特許第6114326号(P6114326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114326
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】組織因子経路阻害因子に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20170403BHJP
   C12N 15/02 20060101ALI20170403BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170403BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20170403BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20170403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170403BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20170403BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20170403BHJP
【FI】
   C07K16/18ZNA
   C12N15/00 C
   C12N5/10
   C12N1/15
   C12N1/19
   A61K39/395 N
   A61P7/04
   !C12P21/08
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2015-48157(P2015-48157)
(22)【出願日】2015年3月11日
(62)【分割の表示】特願2011-541494(P2011-541494)の分割
【原出願日】2009年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-178495(P2015-178495A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】08172520.2
(32)【優先日】2008年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イーダ・ヒルデン
(72)【発明者】
【氏名】ベーリット・オールセン・クローグ
(72)【発明者】
【氏名】イェス・トアン・クラウセン
(72)【発明者】
【氏名】オーレ・ヴィルステズ・オールセン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ブラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン・ローリッツェン
(72)【発明者】
【氏名】ブリット・ビノー・ソレンセン
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−153985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFPIのK2ドメインと特異的に結合できるモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであって、前記抗体が、配列番号2のE10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、K36およびL50を含むエピトープと結合できる抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体のKDが、表面プラズモン共鳴を使用して決定され、0.8nM未満である、請求項1に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体のKDが、表面プラズモン共鳴を使用して決定され、0.7nM未満である、請求項1に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体の軽鎖が、配列番号15の
・31位に相当する位置にE、
・32位に相当する位置にS、
・33位に相当する位置にD、
・37位に相当する位置にY、
・96位に相当する位置にA、
・97位に相当する位置にT、および
・99位に相当する位置にF
のアミノ酸残基を含み、
前記抗体の重鎖が、配列番号18の
・31位に相当する位置にN、
・53位に相当する位置にR、
・54位に相当する位置にS、
・57位に相当する位置にY、
・59位に相当する位置にY、
・60位に相当する位置にF、
・61位に相当する位置にP、
・62位に相当する位置にD、
・65位に相当する位置にQ、
・102位に相当する位置にY、
・103位に相当する位置にD、および
・106位に相当する位置にD
のアミノ酸残基を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記重鎖が、配列番号18の52位に相当する位置にSをさらに含み、かつ/または前記軽鎖が、配列番号15の98位に相当する位置にHをさらに含み、かつ前記重鎖が、配列番号18の56位に相当する位置にSをさらに含む、請求項4に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体の重鎖は、配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)の相補性決定領域3(CDR3)配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列であって、これらのアミノ酸の1つが別のアミノ酸で置換されていてよい配列、および/または
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列であって、これらのアミノ酸の1、2もしくは3つが別のアミノ酸で置換されていてよい配列
をさらに含み、
前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列であって、これらのアミノ酸の1、2もしくは3つが別のアミノ酸で置換されていてよい配列、および/または
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列であって、これらのアミノ酸の1もしくは2つが別のアミノ酸で置換されていてよい配列、および/または
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列であって、これらのアミノ酸の1もしくは2つが別のアミノ酸で置換されていてよい配列
を含む請求項4に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記アミノ酸置換が保存的置換である、請求項7に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項9】
組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであって、
前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列、
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列、および
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3
を含み、
前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列、
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列、および
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列
を含む抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体の軽鎖が、配列番号15を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号18を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体の軽鎖が、配列番号21を含み、前記抗体の重鎖が、配列番号24を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項12】
mAb2974よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できる、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項13】
TFPIが前記抗体で飽和されている場合に、FVIIa/TF/FXa阻害因子アッセイにおいて測定して、膜結合FVIIa/TF/FXaのTFPI阻害を、少なくとも55%中和できる、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項14】
Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、またはdAbフラグメントである、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメント。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメントを発現する真核生物細胞。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の抗原結合フラグメントと、医薬的に許容され得る担体または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項17】
凝血異常の対象を治療するための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記対象が、先天性、後天性および/または医原性の凝血異常のいずれかを有する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記先天性、後天性および/または医原性の凝血異常が、阻害因子を有するかもしくは有さない血友病A、あるいは阻害因子を有するかもしくは有さない血友病Bである、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織因子経路阻害因子(TFPI)と特異的に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病AおよびBを有するヒトなど、凝血異常を有する対象では、凝固カスケードの種々のステップが、例えば凝固因子の不在または不十分な存在のために機能不全になっている。凝固カスケードの一部分のこのような機能不全は、不十分な血液凝固および潜在的に致命的な出血、または関節などの内部器官の損傷をもたらす。血友病AおよびBを有するヒトなどの対象は、それぞれ外因性FVIIIaまたはFIXaなどの凝固因子補充療法を受けることがある。しかし、このような患者は、このような外因性因子に対する「阻害因子」(抗体)を発生して、以前は効果的であった療法を効果がないものにする危険性がある。さらに、外因性凝固因子は静脈内投与しかできず、このことが、患者にとっての好便性および快適性を著しく損なっている。例えば、乳児および幼児は、静脈へのアクセスを確保するために、胸部静脈内に外科的に挿入された静脈内カテーテルを用いなければならないことがある。このことにより、彼らは、細菌感染を発生する危険性が大きい。凝血異常を有する対象は、予防措置としてではなく、出血が開始した後にのみ治療を受ける可能性があり、このことが、彼らの全般的な生活の質にしばしば影響する。
【0003】
よって、特に血友病集団において、および凝血異常の対象一般において、多くの満たされていない医療的な必要性がまだ存在する。
【0004】
血管壁が損傷した場合に、組織因子(TF)が循環血液の内容物に曝露され、TFは、TF保持細胞の表面上の第VII因子/活性化第VII因子(FVII/FVIIa)と複合体を形成する。このことにより、第X因子(FX)がFXaに活性化され、これがFVaとともに限定された量のトロンビン(FIIa)を生じる。少量のトロンビンが血小板を活性化し、このことが、FVIIIa/FIXaからなるテナーゼ複合体の結合を支持するリン脂質の表面露出をもたらす。
【0005】
テナーゼ複合体は、大量のFXaを生成し、これがその後、完全なトロンビンバーストを促進する。完全なトロンビンバーストは、機械的に強固なフィブリン構造の形成および止血血栓の安定化のために必要である。FVIIIまたはFIXは、血友病患者において欠失しているかまたは低レベルで存在し、テナーゼ活性の欠損を原因として、FXaを生じる能力は低く、凝固の増幅相を支持するには不十分である。これとは対照的に、TF媒介の初期相は、テナーゼ複合体の形成に依存しない。しかし、TF経路は、最初のFXaが生じたすぐ後に血漿阻害因子により遮断される。
【0006】
組織因子経路阻害因子(TFPI)は、FXaの触媒活性を中和し、FXaの存在下でTF-FVIIa複合体を阻害することにより、進行中の凝固を下方制御する。TFPIは、細胞表面上のTF/FVIIa/FXa複合体を阻害するか、または放出されたFXaを阻害して、それに続いてFVIIa/TFを阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005040219
【特許文献2】米国特許出願公開第20050238646号
【特許文献3】米国特許出願公開第20020161201号
【特許文献4】米国特許第5,677,425号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Caceciら(Byte 9:340〜362頁、1984)
【非特許文献2】WongおよびLohman(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90、5428〜5432頁、1993)
【非特許文献3】Birdら、Science 1988;242:42S〜426頁
【非特許文献4】HustonらPNAS 1988;85:5879〜5883頁
【非特許文献5】IllらProtein Eng 1997;10:949〜57頁
【非特許文献6】HolligerおよびHudson、Nat Biotechnol 2005;2S:1126〜1136頁
【非特許文献7】Kabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号
【非特許文献8】ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol 1987;196:901〜917
【非特許文献9】KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495頁
【非特許文献10】Angalら、Mol Immunol.199S;30:105〜8頁
【非特許文献11】Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12、387〜395頁
【非特許文献12】Altschul S. F.(1993) J Mol Evol 36:290〜300頁
【非特許文献13】Altschul, S, Fら(1990) J Mol Biol 215:403〜10頁
【非特許文献14】HenikoffおよびHenikoff (1992) Proc. Natl. Acad.Sci.USA 89:10915〜10919頁
【非特許文献15】KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873〜5787頁
【非特許文献16】Sambrookら(1989、Molecular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)
【非特許文献17】DurocherらNucleic Acid Research、2002
【非特許文献18】Edelman G. M.ら、Proc. Natl. Acad. USA 63、78〜85頁(1969)
【非特許文献19】Pedersenら、1990、J.Biol.Chem.265、16786〜16793頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、組織因子経路阻害因子(「TFPI」、ときに「TFPI1」ともいう)と特異的に結合し、そのことによりその活性を調節するモノクローナル抗体を同定した。本発明は、これらの抗体、およびこれらの抗体に由来するかまたはこれらの抗体と同様の結合特性を有するその他の関連する抗体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって、本発明は、組織因子経路阻害因子(TFPI)と特異的に結合し、例えば(a)ヒトFVIII欠損血漿および/または(b)ヒト全血における凝固時間を低減する抗体に関する。
【0011】
ある抗体は、配列番号4の軽鎖可変領域と配列番号8の重鎖可変領域とを含む。別の抗体は、配列番号15の軽鎖可変領域と、配列番号18の重鎖可変領域とを含む。
【0012】
本発明は、本発明の抗体軽鎖および/または抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドなどの本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0013】
本発明は、本発明の抗体またはポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得る担体または希釈剤とを含む医薬組成物も提供する。
【0014】
(a)凝血異常(出血障害)の治療もしくは予防または(b)血液凝固の刺激において用いるための本発明の抗体、ポリヌクレオチドおよび組成物も提供される。つまり、本発明は、(a)凝血異常(出血障害)の治療もしくは予防の方法、または(b)血液凝固の刺激方法であって、それを必要とする患者に、本発明の抗体、ポリヌクレオチドもしくは組成物の治療または予防有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、本発明の前記モノクローナル抗体の投与計画を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ヒト生殖系列およびヒト化TFPI4F36の最初のCDRグラフト化バージョンの配列と整列させたマウス抗TFPI4F36A1B2(本明細書においてMuTFPI4F36または4F36ともいう)のVH(A)およびVL(B)ドメインの配列を示す図である。Kabat番号付け方式を配列の上に示す。
図2】マウス抗体TFPI4F36A1B2(MuTFPI4F36)のVHおよびVL配列についてのヌクレオチド配列および翻訳されたポリペプチド配列を示す図である。
図3】マウス4F36抗体MuTFPI4F36のFabフラグメントの軽鎖(A)および重鎖(B)のアミノ酸配列を示す図である。配列の上の番号付けは、Kabatに従って示す。CDRループに相当する位置は、Kabat番号付け中の太字の下線を付した文字で強調する。パラトープを構成するアミノ酸残基は、太字の下線を付した文字で強調する。パラトープは、MuTFPI4F36 FabとTFPI K2ドメインとの複合体のX線構造から決定し、K2中の重原子から4Å未満の距離にある重原子を有するFab中の残基と定義する。
図4】TFPIの配列(シグナルペプチド配列は省略する)を示す図である。Kunitzドメインは、太字で示す:TFPI Kunitzドメイン1=アミノ酸26〜76;TFPI Kunitzドメイン2=アミノ酸97〜147;TFPI Kunitzドメイン3=アミノ酸188〜238。TFPIのC末端部分は、アミノ酸240〜276にて斜体で示す。
図5】TFPI中の残基の相対的近づきやすさを示す図である。40%より大きい近づきやすさを有する残基は、アミノ酸94〜95、98、100〜110、118〜121、123〜124、131、134、138〜142および144〜145である。
図6】TFPI Kunitzドメイン2(K2)とMuTFPI4F36 Fabフラグメント(Fab)との複合体のSEC HPLC分析を示す図である。遊離K2(実線、rt 13.1分、13.134に示すピーク)、遊離Fab(断続線、rt 11.7分、11.676に示すピーク)および複合体(点線、rt 11.5分、11.496に示すピーク)のUV 280nmで検出したSEC-HPLCクロマトグラム。複合体の試料は、およそ20%過剰のK2を含有していた。
図7】MuTFPI4F36 Fab:K2複合体の全体的な構造を示す図である。軽鎖は淡い灰色で示し、重鎖は濃い灰色で示す。Kabat方式に従って規定したCDRループは、L1〜L3およびH1〜H3としてラベルを付す。
図8】MuTFPI4F36 Fabとの複合体でのTFPIのK2ドメインの構造(Fab分子は示さず)を示す図である。NおよびC末端ならびに2次構造要素にラベルを付す。
図9】K2構造の主鎖重ね合わせを示す図である。K2溶液、MuTFPI4F36 Fabとの複合体でのK2およびブタトリプシンとの複合体でのK2の構造の違いを示す。
図10】K2上のMuTFPI4F36結合エピトープを示す図である。(A)TFPIのK2ドメインの模式図であり、結合エピトープに含まれる残基の側鎖を球および棒で示す。(B)はAと同様であるが、表面を加えている。(C)1次配列上にマッピングした結合エピトープ。大文字の太字、斜体および下線を付した文字は、それぞれMuTFPI4F36 Fabの重鎖のみ(10位、11位、13位、28位、31位、33位および35位)、軽鎖のみ(21位、23位および50位)、ならびに重鎖および軽鎖の両方(17位、19位、34位および36位)と接触するK2結合エピトープ中の残基に相当する。2次構造要素(h=ヘリックス、s=シート)を示す(5位〜8位および50位〜56位のヘリックスならびに20位〜26位および31位〜37位のシート)。灰色で強調する残基(1位〜2位および59位〜66位)は、発現されるタンパク質に存在するが、NおよびC末端が柔軟であるので結晶構造中では観察されない。
図11】マウスMuTFPI4F36とヒト化HzTFPI4F36 Fabフラグメントとについての同一の結合様式を示す、K2:MuTFPI4F36 Fab複合体とK2:HzTFPI4F36 Fab複合体の主鎖トレースの比較を示す図である。K2:MuTFPI4F36 Fabは灰色で示し、K2:HzTFPI4F36 Fabは黒色で示す。構造は、Fabフラグメントの可変領域同士の一致が最適となるように重ね合わせる。
図12】TNFα/IL1βで刺激したHUVECの表面上のFXのTF/FVIIaにより誘導される活性化に対する抗TFPIモノクローナル抗体(mAb)の影響を示す図である。FXの活性化を、HUVECの単層に重層した25mM HEPES、137mM NaCl、3.5mM KCl、5mM CaCl2、1mg/ml BSA(0.1%) pH7.4の緩衝液中の0〜20nM mAB(mAbTFPI 2021またはmAb 2974)、50pM FVIIa(NovoSeven(登録商標))および50nM FXの存在下で測定した。生じたFXa活性を、S-2765を用いて405nMでの吸光度の増加により測定されるアミド分解アッセイにおいて決定した。
図13】MDA-MB 231細胞の表面上のFXのTF/FVIIaにより誘導される活性化のTFPI阻害に対する抗TFPI mAbの影響を示す図である。FXの活性化を、MDA-MB 231細胞の単層に重層した25mM HEPES、137mM NaCl、3.5mM KCl、5mM CaCl、1mg/ml BSA(0.1%) pH7.4の緩衝液中の0〜20nM mAb (Hz mAbTFPI 2021またはmAb 2974)、2.5nM fl-TFPI、100pM FVIIaおよび50nM FXの存在下で測定した。生じたFXa活性を、S-2765を用いて405nMでの吸光度の増加により測定されるアミド分解アッセイにおいて決定した。
図14】mAbTFPI 2021 (「mAb4F36」)およびmAb2974との結合に対するTFPI Kunitz 2ドメイン中の選択された残基の単一アミノ酸アラニン置換の影響(n=2)を示す図である。選択された残基は、mABTFPI 2021結合エピトープの部分である。アミノ酸残基の番号付けは、図10Cに示すとおりである。
図15】対照IgG(血友病)またはマウス抗TFPI抗体であるTFPI-4F36A1B2(「4F36」、MuTFPI4F36)を用いる処置の後の一過性血友病ウサギにおいて測定した表皮出血時間および血液喪失を示す図である。
図16】HzTFPI4F36(「抗TFPI」、mAbTFPI 2021)(2mg/kg)またはNovoSeven(9mg/kg)で出血の誘導の5分後に処置した、抗体により誘導される血友病のウサギの「要求に応じた」処置における表皮出血時間(単独の観察;平均±SEM)および血液喪失(平均+SEM)を示す図である。出血は、1時間(3600秒)観察した。
図17】HzTFPI4F36(「抗TFPI」、mAbTFPI 2021)(用量:0.5、1、2mg/kg)またはアイソタイプ対照抗体で出血の誘導の35分前に前処置した場合の、抗体により誘導される血友病のウサギの表皮出血時間(単独の観察;平均±SEM)および血液喪失(平均+SEM)を示す図である。出血は、1時間(3600秒)観察した。
図18】抗FVIII抗体での刺激、抗TFPI抗体の投与(「抗TFPI ab」、MuTFPI4F36)、および続いて出血させた後の個別の動物において測定した血小板数を示す図である。これは、本明細書に記載されるように対照血友病モデルおよびマウス抗TFPI抗体4F36(MuTFPI4F36)の存在下で行った。
図19】0時間にて20mg/kg HzTFPI4F36が投与されたウサギにおける遊離HzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)の血漿濃度を示す図である。表皮出血実験を、96時間(4日)、168時間(7日)および240時間(10日)で行った。点線は、用量応答研究において見出されたHzTFPI4F36の「有効濃度」範囲を示す(図17を参照されたい)。
図20】左のパネル:血漿HzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)(左の軸:○)および表皮出血時間(平均±SEM;■)を示す図である。右のパネル: 20 mg/kg HzTFPI4F36(n=8)またはアイソタイプ対照抗体(n=12)で出血の誘導の4、7または10日前に前処置した場合の、抗体により誘導される血友病のウサギにおける血漿HzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)(左の軸○)および血液喪失(平均+SEM;■)。出血は、1時間(3600秒)観察した。
図21】サルへのIVおよびSCでのHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)投与後の血漿濃度レベルを示す図である。下の3つのプロットにおいて、2匹のサルに3種の用量のHzTFPI4F36を2週間の間隔で投与した。下の左のプロットにおいて、2、20および80mg/kgの3種の用量を投与し、下の中央のプロットにおいて、20、80および160mg/kgの3種の用量を投与し、下の右のプロットにおいて、80、160および200mg/kgの3種の用量を投与した。上の左のプロットにおいて、20mg/kgの単独用量を3匹のサルに投与した。上の右のプロットにおいて、単独IV用量を3匹のサルに投与した。プロットにおいて、点は個別の観測を表し、線はモデルへの適合を表す。
図22】毎日SC投与される1mg/kgのHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)のシミュレーションを示す図である。水平な実線は、シミュレーションした血漿濃度レベルを表し、水平な点線は、効果データから導かれる高いほうの効力のある濃度を表す。
図23】3週間毎に静脈内投与される15mg/kgのHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)のシミュレーションを示す図である。水平な実線は、シミュレーションした血漿濃度レベルを表し、水平な点線は、効果データから導かれる高いほうの効力のある濃度を表す。
図24】2週間毎に静脈内投与される20mg/kgのHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)のシミュレーションを示す図である。水平な実線は、シミュレーションした血漿濃度レベルを表し、水平な点線は、効果研究から導かれる予測される標的の飽和を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、ヒトTFPIのアミノ酸配列を示す(シグナルペプチド配列は省略する)。
【0018】
配列番号2は、抗体の結合エピトープを決定するために用いた構築物のアミノ酸配列を示す。この構築物は、ヒトTFPIからのアミノ酸91〜150とC末端His6タグとを含む。
【0019】
配列番号3、5および4は、MuTFPI4F36(TFPI-4F36A1B2)モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)についてのポリヌクレオチド(センスおよびアンチセンス)およびポリペプチド配列を示す。配列番号6は、MuTFPI4F36(TFPI-4F36A1B2)モノクローナル抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0020】
配列番号7、9および8は、MuTFPI4F36(TFPI-4F36A1B2)モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)についてのポリヌクレオチド(センスおよびアンチセンス)およびポリペプチド配列を示す。配列番号10は、MuTFPI4F36(TFPI-4F36A1B2)モノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0021】
配列番号11は、重鎖可変ドメイン増幅に用いたリバースプライマーの配列を示し、配列番号12は、軽鎖増幅に用いたリバースプライマーの配列を示す。
【0022】
配列番号13〜15は、ヒト化モノクローナル抗体HzTFPI4F36(mAbTFPI2021)の軽鎖可変ドメイン(VL)についてのそれぞれセンスポリヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0023】
配列番号16〜18は、ヒト化モノクローナル抗体HzTFPI4F36(mAbTFPI2021)の重鎖可変ドメイン(VH)についてのそれぞれセンスポリヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を示す。
【0024】
配列番号19〜21は、ヒト化モノクローナル抗体HzTFPI4F36(mAbTFPI2021)の軽鎖(LC) についてのそれぞれセンスポリヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を示す。
【0025】
配列番号22〜24は、ヒト化モノクローナル抗体HzTFPI4F36(mAbTFPI2021)の重鎖(HC)についてのそれぞれセンスポリヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0026】
配列番号25〜26は、CDRグラフト化HzTFPI4F36の軽鎖可変ドメインについてのそれぞれ核酸およびアミノ酸配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0027】
配列番号27〜28は、CDRグラフト化HzTFPI4F36の重鎖可変ドメインのそれぞれ核酸およびアミノ酸配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0028】
配列番号29は、CDRグラフト化HzTFPI4F36の軽鎖(ヒトカッパ鎖)のアミノ酸配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0029】
配列番号30は、ヒトIgG4 (S241P)であるCDRグラフト化HzTFPI4F36の重鎖のアミノ酸配列を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0030】
配列番号31は、MuTFPI4F36の軽鎖のヒト化に用いた生殖系列配列VKII_A18/JK4を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0031】
配列番号32は、MuTFPI4F36の重鎖のヒト化に用いた生殖系列配列VH3_21/JH6を示す。シグナルペプチド配列は省略する。
【0032】
配列番号33は、MuTFPI4F36A1B2重鎖Fabのアミノ酸配列を示す。シグナルペプチドは省略する。
【0033】
配列番号34は、HzTFPI4F36重鎖Fabのアミノ酸配列を示す。シグナルペプチドは省略する。
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、TFPIと結合する抗体に関する。抗体は、好ましくは、TFPIと特異的に結合し、すなわち、これらはTFPIと結合するが、その他の分子と結合しないか、またはより低い親和性で結合する。特に、本発明は、TFPIと結合し、その活性を調節する抗体に関する。本発明の抗体は、よって、凝固時間を短くする能力を有し得る。例えば、本発明の抗体は、ヒトFVIII欠損血漿における凝固時間を短くするか、またはヒト全血のトロンボエラストグラフィ(TEG)分析において測定される凝固のための時間を低減する能力を有し得る。本発明は、治療用および医薬用のようなこのような抗体の使用にも関する。
【0035】
TFPIとの用語は、本明細書で用いる場合、任意の適切な生物に由来し得るTFPIの任意の天然形を包含する。例えば、本明細書に記載されるように用いられるTFPIは、ヒト、マウス、ラット、霊長類、ウシ、ヒツジまたはブタのTFPIのような哺乳動物TFPIであり得る。好ましくは、TFPIはヒトTFPIである。TFPIは、適切な細胞内で翻訳後プロセシングを受けたTFPIタンパク質のようなTFPIの成熟形であり得る。このような成熟TFPIタンパク質は、例えばグリコシル化されていることがある。TFPIは、全長TFPIタンパク質であってよい。TFPIとの用語は、このようなTFPI分子のバリアント、アイソフォームおよびその他の同族体も包含する。バリアントTFPI分子は、一般的に、FXaの触媒活性を中和する能力またはTF-FVIIa/FXaの複合体を阻害する能力のような天然TFPIと同じタイプの活性を有することを特徴とする。
【0036】
本発明の抗体は、TFPIと結合する能力を有する。好ましくは、本発明の抗体は、TFPIと特異的に結合する。つまり、本発明の抗体は、好ましくは、それが別の分子と結合する結合親和性よりも大きい結合親和性でTFPIと結合する。本発明の抗体は、本明細書に記載される任意の標的分子のような本明細書に記載されるTFPI分子と結合または特異的に結合する能力を有し得る。
【0037】
「結合親和性」との用語は、本明細書において、2つの分子、例えば抗体またはそのフラグメントと抗原との間の非共有相互作用の強度の指標として用いられる。「結合親和性」との用語は、1価の相互作用(固有活性)を記載するために用いられる。
【0038】
1価相互作用による2つの分子、例えば抗体またはそのフラグメントと抗原との間の結合親和性は、解離定数(KD)の決定により定量し得る。次に、KDは、複合体の形成および解離の動態の測定により、例えばSPR法(Biacore)により決定できる。1価複合体の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ会合速度定数ka(またはkon)および解離速度定数kd(またはkoff)とよばれる。KDは、KD=kd/kaの等式によりkaおよびkdと関連付けられる。
【0039】
上記の定義に従って、異なる分子相互作用に関連する結合親和性、例えばある所与の抗原についての異なる抗体の結合親和性の比較は、個別の抗体/抗原複合体についてのKD値を比較することにより比較できる。
【0040】
同様に、相互作用の特異性は、対象の相互作用、例えば抗体と抗原との間の特異的相互作用についてのKD値を、対象でない相互作用のKD値とともに決定して比較することにより評価できる。
【0041】
典型的には、標的に関する抗体についてのKDは、無関係の物質または環境における付随物質のようなその他の非標的分子に関するKDよりも2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍低い。より好ましくは、KDは、50倍低く、例えば100倍低いかまたは200倍低く、さらにより好ましくは500倍低く、例えば1,000倍低いかまたは10,000倍低い。
【0042】
この解離定数の値は、公知の方法により直接決定でき、例えばCaceciら(Byte 9:340〜362頁、1984)に記載されるもののような方法により複合体混合物についてさえ計算できる。例えば、KDは、WongおよびLohman(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90、5428〜5432頁、1993)により開示されるような2重フィルタニトロセルロースフィルタ結合アッセイを用いて確立し得る。標的に対する抗体のようなリガンドの結合能力を評価するためのその他の標準的なアッセイは、例えばELISA、ウェスタンブロット、RIAおよびフローサイトメトリー分析を含んで当該技術において既知である。抗体の結合動態および結合親和性は、例えばBiacore(商標)システムを用いることによる表面プラズモン共鳴(SPR)のような当該技術において既知の標準的なアッセイにより評価できる。
【0043】
標的との抗体の結合が、別の抗体のようなその標的の別のリガンドによる標的との結合と比較される競合結合アッセイを行うことができる。50%阻害が生じる濃度は、Kiとして知られる。理想条件下では、Kiは、KDと等価である。Ki値は、KDより低くなることはないので、Kiの測定は、KDについての上限を得るために簡便に置換できる。
【0044】
本発明の抗体は、1×10-7M以下、1×10-8M以下、または1×10-9M以下、または1×10-10M以下、1×10-11M以下、または1×10-12M以下のその標的についてのKDを有し得る。
【0045】
その標的と特異的に結合する抗体は、その標的と高い親和性で結合でき、つまり、上で論じるように低いKDを示し、その他の非標的分子とより低い親和性で結合し得る。例えば、抗体は、非標的分子と1×10-6M以上、より好ましくは1×10-5M以上、より好ましくは1×10-4M以上、より好ましくは1×10-3M以上、さらにより好ましくは1×10-2M以上のKDで結合し得る。本発明の抗体は、好ましくは、別の非標的分子との結合についてのその親和性よりも少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍もしくは10,000倍またはそれより大きい親和性でその標的と結合できる。
【0046】
標的分子は、天然TFPI分子、完全成熟TFPI分子または全長TFPI分子のような本明細書に記載される任意のTFPI分子であり得る。好ましいTFPI分子は、完全に成熟した天然の全長哺乳動物TFPI分子である。例えば、TFPI分子は、配列番号1のアミノ酸配列または本明細書に記載されるそのフラグメントもしくはその他のバリアントからなることができるか、あるいはそれらを含み得る。
【0047】
標的分子は、TFPI分子のフラグメントのようなTFPI分子のバリアントであり得る。例えば、標的分子は、抗体結合のために適切なエピトープを維持するTFPIのフラグメントまたはその他のバリアントであり得る。例えば、標的分子は、本明細書に記載されるエピトープを保持するTFPIのフラグメントまたはその他のバリアントであり得る。標的分子は、このようなエピトープを含み得る。
【0048】
ある実施形態において、標的分子は、全長TFPI分子である。全長TFPI分子は、本明細書に記載される第1、第2および第3のKunitzドメインを含み得る。全長TFPI分子は、本明細書に記載される第1、第2および第3のKunitzドメインと、本明細書に記載されるカルボキシ末端領域も含み得る。全長TFPI分子は、TFPI遺伝子から発現されるかまたはTFPI発現細胞により分泌される全長TFPIポリペプチドのような天然TFPI分子であり得る。全長TFPI分子は、血漿中で遊離の形態で循環しているのが見出されるかまたは内皮細胞のような細胞と結合している天然TFPI分子であり得る。全長TFPI分子は、本明細書に記載される天然短縮型TFPI分子のような短縮型TFPI分子でない。
【0049】
ある実施形態において、標的分子は、短縮型TFPI分子である。例えば、短縮型TFPI分子は、カルボキシ末端切断を含み得る。例えば、TFPIのいくつかの天然短縮型が既知である。これらは、TFPIのカルボキシ末端部分の一部または全部の切断を含み得る。これらは、Kunitzドメインの1つもしくは複数の一部または全部の切断をさらに含み得る。例えば、TFPIの短縮型は、カルボキシ末端部分と、Kunitz第3ドメインの一部または全部との欠失を含み得る。
【0050】
例えば、TFPIのある天然短縮型は、全長TFPI分子のアミノ酸1〜161のみを含む(本明細書においてTFPI(1〜161)という)。TFPI(1〜161)は、全長分子と比較して活性が低減されたTFPIの活性形である。TFPI(1〜161)は、全長TFPIと構造が異なり、標的分子としてのTFPI(1〜161)に対して作製された抗体は、よって、全長TFPIに対して作製された抗体とは異なることがある。
【0051】
TFPIの短縮型は、TFPI(1〜161)中に存在する全長TFPIの領域に対する抗体を標的にすることが望まれる場合に、適切な標的分子であり得る。しかし、短縮型TFPIは、好ましくは、抗体を、天然短縮型TFPIのようなTFPIの特定の短縮型に対して指向させることが望まれる場合に標的分子として用いられる。
【0052】
ある実施形態において、標的分子は、TFPIの天然形である。これは、in vivoに存在する形態で用いてよい。例えば、標的分子は、上で論じるような全長天然TFPIであり得る。標的分子は、上で論じるような短縮型天然TFPIであり得る。標的分子は、血漿中にin vivoで存在する形態のTFPIであり得る。標的分子は、血漿中にin vivoで存在するのと同じ様式でリポタンパク質と結合しているTFPIであり得る。標的分子は、内皮細胞と結合しているTFPIのようなin vivoで生じるのと同じ様式で細胞と結合しているTFPIであり得る。本発明の抗体は、TFPIのこれらの天然形のいずれの1つまたは複数とも結合し得る。本発明の抗体は、TFPIのこれらの天然形の全てと結合し得るか、またはいくつかに結合するがその他とは結合しないでこれらの異なる形態を区別することができる。
【0053】
ある実施形態において、標的分子は、TFPIのKunitz第2ドメインであるかまたはそれを含む。このような標的分子は、配列番号1のアミノ酸97〜147または配列番号1のアミノ酸91〜150または別のTFPIポリペプチドからの等価なKunitzドメイン2領域を含み得る。このような標的分子は、配列番号2または配列番号2のアミノ酸3〜58または10〜50を含み得る。標的分子は、TFPIのKunitz第2ドメインのフラグメントであり得るか、またはそれを含み得る。例えば、標的分子は、Kunitz第2ドメインからの5以上、8以上、10以上、12以上または15以上のアミノ酸を含み得る。
【0054】
標的分子は、TFPIまたは特定のKunitzドメインもしくはTFPIのC末端部分のようなTFPIの特定の領域の5以上、8以上、10以上、12以上または15以上の表面露出残基を含み得る。表面露出残基は、40%より大きい相対的近づきやすさを有する残基である。例えば、TFPIのKunitz 2ドメイン(配列番号1)について、以下のアミノ酸は、40%より大きい相対的近づきやすさを有する:94〜95、98、100〜110、118〜121、123〜124、131、134、138〜142および144〜145(図5を参照されたい)。標的分子は、これらの残基の5以上、8以上、10以上、12以上または15以上を含むTFPIのフラグメントのように、これらの残基の5以上、8以上、10以上、12以上または15以上を含み得る。
【0055】
標的分子は、TFPIからの既知のエピトープを含み得る。
【0056】
「エピトープ」との用語は、本明細書で用いる場合、「抗原結合ポリペプチド」(Ab)とその対応する「抗原」(Ag)との間の分子相互作用の関係において規定される。本明細書で用いる場合、Abとの用語は、対応するAgと特異的に結合する抗体またはそのフラグメントを含む。抗原結合フラグメントの例は、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、F(ab)S、Fv(典型的には抗体の単独の腕のVLおよびVHドメイン)、単鎖Fv(scFv;例えばBirdら、Science 1988;242:42S〜426頁;およびHustonらPNAS 1988;85:5879〜5883頁を参照されたい)、dsFv、Fd(典型的にはVHおよびCHIドメイン)およびdAb(典型的にはVHドメイン)フラグメント;VH、VL、VhHおよびV-NARドメイン;単一のVH鎖と単一のVL鎖とを含む1価分子;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびカッパボディ(kappa bodies)(例えばIllらProtein Eng 1997;10:949〜57頁を参照されたい);ラクダIgG;IgNAR;ならびに単離CDRまたは抗原結合残基もしくはポリペプチドが機能的抗体フラグメントを形成するように一緒に会合または連結できる1または複数の単離CDRもしくは機能的パラトープを含む。種々のタイプの抗体フラグメントが、例えばHolligerおよびHudson、Nat Biotechnol 2005;2S:1126〜1136頁;WO2005040219および米国特許出願公開第20050238646号および第20020161201号に記載されているかまたは概説されている。
【0057】
抗体フラグメントは、従来の組換えまたはタンパク質工学技術を用いて得ることができ、フラグメントは、インタクトな抗体について行うことができるのと同じ方法で抗原結合またはその他の機能についてスクリーニングできる。
【0058】
抗原(Ag)との用語は、免疫適格性脊椎動物を免疫してAgを認識する抗体(Ab)を生成するために用いられる分子状物体のことをいう。本明細書において、Agは、より広範に名付けられ、全般的に、Abにより特異的に認識される標的分子を含み、よってAbを産生させるための免疫化プロセスに用いられるフラグメントまたは擬似分子を含むことを意図する。よって、TFPIのkunitz第2ドメイン(K2)とのAbの結合について、単離K2、TFPIの短縮型およびその他のバリアントを含む全長TFPIの両方がAgとよばれる。
【0059】
一般的に、「エピトープ」との用語は、Abが特異的に結合するAg上の範囲または領域、すなわちAbと物理的に接触する範囲または領域のことをいう。タンパク質エピトープは、Abとの結合に直接関与するAg中のアミノ酸残基(エピトープの免疫優性構成要素ともよばれる)と、Abにより効果的に遮蔽されるAgのアミノ酸残基(言い換えると、アミノ酸残基がAbの「溶媒排除表面」および/または「フットプリント」内にある)のような結合に直接関与しないその他のアミノ酸残基とを含み得る。エピトープとの用語は、本明細書において、そうでないと記載しない限り(例えば、いくつかの文脈において本発明は、特定のアミノ酸残基と直接結合する抗体に関する)、抗TFPI抗体または本発明による別のK2特異的作用物質と特異的に結合するTFPI中のK2の任意の特定の領域内の両方のタイプの結合部位を含む。K2は、いくつかの異なるエピトープを含むことができ、これらは、限定されないが、(1)直鎖状ペプチド抗原決定基、(2)成熟K2の立体構造内で互いに近傍に位置する1または複数の非隣接アミノ酸からなる立体構造的抗原決定基および(3)全体的または部分的に、炭水化物基のようにK2と共有結合する分子構造からなる翻訳後抗原決定基を含み得る。
【0060】
ある所与の抗体(Ab)/抗原(Ag)対についてのエピトープは、多様な実験的およびコンピュータによるエピトープマッピング法を用いて、異なる詳細度のレベルで規定して特徴決定できる。実験方法は、突然変異誘発、X線結晶学、核磁気共鳴(NMR)分光法、水素重水素交換質量分析(HX-MS)および種々の競合結合法を含む。それぞれの方法は独特の原理に依拠するので、エピトープの説明は、それが決定された方法と密接につながる。よって、ある所与のAb/Ag対についてのエピトープは、用いたエピトープマッピング法に依存して異なって規定される。
【0061】
その最も詳細なレベルにおいて、AgとAbとの相互作用のためのエピトープは、Ag-Ab相互作用に存在する原子の接触を規定する空間的な座標、および結合熱力学に対するそれらの相対的な貢献度に関する情報により規定できる。詳細度がより低いレベルにおいて、エピトープは、AgとAbとの原子の接触を規定する空間的な座標により特徴決定できる。さらにより詳細度が低いレベルにおいて、エピトープは、特定の基準、例えばAbおよびAg中の原子間の距離により規定されるそれが含むアミノ酸残基により特徴決定できる。さらにより詳細度が低いレベルにおいて、エピトープは、機能、例えば他のAbとの競合的結合により特徴決定できる。エピトープは、別のアミノ酸への置換がAbとAgとの間の相互作用の特徴を変更するアミノ酸残基を含むというように、より包括的に規定することもできる。
【0062】
Ab、例えばFabフラグメントとそのAgとの複合体の空間的な座標により規定されるX線による結晶構造の関係において、エピトープとの用語は、本明細書において、文脈によりそうでないと明記または否定しない限り、Ab中の重原子から4Å以内の距離に重原子(すなわち非水素原子)を有することを特徴とするK2残基として特に定義される。
【0063】
用いるエピトープマッピング法に依存するエピトープの説明および規定が、異なるレベルの詳細度で得られるという事実から、同じAg上の異なるAbについてのエピトープ同士の比較を、異なるレベルの詳細度で同様に行い得ることになる。
【0064】
アミノ酸レベルで説明される、例えばX線構造から決定されるエピトープは、これらがアミノ酸残基の同じ組を含有するならば、同一であると言える。エピトープは、少なくとも1つのアミノ酸がこれらのエピトープにより共有されるならば、オーバーラップすると言える。エピトープは、いずれのアミノ酸残基もこれらのエピトープにより共有されないならば、別個(独特)であると言える。
【0065】
競合的結合により特徴決定されるエピトープは、対応するAbの結合が互いに排他的である、すなわち一方のAbの結合が他方のAbの同時の結合を排除するならば、オーバーラップすると言える。エピトープは、Agが両方の対応するAbの結合を同時に許容できるならば、別個(独特)であると言える。
【0066】
「パラトープ」との用語の定義は、観点を逆にすることによる「エピトープ」の上記の定義に由来する。つまり、「パラトープ」との用語は、Agが特異的に結合する、すなわちAgと物理的に接触するAb上の範囲または領域のことをいう。
【0067】
Ab、例えばFabフラグメントとそのAgとの複合体の空間的な座標により規定されるX線による結晶構造の関係において、パラトープとの用語は、本明細書において、文脈によりそうでないと明記または否定しない限り、K2中の重原子から4Å以内の距離に重原子(すなわち非水素原子)を有することを特徴とするAg残基として特に定義される。
【0068】
ある所与の抗体(Ab)/抗原(Ag)対についてのエピトープおよびパラトープは、通常の方法により同定し得る。例えば、エピトープの全般的な位置は、異なるフラグメントまたはバリアントTFPIポリペプチドと結合する抗体の能力を評価することにより決定し得る。抗体と接触するTFPI内の特定のアミノ酸(エピトープ)と、TFPIと接触する抗体内の特定のアミノ酸(パラトープ)も、実施例に記載するもののような通常の方法を用いて決定し得る。例えば、抗体と標的分子を組み合わせて、Ab/Ag複合体を結晶化させてよい。複合体の結晶構造を決定して、抗体とその標的との間の相互作用の具体的な部位を同定するために用いることができる。
【0069】
本発明者らは、本明細書に記載されるマウスMuTFPI4F36抗体およびヒト化HzTFPI4F36抗体と、TFPIのKunitz 2ドメイン(K2)との間の相互作用についてこのような分析を行った。この分析については、実施例においてより詳細に記載する。
【0070】
本発明による抗体のパラトープは、以下のように規定し得る:該抗体の軽鎖は、配列番号15の残基E31、S32、D33、Y37、A96、T97およびF99を含み、該抗体の重鎖は、配列番号18の残基N31、S52、R53、S54、Y57、Y59、F60、P61、D62、Q65、Y102、D103およびD106を含む。
【0071】
本発明による抗体の軽鎖は、よって、配列番号15の:
・31位に相当する位置にE、
・32位に相当する位置にS、
・33位に相当する位置にD、
・37位に相当する位置にY、
・96位に相当する位置にA、
・97位に相当する位置にT、および
・99位に相当する位置にF
のアミノ酸残基を含むことができ、該抗体の重鎖は、配列番号18の:
・31位に相当する位置にN、
・53位に相当する位置にR、
・54位に相当する位置にS、
・57位に相当する位置にY、
・59位に相当する位置にY、
・60位に相当する位置にF、
・61位に相当する位置にP、
・62位に相当する位置にD、
・65位に相当する位置にQ、
・102位に相当する位置にY、
・103位に相当する位置にD、および
・106位に相当する位置にD
のアミノ酸残基を含むことができる。
【0072】
重鎖は、配列番号18の52位に相当する位置にSをさらに含み得る。
【0073】
本発明による抗体の軽鎖は、配列番号15の98位に相当する位置にHをさらに含み、重鎖は、配列番号18の56位に相当する位置にSをさらに含み得る。
【0074】
MuTFPI4F36(実施例4)について、エピトープは、配列番号2のアミノ酸E10、E11、P13、R17、Y19、T21、Y23、Q28、Q31、E33、R34、F35、K36およびL50に相当する配列番号1のアミノ酸E100、E101、P103、R107、Y109、T111、Y113、Q118、Q121、E123、R124、F125、K126およびL140で構成されることが見出された。パラトープは、配列番号4のE31、S32、D33、Y37、A96、T97、H98およびF99の軽鎖アミノ酸残基と、配列番号8のN31、R53、S54、S56、Y57、Y59、F60、P61、D62、Q65、Y102、D103およびD106の重鎖アミノ酸残基とで構成されることが見出された。
【0075】
HzTFPI4F36(実施例5)について、エピトープは、配列番号2のアミノ酸E10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、K36およびL50に相当する配列番号1のアミノ酸E100、E101、D102、P103、R107、Y109、T111、Y113、F114、N116、Q118、Q121、C122、E123、R124、F125、K126およびL140で構成されることが見出された。パラトープは、配列番号15のE31、S32、D33、Y37、A96、T97およびF99の軽鎖アミノ酸残基と、配列番号18のN31、S52、R53、S54、Y57、Y59、F60、P61、D62、Q65、Y102、D103およびD106の重鎖アミノ酸残基とで構成されることが見出された。
【0076】
本発明による抗体は、本明細書に具体的に開示される本発明の抗体と同じTFPIのエピトープまたはドメインと結合し得る。例えば、本発明のその他のまだ同定されていない抗体は、TFPIとのそれらの結合を、モノクローナル抗体MuTFPI4F36および/またはHzTFPI4F36のものと比較することによるか;あるいはまだ同定されていない抗体の機能をMuTFPI4F36および/またはHzTFPI4F36のものと比較することにより同定できる。このような同定を目的として用い得る分析およびアッセイは、実施例6に記載されるFXa阻害アッセイおよび実施例7に記載されるFVIIa/TF/FXa阻害アッセイ;実施例8に記載される表面プラズモン共鳴分析のような結合相互作用分析;実施例9に記載されるヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)上のTFPIの中和、および実施例10に記載されるMDA-MB 231ヒト乳癌細胞上のTF/FVIIa活性のTFPI阻害の中和のような細胞アッセイのようなTFPI中和アッセイを含む。
【0077】
ある実施形態において、本発明の抗体は、本明細書に記載されるMuTFPI4F36またはHzTFPI4F36抗体と同じエピトープまたは領域に結合し得る。TFPIとのMuTFPI4F36およびHzTFPI4F36の結合を、本明細書においてより詳細に記載する。本発明の抗体は、MuTFPI4F36またはHzTFPI4F36抗体と同じTFPIのエピトープと結合する抗体であり得る。このことは、これが、上記のTFPIの特定のアミノ酸と接触することを含み得る。例えば、本発明の抗体は、それが配列番号2のアミノ酸E10、E11、P13、R17、Y19、T21、Y23、Q28、Q31、E33、R34、F35、K36およびL50と接触するような様式で、またはそれが配列番号2のアミノ酸E10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、K36およびL50と接触するような様式でTFPIと結合し得る。
【0078】
本発明の抗体は、配列番号2のE10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、F35、K36およびL50からなる群より選択される1または複数の残基を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0079】
本発明の抗体は、配列番号2の残基E10を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0080】
本発明の抗体は、配列番号2の残基E11を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0081】
本発明の抗体は、配列番号2の残基D12を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0082】
本発明の抗体は、配列番号2の残基P13を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0083】
本発明の抗体は、配列番号2の残基R17を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0084】
本発明の抗体は、配列番号2の残基Y19を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0085】
本発明の抗体は、配列番号2の残基T21を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0086】
本発明の抗体は、配列番号2の残基Y23を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0087】
本発明の抗体は、配列番号2の残基F24を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0088】
本発明の抗体は、配列番号2の残基N26を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0089】
本発明の抗体は、配列番号2の残基Q28を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0090】
本発明の抗体は、配列番号2の残基Q31を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0091】
本発明の抗体は、配列番号2の残基C32を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0092】
本発明の抗体は、配列番号2の残基E33を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0093】
本発明の抗体は、配列番号2の残基R34を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0094】
本発明の抗体は、配列番号2の残基F35を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0095】
本発明の抗体は、配列番号2の残基K36を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0096】
本発明の抗体は、配列番号2の残基L50を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0097】
本発明の抗体は、配列番号2の残基E10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、K36およびL50を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0098】
本発明の抗体は、配列番号2の残基E10、E11、P13、R17、Y19、T21、Y23、Q28、Q31、E33、R34、F35、K36およびL50を含むエピトープと結合できるものであり得る。
【0099】
本発明の抗体は、TFPIまたは本明細書に記載される別の適切な標的との結合について本発明の別の抗体と競合する能力を有し得る。例えば、本発明の抗体は、TFPIあるいはMuTFPI4F36もしくはHzTFPI4F36抗体が結合するTFPIの適切なフラグメントまたはバリアントとの結合について、本明細書に記載されるMuTFPI4F36またはHzTFPI4F36抗体と交差競合し得る。このような交差競合性抗体は、標準的な結合アッセイにおいて本発明のわかっている抗体と交差競合するそれらの能力に基づいて同定できる。例えば、例えばBiacore(商標)システムを用いることによるSPR、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーを用いて、交差競合を示し得る。このような交差競合は、2つの抗体が同一、オーバーラップするまたは類似のエピトープと結合することを示唆し得る。
【0100】
よって、本発明の抗体は、以下の商業的に入手可能なモノクローナル抗体のいずれの1または複数よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できるものであり得る:mAb0281(Ab systems)および/またはmAb4904(American Diagnostica)および/またはmAb2974(R&D systems)および/またはmAb29741(R&D systems)。
【0101】
本発明の抗体は、よって、試験抗体が、本発明のわかっている抗体と、標的分子上の結合部位について競合できるか否かを評価する結合アッセイを含む方法により同定し得る。競合的結合アッセイを行うための方法は、当該技術において公知である。例えば、これらは、本発明のわかっている抗体を、標的分子と、抗体が標的分子と結合できる条件下で結合させるステップを含み得る。抗体/標的複合体を、次いで、試験抗体に曝露し、試験抗体が、抗体/標的複合体から本発明の抗体を置き換えることができる程度を評価し得る。代替法は、試験抗体を、標的分子と、抗体結合を可能にする条件下で接触させるステップと、次いで、該標的分子と結合できる本発明の抗体を加えるステップと、本発明の抗体が、抗体/標的複合体から試験抗体を置き換えることができる程度を評価するステップとを含み得る。
【0102】
標的との本発明の抗体の結合を阻害する試験抗体の能力は、試験化合物が本発明の抗体と、標的への結合について競合できること、つまり試験抗体が、本発明のわかっている抗体と同じTFPIタンパク質上のエピトープまたは領域と結合することを示す。このような方法において本発明のわかっている抗体と競合すると同定された試験抗体も、本発明による可能性のある抗体である。試験抗体が、本発明のわかっている抗体と同じ領域でTFPIと結合し、本発明のわかっている抗体と競合できるという事実は、試験抗体が、わかっている抗体と同じ結合部位にてリガンドとして作用でき、試験抗体が、よって、わかっている抗体の作用を模倣し得ることを示唆する。このことは、本明細書に記載されるように試験化合物の存在下でTFPIの活性を評価することにより確認できる。
【0103】
本発明のわかっている抗体は、マウスTFPI-4F36A1B2(4F36およびMuTFPI4F36ともいう)抗体のような本明細書に記載される抗体、またはヒト化TFPI-4F36A1B2抗体(そのうちの1つは、本明細書においてHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)という)のようなTFPIと結合する能力を保持する本明細書で記載されるそれらの任意のバリアントもしくはフラグメントであり得る。本発明の抗体は、本明細書に記載されるMuTFPI4F36抗体またはHzTFPI4F36のようなTFPIと結合する能力を保持する本明細書に記載されるその任意のバリアントもしくはフラグメントと同じエピトープと結合し得る。
【0104】
本発明の抗体は、実施例においてさらに記載されるMuTFPI4F36エピトープと同一、オーバーラップするまたはそれに類似するエピトープと結合し得る。本発明の抗体は、実施例においてさらに記載されるHzTFPI4F36エピトープと同一、オーバーラップするまたはそれに類似するエピトープと結合し得る。本発明の抗体は、MuTFPI4F36および/またはHzTFPI4F36のエピトープに属する1または複数のアミノ酸残基と結合でき、好ましくは特異的に結合し得る。例えば、本発明の抗体は、MuTFPI4F36またはHzTFPI4F36の結合について上に示したアミノ酸残基の5以上、6以上、7以上、8以上または10以上と結合し得る。例えば、配列番号2のポリペプチドと接触する場合、本発明の抗体は、該ポリペプチドと結合でき、アミノ酸E10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、F35、K36およびL50、またはこれらのアミノ酸の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17もしくは少なくとも18のようなこれらのアミノ酸の部分集合と接触する。
【0105】
特異的結合は、標的でない分子との抗体の結合に関連して評価し得る。この比較は、標的と、そして別の分子と結合する抗体の能力を比較することにより行い得る。この比較は、KDまたはKiの評価において上述したようにして行い得る。このような比較に用いられる他の分子は、標的分子でない任意の分子であり得る。好ましくは、他の分子は、標的分子と同一でない。好ましくは、該標的分子は、標的分子のフラグメントでない。
【0106】
本発明の抗体のKDは、0.8nM未満、例えば0.7nM未満、例えば0.6nM未満、例えば0.5nM未満、例えば0.4nM未満、例えば0.3nM未満、例えば0.2nM未満、例えば0.1nM未満、例えば0.05nM未満、例えば0.025nM未満、例えば0.015nM未満、例えば0.015nM〜0nMであり得る。
【0107】
特異的結合を決定するために用いられる他の分子は、標的と構造または機能が無関係であり得る。例えば、他の分子は、環境において無関係の物質または付随する物質であり得る。
【0108】
特異的結合を決定するために用いられる他の分子は、標的分子と同じin vivo経路に関与する別の分子であり得る。例えば、標的がTFPIまたはそのフラグメントもしくはバリアントである場合、比較に用いられる他の分子は、血液凝固カスケードの部分を形成するタンパク質であり得る。本発明の抗体が別のこのような分子を超えてTFPIに対して特異性を有することを確実にすることにより、不要なin vivo交差反応性を回避し得る。
【0109】
比較に用いられる他の分子は、標的分子と関連し得る。例えば、特異的エピトープとのみ結合する抗体を同定することが望まれる場合、比較のための他の分子は、そのエピトープが欠失しているかまたは破壊されているTFPI分子であり得る。比較に用いられる他の分子は、よって、問題の抗体が結合する標的分子とは異なる別の標的分子であり得る。
【0110】
本発明の抗体は、標的分子と関連するいくつかの分子と結合する能力を保持し得る。例えば、全長成熟ヒトTFPIを標的として用い得るが、抗体は、例えばヒトTFPIの未熟形、ヒトTFPIのフラグメントもしくは短縮型、リポタンパク質もしくは細胞と結合したTFPI、または他の哺乳動物TFPIのような他の種からのTFPIとも結合できるものであり得る。
【0111】
代わりに、本発明の抗体は、特定の標的分子に対する特異性を有し得る。例えば、これは、本明細書に記載される1つの標的分子と結合し得るが、本明細書に記載される異なる標的分子と結合しないか、または著しく低減された親和性で結合することがある。例えば、全長成熟ヒトTFPIを標的として用い得るが、この標的と結合する抗体は、例えばヒトTFPIの未熟形、ヒトTFPIのフラグメントもしくは短縮型、リポタンパク質もしくは細胞と結合したTFPI、または他の哺乳動物TFPIのような他の種からのTFPIと結合することができないか、またはより低い親和性で結合することがある。
【0112】
本発明の抗体は、TFPIと結合し、そのようにすることによってTFPIの活性を阻害し得る。
【0113】
上で説明したように、TFPIは、血液凝固を下方制御する。これは、FXaの活性を阻害すること、およびFXaの存在下でTF-FVIIa複合体を阻害することにより、このことを行う。本発明の抗体により阻害されるTFPIの活性は、これらの活性のいずれかまたはこれらの任意の下流の効果であり得る。例えば、本発明の抗体は、血液凝固の増加、FXaの存在もしくはレベルの増加、またはTF-FVIIa活性の増加を導き得る。好ましくは、本発明の抗体は、(a)ヒトFVIII欠損血漿または(b)ヒト全血と接触したときの凝固時間を低減する。
【0114】
TFPI活性の測定は、血液試料中の凝固の阻害または凝固時間の低減におけるTFPIの活性を評価するステップを含み得る。例えば、このような方法は、TFPIを、血液または血漿もしくは血清のような血液凝固因子を含む血液生成物の試料と、凝固が生じる条件下で接触させるステップと、TFPIの存在により血液の凝固が阻害されたかまたは凝固時間が低減されたかを決定するステップとを含み得る。このような試料における血液凝固のレベルまたは凝固時間を、次いで、試験抗体も存在する等価な試料でのものと比較し得る。抗体試料において凝固のレベルが増加するかまたは凝固時間が低減されるならば、このことは、抗体が、試料中のTFPI活性を阻害することを示唆する。
【0115】
血液凝固は、血液自体、血漿の凝固時間を調べるか、またはTFPIの作用点の下流にある凝固カスケードの1もしくは複数の特徴を調べることにより検出し得る。例えば、方法は、試料中のFXaのレベルまたはTF-FVIIaの活性化を評価し得る。
【0116】
血液凝固および凝固時間を評価するための種々のその他の方法が、当該技術において公知である。例えば、血液凝固時間に対する抗体のいずれの効果も、実施例に記載される希釈プロトロンビン時間分析(dPT分析)を用いて評価し得る。簡単に述べると、ヒト血漿をヒトトロンボプラスチンと接触させる。血漿が凝固するまでにかかる時間を、試験抗体の存在下および非存在下で測定する。凝固時間を低減させることが予測されるFVIIa(NovoSeven(登録商標))の添加のような陽性対照を、このような分析において用いることができる。本発明の抗体は、このような方法において凝固時間を低減できる。好ましくは、本発明の抗体は、凝固時間を用量依存的な方式で低減できる。
【0117】
本発明の抗体は、dPT分析のような血漿ベースの凝固アッセイにおいて、以下の商業的に入手可能なモノクローナル抗体のいずれの1または複数よりも著しく良好にTFPIを阻害できるものであり得る:mAb0281(Ab systems)および/またはmAb4904(American Diagnostica)および/またはmAb2974(R&D systems)および/またはmAb29741(R&D systems)。
【0118】
トロンボエラストグラフィを用いて、全血試料中の凝血塊形成および線維素溶解の動態を評価し得る。凝固時間を低減するかまたは血液凝固を刺激する抗体の能力は、よって、全血試料において、抗体の存在下および非存在下で凝血塊形成にかかる時間を比較することにより同様に評価し得る。
【0119】
本発明の抗体の機能的効果を評価する方法は、よって、in vitroで行い得る。このような方法は、好ましくは、ヒト血液または血漿の試料について行う。このような試料は、正常ヒト血液もしくは血漿であるか、あるいは血液凝固に関与する1もしくは複数の因子が欠損しているかまたは補われたものであってよい。例えば、これらの方法は、正常ヒト全血、正常ヒト血漿またはFVIII欠損血漿もしくは全血を用いて行い得る。FVIII欠損血液または血漿は、適切な血液または血漿試料を、中和抗FVIII抗体と接触させることにより得ることができる。このようなin vitro法は、実施例6〜11に記載されるもののような結合相互作用分析またはTFPI中和分析であり得る。
【0120】
本発明の抗体は、血小板結合TFPIを阻害できるものであり得る。
【0121】
本発明の抗体は、可溶性TFPIを阻害できるものであり得る。
【0122】
本発明の抗体は、リポタンパク質結合TFPIを阻害できるものであり得る。
【0123】
本発明の抗体は、内皮細胞と結合しているTFPIなどの細胞結合TFPIを阻害できるものであり得る。
【0124】
本発明の抗体は、FXaが、FXa阻害アッセイにおいて測定して、その活性を少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば99〜100%保持するようにTFPIと結合できるものであり得る。
【0125】
本発明の抗体は、TFPIが上記の抗体で飽和されている場合に、FVIIa/TF/FXa阻害因子アッセイにおいて測定して、膜結合FVIIa/TF/FXaのTFPI阻害を、少なくとも55%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば100%まで、例えば100%中和できるものであり得る。
【0126】
好ましくは、本発明の抗体は、(a)ヒト全血、(b)ヒト血漿、(c)FVIII欠損ヒト全血、(d)FVIII欠損ヒト血漿、(e)FIX欠損ヒト全血または(f)FIX欠損ヒト血漿の試料中の凝固時間を低減および/または血液凝固を刺激できる。
【0127】
血液凝固を刺激するかまたは凝固時間を低減する抗体の能力を決定する方法も、in vivoで行い得る。例えば、in vivo研究は、実施例に記載されるような一過性血友病ウサギにおいて行い得る。簡単に述べると、ウサギを、抗FVIII抗体の投与により一過性血友病にすることができる。試験抗体を次いで投与し、表皮出血時間および/または血小板数を評価し得る。試験抗体の存在下での表皮出血時間の低減は、抗体が、凝固時間を低減し、血液凝固を刺激できることを示す。このような効果を有する抗体は、よって、本発明の抗体であり得る。
【0128】
本発明の抗体は、対象における遊離のTFPIが30%未満、例えば29%未満、例えば28%未満、例えば27%未満、例えば26%未満、例えば25%未満、例えば24%未満、例えば23%未満、例えば22%未満、例えば21%未満、例えば20%未満、例えば19%未満、例えば18%未満、例えば17%未満、例えば16%未満、例えば15%未満、例えば14%未満、例えば13%未満、例えば12%未満、例えば11%未満、例えば10%未満、例えば9%未満、例えば8%未満、例えば7%未満、例えば6%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば3%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0%まで低減されるようにTFPIのK2ドメインと結合できるものであり得る。
【0129】
さらに、本発明の抗体は、対象における遊離のTFPIの量が、上記のモノクローナル抗体を上記の対象に投与した後の最初の28日間、例えば最初の27日間、例えば最初の26日間、例えば最初の25日間、例えば最初の24日間、例えば最初の23日間、例えば最初の22日間、例えば最初の21日間、例えば最初の20日間、例えば最初の19日間、例えば最初の18日間、例えば最初の17日間、例えば最初の16日間、例えば最初の15日間、例えば最初の14日間、例えば最初の13日間、例えば最初の12日間、例えば最初の11日間、例えば最初の10日間、例えば最初の9日間、例えば最初の8日間、例えば最初の7日間、例えば最初の6日間、例えば最初の5日間、例えば最初の4日間、例えば最初の3日間、例えば最初の2日間、例えば最初の日の間に低減されるようにTFPIのK2ドメインと結合できるものであり得る。
【0130】
本発明の抗体は、また、血小板数の著しい減少を導かないことがある。特に、本発明の抗体は、(a)ヒト全血、(b)ヒト血漿、(c)FVIII欠損ヒト全血、(d) FVIII欠損ヒト血漿、(e)FIX欠損ヒト全血もしくは(f)FIX欠損ヒト血漿の試料、または動物でin vivoにおいて、血小板数のいずれの著しい減少を導くことなく、凝固時間を低減および/または血液凝固を刺激できるものであり得る。血小板数は、上で論じたその他の効果と同じ試料もしくは動物で評価できるか、または別個に評価できる。例えば、血小板数は、患者または実験動物から得られた血液の試料のような血液試料中で評価できる。血小板数は、上記のような一過性血友病ウサギに抗体を投与した後に評価し得る。本発明の抗体は、一過性血友病ウサギにおけるin vivo研究により例示されるように、血小板数の同時の減少を導くことなく、表皮出血時間を低減できるものであり得る。血小板数の変化は、抗体の投与前後の血小板数を比較することによるか、または対象の抗体で処置した試料もしくは動物と、該抗体で処置していない対照試料もしくは動物との間で血小板数を比較することにより評価し得る。本発明の抗体は、TFPIのK2ドメインと結合でき、そのことにより対象のin vivo凝固時間は低減され、該対象の血小板カウントは著しく低減されない。例えば、上記の対象の血小板カウントは、元の血小板カウントのおよそ80%、例えばおよそ75%、例えばおよそ70%、例えばおよそ65%、例えばおよそ60%、例えばおよそ55%、例えばおよそ50%、例えばおよそ45%、例えばおよそ40%、例えばおよそ35%、例えばおよそ30%、例えばおよそ25%まで低下し得ない。好ましくは、このような比較を行う場合に、血小板数に差がないか、または統計的に有意な差がない。つまり、本発明の抗体は、血小板数のいずれの減少も引き起こさない。
【0131】
「抗体」との用語は、本明細書で用いる場合、抗体全体およびその任意の抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)または単鎖を含む。抗体とは、ジスルフィド結合により互いに連結された少なくとも2つの重鎖(HC)と2つの軽鎖(LC)とを含む糖タンパク質またはその抗原結合部分のことをいう。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと省略する)と重鎖定常領域(CH)とを含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと省略する)と軽鎖定常領域(CL)とを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)とよばれるより保存された領域の間に散在する相補性決定領域(CDR)とよばれる超可変性の領域にさらに細分化できる。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(Clq)を含む受容者組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0132】
本明細書で用いる場合、「相補性決定領域」または「超可変領域」との用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基のことをいう。相補性決定領域または「CDR」は、一般的に、軽鎖可変ドメインのアミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)(Kabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication第91-3242号)、ならびに/または「超可変ループ」からの残基(軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol 1987;196:901〜917)を含む。典型的には、この領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、上記のKabatらに記載される方法により行われる。「Kabat位置」、「Kabat残基」および「Kabatによる」のような句は、本明細書において、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについてのこの番号付けシステムのことをいう。Kabat番号付けシステムを用いて、ペプチドの実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮化またはそれらへの挿入に対応するより少ないかまたは付加的なアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後にアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a、52bおよび52c)と、重鎖FRの残基82の後に挿入残基(例えばKabatによる残基82a、82bおよび82c)とを含み得る。残基のKabat番号付けは、ある所与の抗体について、抗体の配列の相同な領域を「標準の」Kabat番号付けされた配列と整列させることにより決定し得る。
【0133】
「フレームワーク領域」または「FR」残基との用語は、本明細書において定義されるように、CDR内にはないVHまたはVLアミノ酸残基のことをいう。
【0134】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であり得る。ある実施形態において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。本発明の抗体は、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒトもしくはヒト化抗体またはこれらのいずれかの抗原結合部分であり得る。モノクローナルおよびポリクローナルの両方の抗体の生成のために、実験動物は、それらに限定されないが、ヤギ、ウサギ、ラットまたはマウスのような適切な哺乳類である。
【0135】
ポリクローナル抗体は、異なるB細胞系統に由来する抗体である。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に対する異なる免疫グロブリン分子の混合物を含み得る。ポリクローナル抗体は、抗原分子中の1または複数の異なるエピトープと結合する異なる免疫グロブリン分子の混合物を含み得る。ポリクローナル抗体は、対象の抗原での適切な動物の免疫化のような通常の方法により生成し得る。血液を、その後、動物から回収して、免疫グロブリン画分を精製し得る。
【0136】
モノクローナル抗体は、互いに同一であり特定のエピトープについて1つの結合特異性および親和性を有する免疫グロブリン分子である。本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495頁の標準的な体細胞ハイブリッド形成技術またはBリンパ球のウイルス形質転換もしくは癌化を含む多様な技術により生成できる。ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、マウス系である。マウスのハイブリドーマ生成は、非常に詳細に確立された手順である。免疫化プロトコルおよび融合のための免疫化脾細胞の単離の技術は、当該技術において既知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も既知である。
【0137】
本発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを得るために、免疫化マウスからの脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離して、マウス骨髄腫株化細胞のような適切な不死化株化細胞と融合できる。得られるハイブリドーマを、抗原特異的抗体の生成についてスクリーニングできる。抗体分泌ハイブリドーマを再び培養し、再びスクリーニングし、適切なIgGについてまだ陽性であれば、モノクローナル抗体を、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングできる。安定なサブクローンを、次いで、in vitroで培養して、特徴決定のための組織培養培地中で少量の抗体を作製できる。
【0138】
抗体の「抗原結合部分」との用語は、TFPIまたは本明細書に記載される別の標的タンパク質のような抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の1または複数のフラグメントのことをいう。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントにより機能し得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」との用語に包含される結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメントおよび単離相補性決定領域(CDR)を含む。scFvのような単鎖抗体およびVHHおよびラクダ抗体のような重鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」との用語に包含されることを意図する。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の従来の技術を用いて得ることができ、フラグメントを、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングし得る。
【0139】
本発明の抗体は、(a)対象の免疫グロブリン遺伝子を遺伝子導入もしくは染色体導入された動物(例えばマウス)またはそれから調製されるハイブリドーマから単離される抗体、(b)対象の抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意のその他の手段により調製、発現、創出または単離される抗体のように、組換え手段により調製、発現、創出または単離できる。
【0140】
本発明の抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。「ヒト抗体」との用語は、本明細書で用いる場合、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えばin vitroでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはin vivoでの体細胞変異により導入された変異)。しかし、「ヒト抗体」との用語は、本明細書で用いる場合、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0141】
このようなヒト抗体は、ヒトモノクローナル抗体であり得る。このようなヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞と融合した、ヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子とを含むゲノムを有する遺伝子導入された非ヒト動物、例えば遺伝子導入されたマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマにより生成され得る。
【0142】
ヒト抗体は、天然および合成の配列多様性を有してさらに多様化されたヒト生殖系列配列の選択に基づいて構築された配列ライブラリーから単離し得る。
【0143】
ヒト抗体は、ヒトリンパ球のin vitro免疫化と、その後のエプスタイン-バーウイルスでのリンパ球の形質転換により調製し得る。
【0144】
「ヒト抗体誘導体」との用語は、ヒト抗体の任意の改変された形態、例えば抗体と別の作用物質または抗体とのコンジュゲートのことをいう。
【0145】
「ヒト化抗体」との用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列(CDR領域)を含有するヒト/非ヒトキメラ抗体のことをいうことを意図する。ヒト化抗体は、よって、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類のようなヒト以外の種の超可変領域からの残基(ドナー抗体)で置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。このような改変の例は、実施例2に記載されるような1または複数のいわゆる復帰変異の導入である。
【0146】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに改良するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR残基の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含むことができる。
【0147】
本発明の抗体は、標的タンパク質との結合について、例えば標準的なELISAまたはウェスタンブロッティングにより試験できる。ELISAアッセイは、標的タンパク質と陽性の反応性を示すハイブリドーマについてスクリーニングするために用いることもできる。抗体の結合特異性は、例えばフローサイトメトリーにより標的タンパク質を発現する細胞との抗体の結合を監視することによっても決定し得る。
【0148】
標的タンパク質についての本発明の抗体の特異性は、抗体が他のタンパク質と結合するか否かを決定することによりさらに調べることができる。例えば、TFPIまたはTFPIの特定の部分、例えばエピトープと特異的に結合する抗体を生成することが望まれる場合、抗体の特異性は、抗体が、他の分子または対象の部分を欠失したTFPIの改変形とも結合するか否かを決定することにより評価し得る。
【0149】
上で説明したように、本発明の抗体は、TFPIの活性を改変し得る。要求される結合特異性を有する抗体は、よって、TFPIの活性に対するそれらの影響を決定するためにさらに試験してよい。よって、TFPIと結合でき、その活性を改変、特に低減できる適切な抗体を同定するための方法を用い得る。
【0150】
適切な抗体が一旦同定および選択されると、抗体のアミノ酸配列を、当該技術において既知の方法により同定し得る。抗体をコードする遺伝子は、特異的および/または縮重プライマーを用いてクローニングできる。抗体は、通常の方法により組換え生成し得る。
【0151】
「ポリペプチド」は、本明細書において、2以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはその他のペプチド模倣物の化合物のことをいう最も広い意味で用いられる。よって、「ポリペプチド」との用語は、短いペプチド配列と、より長いポリペプチドおよびタンパク質も含む。本明細書で用いる場合、「アミノ酸」との用語は、天然および/または非天然もしくは合成のアミノ酸、Dおよび/またはL光学異性体、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣物のことをいうことがある。
【0152】
本発明者らは、実施例に記載されるマウス抗体を同定した。この抗体は、本明細書においてTFPI-4F36A1B2(代わりに4F36またはMuTFPI4F36)という。本発明は、この抗体と、マウス抗体の1または複数の活性を保持し、これらもまた実施例に記載されるキメラ抗体およびヒト化抗体を含むそのバリアントおよびフラグメントとを包含する。この抗体の活性は、TFPIと結合する能力と、TFPI分子中の特定の位置に結合する能力と、TFPIの活性を阻害する能力とを含む。
【0153】
この抗体の適切なフラグメントまたはバリアントは、TFPIと結合する能力を保持する。これは、好ましくは、TFPIと特異的に結合する能力を保持する。これは、好ましくは、それが由来する抗体(MuTFPI4F36)と同じもしくは類似のTFPI分子のエピトープまたは領域と特異的に結合する能力を保持する。これは、好ましくは、TFPI活性を阻害する能力または場合により血小板数の低下を導くことなく凝固時間を低減する能力のようなそれが由来する抗体の1または複数の追加の機能を保持する。
【0154】
本発明によるポリペプチドまたは抗体「フラグメント」は、例えばポリペプチドのNおよび/またはC末端から1または複数のアミノ酸を除去することによる切断により作製してよい。10まで、20まで、30まで、40までまたはそれより多くのアミノ酸を、この様式でNおよび/またはC末端から除去してよい。フラグメントは、1または複数の内部欠失により作製してもよい。
【0155】
本発明の抗体は、MuTFPI4F36抗体のフラグメントもしくはそのバリアントであり得るか、またはそれを含み得る。本発明の抗体は、上でさらに論じるようなこの抗体の抗原結合部分もしくはそのバリアントであり得るか、またはそれを含み得る。例えば、本発明の抗体は、この抗体のFabフラグメントもしくはそのバリアントであり得るか、またはこの抗体に由来する単鎖抗体もしくはそのバリアントであり得る。
【0156】
MuTFPI4F36抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号6および10に示す。MuTFPI4F36抗体のVLおよびVH鎖についてのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4および8に示す。1つのヒト化抗体、HzTFPI4F36の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号21および24に示す。HzTFPI4F36のVLおよびVH鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号15および18に示す。
【0157】
本発明の抗体は、配列番号6に示すMuTFPI4F36軽鎖アミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含み得る。抗体は、さらにまたは代わりに、配列番号10に示すMuTFPI4F36重鎖アミノ酸配列または本明細書に記載されるそのフラグメントもしくはバリアントを含み得る。
【0158】
本発明の抗体は、配列番号4のVLアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含み得る。本発明の抗体は、配列番号8のVHアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントを含み得る。本発明の抗体は、(a)配列番号4のVLアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントと、(b)配列番号8のVHアミノ酸配列またはそのフラグメントもしくはバリアントとをともに含み得る。
【0159】
本発明の抗体は、図2に示すVLまたはVHアミノ酸配列の一方のフラグメントを含み得る。例えば、本発明の抗体は、配列番号4または8からの少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも20または少なくとも25連続アミノ酸のフラグメントを含み得る。このようなフラグメントは、好ましくは、TFPIと結合する能力のような上で論じた機能の1または複数を保持する。
【0160】
これらのVHまたはVL配列のいずれかの適切なフラグメントまたはバリアントは、TFPIと結合する能力を保持する。これは、好ましくは、TFPIと特異的に結合する能力を保持する。これは、好ましくは、それが由来する抗体(MuTFPI4F36)と同じもしくは類似のTFPI分子のエピトープまたは領域と特異的に結合する能力を保持する。これは、好ましくは、TFPI活性を阻害する能力または場合により血小板数の低下を導くことなく凝固時間を低減する能力のようなそれが由来する抗体の1または複数の追加の機能を保持する。
【0161】
適切なフラグメントまたはバリアントVL配列は、好ましくは、配列番号4のE31位、S32位、D33位、Y37位、A96位、T97位、H98位およびF99位のアミノ酸を保持する。適切なフラグメントまたはバリアントVH配列は、好ましくは、配列番号8のN31位、R53位、S54位、S56位、Y57位、Y59位、F60位、P61位、D62位、Q65位、Y102位、D103位およびD106位のアミノ酸を保持する。適切なフラグメントまたはバリアント抗体は、好ましくは、配列番号4のE31位、S32位、D33位、Y37位、A96位、T97位、H98位およびF99位のアミノ酸と、配列番号8のN31位、R53位、S54位、S56位、Y57位、Y59位、F60位、P61位、D62位、Q65位、Y102位、D103位およびD106位のアミノ酸とを保持する。図3で同定されるように、これらは、MuTFPI4F36がTFPIのK2ドメインと結合したときに、重原子から4Å以内の距離に重原子を有するMuTFPI4F36軽鎖および重鎖の配列内の残基である。
【0162】
本発明の抗体は、配列番号4または8中のCDR領域のような本明細書において同定される特異的抗体からのCDR領域を含み得る。このような抗体は、好ましくは、本明細書に記載されるようにTFPIと結合する能力を保持する。例えば、図3に示すように、Kabat定義を用いて、MuTFPI4F36の軽鎖中のCDR配列は、配列番号4または配列番号6のアミノ酸24〜39、55〜61および94〜102で同定し得る。MuTFPI4F36の重鎖中のCDR配列は、配列番号8または配列番号10のアミノ酸31〜35、50〜66および99〜110にて同定し得る。本発明の抗体は、図3に示すCDR配列の1または複数を含み得る。例えば、本発明の抗体は、配列番号6の残基24〜39、55〜61および94〜102に示すアミノ酸配列の1、2または3つ全てを含み得る。本発明の抗体は、代わりにまたはさらに、配列番号10の残基31〜35、50〜66および99〜110に示すアミノ酸配列の1、2または3つ全てを含み得る。本発明の抗体は、配列番号6の残基24〜39、55〜61および94〜102ならびに配列番号10の31〜35、50〜66および99〜110に示す6つ全てのアミノ酸配列を含み得る。
【0163】
本発明の抗体は、本明細書においてHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)という抗体のようなヒト化抗体であってよい。このような抗体は、配列番号15または18中からの1または複数のCDR領域を含み得る。
【0164】
本発明の抗体の重鎖は、配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい)を含み得る。
【0165】
本発明の抗体の重鎖は、配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1、2または3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい)を含み得る。
【0166】
本発明の抗体の重鎖は、配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1、2または3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい)を含み得る。
【0167】
本発明の抗体の軽鎖は、配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1、2または3つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい)を含み得る。
【0168】
本発明の抗体の軽鎖は、配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1または2つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい)を含み得る。
【0169】
本発明の抗体の軽鎖は、配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1または2つは、異なるアミノ酸で置換されていてよい)を含み得る。
【0170】
より具体的には、本発明の抗体は、
・これもまた配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)を含むCDR1配列と、
・これもまた配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)を含むCDR2配列と、
・これもまた配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)を含むCDR3配列と
を含む重鎖を有し得る。
【0171】
本発明の抗体は、
・これもまた配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)を含むCDR1配列と、
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)を含むCDR2配列と、
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)を含むCDR3配列と
を含む軽鎖を有し得る。
【0172】
本発明の抗体は、上記のCDR領域の任意の組合せを含み得る。
【0173】
より具体的には、本発明の抗体の重鎖のフレームワーク領域2(FR2)は、配列番号18の:
・40位に相当する位置にT、
・42位に相当する位置にE、
・44位に相当する位置にR、および
・49位に相当する位置にA
のアミノ酸を含み得る。
【0174】
代わりに、重鎖の上記のFR2は、配列番号18のアミノ酸36〜49を含み得る。
【0175】
本発明の抗体は、以下のいずれか1つを含み得る:
・配列番号15のVLアミノ酸配列。
・配列番号18のVHアミノ酸配列。
・配列番号15および18。
・配列番号21の軽鎖アミノ酸配列。
・配列番号24の重鎖アミノ酸配列。
・配列番号21および24。
【0176】
本発明の抗体は、代わりに、MuTFPI4F36抗体のバリアントまたはHzTFPI4F36のバリアントのようなこれらの特定の配列の1つのバリアントであり得るかまたはそれを含み得る。例えば、バリアントは、上記のアミノ酸配列のいずれかの置換、欠失または付加バリアントであり得る。
【0177】
本発明によるバリアントは、以下を含まない抗体であり得る:
配列番号18のCDR1領域の
・31位に相当する位置にN;
配列番号18のCDR2領域の
・53位に相当する位置にR;
・54位に相当する位置にS;
・56位に相当する位置にS;
・57位に相当する位置にY;
・59位に相当する位置にY;
・60位に相当する位置にF;
・61位に相当する位置にP;
・62位に相当する位置にD;および
・65位に相当する位置にQ;
配列番号18のCDR3領域の
・102位に相当する位置にY;
・103位に相当する位置にD;および
・106位に相当する位置にD;
配列番号15のCDR1領域の
・31位に相当する位置にE;
・32位に相当する位置にS;
・33位に相当する位置にD;および
・37位に相当する位置にY;
配列番号15のCDR3領域の
・96位に相当する位置にA;
・97位に相当する位置にT;
・98位に相当する位置にH;および
・99位に相当する位置にF。
【0178】
バリアント抗体は、上で論じる特定の配列およびフラグメントからの1、2、3、4、5、10まで、20まで、30までまたはそれより多いアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入を含み得る。「欠失」バリアントは、個別のアミノ酸の欠失、2、3、4もしくは5アミノ酸のようなアミノ酸の小さい群の欠失、または特定のアミノ酸ドメインもしくはその他の特徴の欠失のようなより大きいアミノ酸領域の欠失を含み得る。「挿入」バリアントは、個別のアミノ酸の挿入、2、3、4もしくは5アミノ酸のようなアミノ酸の小さい群の挿入、または特定のアミノ酸ドメインもしくはその他の特徴の挿入のようなより大きいアミノ酸領域の挿入を含み得る。「置換」バリアントは、好ましくは、同数のアミノ酸の1もしくは複数のアミノ酸の置き換え、および保存的アミノ酸置換の作製を含む。例えば、アミノ酸は、同様の特性を有する代替アミノ酸、例えば別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸、または別の脂肪族アミノ酸で置換し得る。適切な置換を選択するために用い得る20の主要アミノ酸のいくつかの特性は、以下のとおりである:
【0179】
【表1】
【0180】
好ましい「誘導体」または「バリアント」は、天然アミノ酸の代わりに、配列中に出現するアミノ酸がその構造類似体であるものを含む。配列に用いられるアミノ酸は、誘導体化または改変、例えば標識されてもよい(但し、抗体の機能が著しく有害に影響されないことを条件とする)。
【0181】
置換は、それらに限定されないが、保存的置換であり得る。
【0182】
上記の誘導体およびバリアントは、抗体の合成中もしくは生成後修飾により、あるいは抗体が組換え形である場合に、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発または核酸の酵素による切断および/もしくはライゲーションの既知の技術を用いて調製できる。
【0183】
別の態様において、本発明は、本発明の抗TFPI抗体またはその抗原フラグメントを含む多重特異性分子を特徴とする。このような多重特異性分子は、TFPIについての少なくとも1つの第1結合特異性と、第2標的エピトープについての第2結合特異性とを含む二重特異性分子を含む。二重特異性分子の1つのタイプは、当該技術において既知の二重特異性抗体である。二重特異性抗体、またはむしろ多重特異的抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えばF(ab')2二重特異性抗体)または本明細書に記載される任意のその他の抗原結合フラグメントとして調製し得る。
【0184】
ある態様において、本発明は、第2の作用物質とコンジュゲートまたは共有結合した抗TFPI抗体のような抗体誘導体(またはイムノコンジュゲート)を特徴とする。第2の作用物質は、抗体と直接または間接的に、当業者に既知の任意の多数の利用可能な方法を用いて連結できる。例えば、作用物質は、還元された抗体構成要素のヒンジ領域に、N-スクシニルS-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のような架橋剤を用いてジスルフィド結合を形成することにより、または抗体のFc領域の炭水化物部分により結合させ得る。
【0185】
ある態様において、本発明の抗体は、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、タンパク質安定性および/もしくは抗原依存的細胞毒性のような抗体の1または複数の機能的特性を典型的には変更するかあるいは欠失させるためにFc領域内に改変を含むように工学的に改変してよい。さらに、本発明の抗体は、これもまた抗体の1または複数の機能的特性を変更するために、化学的に改変してよい(例えば1または複数の化学的部分を抗体に結合させ得る)か、またはそのグリコシル化を変更するように改変してよい。
【0186】
所望により、抗体のクラスは、既知の技術により「スイッチ」してよい。例えば、IgM分子として元来生成された抗体を、IgG抗体にクラススイッチしてよい。クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のものに、例えば:IgG1からIgG2もしくはIgG4へ;IgG2からIgG1もしくはIgG4へ;またはIgG4からIgG1もしくはIgG2へ変換するために用いることもできる。異なるIgGサブクラスからの領域を組み合わせることにより定常領域キメラ分子を作製するための抗体の工学的改変も行うことができる。
【0187】
ある実施形態において、CHIのヒンジ領域は、ヒンジ領域のシステイン残基の数が変更される、例えば増加または減少されるように改変される。このアプローチは、例えば、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号にさらに記載される。
【0188】
定常領域は、抗体を安定化する、例えば二価抗体が2つの一価VH-VLフラグメントに分離する危険性を低減するためにさらに改変してよい。例えば、IgG4定常領域において、残基S241をプロリン(P)残基に変異させて、ヒンジにて完全ジスルフィドブリッジ形成を可能にしてよい(例えばAngalら、Mol Immunol.199S;30:105〜8頁を参照されたい)。
【0189】
本発明によるバリアント抗体は、配列番号4または8と60%を超えて、もしくは65%を超えて、もしくは70%を超えて、もしくは75%を超えて、もしくは80%を超えて、好ましくは85%を超えて、例えば90%を超えて、例えば95%を超えて同一であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを有し得る。本発明による他のバリアント抗体は、配列番号15または18と60%を超えて、もしくは65%を超えて、もしくは70%を超えて、もしくは75%を超えて、もしくは80%を超えて、好ましくは85%を超えて、例えば90%を超えて、例えば95%を超えて同一であるアミノ酸配列またはそのフラグメントを有し得る。アミノ酸同一性のこのレベルは、関係する配列番号の配列の全長にわたって、または全長ポリペプチドのサイズに依存して20、30、40、50、60、70、75、80、90、100、150、200またはそれより多いアミノ酸にわたるような配列の一部にわたって見ることができる。
【0190】
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」とは、以下のパラメータでClustalW(Thompsonら、1994、上記)を用いて評価して示される値を有する配列のことをいう:
ペアワイズアラインメントパラメータ-方法:正確、行列:PAM、ギャップ開始ペナルティ:10.00、ギャップ伸長ペナルティ:0.10;
多重アラインメントパラメータ-行列:PAM、ギャップ開始ペナルティ:10.00、遅延についての%同一性:30、末端ギャップのペナライズ:オン、ギャップ分離距離:0、負値行列:なし、ギャップ伸長ペナルティ:0.20、残基特異的ギャップペナルティ:オン、親水性ギャップペナルティ:オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基での配列同一性は、単純に誘導体化された同一残基を含むことを意図する。
【0191】
本発明は、特定のVHおよびVLアミノ酸配列を有する抗体ならびにこれらのVHおよびVLドメインの機能または活性を維持するそれらのバリアントおよびフラグメントを提供する。
【0192】
よって、本発明の抗体は:
(a)配列番号4の軽鎖可変領域アミノ酸配列;
(b)TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント;または
(c)(a)の配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)のバリアント
を含み得る。
【0193】
本発明の抗体は:
(a)配列番号8の重鎖可変領域アミノ酸配列;
(b)TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント;または
(c)(a)の配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)のバリアント
を含み得る。
【0194】
本発明の抗体は、配列番号4の軽鎖可変領域と、配列番号8の重鎖可変領域とを含み得る。
【0195】
本発明の抗体は:
(a)配列番号4の軽鎖可変領域および配列番号8の重鎖可変領域;
(b)重鎖および軽鎖の配列の一方または両方が、(a)で特定される配列の少なくとも7アミノ酸のフラグメントを含むように改変された(a)のバリアント;あるいは
(c)重鎖および軽鎖の配列の一方または両方が、(a)または(b)の配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するように改変された(a)または(b)のバリアント
を含むことができ、ここで、抗体は、TFPIと特異的に結合する能力を保持する。抗体は、場合により血小板数の低下を導くことなく、TFPIを阻害する能力または凝固時間を短くする能力のような本明細書に記載される本発明の抗体の1もしくは複数の追加の機能または活性も保持し得る。
【0196】
配列番号4の好ましいフラグメントおよびバリアントは、(i)配列番号6のアミノ酸24〜39;および/または(ii)配列番号6のアミノ酸55〜61;および/または(iii)配列番号6のアミノ酸94〜102を含む。配列番号8の好ましいフラグメントおよびバリアントは、(i)配列番号10のアミノ酸31〜35;および/または(ii)配列番号10のアミノ酸50〜66;および/または(iii)配列番号10のアミノ酸99〜110を含む。
【0197】
配列番号4のさらに好ましいバリアントは、配列番号6のアミノ酸31〜33、37および96〜99を含む。配列番号8のさらに好ましいバリアントは、配列番号10のアミノ酸31、53、54、56、57、59、60、61、62、65、102、103および106を含む。
【0198】
本発明の抗体は:
(a)配列番号15の軽鎖可変領域アミノ酸配列;
(b)TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント;または
(c)(a)の配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)のバリアント
を含み得る。
【0199】
本発明の抗体は:
(a)配列番号18の重鎖可変領域アミノ酸配列;
(b)TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント;または
(c)(a)の配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有し、TFPIと特異的に結合する能力を保持する(a)のバリアント
を含み得る。
【0200】
本発明の抗体は、配列番号15の軽鎖可変領域と、配列番号18の重鎖可変領域とを含み得る。
【0201】
本発明の抗体は:
(a)配列番号15の軽鎖可変領域および配列番号18の重鎖可変領域;
(b)重鎖および軽鎖の配列の一方または両方が、(a)で特定される配列の少なくとも7アミノ酸のフラグメントを含むように改変された(a)のバリアント;あるいは
(c)重鎖および軽鎖の配列の一方または両方が、(a)または(b)の配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するように改変された(a)または(b)のバリアント
を含むことができ、ここで、抗体は、TFPIと特異的に結合する能力を保持する。抗体は、場合により血小板数の低下を導くことなく、TFPIを阻害する能力または凝固時間を短くする能力のような本明細書に記載される本発明の抗体の1もしくは複数の追加の機能または活性も保持し得る。
【0202】
上で説明したように、本発明の抗体は、本発明の別の抗体と同じエピトープまたは領域と結合し得る。よって、このような抗体が、本明細書に記載される任意の特定の抗体、フラグメントおよびバリアントと同じTFPIのエピトープまたは領域と結合し得ることが観察される。
【0203】
本発明は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドにも関する。よって、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載される任意の抗体をコードし得る。「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」との用語は、本明細書において交換可能に用いられ、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態またはその類似体のことをいう。ポリヌクレオチドの限定しない例は、遺伝子、遺伝子フラグメント、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマーを含む。本発明のポリヌクレオチドは、単離または精製された形態で提供され得る。
【0204】
選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適切な調節配列の制御下に置かれたときにin vivoでポリペプチドに転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドンと3'(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンにより決定される。本発明の目的のために、このような核酸配列は、それらに限定されないが、ウイルス、原核生物もしくは真核生物のmRNAからのcDNA、ウイルスもしくは原核生物のDNAまたはRNAからのゲノム配列、および合成DNA配列さえも含み得る。転写終結配列は、コード配列の3'側に位置し得る。
【0205】
ある実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、上記のVHまたはVLアミノ酸配列をコードする配列を含む。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号4もしくは8の配列を含むポリペプチド、または上記のそのバリアントもしくはフラグメントをコードし得る。このようなポリヌクレオチドは、配列番号3、5、7および9のいずれか1つの核酸配列からなるかまたはそれを含み得る。適切なポリヌクレオチド配列は、代わりに、これらの特定のポリヌクレオチド配列の1つのバリアントであり得る。例えば、バリアントは、上記の核酸配列のいずれかの置換、欠失または付加バリアントであり得る。バリアントポリヌクレオチドは、配列表に示す配列からの1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75までもしくはそれより多い核酸の置換および/または欠失を含み得る。
【0206】
適切なバリアントは、配列番号3、5、7および9のいずれか1つのポリヌクレオチドと少なくとも70%相同、好ましくはそれと少なくとも80または90%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。相同性を測定する方法は、当該技術において公知であり、本発明の関係において、相同性は、核酸同一性に基づいて計算されることが当業者により理解される。このような相同性は、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、例えば少なくとも40、60、100、200またはそれより多い隣接ヌクレオチドの領域にわたって存在し得る。このような相同性は、未改変ポリヌクレオチド配列の全長にわたって存在し得る。
【0207】
ポリヌクレオチドの相同性または同一性を測定する方法は、当該技術において既知である。例えば、UWGCGパッケージは、(例えばそのデフォルト設定で用いて)相同性を計算するために用い得るBESTFITプログラムを提供する(Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12、387〜395頁)。
【0208】
PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを用いて、例えばAltschul S. F.(1993) J Mol Evol 36:290〜300頁;Altschul, S, Fら(1990) J Mol Biol 215:403〜10頁に記載されるように、(典型的にそれらのデフォルト設定で)相同性または整列配列を計算できる。
【0209】
BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Centre for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワードと整列させたときに、いくらかの正値の閾値スコアTと一致するかもしくはそれを満足するクエリ配列中の長さWの短いワードを同定することにより、まず、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、近隣ワードスコア閾値という(Altschulら、上記)。これらの最初の近隣ワードヒットは、これらを含有するHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加できる限り遠くまで各配列に沿って両方の方向に伸長する。各方向へのワードヒットの伸長は、1もしくは複数の負のスコア残基アラインメントの蓄積によって累積アラインメントスコアがゼロ以下になったとき、またはいずれかの配列の末端に到達したときに停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコア行列(HenikoffおよびHenikoff (1992) Proc. Natl. Acad.Sci.USA 89:10915〜10919頁を参照されたい)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4および両方の鎖の比較を用いる。
【0210】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的解析を行う。例えば、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873〜5787頁を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより得られる類似性のある指標は、最小総和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に発生する確率を示す。例えば、ある配列は、第1配列と第2配列との比較における最小総和確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるならば、別の配列と類似であるとみなされる。
【0211】
同族体は、関係するポリヌクレオチド中の配列と、3、5、10、15、20以上より少ない変異(それぞれ置換、欠失または挿入であり得る)により異なることがある。これらの変異は、同族体の少なくとも30、例えば少なくとも40、60または100以上の隣接ヌクレオチドの領域にわたって測定され得る。
【0212】
ある実施形態において、バリアント配列は、配列表に示す特定の配列とは、遺伝子コードの重複性により変動し得る。DNAコードは、4つの主要核酸残基(A、T、CおよびG)を有し、これらを用いて、生物の遺伝子にコードされるアミノ酸タンパク質を表す3文字コドンを「綴る」。DNA分子に沿うコドンの直鎖状配列は、これらの遺伝子によりコードされるタンパク質中のアミノ酸の直鎖状配列に翻訳される。コードは高度に縮重しており、20の天然アミノ酸をコードする61のコドンと「停止」シグナルを表す3つのコドンを有する。よって、ほとんどのアミノ酸は、1つより多いコドンによりコードされる。実際に、いくつかは4つ以上の異なるコドンによりコードされる。本発明のバリアントポリヌクレオチドは、よって、本発明の別のポリヌクレオチドとして同じポリペプチド配列をコードし得るが、同じアミノ酸をコードするために異なるコドンを用いることにより、異なる核酸配列を有し得る。
【0213】
本発明によるポリヌクレオチド「フラグメント」は、例えばポリヌクレオチドの一方もしくは両方の末端から1または複数のヌクレオチドを除去することによる切断により作製し得る。10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75まで、100まで、200までまたはそれより多いアミノ酸を、この様式でポリヌクレオチドの3'および/または5'末端から除去し得る。フラグメントは、1または複数の内部欠失により作製してもよい。このようなフラグメントは、配列番号3、5、7および9の配列に由来し得るか、または本明細書に記載されるバリアントポリヌクレオチドに由来し得る。好ましくは、このようなフラグメントは、30〜300残基の長さ、例えば30〜300、30〜200、30〜100、100〜200または200〜300残基である。代わりに、本発明のフラグメントは、例えば本発明の全長ポリヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を含むより長い配列であってよい。
【0214】
本発明の抗体は、よって、それをコードし、それを発現できるポリヌクレオチドの形態から生成するか、またはこの形態に導くことができる。抗体が2以上の鎖を含む場合、本発明のポリヌクレオチドは、1または複数の抗体鎖をコードし得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、抗体軽鎖、抗体重鎖またはその両方をコードし得る。一方が抗体軽鎖をコードし、他方が対応する抗体重鎖をコードする2つのポリヌクレオチドを用い得る。このようなポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの対は、本発明の抗体が作製されるように一緒に発現させてよい。
【0215】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばSambrookら(1989、Molecular Cloning-a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)に記載されるような当該技術において公知の方法により合成できる。
【0216】
本発明の核酸分子は、制御配列、挿入配列と機能的に連結されたシグナルペプチド配列を含む発現カセットの形態で用いることにより、本発明の抗体のin vivoでの発現を可能にすることができる。これらの発現カセットは、次に、典型的にベクター中で用いられる(例えばプラスミドまたは組換えウイルスベクター)。このような発現カセットは、受容者対象に直接投与してよい。代わりに、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを、受容者対象に投与してよい。好ましくは、ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを用いて調製され、かつ/または投与される。適切なベクターは、十分量の遺伝子情報を保持でき、本発明のポリペプチドの発現を可能にする任意のベクターであり得る。
【0217】
本発明は、よって、このようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。このような発現ベクターは、分子生物学の技術分野において日常的に構築され、例えば本発明のペプチドの発現を可能にするために、プラスミドDNAと、適切なイニシエータ、プロモーター、エンハンサ、シグナルペプチド配列および例えばポリアデニル化シグナルのような必要であり得、かつ正しい方向に配置されたその他の要素とを用いることを含み得る。その他の適切なベクターは、当業者に明らかである。この関係におけるさらなる例示のために、我々はSambrookらを参照する。
【0218】
本発明は、本発明の抗体を発現するように改変された細胞も含む。このような細胞は、一過性または好ましくは安定性の、哺乳動物細胞もしくは昆虫細胞のような高等真核生物株化細胞、酵母のような下等真核生物細胞または細菌細胞のような原核生物細胞を含む。本発明の抗体をコードするベクターまたは発現カセットの挿入により改変され得る細胞の具体的な例は、哺乳動物HEK293、CHO、BHK、NSOおよびヒト網膜細胞を含む。好ましくは、選択される株化細胞は、安定性であるだけでなく、ポリペプチドの成熟グリコシル化と細胞表面発現を可能にもするものである。
【0219】
本発明のこのような株化細胞は、本発明の抗体を生成する通常の方法を用いて培養できるか、または治療的または予防的に用いて、対象に本発明の抗体を送達できる。代わりに、本発明のポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターを、対象からの細胞にex vivoで投与して、次いで細胞を対象の体に返還し得る。
【0220】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される抗体、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞のような本発明の分子を含む組成物および製剤を提供する。例えば、本発明は、医薬的に許容され得る担体と一緒に処方された本発明の1または複数の抗体のような本発明の1または複数の分子を含む医薬組成物を提供する。
【0221】
本明細書で用いる場合、「医薬的に許容され得る担体」は、生理的に適合し得る任意のそして全ての溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、非経口、例えば静脈内、筋肉内または皮下(例えば注射または注入による)投与に適する。投与経路に依存して、抗体は、抗体を不活性化または変性させ得る酸およびその他の天然条件の作用から抗体を保護するための材料中に被覆し得る。
【0222】
好ましい医薬的に許容され得る担体は、水性の担体または希釈剤を含む。本発明の医薬組成物において用い得る適切な水性担体の例は、水、緩衝水および食塩水を含む。その他の担体の例は、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびその適切な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射用有機エステルを含む。例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散系の場合に要求される粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により適切な流動性を維持できる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。
【0223】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容され得る抗酸化剤も含み得る。これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントも含み得る。微生物の存在の防止は、上記の滅菌手順と、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの包含との両方により確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物中に含めることが望ましいこともある。さらに、注射用医薬形態の持続性吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質を含めることによりもたらすことができる。
【0224】
治療用組成物は、典型的には滅菌され、製造および貯蔵の条件下にて安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高い薬物濃度に適するその他の規定された構造で処方できる。
【0225】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性薬剤(例えば抗体)を、適切な溶剤中に、必要であれば上記の成分の1つまたは組合せとともに混合し、その後、滅菌精密濾過することにより調製できる。一般的に、分散系は、活性薬剤を、基本的な分散媒および上記のものからの必要なその他の成分を含有する滅菌媒体中に混合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性薬剤と任意の追加の所望の成分との粉末を、その予め滅菌濾過された溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))である。
【0226】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体とともに追加の活性成分を含み得る。上記のように、本発明の組成物は、本発明の1または複数の抗体を含み得る。これらは、追加の治療または予防用薬剤も含み得る。例えば、本発明の医薬組成物が、出血障害の治療における使用を意図する場合、これは、出血障害の症状を低減することを意図する1または複数の薬剤をさらに含み得る。例えば、組成物は、1または複数の凝固因子を含み得る。組成物は、患者の状態を改善することを意図する1または複数の成分を含み得る。例えば、組成物が、手術を受ける患者または外傷を受けた患者のような望ましくない出血を受けた患者の治療における使用を意図する場合、組成物は、1または複数の鎮痛剤、麻酔薬、免疫抑制剤または抗炎症剤を含み得る。本発明の抗体またはその他の組成物と、使用説明書とを含むキットも本発明の範囲内にある。このようなキットは、上で論じた追加の治療または予防用薬剤のような1または複数の追加の反応物をさらに含み得る。
【0227】
本発明の抗体、その他の分子および組成物は、凝固関連障害の治療および予防に関与する多数のin vitroおよびin vivoの治療上の有用性を有する。例えば、これらの抗体および組成物は、in vitroもしくはex vivoにて培養細胞に、または例えばin vivoでヒト対象に投与して、種々の障害を予防または治療できる。
【0228】
特に、本発明は、出血障害の治療または血液凝固の増進の方法であって、それを必要とする患者に、本発明の抗体またはその他の分子または組成物の有効量を投与するステップを含む方法を提供する。例えば、このような方法は、血友病A、血友病B、第XI因子欠損症、第VII因子欠損症、血小板減少症またはフォンウィルブランド病のような凝固因子欠損症の治療のために用い得る。このような方法は、凝固因子阻害因子の存在に付随する状態の治療のためであり得る。このような方法は、過剰出血の治療のためであり得る。本発明の抗体および組成物は、手術もしくは抗凝固剤療法の前、最中または後、あるいは外傷の後の患者を治療するために用い得る。本明細書に記載される抗体および組成物は、このような治療のいずれにおいても用いることができるか、またはこのような治療用の医薬品の製造において用いることができる。
【0229】
本発明の抗体および組成物は、予防的/防止的および/または治療的処置のために投与し得る。
【0230】
治療用途において、抗体または組成物は、上記の障害または状態に既に罹患した対象に、状態または1もしくは複数のその症状を治癒、緩和または部分的に停止するのに十分な量で投与される。このような治療的処置は、疾患症状の重症度の減少、または無症状期間の頻度もしくは持続期間の増加をもたらし得る。このことを達成するために適切な量は、「治療有効量」と定義される。例えば、治療が望ましくない出血のためである場合、治療は、出血量の減少または全体として出血を停止する適切な凝固と定義できる。
【0231】
予防または防止用途において、抗体または組成物は、上記の障害もしくは状態の危険性がある対象に、状態または1もしくは複数のその症状のその後の影響を防止または低減するのに十分な量で投与される。このことを達成するために適切な量は、「予防有効量」と定義される。例えば、処置が、望ましくない出血を防止することである場合、予防的効果は、出血の防止、または調節剤の非存在下で観察されるものと比較して低減された出血の期間もしくは量と定義できる。
【0232】
それぞれの目的についての有効量は、疾患または損傷の重症度ならびに対象の体重および全身状態に依存する。
【0233】
本明細書で用いる場合、「対象」との用語は、いずれのヒトまたは非ヒト動物も含む。「非ヒト動物」との用語は、全ての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類のような哺乳類および非哺乳類を含む。
【0234】
本発明の抗体または組成物は、当該技術において既知の種々の方法の1または複数を用いて1または複数の経路により投与してよい。当業者により認識されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変動する。本発明の抗体または組成物についての好ましい投与経路は、例えば注射または注入による静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄またはその他の非経口投与経路を含む。「非経口投与」との句は、本明細書で用いる場合、経腸および局所投与以外の投与の様式を意味し、通常、注射による。代わりに、本発明の抗体または組成物は、局所、上皮または粘膜の投与経路のような非経口でない経路により投与できる。
【0235】
同様に、本発明の抗体は、非経口投与に適する医薬品の製造のために用い得る。
【0236】
本発明の抗体は、静脈内投与に適する医薬品の製造のために用い得る。
【0237】
本発明の抗体は、筋肉内投与に適する医薬品の製造のために用い得る。
【0238】
本発明の抗体は、皮下投与に適する医薬品の製造のために用い得る。
【0239】
本発明の抗体の適切な投与量は、熟練した医師により決定してよい。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物および投与の様式について、患者に毒性になることなく所望の治療応答を達成するのに効果的な活性成分の量を得るように変動させてよい。選択される投与量レベルは、用いる特定の抗体の活性、投与経路、投与時間、抗体の排出速度、治療期間、用いる特定の組成物との組合せで用いるその他の薬物、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および以前の病歴などの医療分野において公知の因子を含む多様な薬物動態学的因子に依存する。
【0240】
本発明の抗体の適切な用量は、例えば、治療される患者の体重1kgあたり約0.1μg〜約100mgの範囲であり得る。例えば、適切な投与量は、1日あたり約1μg/kg体重〜約10mg/kg体重または1日あたり約1mg/kg〜約5mg/kg体重であり得る。本発明の抗体の適切な用量は、2〜200mg/kg、例えば約150〜200mg/kg、例えば約150〜170mg/kg、例えば約100〜150mg/kg、例えば約50〜100mg/kg、例えば約70〜90mg/kg、例えば約10〜50mg/kg、例えば約10〜30mg/kgの範囲であり得る。
【0241】
その他の適切な投与量は、およそ0.1〜10mg/kg、例えばおよそ0.1〜1mg/kg、例えばおよそ1〜2mg/kgもしくはおよそ2〜3mg/kgもしくはおよそ4〜5mg/kgもしくはおよそ5〜6mg/kgもしくはおよそ6〜7mg/kgもしくはおよそ7〜8mg/kgもしくはおよそ8〜9mg/kgもしくはおよそ9〜10mg/kg;またはおよそ10〜21 mg/kg、例えばおよそ10〜11mg/kgもしくはおよそ11〜12mg/kgもしくはおよそ12〜13mg/kgもしくはおよそ13〜14mg/kgもしくはおよそ14〜15mg/kgもしくはおよそ15〜16mg/kgもしくはおよそ16〜17mg/kgもしくはおよそ17〜18mg/kgもしくはおよそ18〜19mg/kgもしくはおよそ19〜20mg/kgもしくはおよそ20〜21mg/kgであり得る。
【0242】
対象に投与されるモノクローナル抗体の量は、その投与が、上記のモノクローナル抗体の約10μg/ml〜約40μg/ml、例えば約15〜35μg/ml、例えば約10〜15μg/ml、例えば約15〜20μg/ml、例えば約20〜25μg/ml、例えば約25〜30μg/ml、例えば約30〜35μg/ml、例えば約35〜40μg/mlの対象血漿濃度をもたらすようなものであり得る。投与計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)を得るように調節してよい。例えば、1回の急速投与により投与してよいか、いくつかの分配した用量を経時的に投与してよいか、または用量を、治療状態の緊急性により示されるものに比例して低減もしくは増加させてよい。非経口組成物を、投与が容易で投与量が均一になる投与剤形に処方することが特に有利である。投与剤形は、本明細書で用いる場合、治療される対象についてのユニタリー投与量として適する物理的に別個の単位のことをいう。各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の予め決定された量を、必要とされる医薬担体とともに含有する。
【0243】
抗体は、単回用量または複数回用量で投与してよい。複数回用量は、同じまたは異なる経路により、同じまたは異なる位置に投与してよい。代わりに、抗体は、遅延放出製剤として投与でき、この場合、必要とされる投与の頻度がより低い。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期および望まれる治療期間に依存して変動し得る。投与量および投与の頻度は、治療が予防のためであるかまたは治療のためであるかに依存して変動することもできる。予防用途において、比較的低い投与量が、長期間にわたって比較的低頻度の間隔で投与され得る。治療用途において、比較的高い投与量が、例えば患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで投与され得る。
【0244】
よって、本発明の抗体は、ほぼ毎日、ほぼ1日おき、ほぼ3日毎、ほぼ4日毎、ほぼ5日毎、ほぼ6日毎;ほぼ毎週、例えば5、6、7、8、9もしくは10日毎;ほぼ1週間おき、例えば11、12、13、14、15、16もしくは17日毎;ほぼ3週間毎、例えば18、19、20、21、22、23もしくは24日毎;ほぼ4週間毎、例えば25、26、27、28、29、30もしくは31日毎に投与してよい。本発明の抗体は、要求に応じて投与してもよい。
【0245】
上記のように、本発明の抗体は、1または複数のその他の治療薬剤と同時投与し得る。その他の薬剤は、調節剤の効果を増進する薬剤であり得る。その他の薬剤は、血液凝固因子のような血液凝固を増進するように作用する薬剤であり得る。特に、本発明の調節剤は、第VII(a)因子またはFVIII(a)と同時投与し得る。その他の薬剤は、患者のその他の症状または状態を治療することを意図し得る。例えば、その他の薬剤は、鎮痛剤、麻酔薬、免疫抑制剤または抗炎症剤であり得る。
【0246】
2以上の薬剤の併用投与は、いくつかの異なる様式で達成し得る。ある実施形態において、抗体とその他の薬剤は、単一組成物で一緒に投与し得る。別の実施形態において、抗体とその他の薬剤は、併用療法の一部としての別々の組成物で投与し得る。例えば、調節剤を、その他の薬剤の前、後または同時に投与し得る。
【0247】
「治療」との用語は、本明細書で用いる場合、それを必要とする任意のヒトまたはその他の動物対象の医療的治療のことをいう。上記の対象は、医師または獣医師により身体検査を受けることが予測され、上記の特定の治療の使用が上記のヒトまたはその他の動物対象の健康に有益であることを示す暫定的または最終的な診断を受けている。上記の治療のタイミングおよび目的は、対象の健康の現状に応じて個体ごとに変動し得る。よって、上記の治療は、予防的、軽減的、対症的および/または治癒的であってよい。本発明の観点において、予防的、軽減的、対症的および/または治癒的な治療は、本発明の別個の態様であることがある。
【0248】
よって、本発明の抗体は、非経口投与され得る。
【0249】
本発明の抗体は、静脈内投与され得る。
【0250】
本発明の抗体は、筋肉内投与され得る。
【0251】
本発明の抗体は、皮下投与され得る。
【0252】
本発明の抗体は、予防的に投与され得る。
【0253】
本発明の抗体は、治療的に投与され得る(要求に応じて)。
【0254】
本発明の抗体は、血液喪失を著しく低減できるものであり得る。
【0255】
本発明の抗体は、出血時間を著しく低減できるものであり得る。
【0256】
よって、本発明は、治療を必要とする対象を、TFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体で治療する方法であって、投与されるモノクローナル抗体の量が、その標的を飽和するようなものである方法でもある。投与されるモノクローナル抗体の量は、可溶性TFPIを飽和するようなものであり得る。投与されるモノクローナル抗体の量は、内皮結合TFPIを飽和するようなものであり得る。
【0257】
「凝血異常」との用語は、本明細書で用いる場合、通常の凝固カスケードの任意の凝固促進性(pro-coagulative)成分のいずれの質的もしくは量的な欠損、または線維素溶解の任意の上方制御により引き起こされ得る出血性の傾向の増加のことをいう。このような凝血異常は、先天性および/または後天性および/または医原性であり得、当業者により同定される。
【0258】
先天性凝固低下性異常(hypocoagulopathies)の非限定的な例は、血友病A、血友病B、第VII因子欠損症、第XI因子欠損症、フォンウィルブランド病、ならびにグランツマン血小板無力症およびベルナール-スーリエ症候群のような血小板減少症である。
【0259】
後天性凝血異常の非限定的な例は、ビタミンK欠乏症により引き起こされるセリンプロテアーゼ欠損症である。このようなビタミンK欠乏症は、ワルファリンのようなビタミンK拮抗剤の投与により引き起こされることがある。後天性凝血異常は、広範な外傷の後にも発症し得る。別の言い方では「血性悪循環(bloody vicious cycle)」としても知られるこの場合、これは、血液希釈(希釈性血小板減少症および凝固因子の希釈)、低体温、凝固因子の消費および代謝の乱れ(アシドーシス)を特徴とする。輸液療法および線維素溶解の増加が、この状態を悪化させ得る。上記の出血は、体のどの部分からであってもよい。
【0260】
「阻害因子」(つまり、第VIII因子に対するアロ抗体)を有する血友病Aおよび「阻害因子」(つまり、第IX因子に対するアロ抗体)を有する血友病Bは、部分的に先天性で部分的に後天性である凝固異常の非限定的な例である。
【0261】
医原性凝血異常の非限定的な例は、血栓塞栓性疾患を治療するために処方され得るヘパリン、アスピリン、ワルファリンおよびその他の血小板凝集阻害剤のような抗凝固剤薬物治療の過量投与である。医原性凝血異常の第2の非限定的な例は、輸血により誘導され得るもののような過剰および/または不適切な輸液療法により誘導されるものである。
【0262】
本発明のある実施形態において、出血は、血友病AまたはBと関連する。別の実施形態において、出血は、後天性阻害因子を有する血友病AまたはBと関連する。別の実施形態において、出血は、血小板減少症と関連する。別の実施形態において、出血は、フォンウィルブランド病と関連する。別の実施形態において、出血は、重度の組織損傷と関連する。別の実施形態において、出血は、重度の外傷と関連する。別の実施形態において、出血は、手術と関連する。別の実施形態において、出血は、出血性胃炎および/または腸炎と関連する。別の実施形態において、出血は、胎盤剥離のような大量の子宮出血である。別の実施形態において、出血は、頭蓋内、耳内または眼内のような機械的止血についての可能性が限定された臓器において生じる。別の実施形態において、出血は、抗凝固剤療法と関連する。
【0263】
本発明の抗体は、凝血異常の対象を治療するために用い得る。よって、本発明は、それを必要とする対象の治療のための、TFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体の使用、およびそれを必要とする対象の治療用の医薬品の製造のための、上記の抗体の使用でもある。さらに、本発明は、それを必要とする対象を、TFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体で治療する方法でもある。
【0264】
本発明の上記のモノクローナル抗体の使用は、血液喪失を著しく低減できる。
【0265】
本発明の上記のモノクローナル抗体の使用は、出血時間を著しく低減できる。
【0266】
さらに、本発明の上記のモノクローナル抗体の使用は、一過性血小板減少症を引き起こすことなくin vivo凝固時間を低減できる。
【0267】
実施形態
以下は、本発明の実施形態の非限定的なリストである。
【0268】
実施形態1:TFPIのK2ドメインと特異的に結合できるモノクローナル抗体であって、配列番号2のE10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、F35、K36およびL50からなる群より選択される1または複数の残基を含むエピトープと結合できる抗体。
【0269】
実施形態2:前記抗体が、配列番号2の残基E10を含むエピトープを含むエピトープと特異的に結合できる、実施形態1に記載のモノクローナル抗体。
【0270】
実施形態3:前記抗体が、配列番号2の残基E11を含むエピトープを含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0271】
実施形態4:前記抗体が、配列番号2の残基D12を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0272】
実施形態5:前記抗体が、配列番号2の残基P13を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0273】
実施形態6:前記抗体が、配列番号2の残基R17を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0274】
実施形態7:前記抗体が、配列番号2の残基Y19を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0275】
実施形態8:前記抗体が、配列番号2の残基T21を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0276】
実施形態9:前記抗体が、配列番号2の残基Y23を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0277】
実施形態10:前記抗体が、配列番号2の残基F24を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0278】
実施形態11:前記抗体が、配列番号2の残基N26を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0279】
実施形態12:前記抗体が、配列番号2の残基Q28を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0280】
実施形態13:前記抗体が、配列番号2の残基Q31を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0281】
実施形態14:前記抗体が、配列番号2の残基C32を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0282】
実施形態15:前記抗体が、配列番号2の残基E33を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0283】
実施形態16:前記抗体が、配列番号2の残基R34を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0284】
実施形態17:前記抗体が、配列番号2の残基F35を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0285】
実施形態18:前記抗体が、配列番号2の残基K36を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0286】
実施形態19:前記抗体が、配列番号2の残基L50を含むエピトープと特異的に結合できる、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0287】
実施形態20:前記抗体が、配列番号2の残基E10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、K36およびL50を含むエピトープと特異的に結合できる、実施形態1〜16および18〜19のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0288】
実施形態21:前記抗体が、配列番号2の残基E10、E11、P13、R17、Y19、T21、Y23、Q28、Q31、E33、R34、F35、K36およびL50を含むエピトープと特異的に結合できる、実施形態1〜3、5〜9、12〜13および15〜19のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0289】
実施形態22: TFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15の
・31位に相当する位置にE、
・32位に相当する位置にS、
・33位に相当する位置にD、
・37位に相当する位置にY、
・96位に相当する位置にA、
・97位に相当する位置にT、および
・99位に相当する位置にF
のアミノ酸残基を含み、
前記抗体の重鎖が、配列番号18の
・31位に相当する位置にN、
・53位に相当する位置にR、
・54位に相当する位置にS、
・57位に相当する位置にY、
・59位に相当する位置にY、
・60位に相当する位置にF、
・61位に相当する位置にP、
・62位に相当する位置にD、
・65位に相当する位置にQ、
・102位に相当する位置にY、
・103位に相当する位置にD、および
・106位に相当する位置にD
のアミノ酸残基を含む抗体。
【0290】
実施形態23:前記抗体の軽鎖が、配列番号15の
・31位に相当する位置にE、
・32位に相当する位置にS、
・33位に相当する位置にD、
・37位に相当する位置にY、
・96位に相当する位置にA、
・97位に相当する位置にT、および
・99位に相当する位置にF
のアミノ酸残基を含み、
前記抗体の重鎖が、配列番号18の
・31位に相当する位置にN、
・53位に相当する位置にR、
・54位に相当する位置にS、
・57位に相当する位置にY、
・59位に相当する位置にY、
・60位に相当する位置にF、
・61位に相当する位置にP、
・62位に相当する位置にD、
・65位に相当する位置にQ、
・102位に相当する位置にY、
・103位に相当する位置にD、および
・106位に相当する位置にD
のアミノ酸残基を含む、請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0291】
実施形態24:前記重鎖が、配列番号18の52位に相当する位置にSをさらに含む、実施形態22または実施形態23に記載のモノクローナル抗体。
【0292】
実施形態25:前記軽鎖が、配列番号15の98位に相当する位置にHをさらに含み、前記重鎖が、配列番号18の56位に相当する位置にSをさらに含む、実施形態22〜23のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0293】
実施形態26:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が、配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列を含み、これらのアミノ酸の1つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0294】
実施形態27:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できる請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体であって、配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列を含み、これらのアミノ酸の1つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0295】
実施形態28:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が、配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列を含み、これらのアミノ酸の1、2または3つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0296】
実施形態29: 組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できる請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が、配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列を含み、これらのアミノ酸の1、2または3つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0297】
実施形態30: 組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が、配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列を含み、これらのアミノ酸の1、2または3つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0298】
実施形態31: 組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できる請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が、配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列を含み、これらのアミノ酸の1、2または3つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0299】
実施形態32:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列を含み、これらのアミノ酸の1、2または3つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0300】
実施形態33:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できる請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列を含み、これらのアミノ酸の1、2または3つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0301】
実施形態34:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列を含み、これらのアミノ酸の1または2つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0302】
実施形態35:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できる請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列を含み、これらのアミノ酸の1または2つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0303】
実施形態36:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列を含み、これらのアミノ酸の1または2つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0304】
実施形態37:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できる請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列を含み、これらのアミノ酸の1または2つが、別のアミノ酸で置換されていてよい抗体。
【0305】
実施形態38:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含む抗体。
【0306】
実施形態39:前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含む、請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0307】
実施形態40:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含む抗体。
【0308】
実施形態41:前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含む、請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0309】
実施形態42:組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz 2(K2)ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含み、
前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含む抗体。
【0310】
実施形態43:前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含み、
前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)のCDR1配列(これらのアミノ酸の1、2もしくは3つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)のCDR2配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)および/または
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)のCDR3配列(これらのアミノ酸の1または2つは、別のアミノ酸で置換されていてよい)
を含む、請求項1〜21のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0311】
実施形態44:前記アミノ酸置換が:
配列番号18のCDR1領域の
・31位に相当する位置にN;
配列番号18のCDR2領域の
・53位に相当する位置にR;
・54位に相当する位置にS;
・56位に相当する位置にS;
・57位に相当する位置にY;
・59位に相当する位置にY;
・60位に相当する位置にF;
・61位に相当する位置にP;
・62位に相当する位置にD;および
・65位に相当する位置にQ;
配列番号18のCDR3領域の
・102位に相当する位置にY;
・103位に相当する位置にD;および
・106位に相当する位置にD;
配列番号15のCDR1領域の
・31位に相当する位置にE;
・32位に相当する位置にS;
・33位に相当する位置にD;および
・37位に相当する位置にY;
配列番号15のCDR3領域の
・96位に相当する位置にA;
・97位に相当する位置にT;
・98位に相当する位置にH;および
・99位に相当する位置にF
のアミノ酸を含まない、実施形態26〜43のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0312】
実施形態45:前記アミノ酸置換が、保存的置換である、実施形態26〜44のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0313】
実施形態46:前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)を含むCDR1配列と、
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)を含むCDR2配列と、
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)を含むCDR3配列と
を含む、実施形態26〜45のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0314】
実施形態47:前記抗体の軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)を含むCDR1配列と、
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)を含むCDR2配列と、
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)を含むCDR3配列と
を含む、実施形態26〜46のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0315】
実施形態48:前記抗体の重鎖が:
・配列番号18のアミノ酸31〜35(NYAMS)を含むCDR1配列と、
・配列番号18のアミノ酸50〜66(TISRSGSYSYFPDSVQG)を含むCDR2配列と、
・配列番号18のアミノ酸99〜110(LGGYDEGDAMDS)を含むCDR3配列と
を含み、
軽鎖が:
・配列番号15のアミノ酸24〜39(KSSQSLLESDGKTYLN)を含むCDR1配列と、
・配列番号15のアミノ酸55〜61(LVSILDS)を含むCDR2配列と、
・配列番号15のアミノ酸94〜102(LQATHFPQT)を含むCDR3配列と
を含む、実施形態46〜47のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0316】
実施形態49:前記抗体の軽鎖が、配列番号15を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0317】
実施形態50:前記抗体の重鎖が、配列番号18を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0318】
実施形態51:前記抗体が、配列番号15および配列番号18を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0319】
実施形態52:前記抗体が、配列番号21の軽鎖を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0320】
実施形態53:前記抗体が、配列番号24の重鎖を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0321】
実施形態54:前記抗体が、配列番号21および配列番号24を含む、実施形態52〜53のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0322】
実施形態55:ヒト化抗体である、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0323】
実施形態56:重鎖のフレームワーク領域2が、配列番号18の:
・40位に相当する位置にT、
・42位に相当する位置にE、
・44位に相当する位置にR、および
・49位に相当する位置にA
のアミノ酸を含む、実施形態55に記載のモノクローナル抗体。
【0324】
実施形態57:重鎖のフレームワーク領域2が、配列番号18の36位〜49位に相当するアミノ酸(WVRQTPEKRLEWVA)を含む、実施形態55に記載のモノクローナル抗体。
【0325】
実施形態58:ヒト抗体である、実施形態1〜54のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0326】
実施形態59:キメラ抗体である、実施形態1〜54のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0327】
実施形態60:前記抗体のアイソタイプが、IgGである、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0328】
実施形態61:前記アイソタイプが、IgG1、IgG2またはIgG4である、実施形態60に記載のモノクローナル抗体。
【0329】
実施形態62:前記抗体のアイソタイプが、IgG4である、実施形態61に記載のモノクローナル抗体。
【0330】
実施形態63:前記抗体のFc領域の少なくとも1つのアミノ酸が、別のアミノ酸で置換されている、実施形態60〜62のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0331】
実施形態64:前記抗体のFc領域が、配列番号24のアミノ酸122〜448と少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば95〜100%同一である、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0332】
実施形態65:mAb0281よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体。
【0333】
実施形態66:mAb0281よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できる、実施形態1〜64のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0334】
実施形態67:mAb4904よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体。
【0335】
実施形態68:mAb4904よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できる、実施形態1〜66のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0336】
実施形態69:mAb2974よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体。
【0337】
実施形態70:mAb2974よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できる、実施形態1〜68のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0338】
実施形態71:mAb29741よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体。
【0339】
実施形態72:mAb29741よりも高い親和性でTFPIのK2ドメインと結合できる、実施形態1〜70のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0340】
実施形態73:TFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、前記抗体のKDが、0.8nM未満、例えば0.7nM未満、例えば0.6nM未満、例えば0.5nM未満、例えば0.4nM未満、例えば0.3nM未満、例えば0.2nM未満、例えば0.1nM未満、例えば0.05nM未満、例えば0.025nM未満である抗体。
【0341】
実施形態74:前記抗体のKDが、0.8nM未満、例えば0.7nM未満、例えば0.6nM未満、例えば0.5nM未満、例えば0.4nM未満、例えば0.3nM未満、例えば0.2nM未満、例えば0.1nM未満、例えば0.05nM未満、例えば0.025nM未満である、実施形態1〜73のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0342】
実施形態75:血小板結合TFPIのK2ドメインと結合できる、上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0343】
実施形態76:可溶性TFPIを阻害できる、上記実施形態のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【0344】
実施形態77:前記可溶性TFPIが、完全に阻害され得る、実施形態76に記載のモノクローナル抗体。
【0345】
実施形態78:リポタンパク質結合TFPIを阻害できる、上記実施形態のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【0346】
実施形態79:内皮細胞結合TFPIを阻害できる、上記実施形態のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【0347】
実施形態80:FXaがその活性を、FXa阻害アッセイで測定して、少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば99〜100%保持するようにTFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体。
【0348】
実施形態81:FXaがその活性を、FXa阻害アッセイで測定して、少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば99〜100%保持するようにTFPIと結合できる、実施形態1〜79のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0349】
実施形態82:対象における遊離TFPIのパーセンテージが、30%未満、例えば29%未満、例えば28%未満、例えば27%未満、例えば26%未満、例えば25%未満、例えば24%未満、例えば23%未満、例えば22%未満、例えば21%未満、例えば20%未満、例えば19%未満、例えば18%未満、例えば17%未満、例えば16%未満、例えば15%未満、例えば14%未満、例えば13%未満、例えば12%未満、例えば11%未満、例えば10%未満、例えば9%未満、例えば8%未満、例えば7%未満、例えば6%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば3%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば1%〜0%まで低減されるようにTFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体。
【0350】
実施形態83:対象における遊離TFPIのパーセンテージが、30%未満、例えば29%未満、例えば28%未満、例えば27%未満、例えば26%未満、例えば25%未満、例えば24%未満、例えば23%未満、例えば22%未満、例えば21%未満、例えば20%未満、例えば19%未満、例えば18%未満、例えば17%未満、例えば16%未満、例えば15%未満、例えば14%未満、例えば13%未満、例えば12%未満、例えば11%未満、例えば10%未満、例えば9%未満、例えば8%未満、例えば7%未満、例えば6%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば3%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば1%〜0%まで低減されるようにTFPIのK2ドメインと結合できる、請求項1〜81のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0351】
実施形態84:対象における遊離TFPIの量が、前記モノクローナル抗体を前記個体に投与した後の最初の28日間、例えば最初の27日間、例えば最初の26日間、例えば最初の25日間、例えば最初の24日間、例えば最初の23日間、例えば最初の22日間、例えば最初の21日間、例えば最初の20日間、例えば最初の19日間、例えば最初の18日間、例えば最初の17日間、例えば最初の16日間、例えば最初の15日間、例えば最初の14日間、例えば最初の13日間、例えば最初の12日間、例えば最初の11日間、例えば最初の10日間、例えば最初の9日間、例えば最初の8日間、例えば最初の7日間、例えば最初の6日間、例えば最初の5日間、例えば最初の4日間、例えば最初の3日間、例えば最初の2日間、例えば最初の日の間に低減される、実施形態83に記載のモノクローナル抗体。
【0352】
実施形態85:TFPIのK2ドメインと結合できるモノクローナル抗体であって、TFPIが前記抗体で飽和されている場合に、FVIIa/TF/FXa阻害因子アッセイにおいて測定して、膜結合FVIIa/TF/FXaのTFPI阻害を、少なくとも55%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば100%まで、例えば100%中和できるモノクローナル抗体。
【0353】
実施形態86:前記抗体が、TFPIが前記抗体で飽和されている場合に、FVIIa/TF/FXa阻害因子アッセイにおいて測定して、膜結合FVIIa/TF/FXaのTFPI阻害を、少なくとも55%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば100%まで、例えば100%中和できる、実施形態1〜84のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【0354】
実施形態87:TFPIのK2ドメインと結合でき、血小板カウントを著しく低減することなくin vivo凝固時間を低減するモノクローナル抗体。
【0355】
実施形態88:前記抗体が、血小板カウントを著しく低減することなくin vivo凝固時間を低減する、実施形態1〜86のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0356】
実施形態89:前記血小板カウントが、元の血小板カウントのおよそ80%、例えばおよそ75%、例えばおよそ70%、例えばおよそ65%、例えばおよそ60%、例えばおよそ55%、例えばおよそ50%、例えばおよそ45%、例えばおよそ40%、例えばおよそ35%、例えばおよそ30%、例えばおよそ25%まで低下しない、実施形態88に記載のモノクローナル抗体。
【0357】
実施形態90:TFPIのK2ドメインと結合でき、一過性血小板減少症を引き起こすことなくin vivo凝固時間を低減するモノクローナル抗体。
【0358】
実施形態91:前記抗体が、一過性血小板減少症を引き起こすことなくin vivo凝固時間を低減する、実施形態1〜89のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
【0359】
実施形態92:上記実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体のフラグメント。
【0360】
実施形態93:Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fdフラグメント、FvフラグメントまたはdAbフラグメントである、実施形態92に記載のフラグメント。
【0361】
実施形態94:欠失バリアントまたは挿入バリアントである、実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体のバリアント。
【0362】
実施形態95:実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む医薬製剤。
【0363】
実施形態96:非経口での使用に適する、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む医薬製剤。
【0364】
実施形態97:前記抗体が、静脈内での使用に適する、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む医薬製剤。
【0365】
実施形態98:前記抗体が、筋肉内での使用に適する、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む医薬製剤。
【0366】
実施形態99:前記抗体が、皮下での使用に適する、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を含む医薬製剤。
【0367】
実施形態100:非経口投与に適する医薬品の製造のための、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体の使用。
【0368】
実施形態101:静脈内投与に適する医薬品の製造のための、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体の使用。
【0369】
実施形態102:筋肉内投与に適する医薬品の製造のための、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体の使用。
【0370】
実施形態103:皮下投与に適する医薬品の製造のための、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体の使用。
【0371】
実施形態104:凝血異常の対象を治療するための、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体の使用。
【0372】
実施形態105:前記対象が、阻害因子を有するかもしくは有さない血友病A、および阻害因子を有するかもしくは有さない血友病Bからなる群より選択できるような先天性、後天性および/または医原性の凝血異常のいずれかを有する、実施形態104に記載の使用。
【0373】
実施形態106:前記モノクローナル抗体が、血液喪失を著しく低減する、実施形態95〜105のいずれか1つに記載の使用。
【0374】
実施形態107:前記モノクローナル抗体が、出血時間を著しく低減する、実施形態95〜106のいずれか1つに記載の使用。
【0375】
実施形態108:投与されるモノクローナル抗体の量が、前記モノクローナル抗体の約10μg/ml〜約40μg/ml、例えば約15〜35μg/ml、例えば約10〜15μg/ml、例えば約15〜20μg/ml、例えば約20〜25μg/ml、例えば約25〜30μg/ml、例えば約30〜35μg/ml、例えば約35〜40μg/mlの血漿濃度をもたらす、実施形態95〜107のいずれか1つに記載の使用。
【0376】
実施形態109:凝血異常の対象を治療する方法であって、前記対象に、実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を投与するステップを含む方法。
【0377】
実施形態110:前記凝血異常が、阻害因子を有するかもしくは有さない血友病A、および阻害因子を有するかもしくは有さない血友病Bからなる群より選択できるような先天性、後天性および/または医原性の凝血異常のいずれかである、実施形態109に記載の方法。
【0378】
実施形態111:前記モノクローナル抗体が、血液喪失を著しく低減できる、実施形態109〜110のいずれか1つに記載の方法。
【0379】
実施形態112:前記モノクローナル抗体が、出血時間を著しく低減できる、実施形態109〜111のいずれか1つに記載の方法。
【0380】
実施形態113:投与されるモノクローナル抗体の量が、その標的を飽和するようなものである、実施形態109〜112のいずれか1つに記載の方法。
【0381】
実施形態114:投与されるモノクローナル抗体の量が、可溶性TFPIを飽和するようなものである、実施形態109〜113のいずれか1つに記載の方法。
【0382】
実施形態115:前記投与される抗体が、可溶性TFPIを完全に阻害できる、実施形態109〜114のいずれか1つに記載の方法。
【0383】
実施形態116:前記モノクローナル抗体が、内皮結合TFPIを飽和するのに十分な量で投与される、実施形態109〜115のいずれか1つに記載の方法。
【0384】
実施形態117:投与されるモノクローナル抗体の量が、前記モノクローナル抗体の約10μg/ml〜約40μg/ml、例えば約15〜35μg/ml、例えば約10〜15μg/ml、例えば約15〜20μg/ml、例えば約20〜25μg/ml、例えば約25〜30μg/ml、例えば約30〜35μg/ml、例えば約35〜40μg/mlの血漿濃度をもたらす、実施形態109〜116のいずれか1つに記載の方法。
【0385】
実施形態118:単回用量が、投与され得る、実施形態109〜117のいずれか1つに記載の方法。
【0386】
実施形態119:複数回用量が、投与され得る、実施形態109〜118のいずれか1つに記載の方法。
【0387】
実施形態120:前記抗体が、毎日投与され得る、実施形態109〜119のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
実施形態121:前記抗体が、1日おきに投与され得る、実施形態109〜120のいずれか1つに記載の方法。
【0389】
実施形態122:前記抗体が、3日毎に投与され得る、実施形態109〜121のいずれか1つに記載の方法。
【0390】
実施形態123:前記抗体が、4日毎に投与され得る、実施形態109〜122のいずれか1つに記載の方法。
【0391】
実施形態124:前記抗体が、5日毎に投与され得る、実施形態109〜123のいずれか1つに記載の方法。
【0392】
実施形態125:前記抗体が、6日毎に投与され得る、実施形態109〜124のいずれか1つに記載の方法。
【0393】
実施形態126:前記モノクローナル抗体が、5、6、7、8、9または10日毎のようなほぼ毎週投与され得る、実施形態109〜125のいずれか1つに記載の方法。
【0394】
実施形態127:前記モノクローナル抗体が、11、12、13、14、15、16または17日毎のようなほぼ1週間おきに投与され得る、実施形態109〜126のいずれか1つに記載の方法。
【0395】
実施形態128:前記モノクローナル抗体が、18、19、20、21、22、23または24日毎のようなほぼ3週間毎に投与され得る、実施形態109〜127のいずれか1つに記載の方法。
【0396】
実施形態129:前記モノクローナル抗体が、25、26、27、28、29、30または31日毎のようなほぼ4週間毎に投与され得る、実施形態109〜128のいずれか1つに記載の方法。
【0397】
実施形態130:投与量が、およそ0.1〜10mg/kg、例えばおよそ0.1〜1mg/kg、例えばおよそ1〜2mg/kgもしくはおよそ2〜3mg/kgもしくはおよそ4〜5mg/kgもしくはおよそ5〜6mg/kgもしくはおよそ6〜7mg/kgもしくはおよそ7〜8mg/kgもしくはおよそ8〜9mg/kgもしくはおよそ9〜10mg/kg;またはおよそ10〜21mg/kg、例えばおよそ10〜11mg/kgもしくはおよそ11〜12mg/kgもしくはおよそ12〜13mg/kgもしくはおよそ13〜14mg/kgもしくはおよそ14〜15mg/kgもしくはおよそ15〜16mg/kgもしくはおよそ16〜17mg/kgもしくはおよそ17〜18mg/kgもしくはおよそ18〜19mg/kgもしくはおよそ19〜20mg/kgもしくはおよそ20〜21mg/kgであり得る、実施形態109〜129のいずれか1つに記載の方法。
【0398】
実施形態131:投与量が、およそ2〜200mg/kg、例えば約150〜200mg/kg、例えば約150〜170mg/kg、例えば約100〜150mg/kg、例えば約50〜100mg/kg、例えば約70〜90mg/kg、例えば約10〜50mg/kg、例えば約10〜30mg/kgであり得る、実施形態109〜130のいずれか1つに記載の方法。
【0399】
実施形態132:前記モノクローナル抗体が、非経口投与され得る、実施形態109〜131のいずれか1つに記載の方法。
【0400】
実施形態133:前記モノクローナル抗体が、静脈内投与され得る、実施形態132に記載の方法。
【0401】
実施形態134:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ10〜20mg/kgであり得る、実施形態133に記載の方法。
【0402】
実施形態135:モノクローナル抗体が、1週間おきに投与され得る、実施形態133〜134のいずれか1つに記載の方法。
【0403】
実施形態136:モノクローナル抗体が、3週間毎に投与され得る、実施形態133〜135のいずれか1つに記載の方法。
【0404】
実施形態137:モノクローナル抗体が、4週間毎に投与され得る、実施形態133〜136のいずれか1つに記載の方法。
【0405】
実施形態138:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ10〜20mg/kgであり得、前記モノクローナル抗体が、1週間おきに投与され得る、実施形態133に記載の方法。
【0406】
実施形態139:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ10〜20mg/kgであり得、前記モノクローナル抗体が、3週間毎に投与され得る、実施形態133に記載の方法。
【0407】
実施形態140:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ10〜20mg/kgであり得、前記モノクローナル抗体が、4週間毎に投与され得る、実施形態133に記載の方法。
【0408】
実施形態141:前記モノクローナル抗体が、筋肉内投与され得る、実施形態132に記載の方法。
【0409】
実施形態142:前記モノクローナル抗体が、皮下投与され得る、実施形態132に記載の方法。
【0410】
実施形態143:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ1mg/kgであり得る、実施形態132に記載の方法。
【0411】
実施形態144:前記モノクローナル抗体が、毎日投与され得る、実施形態141〜143のいずれか1つに記載の方法。
【0412】
実施形態145:モノクローナル抗体が、1日おきに投与され得る、実施形態141〜144のいずれか1つに記載の方法。
【0413】
実施形態146:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ1mg/kgであり得、前記モノクローナル抗体が、毎日投与され得る、実施形態141〜145のいずれか1つに記載の方法。
【0414】
実施形態147:前記モノクローナル抗体の投与量が、およそ1mg/kgであり得、前記モノクローナル抗体が、1日おきに投与され得る、実施形態141〜146のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0415】
実施形態148:前記抗体が、予防的に投与され得る、実施形態109〜147のいずれか1つに記載の方法。
【0416】
実施形態149:前記抗体が、治療的に投与され得る(要求に応じて)、実施形態109〜148のいずれか1つに記載の方法。
【0417】
実施形態150:前記投与された抗体が、可溶性TFPIを完全に(100%)阻害できる、実施形態109〜149のいずれか1つに記載の方法。
【0418】
実施形態151:実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド。
【0419】
実施形態152:配列番号13、16、19および22からなる群より選択される少なくとも1つの配列を含む、実施形態151に記載のポリヌクレオチド。
【0420】
実施形態153 :配列番号19を含む、実施形態152に記載のポリヌクレオチド。
【0421】
実施形態154:配列番号22を含む、実施形態152に記載のポリヌクレオチド。
【0422】
実施形態155:配列番号19および22を含む、実施形態152に記載のポリヌクレオチド。
【0423】
実施形態156:実施形態151〜155のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、真核生物細胞。
【0424】
実施形態157:実施形態1〜94のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはそのフラグメントを発現する真核生物細胞。
【0425】
実施形態158:哺乳動物細胞である、実施形態157に記載の真核生物細胞。
【0426】
実施形態159:酵母細胞である、実施形態157に記載の真核生物細胞。
【0427】
実施形態160:HEK293、CHO、BHK、NSOおよびヒト網膜細胞からなる群より選択される、実施形態158に記載の哺乳動物細胞。
【0428】
(実施例)
本発明を、さらなる限定と解釈されるべきでない以下の実施例によりさらに説明する。全ての図面、ならびに本出願を通して引用される全ての参考文献、特許および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明らかに組み込まれる。
【0429】
(実施例1)
TFPIに対するモノクローナル抗体の生成および特徴決定
モノクローナル抗体を、組織因子経路阻害因子(TFPI)に対して作製した。所望の結合特異性を有するモノクローナル抗体を同定し、クローニングして配列決定した。この抗体は、表皮出血時間をin vivoで著しく低減し、血小板数の著しい低下を導かないことがわかった。
【0430】
方法および結果
全てのキットは、製造業者の使用説明書に従って用いた。略語:HC:重鎖;LC:軽鎖;VH:可変ドメイン-重鎖;VL:可変ドメイン-軽鎖;PCR:ポリメラーゼ連鎖反応。
【0431】
免疫化および融合
マウスを、全長TFPIと、最初の2つのKunitzドメインのみを含有する短いバージョンのTFPIB161Bとの両方で免疫した。RBFマウスを、免疫化およびマウスモノクローナル抗体の生成のために用いた。注射を、マウスの背部に皮下で行った。20μgのタンパク質を、最初の注射のために完全フロイントアジュバントと混合した。後続の免疫化において、不完全フロイントアジュバントを、同じ濃度の抗原とともに用いた。最後の免疫化の10日後に、マウスからの目の血液をELISAによりTFPI特異的抗体についてスクリーニングした。陽性の血清抗体価を有するマウスに、10μgのTFPIを静脈内ブースター注射し、3日後に犠牲にした。脾臓を無菌的に回収し、単一細胞懸濁物まで分散させた。脾臓細胞と骨髄腫細胞との融合を、PEG法または電気融合により行った。
【0432】
結合アッセイ:ELISA
イムノプレートを、抗マウスIgGで被覆した。ハイブリドーマ細胞からの培養上清をプレートに加え、洗浄した後に、可溶性ビオチン化ヒトTFPIまたはTFPIB161Bを、特異的結合についての試験のために加えた。
【0433】
中和アッセイ:FXaアッセイおよびTF/FVIIa/FXaアッセイ
FXa阻害アッセイ:90%のFXaの阻害を生じさせる固定濃度のTFPIを、抗TFPIモノクローナル抗体を含有するハイブリドーマ細胞からの培養上清と予備インキュベートし、FXaとFXa特異的色素産生性基質に加えた。このアッセイは、FXaと結合するTFPIに関するものである(実施例6により詳細に記載する)。
【0434】
FVIIa/TF/FXa阻害アッセイ:1)抗TFPIモノクローナル抗体を含有するハイブリドーマ細胞からの培養上清と、固定TFPI(FVIIa/TFの90%阻害)とのインキュベーション;2)TFPI+FVIIa+TF+FXaのインキュベーション;3)FXの添加(FX>>FXa)、およびその後のFXa色素産生性基質とのインキュベーション(実施例7により詳細に記載する)。
【0435】
希釈プロトロンビン時間(dPT)
希釈プロトロンビン(PT)分析:希釈ヒトトロンボプラスチン(TF源)と組み合わせたヒト血漿。血漿での凝固時間を、漸増濃度のプロテインA精製TFPIモノクローナル抗体の添加の際に測定して、凝固時間の用量依存的な低減について検討した。FVIIa(25nM)は陽性対照であり、この凝固時間を短くするはずである。
【0436】
結合相互作用分析
結合相互作用分析は、Biacore 3000での表面プラズモン共鳴により得た。固定濃度での関連するモノクローナル抗体の捕捉は、固定化マウス抗IgGを用いて得た。異なる濃度でのTFPIを試験した。結合定数(kon、koff、KD)の決定は、TFPIと対象抗体との1:1相互作用を仮定して行った(実施例8により詳細に記載する)。
【0437】
トロンボエラストグラフィ
これは、全血における凝血塊形成および線維素溶解の動態を記録する。血友病A様状態は、血液を中和抗FVIII IgGと予備インキュベートすることにより誘導される。
【0438】
抗体クローニングおよび配列決定
抗TFPI抗体のマウス重鎖および軽鎖配列を、ハイブリドーマ:TFPI-4F36A1B2(本明細書において4F36と省略する)からクローニングした。QiagenからのRNeasy-Miniキットを用いてハイブリドーマ細胞から抽出したトータルRNAを、cDNA合成の鋳型として用いた。cDNAは、ClontechからのSMART(商標)RACE cDNA増幅キットを用いて5'-RACE反応で合成した。HCおよびLC配列の後続の標的増幅を、Phusion Hot Starポリメラーゼ(Finnzymes)およびフォワードプライマーとしてSMART(商標)RACEキットに含まれるユニバーサルプライマーミックス(UPM)を用いるPCRにより行った。以下の配列を有するリバースプライマーを、HC(VHドメイン)増幅のために用いた:5'-CCCTTGACCAGGCATCCCAG-3'(プライマー#129)。以下の配列を有するリバースプライマーを、LC増幅のために用いた:5'-GCTCTAGACTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTG-3'(プライマー#69)。
【0439】
PCR生成物をゲル電気泳動により分離し、GE Healthcare Bio-SciencesからのGFX PCR DNAおよびゲルバンド精製キットを用いて抽出し、Zero Blunt TOPO PCR CloningキットおよびInvitrogenからの化学コンピテントTOP10大腸菌(E.coli)を用いて配列決定のためにクローニングした。コロニーPCRを、選択したコロニーについて、Applied BiosystemsからのAmpliTaq GoldマスターミックスおよびM13uni/M13revプライマーを用いて行った。コロニーPCR浄化は、ExoSAP-IT酵素ミックス(usb)を用いて行った。配列決定は、MWG Biotech、Martinsried Germanyにて、M13uni(-21)/M13rev(-29)またはT3/T7配列決定プライマーのいずれかを用いて行った。配列を分析し、VectorNTIプログラムを用いてアノテートした。
【0440】
ハイブリドーマTFPI-4F36A1B2から、単一のユニークマウスカッパ型LCと、単一のユニークマウスHC、サブクラスIgG1が同定された。LC配列を配列番号6に示し、HC配列を配列番号10に示す。VHおよびVL配列を図2に示し、リーダーペプチド配列は含まない。
【0441】
エピトープ
TFPI1は、3つのKunitzドメインを含む(図4を参照されたい)。TFPI1のKunitzドメインの表面露出残基は、TFPI1-2の既存の構造から同定した。特に、40%より大きい相対的近づきやすさを有する残基は、表面露出であるとみなす。TFPI1-2について、これは(図5を参照されたい):アミノ酸94〜95、98、100〜110、118〜121、123〜124、131、134、138〜142および144〜145を含む。
【0442】
(実施例2)
マウスTFPI4F36A1B2 mAbのクローニングおよび配列決定
この実施例は、抗TFPI抗体:TFPI4F36A1B2のマウス重鎖および軽鎖配列のクローニングおよび配列決定について記載する。
【0443】
トータルRNAを、QiagenからのRNeasy-Miniキットを用いてハイブリドーマ細胞から抽出し、cDNA合成の鋳型として用いた。cDNAは、ClontechからのSMART(商標)RACE cDNA増幅キットを用いて5'-RACE反応で合成した。HCおよびLC配列の後続の標的増幅を、Phusion Hot Startポリメラーゼ(Finnzymes)およびフォワードプライマーとしてSMART(商標)RACEキットに含まれるユニバーサルプライマーミックス(UPM)を用いるPCRにより行った。配列番号11で同定されるリバースプライマーをHC(VHドメイン)増幅のために用い、配列番号12で同定されるリバースプライマーをLC増幅のために用いた。PCR生成物をゲル電気泳動により分離し、GE Healthcare Bio-SciencesからのGFX PCR DNAおよびゲルバンド精製キットを用いて抽出し、Zero Blunt TOPO PCRクローニングキットおよび化学コンピテントTOP10大腸菌(Invitrogen)を用いて配列決定のためにクローニングした。コロニーPCRを、選択したコロニーについて、Applied BiosystemsからのAmpliTaq GoldマスターミックスおよびM13uni/M13revプライマーを用いて行った。コロニーPCR浄化は、ExoSAP-IT酵素ミックス(USB)を用いて行った。配列決定は、MWG Biotech、Martinsried Germanyにて、M13uni(-21)/M13rev(-29)またはT3/T7配列決定プライマーのいずれかを用いて行った。配列を分析し、VectorNTIプログラムを用いてアノテートした。全てのキットおよび試薬は、製造業者の使用説明書に従って用いた。単一のユニークマウスカッパ型LCと、単一のユニークマウスHC、サブクラスIgG1が同定された。可変軽鎖の核酸およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および5に示す。可変重鎖の核酸およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号7および9に示す。リーダーペプチド配列は、これらの配列に含まない。
【0444】
BLAST検索
翻訳された抗TFPI4F36A1B2 VLおよびVHアミノ酸配列を、クエリ配列として用いた。BLAST検索は、Uniprotデータベースにある配列に対してBLASTp翻訳プログラムを用いて行った。抗TFPI4F36A1B2 VHについての出力は、50の最高同一性スコアのうちの20より多くがマウスIg重鎖配列であったアラインメントを作製する。最高同一性スコアは、マウスIg重鎖配列に対して81%(99/121)であった。抗TFPI4F36A1B2 VLについての出力は、50の最高同一性スコアのうちの30より多くがマウスIgカッパ軽鎖配列であったアラインメントを作製する。最高同一性スコアは、マウスIgカッパ軽鎖に対して92%(105/113)であった。結論として、抗TFPI4F36A1B2についてのVHおよびVL配列は、新しいユニーク配列である。
【0445】
マウス抗TFPI4F36A1B2発現ベクターの作製
一連のCMVプロモーターベースの発現ベクター(pTTベクター)を、Yves Durocher (DurocherらNucleic Acid Research、2002)により開発されたHEK293-6E EBNAベースの発現系におけるマウスTFPI4F36抗体の一過性発現のために作製した。CMVプロモーターに加えて、ベクターは、pMB1起点、EBV起点およびAmp耐性遺伝子を含有する。
【0446】
全長抗TFPI4F36A1B2 LCに対応する領域(元のシグナルペプチド配列を含む)を、元のTOPO配列決定クローンから、NおよびC末端配列に特異的なプライマーを用いてPCR増幅した。センスプライマーは、クローニング目的のための末端HindIII制限部位配列と、ATG開始コドンのすぐ上流にKozak配列(5'-GCCGCCACC-3')とを含有していた。アンチセンスプライマーは、コード配列のすぐ下流に停止コドンとその後のXbaI制限部位配列とを含んでいた。作製したPCRフラグメントを制限消化し、線状にしたpTTベースベクターのマルチクローニング部位(MCS)にクローニングし、選別のために大腸菌を形質転換した。最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。
【0447】
VHドメインに対応する領域(元のシグナルペプチド配列を含む)を、元のTOPO配列決定クローンから、N末端配列およびVH/CH移行配列に特異的なプライマーを用いてPCR増幅した。センスプライマーは、クローニング目的のための末端NotI制限部位配列と、ATG開始コドンのすぐ上流にKozak配列(5'-GCCGCCACC-3')とを含有していた。アンチセンスプライマーは、VH/CH移行の下流にインフレームNheI制限部位を含有していた。作製したVHドメインPCRフラグメントを制限消化し、マウスIgG1についてのCHドメイン配列を含有する線状にしたベクターにクローニングし、選別のために大腸菌を形質転換した。最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。
【0448】
クローニングし、組換え発現させた抗TFPI4F36A1B2抗体は、用いた全てのアッセイにおいて元のハイブリドーマ由来抗体と同じプロファイルおよび親和性を有した。HEK293-6E細胞での一過性発現のために用いた手順は、実施例3に記載する。
【0449】
(実施例3)
ヒト化TFPI4F36 mAbの設計および構築
マウス抗TFPI4F36A1B2 CDR配列を、Kabat定義に従ってアノテートし、以下のとおりであることがわかった:
CDR-H1:NYAMS(配列番号8のアミノ酸31〜35)。
CDR-H2:TISRSGSYSYFPDSVQG(配列番号8のアミノ酸50〜66)。
CDR-H3:LGGYDEGDAMDS(配列番号8のアミノ酸99〜110)。
CDR-L1:KSSQSLLESDGKTYLN(配列番号4のアミノ酸24〜39)。
CDR-L2:LVSILDS(配列番号4のアミノ酸55〜61)。
CDR-L3:LQATHFPQT(配列番号4のアミノ酸94〜102)。
【0450】
抗TFPI4F36A1B2の3Dモデルを、Modeller(www.salilab.org/modeller/)において、構造鋳型2GJJ(Her2erbb2に対するmAB)および1X9Q(フルオレセインに対するhAB)に基づいて構築した。
【0451】
抗TFPI4F36A1B2 VLおよびVHを用いてのヒト生殖系列Vデータベース内のBLASTp検索により、以下の4つの可能性のある生殖系列配列が得られた:
重鎖:VH3_21またはVH7183.9(E値<1e-45)
軽鎖:VKII_A18またはVKII_A1(E値<3e-45)
【0452】
ヒットおよびアラインメントを手動で検分した後に、VH3_21およびVKII_A18生殖系列配列を、それぞれHCおよびLCヒト化フレームワークとして選択した。対応する生殖系列Jセグメントを、配列アラインメントに基づいてJH6およびJK4として選択した。抗TFPI4F36A1B2と選択した生殖系列配列との間のアラインメントは、ヒト化TFPI4F36の第1のCDRグラフト化バージョンと組み合わせて示す。抗TFPI4F36A1B2とヒト足場(HC:VH3_21/JH6およびLC:VKII_A18/JK4)との間の配列同一性は、配列の下のアスタリスクにより示すように非常に高い。各アスタリスクは、配列同一の位置に印を付す。最初のヒト化VH構築物を、最小CDRグラフト化ストラテジーに従って設計したが、ここでは、CDR-H2を、Kabat定義(残基50〜66)よりも短いバージョン(残基50〜58)でグラフトさせる。残りの5つのCDRを、Kabat定義に従ってグラフトした。CDR(Kabat定義)は、グラフトしたとおりに以下に列挙する;CDR-H2について下線を付す残基は、ヒト生殖系列残基である。
CDR-H1:NYAMS(配列番号18のアミノ酸31〜35)。
CDR-H2:TISRSGSYSYYADSVKG(配列番号28のアミノ酸50〜66)。
CDR-H3:LGGYDEGDAMDS(配列番号18のアミノ酸99〜110)。
CDR-L1:KSSQSLLESDGKTYLN(配列番号15のアミノ酸24〜39)。
CDR-L2:LVSILDS (配列番号15のアミノ酸55〜61)。
CDR-L3:LQATHFPQT(配列番号15のアミノ酸94〜102)。
【0453】
最終的なヒト化バリアントHzTFPI4F36中のCDR-H2の組成を以下に列挙し、これは、マウス抗体である抗TFPI4F36A1B2について列挙したCDR-H2と一致する。
CDR-H2:TISRSGSYSYFPDSVQG(配列番号18のアミノ酸50〜66)。
【0454】
図1は、ヒト生殖系列配列(それぞれ配列番号32および31)およびCDRグラフト化ヒト化TFPI4F36配列(それぞれ配列番号28および26)と整列させたマウス抗TFPI4F36A1B2のVH(A)およびVL(B)ドメインの配列(それぞれ配列番号8および4)を示す。図中の配列の上に示すようにKabat番号付け方式を用い、Kabat定義に従うCDRを太字で示す。マウス抗TFPI4F36A1B2と生殖系列配列との間でのフレームワーク領域の違いは、抗TFPI4F36A1B2配列中に灰色で強調する。アスタリスクは、マウスTFPI4F36とヒト生殖系列配列との間で同一の配列の位置を示す。可能性のある復帰変異は、HzTFPI4F36-CDRgrafted配列(hz4F36CDRgraftとして列挙する)中に灰色で強調する。
【0455】
HzTFPI4F36-CDRgrafted構築物についての可能性のある復帰変異は、マウスTFPI4F36と生殖系列配列とのフレームワーク領域で見出された位置的な違いに基づいて同定した。図1が配列を示すTFPI4F36 Fabフラグメントの3Dモデルも、可能性のある復帰変異を同定して優先順位を付すために用いた。ヒト化TFPI4F36 LCおよびHCにおいて作製した復帰変異のリストを、それぞれTables 2および3(表3および4)に示す。
【0456】
ヒト化TFPI4F36についての発現ベクターの作製
ヒト化TFPI4F36 VHおよびVL領域についてのDNA配列を、上記の抗体のヒト化設計に従って合成した(GENEART AG)。配列は、基本的な最小CDRグラフト化を用い、さらなる復帰変異を用いずに得た。構築物中に、それぞれのLCおよびHC生殖系列リーダーペプチド配列、ならびにKozak配列(5'-GCCGCCACC-3')をATG開始コドンのすぐ上流に含めた。
【0457】
pTTベースの発現ベクターを、ヒト化TFPI4F36抗体をヒトカッパ/IgG4(S241P)アイソタイプとして一過性発現させるために作製した。241位(Kabatに従う番号付け、EU番号付けシステム(Edelman G. M.ら、Proc. Natl. Acad. USA 63、78〜85頁(1969)に従う残基228に相当する)でのプロリン変異をIgG4ヒンジ領域に導入して、単量体抗体フラグメント、すなわち1つのLCと1つのHCとを含む「半抗体(half-antibodies)」の形成を排除した。
【0458】
VHフラグメントをGENEARTクローニングベクターから切り出し、ヒトIgG4(S241P)CHドメインについての配列を含有する線状にしたpTTベースのベクターにクローニングし、その後、選別のために大腸菌を形質転換した。最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。VLフラグメントをGENEARTクローニングベクターから切り出し、ヒトカッパCLドメインについての配列を含有する線状にしたpTTベースのベクターにクローニングし、その後、選別のために大腸菌を形質転換した。最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。
【0459】
CDRグラフト化HzTFPI4F36モノクローナル抗体のVL、VH、LCおよびHCについての核酸ならびにアミノ酸配列(シグナルペプチド配列は省略する)を、配列表(配列番号26〜30)に示す。
【0460】
マウス/ヒトキメラTFPI4F36についての発現ベクターの作製
ヒト化TFPI4F36バリアントのできる限り最良の評価を可能にするために、抗TFPI4F36抗体のマウス/ヒトキメラバージョン(ChimTFPI4F36)を構築して、定常領域起源およびアイソタイプに関連するいずれの違いも排除した。pTTベースの発現ベクターを、キメラ抗TFPI4F36抗体を、ヒトカッパ/IgG4(S241P)アイソタイプ足場上のマウス可変ドメインとともに一過的に発現させるために作製した。
【0461】
VHドメインに相当する領域を、抗TFPI4F36A1B2 HC発現プラスミドから、一般pTT特異的プライマーと、VHドメインのC末端に特異的なプライマーとを用いてPCR増幅した。センスプライマーは、HindIII制限部位およびATG開始コドンの上流の配列のひと続きに特異的である。アンチセンスプライマーは、VH/CH移行配列中にインフレームNheI制限部位を含有していた。作製したPCRフラグメントを制限消化し、ヒトIgG4(S241P)CHドメインについての配列を含有する線状にしたpTTベースのベクターにクローニングし、その後、選別のために大腸菌を形質転換した。最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。
【0462】
VLドメインに相当する領域を、TFPI4F36A1B2 LC発現プラスミドから、一般pTT特異的プライマーとVLドメインのC末端に特異的なプライマーとを用いてPCR増幅した。センスプライマーは、HindIII制限部位およびATG開始コドンの上流の配列のひと続きに特異的である。アンチセンスプライマーは、VL/CL移行配列中にインフレームBsiWI制限部位を含有していた。作製したPCRフラグメントを制限消化し、ヒトカッパCLドメインについての配列を含有する線状にしたpTTベースのベクターにクローニングし、その後、選別のために大腸菌を形質転換した。最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。
【0463】
mAbバリアントの組換え発現
マウス抗TFPI4F36A1B2、キメラ抗TFPI4F36およびヒト化TFPI4F36抗体バリアントを、一般的な抗体発現プロトコルに従ってHEK293-6E細胞で一過的に発現させた。以下の手順は、浮遊順応HEK293-6E細胞について用いた一般的な形質移入プロトコルについて記載する。
【0464】
細胞の維持
HEK293-6E細胞を、25μg/ml ジェネテシン(Gibco)、0.1%v/vの界面活性剤Pluronic F-68(Gibco)および1%v/vペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補ったFreestyle(商標)293発現培地(Gibco)中で浮遊成長させた。細胞を、振とうインキュベータ中のエルレンマイヤー振とうフラスコ中で37℃、8%CO2および125rpmにて培養し、0.1〜1.5×106細胞/mlの細胞密度で維持した。
【0465】
DNA形質移入
・形質移入のために用いた培養物の細胞密度は、0.9〜2.0×106細胞/mlであった。
・0.5μg LCベクターDNA+0.5μg HCベクターDNAのミックスを1mlの細胞培養物あたりに用いた。
・DNAを、Opti-MEM培地(Gibco)中で30μl培地/μg DNAに希釈し、混合し、室温(23〜25℃)にて5分間インキュベートした。
・293Fectin(商標)(Invitrogen)を、形質移入試薬として、1μg DNAあたり1μlの濃度で用いた。
・293Fectin(商標)を30×にOpti-MEM培地(Gibco)中で希釈し、混合し、室温(23〜25℃)にて5分間インキュベートした。
・DNA溶液および293Fectin溶液を混合し、室温(23〜25℃)にて25分間放置してインキュベートした。
・DNA-293Fectinミックスを、次いで、細胞培養物に直接加えた。
・形質移入細胞培養物を、37℃、8 %CO2および125rpmでの振とうインキュベータに移した。
・形質移入の3〜6日後に、細胞培養上清を遠心分離により採集し、その後、0.22μm PESフィルタ(Corning)を通して濾過した。
・抗体生成の定量分析を、バイオレイヤー干渉法(Biolayer Interferometry)により、清澄化細胞培養上清に対して直接、ForteBio OctetシステムおよびプロテインAバイオセンサまたは定量的プロテインA HPLCを用いて行った。
【0466】
ヒト化抗TFPI4F36のCDRグラフト化バリアントの活性分析
最小CDRグラフト化によるヒト化により、結合速度および解離速度の両方に対する影響により引き起こされる親和性の劇的な喪失がもたらされた。ヒト化TFPI4F36抗体の最初にグラフト化したバージョン(HzTFPI4F36-CDRgrafted、Table 1(表2)ではヒト化TFPI4F36として列挙する)のTFPI結合親和性は、元のマウスTFPI4F36抗体のおよそ30pMの親和性よりも少なくとも100倍低かった(Table 1(表2)を参照されたい)。キメラ抗体で親和性が保持されたことにより、ヒトカッパ/IgG4(S241P) FCが抗体親和性に対して影響しなかったことが確認された。親和性分析は、以下に記載するようにしてSRPを用いて行った。
【0467】
【表2】
【0468】
hzTFPI4F36-TFPI相互作用の表面プラズモン共鳴(Biacore)分析
元のマウス抗TFPI4F36A1B2、キメラ抗TFPI4F36およびヒト化TFPI4F36抗体の種々のバリアントとの組換えヒトTFPIの相互作用についての動態パラメータを、SPR分析によりBiacoreで、2つの異なるアプローチを用いて決定した。最初の動態順位付け研究は、実施例1に記載するような精製mAbの捕捉手順に基づいた。この後に、センサチップ表面上のカルボキシメチル化デキストランメンブレン(CM5)に遊離のアミン基を介して共有結合したモノクローナル抗体を用いて、選択したmAb構築物に対して直接結合動態手順を行った。組換えヒトTFPIを、種々の濃度で注入し、その後、実施例8に記載するようにセンサチップ表面上の一定の緩衝液流を用いる解離期間を設けた。
【0469】
ヒト化mAbに復帰変異を導入するための部位特異的突然変異誘発
ヒト化抗TFPI4F36のCDRグラフト化バージョンの低い親和性に基づいて、27個の一連のヒトからマウスへの逆変異(復帰変異という)を、HzTFPI4F36-CDRgraftedの軽鎖(LC)および重鎖(HC)に作製した。これらの変異体を、別々の変異体またはLC/HC組合せ変異体のいずれかとして発現させて、精製し、Biacoreにより分析した。作製した変異体のリストを、それぞれTables 2および3(表3および4)に示す。
【0470】
部位特異的突然変異誘発を行って、ヒト化設計において強調するようなHzTFPI4F36-CDRgrafted LC/HC構築物中の特定の残基にてヒトからマウスへの逆変異(以下、復帰変異という)を導入した。変異は、2つの異なる方法により導入した:
1)StratageneからのQuickChange(登録商標)部位特異的または多重部位特異的突然変異誘発キットを用いて、点突然変異および組合せの突然変異を導入した。キットは、製造業者のプロトコルに従って用いた、
2)標準的な2ステップオーバーラップPCR法も用いて、点突然変異を導入し、組合せの突然変異を作製した。
【0471】
HzTFPI4F36-CDRgraftedについてのLCおよびHC発現プラスミドを、第1回目の突然変誘発のための鋳型として用いた。後続の回では、変異を、以前に変異させたプラスミドを鋳型として用いることによっても導入した。全ての最終構築物の配列は、DNA配列決定により確認した。
【0472】
【表3】
【0473】
【表4】
【0474】
Tables 2および3(表3および4)に列挙するLCおよびHCの両方における変異は、図1に示すようにKabat番号付け方式に従って一貫して番号付けされている。
【0475】
Table 2(表3)に列挙するLC変異体を、LC変異体単独として、野生型HC HzTFPI4F36 CDRgraftedとともに発現させた。Table 3(表4)に列挙するHC変異体を、HC変異体単独として、野生型LC HzTFPI4F36 CDRgraftedとともに発現させた。LC-HC組合せ変異体も、異なるLCおよびHC変異体を組み合わせることにより発現させた。変異体は、変異させた鎖にちなんで一貫して命名し、すなわち、最終的なヒト化mAbバリアントを、野生型HzTFPI4F36-CDRgrafted LCおよび変異HzTFPI4F36 FR2、S49A、CDR2 HCと発現させる。一過的なHEK293-6E発現を、上記のようにして行った。
【0476】
9つの点突然変異体の最初の組(HzTFPI4F36 LC-S63TおよびHzTFPI4F36 HC-Q3E;G44R;S49A;Y59F;A60P;K64Q;S77T;A93T)は、ヒト化設計において強調する復帰変異の第1の組に基づいた。点突然変異体はいずれも抗体の親和性を救済しなかったが、2番目のヒト重鎖フレームワーク領域(FR2、CDR H1とCDR H2との間)およびCDR H2のC末端領域(最小CDRグラフト化方式で省略されている)における変異は、TFPI結合のために重要であることが強調された。Biacore分析による親和性測定は、上記のようにして行った。
【0477】
突然変異誘発の後続の回は、個別の領域内の全ての残基が一括して変異されたいくつかのパッチ変異体を含んでいた。変異体HzTFPI4F36 HC-Kabat CDR2は、CDR H2のC末端領域内の3つの変異Y59F、A60P、K64Qを有し、これは、Kabat定義によるCDR H2をグラフト化することに相当し、最初のHzTFPI4F36-CDRgraftedバリアントについて用いた最小CDRグラフト化方式に従わない。このパッチ変異体は、LC FR2およびHC FR2内のパッチ変異体とともに、ヒト化TFPI4F36抗体の親和性を著しく改善したが、これら3つのパッチ変異体はいずれも、高いTFPI4F36親和性を個別に回復しなかった。
【0478】
HC FR2およびCDR2における組合せ変異を有するHC変異体(A40T、G42E、G44R、S49A、Y59F、A60P、K64Q)は、親和性を完全に回復した。この変異体では、7つのさらなるマウス残基が抗体配列に導入された。LC FR2変異体(FR2変異およびY36Lの両方)とHC FR2および/またはCDR2変異体との組合せも、高親和性変異体をもたらした。しかし、これらのLC/HC変異体の組合せは、HC変異体単独と比較してより低い発現収率を一貫してもたらした。これらの結果は、LC変異体を含めることがこれらの抗体バリアントの安定性に対して負の影響を有することを示し、よって、ヒト化TFPI4F36 LCとHCとの間に繊細な相互作用パターンが存在することを示唆した。
【0479】
最後の一連の変異体において、HC FR2およびCDR2における7つの変異(A40T、G42E、G44R、S49A、Y59F、A60P、K64Q)を、可能性のある寄与していない復帰変異を排除するために精査した。一連の5つの変異体を作製して、この点に対処した。
【0480】
3つの変異体において、復帰変異をFR2から除いた:
HzTFPI4F36 HC-G42E、G44R、CDR2
HzTFPI4F36 HC-FR2、CDR2
HzTFPI4F36 HC-G42E、G44R、S49A CDR2
【0481】
2つの変異体において、CDR2におけるさらなる変異も排除した:
HzTFPI4F36 HC-G44R、A60P、K64Q
HzTFPI4F36 HC-G42E、G44R、A60P、K64Q
【0482】
しかし、いずれの変異体も、組み合わせたHC FR2 CDR2変異体と同等でなかった。親和性または発現のレベルのいずれか(または両方)は、HC FR2 CDR2変異体部分集合における任意の低減により影響を受けた。2つの変異体、すなわち5つの残りの復帰変異を有するHzTFPI4F36 HC G42E、G44R、Y59F、A60P、K64Qおよび4つの残存復帰変異を有するHzTFPI4F36 HC G42E、G44R、A60P、K64Qを、HzTFPI4F36 HC-FR2、S49A、CDR2との詳細な比較のために採用した。
【0483】
○HzTFPI4F36 HC-G42E、G44R、A60P、K64QおよびHzTFPI4F36 HC-FR2、S49A、CDR2は同等のレベルで発現されたが、HzTFPI4F36 HC-G42E、G44R、CDR2は僅かにより低い発現レベルを有した。加速生物物理学的安定性研究は、3つのバリアントにおいて安定性のいずれの差も示さなかった。
○Biacoreにより測定された親和性を、以下に列挙する。
○dPTアッセイ(以下に記載する)において測定されたin vivo効力は、3つ全てのバリアントについて同等であった。
【0484】
【表5】
【0485】
上記のデータに基づいて、元のHC FR2および7つのHC復帰変異(A40T、G42E、G44R、S49A、Y59F、A60P、K64Q)を有するCDR2変異体を、その他のバリアントより優勢に試験した。このバリアントは、本明細書において、HzTFPI4F36またはmAbTFPI2021という。
【0486】
CDR2変異Y59F、A60P、K64Qは、抗原と直接相互作用することにより抗体親和性に影響するとみられる。変異A40T、G42E、G44Rは、抗原結合面からは離れたCDRH1とCDR H2とを連結するFR2ターン中にあり、LC-HC相互作用を安定化するために均衡を保っていると考えられる。変異S49Aは、側鎖の高度に疎水性のクラスタの中ほどに埋まっており、このことは、アラニンがこの位置にてセリンよりも好ましい理由を説明すると考えられる。よって、興味深いことに、HzTFPI4F36の高い親和性が、直接の抗原相互作用を改善する変異と、抗原を安定化させる抗原結合領域から離れた変異との組合せとして得られる。
【0487】
結論として、HzTFPI4F36は、およそ25pMの親和性(KD)を有し、マウス抗体配列に由来する35アミノ酸残基を含有し、これは、抗体中の残基の総数の5.2%に相当する。
【0488】
選択したヒト化構築物HzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)の可変軽鎖(VL)領域、可変重鎖(VH)領域、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号15、18、21および24に示す。
【0489】
In-vitro効力アッセイ
抗TFPI4F36抗体は、凝固第Xa因子(FXa)および組織因子(TF)と第VIIa因子(FVIIa)との複合体のTFPI媒介阻害を中和できる。マウスおよびヒト化TFPI4F36抗体バリアントの活性を、希釈プロトロンビン時間(dPT)試験において測定した。dPTアッセイは、抗TFPI抗体の凝血原活性を測定するために用いた。抗TFPI抗体の血漿濃度が増加すると、dPT凝固時間が短くなる。
【0490】
(実施例4)
MuTFPI4F36のFabフラグメント(Fab)およびヒト組織因子経路阻害因子(TFPI)のKunitz第2ドメイン(K2)の精製、結晶化および構造
Kunitz第2ドメイン(K2)およびC末端His6-タグを含むTFPIのフラグメント(配列番号2)を、MuTFPI4F36 Fabフラグメント(Fab)と共結晶化した。複合体の構造を、X線結晶学により解明した。K2結合エピトープは、残基E10、E11、P13、R17、Y19、T21、Y23、Q28、Q31、E33、R34、F35、K36およびL50で構成されることがわかった。Fabのパラトープは、MuTFPI4F36軽鎖(配列番号4)の残基E31、S32、D33、Y37、A96、T97、H98およびF99と、MuTFPI4F36重鎖(配列番号8)の残基N31、R53、S54、S56、Y57、Y59、F60、P61、D62、Q65、Y102、D103およびD106とを含むことがわかった。
【0491】
材料および方法
分析用分子ふるいクロマトグラフィー
分析用分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)を、Biosep S-3000(300×7.80mm)カラム(Phenomenex)を用い、PBS緩衝液(10mMリン酸塩、150mM NaCl、3mM KCl、pH7.5)で0.8ml/分の流速にて溶出して行った。
【0492】
Fab/K2複合体の調製および精製
Fab/K2複合体を、Fab(PBS緩衝液、pH7.4中に0.27mg/ml)とK2(PBS、pH7.4中に0.29mg/ml)とを1:1.5のモル比(5.4mg Fabと1.4mg K2)で混合することにより調製した。複合体を、遠心濾過デバイス(Amicon、10kD mwカットオフ)でおよそ6.7mg/mlの濃度まで濃縮した。過剰のK2を除くために、濃縮試料を、PBS緩衝液、pH7.4で1ml/分の流速にて溶出するSuperdex 75(CV300)ゲル濾過カラムに供した。Fab/K2複合体を含有する画分をプールし、9.2mg/mlのタンパク質濃度まで濃縮した。この溶液を、結晶化のために用いた。
【0493】
Fab/K2複合体の結晶化
Fab/K2複合体を、懸垂液滴法により杆体として、0.2Mクエン酸三カリウム(pH8.0)および20%w/vPEG3,350を含有する沈殿剤溶液を用いて結晶化させた。
【0494】
結晶構造の決定
Fab/K2複合体の構造を、FabおよびK2分子についてそれぞれPDB構造1F8Tおよび1TFXを鋳型として用いる分子置換法により解明した。
【0495】
結果
FabとK2の複合体を、過剰のK2をFab溶液に加えることにより調製した。図6は、分析用分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)により監視した複合体形成を示す。この方法は、それらの分子サイズにより分子を分離し、より大きい種はより小さい種よりも早く溶出される。K2およびFabに相当するピークは、分子量の差が大きいので(それぞれmwおよそ8kDaおよび48kDa)、良好に分離された。K2をFab溶液に加えることにより、予測されたように、ピーク位置がより短い保持時間のほうに僅かにシフトした。複合体は、調製用SECを用いて過剰のK2を分離することにより容易に分離され、精製形で得られた。
【0496】
Fab/K2複合体の結晶化のための条件は、いくつかの商業的な結晶化スクリーニングを用いてスクリーニングした。懸垂液滴法は、単結晶X線解析に適する杆形状結晶をもたらし、構造は、PDBに蓄積された構造を鋳型として用いる分子置換法により解明された。図7は、Fab/K2複合体の全体的な構造を示す。Fab分子を構成し、抗体分子に特徴的な予測される免疫グロブリンβサンドイッチ折り畳みを示す軽鎖および重鎖が示される。抗原と接触し、抗体の特異性および親和性を規定するCDRループも示される。
【0497】
抗原であるK2は、特徴的な単一の逆平行βシート(β1(I20〜N26)およびβ2(Q31〜Y37))と、Kunitz折り畳みを規定するN末端αヘリックス(α1、L50〜I56)とを示す(図8)。N末端付近の任意の310-ヘリックス(α0、D5〜F8)と、β1へ導くその後のループ1(L1、L9〜Y19)(これは、短いループ(Lβ、N27〜K30)を介してβ2へ連結される)も示される。C末端セグメントにおいて、ループ2(L2、G38〜T49)は、β2をα1と連結する。最後に、特徴的な3つのジスルフィド結合(C7-C57、C16-C40およびC33-C53)は、α0をα1と、L1をL2と、そしてβ2をα1とそれぞれ連結する。
【0498】
K2の2つの構造が、Worldwide Protein DataBank(PDB)に蓄積されている。一方の構造1ADZは、NMR分光法により決定され、遊離の溶液構造を表すが、他方の1TFXは、X線結晶学により決定され、ブタトリプシンと複合体を形成したK2を表す。図9は、 1ADZ、1TFXにより表されるK2と、Fabと複合体を形成したK2分子との構造の重ね合わせを示す。主鎖見取り図から、3つ全ての構造について非常に類似していると見受けられ、このことは、3つの安定化ジスルフィド結合を有するKunitz折り畳みは、比較的堅固であることを示唆する。
【0499】
MuTFPI4F36 K2結合エピトープの説明
Fab中の重原子から4Å以下の距離に位置する少なくとも1つの側鎖重原子を含有するK2中の残基として規定される抗原K2上の結合エピトープは、残基E10、E11、P13、R17、Y19、T21、Y23、Q28、Q31、E33、R34、F35、K36およびL50を含む(図10)。K2中の接触残基は、L1中(E10、E11、P13、R17、Y19)、βシート構造中(T21、Y23、Q31、E33、R34、F35、K36)および連結ループLβ中(Q28)、および最後に、α1中に1つ(L50)ある。図10は、K2の3D構造および1次アミノ酸配列との両方でマッピングした結合エピトープを示す。
【0500】
MuTFPI4F36パラトープの説明
MuTFPI4F36 Fabフラグメント中のパラトープを、MuTFPI4F36 FabとTFPI K2ドメインとの複合体の同じX線構造から決定した。パラトープは、K2ドメイン中の重原子から4Å未満の距離に重原子を有するMuTFPI4F36 Fab中の残基として規定した。軽鎖中の接触残基は、配列番号4の残基E31、S32、D33、Y37、A96、T97、H98およびF99にある。重鎖中の接触残基は、配列番号8の残基N31、R53、S54、S56、Y57、Y59、F60、P61、D62、Q65、Y102、D103およびD106にある。パラトープの位置を、図3に示す。
【0501】
(実施例5)
K2/HzTFPI4F36 Fab複合体の構造
K2と結合したMuTFPI4F36 Fabの3次元構造の決定のために記載したのと同様の方法論を用いて、ヒト化抗体HzTFPI4F36からのFabフラグメントとK2との複合体の構造を決定した。HzTFPI4F36のFabは、予測されたように、それが由来するマウスFabと同じK2上の領域に結合することがわかった。2つの複合体の構造間の全体的な類似性は、図11から明らかであり、ここでは、主鎖リボン見取り図を、K2/TFPI4F36 Fab複合体とK2/HzTFPI4F36 Fab複合体とについて重ねている。K2上のエピトープ(4Åカットオフを用いて規定される)は、HzTFPI4F36について、E10、E11、D12、P13、R17、Y19、T21、Y23、F24、N26、Q28、Q31、C32、E33、R34、K36およびL50を含むことがわかった。マウス起源のK2/MuTFPI4F36 Fabの構造と比較して、D12、F24、N26およびC32は、4Åカットオフ内のヒト化K2/HzTFPI4F36複合体中にあるが、F35は外側である。このことは、MuTFPI4F36およびHzTFPI4F36におけるCDR領域が同一であるという事実にも関わらず、K2/MuTFPI4F36 Fab複合体およびK2/HzTFPI4F36 Fab複合体の結合界面内の側鎖配向性の僅かな違いを反映する。
【0502】
(実施例6〜8)
HzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)の機能を、全て(4つ)の商業的に入手可能なモノクローナル抗体の機能と比較したが、これらのいくつかは、TFPIのK2ドメインと結合すると言われ、これらのいくつかは、結合に関して記載されていない。
【0503】
(実施例6)
TFPI中和アッセイ:FXa阻害
用いた材料は、アッセイにおけるBSA緩衝液(50mM Hepes;0.1M NaCl、5mM CaCl2、0.1mg/ml BSA、pH7.4)およびTable 5(表6)に示す試薬であった。
【0504】
【表6】
【0505】
方法:
組換え全長ヒトTFPI(最終濃度6nM)を、BSA緩衝液中で、漸増濃度の対象のmAb(最終濃度:5〜150nM)と30分間混合した。FXaを加え、さらに30分間、混合物と30分間インキュベートした。色素産生性基質S2765を加え、405nmでの吸光度を15分間、Spectramaxで測定した。100%活性は、TFPIを加えていないFXaの活性を表す。
【0506】
【表7】
【0507】
結論:
150nMでは、HzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)は、FXaのTFPI阻害を完全に中和した。mAb0281、mAb4904およびmAb29741について、活性はほとんど検出されなかった。
【0508】
(実施例7)
TFPI中和アッセイ:FVIIa /TF/FXa阻害
用いた材料は、BSA緩衝液(50mM Hepes;0.1M NaCl、5mM CaCl2、0.1mg/ml BSA、pH7.4)EDTA:50mMおよびTable 7(表8)に列挙する試薬であった。
【0509】
【表8】
【0510】
方法:
表に示す最終濃度で全ての成分を加える。25μl FX、25μlの種々の濃度のTFPI mAb、25μlヒトTFPI、25μl FVIIa-TF(innovin)をマイクロタイターウェルに加える。室温にて40分間のインキュベーション。50μl EDTA、その後50μl S-2765を加える。混合し、プレートを15分間、405nmにてSpectramaxで読み取る。100%活性は、TFPIの非存在下で得られるFVIIa/TF/FXの活性である。
【0511】
【表9】
【0512】
結論:
150nMのmAb濃度にて、TFPIは、mAbTFPI2021により完全に中和される。mAb2974も飽和に到達したが、TFPIを完全に中和しない(53%中和)。
【0513】
(実施例8)
結合相互作用分析
用いた材料を、Table 9(表10)に列挙した。
【0514】
【表10】
【0515】
方法:
結合相互作用分析を、表面プラズモン共鳴によりBiacore T-100装置で行った。固定濃度での関連するモノクローナル抗体の捕捉を、10mM酢酸ナトリウムpH4.5〜5.0中で500〜1000RUのレベルまでmAbをCM5チップに直接固定化することにより行った。組換えヒト全長TFPIまたはヒトTFPIの短い形態(1〜161アミノ酸残基)の200nM〜0.2nMの4倍希釈を、固定化mAbとの結合について試験した。運転および希釈緩衝液:10mM HEPES、150mM、0.005%p20、pH7.4。再生は、10mMグリシン、pH1.7で行った。動態および結合定数(kon、koff、KD)は、TFPIと対象抗体との1:1相互作用を仮定して、Biacore T100評価ソフトウェアを用いて決定した。結果を、Table 10(表11)に示す。mAbTFPI2021(「mAb2021」、HzTFPI4F36)と結合している場合のTFPIとの結合についての種々のmAbの競合は、mAbTFPI2021を5000RUまでCM5チップに固定化し、その後、50nM TFPIと、その後に競合について試験される種々の濃度のmAb(2974、0281、4904、29741)とを結合させることにより得た。結果を、Table 11(表12)に示す。チップの再生は、10mMグリシン、pH1.7により行った。
【0516】
【表11】
【0517】
【表12】
【0518】
結論
mAbTFPI2021は、試験したその他のmAbのいずれよりも高い親和性でTFPIと結合する(KD 15pM)。mAb2974だけが、mAb TFPI4F36と同じ部位との結合について競合する。
【0519】
(実施例9)
ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)でのTFPIの中和
内皮細胞は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して細胞表面に結合した形態でTFPIを構成的に発現する。GPIにより係留されたTFPIは、TFがTFPIと同じ細胞上で発現される場合に、TF媒介活性を特異的に阻害する。HzTFPI4F36(mAbTFPI2021)が細胞結合TFPIによる阻害を、mAb2974よりもかなり効率的に中和することを示すために、我々は、ヒト臍帯血管内皮細胞HUVECを用い、TF発現を誘導するために、これらの細胞を、TNFα(Sigma RBI)およびIL1β(Roche)で刺激し、その後、FXのFVIIa/TFにより触媒される活性を試験した。
【0520】
HUVEC細胞を、集密まで96ウェルプレートにてEBM-2培地(Clonetics)中で培養し、20ng/ml TNFαおよび20ng/ml IL1βで2時間刺激した後に試験した。試験は、25mM HEPES、137mM NaCl、3.5mM KCl、5mM CaCl、1mg/ml BSA(0.1%)ph7.4で行い、FX活性化を、抗体(0〜20nM)の存在下で50pM FVIIaおよび50nM FXを加えて追跡した。FXaの発生は、0.6mMの色素産生性基質S-2765(Chromogenix)を用いて測定し、FXa標準曲線に対して較正した。
【0521】
図12は、細胞結合TFPIによる阻害が、0〜20nMのHzTFPI4F36またはmAb 2974によりなくなった場合の結果を示す。FXのTF/FVIIa媒介活性化は、最大効果濃度の半分(EC50〜nM)でのHzTFPI4F36により刺激されたが、20nMでの2974 mAbを用いてFXaの発生のいずれの刺激もほとんど観察されなかった。
【0522】
よって、この実施例は、HzTFPI4F36が、mAb 2974とは対照的に、細胞結合TFPIによるTF/FVIIa媒介FX活性化の阻害を効率的に中和することを示す。
【0523】
(実施例10)
MDA- MB 231ヒト乳癌細胞でのTF/ FVIIa活性のTFPI阻害の中和
MDA-MB 231細胞は、高いレベルのTFおよび僅かな量のTFPIを表面上で構成的に発現する。FXの細胞表面TF/FVIIa媒介活性化は、外因的に加えたTFPIにより阻害できる。HzTFPI4F36がこのタイプのTFPI阻害をmAb 2974よりもかなり効率的に中和することを示すために、我々は、MDA-MB 231細胞を用い、FXのFVIIa/TFにより触媒される活性化のTFPI阻害をなくす種々の濃度の抗体の能力を試験した。
【0524】
MDA-MB 231細胞を、集密まで96ウェルプレートにて10%FCSおよび1%P/Sを補ったDMEM Gibco cat#31966-021中で培養した。試験は、25mM HEPES、137mM NaCl、3.5mM KCl、5mM CaCl、1mg/ml BSA(0.1%)ph7.4で行い、FX活性化を、抗体(0〜20nM)の存在下で2.5nM全長ヒト組換えTFPI、100pM FVIIaおよび50nM FXを加えて追跡した。FXaの発生は、0.6mMの色素産生性基質S-2765(Chromogenix)を用いて測定した。405nmでの吸光度を連続的に測定し、FXa活性を、反応の開始後15分で経過曲線の傾きを測定することにより決定した。
【0525】
図13は、TFPIによる阻害が、0〜20nMのHzTFPI4F36またはmAb 2974によりなくなった場合の結果を示す。FXのTF/FVIIa媒介活性化は、最大効果濃度の半分(EC50およそ2nM)でのHzTFPI4F36により刺激されたが、FXaの発生の刺激は、実質的により高い濃度の2974 mAbで得られた(EC50>20nM)。
【0526】
(実施例11)
抗TFPIモノクローナル抗体HzTFPI4F36およびmAb2974の、ELISAを用いる結合エピトープマッピング
TFPI Kunitzドメイン2(K2)上のHzTFPI4F36についての結合エピトープは、TFPI-K2/HzTFPI4F36複合体の結晶構造を解明することによりマッピングされている。HzTFPI4F36およびmAb2974(R&Dsystems)への結合親和性に対する、TFPIにおけるHzTFPI4F36についての結合エピトープの内側(E10、R17およびY19)および外側(D5)での単一アミノ酸残基の変異の影響を、ELISAにより分析した。TFPIバリアントをHEK293-F細胞で発現させ、ELISAを、細胞培養物からの馴化培地を用いて行った。
【0527】
TFPI-WTおよびTFPI変異体の濃度をELISAにより推定したが、これは、TFPI K1(MAb4903、American Diagnostica)およびK3(MAb4F110、社内)と結合し、よって、変異により影響されない。HzTFPI4F36との結合に対する変異の影響を、MAb4903およびHzTFPI4F36を用いてELISAにおいて分析した。MAb2974結合に対する影響を、MAb2974およびMAb4F110を用いるELISAを用いて決定した。
【0528】
HzTFPI4F36およびMAb2974のそれぞれとの結合に対するTFPI-Kunitz 2の変異の影響を、TFPI-WT(100%結合)に対して算出し、図14に示した。数字は、発現レベルの差について修正した。
【0529】
結論:
HzTFPI4F36についての結合エピトープ内の3つのアミノ酸のアラニン変異により、HzTFPI4F36との結合が低減されたが、エピトープの外側にある残基のアラニン置換(TFPI-D5A)は影響を有さなかった。4つのアラニン変異体のうちの1つ、TFPI-Y19Aだけが、MAb2974との結合が低減された。
【0530】
結論として、HzTFPI4F36およびMAb2974は、TFPI-Kunitz 2上に別個であるがオーバーラップする結合エピトープを有する。
【0531】
(実施例12)
In vivo研究
ウサギを、2000 RBU/kgのモノクローナル抗FVIII抗体を静脈内投与することにより一過性血友病にした。10分後に、ウサギに12000U/kgの抗TFPI抗体(4F36;1.93mg/kg)を与えた。表皮出血を、抗FVIII-抗体の投与の45分間後に誘導した。
【0532】
4F36抗体は、表皮出血時間の著しい低減を引き起こした(図15)。4F36抗体の投与は、血小板数の著しい低下を導かなかった(図18)。
【0533】
8匹の一過性血友病ウサギの3群に、アイソタイプ対照抗体(陰性対照群)、2mg/kg抗TFPI(mAb 4F36)または9mg/kg NovoSeven(陽性対照群)を与え、5分後に表皮出血を誘導する同様の実験を繰り返した。結果を、図16に示す:mAB 4F36の投与は、全てのレシピエントにおいて血液喪失の著しい低減(およそ85%)をもたらし、このことは、mAb4F36を「要求に応じて」用い得ることを示す。
【0534】
(実施例13)
ウサギにおける用量-効果の関係の推定
ヒト化mAb HzTFPI4F36の用量-効果の関係を、ウサギ血友病モデルにおいて調べた。ウサギを、モノクローナル抗FVIII抗体のiv注射により一過性血友病にした。10分後に、ウサギに、0.5、1、2mg/kg HzTFPI4F36またはアイソタイプ対照抗体を与えた。さらに35分後に表皮出血を誘導し、その後、60分間観察した。HzTFPI4F36は、出血時間および血液喪失を、0.5から2mg/kgに用量を増加させた場合に、著しくそして用量依存的に低減した(図17)。よって、出血時間および血液喪失の両方の著しい低減が、1mg/kg HzTFPI4F36で達成され、これは、18780ng/ml HzTFPI4F36の血漿濃度に相当した。出血の標準化は、2mg/kgで達成され、これは、30980ng/ml HzTFPI4F36の血漿濃度に相当した。
【0535】
これらのデータは、HzTFPI4F36の「効力のある濃度」、例えばこのモデルにおける標準化のために必要な血漿濃度が、18780〜30980ng/mlの範囲内にあることを示す。
【0536】
(実施例14)
ウサギにおけるPK/PD -「作用の持続期間」
20mg/kgで投与されたウサギにおけるHzTFPI4F36の薬物動態研究を行った。研究中の予め決定された時点で、遊離HzTFPI4F36を測定するELISAによる薬物動態プロファイリングのために、血液試料をウサギから採取した(以下の図3に示す)。効果の研究を、投与の4日後(96時間)、7日後(168時間)および10日後(240時間)に、一過性血友病ウサギにおける表皮出血モデルを用いて行ったが、効果的な時点を図19に示す。
【0537】
薬物動態プロファイルは、標的媒介クリアランスを示す2相性である。よって、曲線の湾曲部より上は過剰の遊離mAbが存在し(mAB遊離>TFPI合計)、湾曲部より下はmAb遊離<TFPI合計である。薬物動態プロファイルに良好に従って、出血時間および血液喪失はともに、20mg/kg HzTFPI4F36の静脈内投与の4および7日後にともに著しく低減されたが、10日後には著しい影響は観察されなかった(図20)。
【0538】
これらのデータにより、血友病ウサギでの表皮出血モデルにおけるHzTFPI4F36の効力のある血漿濃度が18780〜30980ng/mlであり、これは、TFPI飽和限界(曲線の湾曲部)に近いことが確認される。よって、20mg/kgのHzTFPI4F36の単独iv用量が、少なくとも7日間にわたって表皮出血を低減し、これは、血漿濃度が「効力のある濃度」より上である期間に相当した。
【0539】
(実施例15)
サルPKデータに基づく薬物動態モデル
薬物動態評価を、サルにおける薬物動態研究に基づいて行い、ここでは、単独および複数の用量をともに投与した(図21)。用量レベルは、2〜200mg/kgの範囲であった。
【0540】
サルにおけるPKプロファイル(20mgs/kg、上のパネル)は、ウサギと同様であり、可溶性および内皮結合TFPIの同様の分布が存在することを示す。よって、これらのデータは、ウサギの効果のデータを用いて、サルにおける効果範囲を予測し得ることを示す。さらに、ヒト、サルおよびウサギTFPIについてのHzTFPI4F36の親和性は同様であり(同じエピトープ)、3つの種での類似のTFPI組織分布が、サルおよびヒトにおける用量予測を可能にする。
【0541】
(実施例16)
シミュレーション
上記のモデルに基づいて、一連のシミュレーションを行うことができた。シミュレーションの主な目的は、複数回用量の設定における最適投与計画を記載することであった。標的(TFPI)濃度はわかっていなかったが、上記のウサギでの効果のデータにより、標的が30000ng/mlのレベルの飽和に近いならば、出血モデルにおける完全な効果が得られると仮定することが可能になる。よって、シミュレーションの主な目的は、時間に対するどの用量レベルが完全な飽和を導くかを評価することであった。図22は、皮下投与された1mg/kgのシミュレーションを示す。図23は、3週間毎にIV投与された15mg/kgのHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)のシミュレーションを示す。図24は、2週間毎にIV投与された20mg/kgのHzTFPI4F36(mAbTFPI 2021)のシミュレーションを示す。
【0542】
まとめとして、上記のシミュレーションに基づいて、以下の投与計画の予測を、ヒトについて行うことができる。
【0543】
【表13】
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]