特許第6114260号(P6114260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114260
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】音響体積波で動作するBAWフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/54 20060101AFI20170403BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20170403BHJP
   H03H 7/42 20060101ALI20170403BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20170403BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20170403BHJP
   H03H 9/70 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   H03H9/54 Z
   H03H3/02 E
   H03H7/42
   H03H9/02 K
   H03H9/17 F
   H03H9/70
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-508782(P2014-508782)
(86)(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公表番号】特表2014-519234(P2014-519234A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012058028
(87)【国際公開番号】WO2012150261
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2013年12月18日
【審判番号】不服2015-20415(P2015-20415/J1)
【審判請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】102011100468.1
(32)【優先日】2011年5月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】マウラー, ゲアハルト
【合議体】
【審判長】 大塚 良平
【審判官】 林 毅
【審判官】 山中 実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−94457(JP,A)
【文献】 特開2002−268644(JP,A)
【文献】 特表2005−535264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/54
H03H 3/02
H03H 7/42
H03H 9/02
H03H 9/17
H03H 9/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配設された多層構造の、音響体積波で動作するBAWフィルタであって、
前記基板上に、音響ミラー(SP)、第1の電極(BE)、圧電層(PZ)、第2の電極(TE)および、トリミング層(TR)をこの順に備えるBAW共振器が、前記多層構造の機能層によって実現され、
前記音響ミラー(SP)は金属層を備え、
さらに前記機能層によって、少なくとも1つのインダクタンスと少なくとも1つのコンデンサとを備えるバランが、前記BAW共振器に隣接して形成され、
前記インダクタンスは、前記第1の電極(BE)、前記第2の電極(TE)、又は前記音響ミラー(SP)の金属層を構成する前記機能層の一層又は多層により形成され、
前記コンデンサは、前記第1の電極(BE)、前記第2の電極(TE)、又は前記音響ミラー(SP)の金属層を構成する前記機能層のうちの2つの異なる層の互いに重なる部分により形成されている、
ことを特徴とするBAWフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のBAWフィルタにおいて、
前記コンデンサは、前記第1の電極(BE)及び前記第2の電極(TE)を構成する前記機能層により形成されていることを特徴とするBAWフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のBAWフィルタにおいて、
前記インダクタンスの2つが、前記第一の電極(BE)及び前記第2の電極(TE)を構成する前記機能層にそれぞれスパイラル状に形成され、少なくとも部分的に互いに重なって配置されている、
ことを特徴とするBAWフィルタ。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載のBAWフィルタにおいて、
前記少なくとも1つのインダクタンスは、第1、第2及び第3の3つのインダクタンスよりなり、前記少なくとも1つのコンデンサは第1及び第2の2つのコンデンサ(C1,C2)よりなり、
前記バランは1つの不平衡入力(EP)を、第1の信号路(S1),第2の信号路(S2),および第3の信号路(S3)を介して、平衡出力の第1の平衡出力ポート(AP1)および第2の平衡出力ポート(AP2)に接続し、
前記第1の信号路(S1)は、前記第1のインダクタンス(L1)、第1のノード(K1)、前記第2のインダクタンス(L2)および第2のノード(K2)を介して不平衡入力(EP)を第1の平衡出力ポート(AP1)に接続し、
前記第2の信号路(S2)は、前記第1のコンデンサ(C1)、前記第3のインダクタンス(L3)および第3のノード(K3)を介して前記第2のノード(K2)を第2の平衡出力ポート(AP2)に接続し、
前記第3の信号路(S3)は、前記第2のコンデンサ(C2)を介して前記第1のノード(K1)を前記第3のノード(K3)に接続する、
ことを特徴とするBAWフィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに1項に記載のBAWフィルタを製造するための方法であって、
前記BAW共振器の第1の電極(BE)、第2の電極(TE)および、音響ミラー(SP)の金属層、並びに前記バランのインダクタンス及びコンデンサを、前記多層構造の機能層をパターニングして形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法において、
前記インダクタンスおよび/または前記コンデンサを、フォトリソグラフィーパターニングによって形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項またはに記載の方法において、
前記BAW共振器と前記バランは、時間的に並行してパターニングされることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のBAWフィルタと、音響波で動作するもう1つのフィルタとが1つの共通なチップに配設されているデュプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響体積波で動作するBAWフィルタ(BAW=Bulk Acoustic Wave)に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの送受信回路では、位相情報を含むスプリアス信号の除去のために、対称(平衡)回路が用いられている。この回路は信号を互いに逆の位相に分割し、これを加算する。この際、平衡回路に等しく結合されるスプリアス信号は除去される。これはこれらのスプリアス信号の大きさが互いにキャンセルするからである。平衡回路の使用は、とりわけ受信回路で有用である。これはこの回路では信号強度が小さいことが多いからである。
【0003】
音響表面波で動作するSAWフィルタ(SAW=Surface Acoustic Wave)では、信号を所定の位相で取得する。これはBAWフィルタでは、全く不可能である。BAWフィルタ技術は、しかしながら、急峻な大きな立上り/立下り、平坦な有効帯域特性、および小さな温度係数等に関して顕著な利点を有する。非対称の不平衡出力回路を備えたBAWフィルタにおいては、不平衡信号を平衡信号に変換するバランが続いて接続されている。
【0004】
このバランをコンパクトかつ低コストでフィルタと組み合わせるための解決方法として、バランとBAWフィルタを1つの共通のチップに配設することが知られている。
【0005】
特許文献1は、BAWフィルタおよびFBARバラン(FBAR=Film Bulk Acoustic Resonator)が実現された1つのチップを記載している。この際、FBARバランは多層で極めて複雑な構造を有している。この多層構造は、2つの圧電層と、4つの電極層と、1つの誘電層とを含んでいる。
【0006】
特許文献2は、FBARフィルタを開示している。同様に、このFBARフィルタもBAWフィルタと共に単一のチップに配設されており、不平衡入力信号を平衡出力信号に変換している。この際、LCR回路は、パターニングされた金属層と誘電層とが交互に配設された構造で作製されている。この特許文献2は、さらに製造方法も記載しており、この製造方法ではBAWフィルタがチップ基板の上に形成されている。続くステップで、BAWフィルタおよびLCR回路の上に同時にカバーが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6670866号
【特許文献2】独国特許第102005003834B4号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バランと組み合わされたBAWフィルタが設けられた、従来技術のチップは、このように複雑な構造を備え、非常にコストのかかる製造方法を必要とした。本発明の課題は、したがって改善されたBAWフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載された特徴を有するBAWフィルタ、および請求項11に記載されたBAWフィルタの製造方法によって解決される。本発明の有利な実施形態はその他の請求項に示されている。
【0010】
本発明により、音響体積波で動作するBAWフィルタが提供される。このBAWフィルタは、音響体積波で動作するBAW共振器が設けられた多層構造を備え、さらにこの多層構造によって受動的な素子の回路が形成されており、この回路はバランを形成している。ここでこのバランは、少なくとも1つのインダクタンスと少なくとも1つのコンデンサとを備え、これらはBAW共振器のパターニングされた機能層から形成されている。
【0011】
各々のBAWフィルタはBAW共振器を備え、多層構造の機能層によって実現される。本発明の発想は、この機能層をさらにバランの形成に利用することにある。このため、この機能層がパターニングされ、受動的な素子が形成される。本発明によるBAWフィルタでは、BAW共振器とバランとに同じ機能層が利用されており、これによって同じ1つの機能層から製造することができるので、このBAWフィルタの構造は大幅に簡素化することができる。BAWフィルタおよびバランのパターニングは、1つの製造工程で並行して、かつこのため同時に行うことが可能である。
【0012】
このバランは、BAWフィルタのチップに組み込まれ、このチップと共にプロセス処理されで製造されるので、このバランの形成によって製造工程の追加のコストは発生しない。
【0013】
BAWフィルタを有する1つの共通なチップへのバランの組み込みは、バランを大幅に小型化する可能性を提供する。そこで本発明のバラン製造方法と技術では、通常はチップ製造に用いられる、たとえばフォトリソグラフィーによるパターンニングを用いることができる。
【0014】
BAW共振器の機能層は、音響ミラー、第1の電極、圧電層、第2の電極、およびトリミング層を備えてよい。この音響ミラーは、音響体積波がBAW共振器から洩れて、BAWフィルタが配設されている基板に侵入することを抑える。音響ミラーは、たとえば交互に重なったSiO2層と金属層とを備えてよい。
【0015】
1つの実施形態では、上記の第1の電極の下方に2つの同様に形成されたミラー層が配設される。ここで、各々のミラー層は、2つのSiO2層の間に埋め込まれたメタライジング層を備える。
【0016】
トリミング層は、上記の第2の電極の上方に配設されてよい。トリミング層は、1つのSiO2層であってよい。このトリミング層の厚さを適宜選択あるいは変更することによって、個々のあるいは多数のBAW共振器の共振周波数を、後になってから、すなわち実質的に共振器の製造後に、調整することができる。
【0017】
1つの実施形態では、前述のインダクタンスは、スパイラル形状のメタライジングによって形成され、BAWフィルタの金属機能層で構築される。このインダクタンスは、一層または多層で作製されてよい。この際、メタライジングは、この多層構造の複数の層に渡って延在してよい。したがってとりわけ第1の電極、第2の電極または音響ミラーの金属層が適している。
【0018】
1つの実施形態では、コンデンサは、2つのパターニングされた金属層によって形成され、これらのパターニングされた金属層は多層構造の異なる層に配設され、この多層構造で互いに重なっている。ここでこれらのコンデンサは、音響ミラー、第1の電極、および第2の電極の1つ以上の金属層での2つの異なる層においてパターニングされた金属層により形成されてよい。
【0019】
1つの実施形態では、インダクタンスを形成するパターニングされた金属層およびコンデンサを形成するパターニングされた金属層は、少なくとも部分的に互いに重なるように配設されている。
【0020】
1つの実施形態では、BAWフィルタは同構造の複数のBAW共振器を含み、これらの複数のBAW共振器はトリミング層の厚さが異なるのみである。BAW共振器のトリミング層の厚さは、BAW共振器がコンデンサとして作用するように設定される。大きく変化するトリミング層の厚みによって、BAW共振器の共振周波数がデチューニングされる。共振周波数が大きくデチューニングされたBAW共振器は、バラン回路におけるコンデンサとして使用することができる。
【0021】
1つの実施形態では、バランは1つの不平衡入力を、第1の平衡出力の2つの平衡出力ポートに接続し、ここでこのバランは、第1のインダクタンス、第1のノード、第2のインダクタンスおよび第2のノードを介して不平衡入力を第1の出力ポートに接続する第1の信号路と、第1のコンデンサ、第3のインダクタンスおよび第3のノードを介して第2のノードを第2の平衡出力ポートに接続する第2の信号路と、第2のコンデンサを介して第1のノードを第3のノードに接続する第3の信号路とを備える。この回路は、不平衡な入力信号を2つの平衡な出力信号に変換することを可能にし、これらの出力信号は2つの出力ポートに出力される。この2つの平衡な出力信号は、互いに180°の位相差を有する。
【0022】
1つの実施形態では、バランとBAW共振器は互いに隣接して配置される。
【0023】
さらに、本発明はBAWフィルタの製造方法に関する。この製造方法では、基板にBAW共振器の機能層が次から次に設けられた多層構造が設けられる。この多層構造の層は、受動的な素子からなる回路を形成するようにパターニングされてバランを形成し、このバランは1つのインダクタンスと少なくとも1つのコンデンサとを備え、これらはBAW共振器のパターニングされた機能層から形成される。
【0024】
このバランはBAW共振器のパターニングされた機能層から形成されるので、この製造方法では、バランとBAW共振器とを同時に、すなわち時間的に並行して製造することができる。これにより、時間的に連続した製造に比べ、製造工程を顕著に削減することができる。
【0025】
インダクタンスおよび/またはコンデンサを形成する、パターニングされた金属層はフォトリソグラフィーを用いた機能層のパターニングによって生成される。フォトリソグラフィーのパターニングは、小さく細いパターンを高精度に形成することを可能とする。フォトリソグラフィーにおいては、パターニングは光または放射線に感光性のレジスト膜の塗布、露光、現像と、これに続くレジストパターンに被覆されていない層または部分層のエッチングとによって行われる。
【0026】
この製造方法の1つの実施形態では、基板の上に、音響ミラー、第1の電極、圧電層、第2の電極およびトリミング層が次々に重なって生成される。この際、BAW共振器およびバランは隣接して配設される。音響ミラーは複数のミラー層を備えてよく、これらは次々に重なって生成されてよい。このBAW共振器およびバランの製造は並行して行うことができ、これらは単にバランにおいてはBAW共振器の機能層がパターニングされていること、および/またはトリミング層の厚さが変更されていることだけの違いである。
【0027】
本発明によよるBAWフィルタは、とりわけデュプレクサでの使用に適しており、このデュプレクサではBAWフィルタはさらにもう1つの、音響波で動作するフィルタと共に1つの共通なチップに組み込まれている。このもう1つのフィルタは、BAWフィルタまたはSAWフィルタであってよい。本発明によるBAWフィルタは、好ましくは、デュプレクサの受信路に用いられる。これはここでの僅かな信号強度のため、平衡信号伝送が有利であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下では、実施形態例とこれに付随する図を参照して、本発明を説明する。これらの図は、本発明の様々な実施形態例を示すが、これらの表示は概略的であり寸法は正確でない。
図1】BAWフィルタの多層構造を示す図である。
図2】バラン回路を示す図である。
図3a図2に示す回路が実現されている多層構造の一部である、パターニングされた下側電極を示す図である。
図3b】同様に、図2に示す回路が実現されている多層構造の一部である、パターニングされた上側電極を示す図である。
図4】本発明によるBAWデュプレクサの挿入損失S12,S13を示す図である。
図5図4に示す曲線の一部を示す図である。
図6】本発明によるBAWデュプレクサの受信ポートにおける反射係数S33を示す図である。
【0029】
図1は、基板SUBの上に配設された多層構造を備えたBAWフィルタの概略を示す。この多層構造は、音響ミラーSP、下側電極BE、圧電層PZ、上側電極TEおよびトリミング層TRを備える。
【0030】
上側および下側電極BE,TEには、交流信号が印加され、この交流信号は圧電層PZに音響体積波を励起する。ここで音響ミラーSPは、これらの波がBAW共振器から洩れて基板SUBに侵入することを妨げる。このため、この音響ミラーSPは、交互に重なった比較的高い音響インピーダンスを有する層と比較的低い音響インピーダンスを有する層とを備える。好ましくは、この音響ミラーSPは、交互に重なったSiO2層と金属層とを備える。
【0031】
トリミング層TRは、1つのSiO2層であってよい。SiO2トリミング層TRによって、音響共振器の共振周波数が設定される。
【0032】
図1に示す多層構造は、音響BAW共振器の形成に用いることができる。本発明による、多層構造の機能層のパターニングによって、さらに受動的な素子の回路が実現され、これによってバランが形成される。
【0033】
図2はバランの等価回路図を示す。このバランは多層構造の機能層のパターニングによって実現される。このバランは、不平衡の入力ポートEPと、平衡出力を形成する2つの出力ポートAP1,AP2とを備える。不平衡の入力ポートEPに印加される信号は、図2に示す回路を通って2つの信号に分割され、これらは平衡出力に出力される。図2に示す回路によって、これら2つの信号は互いに180°位相シフトされる。
このバランは、不平衡入力ポートEPを第1の平衡出力ポートAP1に接続する第1の信号路S1を備える。この第1の信号路S1には、第1のインダクタンスL1,第1のノードK1,第2のインダクタンスL2および第2のノードK2が直列に接続されている。さらに、このバランは、第1のコンデンサC1,第3のインダクタンスL3および第3のノードK3を介して第2のノードK2を第2の平衡出力ポートAP2に接続する信号路S2を備える。
【0034】
第2の信号路S2には、第1のコンデンサC1と第3のインダクタンスL3との間に、さらに第4のノードK4が配設されている。この第4のノードK4を介して、第2の信号路S2が基準電位GNDに接続されている。このバランは、さらに、第2のコンデンサC2を介して第1のノードK1を第3のノードK3に接続する第3の信号路S3を備える。
【0035】
図3および3は、図2に示す等価回路図が多層構造によって実現され得ることを示す。ここで、図3は、下側電極BEのパターニングされたメタライジングM1_BE〜M5_BEを示し、図3は、上側電極TEのパターニングされたメタライジングM1_TE〜M6_TEを示す。下側および上側電極BE,TEからなるパターニングされたメタライジングは、1つの共通な多層構造に配設され、所望の場所に貫通接触配線D1〜D7によって接続される。
【0036】
不平衡入力ポートEPは、上側電極TEに配設されている。この不平衡入力ポートEPは、上側電極TEの第1のスパイラル形状メタライジングM1_TEと接続されており、この第1のスパイラル形状メタライジングは、第1のインダクタンスを部分的に形成している。第1の貫通接触配線D1を介して、上側電極TEの第1のスパイラル形状メタライジングM1_TEは、下側電極BEの第1のスパイラル形状メタライジングM1_BEに接続されている。これら2つのスパイラル形状のメタライジングM1_TE,M1_BEは合わせて第1のインダクタンスL1を形成する。
【0037】
下側電極BEの第1のスパイラル形状メタライジングM1_BEは、他方で第2の貫通接触配線D2に接続される。この第2の貫通接触配線D2はノードK1となっている。第2の貫通接触配線D2は、上側電極TEで、上側電極の第2のスパイラル形状メタライジングM2_TEに接続されている。この第2のスパイラル形状メタライジングは第1の信号路におけるインダクタンスL2を形成している。
【0038】
さらに、第2の貫通接触配線D2は、上側電極で、矩形メタライジングM3_TEに接続されており、この矩形のメタライジングM3_TEは、下側電極BEの同構造の第2の矩形メタライジングM2_BEに対向して配置されている。これら2つの矩形メタライジングM3_TE,M2_BEは、第3の信号路S3でコンデンサC2となる平面コンデンサを形成する。
【0039】
下側電極BEの矩形メタライジングM2_BEは、さらに第3の貫通接触配線D3に接続されている。この貫通接触配線D3は下側電極BEで矩形メタライジングM2_BEを上側電極TEに接続する。この第3の貫通接触配線D3は、第3のノードK3となっている。この第3の貫通接触配線D3は、一方では第2の平衡出力ポートAP2に接続され、他方では上側電極TEに配設された第4のスパイラル形状のメタライジングM4_TEに接続されている。この第4のスパイラル形状のメタライジングは信号路S2のインダクタンスL3を形成する。
【0040】
この上側電極TEの第4のスパイラル形状のメタライジングM4_TEは、第4の貫通接触配線D4を介して下側電極BEに接続されている。下側電極BEにおいて、この第4の貫通接触配線D4は第3のメタライジングM3_BEに接続されている。この下側電極BEの第3のメタライジングM3_BEは、他方で第5の貫通接触配線D5を介して上側電極TEの第5のメタライジングM5_TEに接続されている。
【0041】
この上側電極TEの第5のメタライジングM5_TEは、さらにもう1つの接続端子を介して基準電位GNDおよび上側電極の矩形の第6のメタライジングM6_TEに接続されている。この矩形メタライジングM6_TEに対向して、下側電極BEにおいて、同構造の第4の矩形メタライジングM4_BEが配設されている。これら2つの矩形メタライジングM6_TE,M4_BEは、信号路S2における第1のコンデンサを形成する。
【0042】
この下側電極BEの第4の矩形メタライジングM4_BEは、第6の貫通接触配線D6に接続されており、この第6の貫通接触配線は下側電極BEを上側電極TEに接続する。この第6の貫通接触配線D6は、上側電極TEにおいて、第1の平衡出力ポートAPを形成する。
【0043】
その他、この第4のメタライジングM4_BEは、下側電極BEにおいて、第5のメタライジングM5_BEを介して第7の貫通接触配線D7に接続されている。この第7の貫通接触配線D7は、下側電極BEを上側電極TEの第2のメタライジングM2_TEに接続する。この第2のメタライジングM2_TEは、他方で第2のインダクタンスL2を形成する。
【0044】
ここで記載した多層構造において実現されるバラン回路は、単に本発明の1つの可能な実施形態を示すものである。
【0045】
インダクタンスL1,L2,L3は、多層構造の1つ以上の層におけるスパイラル形状のメタライジングM1_TE,M1_BE,M2_TE,M4_TEによって実現される。コンデンサC1,C2は、面状のメタライジングM2_BE,M3_TE,M6_TE,M4_BEによって形成され、これらは多層構造の2つの異なる層に配設され、互いに対向して配置されている。
【0046】
図4〜7は、本発明によるBAWフィルタを備えたデュプレクサに係るものである。ここで本発明によるBAWフィルタは、デュプレクサの受信路に配設されている。デュプレクサの送信路には、通常のBAWが用いられる。
【0047】
図4は、1つのBAWフィルタで、挿入損失S12およびS23を周波数の関数として示している。横軸には周波数がMHzで示されており、縦軸には損失がdBで示されている。
【0048】
曲線S12は、TXフィルタの挿入損失、すなわち送信ポートからアンテナポートまでの、信号通過の周波数依存を表す。曲線S23は、RXフィルタの挿入損失、すなわちアンテナポートから受信ポートまでの、信号通過の周波数依存を表す。
【0049】
図4およびこれ以降の図には、曲線S12,S23が複数記載されている。ここでは、第1の曲線は理想的なデバイスを有するデュプレクサに係るものであり、第2の曲線は、部分的に理想的であるが部分的には実際のデバイスを備えたデュプレクサに係るものであり、第3の曲線は実際のデバイスを備えたデュプレクサに係るものである。
【0050】
図5は、図4に示す曲線S23の一部を示している。
【0051】
図6は、曲線S33で記述される受信ポートでの反射係数を示す。横軸には周波数がMHzで示されており、縦軸には損失がdBで示されている。
【0052】
図7は、BAWデュプレクサの送信ポートと受信ポートの間の絶縁を記述する曲線S13を示している。横軸には周波数がMHzで示されており、縦軸には損失がdBで示されている。
【符号の説明】
【0053】
SUB 基板
SP 音響ミラー
BE 下側電極
PZ 圧電層
TE 上側電極
TR トリミング層
EP 入力ポート
AP1,AP2 出力ポート
S1〜S3 信号路
L1〜L3 インダクタンス
K1〜K4 ノード
C1,C2 コンデンサ
GND 基準電位
M1_TE〜M6_TE 上側電極のメタライジング
M1_BE〜M5_BE 下側電極のメタライジング
D1〜D7 貫通接触配線
S12 Txフィルタの挿入損失
S23 Rxフィルタの挿入損失
S33 受信ポートの反射係数
S13 絶縁
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7