヨウ素を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、ヨウ素を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液に積層体を浸漬させる方法である。ヨウ素が良好に吸着し得るからである。
【0032】
上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜0.5重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.02重量部〜20重量部、より好ましくは0.1重量部〜10重量部である。染色液の染色時の液温は、PVA系樹脂の溶解を抑制するため、好ましくは20℃〜50℃である。染色液にPVA系樹脂層を浸漬させる場合、浸漬時間は、PVA系樹脂層の透過率を確保するため、好ましくは5秒〜5分である。また、染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光膜の偏光度もしくは単体透過率が所定の範囲となるように、設定することができる。1つの実施形態においては、得られる偏光膜の偏光度が99.98%以上となるように、浸漬時間を設定する。別の実施形態においては、得られる偏光膜の単体透過率が40%〜44%となるように、浸漬時間を設定する。
【0033】
(延伸処理)
上記延伸処理は、積層体を延伸浴に浸漬させながら行う水中延伸方式であってもよいし、空中延伸方式であってもよい。好ましくは、水中延伸処理を少なくとも1回施し、さらに好ましくは、水中延伸処理と空中延伸処理を組み合わせる。水中延伸によれば、上記熱可塑性樹脂基材やPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光膜を製造することができる。
【0034】
積層体の延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。積層体の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
【0035】
積層体の延伸方向は、任意の適切な方向を選択することができる。好ましい実施形態においては、長尺上の積層体の長尺方向に延伸する。
【0036】
積層体の延伸温度は、樹脂基材の形成材料、延伸方式等に応じて、任意の適切な値に設定することができる。空中延伸方式を採用する場合、延伸温度は、好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)以上であり、さらに好ましくは樹脂基材のガラス転移温度(Tg)+10℃以上、特に好ましくはTg+15℃以上である。一方、積層体の延伸温度は、好ましくは170℃以下である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。
【0037】
延伸方式として水中延伸方式を採用する場合、延伸浴の液温は、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは50℃〜85℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、樹脂基材のガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水による樹脂基材の可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。
【0038】
水中延伸方式を採用する場合、積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することが好ましい(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性を有する偏光膜を作製することができる。
【0039】
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜10重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光膜を作製することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
【0040】
好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜15重量部、より好ましくは0.5重量部〜8重量部である。
【0041】
積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
【0042】
積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上である。このような高い延伸倍率は、例えば、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。なお、本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
【0043】
好ましくは、水中延伸処理は染色処理の後に行う。
【0044】
(不溶化処理)
上記不溶化処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。特に水中延伸方式を採用する場合、不溶化処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。不溶化浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、不溶化処理は、積層体作製後、染色処理や水中延伸処理の前に行う。
【0045】
(架橋処理)
上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。好ましくは、架橋処理は水中延伸処理の前に行う。好ましい実施形態においては、染色処理、架橋処理および水中延伸処理をこの順で行う。
【0046】
(洗浄処理)
上記洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。
【0047】
(乾燥処理)
乾燥処理における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
【0048】
上記偏光膜は、実質的には、二色性物質が吸着配向されたPVA系樹脂層である。偏光膜の厚みは、代表的には25μm以下であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下、特に好ましくは5μm以下である。一方、偏光膜の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上、特に好ましくは43.0%以上である。偏光膜の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0049】
B.積層体
本発明の積層体は、上記A項に記載の製造方法により得られる。図3は、本発明の好ましい実施形態による積層体の概略断面図である。積層体10は、樹脂基材11と樹脂基材11の片側に設けられたポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層12とを有する。図示しないが、本発明の積層体は、樹脂基材およびPVA系樹脂層以外に、その他の部材(層)を有していてもよい。その他の部材(層)としては、例えば、光学機能フィルム、粘着剤層、接着剤層、易接着層等が挙げられる。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。接着剤層は、代表的にはPVA系接着剤で形成される。光学機能フィルムは、例えば、偏光膜保護フィルム、位相差フィルム等として機能し得る。積層体10は、代表的には、長尺状とされている。積層体の厚みは、その構成により異なるが、代表的には20μm〜500μmである。
【0050】
本発明の積層体は、上記A項に記載の製造方法により得られる結果として、PVA系樹脂層に気泡欠点が非常に少ない。より具体的には、PVA系樹脂層の気泡欠点数は1個/m以下であり、好ましくは0.7個/m以下であり、より好ましくは0.1個/m以下であり、さらに好ましくは0.05個/m以下である。このように、積層体においてPVA系樹脂層の気泡欠点が格段に少ない結果として、品質および光学特性に優れた薄型偏光膜を得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
重合度4200、ケン化度99.2%のPVA粉末を水に溶解した濃度7%のPVA水溶液を調製した。このPVA水溶液の粘度を、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、23℃、ローター回転数20rpmで測定した。PVA水溶液の粘度は2000mPa・sであった。一方、タンクと送液ポンプとフィルターとが直列に設けられ、タンクから送液ポンプによりフィルターに供給されたPVA水溶液がフィルター通過後タンクに戻る、図1に示すような循環系を構築した。フィルターは、デプスタイプのカートリッジフィルター(株式会社ロキテクノ社製、製品名「スロープピュア」、ろ過精度75μm、20インチサイズ)を12本使用した。上記で調製したPVA水溶液をこの循環系で1時間循環させた。より詳細には、PVA水溶液をタンクに投入し、総液ポンプ(送液量:10L/min)でフィルターに供給し、フィルター通過後タンクに戻し、これを1サイクルとして、このサイクルを1時間繰り返した。その際、送液ポンプを間欠的に停止することにより、図4に示すようなプロファイルで圧力を変動させた。ここで、ポンプ稼働時とポンプ停止時の圧力差は0.18MPaとなるようにした。なお、図4は20分間の圧力プロファイルを示しており、本実施例は、これを3サイクル繰り返した。フィルターの前後に設置した超音波センサー(図示せず:日清電子株式会社社製、製品名「BC計」)を用いて、PVA水溶液を60分循環させた後の気泡除去率を以下の式から算出した。
気泡除去率(%)=(60分経過後にフィルターを通過した後の気泡数)/(最初にフィルターを通過する前の気泡数)×100
【0053】
市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「SH046」、Tg:70℃、厚み:200μm)をそのまま用いて、樹脂基材とした。この樹脂基材の一方の面に、上記のようにして気泡除去したPVA水溶液をスロットダイコーターにより塗布し、温度60℃で乾燥し、厚み10μmのPVA系樹脂層を形成した。形成されたPVA系樹脂層の外観欠点(気泡欠点)の数を目視により観察し、1m当たりの数に換算した。評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
ろ過精度50μmのデプスタイプフィルター(住友スリーエム株式会社製、製品名「ベータピュア」)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPVA溶液の気泡除去を行い、および、PVA系樹脂層を形成した。さらに、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
ろ過精度100μmのデプスタイプフィルター(住友スリーエム株式会社製、製品名「ベータピュア」)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPVA溶液の気泡除去を行い、および、PVA系樹脂層を形成した。さらに、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例1]
送液ポンプを停止せず、図4に示すように圧力を変動させなかったこと以外は実施例1と同様にしてPVA溶液の気泡除去を行い、および、PVA系樹脂層を形成した。さらに、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
[比較例2]
ろ過精度20μmのデプスタイプフィルター(住友スリーエム株式会社製、製品名「ポリプロクリーン」)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPVA溶液の気泡除去を行い、および、PVA系樹脂層を形成した。さらに、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
[比較例3]
ろ過精度70μmのプリーツタイプフィルター(日本ポール株式会社製、製品名「プロファイルUP」)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPVA溶液の気泡除去を行い、および、PVA系樹脂層を形成した。さらに、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、比較例に比べて、気泡除去率およびPVA系樹脂層の気泡欠点数のいずれにおいても顕著に良好な結果が得られた。
【0061】
[実施例4]
実施例1で得られた積層体を、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化工程)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを2重量部配合して得られたヨウ素水溶液)に60秒間浸漬させた(染色工程)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋工程)。
その後、積層体を、液温60℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に一軸延伸を行った(延伸工程)。ホウ酸水溶液への浸漬時間は120秒であり、延伸倍率を5.0倍とした。
その後、積層体を洗浄浴(水100重量に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた後、60℃の温風で乾燥させた(洗浄・乾燥工程)。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜には光学的な欠点がないことを確認した。さらに、得られた偏光膜は、品質にばらつきがなく、歩留まりが非常に高かった。
【0062】
[実施例5]
実施例2で得られた積層体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜には光学的な欠点がないことを確認した。さらに、得られた偏光膜は、品質にばらつきがなく、歩留まりが非常に高かった。
【0063】
[実施例6]
実施例3で得られた積層体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜には光学的な欠点がないことを確認した。さらに、得られた偏光膜は、品質にばらつきがなく、歩留まりが非常に高かった。
【0064】
[比較例4]
比較例1で得られた積層体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜には光学的な欠点が認められた。さらに、得られた偏光膜は、光学的な欠点に起因して品質にばらつきがあり、歩留まりが悪かった。
【0065】
[比較例5]
比較例2で得られた積層体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜には光学的な欠点が認められた。さらに、得られた偏光膜は、光学的な欠点に起因して品質にばらつきがあり、歩留まりが悪かった。
【0066】
[比較例6]
比較例3で得られた積層体を用いたこと以外は実施例4と同様にして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜が形成された積層体を得た。得られた偏光膜には光学的な欠点が認められた。さらに、得られた偏光膜は、光学的な欠点に起因して品質にばらつきがあり、歩留まりが悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の製造方法により得られる積層体は、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、カーナビゲーション、コピー機、プリンター、ファックス、時計、電子レンジ等の液晶パネルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0068】
10 積層体
11 樹脂基材
12 ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂層
図1
図2
図3
図4