(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固体表面(203)に沿って堆積され、帯電したナノ粒子(200)の連続勾配を調製する方法であって、前記表面(203)の単位面積当たりの堆積され、帯電したナノ粒子(200)の数は、前記表面の一端において相対的に多く、前記表面の他端において相対的に少なく、堆積時に、堆積した粒子間の距離は、溶液(402)中の前記ナノ粒子間の静電反発力により調節され、前記溶液(402)中の粒子の静電反発力の程度は、ナノ粒子を含む前記溶液(402)中の塩溶液(403)の拡散により得られることを特徴とする、方法。
前記塩溶液(403)の拡散が、ナノ粒子を含む、塩を含まない溶液(402)の層の下で相対的に高い密度および濃度を有する塩溶液の層を形成することにより得られ、前記連続勾配が拡散時間および前記塩溶液(403)中の塩の濃度により調節される、請求項1に記載の方法。
前記塩溶液(403)の拡散が、ナノ粒子の懸濁液(602)と接触して配置されるリザーバ(603)内に前記塩溶液(403)を維持することにより得られ、前記懸濁液は、ナノ粒子の拡散を可能にするが、対流を抑制するマトリクスをさらに含み、前記ナノ粒子の懸濁液(602)は前記固体表面(203)と接触する、請求項1または2に記載の方法。
前記ナノ粒子(200)と前記表面(203)との間の結合力が、共有結合、クーロン相互作用、金属結合、ファンデルワールス結合、水素結合、双極子間結合またはイオン双極子結合を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記表面(203)が、結合したジチオール試薬を有する金であり、前記ナノ粒子(200)が、前記金の表面に結合したジチオール分子のチオール基に共有結合する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記表面(203)に第1の別の表面(801)および第2の別の表面(802)を付加する工程をさらに含み、前記第1の別の表面(801)は前記ナノ粒子(200)と同様の表面化学的性質を有し、前記第2の別の表面(802)は前記表面(203)と同様の表面化学的性質を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
生きている生物組織との固体表面相互作用に関する問題は、医療技術分野において、例えば生体材料、バイオセンサ、および制御薬物送達において繰り返されている主題である。他の適用分野は、生物学的に産生される物質と望ましいまたは望ましくない相互作用が存在する分野である、食品加工技術およびバイオ技術のプロセス化学である。したがって、改良された機能および特徴を有する新規の材料についての必要性が常に存在し、特定の用途分野に適切である実験的表面修飾の必要性が増加している。
【0003】
ナノテクノロジーの分野は、この10年の間、主に1〜1000nmの構造サイズを有するナノ構造化材料が、生物学的流体および生体組織との最適化された相互作用に関して非常に興味深い特性を有するという事実に起因して非常に進歩してきている。この特許出願の中心は、約10nmのナノ構造を有するナノ構造化固体表面を生成する方法を記載している最近公開された論文である[1]。その方法は、平坦な金表面が、1つのチオール基を有する金表面に結合するチオール終端線形アルカン(ジチオール)と反応でき、一方で他のチオール端部が元のチオール基のオーバーレイカーペットを構成する金表面を含む。
【0004】
8〜12nmのサイズ範囲の負に帯電した金粒子の安定なコロイド溶液は表面との接触をもたらし、金粒子は上述の元のチオール基に吸着された。吸着された粒子間の距離は、吸着の間に使用したクエン酸緩衝液のイオン強度を変化させることにより制御され得ることが観測された。緩衝液のモル濃度(濃度)が、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて可視化実験から判断して10〜0nMの間で変動する場合、距離(中心間)は10〜100nmの間で変動し得る。同様の結果が以前に、ガラス、二酸化ケイ素または雲母などの鉱物質の表面に対して表面が帯電したポリマー粒子の静電的に安定した溶液を用いた粒子吸着実験において実証されている[2〜5]。加えて、同様の結果がまた、静電的に安定した溶液から、化学修飾に起因して陽性に帯電されたガラス面または二酸化ケイ素面までの負に帯電した金表面ナノ粒子の吸着に関して示されている[6]。
【0005】
静電的に制御された粒子吸着の原理を
図2に示す。表面が帯電したナノ粒子200を含有する静電的に安定した溶液202がビーカー201に付与される(
図2A)。表面調製物203が容器内に導入され(
図2B)、静電、半共有結合、共有結合または他の種類の結合により粒子200が表面203に結合でき、一定の時間の後に安定な吸着が得られることが導かれる(
図2C)。粒子は互いから一定の距離、rを有する。
【0006】
この状態は吸着のための最終状態を表し、長いインキュベーション時間でも粒子の表面被覆率にさらなる影響を与えない。表面が粒子溶液から除去される場合、2つの隣接する粒子間の距離は、DLVO理論による相互作用対ポテンシャルから推定され得る[1,7]、
図3。
【0007】
要するに、対ポテンシャルU(r)(ここでrは、2つの粒子間の距離である)は、粒子間の分散力から発生する引力ポテンシャルU
引力(r)および粒子間の静電反発力から発生する反発ポテンシャルU
反発(r)の合計として算出され得る。
【0008】
反発ポテンシャルの形状は異なる方法で算出され得るが、粒子表面の外側のポテンシャルの偏差の近似測定であるいわゆるデバイ距離で常に変化する。短いデバイ距離は、反発ポテンシャルが粒子表面の外側で急速に減少することを意味する。デバイ距離は次いで、粒子溶液202中のイオン強度に依存し、以下のように表され得る:
【数1】
式中、εは比誘電率であり、ε
0は真空中の誘電率Iであり、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、eは素電荷であり、N
Aはアボガドロ定数であり、イオン強度は
【数2】
であり、式中、c
iおよびz
iは溶液中のiイオンのモル濃度および電荷である。
【0009】
デバイ距離、および反発ポテンシャルの範囲は、したがって、コロイド溶液202中のイオン濃度の増加とともに減少する。このことは、以下の条件
【数3】
[式中、U(r)は対ポテンシャルであり、kTは熱エネルギーであり、λは定数であり、より小さなrに対して満たされる]
の場合、各粒子が表面上で他の粒子に近接して結合できることを意味する。
【0010】
上記および[1,8]において記載されているジチオールおよび金ナノ粒子で調製した表面が生物学的実験で使用されている。これらの実験において、粒子間の間隔は、ジチオール基と迅速に共有結合するコンジュゲートしたマレイミド試薬を用いるとタンパク質を反発させた。マレイミドは、タンパク質および細胞について反発する粒子間の間隔を生じるポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートした。吸収した金粒子上の表面は、後でチオール試薬、例えばメチル基を有するチオールにより修飾されてもよく、吸着される金粒子疎水性特性が得られる。このように生成された金粒子を有する表面は、ナノメートルの範囲で非常に高度に制御された化学構造および物理組織を有し、このような表面は異なる種類の接着(付着)研究に適したようになる。記載されている方法は、吸着した粒子間で結合できるマレイミド機能を有する比較的多数の市販の物質、および吸着した金粒子に結合できるチオール試薬に起因して接着研究について非常にフレキシブルになる。
【0011】
いわゆる「浸漬被覆」技術によって、ポリマーで安定化した金ナノ粒子をシリカおよびガラス表面に適用する同様の実験を実施した[9]。この方法は、表面全体にわたる粒子の広がりを制御する粒子間の静電反発力を利用していないが、代わりに溶液中の粒子を取り囲むポリマー構造により距離が規定されていることに留意されたい。吸着後に粒子が基板内で焼結されなければならず、また周囲のポリマーが表面から消失するプロセスの理由で、それらの粒子と吸着表面との間の相互作用は弱い。次いで金粒子周囲の表面は、機能的シラン、例えばこの表面抵抗を生体接着性にするPEG修飾シランで修飾され得る下層のシリカ基質となる。粒子の表面は、チオール試薬、例えばいわゆるRGD−ペプチド、細胞相互作用を媒介するアミノ酸配列とコンジュゲートしたチオールで修飾され得る。
【0012】
この実験において、また、静電的に安定化した溶液中のポリマー粒子は帯電した鉱物質の表面に吸着され、吸着した粒子間の距離は上記に従って静電反発力で制御されることも記載されている[10]。吸着表面は、そのままの正味電荷を有するか、または化学修飾、例えば機能的シランにより帯電されている。表面と粒子との間の結合は主に静電気的性質である。吸着したポリマー粒子を有する表面は、表面のポリマー粒子で覆われた部分が、基板表面材料により囲まれた10〜1000nmのサイズ範囲の金の小島に変換されるリソグラフィックテンプレートとして使用されている。次いで周囲基板表面は例えばポリ−L−リシン−PEGで修飾された。リシンは、正電荷のポリマーであり、負電荷の表面により吸着し、PEGとコンジュゲートする特定の場合、それらの表面抵抗を生体付着性にする。次いで金表面は、チオール試薬、例えば金表面疎水性を生じる線形アルカンチオールで修飾され得る。それらの疎水性表面にタンパク質、例えばタンパク質ラミニンが吸着され得る。そのような表面は、細胞増殖および細胞相互作用を研究するために使用されている。
【0013】
上記の技術の全ては、接着プロセスについての表面ナノ構造の重要性を研究するために使用され得、所望の生物学的特性を有する材料を設計するためのプラットフォームとして使用され得る。
【0014】
ほとんどの接着研究は一定の化学的機構を有する表面で実施される。1種類の表面修飾の重要性を研究する場合、接着現象を独立して分析するために複数の表面調製物を使用することが一般的な方法である。しかしながら、この手順は、複数の表面調製物が実験の各シリーズについて調製されなければならないので時間および労力を浪費する。さらに、測定の方法による誤差が比較的大きくなる場合があり、このことは、接着現象の意図した研究の解釈が不正確になるかまたは見誤る恐れがあることを意味する。
【0015】
表面を調製する方法による誤差を制限し、時間浪費を減少させる方法は、表面上の化学特性に勾配を生じることである。このような方法の一例は、表面を一端で疎水性にし、他端で親水性にする、いわゆる「湿潤性勾配」である[11]。これらのエンドポイント間で、化学特性の制御され、連続した勾配が見出される。この種の表面勾配は、調製する時間および方法による誤差を著しく減少させ、多くの場合、学問的研究に使用されている[12〜14]。
【0016】
表面上に連続化学勾配を調製するいくつかの方法は知られており、それらのうちの1つは、周知の拡散法である(
図1)。この場合、その方法の作用は、試薬001、例えばメチルクロロシランを高密度002で、例えばトリクロロエチレンアセテート(トリ−)と溶媒中で混合することである。次いで混合物を異なる溶媒003、例えば低密度のキシレン下で層状にする。これらの層の間に、表面004、例えばガラスが存在し、その上に勾配が形成する。溶媒が互いに拡散し始める時間内に、試薬001のセットもまた、拡散し、表面004に結合する。拡散の特定の時間に、疎水性メチル基の結合した勾配が親水性ガラス表面上に生じる[11]。試薬のいくらかは特定の位置において表面に結合するので、この位置における疎水性は、表面が試薬溶液に曝露されている間の時間と共にこの位置における表面上の試薬001のセットの濃度により決定される。このことは、得られる勾配の特徴が速度支配により決定されることを意味する。
【0017】
上記の方法は困難である粒子密度の均一の勾配を製造するために、これらの粒子に結合する表面に対する静電的に安定した溶液からのナノ粒子の結合は通常、粒子の拡散速度に関して非常に速いプロセスである。これは、メチルクロロシランなどの低分子についての拡散速度と比較して低い。粒子濃度およびインキュベーションの時間を変化させることにより、ナノ粒子が静電的に安定化した溶液から結合表面に吸着される、表面上のナノ粒子間の距離を制御する試みは、粒子の低密度勾配を制御することが困難であることが示されている。また、粒子は、それらが上記の静電的に制御された吸着の後になされるのと同じ表面上の機構の一致を示さない[6,15]。
【0018】
最近、結合粒子の構造化が良好である、シリカ基板上の金粒子の勾配が開示されている[16]。[16]に記載されているこの勾配は、静電的制御または拡散勾配を使用せずに修飾された「浸漬被覆」法に従って製造された。得られた勾配は動的が制限され、最小の粒子距離は約50nmであった。勾配は、粒子と、粒子の上部のRGDペプチドとの間でPEGを用いて化学的に修飾された。その後、勾配表面は細胞接着を研究する実験に使用された。一般に、この文献は、上記の理由のために金粒子の表面結合した密度勾配を非常に良好にする対象を開示している。しかしながら、[16]による勾配を製造する技術的解決法は本発明より著しく複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は好ましくは、当該技術分野における上記の欠点および単独または任意の組み合わせで不都合な点のうちの1つ以上を軽減するか、緩和するかまたは除外し、添付の特許請求の範囲に係る方法、表面、生成物および使用を提供することにより少なくとも上記の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の態様によれば、固体表面に沿って堆積され、帯電したナノ粒子の連続勾配を調製する方法が提供され、表面の単位面積当たりの堆積され、帯電したナノ粒子の数は、表面の一端において相対的に多く、表面の反対端において相対的に少ない。堆積時に、堆積される粒子間の距離は溶液中のナノ粒子間の静電反発力により調節される。溶液中の粒子の静電反発力の程度は、ナノ粒子を含む溶液中の塩溶液の拡散により得られる。
【0021】
これは、表面上のナノ粒子の改良された勾配を形成できるため、有益である。
【0022】
塩溶液の拡散は、ナノ粒子を含む、実質的に塩を含まない溶液の層の下で相対的に高い密度および濃度を有する塩溶液の層を形成することにより得られ得、濃度勾配は拡散の時間および塩溶液中の塩の濃度により調節され得る。
【0023】
一実施形態において、塩溶液の拡散は、ナノ粒子の拡散を可能にするが、対流電流を妨げるマトリクスをさらに含むナノ粒子の懸濁液と接触して配置されたリザーバ内に塩溶液を維持することにより得られ得、ナノ粒子の懸濁液は固体表面と接触する。
【0024】
これは2次元で勾配を形成できるので有益である。
【0025】
ナノ粒子は、金属、セラミック、例えばガラスまたは高分子材料から構成されてもよい。
【0026】
固体表面は、金属、セラミック、例えばガラスまたは高分子材料から構成されてもよい。
【0027】
ナノ粒子と表面との間の結合力は、共有結合、クーロン相互作用、金属結合、ファンデルワールス結合、水素結合、双極子間結合またはイオン双極子結合を含んでもよい。
【0028】
一実施形態において、表面は結合したジチオール試薬を有する金であり、ナノ粒子は、金表面に結合したジチオール分子のチオール基に共有結合する。
【0029】
一実施形態において、負に帯電しているが、表面に結合していない粒子は、表面に結合したナノ粒子と混合される。
【0030】
これは、表面に結合したナノ粒子の分散を改良でき、クラスター形成を防止できるので有益である。
【0031】
この方法はさらに、上記表面に第1の別の表面および第2の別の表面を付加する工程を含んでもよく、第1の別の表面はナノ粒子と同様の表面化学
的性質を有し、第2の別の表面は上記表面と同様の表面化学を有する。
【0032】
一実施形態において、目盛りが表面に加えられる。
【0033】
これに関する利点は接着分析の顕微分析を簡単にすることができることである。
【0034】
第2の態様によれば、堆積され、帯電されたナノ粒子の連続勾配を有する表面が提供される。
【0035】
勾配の長さは1mm〜50mmであってもよい。
【0036】
ナノ粒子は10〜60nmの平均直径を有してもよい。
【0037】
ナノ粒子の平均距離は、勾配の一端において約10〜60nmであってもよく、勾配の他端において約100〜150nmであってもよい。
【0038】
一実施形態において、勾配は線形である。
【0039】
ナノ粒子および/または表面は、金属、セミラック、例えばガラス、または高分子材料から構成されてもよい。
【0040】
ナノ粒子および/または表面はそれらにコンジュゲートされた化合物を有してもよい。化合物は、チオール
群、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端、ペプチド終端、糖がコンジュゲートしたもしくはPEGがコンジュゲートしたチオール、またはチオールシラン;PEG、例えばポリ−L−リシン−PEG、PEGで修飾したシラン、マレイミド−PEG;およびアミノシランからなる群より選択されてもよい。
【0041】
第3の態様によれば、第2の態様に係る勾配表面、第1の別の表面および第2の別の表面を含む、接着現象を分析する装置が提供され、表面は分離され、第1の別の表面はナノ粒子と同様の表面化学
的性質を有し、第2の別の表面は表面と同様の表面化学
的性質を有する。
【0042】
ナノ粒子、表面、第1の別の表面または第2の別の表面は、それらにコンジュゲートされる同じまたは異なる化合物(複数も含む)を有してもよく、化合物(複数も含む)は、チオール
群、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端、ペプチド終端、糖がコンジュゲートしたもしくはPRGがコンジュゲートしたチオール、またはチオールシラン;PEG、例えばポリ−L−リシン−PEG、PEGで修飾したシラン、マレイミド(malemide)−PEG;およびアミノシランからなる群より選択されてもよい。
【0043】
第4の態様によれば、接着分析のための、第2の態様に係る表面、または第3の態様に係る装置の使用が提供される。
【0044】
分析は、表面プラズモン共鳴(SPR)、電気化学、光学顕微鏡検査または走査型電子顕微鏡法(SEM)に基づいてもよい。
【0045】
本発明は、表面上のナノ粒子の改良された勾配の形成を可能にする、従来技術に対する利点を提供する。
【0046】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点は、添付の図面と共に以下の本発明の実施形態の詳細な説明から可能になり、明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明のいくつかの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように添付の図面を参照して以下により詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載されている実施形態の限定と解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が全体を通して完全になり、本発明の範囲を十分に伝えるために当業者に提供される。これらの実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲のみにより限定される。さらに、添付の図面に例示される特定の実施形態の詳細な説明に使用される専門用語は本発明を限定するものと意図されるわけではない。
【0049】
本発明の一態様によれば、勾配を有する吸着されたナノ粒子を有する表面の簡便な製造方法が提供される。一実施形態において、この方法は以下のように説明され得る。
【0050】
1.1次元拡散
図4に係る実施形態において、静電的に安定した粒子溶液から静電表面帯電ナノ粒子200に結合する能力を有する平面203がバイアル401に配置される。次いで、表面が帯電した粒子200を有する、塩を含まない、またはほとんど塩を含まない溶液402がバイアルに加えられる。相対的に高い密度を有する塩溶液403が、溶液403と402との間の重力依存相レベルが表面203の下側部分と同じ高さになるように、塩を含まない溶液402の下で注意深く層状にされる。やがて、塩溶液403は塩を含まない溶液402内に拡散し、これにおいてイオン強度の勾配を形成する。
【0051】
当業者に理解されるように、表面は平面であることを必要とせず、任意の種類の曲率または形状を有してもよい。
【0052】
表面203に近接する緩衝液中のイオン強度が増加する場合、粒子間の静電的に依存した反発力は減少する。したがって、粒子は、溶液402と403との間の有機相レベルに最も近接する粒子の最も高い密度で互いに近接して徐々に表面に吸着する。粒子の最も低い密度は、イオン強度が低く、それ故、静電反発力が最も高いバイアルの上層に見られる。拡散の制御した時間の後、溶液は、バイアルから、塩を含まない溶液402を含有する粒子の下で塩溶液403を層状にする場合に使用したものと同じ管404を通して下から排出される。
【0053】
対流の非存在下で、表面の下位レベル、x=0mmからバイアルの底までの距離は十分であり、表面の下位レベル、x=0mmから塩を含まない溶液402の表面までの距離は十分であり、拡散は非常に長い間、継続できず、表面203上の溶液中の塩濃度の漸進的な分散は、1次元において拡散のフィックの第2法則で説明できる:
【数4】
式中、上記の条件に関して:
【数5】
式中、cはモル塩濃度であり、x=0(表面203の下位レベルと一致する)に関してxはバイアルにおける位置であり、tは拡散の時間であり、c
0はt=0における溶液403中の塩濃度であり、Dは対象の塩についての拡散定数である。
【0054】
このことは、獲得した粒子勾配の長さおよび傾きが、開始塩濃度c
0および拡散時間tを変化させることにより変化でき、非常に柔軟性のある製造方法を与えることを意味する。
【0055】
図5に記載されている本発明のさらなる発展は、
図4に記載されているいくつかの表面が拡散の同じ手順で使用できるバイアル501を使用する。この方法の利点は、バイアルにおける表面全てが、金粒子の同じ溶液、塩溶液のモル濃度、拡散の時間に曝露されることである。このことにより、表面が、同じ調製物において高い割合の一致性を有して調製され得ることが確実にされる。
【0056】
図1および以前の文献[11]に関して記載されている拡散方法は、記載している本発明と技術的に同様であるが、いくつかの重要な態様が異なる。最も重要な相違は、表面に結合する成分、ナノ粒子が一定濃度として存在し、勾配として拡散しないことであり、拡散する塩は表面に結合せず、勾配を生じる要因(ナノ粒子間の勾配静電反発力)は、溶液中のナノ粒子上で生じ、表面上では生じない。
【0057】
2.2次元拡散
拡散勾配の1次元法によれば、表面は1次元、例えば勾配の一端における結合した粒子の高密度および反対端における低密度で獲得される。
図6に係る実施形態において、表面上の粒子の循環勾配の生成が記載される。
図6Aは側面図であり、
図6Bは上面図である。
【0058】
ペトリ皿601の底において、平面203が配置される。ナノ粒子と、該ナノ粒子の拡散を可能にするが、同時に対流を防ぐマトリクスとを含む、塩を含まないか、またはほとんど塩を含まない懸濁液602がペトリ皿に注がれる。このような懸濁液は、粒子形態、例えばゲル濾過、例えばSephadex g−25または同様の材料に使用されるゲル粒子を含有する水中の多糖からなり得る。無溶媒、例えば水が平らな懸濁液相から除去された後、吸取紙の円形部分などのリザーバ603が懸濁液上に配置される。リザーバ603は、例えば吸取紙を高いモル濃度を有する塩溶液403に浸漬することによってこのような溶液で事前に満たされる。次いでこの系は拡散のための時間が与えられる。溶液403は、懸濁液602中で拡散し、循環拡散前部は、しばらくしてから、イオンの半径濃度勾配を有する最終的に円形面を生じる表面203に到達する。最終的に、懸濁液602は、溶媒、例えば水で流される。最終結果は、表面の中央において密度が最も高く、周辺に対して最も低い吸着した粒子の円形表面である。
【0059】
記載している本発明の重要な態様は、表面単位当たりの最も多い数の吸着された粒子を有する表面勾配の部分と、表面単位当たり最も少ない数の吸着された粒子を有する同じ勾配表面の部分との間の範囲である解析力学である。この範囲が大きくなると、より分析的な情報が接着および吸着実験において得られる。方法による誤差の源は、水が不規則に予測不可能なパターンで表面に結合する傾向を有することなどの塩を含まない溶媒中の低濃度の帯電粒子であり得る。このような不規則なパターンは、さらなる接着の解釈を生じ、吸着実験をより困難にする。
図6Cに係る実施形態において、不規則なパターンの形成を防止する方法が提供される。この方法は、帯電した表面結合粒子200を、表面203に結合していない帯電した粒子604と混合することを含む。後者の粒子の機能は、結合のパターンについて不規則にならないように、溶液中の帯電し、結合した粒子の分散を改良することである。
【0060】
典型的な実験および評価方法
結合した粒子を有する勾配領域は通常、1〜50mm、例えば1〜10mmの間である。この表面上で、生体高分子を用いる吸着実験および細胞を用いる接着実験が実施されてもよい。次いでこの実験の結果は単位面積当たり結合した粒子の連続勾配に相関し得る。簡単な生体高分子吸着実験において、高感度表面の光学的方法を使用することが可能である。全細胞を含む実験において、光学顕微鏡検査法が細胞の詳細な研究のために使用されてもよく、同様に蛍光顕微鏡法が詳細な研究のために使用されてもよい。
【0061】
本発明の1つの適用である
図7において、粒子勾配が、顕微鏡による分析を容易にするために目盛りが加えられている表面700に適用される。目盛りの数字は垂直702、水平703または半径方向704であってもよい。目盛りおよび目盛りの数字は、異なる種類の分析に適合するように異なる範囲、例えば視覚による分析のためにmm範囲、または光学顕微鏡による分析のために10〜500μmの範囲、または
図7B、705に記載しているSEMであってもよい。目盛りの数字は、完全または部分的に粒子が結合した表面、例えばジチオール修飾金表面を通るエッチングであってもよく、それにより、下側の基板、例えばガラスまたはシリカが露出される。代替として、目盛りの数字は、例えば粒子が結合した表面、例えばチオールシラン修飾ガラスまたはシリカ表面上の金における隆起部であってもよい。表面パターンは好ましくは、フォトリソグラフィー技術を用いて生成される。
【0062】
本発明の別の適用である
図8において、ナノ粒子勾配表面203または700は、2つの追加の別の表面801および802と共にチップ表面800、例えばスライドガラス上に存在する。
図8Aは上面図であり、
図8Bおよび8Cは2つの実施形態に係る側面図である。2つの追加の別の表面は、表面802の1つが、ナノ粒子を有する表面と同じ表面化学
的性質を与えられるように化学的に修飾され、他方の表面801が、勾配において粒子を取り囲む表面と同じ化学
的性質を与えられるように化学的に修飾される。全ての3つの表面が生物学的実験、例えば細菌吸着において存在する場合、操作者は、勾配表面の領域に細菌が吸着しているかどうかを顕微鏡により検査できる。操作者はまた、細菌が、ナノ粒子を含有せず、混合されていない表面化学
的性質のみを含有する表面に吸着する方法に関する情報を得る。このように、操作者は、細菌の接着がナノ粒子の存在に関連するか否かを決定でき、その粒子密度は吸着に必要である。異なる表面203/700、801、802は、表面の使用および製造を容易にするために障壁803を用いてチップ800上で分離されてもよい。障壁は、下側の基板804が露出されるように、チップ800上の表面203/700、801、および802の間のエッチングまたはスペースから作製されてもよい。代替として、障壁は、特に粒子勾配が下側の基板804に適用されているこれらの場合、表面203/700、801、および802の間の隆起部からなってもよい。
【0063】
本発明の適用は、例えば表面を含むチップ、例えば上記の3つの表面;1、粒子間の遊離ジチオールが、マレイミド−PEGと反応するジチオールで修飾された金表面上に金ナノ粒子勾配が製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子の表面は機能的チオール、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端、またはペプチド終端と反応する;2、ジチオールおよびマレイミド−PEGで修飾されている金表面;3、粒子上の表面と同じ機能的チオールで修飾されている金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。
【0064】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、粒子間の遊離ジチオールがマレイミドとコンジュゲートした分子、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端、またはペプチド終端、リン酸化、複素環、芳香族、カルボニル、糖、無機、金属含有粒子と反応するジチオールで修飾された金表面上に金ナノ粒子勾配が製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子の表面はPEGとコンジュゲートしたチオールと反応する;2、ジチオールおよびマレイミドとコンジュゲートした分子、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端、またはペプチド終端で修飾された金表面;3、粒子上の表面と同じ機能的チオールで修飾された金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。
【0065】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、粒子間の遊離ジチオールがマレイミド−PEGと反応するジチオール修飾金表面上に金ナノ粒子勾配が製造される金ナノ粒子勾配表面;2、ジチオールおよびマレイミド−PEGで修飾されている金表面;3、純金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。この製品を用いて、操作者は、使用されるべきチオール試薬を選択できる。接着に影響を与え得る多数の市販のチオール、例えばアミノ基、単糖および多糖とコンジュゲートしたチオールが存在する。
【0066】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、ジチオールで修飾された金表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面;2、ジチオールで修飾されている金表面;3、純金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。この製品を用いて、操作者は、粒子間で結合されるマレイミド試薬および粒子上で結合されるチオール試薬の両方を選択できる。したがって、実験を変更する可能性がさらに増加する。
【0067】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、チオールシランで修飾されたガラスまたはシリカ表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子間の遊離チオールシランはマレイミドPEGと反応し、粒子上の表面は機能的チオール、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端、またはペプチド終端と反応する;2、チオールシランおよびマレイミド−PEGで修飾されているガラスまたはシリカ表面;3、粒子の表面と同じ機能的チオールで修飾されている金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。
【0068】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、チオールシランで修飾されたガラスまたはシリカ表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子間の遊離チオールシランがマレイミドPEGと反応する;2、チオールシランおよびマレイミドPEGで修飾されているガラスまたはシリカ表面;3、修飾されていない金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。この製品を用いて、操作者は使用されるチオール試薬を選択できる。
【0069】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、チオールまたはアミノシランで修飾されたガラスまたはシリカ表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子の下および間のシランは、例えば、粒子がガラスまたはシリカ表面上で焼結されるプラズマ処理によるような方法で除去され、粒子間の表面はPEG−シランと反応し、粒子の表面は機能的チオール、例えばメチル終端、アミノ終端、酸終端またはペプチド終端と反応する;2、PEG−シランで修飾されているガラスまたはシリカ表面;3、粒子の表面と同じ機能的チオールで修飾されている金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。
【0070】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、チオールまたはアミノシランで修飾されたガラスまたはシリカ表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子の表面は、機能的チオール、例えばPEG終端、メチル終端、アミノ終端、酸終端またはペプチド終端と反応する;2、チオールまたはアミノシランで修飾されているガラスまたはシリカ表面;3、粒子の表面と同じ機能的チオールで修飾されている金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。
【0071】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、チオールまたはアミノシランで修飾されたガラスまたはシリカ表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子の下および間のシランは、例えば、粒子がガラスまたはシリカ表面上で焼結されるプラズマ処理によるような方法で除去され、粒子の間の表面はPEG−シランと反応する;2、PEG−シランで修飾されているガラスまたはシリカ表面;3、修飾されていない金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。この製品を用いて、操作者は使用されるチオール試薬を選択できる。
【0072】
本発明の適用は、表面、例えば上記の3つの表面;1、金ナノ粒子勾配が、チオールまたはアミノシランで修飾されたガラスまたはシリカ表面上に製造される金ナノ粒子勾配表面であり、粒子の下および間のシランは、例えば、粒子がガラスまたはシリカ表面上で焼結されるプラズマ処理によるような方法で除去される;2、ガラスまたはシリカ表面;3、修飾されていない金表面、を有するスライドガラスを含む製品である。この製品を用いて、操作者は異なる表面についての表面化学
的性質および修飾方法を選択できる。
【0073】
上記の適用に関して、製造において3つの典型的な表面は別個に製造されてもよく、次いで接着剤を用いてスライドガラス上で合わされてもよい。これらの表面をスライドガラス上で直接調製することも可能である。
【0074】
簡単な生体高分子吸着実験に関して、偏光解析法および表面プラズモン共鳴(SPR)などの高感度表面の光学的方法が使用されてもよい。SPRの特別な場合、いわゆる画像化SPR(iSPR)法により、完全な勾配領域におけるナノ粒子の吸着およびその後の生体接着の両方の同時定量が可能となる(実施例を参照のこと)。勾配表面のiSPR分析についてのセットアップは
図9Aに示す。通常、コンピュータ905で制御される[17]に記載されているような画像化SPRのための装置900は、薄い金層902が適用されるガラス表面901を含むSPR−基質と接触して適用される。金層の上の溶液を含有するチャンバ904が、例えば金層が溶液と接触するように緩衝液に配置される。チャンバ904は、入口907および出口908を有してもよく、表面からおよび表面まで溶液および検体を輸送する灌流システムとして機能する。
【0075】
本発明の適用において、金表面902は、溶液からのナノ粒子に結合するために層903で化学的に修飾され、ナノ粒子の勾配は表面に適用される。分析時に、勾配表面上の異なる位置からのSPR反応はこの位置における部分的密度に相関し得る。その場合、生体接着、例えばタンパク質、血小板、または細菌吸着は勾配表面で生じ、これはまた追加の反応として検出され得る(
図9B)。
【0076】
最近、電気化学技術、特にインピーダンスの測定が、表面との細胞相互作用を研究するために使用されている[18]。電気化学技術もまた、電極表面上のナノ粒子の数を推定するために使用されてもよい。これは具体的に、ナノ粒子、例えば金を導電する際に適用される[19]。
図10に記載した本発明の適用において、ナノ粒子勾配が、ナノ粒子に結合するために化学物質1003で修飾される導電材料のn個の粒子結合表面1001から構成される表面1000に適用される。表面1001が1つおよび他から電気的に絶縁されている電極として作用するように、表面1001は非導電基板1002に配置される。表面1000上の粒子結合電極表面nが低い粒子密度を得ている間、表面1000上の粒子結合電極表面1が高い粒子密度を得るようにナノ粒子勾配は製造される。これは、
図4における表面203などの表面1000を使用することにより可能となり、表面1000上の位置を0とすると、
図4におけるX=0と一致する。
【0077】
表面1000は、電解質、例えば、電解質および検体の表面1000への輸送を促進するために入口1005および出口1006も有してもよい電気化学セル1004における緩衝液と接触して適用される。表面1000に局在化する1〜n個の電極に加えて、一部の適用について、追加の基準電極1007および電解質に適用される対電極1008を加えることも必要である。一部の適用において、電極1007および/または1008もまた、表面1000に配置されてもよい。表面1000上の全ての電極1〜nならびに一部の場合1007および1008は、電気化学基準についてのシステム1009により個々に接続される。そのシステム1009は、異なる種類の電気化学基準、例えばボルタンメトリー、アンペロメトリー、クーロメトリー、インピーダンス分光法またはインピーダンスの測定であり得るシステムであってもよい。代替として、システム1009は、インピーダンスの測定などの単一種類の電気化学的測定用に設計されるシステムであってもよい。表面1000上の異なる電極からの電気化学応答が、表面1000上の異なる電極間で、または従来のtri電極セットアップにおいて電極1007および1008を使用することにより測定されてもよい[20]。測定する場合、表面1000上の異なる位置での異なる電極からの電気化学応答はこの位置における粒子密度と相関し得る。生体接着、例えば細胞接着が勾配表面で生じる場合、これはまた、電気化学応答の追加の、通常負の電荷として検出され得る。酸化還元活性の物質が表面と接触する場合、これはまた、電気化学応答の追加の、通常正の電荷として検出され得る。
【実施例】
【0078】
実施例1.SEMを用いる段階的な粒子吸着の評価
11×20mmのサイズを有する金表面を、SiO2の基板上で最初に5nmのCrおよび次いで200nmのAuを蒸発させることにより測定した。それらを洗浄し、詳細[1,8]に記載されている手順に従ってジチオールの単分子層を提供した。手短に述べると、純金表面を、オクタンジチオール入りのエタノール溶液中でインキュベートし、それらをジチオスレイトール(DDT)と反応させた。約10nm直径の金粒子を有する電気的に安定化した金粒子溶液を、詳細[1,8]に記載されている手順に従って製造した。溶液中のイオン強度を減少させ、粒子の濃度を増加させるために金溶液を16000gで遠心分離した。遠心分離後、金粒子ペレットを、18.2MΩ
*cmの導電率で純水中で約55nMの粒子濃度に希釈した。この粒子溶液を、
図5に従って製造した勾配を設計した容器に移し、その後、複数のジチオールで調製した表面を、底までの同じ特定の距離で同じ溶液内に入れた。その後、1Mの濃度およびpH4.0でクエン酸塩緩衝液を勾配容器の底に入れ、表面の下側の空間を緩衝液で満たした。次いでクエン酸緩衝液を、30分の間、表面にわたって拡散させ、その後、勾配容器の下から溶液を排出することによってその手順を停止した。異なる適用において、50mMの濃度を有するクエン酸緩衝液を表面の下側に適用し、90分未満、拡散させ、その結果として、30分下で1M緩衝液で得たものと比較して少ない傾きを有するより長い勾配を得た。勾配表面上の異なる位置でSEMを用いて表面を分析した。選択した写真を
図11に示す。
【0079】
実施例2.iSPRによる段階的な粒子吸着の評価
10nmの金ナノ粒子を有する線形勾配を、ジチオール化学により実施例1に記載したように調製した。基板として、約50nmのAuの薄層を蒸発させたガラス表面を使用した。これらの表面は、表面プラズモン共鳴、SPRによる分析に好適であり、勾配の測定後、表面を、[17]に詳細に記載されている画像化SPR用の機器に入れた。2つの異なる勾配を分析した(
図12を参照のこと)。50mMクエン酸緩衝液で調製した1つの勾配を90分間(「長い」勾配)拡散させ、1Mクエン酸緩衝液で調製した1つの勾配を30分間(「短い」勾配)拡散させた。各々の粒子勾配をまた、分散した粒子間の生体接着を最小化するためにマレイミド−PEGと反応させ、生体接着を促進するために疎水性の粒子で表面を生成する粒子の上のオクタンチオールと反応させた。各勾配表面上で、約1×5mmの領域を分析した。これらの領域において、勾配の全ての本質的な部分を撮像した。SPRは3Dグラフに示される長さであり、z軸は金ナノ粒子の表面被覆率に比例する。
図13において、「短い」勾配のライン走査は、陽性対照表面(この場合、オクタンジチオールでのみ表面が修飾された)、ならびにオクタンジチオールおよびマレイミド−PEGで修飾された陰性対照表面についてライン走査と共に示される。各ライン走査は表面の全ての走査の平均を表す。
【0080】
実施例3.iSPRおよび蛍光顕微鏡検査法を用いる疎水性ナノ粒子勾配に対するフィブリノゲン吸着および血小板吸着の評価
10nmの金ナノ粒子を有する「短い」勾配を、SPR分析用に設計した金表面上に製造し、次いで上記の実施例2に従ってマレイミド−PEGおよびオクタンチオールにより修飾した。これは、PEGを受け付けないタンパク質のバックグランドに対して疎水性粒子の勾配を与える。表面をiSPRで分析した。連続して、フィブリノゲン(PBS中の0.5mg/ml)を5分間、次いで血小板(健康なドナー由来の本質的に血清を含まない調製物)を30分間、勾配、陽性対照表面(ジチオールのみ)、および陰性対照表面(マレイミド−PEGと共にジチオールで修飾した)を有する表面に吸着した。
図14において、フィブリノゲンおよび血小板吸着からの反応を勾配表面および正に制御した表面について示した。青色の曲線はフィブリノゲンの吸着を示し、緑色の曲線はフィブリノゲンおよび血小板の両方からの蓄積した反応を示す。
図13に示したものに対応する、下側の表面からの反応は、
図14の結果から減算される。正の表面は、表面にわたって均一にフィブリノゲンおよび血小板の両方を吸着するのに対して、勾配表面は、徐々にタンパク質および血小板の両方を吸着することに留意されたい。負に制御した表面は顕著な反応を示さない。血小板吸着後、表面をPBS緩衝液で洗浄し、2%グルタルアルデヒドで15分間固定した。通常のプロトコルに従って表面を染色(アクチン骨格による染色)し、表面の異なる位置において蛍光顕微鏡検査法で分析した。
図15は、高い(A)および低い(B)粒子被覆率を有するそれぞれ位置の代表的な血小板を示す。
【0081】
実施例4.疎水性ナノ粒子勾配に対する微生物付着の評価
10nmの金ナノ粒子を有する「長い」勾配を、上記の実施例2に従ってマレイミド−PEGおよびオクタンチールで修飾した金表面上に製造した。これは、PEGを受け付けないタンパク質のバックグランドに対して疎水性粒子を有する勾配を与える。縁に沿って細長い突起のある(fimbriated)大腸菌を静止状態下で表面に吸着させ、10分間、制御した洗浄液に曝露した。残っている細菌をアクリジンオレンジおよびDAPIで染色し、その後、拡大鏡および蛍光顕微鏡下で表面を分析した。
図16は、正の制御表面(オクタンチオール)および負の制御表面(マレイミド−PEGとともにジチオールで修飾した)と共にアクリジンオレンジで染色した吸着した大腸菌の勾配表面の一部を低倍率で示す。勾配の異なる位置におけるナノ粒子の表面被覆率をSEMにより決定した。相対表面被覆率を各画像で示す。挿入した画像は、高倍率でDAPで染色した2つの細菌を示す。細菌の分布は20%表面被覆率で劇的に変化する。
【0082】
本発明は特定の実施形態を参照して上記に記載しているが、本明細書に記載した特定の形態に限定することを意図していない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲にのみ限定され、特定の上記以外の他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内で同等に可能である。
【0083】
特許請求の範囲において、「含む/含んでいる」という用語は、他の要素または工程の存在を排除しない。さらに、個々に示されているが、複数の手段、要素または方法の工程は、例えば単一の装置またはプロセッサにより実施されてもよい。加えて、個々の特徴が異なる請求項に含まれ得るが、それらは可能な場合、有益に組み合わされてもよく、異なる請求項の一体化は、特徴の組み合わせが実現できないおよび/または有益ではないということを意味するものではない。加えて、単数形は複数を排除するわけではない。「1つ(a)」、「1つ(an)」、「第1」、「第2」などの用語は複数を排除するわけではない。請求項に示した参照符号は単に明確な例示としてのみ提供しており、請求項の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0084】
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