(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114291
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】設定可能な目盛りを備えた複数回投与用シリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
A61M5/31 520
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-536335(P2014-536335)
(86)(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公表番号】特表2014-532447(P2014-532447A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】GB2012052613
(87)【国際公開番号】WO2013061039
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】1118290.4
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505412409
【氏名又は名称】オーウェン・マムフォード・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】マムフォード,アダム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ,ティモシー サイモン
【審査官】
寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/072700(WO,A1)
【文献】
特表2005−514120(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/067889(WO,A1)
【文献】
特開2007−190128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を入れるためのシリンジ本体と、
薬物を放出するために注入開始位置からシリンジ本体内部を移動可能なプランジャーと
を含む、複数回注射用シリンジであって、
シリンジはさらに、シリンジ本体に設けられた目盛りを含み、目盛りは、シリンジ本体の外面に置かれた多くの重ねられた取り外し可能なラベルを含み、それぞれの重ねられたラベルは、異なる開始点を備えた時系列の表示を含み、表示の任意の1つを前記注入開始位置と合わせるように設定可能であり、シリンジ本体の少なくとも一部は透明であり、その結果、時系列の表示に関して、シリンジ本体を通るプランジャーの進行の程度が外部から見える、
ことを特徴とする複数回注射用シリンジ。
【請求項2】
目盛りは、重ねられた取り外し可能なラベルの1以上をはがすことによって構成が達成されるようなものであり、その結果、シリンジ本体に取り付けられたままの一番上のラベルが、必要とされる開始点を備えた時系列の表示を示す、ことを特徴とする請求項1に記載の複数回注射用シリンジ。
【請求項3】
前記重ねられた取り外し可能なラベルは、それぞれ前記ラベルの一方の側から突き出るタブを備え、前記タブが別のラベルのタブに重ならないことを特徴とする請求項2に記載の複数回注射用シリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数回投与を行うことができるシリンジに関する。具体的には、本発明は、設定可能な時系列の表示を備えた目盛りを含む複数回投与用シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
複数回投与を提供することができる事前注入式のシリンジは周知である。このようなシリンジは、注射可能な薬物(例えば、毎日のインスリン注射)の定期的な投与を必要とするときに一般に使用されている。シリンジには通常、投与量情報が示されており、その結果、ユーザーは注入される薬物の量を決定することができる。規則的な注射を必要とするユーザーにとって、所定の期間の投与量を投与されたかどうかを思い出すことは必ずしも簡単なことではない。シリンジ上の投与量の印は一般に、残りの薬物の量の表示を提供しているにすぎない。したがって、ユーザーは、所定の期間に過剰な投与量を投与することを避けるために、最後の投与がいつなされたかの記録をつける必要がある。ユーザーが短期記憶に問題を抱えているとき、あるいは、数人の人々が同じ患者の注射を行うことを義務付けられており、各人が最後に投与されたのがいつかわからないとき、これは特に問題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、薬物を入れるためのシリンジ本体と、薬物を放出するために注入開始位置からシリンジ本体内部を移動可能なプランジャーとを含む、複数回注射用シリンジが提供され、シリンジはさらに、シリンジ本体とプランジャーの1つに設けられた目盛りを含み、目盛りは、時系列の表示を提供し、表示の任意の1つを前記注入開始位置と合わせるように設定可能であり、シリンジ本体の少なくとも一部は透明であり、その結果、時系列の表示に関して、シリンジ本体を通るプランジャーの進行の程度が外部から見える。
【0004】
目盛りは、シリンジ本体の外側のまわりに位置づけられた、窓を定義する回転可能なスリーブと、異なる開始点がシリンジ本体に配されている多くの時系列の表示を含んでもよい。目盛りは、所望の開始点を備えた時系列の表示と窓を合わせるように、回転可能なスリーブを回転させることによって構成が達成されるようなものである。
【0005】
目盛りは、シリンジ本体の外面に置かれた多くの重ねられた取り外し可能なラベルを含んでもよく、それぞれの重ねられたラベルは、異なる開始点を備えた時系列の表示を含む。目盛りは、重ねられた取り外し可能なラベルの1以上をはがすことによって構成が達成されるようなものであり、その結果、シリンジ本体に取り付けられたままの上部のラベルは、必要とされる開始点を備えた時系列の表示を示す。
【0006】
目盛りは、シリンジ本体のまわりにある複数の部分へと分離することができる、取り外し可能で交換可能なカバーを含んでもよく、カバーは時系列の表示を包含している。目盛りは、シリンジ本体からカバーを取り外し、時系列の表示の所望の開始点よりも上の点でカバーを複数の部分に分割し、そして、異なる順番でカバーを該部分と交換することによって、構成が達成されるようなものであり、その結果、時系列の表示は所望の開始点から始まる。取り外し可能で交換可能なカバーは、時系列の表示の潜在的な開始点よりも上の脆弱なスコアライン(weakening score line)を含んでもよい。
【0007】
目盛りは、プランジャーの成形した頚部部分に配された異なる開始点を備えた多くの時系列の表示と、表示の1つがシリンジの使用中にそこから見えるようにシリンジ本体内に設けられた窓を含んでもよい。目盛りは、所望の開始点を備えた時系列の表示を選択し、シリンジ本体へとプランジャーを押し出す前にシリンジの窓と時系列の表示をぴったりと合わせることによって構成が達成されるようなものである。シリンジ本体の相補的な形状の開口部は、シリンジ本体へといったん押し出されると、プランジャーの成形された頚部部分が回転するのを止める。
【0008】
目盛りはシリンジ本体の長さに沿って取り外し可能なように取り付けられた多くのストリップを含んでもよく、それぞれのストリップは、シリンジ本体に配された異なる開始点で時系列の表示を覆っている。目盛りは、所望の時系列の表示を覆うストリップを取り除くことにより構成が達成されるようなものである。
【0009】
目盛りは多くのスリーブを含んでもよく、それぞれのスリーブには、異なる開始点を備えた時系列の表示が設けられる。目盛りは、所望の開始点を備えた時系列の表示を包含する多くのスリーブの1つを選択し、シリンジ本体上でスリーブをスライドさせることによって構成が達成されるようなものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図2】第1の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図3】第2の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図4】第2の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図5】
図3および
図4の第2の実施形態で使用されるような多くの重ね合わされたラベルを示す。
【
図6】第3の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図7】
図6および
図8の第3の実施形態で使用されるような取り外し可能で交換可能なクリップを示す。
【
図8】第3の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図12】第5の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図13】第5の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図14】第6の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【
図15】第6の実施形態にかかるシリンジ本体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上に議論されるように、自分自身で注射するために複数回投与用の事前充填式シリンジを使用するユーザーや薬物の規則的に投与するユーザーは、注射の履歴と要件の記録をつける必要がある。
【0012】
複数回投与用(「multi−dose」)のシリンジが、添付の図面を参照してここから記載され、該シリンジは、最後にいつ投与されたのかについて、シリンジを使用する人に有益な情報を与えることができる設定可能な時系列の表示を備えた目盛りを含む。目盛りはシリンジの一部として形成され、ユーザーが時系列の表示内に設けられた選択肢から正確な開始時間を選ぶことを可能にするように設定可能である。シリンジの本体は透明であり、あるいは、少なくとも透明な窓を有しており、その結果、シリンジ本体を通るプランジャーの進行を、設けられた目盛りを基準にして見ることができる。
【0013】
本明細書に記載される、および、図で示される実施形態は、毎日の注射のための複数回投与用シリンジについて記載している。したがって、時系列の表示は曜日を含んでいる。しかしながら、それ以外の時間枠が選択されてもよい−例えば、1日に2回投与される複数回投与用シリンジで提供される薬物であれば、それぞれの曜日に別々に「午前」と「午後」のついた曜日が備えられている。
【0014】
図1は、薬物(または薬物を入れるカートリッジ)を入れるためのシリンジ本体(2)、皮下注射針との接続のための第1の端部(3)、および、皮下注射針に接続された第1の端部を通ってシリンジ本体内部に入れられた薬物を押し出すためにプランジャー(図示せず)を収容するのに適した別の端部(4)を含むシリンジ(1)を示している。回転可能なスリーブ(5)は、本体(2)のまわりに設けられる。スリーブ(5)は、本体(2)の外面の領域をスリーブを通して見ることができ、多くの領域の1つをスリーブを回転させることによって選択することができるように、窓(6)を定義している。
図1の窓(6)を通って示されるシリンジ本体(2)の表面の外側の領域は、月曜日から始まる曜日を示した一連の表示(または「印」)を包含している。第1の投与が行われるとき、プランジャーは月曜日の表示マークを通り、火曜日の投与が次回の投与であることを示すように位置決めされる。これにより、ユーザーまたはそれ以外の人は、次回の投与が行われる予定なのかどうかを決定するために、シリンジを参照することが可能となる。薬物治療のすべてのコースが月曜日に始まるとは限らないため、ユーザーがシリンジ上に設けられた印に適切な開始点を選ぶことができる必要がある。
【0015】
図2は、回転可能なスリーブを取り除いた
図1のシリンジ本体を示している。本体(2)の外面が、どの時間に関連した投与情報がスリーブの窓を通して表示されるかについて、多くの選択可能な選択肢を有していることがわかるだろう。例えば、
図1に示されたものの右側の次の選択可能な選択肢は、月曜日ではなく、火曜日の開始点を有している。本体(2)の外面のまわりには7つの選択可能な選択肢があり、それぞれの選択肢は、その開始点として異なる曜日を備えた一連の表示を提供している。いったんユーザーが必要な表示を選択すると適所でスリーブをロックする手段が設けられてもよく、該手段はいったん薬物治療のコースが始まると偶然には回転しないようになっている。
【0016】
図3は本発明の第8の実施形態を示す。シリンジ本体(2)には互いの上に重ねられた多くのラベル(10)が設けられている。上部ラベルは月曜日から始まる曜日を示している。それぞれのラベル(10)には、ラベルの一方の側から突き出るタブ(11)が設けられており、どのタブも別のラベルのタブには重ならないようになっている。タブ(11)は、その上のラベルの印に対応し、その結果、ユーザーが特定の日の隣に位置付けられたタブを選択し、タブが取り付けられているラベルを取り外すと(したがって、そのラベルの上にあるすべてのラベルも)、新しい一番上のラベルとしてシリンジ本体に留まるラベルには、その開始点として選択されたタブの隣に示された日を含む曜日を示す印がある。例えば、
図3の矢印Tによって示されたタブが選択され、それよりも上のラベルをはがすために使用される場合、その下のラベル(新しい一番上のラベルになる)は、
図4に示されるように、水曜日から始まる曜日を示す。
図5は、互いの上に置かれて区別されたラベルを示している。それぞれのラベルの上に重ねては置けないタブは、
図5ではっきりと見ることができる。
【0017】
図6は本発明の第6の実施形態を示す。シリンジ本体(2)には、各々が1つの曜日に対応する印を有している多くの部分(16)を含む、クリップ式のカバー(15)が設けられている。複数の部分(16)の間で、クリップ式のカバー(15)には、脆弱領域(17)、例えば、脆弱なスコアラインが設けられており、その結果、クリップ式のカバー(15)を容易に壊して2つのピースにすることができ、それぞれのピースは複数の部分(16)の1以上を含んでいる。
図7は、シリンジ本体から分離し、点線Sで割って2つのピースDおよびEにした、クリップ式のカバー(15)を示している。第1のピースDは、月曜日から木曜日までの印を含む4つの部分(16)を含んでおり、第2のピースEは、金曜日から日曜日までの印を含む3つの部分を含んでいる。これらの2つのピースが分離されたので、ユーザーは、矢印Mによって示されるようにその位置を切り替え、
図8に示されたような所望の順序でシリンジ本体上でそれらを交換することができる。
図8では、3つの部分を含むピースEは、第2のピースDの上で交換された。表示はシリンジの上部で月曜日の代わりに金曜日でから始まっている。クリップは複数の部分のいずれかの間で分離することができ、ゆえに、ユーザーは、シリンジの上部に所定の開始点(例えば、その週の曜日)を置くために目盛りを構成することができる。
【0018】
本発明の第4のさらなる変更形態が
図9および10に示されている。端部のキャップ(19)は、プランジャーを受け取るのにふさわしいシリンジ本体の端部に設けられる。キャップ(19)は、プランジャー(21)が受け取られる形成された開口部(20)を定義する。プランジャーの頚部(22)は相補的な形状を有しており、その結果、シリンジ本体の端部の開口部を通り抜けることができるが、いったんシリンジ本体の内部に入ると、プランジャーは回転することができない。プランジャーの頚部(22)上に設けられた面は一連の表示を含んでいる。それぞれの面は、異なる開始点に一連の表示を提供している。端部キャップ(19)の窓は、面のうちの1つと位置を合わせ、1つの印がユーザーに見えるようになる。
図10でわかるように、シリンジ本体に挿入されるプランジャーの端部は、小径部分(25)を有している。この小径部分(25)は、成形された開口部(20)に配されると、プランジャーを回転させることが可能となり、その結果、所望の開始点を備えた一連の表示を含む面を選択することができるようなる。
図9の矢印Aは、所望のプランジャー面の選択を示している。正しい面は、キャップ(19)の窓(23)と位置が合わさると選択される。いったん正しい面が正確に位置を合わされると、矢印Bによって示されるように、プランジャーはシリンジ本体に押し込まれ、その結果、小径部分よりも上のプランジャーの成形された頸部は、相補的に成形された開口部(20)を通って挿入される。これによってプランジャーにロックをかけ、その結果、プランジャーをもはや回転させることはできなくなる。端部キャップ(19)とプランジャーの成形された頸部(22)の一部は、
図11ではっきりと見ることができる。プランジャー(22)の成形された頚部は7つの面を有しており(プランジャー頚部の断面図は規則的な七角形である)、これによって、本発明の他の実施形態で同様に提供されるように、印に対する7つの異なる選択可能な選択肢が可能となる。
【0019】
図12は本発明の第5の実施形態を示す。シリンジ本体(2)の外部には、その長さに沿った多くの剥離可能なストリップ(30)が提供されている。剥離可能なストリップ(30)にはそれぞれ、ユーザーがストリップのうちの1つを選択し、シリンジ本体からそれをはがすことを可能にするタブ(31)が提供されている。
図12のタブ(31)のそれぞれは曜日を示しており−これは、そのタブ(31)に接続されたストリップ(30)をはがすことにより選択される一連の表示の開始点に対応している。例えば、
図13で示されるように、「MON」(月曜日)を示すタブを有するストリップ(32)は、はがされて、シリンジ本体から取り除かれる。ストリップ(32)によってそれよりも前に視界から隠されたシリンジ本体(2)の外面(33)がここで見ることができる。月曜日から始まる曜日の印は、露出された外面(33)の領域に提供される。
【0020】
本発明の第6の実施形態が
図14および15に示されている。
図14で示されるように、簡素なシリンジ本体(2)には多くの透明なスリーブ(35)が提供されており、その各々は、異なる開始点を備えた一連の表示を含んでいる。3つのスリーブ(35)が
図14には示されているが、シリンジの使用の要件にしたがって、任意の数のスリーブが提供され得る。所望の開始点を備えた一連の表示を含むスリーブが選択され、簡素なシリンジ本体のまわりの適所にスライドされる。スリーブはシリンジ本体(2)とぴったりと合うように作ることができ、その結果、いったんスリーブがシリンジ本体のまわりの適切な場所に来ると、スリーブは2つの間の摩擦力によって適所で保持される。あるいは、シリンジ本体は、スリーブを適所にロックするための手段を含んでもよい。
【0021】
さらなる代替案では、
図2に例証されるようなシリンジは、正確な表示を選択するために本体内部で回転可能なプランジャーと一緒に使用され得る。プランジャーは、シリンジ本体の内部の多くの溝または軌道の1つと係合可能でその長さに沿って軸方向に伸びるリブを含み、その結果、いったんプランジャーが正確な一連の表示と位置合わせするために回転すると、リブはシリンジ本体に押し込まれ、それにより、リブは対応する溝または軌道と係合して、それ以上回転することができなくなる。
【0022】
本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に様々な改良を行ってもよいことが当業者にはわかるであろう。