特許第6114314号(P6114314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6114314HIV付着阻害剤であるピペラジンプロドラッグ化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114314
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】HIV付着阻害剤であるピペラジンプロドラッグ化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20170403BHJP
   C07F 9/6558 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 31/496 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20170403BHJP
   A61P 31/18 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   C07D471/04 104Z
   C07F9/6558
   !A61K31/496
   !A61P43/00 123
   !A61P31/18
【請求項の数】4
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-556625(P2014-556625)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公表番号】特表2015-508071(P2015-508071A)
(43)【公表日】2015年3月16日
(86)【国際出願番号】US2013024880
(87)【国際公開番号】WO2013119625
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/596,362
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100156100
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 満
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ディ・イーストゲイト
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エス・ブルトマン
(72)【発明者】
【氏名】クァ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】デイン・ダスタン・ファンフェア
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ジェイ・フォックス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・イー・ラ・クルス
(72)【発明者】
【氏名】ボガスロー・エム・マドリク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・アン・リサッティ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・エイチ・シンプソン
(72)【発明者】
【氏名】マクシム・セ・スーメイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・クライブ・トリップ
(72)【発明者】
【氏名】イ・シャオ
【審査官】 伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/127731(WO,A1)
【文献】 特表2004−522755(JP,A)
【文献】 特表2011−526283(JP,A)
【文献】 特表2007−529519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物11aa:
【化1】

またはその塩を、化合物8a:
から製造するための方法であって、

アミド化合物10a:
を、化合物8aから製造して、次いでトリアゾール基:
を、リガンドおよび塩基の存在下に銅触媒を用いて、化合物10aに導入して、化合物11aaまたはその塩を生成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
リガンドがDMCHDAである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化合物13a:
【化2】

の製造方法であって、
(1)化合物1a:
【化3】

を、三塩化アルミニウム(AlCl)の存在下、
【化4】
の2−クロロアセチルクロリドを用いて反応させ、化合物2a:
【化5】

を生成し;
(2)次に、化合物2aを、テトラアルキルアンモニウムハライドの存在下で、N−ホルミルスルホンアミドのナトリウム塩と反応させて2−クロロケトンを置換し、アミノケトン化合物3a:
【化6】

を生成し;
(3)化合物3aを、硫酸の存在下で、
【化7】
と反応させ、化合物4a:
【化8】
を生成し;
(4)トリフルオロ酢酸により触媒作用が付与される、ホルムアルデヒドとのピクテ・スペングラー閉環反応を行い、ケトン化合物5a:
【化9】
を生成し;
(5)化合物5aを、ラジカル開始剤の存在下、オルトギ酸トリメチル(TMOF)および酸と反応させ、6−アザインドール化合物6a:
【化10】
を生成し;
(6)化合物6aにおけるピリジンの窒素を、過酸化水素(H)および無水フタル酸を用いて酸化し、N−オキシド化合物7a:
【化11】
を生成し;
(7)化合物7aを、塩基:KPOおよびNaOHの存在下で、PyBropと反応させ、ブロモ−アザインドール化合物8a:
【化12】
を生成し;
(8)次に、化合物8aのインドール基のC3をアシル化し、オキサレート化合物9a:
【化13】
を生成し;
(9)化合物9aをN−ベンゾイルピペラジンとカップリングさせて、アミド化合物10a:
【化14】
を生成し;
(10)トリアゾール基:
【化15】
を、リガンドおよび塩基の存在下に銅触媒を用いて、化合物10aに加え、化合物11a:
【化16】
を生成し;
(11)化合物11aより、11bまたは11c:
【化17】
を形成してもよく;
(12)化合物11a、11bまたは11cのインドール窒素を、クロロホスフェート化合物:
【化18】
を用いてアルキル化し、リン酸エステル化合物12a:
【化19】
を生成し;および
(13)化合物12aのtert−ブチル基を加溶媒分解に付し、最終化合物13aを生成することを含む、方法。
【請求項4】
化合物13a:
【化20】
の製造方法であって、
(1)化合物1a:
【化21】
を2−クロロアセチルクロリド:
【化22】
を用いて反応させ、化合物2a:
【化23】
を生成し;
(2)次に、化合物2aを、N−ホルミルスルホンアミドのナトリウム塩と反応させて、2−クロロケトンを置換し、アミノケトン化合物3a:
【化24】
を生成し;
(3)化合物3aを、酸の存在下で、
【化25】
と反応させ、化合物4a:
【化26】
を生成し;
(4)酸により触媒作用が付与される、ホルムアルデヒドとのピクテ・スペングラー閉環反応を行い、ケトン化合物5a:
【化27】
を生成し;
(5)化合物5aを、ラジカル開始剤の存在下、オルトギ酸トリメチル(TMOF)および酸と反応させ、6−アザインドール化合物6a:
【化28】
を生成し;
(6)化合物6におけるピリジン窒素を酸化し、N−オキシド化合物7a:
【化29】
を生成し;
(7)化合物7aをPyBropと反応させ、ブロモ−アザインドール化合物8a:
【化30】
を生成し;
(8)次に、化合物8aのインドール基のC3をアシル化し、オキサレート化合物9a:
【化31】
を生成し;
(9)化合物9aをN−ベンゾイルピペラジンとカップリングさせて、アミド化合物10a:
【化32】
を生成し;
(10)トリアゾール基:
【化33】

を、リガンドおよび塩基の存在下、触媒を用いて化合物10aに加え、化合物11a:
【化34】
を生成し;
(11)化合物11aより、11bまたは11c:
【化35】
を形成してもよく;
(12)化合物11a、11bまたは11cのインドール窒素を、クロロホスフェート化合物:
【化36】
を用いてアルキル化し、リン酸エステル化合物12a:
【化37】
を生成し;および
(13)化合物12aのtert−ブチル基を加溶媒分解に付し、最終化合物13aを生成することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、仮出願ではなく、2012年2月8日出願の米国仮出願番号61/596362の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本願は、抗ウイルス剤として有用なHIV付着阻害剤である化合物の製造方法に、特に1−ベンゾイル−4−[2−[4−メトキシ−7−(3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−[(ホスホノオキシ)メチル]−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−3−イル]−1,2−ジオキソエチル]−ピペラジンと確認されたピペラジンプロドラッグ化合物の製造方法に関する。また、本明細書に記載の方法により製造される化合物(中間体を含む)に関する。
【背景技術】
【0003】
HIV−1(ヒト免疫不全ウイルス−1)感染は、2011年末の時点で、世界中で未だ何千万人もの人々が感染しており、重大な医学的問題として残っている。HIVおよびAIDS(後天性免疫不全症候群)の患者の数は急速に増えている。2005年に、例えば、およそ500万人の新たな感染が報告され、310万人がAIDSで死亡した。現在、HIVの治療に使用される薬物として、ヌクレオシド系逆転写酵素(RT)阻害剤または承認されている単剤併用薬:すなわち、ジドブジン(あるいはAZTまたはRetrovir(登録商標))、ジダノシン(またはVidex(登録商標))、スタブジン(またはZerit(登録商標))、ラミブジン(あるいは3TCまたはEpivir(登録商標))、ザルシタビン(あるいはDDCまたはHivid(登録商標))、コハク酸アバカビル(またはZiagen(登録商標))、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(またはViread(登録商標))、エムトリシタビン(あるいはFTCまたはEmtriva(登録商標))、Combivir(登録商標)(3TC+AZTを含有する)、Trizivir(登録商標)(アバカビル、ラミブジンおよびジドブジンを含有する)、Epzicom(登録商標)(アバカビルおよびラミブジンを含有する)、Truvada(登録商標)(Viread(登録商標)およびEmtriva(登録商標)を含有する)であるか;非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤:すなわち、ネビラピン(またはViramune(登録商標))、デラビルジン(またはRescriptor(登録商標))およびエファビレンツ(またはSustiva(登録商標))、Atripla(登録商標)(Truvada(登録商標)+Sustiva(登録商標))およびエトラビリン;ペプチド模倣プロテアーゼ阻害剤または承認製剤:すなわちサクイナビル、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、Kaletra(登録商標)(ロピナビルおよびリトナビル)、ダルナビル、アタザナビル(Reyataz(登録商標)、およびチプラナビル(Aptivus(登録商標))、およびラルテグラビル(Isentress(登録商標))などのインテグラーゼ阻害剤、ならびにエンフビルチド(T−20)(Fuzeon(登録商標))およびマラビロク(Selzentry(登録商標))などのエントリー阻害剤が挙げられる。
【0004】
また、HIV付着阻害剤は、新規な下位群の抗ウイルス性の化合物であり、HIV表面糖タンパク質gp120に結合し、表面糖タンパク質gp120と宿主細胞受容体CD4の間の相互作用を妨げるものである。かくして、該阻害剤は、HIVがヒトCD4T細胞に付着することを妨げ、HIV生活環の初期段階でのHIV複製を遮断する。HIV付着阻害剤の特性は、抗ウイルス剤として最大の有用性および効能を有する化合物を獲得する目的で改善されてきた。
【0005】
特に、一のHIV付着阻害剤である化合物が、HIVに対してかなり優れた能力のあることが分かっている。この化合物は、
【化1】
で示される1−(4−ベンゾイル−ピペラジン−1−イル)−2−[4−メトキシ−7−(3−メチル−[1,2,4]トリアゾール−1−イル)−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−3−イル]−エタン−1,2−ジオンであると確認されており、米国特許第7,354,924号(その内容をそのまま本願明細書に組み込む)にて明記かつ記載されている。
【0006】
上記の化合物は、1−ベンゾイル−4−[2−[4−メトキシ−7−(3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−1−[(ホスホノオキシ)メチル]−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−3−イル]−1,2−ジオキソエチル]−ピペラジンとして知られるプロドラッグの親化合物である。該化合物は米国特許第7,745,625号(その内容をそのまま本願明細書に組み込む)に明記かつ記載されている。該化合物は、次式:
【化2】
で表される。
【0007】
上記の’625文献に詳説されている方法を含め、このプロドラッグ化合物を製造する種々の方法が明らかにされている。特に、’625文献はアクリル化、アルキル化およびホスホリル化する種々の工程を含む。別の特許文献である、米国特許出願番号13/359,708(2012年1月27日出願;発明の名称「HIV付着阻害剤であるプロドラッグ化合物の製造方法および中間体」)もまた、ピペラジンプロドラッグ化合物を製造する種々の操作を詳説する。これらは、出発物質として、
【化3】
で示される化合物を用い、その後で臭素化し、次にニトロ化する、多工程の方法を含む。さらには、トリアゾリル基を該化合物に付加し、その後で二元的カルボニル基により分離されるピペラジン基をさらに結合させるものである。
【0008】
この分野で今必要とされるものはHIVに対して有用なピペラジンプロドラッグ化合物を製造する新規な方法である。これらの方法は、全収率および物質処理能の両方の観点から、該プロドラッグ分子を製造するのにさらに包括的で効率的な手段を提供する。
【発明の概要】
【0009】
第一の実施態様において、本発明は、式(I):
【化4】
で示される化合物の製造方法であって、
(a)化合物1:
【化5】
を、酸クロリドの化合物:
【化6】
と反応させ、化合物2
【化7】
を形成し;ついで
(b)化合物2を、塩基中、二置換アミンである(RNHと接触させ、化合物3:
【化8】
を生成し;その後で
(c)化合物3を、酸溶液中、ジヒドロキシ化合物:
【化9】
と反応させ(ここで該ヒドロキシル基の間のリンカーはC−Cアルキルである)、化合物4:
【化10】
を生成し;
(d)化合物4を、酸中、化合物:
【化11】
と反応させて化合物5:
【化12】
を生成し;
(e)化合物5を、塩基中でMe−Xと、または酸中でMeO−Rと接触させて化合物6:
【化13】
を生成し;
(f)次に、化合物6について[O]を用いて酸化反応を行い、化合物7:
【化14】
を生成し;
(g)トリアゾリル化合物:
【化15】
を化合物7に添加し、ついで官能基の相互変換反応を行って、上記の化合物(I)を得る工程を含み、ここで
が−H、−Boc、−Piv、−SOアリール、−CHSアリール、−CHOP(O)(OR)、−CHOR、−CHアリールであり;
が、各々独立して−H、−COR、−SOアリール、−CHOであり;
およびRは、各々独立して−H、−COR、−CHSR、−CHOR、−CH(OR)、−CH(OR)(NR)、−CH(NR、(C−C)アルキルであり;
Rが、各々独立して−H、−C−Cアルキル、−アリール、−CHアリールであり;
が、−H、−Cl、−Br、−I、
【化16】
であり;
が、−Cl、−Br、−I、−N(R、−OSORであり;
は、各々独立して−H、−OR、−NR、−Cl、−Br、−I、−SR、−SOR、−SOR、−SRであり;および
が、−Cl、−Br、−I、OTs(トシレート基)、−NR、−ピリジウム、または
【化17】
である、方法を提供する。
【0010】
この実施態様において、Rは−SOアリールであることが好ましい。本明細書中のアリールは、好ましくはフェニルである。Xが−Hであることも好ましい。また、Xは−Hであることが好ましい。ジヒドロキシ化合物がエチレングリコールであることも好ましい。
【0011】
さらなる実施態様において、本発明は、式(I):
【化18】
で示される化合物の製造方法であって、
(a)化合物1:
【化19】
を、酸クロリドの化合物:
【化20】
と反応させ、化合物2
【化21】
を形成し;ついで
(b)化合物2を、塩基中、二置換アミンである(RNHと接触させ、化合物3:
【化22】
を生成し;その後で
(c)化合物3を、酸溶液中、ジヒドロキシ化合物:
【化23】
と反応させ(ここで該ヒドロキシル基の間のリンカーはC−Cアルキルである)、化合物4:
【化24】
を生成し;
(d)化合物4を、酸中、化合物:
【化25】
と反応させて化合物5:
【化26】
を生成し;
(e)化合物5を、塩基中でMe−Xと、または酸中でMeO−Rと接触させて化合物6:
【化27】
を生成し;
(f)次に、化合物6について[O]を用いて酸化反応を行い、化合物7:
【化28】
を生成し;
(g)トリアゾリル化合物:
【化29】
を化合物7に添加し、上記の化合物(I)を得る工程を含み、ここで
が−H、−Boc、−Piv、−SOアリール、−CHSアリール、−CHOP(O)(OR)、−CHOR、−CHアリールであり;
が、各々独立して−H、−COR、−SOアリール、−CHOであり;
が−H、−COR、−CHSR、−CHOR、−CH(OR)、−CH(OR)(NR)、−CH(NRであり;
Rが、各々独立して−H、−C−Cアルキル、−アリール、−CHアリールであり;
が、−H、−Cl、−Br、−I、
【化30】
であり;
が、−Cl、−Br、−I、−N(R、−OSORであり;
は、各々独立して−H、−OR、−NR、−Cl、−Br、−I、−SR、−SOR、−SOR、−SRであり;および
が、−Cl、−Br、−I、OTs、−NR、−ピリジウム、または
【化31】
であるところの、製造方法を対象とする。
【0012】
このさらなる実施態様において、Rは−SOアリールであることが好ましい。本明細書中のアリールは、好ましくはフェニルである。Xが−Hであることも好ましい。また、Xは−Hであることが好ましい。ジヒドロキシ化合物がエチレングリコールであることも好ましい。
【0013】
別の実施態様において、式(I):
【化32】
で示される化合物の製造方法であって、
(a)化合物1:
【化33】
を、酸クロリドの化合物:
【化34】
と反応させ、化合物2
【化35】
を形成し;ついで
(b)化合物2を、塩基中、二置換アミンである(RNHと接触させ、化合物3:
【化36】
を生成し;その後で
(c)化合物3を、酸溶液中、ジヒドロキシ化合物:
【化37】
と反応させ(ここで該ヒドロキシル基の間のリンカーはC−Cアルキルである)、化合物4:
【化38】
を生成し;
(d)化合物4を、酸中、化合物:
【化39】
と反応させて化合物5:
【化40】
を生成し;
(e)化合物5を、塩基中でMe−Xと、または酸中でMeO−Rと接触させて化合物6:
【化41】
を生成し;次に
(f)化合物6について[O]を用いて酸化反応を行い、化合物7:
【化42】
を生成し;
(g)活性化反応を行って、その結果得られる化合物10:
【化43】
を生成し、次に
(h)トリアゾリル化合物:
【化44】
を、Cuイオンおよびリガンドの存在下、化合物10に添加し、上記の式(I)の化合物を得る工程を含み、ここで
が−H、−Boc、−Piv、−SOアリール、−CHSアリール、−CHOP(O)(OR)、−CHOR、−CHアリールであり;
が、各々独立して−H、−COR、−SOアリール、−CHOであり;
が−H、−COR、−CHSR、−CHOR、−CH(OR)、−CH(OR)(NR)、−CH(NRであり;
Rが、各々独立して−H、−C−Cアルキル、−アリール、−CHアリールであり;
が、−H、−Cl、−Br、−I、
【化45】
であり;
が、−Cl、−Br、−I、−N(R、−OSORであり;
およびXが、各々独立して−H、−OR、−NR、−Cl、−Br、−I、−SR、−SOR、−SOR、−SRであり;および
が、−Cl、−Br、−I、OTs、−NR、−ピリジウム、または
【化46】
であり、
リガンドは、1,2−ジアミノシクロヘキサン、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、シス−/トランス−ジアミノシクロヘキサン、シス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、トランス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、シス−/トランス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノエタン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、および5−ニトロ−1,10−フェナントロリンの群より選択されるところの、製造方法が提供される。
【0014】
このさらなる実施態様において、Rは−SOアリールであることが好ましい。本明細書中のアリールは、好ましくはフェニルである。Xが−Hであることも好ましい。
【0015】
また、本発明において、式(II):
【化47】
で示される化合物の製造方法であって、
(a)化合物10:
【化48】
を、
【化49】
を用いてアシル化し、化合物11:
【化50】
を生成し;ついで
(b)化合物11を、化合物13:
【化51】
と活性化反応にて反応させ、化合物14:
【化52】
を生成し;
(c)トリアゾリル化合物9:
【化53】
をCuイオンおよびリガンドの存在下で添加して化合物15:
【化54】
を得;
(d)化合物17:
【化55】
を、化合物15と反応させて化合物18:
【化56】
を生成し;
(e)官能基の相互変換反応を行って、上記の式(II)の化合物を生成する工程を含み、ここで、
が−H、−OR、−NR、−Cl、−Br、−I、−SRであり;
が−H、−Boc、−Piv、−SOアリール、−CHSアリール、−CHOP(O)(OR)、−CHOR、−CHアリール、−Li、−Na、−K、−Ca、−Mg、TMG(テトラメチルグアニジン)であり;
Rが、各々独立して−H、−C−Cアルキル、−アリール、−CHアリールであり;
が−H、−Cl、−Br、−I、
【化57】
であり;
が−H、−OR、−NR、−Cl、−Br、−I、−SRであり;
が−H、−OR、−NR、−Cl、−Br、−I,−SR、−SOR、−SR、−OSOR、−OSORであり;および
が−Cl、−Br、−I、−OSORであるところの、製造方法も提供される。
【0016】
この実施態様において、リガンドは上記されるように選択されてもよい。Rがtert−ブチル、RおよびXが−H、およびRが−OMeであることも好ましい。本明細書でのアリールは好ましくはフェニルである。
【0017】
本発明のさらなる実施態様において、式(III):
【化58】
で示される化合物の製造方法であって、
(1)化合物:
【化59】
を、無水フタル酸、Hおよびジクロロメタンと反応させ、化合物:
【化60】
を生成;および
(2)化合物iiをPyBropと反応させることでPyBrop臭素化反応を行い、化合物(III)を調製する工程:
【化61】
を含み、ここで
は−H、アルキル、アリール、−SOR、−C(O)OR、および−C(O)NRであり;その中のRが−H、−C−Cアルキル、アリール、−CHアリールであり;およびPyBropがペプチドカップリング試薬としてのブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートであるところの、製造方法が示される。ここでのアリールは、好ましくはフェニルである。
【0018】
加えて、本発明はまた、
【化62】
の群より選択される、化合物(医薬的に許容される塩およびその混合物を含む)を対象とする。
【0019】
本発明はまた、化合物:
【化63】
の製造方法であって、
(1)水の存在下にある溶媒を用いて、化合物:
【化64】
からt−ブチル基を除去し、化合物:
【化65】
を得;そして
(2)該化合物:
【化66】
をTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)と、所望により第二溶媒で反応させ、化合物:
【化67】
を得ることを含む、製造方法を対象とする。
【0020】
本発明によれば、第一溶媒はカルボン酸、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、DMSO、MeCN、MeOH、およびアセトンの群より選択される。酸はHSO4、HNO、HCl、リン酸およびカルボン酸の群より選択される。第二溶媒は水、アルキルケトン、ヘプタン、トルエン、酢酸エチル、DMSO、MeCN、MeOHおよびアセトンの群より選択される。より好ましくは、酸は酢酸であり、第二溶媒はアセトンである。
【0021】
本発明は、これらの事項、ならびに下記される他の重要な事項も対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特記されない限り、多くの試薬は、容易に参照できるように、本明細書中、その分野にて一般的に許容される省略形の文字で特定される。
【0023】
また、本明細書中、いずれにおいても特記されない限り、以下の用語が用いられてもよく、次の意義を有する:
【0024】
「アルキル」基は、直鎖および分岐鎖基を含む、飽和脂肪族炭化水素をいう。好ましくは、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する(数的範囲;例えば「1〜20」が本願明細書中で示される場合は常に、それは、アルキル基の場合に、その基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、20個までの炭素原子を有してもよいことを意味する)。さらに好ましくは、それは1〜10個の炭素原子を有する中程度のアルキルである。最も好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は置換されても、されなくてもよい。
【0025】
明細書および特許請求の範囲にて使用される「C1−6アルキル」なる語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル等などの6個までの炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0026】
「アリール」または「Ar」基は、完全にコンジュゲートしているπ電子系を有するすべてが炭素の単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する対の炭素原子を共有する環)基をいう。アリール基の例は、限定されるものではなく、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルである。アリール基は置換されても、されなくてもよい。
【0027】
本発明の好ましい実施態様にて、ピペラジンプロドラッグ化合物の合成は次の反応式で示されうる:
【化68】
【0028】
より好ましくは、以下にさらに示されるように、ピペラジンプロドラッグ化合物の合成をN−スルホニル化ピロール 1aから出発する。三塩化アルミニウムの存在下、2−クロロアセチルクロリドとのフリーデル−クラフト・アシル化反応に付し、3−アクリルピロール誘導体 2aを得る。テトラアルキルアンモニウムハライド(好ましくは、ブロミド)、好ましくは臭化テトラブチルアンモニウムの存在下で、2−クロロケトンをN−ホルミルスルホンアミドのナトリウム塩との置換反応に供し、アミノケトン 3aを得る。グリコールおよび酸の存在下でケトンをケタール保護に付し、N−ホルミル保護基を切断し、所望のジオキサラン 4aを形成する。酸触媒の、ホルムアルデヒド等価物を用いるピクテ・スペングラー閉環反応に供し、ケトン 5aを得、それをAIBNまたはクメンヒドロペルオキシドなどのラジカル開始剤の存在下でオルトギ酸トリメチル(TMOF)および酸と反応させ、6−アザインドール 6aを得る。ピリジンの窒素を酸化して、N−オキシドを得、次にそれを塩基の存在下でPyBropと反応させ、C7位を臭素化し、スルホニル保護基を加水分解した後に、ブロモ−アザインドール 8aを得た。該インドールのC3を第二のフリーデル−クラフト・アシル化反応に付し、オキサレート 9aを得、それをN−ベンゾイルピペラジンとカップリングさせてアミド 10aを得る。トリアゾールの置換が、適当なリガンドおよび塩基の存在下、銅による触媒作用になされ、インドール 11cを得、それをリチウム塩として(または所望によりKBrとの共同塩として)単離する。インドールの窒素をクロロホスフェート 14aでアルキル化し、リン酸エステル 12aを得、その後でtert−ブチル基を加溶媒分解に付して最終化合物 13aを得る。
【0029】
このように、ピペラジンプロドラッグ化合物の生成は、次により的確に示すことができる:
【化69】
【0030】
これまでの記載は単なる例示であって、発明の範囲または基本原則を何ら限定するものではないと理解されるべきである。実際に、本明細書に明示および記載されている修飾に加えて、発明の様々な修飾が。これまでの記載および例示から当業者に明らかとなる。かかる修飾も添付した特許請求の範囲内にあることを意図とする。