(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114174
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/02 20060101AFI20170403BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
B41J11/02
B41J2/01 305
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-259358(P2013-259358)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2014-237308(P2014-237308A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-100401(P2013-100401)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社OKIデータ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研治
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−279877(JP,A)
【文献】
特開2013−020854(JP,A)
【文献】
特開2012−020553(JP,A)
【文献】
特開2004−265808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00−11/70
B41J 2/01
B41J 2/165− 2/185
B41J 2/21− 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドを搭載したキャリッジの搬送方向に沿って配置された平板プラテンと、前記プラテンの背面に配置されたヒーターと、前記プラテンを支持する立設板と、を有するインクジェット記録装置において、
前記プラテンの背面に、前記ヒーターが挿入され前記プラテンの長手方向の端部で折り返される溝を有し、
前記ヒーターは外周の最大径が前記溝の開口部の幅より大きく、前記外周が圧縮されて前記溝に前記ヒーターが挿入され、
前記立設板は前記プラテンと接する部分に断熱部を有し、前記立設板は前記プラテンの短手方向に沿って前記プラテンと接して固定され、前記立設板は前記プラテンの前記長手方向の端部を含む複数の位置に配置されており、
前記ヒーターの外れを防止するヒーター支持板が、前記プラテンの背面の前記溝の折り返される部分に前記プラテンに接して備わり、前記ヒーター支持板と前記立設板が前記プラテンの背面上に重ならないように前記ヒーター支持板が分割して配置されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクジェットヘッドを搭載したキャリッジの搬送方向に沿って配置された平板プラテンと、前記プラテンの背面に配置されたヒーターと、前記プラテンを支持する立設板と、を有するインクジェット記録装置において、
前記プラテンの背面に、前記ヒーターが挿入され前記プラテンの端部で折り返される溝を有し、
前記ヒーターは外周の最大径が前記溝の開口部の幅より大きく、前記外周が圧縮されて前記溝に前記ヒーターが挿入され、
前記ヒーターの外れを防止するヒーター支持板が、前記プラテンの背面の前記溝の折り返される部分に備わり、
前記ヒーター支持板の前記溝の開口部に対向する位置に凹部が設けられ、
前記凹部に断熱材が挿入されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記ヒーター支持板は、前記プラテンと同材質であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記プラテンの背面の前記溝の折り返される部分の他に更に前記プラテンの長手方向の中央部に前記ヒーター支持板が備わることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記中央部に配置されている前記ヒーター支持板に前記プラテンの温度を計測する温度センサーが固定されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ヒーター支持板の前記溝の開口部に対向する位置に凹部を設けられ、前記凹部に断熱材が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やプラスチックフィルムなどの記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置が広く普及している。近年では、家庭用プリンタやオフィス用プリンタとして書類や葉書などを作成するために用いられるのみならず、屋外に置かれる表示物などの記録のためにインクジェット記録装置が用いられることもある。その場合、風雨や日光の影響で色が褪せたり落ちたりすることを抑えるために、溶剤系のインクが用いられ、塩化ビニールのフィルムや紙等の記録媒体に記録が行われる。
【0003】
具体的には、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクが平板のプラテン上の記録媒体に着弾して、画像の記録が行われる。この時、記録媒体に付着したインク滴の乾燥時間が長いと、隣接するインク滴が混じり合って滲みの原因や、ぼやけた画像になる問題がある。また、インクの乾燥時間が長いと、記録速度を速くすることが困難であることや、記録後の記録媒体をインクが乾くまで保管しておくスペースが必要であるなど、作業効率が非常に悪くなる。特に、屋外に置かれる表示物など、記録媒体が比較的大きい場合には、このような問題が顕著となる。
【0004】
そのため、例えば、特開2006−231704号公報の記録装置では、記録媒体にインクを吐出する時に、その記録媒体を支持する平板のプラテンの裏面にヒーターを配置し、記録媒体を加熱しながら記録し、また、記録後に記録媒体を案内する案内板を加熱し、記録時や記録後に記録媒体を加熱して、インクの定着を促進させている。また、この記録装置では、プラテン表面の温度を均一にするために、プラテンを支持する場合に、断熱部材を介して立設する板で支持し、支持部材からの放熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−231704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋外に置かれる表示物など、記録媒体が大きい場合には、その記録媒体を支持する金属製の平板のプラテンも大型になる。この大型のプラテンは、重量も大きく、端部だけで支持するのが困難である。そこで、複数の立設板を用いて、プラテンの長手方向に複数の位置で支持するのが一般的である。
【0007】
また、プラテンの裏面には溝が形成され、その溝にヒーター線が入れられている。単に溝の中に入れられている場合は、立設板の間隔が長くなると、このヒーター線が溝から外れて空中に弛んだ状態となり、熱がプラテンに伝わらないという問題がある。
【0008】
また、ヒーター線が、溝から外れないようにアルミシートなどを張り、外れを防止することもできる。しかし、メンテナンスをするときに、アルミシートを剥がさなければヒーター線をメンテナスできず、作業の手間がかなり多く発生する。また、はがしたアルミシートは皺ができ、そのため、熱伝導が一様でなくなり、再利用することが困難となり、コストの上昇にもつながる。
【0009】
このように、支持部材を介する熱の逃げによって、プラテン内に部分的な温度差が生じる。プラテンの部分的な温度差によって、記録媒体内でインクの乾燥の速い部分と遅い部分が生じ、それが例えばインクの滲み方の違いによってドット径(大きさ)や形状の差が生じ、色むらなどの記録画質の低下の原因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明の目的は、ヒーターからプラテンに伝わった熱の逃げを小さくし、プラテンの部分的な温度差を抑制するとともに、プラテンのメンテナンスが容易にでき、良好な記録が可能であるインクジェット記録装置を提供することにある。そこで、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジの搬送方向に沿って配置された平板プラテンと、前記プラテンの背面に配置されたヒーターと、前記プラテンを支持する立設板と、を有するインクジェット記録装置において、前記プラテンの背面に、前記ヒーターが挿入され前記プラテンの端部で折り返される溝を有し、前記ヒーターは外周の最大径が前記溝の開口部の幅より大きく、前記外周が圧縮されて前記溝に前記ヒーターが挿入され、前記ヒーターの外れを防止するヒーター支持板が、前記プラテンの背面の前記溝の折り返される部分に
備わり、前記ヒーター支持板の前記溝の開口部に対向する位置に凹部が設けられ、前記凹部に断熱材が挿入されていることを特徴とする。
また、本願発明のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジの搬送方向に沿って配置された平板プラテンと、前記プラテンの背面に配置されたヒーターと、前記プラテンを支持する立設板と、を有するインクジェット記録装置において、前記プラテンの背面に、前記ヒーターが挿入され前記プラテンの長手方向の端部 で折り返される溝を有し、前記ヒーターは外周の最大径が前記溝の開口部の幅より大きく、前記外周が圧縮されて前記溝に前記ヒーターが挿入され、前記立設板は前記プラテンと接する部分に断熱部を有し、前記立設板は前記プラテンの短手方向に沿って前記プラテンと接して固定され、前記立設板は前記プラテンの前記長手方向の端部を含む複数の位置に配置されており、前記ヒーターの外れを防止するヒーター支持板が、前記プラテンの背面の前記溝の折り返される部分に前記プラテンに接して備わり、前記ヒーター支持板と前記立設板が前記プラテンの背面上に重ならないように前記ヒーター支持板が分割して配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ヒーターからプラテンに伝わった熱が逃げるのを抑え、プラテンの部分的な温度差を抑えることによって、プラテン上の記録媒体に付着したインクを迅速かつ均一に乾燥させることによって、良好な記録が可能であり、また、ヒーターのメンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、プラテンの裏面側からの支持構造を説明する図である。
【
図2】
図2は、プラテンの側面側からの支持構造を説明する図である。
【
図3】
図3は、プラテンの支持構造を説明する斜視図である。
【
図4】
図4は、インクジェット記録装置の全体を示す概略図である。
【
図5】
図5は、ヒーター支持板の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、
図4を用いてインクジェット記録装置の全体を説明する。インクジェット記録装置40は、記録媒体にインクを吐出して記録する本体部44と、それを支える脚部45が備わる。本体部にはインクを供給するインクカートリッジを収納するインクカートリッジ収納部43が備わる。カバー41は開閉する。このカバー41の奥にプラテンが備わる。プラテンに支持された記録媒体に画像等を記録後、案内部42に記録媒体が案内されながら搬送される。案内部42の内部にはヒーターが備わり、記録後の記録媒体を加熱し、インクの乾燥、定着を促進させる。
【0014】
このようなインクジェット記録装置40の外装を取り除き、プラテンの支持構造を、
図3のプラテンの支持構造を説明する斜視図で説明する。
プラテン1は、複数の立設板2によって、フレーム27に固定されている。また、プラテン1の両端は端部立設板30によってフレーム27に固定されている。プラテン1を固定する端部立設板30は、外装、キャリッジ搬送機構31を固定する板としても兼用している。プラテン1の両端に端部立設板30は設けられているが、図では、右側のものは図示を省略している。
【0015】
キャリッジ搬送機構31は、レール25、ベルト22、プーリー24、モーター23を含む。レール25は、プラテン1の長手方向に沿って直状に配置されている。このレール25に沿ってキャリッジ20が往復移動する。この移動方向を主走査方向と呼ぶ。キャリッジ20は、ベルト22に固定されている。このベルト22は、モーター23側のプーリーとそれに対になるプーリー24に掛け回されている。モーター23を駆動することで、ベルト22が移動し、それに伴いキャリッジ20が移動する。
【0016】
キャリッジ20には、複数のインクジェットヘッド21が搭載されている。このインクジェットヘッド21は、カートリッジ収納部43に収納されているインクカートリッジとチューブで接続され、インクの供給を受ける。また、インクジェットヘッド21はプラテン1と対向する側に複数のノズルが設けられている。このノズルからインクを吐出する。キャリッジ20を移動させながらインクを吐出することで、プラテン1に支持された記録媒体に画像を記録する。
【0017】
記録媒体は、駆動軸28とピンチローラー29により挟まれ、駆動軸28の回転に伴って搬送される。ピンチローラー29は、プラテン1の長手方向に沿って複数配置されている。吸引ファン26の吸引によってプラテン1の表面に多数設けられた吸引孔3から空気を吸引することで、搬送される記録媒体をプラテン1に吸着させる。記録媒体を平板のプラテン1の表面に吸引することで、記録媒体を扁平に維持し、インクを受ける。記録媒体の表面に凹凸があると、インクの着弾位置にばらつきが生じ画質が悪くなるからである。
【0018】
次にプラテン1について説明する。
図1は、プラテンの裏面側からの支持構造を説明する図である。
図2は、プラテンの側面側からの支持構造を説明する図である。
プラテン1の裏側に、長手方向に沿って、溝7が形成されている。溝7はプラテン1の端部で曲り、一続きになっている。この溝7に線状のヒーターが配置されている。プラテン1には吸引孔3が多数設けられている。立設板2はプラテン1の長手方向に複数、ここでは、13か所設けられている。両端の部分は、プラテン1を支持する端部立設板30の一部分である。立設板2はプラテン1の長手方向の長さや、厚みなどに応じて、最適な数設ける。
【0019】
ヒーター支持板4、5、6は、溝7のプラテン1の短手方向にまたがっている。ヒーター支持板5は、プラテン1の一方の端部に配置されている。この位置に、溝7の曲がり部があり、その曲がり部に沿ってヒーターも曲がって配置されている。この部分でヒーターが外れ易いので、このヒーター支持板5によって外れを防止している。ヒーター支持板5は好ましくはプラテン1と同じ材質のものを用いる。熱による膨張率が同じであるものが好ましい。また、このヒーター支持板5の有無により、熱の伝わり方が異なると、プラテン1の表面温度に影響を与えるので、好ましくは幅を短くしたり、凹部を設けて接する面積を少なくしたりする。ヒーター支持板6はプラテン1の他方の端部に配置され、ヒーター支持板5と同様の機能を備える。
【0020】
また、プラテン1を支持する立設板2はプラテン1と接する部分にプラスチック製の断熱材が配置されていてもよい。その場合に、ヒーター支持板4、5、6のプラテン1と接する側の反対側の面には、立設板2に用いる断熱材と同種の材質の断熱材で覆うことで放熱を抑制し、プラテン1とヒーター支持板4、5、6を熱的に一体となるようにしても良い。
【0021】
また、好ましくは溝7の開口部分で狭く、深い位置で広くなる構成にすることで、一度挿入されたヒーターが外れにくくなり、また、ヒーターとプラテン1との接する面積の割合を接しない面積の割合に対して大きくすることができるので、伝熱の点で良くなり、好ましい。これは、溝の開口部と底面とが同じ幅の場合に対して、熱をヒーターからプラテンに伝えやすくなる。
【0022】
ヒーター支持板4は、プラテン1のほぼ中央部に位置する。この部分でヒーターが外れ易いので、外れ防止をしている。また、ヒーターをプラテン1の両側で別の線にし、中央部で折れ曲がるような構成にすることもでき、その場合は、折れ曲がる位置にヒーター支持板4を配置し、外れ防止をする。
【0023】
ヒーターは伝導性の抵抗部とそれを覆う絶縁部を備える。抵抗部の直径は、溝7の幅より小さいが、絶縁部の直径は大きい。すなわち、外周の最大径が溝7より大きい。よってヒーターは溝7に絶縁部をつぶして押し込め、挿入されるので、外れにくいが、折り曲げる位置や中央部で外れ易くなっている。折れ曲がる位置は、他の部分より圧縮される部分と伸ばされる部分があり、加熱と冷却をしているうちに外れてしまう場合がある。
【0024】
ヒーター支持板4、5、6は、プラテン1にネジ等の固定手段で固定されている。また、プラテン1の中央のヒーター支持板4には、プラテン1の温度を計測する温度センサー8が固定されている。プラテン1は、熱伝導性の優れているアルミ製であり、プラテン1はほぼ温度が同一であり、着脱可能なプラテン支持板4に温度センサー8を設けることで、プラテン1のメンテナンスを容易にしている。
【0025】
図5は、ヒーター支持板の一例を説明する図である。
プラテン1の裏面には、溝7が設けられている。その溝7の中にヒーター線50が嵌合している。そして溝7をヒーター支持板52が覆っている。ヒーター支持板52の溝7の開口部と対向する位置に凹部53が設けられ、その中に断熱材51が挿入されている。断熱材51は樹脂製である。断熱材51はヒーター支持板52より熱抵抗が高い材料でできている。また多孔質部材ならば中に熱抵抗の高い空気層が含まれるので断熱性が向上する。
【0026】
また、プラテン1とヒーター支持板52の熱膨張の差による、相互の撓みを防止する意味で、断熱材51はヒーター線50と同等の熱抵抗のものが好ましい。また、断熱材51のプラテン1側の面はヒーター線50の脱落を防止するために、少なくともヒーター支持板52のプラテン1側の面と同じ高さにするのが好ましい。また、更に、断熱材51を可撓性のある樹脂として、プラテン1側に、ヒーター支持板52のプラテン1側の面より突出させることで、ヒーター線50を溝7の奥に着実に固定でき、ヒーター線50からプラテン1への伝熱の損失を抑えることができる。また、凹部53はヒーター支持板52をプレス加工などで湾曲または屈曲させて形成しても良い。凹部53を設けることで、プラテン1とヒーター支持板52の加熱した時の熱膨張の差を小さくできる。また更に、プラテン1とヒーター支持板52を同じ熱膨張率の材料で作ることで更に加熱した時の熱膨張の差を小さくできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、インクジェット式の記録ヘッドを備えた記録装置に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 プラテン
2 立設板
3 吸引孔
4 ヒーター支持板
5 ヒーター支持板
6 ヒーター支持板
7 溝
22 ベルト
23 モーター
24 プーリー
25 レール
26 吸引ファン
27 フレーム
28 駆動軸
29 ピンチローラー
30 端部立設板