特許第6114295号(P6114295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6114295表面処理炭酸カルシウムならびに浄水ならびに汚泥および沈降物の脱水におけるこれの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114295
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】表面処理炭酸カルシウムならびに浄水ならびに汚泥および沈降物の脱水におけるこれの使用
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20170403BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20170403BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20170403BHJP
   C02F 11/14 20060101ALI20170403BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20170403BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   B01D21/01 101A
   C02F1/52 KZAB
   B01D21/01 102
   C02F1/52 E
   C02F1/52 C
   C02F1/52 A
   C02F1/52 G
   C02F1/56 A
   C02F1/56 E
   C02F1/56 G
   C02F1/56 C
   C02F1/56 K
   B01D21/01 107A
   B01D21/01 107B
   B01D21/01 107Z
   C02F11/14 C
   C02F11/14 E
   C02F11/12 C
   C02F11/12 Z
   C01F11/18 J
【請求項の数】38
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-539310(P2014-539310)
(86)(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公表番号】特表2014-533196(P2014-533196A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】EP2012071471
(87)【国際公開番号】WO2013064492
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】11187987.0
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/558,146
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード,ダニエル・イー
(72)【発明者】
【氏名】ハータン,ハンス−ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】シェルコップ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】スコービー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−176409(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/146530(WO,A1)
【文献】 特表2003−507032(JP,A)
【文献】 特開2007−029766(JP,A)
【文献】 特表2010−521296(JP,A)
【文献】 特表2010−521297(JP,A)
【文献】 特表2010−521298(JP,A)
【文献】 特表平11−504055(JP,A)
【文献】 特開昭59−069111(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0273039(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0061321(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1974806(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1974807(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1982759(EP,A1)
【文献】 特表2012−530180(JP,A)
【文献】 特表2013−510206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52− 1/56
C02F 11/00−11/20
C01F 1/00−17/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水の方法であって、以下の:
a)不純物を含む、浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を提供するステップ;
b)少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムを提供するステップであって、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている、ステップ;ならびに
c)表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物を得るために、ステップa)の水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物をステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させるステップ;
を含み、
表面処理炭酸カルシウムが、追加の処理ステップを通じてカチオン性ポリマーによって処理された表面修飾炭酸カルシウムを含み、および
表面修飾炭酸カルシウムが、表面処理炭酸カルシウムの調製前に天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってインサイチューで生成される、および/または外部源から供給されるものである、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ステップa)の水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物が、工業廃水、飲料水、都市廃水、汚泥であって、港湾汚泥、河川汚泥、沿岸汚泥または消化汚泥からなる群より選択されるもの、醸造所または他の飲料工業による廃水または工程水、製紙工業、色材、塗料またはコーティング工業の廃水または工程水、農業廃水、屠畜場廃水、皮革工業および皮革なめし工業廃水より選択される、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、ステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムが、さらに、粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウムを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、ステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムが、さらに、表面修飾炭酸カルシウムを含む、方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子が0.01μmから250μmの間の重量中央粒径d50値を有し、および/または少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子が1から250m/gの比表面積を有する、方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングが1mEq/gから15mEq/gの範囲の正電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含み、および/または少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングが、少なくとも60%のモノマー単位がカチオン性電荷を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングが1,000,000g/モルより低い重量平均分子量Mを有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、重量平均分子量Mが、50,000から750,000g/モルである、方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングが、ジアリルジアルキルアンモニウム塩;第三級および四級化アミン;四級化イミン;アクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレートおよびビニルアセテートから成る群より選択されるモノマー単位をベースとするホモポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、モノマー単位がジアリルジアルキルアンモニウム塩およびアクリル酸より選択される、方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングがジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位ならびにアクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレート;ビニルアセテートおよびこれの混合物から成る群より選択されるコモノマー単位をベースとするコポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、コポリマーがジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位、ならびにアクリルアミドおよびアクリル酸より選択されるコモノマー単位をベースとする、方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載の方法であって、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも10%が、カチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている、方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムが粉末形および/または細粒形もしくはスラリー形である、方法。
【請求項15】
請求項1または2に記載の方法であって、ステップa)の浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物を、少なくとも1つのポリマー性凝集助剤と接触させるステップd)をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、ポリマー性凝集助剤が100,000から10,000,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有し、および/またはポリマー性凝集助剤がポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリアミン、デンプンおよびこれの混合物より選択されるカチオン性またはアニオン性ポリマーである、方法。
【請求項17】
請求項15または16のいずれか一項に記載の方法であって、ステップc)およびステップd)が同時にまたは個別に行われる、方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、ステップc)および/またはステップd)が、ステップa)の処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の表面を、ステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムによって少なくとも部分的に被覆すること、ならびに/またはステップa)の処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を、ステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと混合することによって行われる、方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、ステップc)および/またはステップd)が1回以上反復される、方法。
【請求項20】
請求項1または2に記載の方法であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物が、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の相から濾過、沈降および/または遠心分離によって除去される、方法。
【請求項21】
請求項1または2に記載の方法であって、前記方法によって得た水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物が、同じ方法で、しかし少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの非存在下で処理された対応する水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に含有される凝集助剤の量より、少なくとも10重量%低い量の凝集助剤を含有する、方法。
【請求項22】
浄水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水への表面処理炭酸カルシウムの使用であって、前記炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されており、
表面処理炭酸カルシウムが、追加の処理ステップを通じてカチオン性ポリマーによって処理された表面修飾炭酸カルシウムを含み、および
表面修飾炭酸カルシウムが、表面処理炭酸カルシウムの調製前に天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってインサイチューで生成される、および/または外部源から供給されるものである、使用。
【請求項23】
水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中のポリマー性凝集助剤の量を減少させるための表面処理炭酸カルシウムの使用であって、前記炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されており、
表面処理炭酸カルシウムが、追加の処理ステップを通じてカチオン性ポリマーによって処理された表面修飾炭酸カルシウムを含み、および
表面修飾炭酸カルシウムが、表面処理炭酸カルシウムの調製前に天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってインサイチューで生成される、および/または外部源から供給されるものである、使用。
【請求項24】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムがさらに、粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウムを含む、使用。
【請求項25】
請求項24に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムがさらに、表面修飾炭酸カルシウムを含む、使用。
【請求項26】
請求項22または23に記載の使用であって、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子が0.01μmから250μmの間の重量中央粒径d50値を有し、および/または表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子が1から250m/gの比表面積を有する、使用。
【請求項27】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムのコーティングが1mEq/gから15mEq/gの範囲の正電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含み、および/または表面処理炭酸カルシウムのコーティングが、少なくとも60%のモノマー単位がカチオン性電荷を有する、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、使用。
【請求項28】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムのコーティングが1,000,000g/モルより低い重量平均分子量Mを有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、使用。
【請求項29】
請求項28に記載の使用であって、重量平均分子量Mが50,000から750,000g/モルである、使用。
【請求項30】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムのコーティングが、ジアリルジアルキルアンモニウム塩;第三級および四級化アミン;四級化イミン;アクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレートおよびビニルアセテートから成る群より選択されるモノマー単位をベースとするホモポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、使用。
【請求項31】
請求項30に記載の使用であって、モノマー単位がジアリルジアルキルアンモニウム塩およびアクリル酸より選択される、使用。
【請求項32】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムのコーティングがジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位、ならびにアクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレート;ビニルアセテートおよびこれの混合物から成る群より選択されるコモノマー単位をベースとするコポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む、使用。
【請求項33】
請求項32に記載の使用であって、コポリマーがジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位、ならびにアクリルアミドおよびアクリル酸より選択されるコモノマー単位をベースとする、使用。
【請求項34】
請求項22または23に記載の使用であって、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも10%が、カチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている、使用。
【請求項35】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムが粉末形および/または細粒形もしくはスラリー形である、使用。
【請求項36】
請求項22または23に記載の使用であって、表面処理炭酸カルシウムは少なくとも1つのポリマー性凝集助剤と組合せて使用される、使用。
【請求項37】
請求項36に記載の使用であって、ポリマー性凝集助剤が100,000から10,000,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有し、および/またはポリマー性凝集助剤がポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリアミン、デンプンおよびこれの混合物より選択されるカチオン性またはアニオン性ポリマーである、使用。
【請求項38】
表面処理炭酸カルシウムおよび不純物を含む複合物の製造方法であって、以下の:
a)不純物を含む、浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を提供するステップ;
b)少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムを提供するステップであって、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている、ステップ;ならびに
c)表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物を得るために、ステップa)の水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物をステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させるステップ;
を含み、
表面処理炭酸カルシウムが、追加の処理ステップを通じてカチオン性ポリマーによって処理された表面修飾炭酸カルシウムを含み、および
表面修飾炭酸カルシウムが、表面処理炭酸カルシウムの調製前に天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってインサイチューで生成される、および/または外部源から供給されるものである、製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水する方法ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を脱水する方法に、浄水するためのならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を脱水するための表面処理炭酸カルシウムの使用に、ならびに水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中のポリマー性凝集助剤の量を減少させるための表面処理炭酸カルシウムの使用に、ならびに前記方法によって得られる、表面処理炭酸カルシウムおよび各種の供給源から生じた不純物を含む複合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水質汚染は、世界中で深刻な問題を引き起こしている。この点で、水質汚染は発展途上国における死亡や疾患の主な原因として示唆されているだけでなく、先進国もこのような汚染問題に引き続き奮闘している。概して、水、汚泥および沈降物は、人間が原因の汚染物質によって損なわれ、飲料水としての役割などの人間の使用に堪えないか、ならびに/または水中および/もしくは陸上の植物相および動物相に負の影響を有する場合に、汚染されていると言われる。
【0003】
水、汚泥および沈降物の汚染につながる具体的な汚染物質または不純物としては、多種多様の化学物質、病原体および物理的または感覚的変化、例えば温度上昇および変色が挙げられる。この点で、化学汚染物質としては、有機物質ならびに無機物質を挙げることができる。特に無機成分の多くは、天然型(カルシウム塩、ナトリウム塩、マンガン塩など)でもあるため、これの濃度は、天然水、汚泥または沈降物が何であるか、および汚染物質が何であるかを判定するのに重要であることが多い。水、汚泥または沈降物汚染源は通例、都市廃水、即ち家庭廃水もしくは家庭廃水と工業廃水との混合物および/または流出雨水、ならびに工業廃水、即ちあらゆる商業または工業を行うために使用される敷地から放出されるあらゆる廃水から発生する。
【0004】
当分野において、汚染された水、汚泥または沈降物の浄化のための複数の手法が提案されている。例えば1つの手法は、汚染物質を除去するまたは少なくとも汚染物質の量を減少させるための凝集剤、例えば微細固体、微生物ならびに溶解した無機および有機物質の添加を包含する。凝集とは、溶解した化合物および/またはコロイド状粒子がフロックまたは「フレーク」の形で溶液から除去される工程を指す。該用語は、微細な微粒子が共に凝集してフロックとされる工程を指すためにも使用される。フロックは次に液体の上部に浮上するか、液体の底部に沈むか、または液体からただちに濾去することができる。
【0005】
凝集剤または凝集化剤は、凝集を促進するために使用される化学薬品である。凝集剤は、小粒子沈降または濾過性を改善するために水処理工程で使用される。多くの凝集剤は多価カチオン、例えばアルミニウム、鉄、カルシウムまたはマグネシウムである。これらの正に帯電したイオンは負に帯電した粒子および分子と相互作用して、凝集への障壁を低下させる。加えて、これらの化学薬品の多くは、適切なpHおよび他の条件下で水と反応して不溶性ヒドロキシドを形成し、不溶性ヒドロキシドは沈殿時に共に結合して長鎖またはメッシュを形成し、小粒子を物理的に捕捉してより大きいフロックとする。
【0006】
使用される普通の凝集剤または凝固剤は、アルミニウムスルフェートまたはポリアルミニウムクロリド(PAC)である。アルミウムスルフェートは水と反応して、アルミニウムヒドロキシドのフロックを形成する。アルミニウム化合物による凝固によって、処理済み水中にアルミニウム残留物が残ることがあり、この残留物は高濃度ではヒトに対して毒性となる場合がある。ポリアルミニウムクロリド(PAC)の溶液中にて、アルミニウムイオンは、酸素原子によって架橋されたイオンのクラスタより成るポリマーへと形成されている。PACは、例えば有機物質、例えば葉ならびに/または無機物質、例えば褐色の変色を引き起こす鉄およびマンガン化合物を含む、褐色の飲料水の処理に使用される。しかし、PACは概して、水からすべての褐色変色を除去するのに十分ではない。
【0007】
鉄(III)トリクロリドは、別の普通の凝固剤である。鉄(III)凝固剤は、アルミニウムスルフェートよりも広いpH範囲で作用するが、多くの供給源の水に有効というわけではない。鉄化合物による凝固は通例、処理済み水中に鉄残留物が残る。鉄残留物は水にわずかな味を付与することがあり、磁器製備品に褐色がかった汚れを生じることがある。さらに、鉄(III)トリクロリドは水処理系に腐食リスクを付与することがある。
【0008】
高い比表面積に基づく水処理のためのさらに周知の凝集剤、例えば活性炭またはベントナイトは、これらが微粉化された状態であるために媒体から除去される物質の吸着後に分離するのが非常に困難であるという一般的な欠点を有する。
【0009】
当業者には、水または工業廃水または下水廃水を浄化するための生成物および装置に言及しているUS2006/0273039A1も公知であり、該生成物および装置は、増加した負の電荷を珪藻岩に付与するために加熱および撹拌される珪藻岩の混合物を包含している。EP20111766A1は、水中の有機成分の量を減少させる方法に関し、タルク、疎水化炭酸カルシウム、疎水化ベントナイト、疎水化カオリナイト、疎水化ガラスまたはこれのいずれの混合物から成る群より選択される表面反応天然炭酸カルシウムおよび疎水性吸着剤を浄化される水と接触させ、表面反応天然炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムと酸および二酸化酸素との反応生成物であり、二酸化炭素は酸処理によってインサイチューで形成されるか、および/または外部から供給され、表面反応天然炭酸カルシウムが20℃にて測定した6.0を超えるpHを有する水性懸濁物として調製される。EP1982759A1は、水を浄化する方法に関し、表面反応天然炭酸カルシウムを浄化される水と接触させ、表面反応天然炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応生成物であり、二酸化炭素は酸処理によってインサイチューで形成されるか、および/または外部から供給される。EP1974807A1は、表面反応天然炭酸カルシウムまたは表面反応炭酸カルシウムを含み、20℃にて測定した6.0を超えるpHを有する水性懸濁物を水性媒体に添加することによる、水性媒体からの内分泌撹乱化合物の除去に関し、表面反応炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物である。EP1974806A1は、表面反応天然炭酸カルシウムまたは表面反応炭酸カルシウムを含み、20℃にて測定した6.0を超えるpHを有する水性懸濁物を水性媒体に添加することによる、水を浄化する方法に関し、表面反応炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムと二酸化炭素および1つ以上の酸との反応生成物である。EP1493716A1は、廃水処理方法に言及し、フルオリドイオンおよび/またはホスフェートイオンを含有する廃水にカルシウム含有化合物が添加され、次に膜形成剤および錯化剤が添加される。
【0010】
しかし、このような凝集剤の添加に伴う1つの問題は、凝集剤は有機汚染物質のみに結合および凝集を行うが、無機不純物は水試料中になお微細に分散しているということである。さらに、凝集した物質は、脱水工程、例えば濾過または遠心分離によって水相から除去する必要があり、得られた濾過ケーキは例えば燃焼によりさらに廃棄することができる。しかし、全体に不完全な凝集工程のために、このように得られた濾過ケーキ中の含水率は比較的高く、燃焼時に劇的に高いエネルギー消費量を生じる。
【0011】
別の方法は、他の無機凝集剤と併せてポリマー性凝集助剤を使用することを包含する。しかし上記の無機凝集剤の1つ、例えば鉄(III)トリクロリドと組合せて使用する場合、ポリマー性凝集助剤は、凝集助剤として効果的に作用するために、カチオン性である必要があり、即ち正の総電荷を有する必要がある。正に帯電したポリマーの長鎖は、フロックを補強し、フロックをより大きくして、より速く沈降させ、より容易に濾去するのに役立つ。カチオン性ポリマーに制限されているため、工程の柔軟性は低くなっている。
【0012】
公知のポリマー性凝集助剤はポリアクリルアミドである。特定のコモノマーを使用することによって、アニオン性ならびにカチオン性ポリアクリルアミドを提供することができる。しかし、すでに上で指摘したように、無機凝集剤、例えば鉄(III)トリクロリドと組合せて使用する場合、カチオン性ポリアクリルアミドのみが有効である。
【0013】
しかし、この手法の1つの問題は、処理される水中ですべての固体微粒子を凝集させるために、これらのポリマー性凝集助剤が通常、相当の程度まで過剰添加されることである。このため、水相から凝集物質を分離した後、使用したポリマー性凝集助剤が大量であるために、濾液中のポリアクリルアミドの含有率は通常上昇している。しかし、ポリマー性凝集助剤、とりわけポリアクリルアミドを含有する水に関する深刻な環境上の懸念があるため、濾液を自然界にただちに廃棄することはできず、このため濾液からポリマー性凝集助剤を除去するために、さらに時間とコストのかかる浄化ステップが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0273039号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第20111766号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1982759号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1974807号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1974806号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1493716号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、既存の方法よりも良好な性能を提供し、処理される廃水中の不純物およびとりわけ無機不純物の濃度ならびにポリマー性凝集助剤の濃度を効果的に低下させるが、なお低コストで容易な性能を可能にする、代替的な水処理方法に対する要求が引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的および他の目的は、本発明の主題によって解決される。本発明の第1の態様により、水を浄化するならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を脱水する方法であって、以下の:
a)不純物を含む浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を提供するステップ;
b)少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムを提供するステップであって、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている、ステップ;および
c)表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物を得るために、ステップa)の水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物をステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させるステップ;
を含む方法。
【発明の効果】
【0017】
発明者らは驚くべきことに、本発明による上述の方法が、得られた濾過ケーキおよび生成水の品質改善につながり、同じ方法で処理したが、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムに接触(ステップc)させなかった水、汚泥および/または沈降物よりも少ない量のポリマー性凝集助剤が得られることを見出した。さらに精密には、発明者らは、浄化方法によって得られる水および濾過ケーキの品質がカチオン性ポリマーによって表面処理されている定義された炭酸カルシウムによって改善できることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的では、以下の用語が以下の意味を有することが理解されるべきである:
本発明の意味では、「浄化」という用語は、水に許容されない有害化合物および/または他の化合物の除去を指す。さらに該用語は、水中での天然型化合物の濃度の低減を指す。
【0019】
「脱水」という用語は、本発明の意味では、汚泥および/または沈降物からの残留液体の除去を指す。
【0020】
「不純物」という用語は、本発明の意味では、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中の濃度が天然の濃度を超えている天然型化合物および/または天然型でない化合物を指す。
【0021】
「炭酸カルシウム」という用語は、本発明の意味では、粉砕もしくは天然炭酸カルシウム(GCC)および/または合成もしくは沈降炭酸カルシウム(PCC)および/または表面修飾炭酸カルシウム(MCC)を指す。「粉砕炭酸カルシウム(GCC)」は、本発明の意味では、天然源、例えば石灰石、大理石もしくはチョークまたはドロマイトから得られた炭酸カルシウムであり、例えばサイクロンまたは分級機による湿式および/または乾式工程による、粉砕、ふるい分けおよび/または分画などの処理によって加工される。「沈降炭酸カルシウム(PCC)」は、本発明の意味では、水性環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によって、または水中でのカルシウムおよび炭酸イオンの沈降によって一般に得られる、合成物質である。「表面修飾炭酸カルシウム」(MCC)は、本発明の意味では、天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムであって、表面処理炭酸カルシウムの調製前にこれを酸および二酸化炭素と反応させることによって得た天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを指し、ここで二酸化炭素は、酸処理によってインサイチューで生成される、および/または外部源から供給される。
【0022】
「表面処理」炭酸カルシウムという用語は、本発明の意味では、炭酸カルシウム粒子の表面をよりカチオン性にするための追加の処理ステップを通じてカチオン性ポリマーによって処理された、粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面処理炭酸カルシウムを指す。
【0023】
「カチオン性ポリマー」という用語は、本発明の意味では、炭酸カルシウム粒子に結合するときに、正の総電荷を提供するいずれのポリマーも指す。このため、アニオン性モノマー単位の存在は、正の総電荷を提供する、なお十分なカチオン性モノマー単位がある限り、排除されない。炭酸カルシウム粒子に結合された場合に正の総電荷を提供する両性ポリマーに同じことが当てはまる。
【0024】
「接触可能な表面積」という用語は、本発明の意味では、当業者に公知の混合および/またはコーティング技法によって塗布され、これにより炭酸カルシウム粒子の表面上にカチオン性ポリマーの単層を形成する、カチオン性ポリマーに接触可能であるまたは暴露されている、炭酸カルシウム粒子の表面を指す。この点で、接触可能な表面積を完全に飽和させるために必要なカチオン性ポリマーの量は単層の濃度として定義されることに留意すべきである。このため、より高い濃度を選択することができ、これにより炭酸カルシウム粒子の表面に二層または多層構造が形成される。このような単層濃度は、Papirer、SchultzおよびTurchi(Eur.Polym.J.,Vol.20,No.12,pp.1155−1158,1984)の刊行物に基づいて、当業者がただちに計算することができる。
【0025】
本発明の別の態様は、浄水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水への表面処理炭酸カルシウムの使用に関し、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%は、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。本発明のさらなる態様は、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中のポリマー性凝集助剤の量を減少させるための表面処理炭酸カルシウムの使用に関し、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%は、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0026】
表面処理炭酸カルシウムが粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウム、好ましくは粉砕炭酸カルシウムを含むことが好ましい。粉砕炭酸カルシウム(GCC)源が大理石、チョーク、カルサイト、ドロマイト、石灰石およびこれの混合物より選択され、ならびに/または沈降炭酸カルシウム(PCC)がアラゴナイト、バテライトおよび/またはカルサイト鉱物結晶形の1つ以上より選択されることも好ましい。表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子が0.04μmから250μmの間の、好ましくは0.06μmから225μmの間の、より好ましくは1μmから200μmの間の、さらにより好ましくは1μmから150μmの間の、最も好ましくは1μmから100μmの間の重量中央粒径d50値を有すること、および/または表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子が1から250m/gの、より好ましくは20から200m/gの、さらにより好ましくは30から150m/gの、最も好ましくは30から100m/gの比表面積を有することがさらに好ましい。表面処理炭酸カルシウムのコーティングが1mEq/gから15mEq/gの範囲の、より好ましくは2.5mEq/gから12.5mEq/gの範囲の、最も好ましくは5mEq/gから10mEq/gの範囲の正電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むこと、および/または表面処理炭酸カルシウムのコーティングが少なくとも60%の、好ましくは少なくとも70%の、より好ましくは少なくとも80%の、さらにより好ましくは少なくとも90%の、最も好ましくは100%に等しいモノマー単位がカチオン性電荷を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むことが、なおさらに好ましい。表面処理炭酸カルシウムのコーティングが1,000,000g/モルより低い、より好ましくは50,000から750,000g/モルの、さらにより好ましくは50,000から650,000g/モルの、最も好ましくは100,000から300,000g/モルの重量平均分子量Mを有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むことが、またさらに好ましい。表面処理炭酸カルシウムのコーティングがジアリルジアルキルアンモニウム塩;第三級および四級化アミン;四級化イミン;アクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレートおよびビニルアセテート、好ましくはジアリルジアルキルアンモニウム塩およびアクリル酸、最も好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびアクリル酸から成る群より選択されるモノマー単位をベースとするホモポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むことも好ましい。表面処理炭酸カルシウムのコーティングがジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位ならびにアクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレート;ビニルアセテートおよびこれの混合物から成る群より選択されるコモノマー単位をベースとするコポリマーである、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むことも好ましく、好ましくはモノマー単位がジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択され、コモノマー単位がアクリルアミドおよびアクリル酸より選択される。炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも10%が、好ましくは接触可能な表面積の少なくとも20%が、より好ましくは少なくとも30%が、さらにより好ましくは少なくとも40%が、最も好ましくは接触可能な表面積の少なくとも50%が、カチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されていることがさらに好ましい。表面処理炭酸カルシウムが粉末形および/または細粒形もしくはスラリー形であることがなおさらに好ましい。さらなる実施形態において、表面処理炭酸カルシウムは少なくとも1つのポリマー性凝集助剤と組合せて使用される。ポリマー性凝集助剤は100,000から10,000,000g/モルの範囲の、好ましくは300,000から5,000,000g/モルの範囲の、より好ましくは300,000から1,000,000g/モルの範囲の、最も好ましくは300,000から800,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有し、および/またはポリマー性凝集助剤は、非イオン性もしくはイオン性、好ましくはポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリアミン、デンプンおよびこれの混合物より選択されるカチオン性またはアニオン性ポリマーである。
【0027】
本発明のなおさらなる態様は、該方法によって得られる表面処理炭酸カルシウムおよび不純物を含む複合物に関する。
【0028】
以下で水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水のための本発明の方法の好ましい実施形態または技術的詳細事項に言及する場合、これらの好ましい実施形態または技術的詳細事項が浄水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水のための表面処理炭酸カルシウムの本発明の使用にも、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中のポリマー性凝集助剤の量を減少させるための表面処理炭酸カルシウムの本発明の使用にも、ならびに本明細書で定義する表面処理炭酸カルシウムおよび不純物にも言及していること、ならびに(適用可能な限り)この逆も同様であることが理解されるべきである。例えば、本発明の方法で提供されている表面処理炭酸カルシウムが好ましくは粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウムを含み、また本発明の使用ならびに本発明の複合物が好ましくは粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウムを含むことが記載されている。
【0029】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、ステップa)の水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、工業廃水、飲料水、都市廃水、汚泥、例えば港湾汚泥、河川汚泥、沿岸汚泥または消化汚泥、醸造所または他の飲料工業による廃水または工程水(process water)、製紙工業、色材、塗料またはコーティング工業の廃水または工程水、農業廃水、屠畜場廃水、皮革工業および皮革なめし工業廃水より選択される。
【0030】
本発明の方法の別の好ましい実施形態により、ステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムは、粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウム、好ましくは表面修飾炭酸カルシウムを含む。
【0031】
本発明の方法のまださらに別の好ましい実施形態により、粉砕炭酸カルシウム(GCC)源は、大理石、チョーク、カルサイト、ドロマイト、石灰石およびこれの混合物より選択され、ならびに/または沈降炭酸カルシウム(PCC)は、アラゴナイト、バテライトおよび/またはカルサイト鉱物結晶形の1つ以上より選択される。
【0032】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、0.01μmから250μmの間の、好ましくは0.06μmから225μmの間の、より好ましくは1μmから200μmの間の、さらにより好ましくは1μmから150μmからの間の、最も好ましくは1μmから100μmの重量中央粒径d50値を有し、および/または少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、1から250m/gの、より好ましくは10から200m/gの、さらにより好ましくは20から150m/gの、最も好ましくは30から100m/gの比表面積を有する。
【0033】
本発明の方法の別の好ましい実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、1mEq/gから15mEq/gの範囲の、より好ましくは2.5mEq/gから12.5mEq/gの範囲の、最も好ましくは5mEq/gから10mEq/gの範囲の正電荷密度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含み、および/または少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、少なくとも60%の、好ましくは少なくとも70%の、より好ましくは少なくとも80%の、さらにより好ましくは少なくとも90%の、最も好ましくは100%に等しいモノマー単位がカチオン性電荷を有する、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む。
【0034】
本発明の方法のまださらに別の好ましい実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、1,000,000g/モルより低い、より好ましくは50,000から750,000g/モルの、さらにより好ましくは50,000から650,000g/モルの、最も好ましくは100,000から300,000g/モルの重量平均分子量Mを有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む。
【0035】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩;第三級および四級化アミン;四級化イミン;アクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレートおよびビニルアセテート、好ましくはジアリルジアルキルアンモニウム塩およびアクリル酸、最も好ましくはジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびアクリル酸から成る群より選択されるモノマー単位をベースとするホモポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む。
【0036】
本発明の方法の別の好ましい実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位ならびにアクリルアミド;メタクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;ビニルスルホン酸;ビニルピロリドン;ヒドロキシエチルアクリレート;スチレン;メチルメタクリレート;ビニルアセテートおよびこれの混合物から成る群より選択される好ましくはコモノマー単位をベースとするコポリマーである少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含み、好ましくはモノマー単位がジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択され、コモノマー単位がアクリルアミドおよびアクリル酸より選択される。
【0037】
本発明の方法のまださらに別の好ましい実施形態により、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも10%が、好ましくは接触可能な表面積の少なくとも20%が、より好ましくは少なくとも30%が、さらにより好ましくは少なくとも40%が、最も好ましくは接触可能な表面積の少なくとも50%が、カチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0038】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムは、粉末形および/または細粒形もしくはスラリー形である。
【0039】
本発明の方法の別の好ましい実施形態により、方法は、ステップa)の浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つのポリマー性凝集助剤と接触させるステップd)をさらに含む。ポリマー性凝集助剤が100,000から10,000,000g/モルの範囲の、好ましくは300,000から5,000,000g/モルの範囲の、より好ましくは300,000から1,000,000g/モルの範囲の、最も好ましくは300,000から800,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有し、および/またはポリマー性凝集助剤が非イオン性もしくはイオン性、好ましくはポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリアミン、デンプンおよびこれの混合物より選択されるカチオン性またはアニオン性ポリマーであることが好ましい。
【0040】
本発明の方法のまださらに別の好ましい実施形態によりステップc)およびステップd)は同時にまたは個別に、好ましくは個別に行われる。
【0041】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、ステップc)および/またはステップd)は、ステップa)の処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の表面をステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムによって少なくとも部分的に被覆すること、ならびに/またはステップa)の処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物をステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと混合することによって行われる。
【0042】
本発明の方法の別の好ましい実施形態により、ステップc)および/またはステップd)は1回以上反復される。
【0043】
本発明の方法のまださらに別の好ましい実施形態により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物は、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の相から濾過、沈降および/または遠心分離によって除去される。
【0044】
本発明の方法の好ましい一実施形態により、該方法によって得た水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、同じ方法で、しかし少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの非存在下で処理される対応する水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に含有されるポリマー性凝集助剤の量より、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、さらにより好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%低い量のポリマー性凝集助剤を含有する。
【0045】
上述したように、水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水のための本発明の方法は、ステップa)、b)およびc)を含む。以下では、本発明のさらなる詳細事項ならびにとりわけポリマー性凝集助剤の量が低減されるという点で濾過ケーキおよび水質の改善を提供する浄水のための本発明の方法の上述のステップについて言及する。
【0046】
ステップa):浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の提供
本発明の方法のステップa)により、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物が提供され、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は不純物を含む。
【0047】
本発明の方法によって処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、好ましくは工業廃水、飲料水、都市廃水、汚泥、例えば港湾汚泥、河川汚泥または消化汚泥、醸造所または他の飲料工業による廃水または工程水、製紙工業、色材、塗料またはコーティング工業の廃水または工程水、農業廃水、屠畜場廃水、皮革工業および皮革なめし工業廃水より選択される。
【0048】
本発明の文脈内では、「工程水」という用語は、工業工程を実行または維持するために必要ないずれの水も指す。「廃水」という用語は、これの使用場所、例えば工業プラントから排出されたいずれの水も指す。
【0049】
「汚泥」という用語は、本発明の意味では、あらゆる種類の汚泥、例えば一次汚泥、生物汚泥、混合汚泥、消化汚泥、物理化学汚泥および鉱物汚泥を指す。この点で、一次汚泥は沈降工程から得られ、通常大きいおよび/または高密度の粒子を含む。生物汚泥は廃水の生物処理から得られ、通常、微生物の混合物から成る。これらの微生物は、主に細菌であり、エキソポリマーの合成を通じて融合して細菌フロックとなる。混合汚泥は、一次汚泥と生物汚泥のブレンドであり、通常、35重量%から45重量%の一次汚泥および65重量%から55重量%の生物汚泥を含む。消化汚泥は、消化と呼ばれる過程における生物安定化ステップから得られ、通常、生物または混合汚泥に対して行われる。消化汚泥は各種の温度下(中温性または好熱性)で、酸素の存在下または非存在下(好気性または嫌気性)で行われる。物理化学汚泥は廃水の物理化学処理の結果であり、化学処理によって生成されたフロックで構成されている。鉱物汚泥は鉱物工程、例えば採石または採鉱選鉱工程の間に生成される汚泥を示し、多様なサイズの鉱物粒子を本質的に含む。)。
【0050】
本発明の文脈内では、「沈降物」は、天然型物質のいずれの水含有粒子も指す。
【0051】
好ましくは、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は有機不純物および/または無機不純物を含む。
【0052】
本発明の方法により、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は無機不純物を含む。「無機不純物」という用語は、本発明の意味では、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中の濃度が通例水中で観測される天然の濃度を超えている天然型化合物および/または天然型でない化合物を指す。
【0053】
特に、多くの無機不純物は通例、溶解無機物、即ち溶解した無機物質、例えば一時硬度を上昇させるカルシウムおよび/またはマグネシウムの炭酸塩として存在しているが、スルフェートおよびクロリドは永久硬度を上昇させる。水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中に存在する他の無機不純物としては、水に溶解して弱酸性の炭酸を与える二酸化炭素、ナトリウム塩、砂地の川床から浸出したシリケート、塩水侵入からのクロリド、化学薬品および鉱物の添加からのアルミニウム、肥料からのリン酸塩、歯を強くする添加物に由来し、肥料およびアルミニウム工場からの排出物としてのフルオリド化合物、肥料使用からの流出物ならびに浄化槽からの漏出として由来するニトレートおよびニトライト化合物、下水または水媒介疾患に対抗するための自治体システムの塩素処理から由来する塩素および鋼鉄および金属工場ならびにプラスチックおよび肥料工場からの排出物として由来するシアニド化合物が挙げられる。
【0054】
処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物が重金属不純物を含む場合、これらは通例、鉱物および錆びた鉄パイプから由来する第一鉄および第二鉄化合物;石油製油所からの排出物、難燃剤または電子機器からの排出物として由来するアンチモン化合物;天然堆積物の腐食、果樹園からの流出物、ガラスおよび電子機器製造廃棄物からの流出物から由来するヒ素化合物;掘削廃棄物の排出物としての、および金属精製所からのバリウム化合物;金属精製所および石炭燃焼工場ならびに電気、航空宇宙および防衛産業からの排出物として由来するベリリウム化合物;亜鉛メッキパイプの腐食過程、金属精製所からの排出物ならびに廃バッテリおよび塗料からの流出物から由来するカドミウム化合物;製鉄所およびパルプ工場からの排出物から由来するクロム化合物;金属精製所からの排出物としておよび廃バッテリの流出物から由来するコバルトおよびニッケル化合物;家庭用配管系の腐食工程から由来する銅および亜鉛化合物;石油製油所および例えば金属もしくは金属鉱石抽出のための鉱床または汚染汚泥を生成する他の鉱床からの排出物として由来するセレン化合物;鉱石処理場からの浸出ならびに電子機器、ガラスおよび製薬工場からの排出物として由来するタリウム化合物または金属の採鉱、精錬(亜鉛、鉛およびカドミウム)および製鋼から由来する亜鉛もしくは水銀化合物であり、ならびに石炭燃焼およびある廃棄物によって亜鉛が環境に放出されることがある。
【0055】
さらに、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物も有機不純物を含むことがある。本発明の文脈では、「有機不純物」という用語は、広く解釈される必要があり、具体的な有機化合物、例えば界面活性剤、多環式化合物、コレステロールまたは内分泌撹乱化合物ならびにより複雑な有機物質(例えば微生物による有機物質)を含む。
【0056】
不純物は本発明の意味では、有機、無機、生物、鉱物不純物またはこれの組合せを含むものとし、前記不純物は溶解形、分散形もしくは乳化形ならびにコロイド形で存在することができるか、または固体に吸着させることができ、ならびにこれの組合せもしくはなお他の形で存在することができる。
【0057】
好ましくは、浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、以下の、界面活性剤;コレステロール;内分泌撹乱化合物;アミノ酸;タンパク質;炭水化物;消泡剤;アルキルケトンダイマー(AKD)、アルケニル無水こはく酸(ASA)またはこれの混合物から成る群より選択されるサイズ剤;ポリビニルアセテート;ポリアクリレート、特にポリアクリレートラテックス;スチレンブタジエンコポリマー、特にスチレンブタジエンラテックス;微生物;鉱油;植物油脂;および脂肪;またはこれのあらゆる混合物から成る群より選択される、有機不純物の少なくとも1つを包含する。
【0058】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、有機不純物はピッチも含む。「ピッチ」という用語は、本発明で使用する場合、製紙またはパルプ化工程で発生する具体的な種類の有機物質を指す。製紙の主な繊維源は木材であり、木材はパルプ化の間に、粉砕、熱処理および化学処理の組合せによって木材の構成繊維にまで分解される。この工程の間に、木材に含有されている天然樹脂は、工程水中に微細な液滴の形で放出される。これらの液滴はピッチと呼ばれる。ピッチの化学組成は概して4種類の親油性成分:脂肪および脂肪酸;ステリルエステルおよびステロール;テルペノイド;ならびにワックスに分けられる。ピッチの化学組成は、繊維源、例えば木の品種および試料が産出した季節による成長によって変わる。
【0059】
有機成分が界面活性剤である場合、界面活性剤はイオン性または非イオン性であることができる。界面活性剤がアニオン性である場合、界面活性剤はカルボキシレート、スルフェートまたはスルホネートより選択される官能基を有することができる。界面活性剤がカチオン性である場合、これの官能基は第四級アンモニウム基であることができる。
【0060】
処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は内分泌撹乱化合物を含み、内分泌撹乱化合物は、好ましくは例えば内因性ホルモン、例えば17β−エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)、テストステロンまたはジヒドロテストステロン;フィトホルモンおよびマイコホルモン、例えばβ−シトステロール、ゲニステイン、ダイゼインまたはゼラレオン;薬剤、例えば17α−エチニルエストラジオール(EE2)、メストラノール(ME)、ジエチルスチルベストロール(DES)および工業化学薬品、例えば4−ノニルフェノール(NP)、4−tert−オクチルフェノール(OP)、ビスフェノールA(BPA)、トリブチルスズ(TBT)、メチル水銀、フタレート、PAKまたはPCBを含む群より選択される。
【0061】
処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物が消泡剤を含む場合、消泡剤はエチレンオキシド、グリコールエーテル、シリコーンオイルベースの消泡剤、脂肪酸エステル消泡剤またはこれのあらゆる混合物であることができる。消泡剤は、好ましくは粘着物質より選択され得る。粘着物質は、再生紙から生じる潜在的な沈殿形成成分である。概して、例は糊、ホットメルトプラスチック、印刷インクおよびラテックスである。製紙工業は、完成紙製品の製造における紙繊維完成紙料源として、多様な量の再生繊維または再生紙を利用する。再生紙は上で概説した合成ポリマー材料によって汚染されていることが多く、これらのポリマー材料は製紙業界では粘着物質と呼ばれる。粘着物質は、木材の抽出画分からの天然型樹脂物質であるピッチとは異なる。粘着物質についてより詳細に記載されている、E.L.Back and L.H.Allen,“Pitch Control,Wood Resin and Deresination”,Tappi Press,Atlanta,2000を参照されたい。
【0062】
処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物が微生物を含む場合、微生物は、好ましくは細菌、真菌、古細菌または原生生物より選択される。
【0063】
好ましい植物油は食用油、例えばココナッツ油、トウモロコシ油、綿実油、ナタネ油、ヤシ油、ダイズ油、ヒマワリ油またはアマニ油である。
【0064】
浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の正確な組成ならびにとりわけ無機および/または有機不純物の量は、汚染水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の供給源に応じて変わる。
【0065】
ステップb):少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの提供
本発明の方法のステップb)により、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムが提供される。
【0066】
本発明の方法により、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0067】
好ましい一実施形態において、表面処理炭酸カルシウムは、粉砕(もしくは天然)炭酸カルシウム(GCC)または沈降(もしくは合成)炭酸カルシウム(PCC)または表面修飾炭酸カルシウム(MCC)を含む。別の好ましい実施形態において、表面処理炭酸カルシウムは、GCC、PCCおよびMCCより選択される少なくとも2つの炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、表面処理炭酸カルシウムはGCCおよびPCCの混合物を含む。または、表面処理炭酸カルシウムはGCCおよびMCCの混合物を含む。または、表面処理炭酸カルシウムはPCCおよびMCCの混合物を含む。
【0068】
とりわけ好ましい一実施形態において、表面処理炭酸カルシウムは表面修飾炭酸カルシウム(MCC)を含む。
【0069】
粉砕(または天然)炭酸カルシウム(GCC)は、堆積岩、例えば石灰石もしくはチョークからまたは変成大理石から採掘された、天然型の炭酸カルシウムであることが理解される。炭酸カルシウムは、3種類の結晶多形:カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトとして存在することが知られている。カルサイトは、最も一般的な結晶多形であり、炭酸カルシウムの最も安定な結晶形と考えられている。アラゴナイトは、より一般的ではないが、不連続またはクラスタ化針状斜方晶系結晶構造を有する。バテライトは、最もまれな炭酸カルシウム多形であり、概して不安定である。粉砕炭酸カルシウムは、三方晶系−菱面体晶系と言われ、炭酸カルシウム多形のうち最も安定な多形に相当する、カルサイト多形をほぼ主体としている。
【0070】
好ましくは、粉砕炭酸カルシウム源は、大理石、チョーク、カルサイト、ドロマイト、石灰石およびこれの混合物を含む群より選択される。好ましい実施形態において、粉砕炭酸カルシウム源はカルサイトである。
【0071】
炭酸カルシウム「源」という用語は、本発明の意味では、炭酸カルシウムが得られる天然型鉱物物質を指す。炭酸カルシウム源は、天然型構成要素、例えばマグネシウムカルボネート、アルミノシリケートなどをさらに含んでよい。
【0072】
加えてもしくはまたは、表面処理炭酸カルシウムは沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む。PCC型の炭酸カルシウム多形は、カルサイトに加えて、斜方晶系針状結晶形状を有するアラゴナイト型の、およびアラゴナイトよりもなお安定性の低い六方晶系バテライト型の、より安定性の低い多形を含むことが多い。異なるPCC形は、これの特徴的なx線粉末回折(XRD)ピークに従って同定され得る。PCC合成は、二酸化炭素をカルシウムジヒドロキシドの溶液に接触させるステップを含む合成沈降反応によって最も一般的に発生し、カルシウムジヒドロキシドは生石灰としても公知であるカルシウムオキシドの水性懸濁物の形成時に提供されることが最も多く、カルシウムジヒドロキシドの懸濁物は石灰乳として一般に知られる。反応条件に応じて、このPCCは、安定多形および不安定多形の両方を含む、多様な形で現れることがある。実際に、PCCは、熱力学的に不安定な炭酸カルシウム物質であることが多い。本発明の文脈で言及する場合、PCCは、水中の微粉化カルシウムオキシド粒子から由来する場合に当分野において一般に石灰スラリーまたは石灰乳と呼ばれる、カルシウムジヒドロキシドのスラリーの炭酸塩化によって得た合成炭酸カルシウム生成物を意味すると理解されるものとする。
【0073】
好ましい沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライトもしくはカルサイト鉱物結晶形またはこれの混合物より選択される。
【0074】
加えてもしくはまたは、前記GCCまたはPCCは、表面処理されて表面修飾炭酸カルシウムを形成することができ、表面修飾炭酸カルシウムは、GCCおよび/またはPCCならびに炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から広がっている、不溶性の少なくとも部分結晶性の非炭酸カルシウム塩を含む物質である。このような表面修飾生成物は、例えばWO00/39222、WO2004/083316、WO2005/121257、WO2009/074492、EP2264108A1、EP2264109A1に従って調製され得る。
【0075】
例えば表面修飾炭酸カルシウムは、表面処理炭酸カルシウムの調製前に天然炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られ、ここで二酸化炭素は、酸処理によってインサイチューで生成される、および/または外部源から供給される。酸処理は、25℃にて6以下のpKを有する酸を用いて行うことができる。25℃におけるpKが0以下である場合、酸は好ましくは、スルフェート酸、塩酸およびこれの混合物より選択される。25℃におけるpKが0から2.5である場合、酸は好ましくは、HSO、MHSO(Mは、ナトリウムおよびカリウムを含む群より選択されるアルカリ金属イオンである。)、HPO、シュウ酸およびこれの混合物より選択される。25℃におけるpKが2.5から6である場合、酸は好ましくは、酢酸、ギ酸、プロパン酸およびこれの混合物より選択される。さらに、酸処理および酸処理に使用される酸に関連するEP2264108A1およびEP2264109A1の主題は、これの全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0076】
とりわけ好ましい実施形態において、本表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、沈降法に従って測定した、0.01μmから250μmの、好ましくは0.06μmから225μmの、より好ましくは1μmから200μmの、さらにより好ましくは1μmから150μmからの、最も好ましくは1μmから100μmの重量中央粒径d50値を有する。100ミクロン未満の、好ましくは85ミクロン未満のd98を有する炭酸カルシウム粒子も有利であり得る。または、50ミクロン未満の、好ましくは25ミクロン未満のd98を有する炭酸カルシウム粒子は有利であり得る。
【0077】
本表面処理炭酸カルシウムが粉砕炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、沈降法に従って測定した、好ましくは0.04μmから250μmの、より好ましくは0.06μmから225μmの、さらにより好ましくは1μmから200μm、さらにより好ましくは1μmから150μmの、最も好ましくは1μmから100μmの重量中央粒径d50値を有する。
【0078】
本表面処理炭酸カルシウムが沈降炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、沈降法に従って測定した、好ましくは0.01μmから10μmの、より好ましくは0.02μmから5μmの、さらにより好ましくは0.02μmから2.5μmの、最も好ましくは0.02μmから1μmの重量中央粒径d50値を有する。
【0079】
本表面処理炭酸カルシウムが表面修飾炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、沈降法に従って測定した、好ましくは0.5μmから150μmの、好ましくは0.5μmから100μmの、より好ましくは0.5μmから100μmの、最も好ましくは1μmから50μmの重量中央粒径d50値を有する。
【0080】
本明細書で使用する場合および一般に当分野で定義される場合、重量中央粒径「d98」値は、粒子体積または質量の98%(平均点)が規定値に等しい直径を有する粒子によって占められる大きさとして定義される。重量中央粒径は、沈降法に従って測定される。沈降法は、重量測定場での沈降挙動の分析である。測定は、マイクロメトリックス・インスツルメント・コーポレーションのセディグラフ(商標)5100によって行われる。
【0081】
本表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから250m/gの、より好ましくは10m/gから200m/g、さらにより好ましくは20m/gから150m/gの、最も好ましくは30m/gから100m/gの比表面積を有する。例えば表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、40m/gから50m/gの、例えば45m/gの比表面積を有する。または、本表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、50m/gから60m/gの比表面積を、例えば56m/gの比表面積を有する。
【0082】
本表面処理炭酸カルシウムが粉砕炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから100m/gの、より好ましくは1m/gから75m/gの、さらにより好ましくは1m/gから50m/gの、最も好ましくは1m/gから20m/gの比表面積を有する。
【0083】
本表面処理炭酸カルシウムが沈降炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから150m/gの、より好ましくは1m/gから100m/gの、さらにより好ましくは1m/gから70m/gの、最も好ましくは1m/gから50m/gの比表面積を有する。
【0084】
本表面処理炭酸カルシウムが表面修飾炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから250m/gの、より好ましくは1m/gから200m/gの、さらにより好ましくは10m/gから200m/gの、最も好ましくは15m/gから170m/gの比表面積を有する。
【0085】
好ましい一実施形態において、本表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、表面処理前に、1m/gから250m/gの比表面積および0.01μmから250μmの範囲内の重量中央粒径d50値を有する。好ましくは、表面処理前に、比表面積は10m/gから200m/gの範囲内であり、重量中央粒径d50値は0.06μmから225μmの範囲内である。より好ましくは、表面処理前に、比表面積は20m/gから150m/gの範囲内であり、重量中央粒径は1μmから200μmの範囲内である。さらにより好ましくは、表面処理前に、比表面積は30m/gから100m/gの範囲内であり、重量中央粒径d50値は1μmから150μmの範囲内である。最も好ましくは、表面処理前に、比表面積は30m/gから100m/gの範囲内であり、重量中央粒径d50値は1μmから100μmの範囲内である。例えば、本表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、40m/gから50m/gの範囲内の比表面積および1μmから50μmの範囲内の重量中央粒径d50値を有する。または、the本表面処理炭酸カルシウムの炭酸カルシウム粒子は、50m/gから60m/gの範囲内の比表面積および1μmから50μmの範囲内の重量中央粒径d50値を有する。
【0086】
本発明の方法により、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0087】
この点で、表面処理炭酸カルシウムのコーティングに含まれている少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、1mEq/gから15mEq/gの範囲の正電荷密度を有するいずれのカチオン性ポリマーからも選択できる。好ましくは、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、該カチオン性ポリマーが2.5mEq/gから12.5mEq/gの範囲の、最も好ましくは5mEq/gから10mEq/gの範囲の正電荷密度を有するように選択される。
【0088】
例えば、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、6mEq/gから8mEq/gの範囲の、最も好ましくは6mEq/gから7mEq/gの範囲の正電荷密度を有する。または、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、7mEq/gから8mEq/gの範囲の正電荷密度を有する。
【0089】
追加的にもしくは代替的に、表面処理炭酸カルシウムのコーティングに含まれている少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、該カチオン性ポリマーがモノマー単位の少なくとも60%がカチオン性電荷を帯びるように選択される。好ましくは、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、少なくとも70%の、より好ましくは少なくとも80%の、さらにより好ましくは少なくとも90%のモノマー単位がカチオン性電荷を有する、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む。本発明の好ましい一実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、100%に等しい、好ましくは100%のモノマー単位がカチオン性電荷を有する、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む。
【0090】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、1,000,000g/モルより低い、より好ましくは50,000から750,000g/モルの、さらにより好ましくは50,000から650,000g/モルの、最も好ましくは100,000から300,000g/モルの重量平均分子量Mを有する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む。
【0091】
本発明の方法において、表面処理炭酸カルシウムは、少なくとも1つのカチオン性ポリマーのホモポリマーおよび/またはコポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0092】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、少なくとも1つのカチオン性ポリマーのホモポリマーを含む。言い換えると、カチオン性ポリマーは、実質的に99.5重量%以下のそれぞれのモノマー単位より成る。
【0093】
好ましい一実施形態において、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、第三級アミン、四級化アミン、四級化イミン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸,ビニルスルホン酸、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、スチレン、メチルメタクリレートおよびビニルアセテートから成る群より選択されるモノマー単位のみがホモポリマー中で検出できる。
【0094】
本発明の好ましい一実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩モノマーをベースとするホモポリマーを含む。好ましい一実施形態において、ジアリルジアルキルアンモニウム塩モノマーはジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。
【0095】
本発明の別の好ましい実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、アクリル酸モノマーをベースとするホモポリマーを含む。
【0096】
カチオン性ポリマーがコポリマーである場合、好適なコモノマーと共重合できるモノマーを含むことが認識される。好ましくは本発明によるコポリマーであるカチオン性ポリマーは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位ならびにアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、ビニルアセテートおよびこれの混合物から成る群より選択されるコモノマー単位を含み、好ましくはこれらから成る。
【0097】
例えば、表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、US 2009/0270543 A1に櫛形ポリマーとして記載されているカチオン性ポリマーを含み得る。該ポリマーに関するUS 2009/0270543 A1の主題は、これの全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0098】
好ましい一実施形態において、カチオン性ポリマーは、92重量%の、分子量2,000g/モルのメトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび8重量%のアクリル酸から調製され、ソーダによって少なくとも部分的に中和されたコポリマーである。さらに好ましい実施形態において、カチオン性ポリマーは、92重量%の、分子量2,000g/モルのメトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび8重量%のアクリル酸から調製され、ソーダによって完全に中和されたコポリマーである。
【0099】
ホモポリマーまたはコポリマーのモノマーおよび/またはコモノマーの単位がジアリルジアルキルアンモニウム塩である場合、これらは好ましくはジアリルジメチルアンモニウムブロミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムホスフェート、ジアリルジエチルアンモニウムスルフェート、ジアリルジエチルアンモニウムブロミド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムホスフェート、ジアリルジエチルアンモニウムスルフェート、ジアリルジプロピルアンモニウムブロミド、ジアリルジプロピルアンモニウムクロリド、ジアリルジプロピルアンモニウムホスフェートおよびジアリルジプロピルアンモニウムスルフェートから成る群より選択される。好ましい一実施形態において、ジアリルジアルキルアンモニウム塩モノマーはジアリルジメチルアンモニウムクロリドモノマーである。
【0100】
とりわけ好ましい実施形態において、カチオン性ポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマー(ポリダドマック)である。
【0101】
ホモポリマーまたはコポリマーのモノマーおよび/またはコモノマー単位が四級化アミンである場合、これらは好ましくはエピクロロヒドリン反応生成物、例えばポリアミンエピクロロヒドリンである。
【0102】
ホモポリマーまたはコポリマーのモノマーおよび/またはコモノマー単位が四級化イミンである場合、これらは好ましくはポリエチレンイミンである。
【0103】
好ましい一実施形態において、本発明のカチオン性ポリマーは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩およびメタクリル酸より選択されるモノマー単位ならびにコモノマー単位としてのアクリルアミドまたはアクリル酸を含むコポリマーである。
【0104】
例えば、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、少なくとも1つのカチオン性ポリマーのコポリマーを含み、モノマー単位およびコモノマー単位はジアリルジアルキルアンモニウム塩およびアクリルアミドのみから得ることができる。好ましい一実施形態において、本発明のコポリマーであるカチオン性ポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびアクリルアミドのみから得ることができるモノマー単位およびコモノマー単位を含む。または、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、少なくとも1つのカチオン性ポリマーのコポリマーを含み、モノマー単位およびコモノマー単位はメタクリル酸およびアクリル酸のみから得ることができる。
【0105】
加えてもしくはまたは、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングは、少なくとも1つのカチオン性ポリマーのコポリマーを含み、モノマー単位およびコモノマー単位はアクリル酸およびアクリルアミドのみから得ることができる。
【0106】
加えてコポリマーは、好ましくは2.0重量%を超える、より好ましくは5重量%を超える、この上より好ましくは7.5重量%を超えるコモノマー含有率を有することが認識される。例えばコポリマーは、好ましくは2重量%から80重量%の範囲の、より好ましくは5重量%から60重量%の範囲の、最も好ましくは7.5重量%から40重量%の範囲のコモノマー含有率を有する。重量パーセンテージはコポリマーの総重量に基づく。
【0107】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムのコーティングはコポリマーを含み、モノマー単位およびコモノマー単位のモル比は5:1から1:5、より好ましくは4:1から1:4、さらにより好ましくは3:1から1:3、最も好ましくは3:1から1:1である。
【0108】
好ましい一実施形態において、カチオン性ポリマーは、少なくとも2つのカチオン性ポリマーの混合物を含む。好ましくは、カチオン性ポリマーが少なくとも2つのカチオン性ポリマーの混合物を含む場合、一方のカチオン性ポリマーはジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマーである。または、カチオン性ポリマーが少なくとも2つのカチオン性ポリマーの混合物を含む場合、一方のカチオン性ポリマーはアクリル酸をベースとするホモポリマーである。
【0109】
さらに好ましい実施形態において、カチオン性ポリマーは2つのカチオン性ポリマーの混合物を含み、一方のカチオン性ポリマーはジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマーであり、他方のカチオン性ポリマーは、アクリル酸をベースとするホモポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびアクリルアミドをベースとするコポリマーならびにメタクリル酸およびアクリル酸をベースとするコポリマーから成る群より選択される。または、カチオン性ポリマーが2つのカチオン性ポリマーの混合物を含む場合、一方のカチオン性ポリマーはアクリル酸をベースとするホモポリマーであり、他方のカチオン性ポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよびアクリルアミドをベースとするコポリマーならびにメタクリル酸およびアクリル酸をベースとするコポリマーから成る群より選択される。
【0110】
カチオン性ポリマーが2つのカチオン性ポリマーの混合物を含む場合、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマーと第2のカチオン性ポリマーとのモル比は、99:1から1:99、より好ましくは50:1から1:50、さらにより好ましくは25:1から1:25、最も好ましくは10:1から1:10である。本発明のとりわけ好ましい一実施形態において、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマーと第2のカチオン性ポリマーとのモル比は、90:1から1:1、より好ましくは90:1から10:1、最も好ましくは90:1から50:1である。
【0111】
別の好ましい実施形態において、アクリル酸をベースとするホモポリマーと第2のカチオン性ポリマーとのモル比は、99:1から1:99、より好ましくは50:1から1:50、さらにより好ましくは25:1から1:25、最も好ましくは10:1から1:10である。本発明のとりわけ好ましい一実施形態において、アクリル酸をベースとするホモポリマーと第2のカチオン性ポリマーとのモル比は、90:1から1:1、より好ましくは90:1から10:1、最も好ましくは90:1から50:1である。
【0112】
少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、好ましくは、炭酸カルシウムを被覆するコーティング中に、表面処理炭酸カルシウム生成物の表面上の前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーの総重量が炭酸カルシウムの0.01重量/重量%から80重量/重量%となるような量で存在する。
【0113】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、炭酸カルシウムを被覆するコーティング中に、表面処理炭酸カルシウム生成物の表面上の前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーの総重量が炭酸カルシウムの80重量/重量%未満、より好ましくは60重量/重量%未満、最も好ましくは50重量/重量%未満となるような量で存在する。
【0114】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%を被覆するコーティング中に、炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、約0.1重量%から30重量%の、より好ましくは約0.1重量%から20重量%の、さらにより好ましくは約0.2重量%から15重量%の、最も好ましくは約0.2重量%から10重量%の量で存在する。
【0115】
または、炭酸カルシウム粒子の接触可能な表面積の少なくとも10%は、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。好ましい実施形態において、炭酸カルシウム粒子の接触可能な表面積の少なくとも20%が、好ましくは接触可能な表面積の少なくとも30%が、より好ましくは接触可能な表面積の少なくとも40%、最も好ましくは接触可能な表面積の少なくとも50%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。別の好ましい実施形態において、炭酸カルシウム粒子の接触可能な表面積の少なくとも75%が、少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。例えば、炭酸カルシウム粒子の接触可能な表面積の少なくとも90%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0116】
好ましい一実施形態において、炭酸カルシウム粒子の脂肪族カルボン酸に接触可能な表面積の少なくとも75%が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドをベースとするホモポリマーを含むコーティングによって被覆されている。別の好ましい実施形態において、炭酸カルシウム粒子の脂肪族カルボン酸に接触可能な表面積の少なくとも75%が、アクリル酸をベースとするホモポリマーを含むコーティングによって被覆されている。
【0117】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、50g/水100mlを超える、好ましくは75g/水100mlを超える、さらにより好ましくは100g/水100mlを超える、最も好ましくは150g/水100mlを超える水の水溶解度を有する。とりわけ好ましい一実施形態において、少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、水にただちに可溶である。
【0118】
好ましくは、本方法で使用する表面処理炭酸カルシウムは、処理する水と接触させる前に、好ましくはスラリー形の粉砕炭酸カルシウムおよび/または沈降炭酸カルシウムおよび/または表面修飾炭酸カルシウムを好ましくは懸濁物形のカチオン性ポリマーと混合することによって調製される。混合は、当業者に公知のいずれの従来手段によっても行うことができる。
【0119】
表面処理炭酸カルシウムは、好ましくは微粒子状物質の形であり、汚染水の処理に関与する(単数または複数の)物質に従来用いられているような粒径分布を有してよい。概して、表面処理炭酸カルシウムの重量中央粒径d50値は、沈降法に従って測定した、0.01μmから250μmの間の、好ましくは0.06μmから225μmの間の、より好ましくは1μmから200μmの間の、さらにより好ましくは1μmから150μmの間の、最も好ましくは1μmから100μmの範囲にある。100ミクロン未満の、好ましくは85ミクロン未満のd98を有する表面処理炭酸カルシウムも有利であり得る。50ミクロン未満の、好ましくは25ミクロン未満のd98を有する表面処理炭酸カルシウムも有利であり得る。
【0120】
表面処理炭酸カルシウムが粉砕炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムは、沈降法に従って測定した、好ましくは0.04μmから250μmの、より好ましくは0.06μmから225μmの、さらにより好ましくは1μmから200μm、さらにより好ましくは1μmから150μmからの、最も好ましくは1μmから100μmの重量中央粒径d50値を有する。
【0121】
表面処理炭酸カルシウムが沈降炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムは、沈降法に従って測定した、好ましくは0.01μmから10μmの、より好ましくは0.02μmから5μmの、さらにより好ましくは0.02μmから2.5μmから最も好ましくは0.02μmから1μmの重量中央粒径d50値を有する。
【0122】
表面処理炭酸カルシウムが表面修飾炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムは、沈降法に従って測定した、好ましくは0.5μmから150μmの、より好ましくは0.5μmから100μmの、さらにより好ましくは0.5μmから100μmおよび最も好ましくは1μmから50μmの重量中央粒径d50値を有する。好ましい実施形態において、表面処理炭酸カルシウムは、沈降法に従って測定した、0.5μmから250μmからの、好ましくは0.5μmから150μmの重量中央粒径d50値を有する凝集粒子の形であり得る。
【0123】
表面処理炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから250m/gの、より好ましくは20m/gから200m/g、さらにより好ましくは30m/gから150m/gの、最も好ましくは30m/gから100m/gの比表面積を有する。例えば、表面処理炭酸カルシウムは、40m/gから50m/gの比表面積、例えば45m/gの比表面積を有する。または、表面処理炭酸カルシウムは、50m/gから60m/gの比表面積、例えば56m/gの比表面積を有する。
【0124】
表面処理炭酸カルシウムが粉砕炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから100m/gの、より好ましくは1m/gから75m/gの、さらにより好ましくは1m/gから50m/gの、最も好ましくは1m/gから20m/gの比表面積を有する。
【0125】
表面処理炭酸カルシウムが沈降炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから150m/gの、より好ましくは1m/gから100m/gの、さらにより好ましくは1m/gから70m/gの、最も好ましくは1m/gから50m/gの比表面積を有する。
【0126】
表面処理炭酸カルシウムが表面修飾炭酸カルシウムを含む場合、表面処理炭酸カルシウムは、表面処理前に、窒素およびBET法を使用して測定した、好ましくは1m/gから250m/gの、より好ましくは1m/gから200m/gの、さらにより好ましくは10m/gから200m/gの、最も好ましくは15m/gから170m/gの比表面積を有する。
【0127】
好ましい一実施形態において、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムは、1m/gから250m/gからの範囲内の比表面積および0.01μmから250μmの範囲内の重量中央粒径d50値を有する。好ましくは、比表面積は20m/gから200m/gの範囲内であり、重量中央粒径d50値は0.06μmから225μmの範囲内である。より好ましくは、比表面積は30m/gから150m/gの範囲内であり、重量中央粒径は1μmから200μmの範囲内である。さらにより好ましくは、比表面積は30m/gから100m/gの範囲内であり、重量中央粒径d50値は1μmから150μmの範囲内である。より好ましくは、比表面積は30m/gから100m/gからの範囲内であり、重量中央粒径d50値は1μmから100μmの範囲内である。例えば、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムは、40m/gから50m/gの範囲内の比表面積およびは1μmから50μmの範囲内の重量中央粒径d50値を有する。または、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムは、50m/gから60m/gの範囲内の比表面積および1μmから50μmの範囲内の重量中央粒径d50値を有する。
【0128】
本発明の方法で使用される表面処理炭酸カルシウムは、いずれの適切な形でも、例えば細粒および/もしくは粉末の形またはケーキの形で存在することができる。好ましくは、本発明の方法で使用される表面処理炭酸カルシウムは、粉末形および/または細粒の形である。好ましい実施形態において、本発明の方法で使用される表面処理炭酸カルシウムは粉末形である。または、本発明の方法で使用される表面処理炭酸カルシウムは、水性懸濁物として、例えば搬送スクリューで計量可能であるスラリーまたはペーストの形で存在できる。
【0129】
前記スラリーは少なくとも1つのさらなるカチオン性ポリマーを含んでよく、前記カチオン性ポリマーは、コーティングに使用した同じカチオン性ポリマーまたは異なるカチオン性ポリマー、例えば本明細書に記載するようなさらなるカチオン性ポリマーであることができる。コーティング後、スラリーをさらに精製せずに直接使用してよいか、または少なくとも1つのさらなるカチオン性ポリマーをスラリーに添加してよい。
【0130】
「スラリー」または「懸濁物」は、本発明の意味では、未溶解固体、即ち表面処理炭酸カルシウムおよび水および場合によりさらなる添加剤を含む。懸濁物は通常、大量の固体を含有して、懸濁物が形成される液体よりも粘性であり、概してより高密度である。当分野では、「分散物」という一般用語は特に、分散物の特殊なタイプとして「懸濁物」または「スラリー」を含んでいる。
【0131】
好ましい一実施形態において、本発明の方法で使用される表面処理炭酸カルシウムは、スラリーがスラリーの重量に基づいて、1重量%から80重量%の、より好ましくは3重量%から60重量%の、さらにより好ましくは5重量%から50重量%の範囲内の表面処理炭酸カルシウムの含有率を有するように、水に懸濁されている。
【0132】
ステップc)水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させること
本発明の方法のステップc)により、ステップa)で提供された浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物は、各種供給源からの表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物を得るために、ステップb)の少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させる。
【0133】
概して、当業者に公知のいずれの従来の手段によっても、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物ならびに表面処理炭酸カルシウムを接触させることができる。
【0134】
例えば、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させるステップであって、炭酸カルシウムの接触可能な表面積の少なくとも1%が少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されている、ステップは、好ましくは汚染水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の表面が少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムによって少なくとも部分被覆されることで行われる。加えてもしくはまたは、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させるステップは、好ましくはステップa)の汚染水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物をステップb)の表面処理炭酸カルシウムと混合することで行われる。当業者は、当業者の要求および利用可能な装置に従って混合条件(例えば混合速度の設定)を適応させる。
【0135】
好ましくは、表面処理炭酸カルシウムは、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に例えば撹拌手段によって懸濁される。
【0136】
浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物と少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触を行うための処理時間は、数秒から数分の範囲の期間、例えば20秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上にわたって、最も好ましくは120秒以上の期間にわたって行われる。概して、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムと接触させる長さは、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の汚染の程度ならびに処理される具体的な水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物によって決定される。
【0137】
本発明による表面処理炭酸カルシウムの量は、表面処理炭酸カルシウムが処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物において十分となるように、即ち、汚染水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中に存在する少なくとも1種類の無機不純物に対して効率的な結合活性を提供するためには十分高いが、同時に、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中で著しい量の未結合の表面処理炭酸カルシウムが見出されないほど低くなるように選択されることが理解されるべきである。
【0138】
表面処理炭酸カルシウムの量は、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の種類に、ならびに不純物の種類および量に応じて変わる。好ましくは、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の総重量に応じて、10ppmから1重量%の、より好ましくは100ppmから0.2重量%の量の表面処理炭酸カルシウムが添加される。
【0139】
表面処理炭酸カルシウムは、水性懸濁物として、例えば上記の懸濁物として添加できる。または、表面処理炭酸カルシウムは、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物にいずれの適切な固体形でも、例えば細粒もしくは粉末の形またはケーキの形で添加することができる。
【0140】
本発明の文脈内では、例えばケーキまたは層の形の、表面処理炭酸カルシウムを含む固定相を提供することも可能であり、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は前記固定相を通過する。
【0141】
好ましい実施形態において、浄化される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、透過性フィルタであって、表面処理炭酸カルシウムを含み、液体が重力によってならびに/または真空下および/もしくは圧力下で通過するときにサイズ排除により無機不純物をフィルタ表面に保持できる透過性フィルタを通過する。この工程を「表面濾過」と呼ぶ。
【0142】
深濾過として公知の別の好ましい技法において、様々な直径および構成の蛇行経路を幾つか含む濾過助剤は、不純物を前記経路内に存在する表面処理炭酸カルシウムに吸着する分子力および/もしくは電気力によって不純物を保持し、ならびに/または不純物粒子が大きすぎて総フィルタ厚を通過できない場合には、サイズ排除によって不純物粒子を保持する。
【0143】
深濾過および表面濾過の技法は、深濾過層を表面フィルタ上に配置することにより、さらに組合せてよい;この構成は、表面フィルタ孔をそうでなければ閉塞させ得るこれらの粒子を深濾過層中に保持させるという利点を与える。
【0144】
本発明の好ましい一実施形態において、方法は、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つのポリマー性凝集助剤と接触させるステップd)をさらに含む。
【0145】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマー性凝集助剤および表面処理炭酸カルシウムは、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に同時に添加される。本発明の別の好ましい実施形態において、ポリマー性凝集助剤および表面処理炭酸カルシウムは、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に別個に添加される。この場合、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を最初に表面処理炭酸カルシウムと、次にポリマー性凝集助剤と接触させる。
【0146】
例えば、表面処理炭酸カルシウムへの不純物の吸着がこれの最大に達したとき、即ち水中の無機不純物がこれ以上減少しないときに、ポリマー性凝集助剤を処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に添加する。しかし、ポリマー性凝集助剤をより早い段階に、例えば表面処理炭酸カルシウムの不純物の最大吸着の少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%に達したときに添加することも可能である。
【0147】
浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤と接触させるステップは、好ましくは、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の表面が少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤によって同時または個別のどちらかで、少なくとも部分的に被覆されることで行われる。加えてもしくはまたは、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤と接触させるステップは、好ましくは、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤と同時または個別のどちらかで混合することで行われる。当業者は、当業者の要求および利用可能な装置に従って混合条件(例えば混合速度の設定)を適応させる。
【0148】
浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物と少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤と接触を行うための処理時間は、数秒から数分の範囲の期間、例えば30秒以上、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上にわたって、最も好ましくは180秒以上の期間にわたって行われる。概して、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物を少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤と接触させる長さは、水質汚染の程度ならびに具体的な処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物によって決定される。
【0149】
本発明の好ましい実施形態において、方法ステップc)およびステップd)は1回以上反復される。本発明の好ましい実施形態において、方法ステップc)またはステップd)は1回以上反復される。ステップc)およびステップd)が1回以上反復される場合、ステップc)およびステップd)は独立して反復され得る、即ちステップc)は複数回反復され得るが、ステップd)はステップc)より多いまたは少ない回数反復されるか、またはこの反対である。例えばステップc)は2回反復され得るが、ステップd)は1回反復されるか、または2回を超えて反復される。
【0150】
当分野で公知のいずれのポリマー性凝集助剤も本発明の方法で使用できる。好ましいポリマー性凝集助剤の例としては、ポリアクリルアミドまたはポリアクリレート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリエチレンイミン、ポリアミンまたはこれらの混合物をベースとする高分子電解質、および天然ポリマー、例えばデンプンまたは天然修飾ポリマー、例えば修飾炭水化物が挙げられる。
【0151】
好ましい実施形態において、ポリマー性凝集助剤はポリアクリルアミドではない。
【0152】
好ましくは、ポリマー性凝集助剤は、少なくとも100,000g/モルの重量平均分子量を有する。好ましい実施形態において、ポリマー性凝集助剤は、100,000から10,000,000g/モルの範囲の、好ましくは300,000から5,000,000g/モルの範囲の、より好ましくは300,000から1,000,000g/モルの範囲の、最も好ましくは300,000から800,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。
【0153】
ポリマー性凝集助剤はイオン性または非イオン性であることができる。好ましくは、ポリマー性凝集助剤はイオン性、即ちアニオン性ポリマー性凝集助剤またはカチオン性ポリマー性凝集助剤である。
【0154】
本発明の文脈において、「カチオン性」は、正の総電荷を有するいずれのポリマーも指す。このため、幾つかのアニオン性モノマー単位の存在は、正の総電荷を提供する、なお十分なカチオン性モノマー単位がある限り排除されず、凝集助剤としてのこれの使用が可能となる。さらに、「カチオン性ポリマー性凝集助剤」という用語は、処理される水への添加時にカチオン性となる官能基、例えば酸性水中でアンモニウム基となるアミン基を有するモノマー単位を有するポリマーも含む。
【0155】
「アニオン性」という用語は、負の総電荷を有するいずれのポリマーも指す。このため、幾つかのカチオン性モノマー単位の存在は、負の総電荷を提供する、なお十分なアニオン性モノマー単位がある限り排除されず、凝集助剤としてのこれの使用が可能となる。さらに、「アニオン性ポリマー性凝集助剤」という用語は、処理される水への添加時にアニオン性となる官能基、例えばスルホン酸基などの酸性基を有するモノマー単位を有するポリマーも含む。
【0156】
本発明の好ましいポリマー性凝集助剤はポリアクリルアミドである。当業者に公知である好適な修飾形態により、ポリアクリルアミドは、カチオン性ポリマー性凝集助剤ならびにアニオン性ポリマー性凝集助剤として使用できる。
【0157】
好ましくは、ポリアクリルアミドは、少なくとも50mol%の、より好ましくは少なくとも60mol%の、さらにより好ましくは少なくとも75mol%のアクリルアミドに由来するモノマー単位を含有する。
【0158】
アニオン性ポリアクリルアミド、即ち負の総電荷を有するポリアクリルアミドは、例えば(メタ)アクリル酸に由来する適切なコモノマー単位を導入することによって得られる。
【0159】
カチオン性ポリアクリルアミド、即ち正の総電荷を有するポリアクリルアミドは、例えばアルキルハライドによって四級化することができるアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートに由来する適切なコモノマー単位を導入することによって得られる。
【0160】
別の好ましい実施形態において、ポリアクリレートは、本発明の方法における好ましいポリマー性凝集助剤として使用される。好ましくは、ポリアクリレートはカチオン性ポリマー性凝集助剤として使用される。より詳細には、カチオン性ポリマー性凝集助剤として使用されるポリアクリレートはアクリルアミドを含まない。
【0161】
好ましくは、ポリアクリレートは、例えばアルキルハライドによって四級化することができるアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートに由来する、少なくとも50mol%の、より好ましくは少なくとも60mol%の、さらにより好ましくは少なくとも75mol%のモノマー単位を含有する。
【0162】
または、ポリマー性凝集助剤は、US 2009/0270543 A1に櫛形ポリマーとして記載されているようなポリマーであり得る。該ポリマーに関するUS 2009/0270543 A1の主題は、これの全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【0163】
好ましい一実施形態において、ポリマー性凝集助剤は、92重量%の、分子量2,000g/モルのメトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび8重量%のアクリル酸から調製され、ソーダによって少なくとも部分的に中和されたコポリマーである。さらに好ましい実施形態において、ポリマー性凝集助剤は、92重量%の、分子量2,000g/モルのメトキシポリエチレングリコールメタクリレートおよび8重量%のアクリル酸から調製され、ソーダによって完全に中和されたコポリマーである。
【0164】
場合により、さらなる添加剤を処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に添加することができる。これらとしては、pH調整剤および従来の凝集剤、例えばポリアルミニウムクロリド、鉄クロリドまたはアルミニウムスルフェートを挙げられる。しかし、好ましい実施形態において、本発明の汚泥および/または沈降物の浄水方法および/または脱水方法は、いずれの追加の従来の無機凝集助剤、例えばポリアルミニウムクロリド、鉄クロリドまたはアルミニウムスルフェートを使用しない。
【0165】
接触/凝集が完了した後、凝集複合物を、当業者に公知の従来の分離技法、例えば濾過、沈降および/または遠心分離によって、処理済み水から除去することができる。
【0166】
代替的手法において、浄化される水ならびに/または脱水される汚泥および/もしくは沈降物は好ましくは、表面処理炭酸カルシウムを含み、濾液が重力によってならびに/または真空下および/もしくは圧力下で通過するときにサイズ排除により不純物をフィルタ表面に保持できる透過性フィルタを通過する。この工程を「表面濾過」と呼ぶ。
【0167】
本発明により、水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水のための方法は、浄化済み水試料ならびに/または脱水済み汚泥および/または沈降物試料に含有されるポリマー性凝集助剤の量を効果的に減少させるのに好適である。
【0168】
好ましい実施形態により、本発明の方法によって得た水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、同じ方法で、しかし少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの非存在下で処理される対応する水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に含有される遊離凝集助剤の量より、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、さらにより好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%低い量のポリマー性凝集助剤を含有する。例えば、本発明の方法によって得た水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、同じ方法で、しかし少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムの非存在下で処理される対応する水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に含有される遊離凝集助剤の量より、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%低い量のポリマー性凝集助剤を含有する。
【0169】
本発明の方法の水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水のための本発明の方法の使用により、2、3の特性の改善がもたらされる。まず第1に、本発明の方法は、少なくとも1つの表面処理炭酸カルシウムが処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の表面上に少なくとも部分的に適用されるか、または処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物と混合されるときに、不純物に対する優れた結合活性を提供する。さらに、本発明の方法の使用により、処理される媒体から容易に除去できる表面処理炭酸カルシウムおよび不純物の複合物が生じる。さらに、本発明の方法による不純物の結合によって、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物が、ならびに得られた濾過ケーキが良好な浄化品質で生じる。本発明の方法のさらなる利点は、使用した表面処理炭酸カルシウムが処理済み水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中のポリマー性凝集助剤の量を低減して、このため生態系バランスの混乱を減少させるという事実に存する。本発明の方法の別の利点は、得られた濾過ケーキの品質が向上されるため、後続の廃棄によるエネルギー消費がより低いということである。
【0170】
具体的な要求事項ならびに/または処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物のそれぞれの物理的および/もしくは化学的特性に応じて、本発明の方法に従って使用される表面処理炭酸カルシウムおよび必須ではないポリマー性凝集助剤をどちらも別個に適用することができるか、または完成した混合物が使用され得る。表面処理炭酸カルシウムおよび必須ではないポリマー性凝集助剤の個々の成分を別個に計量して添加する形では、処理される本水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物に応じて、濃度比が個別に調整され得る。水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物は、例えば通例の調合物として、例えばスラリー、粉末または細粒として調合されている表面処理炭酸カルシウムによって処理され得る。
【0171】
工業廃水、飲料水、都市廃水、汚泥、例えば港湾汚泥、河川汚泥または消化汚泥、醸造所または他の飲料工業による廃水または工程水、製紙工業、色材、塗料またはコーティング工業の廃水または工程水、農業廃水、屠畜場廃水、皮革工業および皮革なめし工業廃水などの各種の産業で発生した水の浄化ならびに汚泥および/または沈降物の脱水への利用が可能である。
【0172】
好ましい実施形態において、表面処理炭酸カルシウムは、処理される水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物、例えば工業廃水、飲料水、都市廃水、汚泥、例えば港湾汚泥、河川汚泥、沿岸汚泥または消化汚泥、醸造所または他の飲料工業による廃水または工程水、製紙工業、色材、塗料またはコーティング工業の廃水または工程水、農業廃水、屠畜場廃水、皮革工業および皮革なめし工業廃水を中和または緩衝するためにも有利に使用できる。
【0173】
上で定義したような水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水における本発明の方法の結果が非常に良好であることを考慮すると、本発明のさらなる態様は、水の浄化ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物の脱水における表面処理炭酸カルシウムの使用である。本発明の別の態様により、水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物中のポリマー性凝集助剤を減少させるための表面処理炭酸カルシウムの使用が提供される。
【0174】
本発明のさらなる態様により、表面処理炭酸カルシウムおよび不純物を含む複合物が提供される。
【0175】
好ましくは、複合物は上で定義したようなポリマー性凝集助剤をさらに含む。表面処理炭酸カルシウムを上で定義したようなポリマー性凝集助剤と組合せて使用する場合、緻密性が改善された凝集済み複合物が得られ、同時に濾液中のポリマー性凝集助剤の濃度がかなり低下することが驚くべきことに見出されている。
【0176】
凝集済み複合物を水ならびに/または汚泥および/もしくは沈降物から濾過、沈降および/または遠心分離によって分離する場合、複合物は濾過ケーキの形で存在することができる。
【0177】
表面処理炭酸カルシウムの定義およびこれの好ましい実施形態に関しては、本発明の方法の技術的詳細事項を論じる場合に上で提供した記載を参照されたい。
【0178】
以下の実施例は、本発明をさらに例証し得るが、本発明が例示された実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0179】
測定方法
以下の測定方法は、実施例および特許請求の範囲で与えたパラメータを評価するために使用した。
【0180】
材料のBET比表面積
BET比表面積は、試料を250℃にて30分の期間にわたって加熱することによって調整した後に、窒素を使用して、ISO 9277に従うBET法によって測定した。このような測定の前に、試料を濾過して、すすぎ、オーブン内で110℃にて少なくとも12時間乾燥させた。
【0181】
粒子状材料の粒径分布(直径がX未満の粒子の質量%)および重量中央粒径(d50
粒子状材料の重量中央粒径および粒径分布は、沈降法、即ち重力場における沈降挙動の分析によって決定した。測定はセディグラフ(商標)5100によって行った。
【0182】
表面処理炭酸カルシウムの重量中央粒径は、マルバーンマスターサイザー2000レーザ回折システムによって決定した。
【0183】
方法および装置は、当業者に公知であり、充填剤および色素の粒度の決定に一般に使用されている。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行った。試料は、高速撹拌機および超音波を使用して分散させた。
【0184】
接触可能な表面積
炭酸カルシウムの接触可能な表面積は、Papirer、SchultzおよびTurchiの刊行物(Eur.Polym.J.,Vol.20,No.12,pp.1155−1158,1984)に記載の方法によって決定され得る。
【0185】
曇り
水試料の曇りは、標準手順に従って標準光度計を使用して測定する。
【0186】
pH測定
水試料のpHは、標準pHメータを使用しておよそ25℃にて測定する。
【0187】
アルカリ度
水試料のアルカリ度は、標準滴定手順を使用して測定する。
【0188】
被酸化性
水試料の被酸化性は、カリウムジクロメートを用いた周知のCSB法を使用することによって測定する。
【0189】
[実施例1]
以下の例証的な実施例は、2つの異なる汚泥試料の浄化のための、ポリマー性凝集助剤と組合せた表面処理炭酸カルシウムの使用を包含する。前記表面処理炭酸カルシウムは、修飾炭酸カルシウムを含み、表面処理前に1.6μmの重量中央粒径d50値(沈降法により測定)および45m/gの比表面積(窒素およびBET法を使用してり測定)を有する。表面処理天然炭酸カルシウムは、7mEq/gのカチオン性電荷密度を有するポリアクリレートを含むコーティングによって被覆されている。ポリアクリレートは、炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、コーティング中に0.95重量%の量で存在する。ポリマー性凝集助剤として、市販の凝集助剤であるFLOPAM(商標)FB 608(SNF Floerger、フランスより市販)を使用した。
【0190】
該浄化方法をSTEPコロンベ=ミュラーズ(Collombey−Muraz)から採取した混合汚泥(一次汚泥および生物汚泥のブレンド)およびSTEP AIEE Penthazから採取した消化汚泥試料に対して行った。各汚泥試料200mlを、スラリーの総重量に基づいて44.2重量%の表面処理炭酸カルシウムの含有率を有するスラリーに添加した。手動撹拌の後、ポリマー性凝集助剤を添加して凝集を完了させた。ポリマー性凝集助剤は、懸濁物の総重量に基づいて、0.5重量%の凝集助剤の含有率を有する懸濁物の形で使用した。それぞれの汚泥試料について、試料中の凝集助剤の含有率を監視した。表1および2に、表面処理炭酸カルシウムの利用量および減少したポリマー性凝集助剤の測定値の詳細事項をまとめる。
【0191】
【表1】
kg/TDMは、乾燥質量1トン当たりのkgを意味する。
【0192】
【表2】
【0193】
表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤の組合せによって処理した混合汚泥ならびに消化汚泥試料の浄化方法の間、ポリマー性凝集助剤では約42から47%の範囲の濃度低下が得られた。このため浄化方法の間にポリマー性凝集助剤の量の低減が必要であることが結論付けられる。
【0194】
[実施例2]
以下の例証的な実施例は、2つの異なる汚泥試料の浄化のための、ポリマー性凝集助剤と組合せた表面処理炭酸カルシウムの使用を包含する。前記表面処理炭酸カルシウムは、修飾炭酸カルシウムを含み、表面処理前に2.0μmの重量中央粒径d50値(沈降法により測定)および56m/gの比表面積(窒素およびBET法を使用してり測定)を有する。表面処理天然炭酸カルシウムは、6.2mEq/gのカチオン性電荷密度を有するポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を含むコーティングによって被覆されている。ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)は、炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、コーティング中に1.5重量%の量で存在する。ポリマー性凝集助剤として、市販の凝集助剤であるFLOPAM(商標)FB 608(SNF Floerger、フランスより市販)を使用した。
【0195】
該浄化方法をSTEPコロンベ=ミュラーズから採取した混合汚泥(一次汚泥および生物汚泥のブレンド)およびSTEP AIEE Penthazから採取した消化汚泥試料に対して行った。各汚泥試料200mlを、スラリーの総重量に基づいて31.0重量%の表面処理炭酸カルシウムの含有率を有するスラリーに添加した。手動撹拌の後、ポリマー性凝集助剤を添加して凝集を完了させた。ポリマー性凝集助剤は、懸濁物の総重量に基づいて、0.5重量%の凝集助剤の含有率を有する懸濁物の形で使用した。それぞれの汚泥試料について、試料中のポリマー性凝集助剤の含有率を監視した。表3および4に、表面処理炭酸カルシウムの利用量および減少したポリマー性凝集助剤の測定値の詳細事項をまとめる。
【0196】
【表3】
【0197】
【表4】
【0198】
表面処理炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤の組合せによって処理した混合汚泥ならびに消化汚泥試料の浄化方法の間、ポリマー性凝集助剤の約61から67%の範囲の濃度低下が観察された。このため、浄化方法の間にポリマー性凝集助剤の量の低減が必要であることが結論付けられる。
【0199】
[実施例3]
以下の例証的な実施例は、2つの異なる汚泥試料の浄化のための、ポリマー性凝集助剤と組合せた修飾炭酸カルシウム、即ち少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコーティングによって被覆されていない炭酸カルシウムの使用を包含する。前記修飾炭酸カルシウムは、表面処理前に1.6μmの重量中央粒径d50値(沈降法により測定)および45m/gの比表面積(窒素およびBET法を使用してり測定)を有する。ポリマー性凝集助剤として、市販の凝集助剤であるFLOPAM(商標)FB 608(SNF Floerger、フランスより市販)を使用した。
【0200】
該浄化方法をSTEPコロンベ=ミュラーズから採取した混合汚泥(一次汚泥および生物汚泥のブレンド)およびSTEP AIEE Penthazから採取した消化汚泥試料に対して行った。各汚泥試料200mlを、スラリーの総重量に基づいて31.8重量%の修飾炭酸カルシウムの含有率を有するスラリーに添加した。手動撹拌の後、ポリマー性凝集助剤を添加して凝集を完了させた。ポリマー性凝集助剤は、懸濁物の総重量に基づいて、0.5重量%の凝集助剤の含有率で有する懸濁物の形で使用した。それぞれの汚泥試料について、試料中のポリマー性凝集助剤の含有率を監視した。表5および6に、表面処理炭酸カルシウムの利用量および減少したポリマー性凝集助剤の測定値の詳細事項をまとめる。
【0201】
【表5】
【0202】
【表6】
【0203】
修飾炭酸カルシウムおよびポリマー性凝集助剤の組合せによって処理した混合汚泥ならびに消化汚泥試料の浄化方法の間、ポリマー性凝集助剤の13から21%の範囲の濃度低下が得られた。
【0204】
全体として、ポリマー性凝集助剤と組合せた修飾炭酸カルシウムの使用は、完全凝集に必要な、即ち21%より低いポリマー性凝集助剤の量に対してわずかな効果しかないことが結論付けられる。これとは対照的に、本発明の表面処理炭酸カルシウムは、初期濃度と比較して最大79%のポリマー性凝集助剤の低下を達成する。
【0205】
[実施例4]
以下の例証的な実施例は、河川水の浄化のための、ポリマー性凝集助剤と組合せた異なる量の表面処理炭酸カルシウムの使用を包含する。前記表面処理炭酸カルシウムは、修飾炭酸カルシウムを含み、表面処理前に2.0μmの重量中央粒径d50値(沈降法により測定)および56m/gの比表面積(窒素およびBET法を使用してり測定)を有する。表面処理天然炭酸カルシウムは、6.2mEq/gのカチオン性電荷密度を有するポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を含むコーティングによって被覆されている。ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)は、炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、コーティング中に1.5重量%の量で存在する。ポリマー性凝集助剤として、市販の凝集助剤であるNerolan AG 580(Nerolan Wassertechnik GmbH、ドイツより市販)を使用した。Nerolan AG 580は、アクリルアミドを含まないポリアクリレートを表す。
【0206】
比較例として、ポリアクリルアミドと組合せたアルミニウムスルフェートをポリマー性凝集助剤として使用した。ポリマー性凝集助剤として、市販の凝集助剤Praestol 650 TR(Ashland Deutschland GmbH、ドイツより市販)を使用した。
【0207】
該浄化方法を水堰から採取したロシアのネヴァの河川水に対して行った。異なる量の表面処理炭酸カルシウムおよび10ppmのアルミニウムスルフェートそれぞれを水試料約450mlに添加した。400U/分にて約30秒撹拌した後、それぞれポリマー性凝集助剤を添加して凝集を完了させた。表7に、表面処理炭酸カルシウムの利用量、ポリマー性凝集助剤の利用量ならびに浄化の物理的および化学的結果の詳細事項についてまとめる。
【0208】
【表7】
【0209】
全体として、ポリマー性凝集助剤と組合せて表面処理炭酸カルシウムを使用すると、浄化方法によって得られた水の品質に対してプラスの効果があることが結論付けられる。
【0210】
[実施例5]
以下の例証的な実施例は、河川水の浄化のための、ポリマー性凝集助剤と組合せた表面処理炭酸カルシウムの使用を包含し、前記凝集助剤は2回に分けて添加される。前記表面処理炭酸カルシウムは、修飾炭酸カルシウムを含み、表面処理前に2.0μmの重量中央粒径d50値(沈降法により測定)および56m/gの比表面積(窒素およびBET法を使用してり測定)を有する。表面処理天然炭酸カルシウムは、6.2mEq/gのカチオン性電荷密度を有するポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を含むコーティングによって被覆されている。ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)は、炭酸カルシウムの乾燥重量に基づいて、コーティング中に1.5重量%の量で存在する。ポリマー性凝集助剤として、市販の凝集助剤であるNerolan AG 580(Nerolan Wassertechnik GmbH、ドイツより市販)を使用した。Nerolan AG 580は、アクリルアミドを含まないポリアクリレートを表す。
【0211】
該浄化方法をドイツのハンブルグ付近のエルベからの河川汚泥試料に対して行った。河川汚泥の固体含有率を17g/Lに調整した。45ppmの表面処理炭酸カルシウムを汚泥に、350rpmの撹拌条件下で5秒の間に添加した。ポリマー性凝集助剤を2000ppmの量で添加した。添加は1回以上に分けて行うことができる。最終混合物を60秒にわたって沈降させて、目視検査によって確認した。
【0212】
上清は透明であり、明らかな粒子は目視できなかった。沈降により固体と液体が適正に分離されていることが示された。凝集した汚泥の安定性は、非常に良好であり、本明細書で以下に記載するように決定した。沈降した混合物を1つのガラスビーカーから別のガラスビーカーに10回注ぎ入れ、最終的に混合物を200μmふるいで濾過した。濾液を目視検査で確認した。濾液が透明なままである場合、凝集した汚泥の安定性は非常に良好であると見なされた。濾液が濁る場合には、濾液の曇り度に応じて、凝集した汚泥の安定性はより低くなる。