(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114191
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】再生可能資源をベースとする感圧接着剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20170403BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20170403BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20170403BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J11/04
C08G59/40
【請求項の数】63
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-524929(P2013-524929)
(86)(22)【出願日】2011年8月16日
(65)【公表番号】特表2013-538891(P2013-538891A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011047930
(87)【国際公開番号】WO2012024301
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月30日
(31)【優先権主張番号】61/374,743
(32)【優先日】2010年8月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594177391
【氏名又は名称】エーブリー デニソン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Avery Dennison Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーチ,キャロル,エー.
(72)【発明者】
【氏名】マリア,プラカッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアムス,チャールズ,アール.
【審査官】
富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0188056(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/071554(WO,A1)
【文献】
特開平09−151238(JP,A)
【文献】
特開平10−017560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−5/10;9/00−201/10
C08G59/00−59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化された天然に存在する油または脂肪を準備し、
前記エポキシ化された天然に存在する油または脂肪を、(i)アルコール類、(ii)アミン類、(iii)アミノアルコール類および(iv)これらの組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも1つの多官能性剤と反応させることにより、感圧接着剤を形成することを含む、感圧接着剤を形成する方法。
【請求項2】
前記天然に存在する油または脂肪が、ダイズ油、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、亜麻仁油、ナタネ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、パーム核油、米ぬか油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ油、トール油、ラード、獣脂、魚油およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコール類が選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコール類が二価アルコール類である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコール類が、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコール、2−メチルプロパンジオール、メチルブタンジオール、メチルペンタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、トリグリセリド類から得られる8個から18個の炭素原子を有する脂肪アルコール類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多官能性剤に加えて、少なくとも1つの一価アルコールが前記反応工程に包含される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコール類が二官能性または多官能性高分子アルコール類である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルコールがバイオ系であるか、または植物油類から得られるものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコールが、(i)ペンダント水酸基を有するヒマシ油、(ii)ダイマー酸類から形成されるダイマージオール類および(iii)エポキシ化油類から形成されるバイオ系ポリオール類からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アミン類が選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アミン類がジアミン類である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アミン類がジアミン類であり、ヒドラジン、エチレンジアミン(1,2−ジアミノエタン)、1,3−ジアミノプロパン(プロパン−1,3−ジアミン)、プトレシン(ブタン−1,4−ジアミン)、カダベリン(ペンタン−1,5−ジアミン)、ヘキサメチレンジアミン(ヘキサン−1,6−ジアミン)、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンおよびジメチル−4−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ブチル−1,4−フェニレンジアミン、ジフェニルエチレンジアミン、1,8−ジアミノフタレンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記多官能性剤に加えて、少なくとも1つのモノアミンが前記反応工程に包含される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アミノアルコール類が選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノアルコール類が、エタノールアミン類、プロパノールアミン類、ブタノールアミン類、ペンタノールアミン類、ヘプタノールアミン類、ヘキサノールアミン類、クレゾールおよびフェノールをベースとするアミン類、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(i)バルク重合、(ii)溶媒重合、(iii)水系重合、(iv)ウェブ重合および(v)これらの組み合わせ、からなる群から選択される方法によって反応が行われる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
バルク重合が選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶媒重合が選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
水系重合が選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ウェブ重合が選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
エポキシ化された脂肪酸を準備し、前記反応工程に前記エポキシ化された脂肪酸を包含させることを更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
エポキシ化された脂肪酸エステルを準備し、前記反応工程に前記エポキシ化された脂肪酸エステルを包含させることを更に含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
アクリレート成分を準備し、前記反応工程に前記アクリレート成分を包含させることを更に含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ビニルカルボキシル酸を準備し、前記反応工程に前記ビニルカルボキシル酸を包含させることを更に含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ビニルカルボキシル酸が、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記エポキシ化された天然に存在する油または脂肪が1以上のアクリレート基を含有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
スルホン酸類、硫酸塩類、ホスホン酸塩およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の官能基を含有する剤を準備し、前記反応工程に前記剤を包含させることを更に含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を準備し、前記反応工程に前記材料を包含させることを更に含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
充填剤、バイオ系粘着付与剤、可塑剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を添加することを更に含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
化石燃料類から得られる成分を準備し、前記成分を前記反応工程に包含させることを更に含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
有効量のバイオ系グリセロールエステル類を準備し、前記グリセロールエステル類が主成分としてC8−C22脂肪酸を含み、
前記グリセロールエステル類の少なくとも大部分にエポキシド官能基を組み込み、これにより、エポキシ化されたグリセロールエステル中間体を生成し、
(i)アルコール類、(ii)アミン類、(iii)アミノアルコール類および(iv)これらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性剤と、前記エポキシ化されたグリセロールエステル中間体を反応させることにより、感圧接着剤を形成することを含む、感圧接着剤を形成する方法。
【請求項32】
前記グリセロールエステル類が天然に存在する油および脂肪から得られる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記天然に存在する油または脂肪が、ダイズ油、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、亜麻仁油、ナタネ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、パーム核油、米ぬか油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ油、トール油、ラード、獣脂、魚油およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
アルコール類が選択される、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記アルコール類が二価アルコール類である、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記アルコール類が、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコール、2−メチルプロパンジオール、メチルブタンジオール、メチルペンタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、トリグリセリド類から得られる8個から18個の炭素原子を有する脂肪アルコール類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記多官能性剤に加えて、少なくとも1つの一価アルコールが前記反応工程に包含される、請求項31から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アルコール類が二官能性または多官能性高分子アルコール類である、請求項31から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アルコールがバイオ系であるか、または植物油類から得られるものである、請求項31から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記アルコールが、(i)ペンダント水酸基を有するヒマシ油、(ii)ダイマー酸類から形成されるダイマージオール類および(iii)エポキシ化油類から形成されるバイオ系ポリオールからなる群から選択される、請求項31から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
アミン類が選択される、請求項31から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アミン類がジアミン類である、請求項31から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記アミン類がジアミン類であり、ヒドラジン、エチレンジアミン(1,2−ジアミノエタン)、1,3−ジアミノプロパン(プロパン−1,3−ジアミン)、プトレシン(ブタン−1,4−ジアミン)、カダベリン(ペンタン−1,5−ジアミン)、ヘキサメチレンジアミン(ヘキサン−1,6−ジアミン)、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンおよびジメチル−4−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ブチル−1,4−フェニレンジアミン、ジフェニルエチレンジアミン、1,8−ジアミノフタレンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記多官能性剤に加えて、少なくとも1つのモノアミンが前記反応工程に包含される、請求項31から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
アミノアルコール類が選択される、請求項31から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記アミノアルコール類が、エタノールアミン類、プロパノールアミン類、ブタノールアミン類、ペンタノールアミン類、ヘプタノールアミン類、ヘキサノールアミン類、クレゾールおよびフェノールをベースとするアミン類、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
(i)バルク重合、(ii)溶媒重合、(iii)水系重合、(iv)ウェブ重合および(v)これらの組み合わせからなる群から選択される方法によって反応が行われる、請求項31から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
バルク重合が選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
溶媒重合が選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
水系重合が選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
ウェブ重合が選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
エポキシ化された脂肪酸を準備し、前記反応工程に前記エポキシ化された脂肪酸を包含させることを更に含む、請求項31から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
エポキシ化された脂肪酸エステルを準備し、前記反応工程に前記エポキシ化された脂肪酸エステルを包含させることを更に含む、請求項31から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
アクリレート成分を準備し、前記反応工程に前記アクリレート成分を包含させることを更に含む、請求項31から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ビニルカルボキシル酸を準備し、前記反応工程に前記ビニルカルボキシル酸を包含させることを更に含む、請求項31から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ビニルカルボキシル酸が、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記エポキシ化された天然に存在する油または脂肪が1以上のアクリレート基を含有する、請求項31から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
スルホン酸類、硫酸塩類、ホスホン酸塩類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の官能基を含有する剤を準備し、前記反応工程に前記剤を包含させることを更に含む、請求項31から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を準備し、前記反応工程に前記材料を包含させることを更に含む、請求項31から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
充填剤、バイオ系粘着付与剤、可塑剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を添加することを更に含む、請求項31から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
化石燃料類から得られる成分を準備し、前記成分を前記反応工程に包含させることを更に含む、請求項31から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記グリセロールエステル類が、(i)モノグリセリド類、(ii)ジグリセリド類、(iii)トリグリセリド類および(iv)これらの組み合わせの少なくとも1つを包含する、請求項31から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記グリセロールエステル類が主成分としてトリグリセリド類を包含する、請求項31から62のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年8月18日に出願された米国仮出願第61/374,743号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は一般に、感圧接着剤(PSA)の分野に関する。より詳細には、本発明は、バイオ系材料などの再生可能資源から形成される感圧接着剤および当該感圧接着剤を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、既知の感圧接着剤はほぼ全て、主に石油生成物をベースとするモノマーから作製される。油のコストが上がり、供給が制限されるにつれ、このような接着剤の原料成分として再生可能資源を使用することは経済的に魅力的かつ社会的な責任となっている。アクリル系感圧接着剤で使用されるアクリルモノマーの限定された生産能力は、代替資源を調査するための別の原動力である。更に、バイオ系感圧接着剤の性能に関する利点として生分解性が挙げられ、この生分解性はこれら接着剤の環境適合性を支援するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの要求に対処する。以前から知られている感圧接着剤およびそれらの製造に関連する問題および欠点は、本発明の接着剤および方法において対処される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本発明は、感圧接着剤を形成する方法を提供する。当該方法は、エポキシ化された天然に存在する油または脂肪を準備し、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性剤と、この油または脂肪を反応させることを含む。本発明はまた、これらの方法により形成される感圧接着剤を提供する。
【0006】
別の態様において、本発明は、有効量のバイオ系グリセロールエステル類を付与することによって、感圧接着剤を形成する方法を提供する。グリセロールエステル類は主成分としてC
8−C
22脂肪酸を含む。当該方法はまた、グリセロールエステル類の少なくとも大部分にエポキシド官能基を組み込み、これにより、エポキシ化されたグリセロールエステル中間体を生成することを含む。当該方法はまた、(i)アルコール類、(ii)アミン類、(iii)アミノアルコール類および(iv)これらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性剤と、このエポキシ化されたグリセロールエステル中間体とを反応させることにより、感圧接着剤を形成することを含む。本発明はまた、これらの方法によって形成される感圧接着剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実現されるように、本発明は、全てその範囲を逸脱することなく、他の異なる実施形態およびその幾つかの詳細事項を可能にするとともに、様々な点で修正が可能である。したがって、説明は例証的なものであり、制限的なものと見なされるべきではない。
【0008】
本発明の様々な好ましい実施形態において、感圧接着剤は1以上の天然に存在する脂肪類および/または油類から製造される。天然に存在する脂肪類または油類をエポキシ化し、次いで1以上のアルコール類、アミン類、アミノアルコール類またはこれらの組み合わせと反応させることにより、感圧接着剤が製造される。本発明の他の好ましい実施形態において、感圧接着剤は、生物学に基づくまたはバイオ系グリセロールエステル類から製造される。理解されるように、グリセロールエステル類としては、モノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類およびこれらの組み合わせが挙げられる。バイオ系グリセロールエステル類をエポキシ化し、1以上のアルコール類、アミン類、アミノアルコール類またはこれらの組み合わせと反応させることにより、感圧接着剤が製造される。これらの態様および他の態様については以下に説明する。
【0009】
用語「天然に存在する(naturally occurring)」または「天然の」脂肪類および/または油類は、本書で使用されるときには一般に、石油または他の化石燃料から得られる脂肪類または油類ではなく、植物または動物から得られるこのような材料を差す。よって、用語「天然に存在する」または「天然の」は、石油源または化石燃料供給源から直接的または間接的に得られる油類または他の材料を除外する。理解されるように、化石燃料の例としては、石炭、石油系油およびガスが挙げられる。本書でいう天然の脂肪および/または油としては、植物または動物から得られる脂肪類および/または油類、ならびに様々な精製、加工または化学反応に供されたこのような脂肪類および/または油類が挙げられる。
【0010】
用語「バイオ系(bio-based)」は、グリセロールエステル類、モノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類およびこれらの組み合わせとの関連で使用される場合、天然に存在する脂肪類および/または油類から得られるこのような剤を指す。
【0011】
天然の脂肪および油は、3つの脂肪酸がグリセロール分子に結合したエステル類であるトリグリセリド類を含む。植物または動物源から得られる天然の脂肪類および油類の例としては、ダイズ油、パーム油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、亜麻仁油、ナタネ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、パーム核油、米ぬか油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ油、トール油、ラード、獣脂、魚油およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、天然脂肪類および油類に関連する脂肪酸類としては、長鎖、例えばC
8−C
22、およびより典型的にはC
12−C
14部分が挙げられ、これらの多くは、1つの鎖につき複数の二重結合を包含する。グリセロール分子は3つの水酸(OH−)基を有する。各脂肪酸はカルボキシル基(COOH−)を有する。トリグリセリド類において、グリセロールの水酸基は脂肪酸のカルボキシル基に接合してエステル結合を形成する。
【0012】
述べたように、天然に存在するまたはバイオ系トリグリセリド類における脂肪酸の鎖長は様々であり得る。しかしながら、16、18および20個の炭素を有する鎖長が最も一般的である。動植物中に見られる天然脂肪酸は、典型的には、アセチル補酵素Aから生合成される結果として偶数個の炭素原子のみから構成される。しかしながら、特定の細菌類は、奇数鎖および分岐鎖脂肪酸類を合成する能力を有する。結果として、反すう動物脂肪は、第一胃での細菌作用に起因して、15個などの奇数脂肪酸類を含有することが多い。
【0013】
天然脂肪類の大半は、個々のトリグリセリドの複雑な混合物を含有する。これにより、大半の天然脂肪類は広範な温度で融解する。ココアバターは、2〜3のトリグリセリド類(そのうちの1つはパルミチン酸、オレイン酸およびステアリン酸(濃度順)を含有する)のみから構成されるという点において独特である。結果として、ココアバターは比較的狭い融点範囲を有する。
【0014】
対象とする天然脂肪類および油類のトリグリセリド類における好ましい脂肪酸類を以下の表1に示す。
【表1】
【0015】
天然の脂肪類および油類は、脂肪または油の種類または供給源、および脂肪に対する油の比に応じて、様々な量のトリグリセリド類を含有する。表1および2ならびにFrank D.Gunstone(Blackwell Publishing 2004)による「油脂化学(The Coemistry of Oils and Fats)」を参照のこと。以下に記載される表2には、様々な一般的な油類および脂肪類の典型的な脂肪酸量(重量%として)が列挙されている。
【表2】
【0016】
油類および/または脂肪類における様々なトリグリセリド類に関連する不飽和は、本書に記載される1以上の剤との反応および/または重合のための潜在的な反応部位として機能する。二重結合は、キリ油などの乾性油におけるように共役結合されない限り、重合に関して比較的非反応性である。しかし、本書に記載される1以上の実施形態においては、二重結合が改変され、この改変に基づいて重合が起こる。
【0017】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、感圧接着剤を形成する際に、1以上の特定クラスのバイオ系グリセロールエステル類が使用される。例えば、グリセロールエステル類としては、モノグリセリド類、ジグリセリド類、トリグリセリド類およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、グリセロールエステル類は主成分としてトリグリセリド類を包含するが、本発明は、バイオ系グリセロールエステル類と関連してモノグリセリド類、ジグリセリド類および他の成分を使用することを包含することが理解される。理解されるように、モノグリセリド類およびジグリセリド類は、典型的には、本書に記載される前述の脂肪酸類の多くを含有する。
【0018】
[エポキシ化脂肪類および油類]
本発明は、エポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類を、本書において更に詳細に記載されるような1以上のアルコール類、アミン類および/またはアミノアルコール類と反応させることに基づく。より詳細には、当該反応は、天然に存在する脂肪類または油類の、好ましくはトリグリセリド類を包含するバイオ系グリセロールエステル類を含む。グリセロールエステル類および好ましくはトリグリセリド類をエポキシ化し、次いで本書に記載されるような1以上のアルコール類、アミン類および/またはアミノアルコール類と反応させる。
【0019】
エポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類は、様々な異なる技術で形成する、または得ることができる。例えば、エポキシ化された油は市場より入手可能である。ダイズ油や亜麻仁油などのエポキシ化された植物油は、オハイオ州シンシナチのCognis、ペンシルバニア州キングオブプロシアのArkema社(Arkema)、およびニュージャージー州ウェストパターソンのCytec Industries(Cytec)などの供給業者から容易に入手可能である。これらの材料は、塩化ポリビニルポリマー用可塑剤および安定剤として一般に使用されている。
【0020】
エポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類はまた、天然の脂肪類または油類から形成することができる。1以上の天然に存在する脂肪類または油類を反応に供することにより、エポキシド官能基が当該脂肪類または油類のトリグリセリド類に導入される。これは、トリグリセリド類における二重結合のエポキシ化により生じる。次いで、エポキシ化材料を本書に記載されるような更なる成分と反応させる。
【0021】
エポキシ化脂肪類および/または油類を形成する際、または、本書に記載されるような更なる成分とこのような脂肪類および/または油類を反応させる場合、エポキシ化された脂肪酸類および/またはエステル類も利用可能であり、当該反応系に含めることができる。幾つかの実施形態では、エポキシ含有オリゴマーまたは低分子量ポリマーを当該反応系に含むことができる。結果として生じるこのような成分を含有するポリマーは、ガラス転移温度T
gおよび架橋密度が比較的低い。これらの材料から形成されたポリマーは、感圧接着剤として機能し得る。より詳細には、単官能性脂肪酸類およびエステル類を、感圧接着剤を作製するのに使用される反応系に含めることができる。例えば、オレイン酸またはエルカ酸を使用することができる。これらの実施形態では、以下のプロセスを使用することができる。脂肪酸類またはトリグリセリド類内の二重結合を、過酸との反応によりエポキシ化することができる。次いで、これらの材料を、本書に記載されるような1以上のアルコール類、アミン類、アミノアルコール類またはこれらの組み合わせと更に反応させる。
【0022】
アクリル酸および/またはメタクリル酸などのビニルカルボン酸類を使用して、エポキシ化された天然脂肪類または油類、および任意の脂肪酸類およびエステル類を更に官能化し、アクリル官能基を導入することができる。アクリルまたはメタクリル基は、伝統的な遊離基重合法によって更なるアクリルコモノマーと反応する。
【0023】
他の実施形態では、脂肪酸エステル類をアクリル化して(acrylated)単官能性材料を付与し、これをエポキシ化された天然に存在する脂肪類および油類と共重合させて感圧接着剤を形成することができる。例えば、オレイン酸は、ダイズ、オリーブ、コーン、パーム、キャノーラなどを含む多くの植物油類および種油類における主要成分である。エルカ酸は、ナタネ油から得られるより長鎖のモノ不飽和脂肪酸である。メチル、ブチルおよび2−エチルヘキシルなどのこれら脂肪酸のエステル類は、多くの感圧接着剤処方物に必要とされるT
gおよび係数特性(modulus properties)を調整する能力を有するフォーミュレーター(formulator)となる。
【0024】
パームオイルをベースとする感圧接着剤は、以下の組成を有するパーム油から形成することができる。
パルミチン酸(16:0) 44.4%
ステアリン酸(18:0) 4%
オレイン酸(18:1) 39.3%
リノール酸(18:2) 10%
リノレン酸(18:3) 0.4%
【0025】
この特定のパーム油組成は、トリグリセリド当たり平均1.82個の二重結合を含有するため、低い係数を保持しつつ、より高いレベルを組み込むことができる。パーム油の二重結合は、例えば過酸化水素およびギ酸の反応などによってその場(in situ)で形成される過酸を用いてエポキシ化することができる。エポキシ化されたパーム油は、アクリル酸との反応により更に改変されて、アクリル化エポキシ化パーム油を形成することができる。
【0026】
エポキシド官能基を有する好ましい材料の更なる例として、エポキシ化植物油類(例えば、エポキシ化ダイズ油およびエポキシ化パーム油)などのエポキシ化トリグリセリド類、エポキシ化された脂肪酸類およびエポキシ化された脂肪酸エステル類などの単官能性エポキシ材料、ならびに、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ブタンジオールおよびポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル付加物をベースとするものなどの、石油供給源から得られるエポキシ樹脂類などが挙げられる。これらの剤および他の剤の更なる態様が本書に記載される。
【0027】
[エポキシ化油(類)の反応]
記載されるように、1以上のエポキシ化された天然脂肪類または油類を、1以上の下記多官能性成分と反応させて、感圧接着剤を形成する。多官能性成分は、(i)アルコール類、(ii)アミン類、(iii)アミノアルコール類およびこれらの組み合わせから選択される。これら成分の各々は、本書で更に詳細に説明される。
【0028】
1以上のこれら多官能性成分の使用に加えて、1以上の単官能性アルコール類、アミン類、アミノアルコール類およびこれらの組み合わせを使用してもよい。一般に、エポキシ化された天然脂肪類または油類と反応させて、十分な分子量のポリマー生成物を得ることにより、好適な感圧接着剤としての役割を果たすには、二官能性成分が好ましい。しかしながら、幾つかの用途に関し、結果生じるポリマー生成物の網状組織密度または他の特性を調節するために、1以上の単官能性剤を使用可能であることが想定される。好ましくは、単官能性剤は、使用される場合、1以上のモノアルコール類もしくはモノアミン類またはこれらの組み合わせである。単官能性剤(類)は、使用される場合、記載された多官能性剤(類)と併用される。複数の単官能性剤は、例えばエポキシ化油類および脂肪類との反応の間などに1以上の多官能性剤と併用される限りにおいて使用可能であることも想定される。
【0029】
[アルコール類]
エポキシ化脂肪類または油類を、1以上の多官能性アルコール類と反応させて、目的の感圧接着剤を形成することができる。好ましくは、アルコール類は二官能性アルコール類、すなわちジオール類である。様々なジオール類を、エポキシ化脂肪類または油類との反応に使用することができる。ジオール、グリコールまたは二価アルコールは、2つの水酸基を含有する化合物である。表3には、様々な好ましい感圧接着剤を形成する際に使用可能なジオール類の幾つかの代表的な例が列挙されている。
【表3】
【0030】
記載されるように、幾つかの用途において、反応混合物中に1以上の一価アルコール類を包含させることが望ましい場合がある。以下に記載される表4には、好ましい実施形態の感圧接着剤を形成する際に使用できる代表的な一価アルコール類が列挙されている。1以上の一価アルコール類が使用される場合、それらは多官能性成分と併用されることが理解される。
【表4】
【0031】
好ましいアルコール類の例としては、単官能性、二官能性および多官能性アルコール類(例えば、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコール、2−メチルプロパンジオール、メチルブタンジオール、メチルペンタンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール)、脂肪アルコール類(例えば、トリグリセリド類から得られるC
8−C
18脂肪アルコール類)およびこれらの組み合わせが挙げられる。本発明は本書に記載されるアルコールのいずれかの使用に制限されないことが理解される。すなわち、適切な特性およびエポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類との反応に対する適合性を有するほぼ全てのアルコールを、好ましい実施形態の感圧接着剤を形成する際に使用することができる。
【0032】
二官能性または多官能性アルコールは、ヒドロキシ末端ポリブタジエンなどのヒドロキシル側基または末端基を有する高分子であり得る。当該アルコールは、バイオ系であるか、または植物油類から得られるものであり得る。例としては、ペンダント水酸基を有するヒマシ油、ダイマー酸から形成されるダイマージオールまたはエポキシ化油類から形成されるバイオ系ポリオール類(例えば、Biobased Technologies製のAgrol製品、Dow製のRenuva製品およびCargill製のBiOH製品)が挙げられる。
【0033】
故に、1以上のエポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類を、1以上の二価アルコール類または多官能性アルコール類およびこれらの組み合わせと反応させて、好ましい実施形態の感圧接着剤を製造することができる。一価アルコール類は、二価アルコール、多官能性アルコールまたは別の二官能性もしくは多官能性成分の少なくとも1つと併用する限りにおいて使用してもよい。
【0034】
エポキシド基に対して過剰のアルコール基を付与するのが一般に好ましい。これらの量を、本書では有効量と呼ぶ。幾つかの反応系について、アルコール基に対するエポキシド基のモル比はそれぞれ約1:1.1である。しかしながら、本発明にはこの特定比よりも大きいまたは小さい比の使用が包含されることが理解される。
【0035】
[アミン類]
エポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類を、1以上の多官能性アミン類と反応させて、目的の感圧接着剤を形成することができる。当該アミン類はジアミン類であることが好ましい。アミン類は有機化合物であり、窒素原子を含有する官能基である。アミン類は、1以上の水素原子がアルキルまたはアリール基などの置換基で置換されたアンモニアの誘導体である。一般的なアミン類としては、アミノ酸類、生体アミン類、トリメチルアミンおよびアニリンが挙げられる。当該アミンは、第一アミン、第二アミンおよび/または第三アミンを包含し得る。
【0036】
前述のように、エポキシ化天然脂肪(類)および/または油(類)と反応させるべく多官能性成分を使用することが好ましい。二官能性成分がアミンである場合、このアミンはジアミンである。当該反応系が1以上の多官能性アミン類および好ましくは1以上の二官能性アミン類を包含する限り、モノアミンを使用することもできることが想定される。
【0037】
当該アミン類はジアミンの形態であることが好ましい。ジアミン類の例としては、ヒドラジン、脂肪族直鎖炭素鎖を有するジアミン類、例えば、エチレンジアミン(1,2−ジアミノエタン)、1,3−ジアミノプロパン(プロパン−1,3−ジアミン)、プトレシン(ブタン−1,4−ジアミン)、カダベリン(ペンタン−1,5−ジアミン)およびヘキサメチレンジアミン(ヘキサン−1,6−ジアミン)が挙げられるが、これらに限定されない。ジアミン類の更なる例としては、1つの芳香族環などの芳香族炭素鎖を有するジアミン類が挙げられるが、これらに限定されない。これらとしては、o−フェニレンジアミン(OPD)、m−フェニレンジアミン(MPD)またはp−フェニレンジアミン(PPD)などのフェニレンジアミン類、o−キシリレンジアミン(OXD)、m−キシリレンジアミン(MXD)またはp−キシリレンジアミン(PXD)などのキシリレンジアミン類、およびジメチル−4−フェニレンジアミン、ならびにN,N’−ジ−2−ブチル−1,4−フェニレンジアミンが挙げられる。2つの芳香族環を有するジアミン類としては、ジフェニルエチレンジアミンおよび1,8−ジアミノフタレンが挙げられる。本発明は、適切な特性およびエポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類との反応に対する適合性を有するほぼ全てのアミン類の使用を包含することが理解される。
【0038】
よって、1以上のエポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類を、1以上のジアミン類または他の同様のアミン類およびこれらの組み合わせと反応させて、好ましい実施形態の感圧接着剤を製造することができる。当該反応において1以上の多官能性剤を使用する限り、1以上のモノアミン類を使用してもよい。
【0039】
エポキシド基に対して過剰のアミン基を付与するのが一般に好ましい。最も好ましくは、アミン基に対するエポキシド基のモル比はそれぞれ約1:1.1である。これらの量を、本書では有効量と呼ぶ。
【0040】
[アミノアルコール類]
アミノアルコール類はアミン官能基とアルコール官能基の両方を含有する有機化合物である。一般的なアミノアルコール類としては、エタノールアミン類、プロパノールアミン類、ブタノールアミン類、ペンタノールアミン類、ヘプタノールアミン類、ヘキサノールアミン類、クレゾールおよびフェノールをベースとするアミン類ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、エポキシ化された天然に存在する脂肪類または油類との反応におけるほぼ全てのアミノアルコール類の使用を包含する。すなわち、当該アミノアルコールは、適切な特性を有すると共に当該反応に好適である限り、潜在的な反応候補物である。定義により、アミノアルコールは二官能性(または多官能性)剤である。
【0041】
以下に記載される表5には、本発明の方法において使用するのに好ましい代表的なアミノアルコール類が列挙されている。
【表5】
【0042】
よって、1以上のエポキシ化された天然に生じる脂肪類または油類を、1以上のアミノアルコール類と反応させて、好ましい実施形態の感圧接着剤を製造することができる。
【0043】
アルコール類およびアミン類に関連して先に述べたように、両官能基を組み合わせて含有する剤を利用する場合、エポキシド基に対して過剰の全アルコールおよびアミン基が付与されるのが一般に好ましい。全アルコールおよびアミン基に対するエポキシド基の好ましい比はそれぞれ約1:1.1である。
【0044】
[他の添加剤]
前述のように、1以上の前記多官能性アルコール類、アミン類および/またはアミノアルコール類に加え、エポキシ化脂肪類または油類との反応において、様々なエポキシ化された天然に存在する脂肪酸エステル類またはエポキシ化された脂肪酸類を包含させて、網状組織密度を調節することができる。
【0045】
また、1以上のアクリル化種を当該反応に包含させ得ることも想定される。アクリル化種の非限定例としては、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。アクリレート成分の使用は、例えばUV放射下でおよび/または光開始剤を使用して硬化させるときに、結果として生じる感圧接着剤の硬化特性を変更または改変し得るアクリレート二重結合を包含する。
【0046】
充填剤、バイオ系粘着付与剤または可塑剤などの更なる添加剤を添加することができ、これらはまた、結果として生じる感圧接着剤の特性を更に改変するべく添加することもできる。
【0047】
結果として生じるポリマー網状組織にスルホン酸、硫酸塩、リン酸塩などの官能基を組み込むために、このような官能基を含有する更なる剤を使用することもできる。共反応体としての剤の適切な選択を行うことができる。
【0048】
エポキシ基または水酸基のいずれかを含有する材料を使用して、更なる種類の官能基を組み込むこともできる。この目的のために以下の材料を使用することができる:ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートおよびこれらの組み合わせ。
【0049】
反応体、反応混合物および/または結果として生じるポリマー生成物に1以上の溶媒を添加して、反応特性または結果として生じる感圧接着剤の粘度を調節することもできる。水系溶媒または油系溶媒などの広範な溶媒を使用することができる。好ましい油系溶媒としてはヘプタンまたはトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
更に、当該反応系に1以上の界面活性剤を包含させることもできる。例えば、エマルションまたは懸濁型重合技術を使用する際、界面活性剤が望ましい場合がある。
【0051】
化石系成分の使用は一般には好ましくないが、本発明には、結果として生じる網状組織において幾つかの所望される特性または特徴を得るためにこのような成分を使用することが包含されることが理解される。例えば、本発明は、再生可能資源、すなわち天然脂肪類および/または油類から形成される本書に記載の感圧接着剤を、化石燃料由来のポリマーまたは成分などの非再生可能資源から得られるまたは生成される1以上の成分と組み合わせることを含む。この点において、本書に記載されるような天然脂肪類および/または油類から形成される感圧接着剤は、任意選択的に、アクリルもしくはエポキシド官能基または他のペンダント基を含有する非再生可能資源から得られるポリマーと組み合わせて、結果として生じる材料の特性を選択的に調節または制御することができる。このような特性の例は架橋密度である。この方策に基づく技術により、フォーミュレーターは最終生成物材料の特性および性能を特定的に調整および/または調節することができる。この技術により、結果として生じる材料の特性の特定的な「バランシング」が可能となる。このような用途において、好ましくは、再生可能資源由来の材料の割合は少なくとも50%および好ましくは少なくとも75%であることが想定される。しかしながら、本発明は、再生可能資源由来の少量の材料と、主成分としての非再生可能資源由来の材料とを含有するポリマー材料を包含する。
【0052】
[反応方法]
反応速度を上げるために、1以上のエポキシ化天然油類および/または脂肪類、およびより詳細にはバイオ系グリセロールエステル類およびその中のトリグリセリドと、1以上の(i)アルコール類、(ii)アミン類、(iii)アミノアルコール類またはそれらの組み合わせとの間の反応は、高温で、かつ、任意選択的に触媒(類)を用いて行われることが好ましい。再び、本書の説明は、一般的にはバイオ系油類および/または脂肪類から得られるエポキシ化トリグリセリド類の反応に関して与えられたものであるが、本発明はモノグリセリド類、ジグリセリド類および多様なこれらの組み合わせの使用も包含することが理解される。
【0053】
好ましくは、当該反応は、反応器内で、被覆可能なシロップを得るのに十分な程高い変換を達成するための条件下で行われる。幾つかの実施形態では、次いで、流動可能な比較的粘性である材料を、触媒の存在下、十分に高い温度でウェブまたは他の部材上に堆積させて、変換を促進する。
【0054】
より詳細には、一連の重合技術を使用して、多様な好ましい感圧接着剤を形成することができる。例えば、バルク重合、溶媒重合、水系重合およびウェブ重合など(しかし、これらに限定されない)の幾つかの方法によって反応が進行し得る。これらの方法を組み合わせて使用できることも想定される。また、これら方法の1以上が光触媒カチオン重合を利用して、所望されるポリマー生成物(類)を達成することも想定される。UV重合は、多くの用途において好ましい。重合の初期反応器内段階には熱重合が好ましい。
【0055】
バルク重合法では、液状のエポキシ化天然脂肪類または油類に1以上の可溶性開始剤を添加することによって塊重合が行われる。
【0056】
幾つかの用途および/または重合技術について、エポキシ化脂肪類または油類以外の全ての反応体および剤に対して、多官能性成分(類)が大部分を構成することが好ましい場合もある。前述のように、1以上の単官能性剤を添加して、架橋密度を制御するか、または調節することができる。しかしながら、溶媒ベースの重合において過剰の多官能性成分を高濃度で使用すると、ゲル化が生じ、結果として、容易に被覆することができず、かつ、感圧接着剤には一般に適さない不溶性材料が生じる可能性がある。そこで、幾つかの他の用途には、多官能性成分が僅かな割合を構成することが好ましい場合がある。当該反応系で用いられる多官能性成分および他の成分について用いられる特定の割合は、官能基の数および構成成分の分子量などを含むがこれらに限定されない一連の要因に応じて変わる。
【0057】
水系重合によって好ましい実施形態の感圧接着剤を形成する際、連続する水相中に典型的には油滴のエマルションまたは懸濁液が形成される。重合は油滴内にて起こる。エマルションまたは懸濁重合技術を使用する際、界面活性剤および/または立体安定剤を利用して、好ましい実施形態の感圧接着剤の形成を促進することが好ましい場合もある。
【0058】
ウェブ重合法を用いて、好ましい感圧接着剤を形成することもできる。この手法では、比較的粘性のある反応混合物を最初に形成し、次いで、ウェブまたは他の部材上に堆積させて、反応を進めるか、または進むよう促進し、それにより所望の感圧接着剤を製造する。
【0059】
選択される特定の触媒は、特定の重合方法および結果として生じるポリマーの所望の特性に応じて変わる。広範な重合に適する好ましい触媒の例はパラトルエンスルホン酸(PTSA)である。
【0060】
多くの用途では、反応混合物を部分的にのみ重合させ、次いで中間材料をウェブ、ラインまたは他の受容表面へ移動させることが特に好ましい。目的の表面またはコンポーネント上に適切に堆積させるか、または塗布したら、当該材料を更なる重合に供することにより、所望の感圧接着剤が得られる。例えば、反応混合物を部分的に反応させて、流動可能な材料を形成してもよく、当該流動可能な材料はウェブ上にコーティングとして塗布するのに好適な粘性を有する。熱および/または放射線への適切な曝露により、部分重合を行うことができる。当該材料のウェブ上への所望の投与後、熱および/または放射線への曝露などにより更なる重合が行われる。よって、本発明は、容器内で成分を初期重合して当該系の所望の粘度を得、次いで、部分的に重合された中間生成物を目的の表面上へ塗布し、次いで、目的の表面上に載置しつつ、当該生成物を更に重合することなどの操作の組み合わせを包含する。
【0061】
本発明による感圧接着剤は、汎用ラベル、オフィス製品用ラベル、工業用テープおよび医療用途などの多様な用途において、紙またはフィルム支持体上の再剥離型または永久型接着剤として使用することができる。
【実施例】
【0062】
[代表的な実施例]
以下は、好ましい実施形態の感圧接着剤を形成する際のガイダンスとなる代表的な仮説実施例である。
【0063】
[実施例1]
エポキシ化された天然に存在する油を、有効量の一価および二価アルコール類と組み合わせる。反応体をホットメルト合成に供し、次いで熱硬化させて、好ましい実施形態の感圧接着剤を製造する。
【0064】
具体的には、エポキシ化ダイズ油、プロピレングリコールおよびブタノールを反応容器または他のコンポーネント内で組み合わせる。パラトルエンスルホン酸(PTSA)は触媒として使用することができる。アルコール基に対するエポキシド基のモル比は、好ましくはそれぞれ約1:1.1である。溶媒を用いることなく反応器内で反応体を加熱し、次いでシリコン処理シートに塗布する。2ミルのポリエステルシートを反応体層上に置き、反応体が完全に反応されるまで反応を続けさせる。
【0065】
[実施例2]
先の実施例1において述べたように、エポキシ化された脂肪酸エステルまたは脂肪酸を有するエポキシ化油を、ホットメルト合成により二価および一価アルコール類と反応させ、次いで熱硬化させる。
【0066】
具体的には、エポキシ化ダイズ油とエポキシ化リノール酸エステル(またはリノール酸)をプロピレングリコールおよびブタノールと組み合わせる。前述のPTSAは触媒として使用することができる。
【0067】
[実施例3]
エポキシ化油類の混合物を1以上のジオール類および/または一価アルコール類と反応させ、ホットメルト合成に供し、次いで熱硬化させて、好ましい実施形態の感圧接着剤を形成することができる。
【0068】
具体的には、先の実施例1において述べたように、エポキシ化ダイズ油およびエポキシ化オリーブ油をプロピレングリコールおよびブタノールと反応させる。PTSAは触媒として使用することができる。
【0069】
[実施例4]
エポキシ化油、二価アルコール、一価アルコールおよびアクリレートの混合物を調製し、反応混合物を形成することができる。ホットメルト合成を行い、次いでウェブを硬化させてからUV放射へ曝露することにより、好ましい実施形態の感圧接着剤を形成することができる。
【0070】
例えば、エポキシ化ダイズ油を、PTSAを触媒として使用して、プロピレングリコール、ブタノールおよびヒドロキシエチルアクリレートと組み合わせて反応させることにより、好ましい感圧接着剤を形成することができる。溶媒を用いずに反応器内で反応体を加熱する。光開始剤および任意選択的に多官能性アクリレートを添加し、結果として生じた混合物をライナー上に被覆する。コーティングを2ミルのポリエチレンフィルムで覆い、UVへの曝露により硬化させる。
【0071】
[実施例5]
前述の実施例1〜4はいずれも、バイオ系二価アルコール類および/またはバイオ系一価アルコール類などのバイオ系アルコール類を使用して行うことができる。
【0072】
[実施例6]
エポキシ化油をアミノアルコールおよび一価アルコールと組み合わせて反応させ、ホットメルト合成および熱硬化に供する。
【0073】
例えば、エポキシ化ダイズ油、1−アミノ−2−プロパノールおよびブタノールを実施例1に記載したように組み合わせて反応させる。
【0074】
[実施例7]
前述の実施例1〜6のいずれかを疎水性または親水性シリカなどの充填剤、水素化ロジンエステル類などの粘着付与剤および可塑剤を用いて合成することにより、Tg、粘着特性および接着特性を調節することができる。
【0075】
[実施例8]
前述の実施例1〜6のいずれかを任意選択的に化合物を用いて合成することにより、スルホン酸基、リン酸エステル基などを導入して、接着特性を調節することができる。
【0076】
[実施例9]
ヘプタンまたはトルエンなどの好適な溶媒の存在下で実施例1を実施して、粘度を調節することができる。
【0077】
[実施例10]
界面活性剤または界面活性剤混合物および水の存在下で実施例1を実施して、接着剤の水系エマルションを生成することができる。
【0078】
[実施例11]
適切な立体安定剤、比較的低レベルの1以上の好適な界面活性剤および水を含む実施例1を、好ましい感圧接着剤のミクロンサイズのビーズの懸濁液の形態で調製することができる。
【0079】
多くの他の利点は、この技術の今後の応用および開発から疑いもなく明らかになろう。
【0080】
再生可能資源から形成される感圧接着剤に関する更なる詳細事項は、WO2008/144703に記載されている。
【0081】
本書に記載される特許、公開出願および文献は全て、引用によりその全体が本書に組み込まれる。
【0082】
本書に記載される一実施形態のいずれか1つ以上の特徴または構成要素を、別の実施形態の1以上の他の特徴または構成要素と組み合わせることが可能であることが理解される。よって、本発明は、本書に記載される実施形態の構成要素または特徴のいずれかおよびあらゆる組み合わせを包含する。
【0083】
上述のように、本発明は、既知の材料および方法に関連する多くの課題を解決する。しかしながら、当業者は、添付の特許請求の範囲に明示されるような発明の原理および範囲を逸脱することなく、本発明の性状を説明するために本書に記載および例証された構成要素または操作の詳細、材料および構成における様々な変更を行ってもよいことが理解される。