特許第6114303号(P6114303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6114303周波数ドリフトを含むパルスの光パラメトリック増幅のための方法およびその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114303
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】周波数ドリフトを含むパルスの光パラメトリック増幅のための方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/39 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
   G02F1/39
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-546464(P2014-546464)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-505066(P2015-505066A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2012075123
(87)【国際公開番号】WO2013087645
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月1日
(31)【優先権主張番号】1161642
(32)【優先日】2011年12月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】514140562
【氏名又は名称】ユニベルシテ リール 1 シアンセ エ テクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユゴノ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ミュソ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】クドリンスキ,アレグザンドル
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−133818(JP,A)
【文献】 McKinstrie,C.J. et al.,Parametric Amplifiers Driven by Two Pump Waves,IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS,2002年 5月,VOL.8,NO.3,538-547
【文献】 Caucheteur,C. et al.,Experimental demonstration of optical parametric chirped pulse amplification in optical fiber,OPTICS LETTERS,2010年 6月 1日,Vol.35,No.11,1786-1788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
IEEE Xplore
OSA Publishing
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光周波数(fP1)を含む第1のポンプ信号(P1)を使用した、光パラメトリック・チャープパルス増幅のための方法であって、ストレッチャ(4)によって光パルスを時間的に引き伸ばすことにより供給されるチャープパルスを増幅するための媒質(10)が、各チャープパルスと、前記第1のポンプ信号と、第2の光周波数(fP2)を含む第2のポンプ信号(P2)との間に四光波混合効果をもたらすために用いられ、前記第1および第2の光周波数(fP1、fP2)の合計の半分が、前記チャープパルスのスペクトル・サポートに関わることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の光周波数を含む第1のポンプ信号を供給するための第1のポンプ源(6)と、
光パルス源(2)と、
前記光パルスを時間的に引き伸ばすことによりチャープパルスを供給するためのストレッチャ(4)と、
前記チャープパルスを増幅するための媒質(10)と、を備える、光パラメトリック・チャープパルス増幅のための装置であって、
第2の光周波数を含む第2のポンプ信号を供給するための第2のポンプ源(8)をさらに備え、前記媒質(10)が、各チャープパルスと前記第1および第2のポンプ信号との間に四光波混合効果をもたらすのに適し、前記第1および第2の光周波数(fP1、fP2)の合計の半分が、前記チャープパルスのスペクトル・サポートに関わることを特徴とする、装置。
【請求項3】
前記第1および第2の光周波数(fP1、fP2)の合計の半分が、前記チャープパルスの前記スペクトル・サポートの中間点とほぼ一致している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1および第2のポンプ信号(P1、P2)の間のスペクトル間隔の半分が、前記チャープパルスの前記スペクトル・サポートの幅以下である、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
四光波混合効果をもたらすのに適した前記媒質が、光ファイバ(10)である、請求項2から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記光ファイバがフォトニック結晶ファイバ(10)である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1および第2のポンプ信号が連続的である、請求項2から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1および第2のポンプ信号の少なくとも一方がパルス化される、請求項2から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1および第2のポンプ信号のそれぞれがパルス化される、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パラメトリック・チャープパルス増幅のための方法およびその装置に関する。
【0002】
本発明は詳細には、FOPCPAすなわちファイバ光パラメトリック・チャープパルス増幅器(Fibre Optical Parametric Chirped Pulse Amplifiers)の分野に関する。
【0003】
この新世代増幅器は、サイズおよび安定性の観点からそのファイバ構成によってもたらされる利点により、いくつかの事例で、バルク・パラメトリック増幅器に置き換わる可能性がある。
【0004】
本発明は、FOPCPAの(スペクトルの)利得帯域を2倍に延ばすことを可能にし、したがって非常に短い持続時間のパルスを増幅する。希土類をドープしたファイバよりも大きい利得帯域幅を得ることさえでき、このことにより、完全ファイバベースの装置を使用した超広帯域増幅の道が開かれるはずである。これは現在行われている、完全ファイバベースのシステムに向けたレーザシステムの開発に沿っている。
【0005】
本発明は特に、超短パルスの増幅、レーザ加工法、レーザと物質の相互作用実験および通信に適用される。
【背景技術】
【0006】
FOPAすなわちファイバ光パラメトリック増幅器が数年前に光通信分野で大成功を収めた。実際に、その広い利得帯域は、波長分割多重信号の多チャネル同時増幅にとって主要な関心事になっている。
【0007】
そうした特徴はまた、ピークパワーを低減するために時間的に引き伸ばされた広いスペクトルのパルスを増幅するのに非常に有利であることが判明した。
【0008】
実際には、今日まで、このチャープパルスの増幅は基本的に、
−希土類をドープしたファイバのバルク材料における誘導放出、
−または、2次非線形結晶をベースとしたバルク増幅器、
により行われていた。
【0009】
これらの装置を用いると、再圧縮後に、非常に強力なパルスを得ることが可能になる。これらは最適なレーザ源になる。
【0010】
数多くの用途では、コンパクトな設計、安定性および容易なアライメントを絶えず追求していくと、ファイバレーザシステムが好ましい。ただしこのシステムの基本的な動作原理によると、ファイバ内部のポンプエネルギーの蓄積が必要であり、このときそのエネルギーは自然放出または誘導放出の形でもたらされる。このようにして、信号対雑音比を低下させるだけの長い時間、蛍光信号が放出される。
【0011】
優れたコントラストを必要とする用途の場合には、バルク光パラメトリック増幅器を使用することが可能であるが、こういった増幅器はアライメントが比較的複雑であり、依然として非常に大型である。
【0012】
したがって数年前、光パラメトリック増幅器とファイバ増幅器の利点を組み合わせるために、上述したFOPCPAと呼ばれる装置の製作が提案された。
【0013】
この理論的な研究が、以下の条件で行われた実験によって速やかに確認された。
まず、通信波長、ピコ秒信号で実験を行った。この目的は、単純化すること、ならびに、このような装置の実現可能性を実証することである。非特許文献1を参照されたい。
次いで、約1μm、フェムト秒パルスで実験を行った。非特許文献2を参照されたい。
【0014】
これらの実験的または理論的な証明は全て、同一のポンプ源からの光子が信号波とアイドラ波にもたらされる縮退設計を用いて行われた。
【0015】
なおこの点で、本発明では、2つのポンプ源を有する非縮退設計の使用を提案している。この提案では、被増幅波のスペクトル・サポートが上記2つのポンプ源の(光の)周波数の(算術)平均を含んでおり、そのことにより、上記増幅器の帯域幅すなわち利得帯域を広げることが可能になる。
【0016】
さらに、被増幅波がほぼ2つのポンプの中心に入射されると、すなわち、スペクトル・サポートの中間点が周波数の平均値とほぼ一致している場合、この帯域幅を倍増することさえ可能である。
【0017】
周知のファイバ・パラメトリック増幅器の動作原理が、図1および2に略図で示されている。これらの図では、x軸に(光の)周波数fが示され、y軸にパワースペクトル密度dが示されている(対数スケール)。
【0018】
1つのポンプ((光の)周波数fPを有する、ポンプ信号P)のみが存在する縮退の場合(図1)では、被増幅信号Sが、利得帯域B1−B2内の高周波数部(B2)または低周波数部(B1)に入射される。光ファイバFの出力は、ファイバ伝播中に増幅された信号波Saと、ポンプPに対して信号Saと対称的なアイドラ波Cを特徴として備える。
【0019】
2つのポンプ(ポンプ信号P1およびP2。ポンプ信号はそれぞれ(光の)周波数fP1およびfP2を有し、fP1はfP2より小さい)が存在する非縮退設計(図2)でも原理は類似している。
【0020】
この場合、利得帯域Bは2つのポンプの間に存在する。P1とP2から等距離の軸M((fP1+fP2)/2と等しい(光の)周波数fMに対応)は、Bの対称軸を成す。
【0021】
被増幅信号Sは、fMと一方のポンプの周波数すなわち図2の例のfP1との間にあるスペクトル帯域の片半分に入射される。また、アイドラ波Cは、fMと図2の例のfP2との間にある、スペクトル帯域のもう片半分に生成される。
【0022】
上述の設計の主な課題は、一般に、潜在的な利得帯域の片半分しか使用できないということである。実際、もう片半分は、信号の伝播中に生成されるアイドラ波のために確保される。
【0023】
さらに、両側(信号とアイドラ波)からの波の入射は、いわゆる「位相感応」(ノイズを含まない増幅が潜在的に可能な)設計において可能である。ただし、これには、関連する各波の位相の非常に微妙な制御が必要になり、この制御を安定した形で実行することは不可能である。
【0024】
複数の単色波を入射することによって利得帯域幅全体を同時に使用することも可能である。ここで、スペクトルのずれは生成されたアイドラ波が重ならないように調整される。特許文献1を参照されたい。
【0025】
ただし、この設計は準単色波に限定される。さらに、スペクトルのギャップは「空き」のままにしておかなければならず、そのこと自体により実際に使用できるスペクトル帯域が制限される。
【0026】
したがってファイバまたはポンプ・パワーに関連する技術的な制限を考慮すると、特に、1μm付近で10nmを越えて広がるスペクトルを有するパルスを増幅することは比較的困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】欧州特許出願第1626308号、2006年2月15日公開、エー.デュレキュー(A. Durecu)、シー.シモノー(C. Simonneau)、エー.ムッソ(A. Mussot)、ティー.シルヴェストル(T. Sylvestre)、イー.ランツ(E. Lantz)、エイチ.メイロット(H. Maillotte)、「ファイバ光パラメトリック増幅器およびファイバ光パラメトリック増幅器を用いた光信号増幅方法(Fiber optical parametric amplifier and method for amplification of optical signals with a fiber optical parametric amplifier)」
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】シー.クーシェター(C. Caucheteur)、ディー.ビゴード(D. Bigourd)、イー.ユゴノ(E. Hugonnot)、ピー.シュリフトガイザー(P. Szriftgiser)、エー.カドリンスキー(A. Kudlinski)、エム.ゴンザレス エラエス(M. Gonzalez Herraez)、エー.ムッソ(A. Mussot)、「光ファイバにおける光パラメトリック・チャープパルス増幅の実験的証明(Experimental demonstration of optical parametric chirped pulse amplification in optical fiber)」、光学論文集(Optics Letters)、2010年、第35巻、第11号、p.1786−1788
【非特許文献2】ディー.ビゴード(D. Bigourd)、エル.ラゴ(L. Lago)、エー.ムッソ(A. Mussot)、エー.カドリンスキー(A. Kudlinski)、ジェイ.エフ.グレイセ(J. F. Gleyze)、イー.ユゴノ(E. Hugonnot)、「1μmにおけるフェムト秒パルスの高利得光パラメトリック・チャープパルス増幅(High - gain optical parametric chirped−pulse amplification of femtosecond pulses at 1μm)」、光学論文集(Optics Letters)、2010年、第35巻、第20号、p.3480−3482
【非特許文献3】ディー.ビゴード(D. Bigourd)、エル.ラゴ(L. Lago)、エー.カドリンスキー(A. Kudlinski)、イー.ユゴノ(E. Hugonnot)、エー.ムッソ(A. Mussot)、「ファイバ光パラメトリック・チャープパルス増幅器の動力学(Dynamics of fiber optical parametric chirped pulse amplifiers)」、米国光学学会誌B(Journal of the Optical Society of America B)、2011年、第28巻、第11号、p.2848−2854。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、上記の課題を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
具体的には、本発明は、第1の光周波数を含む第1のポンプ信号を使用した、光パラメトリック・チャープパルス増幅のための方法であって、各チャープパルスと、上記第1のポンプ信号と、第2の光周波数を含む第2のポンプ信号との間に四光波混合効果が用いられ、上記第1および第2の光周波数の合計の半分が、上記チャープパルスのスペクトル・サポートに関わることを特徴とする方法に関する。
【0031】
本発明はまた、
第1の光周波数を含む第1のポンプ信号を供給するための第1のポンプ源と、
光パルス源と、
上記光パルスを時間的に引き伸ばすことによりチャープパルスを供給するためのストレッチャと、
上記チャープパルスを増幅するための媒質と、を備える、光パラメトリック・チャープパルス増幅のための装置であって、
第2の光周波数を含む第2のポンプ信号を供給するための第2のポンプ源をさらに備え、上記媒質が、各チャープパルスと上記第1および第2のポンプ信号との間に四光波混合効果をもたらすのに適し、上記第1および第2の光周波数の合計の半分が、上記チャープパルスのスペクトル・サポートに関わることを特徴とする、装置に関する。
【0032】
本発明による装置の好ましい一実施形態によると、上記第1および第2の光周波数の上記の合計の半分が、上記チャープパルスのスペクトル・サポートの中間点とほぼ一致している。
【0033】
好ましくは、上記第1および第2のポンプ信号の間のスペクトル間隔の半分が、上記チャープパルスのスペクトル・サポートの幅以下である。
【0034】
本発明では、四光波混合効果をもたらすのに適した上記媒質が、光ファイバであると好ましい。さらに、上記光ファイバがフォトニック結晶ファイバであると好ましい。
【0035】
本発明の第1の特定の実施形態によると、上記第1および第2のポンプ信号が連続的である。
【0036】
第2の特定の実施形態によると、上記第1および第2のポンプ信号の少なくとも一方がパルス化される。
【0037】
特に、上記第1および第2のポンプ信号はそれぞれパルス化されうる。
【0038】
本発明は、以下に単なる示唆で網羅的ではない形で示す実施形態の例の説明を、添付の図を参照して読めば、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】単一のポンプ源を備える周知の光パラメトリック増幅器の動作原理を示す概略図である。この図についてはすでに説明済みである。
図2】2つのポンプ源を備える周知の光パラメトリック増幅器の動作原理を示す概略図である。この図についてはすでに説明済みである。
図3】本発明に係る装置の特定の実施形態の動作原理を示す概略図である。
図4】本発明の例に係るデジタル・シミュレーションを示す概略図である(入力および出力のスペクトル)。
図5】本発明の例に係るデジタル・シミュレーションを示す概略図である(利得曲線の推移)。
図6】本発明の例に係るデジタル・シミュレーションを示す概略図である(引き伸ばし前および引き伸ばし/増幅/再圧縮後の入力信号)。
図7】本発明に係る装置の特定の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図3は、2つのポンプ源および光ファイバが使用された、本発明に係る、光パラメトリック・チャープパルス増幅のための装置の例の動作原理を示す概略図である。
【0041】
図3では、(光の)周波数fがx軸に示され、パワースペクトル密度dがy軸に示されている(対数スケール)。
【0042】
P1は第1のポンプ信号、P2は第2のポンプ信号、fP1はP1の(光の)周波数、fP2はP2の(光の)周波数、Bは利得帯域、MはP1とP2から等距離の軸、fMはMに対応する(光の)周波数、Sは被増幅信号、Fは光ファイバ、Saはファイバ伝播中に増幅された信号、Cはアイドラ波を示す。
【0043】
この例では、入力信号S(周波数ドリフトを含む信号)は、2つのポンプの中心に位置する。より具体的には、Sのスペクトルにより対称軸としてのMが生じ、このスペクトルのキャリアが区間[fP1;fP2]に含まれる。
【0044】
このように、このキャリアの中点が(fP1+fP2)/2と一致する。したがって信号Sは利得帯域Bの両側と重なる。この両部分は通常、それぞれ信号とアイドラ波のために確保されている。したがってこの場合、利得帯域が2倍に増える。
【0045】
増幅された信号Saとアイドラ波Cの両方が、中間点としてfMを有する周波数範囲を占めることも分かっている。
【0046】
このように、アイドラ波は増幅中、上記信号に重なる。ただし、再圧縮中(増幅後)、増幅された信号は圧縮されるがアイドラ波は圧縮されない。逆に、そのアイドラ波は、その周波数ドリフトが増幅された信号のものと逆であるため、さらに少し引き伸ばされる。
【0047】
位相の点から(そして最初の大まかな値として)、引き伸ばし中、信号に位相φを加える(アイドラ波は存在しない)。増幅中、信号はこの位相φを保持し、位相が−φの状態でアイドラ波が出現する。圧縮中、信号の位相が値φだけ減り、したがって引き伸ばされる前の信号に対して位相のずれがない。アイドラ波の位相もまたこの値φだけ減り、したがって上記信号に対して位相ずれが−2φになる。
【0048】
したがってアイドラ波は圧縮されず、再圧縮された信号のベースからなるノイズによって単に搬送される。
【0049】
したがって、短いチャープパルスの増幅は、その増幅/再圧縮されたパルスのベースが容認されるならばFOPCPAの全帯域幅を使用して行うことが可能になる。
【0050】
なお、全帯域幅を使用すると、超短パルスの増幅が可能になる。
【0051】
本発明の実現可能性を実証するために、上述した例におけるタイプの増幅器の動作を、非線形シュレーディンガー方程式を使用したモデルを用いてシミュレートし、単一のポンプを使用した実験時のチャープパルスのモデルを検証した。非特許文献3を参照されたい。
【0052】
上記のデジタル・シミュレーションが図4〜6に略図で示されている。図4および6では、パワーを、より明確にするために1に標準化した。2つのポンプの間の中央の脈動をωと表す。ω=π(fP1−fP2)である。さらに光ファイバでは以下を用いる。
非線形係数γは9/W/kmに等しく、
2次分散係数β(ω)は−2.05×l0−29/mに等しく、
3次分散係数β(ω)は0.79×l0−40/mに等しく、
4次分散係数β(ω)は2.5×l0−55/mに等しく、
2つのポンプ信号の各パワーは3Wに等しい。
【0053】
図4に、2つのポンプの中心に位置する、4.5nsまで引き伸ばされた200fsの信号のファイバ入力におけるスペクトルの例が示されている(点線)。上記2つのポンプは互いに8THzだけ隔置されている。波長λ(nm)がx軸に示され、パワーPuがy軸(目盛間隔20dB)に示されている。
【0054】
信号をファイバ(長さ150m超)に伝播させた後、出力スペクトルSOが得られる。信号が実際に増幅されていることが観察される。さらに、この信号をスペクトル的にフィルタ処理して残りのポンプ信号から分離した後、エネルギー増幅利得が26dBに等しいことが観察される。
【0055】
この利得の長手方向の漸増が図5に示されている。ファイバの長さL(m)がx軸に示され、利得G(dB)がy軸に示されている。この利得はファイバの最初の部分では準指数関数的であり、その後飽和し始めることが観察される。この挙動は、単一のポンプを有する系により観察されるものと類似している。
【0056】
図6では、時間T(ps)がx軸に示され、パワーP(適当な単位)がy軸に示される。引き伸ばし前の入力信号が曲線Iで示されている。この信号の引き延し、増幅、再圧縮後の時間的な形状が曲線IIで示されている。
【0057】
出力信号(II)が入力信号(I)と準同一であることが分かる。これは、寄生位相が増幅プロセス中に追加されなかったことを実証している。
【0058】
結論として、本発明の主な利点は、2つのポンプを含むFOPCPAの利得帯域幅を倍増できる点にある。
【0059】
なお、2つのポンプを含むFOPCPAはこれまで開示されておらず、利得帯域の両側の使用は新規性を有する。当業者は、2つのポンプを含む従来のFOPA設計と同様に、この利得帯域の片半分のみを使用せずにはいられないのであろう。
【0060】
実際には、パラメトリック増幅器についてみれば、単色信号を増幅しようとする場合、信号側とアイドラ波側の両方から波を入射することが知られている。これは位相感応設計と呼ばれる。かかる設計により、潜在的にノイズなし増幅が可能になるが、対象となっているそれらの波それぞれの位相の微妙な制御が必要となる。
【0061】
例えば2つのポンプの中心などに位置する周波数ドリフトを含むパルスの場合、伸長装置によって位相の設定が行われる。したがって、大幅な利得を得るというのは、この場合完全に直感に反している。
【0062】
図7は、本発明に係る装置の特定の実施形態の、大幅に簡略化した図である。
【0063】
この実施形態は、以下を備えるFOPCPAからなる。
光パルス源2。これは例えばモードロック発振器などである。
パルスを時間的に引き伸ばすことによりチャープパルス供給するためのストレッチャ4。
パルス化されたポンプ信号を供給する第1のポンプ源6。光周波数をfP1と表す。
パルス化されたポンプ信号を供給する第2のポンプ源8。光周波数はfP1と異なり、それをfP2と表す。
ポンプ源6および8から供給されチャープパルスを増幅するポンプ信号を受信し、チャープパルスとポンプ信号間の四光波混合効果をもたらす、光ファイバ10。
【0064】
上記装置の後に、増幅されたパルスを時間的に圧縮するための圧縮器12が続く。
【0065】
このように圧縮されたパルスは、それを使用する装置(図示せず)に送られる。
【0066】
ストレッチャ4の手前のパルス持続時間は1ns以下程度のものである。これは典型的には数フェムト秒から数ピコ秒の範囲に及ぶ。
【0067】
ポンプ源6および8から供給されるパルス化されたポンプ信号は、図7の両矢印14で示されている手段を使用して、ポンプ源2から供給されるパルスと同期される。かかる同期手段はFOPAについてはすでに知られている。
【0068】
図7に示されている装置の一代替実施形態では、2つのポンプ源6および8のうちの一方のみがパルス化されたポンプ信号を供給する。もう一方のポンプ源は連続的なポンプ信号を供給する。
【0069】
他の代替実施形態では、2つのポンプ源6および8のそれぞれが連続ポンプ信号を供給する。この場合、同期手段14は使用されない。
【0070】
本発明によると、(fP1+fP2)/2が、周波数ドリフトを含むパルスのスペクトル・サポートに関わる。この例では、(fP1+fP2)/2はこのスペクトル・サポートの中間点と一致し、|fP2−fP1|/2(すなわちスペクトル間隔|fP2−fP1|の半分)は、このスペクトル・サポートの幅以下である。
【0071】
ただし、パルスのスペクトル・サポートが全増幅スペクトル帯域[fP1;fP2](fP1はfP2未満であると仮定)を確実に使用するようになっていると好ましい。
【0072】
なお、被増幅パルスが与えられると、FOPCPAの設計はそれらのパルスに合わせて調整される。つまり、これらのパルスに応じてファイバ10とポンプ源6および8が選択される。実際に、ポンプ源は調整可能であり、被増幅パルスに合わせて調整される。
【0073】
光ファイバ10は、微細構造光ファイバであると好ましい。微細構造光ファイバを用いるとファイバ設計の範囲を広げることが可能になる。
【0074】
さらに、非常に大きな非線形係数を得ることができることから、光ファイバを使用すると有利であり、その分散特性を調整する方法が知られている。ただし、ファイバ10は、チャープパルスとポンプ源6および8から供給されるポンプ信号の間に四光波混合効果をもたらすのに適した、任意の3次非線形媒質と置き換えることができる。
【符号の説明】
【0075】
2 光パルス源
4 ストレッチャ
6 第1のポンプ源
8 第2のポンプ源
10 光ファイバ
12 圧縮器
14 同期手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7