(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114334
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】超音波皮膚洗浄美容機
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20170403BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
A61H23/02 386
A61H33/00 S
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-100594(P2015-100594)
(22)【出願日】2015年5月16日
(65)【公開番号】特開2016-214424(P2016-214424A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2015年12月17日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年3月28日COEX Convention Centerにおいて開催された2015 Asia Forum for Aesthetic Surgery & Medicineで公開
(73)【特許権者】
【識別番号】511311808
【氏名又は名称】株式会社 ARTISTIC&CO.
(74)【代理人】
【識別番号】100104466
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 信義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英樹
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−123559(JP,A)
【文献】
特表2014−525314(JP,A)
【文献】
特開2013−184057(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/192307(WO,A1)
【文献】
特開平11−000376(JP,A)
【文献】
特開2016−137116(JP,A)
【文献】
特開2007−050204(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3079554(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波によって振動を発生させる超音波発生部と、該超音波発生部により発生された振動を皮膚に伝える振動部材とを備え、水又は美容液を皮膚に供給しながら皮膚洗浄を行う超音波皮膚洗浄美容機であって、
該振動部材は、その内部に、水又は美容液を浸潤可能な液保持部材が取り付けられて水又は美容液を収容可能であって、前記振動部材の皮膚側の開口部を構成する先端部を皮膚に密着させた際には、当該水又は美容液をその内部に保持可能な有底筒状に形成され超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項2】
前記振動部材は、先端の開口部が円形である請求項1に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項3】
前記振動部材は、先端の開口部が楕円形である請求項1に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項4】
前記振動部材は、先端の開口部が矩形である請求項1に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項5】
前記振動部材は、先端の開口部が三角形である請求項1に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項6】
前記振動部材は、先端の開口部が多角形である請求項1に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項7】
前記振動部材は、その基端側端部よりも先端の開口部の面積が大きい請求項1から請求項6のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項8】
前記振動部材は、その先端の開口部よりも基端側端部の面積が大きい請求項1から請求項6のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項9】
前記振動部材は、基端側端部よりも先端の開口部の面積が大きく、基端側端部から徐々に拡径する拡径部と、拡径部から延設されて開口部に至る円筒部とをそなえた請求項7に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項10】
前記振動部材は、その基端から先端にかけて連続的にその断面の面積が大きくなるように徐々に拡開して形成された請求項7に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項11】
前記振動部材は、その先端から基端にかけて連続的にその断面の面積が大きくなるように徐々に拡開して形成された請求項8に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項12】
前記振動部材は、基端側端部の外形と先端の開口部の外形とが相似形であり、側面視において、基端側から先端側に向かって拡開するように、その外側面が、基端側の取付面に対して10度から87度の傾斜面とされている請求項10に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項13】
前記傾斜面の角度が、50度から67度である請求項12に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項14】
前記振動部材は、基端端部の外形と先端の開口部の外形とが相似形であり、側面視において、先端側から基端側に向かって拡開するように、その外側面が、基端側の取付面に対して50度から87度の傾斜面とされている請求項11に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項15】
前記傾斜面の角度が、70度から87度である請求項14に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項16】
前記筒状の振動部材の開口部の外径の最大値が、10mm〜40mmである請求項1から請求項15に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項17】
前記液保持部材は、繊維である請求項1から請求項16のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項18】
前記液保持部材は、スポンジ、又は多孔質材料である請求項1から請求項16のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項19】
前記振動部材の内面には、前記液保持部材を係止固定することが可能な係止突起が形成されている請求項1から請求項18のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項20】
前記超音波発生部を、前記超音波皮膚洗浄美容機の本体に対して、揺動可能または傾動可能に固定する超音波発生部固定手段を備えた請求項1から請求項19のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【請求項21】
前記超音波発生部固定手段は可撓性材料から構成されている請求項20に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の肌に密着させ、超音波により肌の汚れなどを除去する超音波皮膚洗浄美容機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、美容のために、超音波を利用して肌の汚れなどを除去する超音波皮膚洗浄美容機(以下「美容機」)が知られている。この種の美容機は、水や美容液などの液と併用して超音波を用いて皮膚の汚れを引きはがすものである。例えば特許文献1に記載されたものは、板状の振動板11を備えるものであり、振動板11の先端の作用部EFの先端縁を皮膚に押し付けた状態で、振動板11により皮膚の表面を掬うように使用することにより、超音波振動によって洗浄液などがミスト化され、毛穴PRの汚れなどが瞬時に乳化され且つ洗浄されて、古い角質が容易に除去されるとするものである。また、特許文献2に記載されたものは、円筒状の突起35aを備えて、皮膚内の老廃物を皮膚の外に排出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3547456号公報
図1、
図2及び
図9等 (特許文献2) 特表2014−525314号公報
図1等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したような従来技術のうち、特許文献1に記載されたものでは、板状の振動板11の先端縁付近のみが皮膚に接触されるだけであるので、超音波により伝えられる振動によって液が弾き飛ばされてしまい、液を併用した美容効果を十分に得ることができなくなってしまう。また、特許文献2に記載されたものでも、突起35a内に十分に液を保持することができないので、やはり液を併用した場合の種々の美容効果を十分には得ることができない。
【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術の課題を解決しようとするものであり、液を併用する超音波皮膚洗浄美容機において、液を併用することによる種々の美容効果をより確実に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1)超音波によって振動を発生させる超音波発生部と、該超音波発生部により発生された振動を皮膚に伝える振動部材とを備え
、水又は美容液を皮膚に供給しながら皮膚洗浄を行う超音波皮膚洗浄美容機であって、
該振動部材は、その内部に、
水又は美容液を浸潤可能な液保持部材が取り付けられて水又は美容液を収容可能であって、
前記振動部材の皮膚側の開口部を構成する先端部を皮膚に密着させた際には、当該
水又は美容液をその内部に保持可能な有底筒状に形成され超音波皮膚洗浄美容機。
(2)前記振動部材は、先端の開口部が円形である(1)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(3)前記振動部材は、先端の開口部が楕円形である(1)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(4)前記振動部材は、先端の開口部が矩形である(1)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(5)前記振動部材は、先端の開口部が三角形である(1)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(6)前記振動部材は、先端の開口部が多角形である(1)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【0007】
(7)前記振動部材は、その基端側端部よりも先端の開口部の面積が大きい(1)から(6)のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(8)前記振動部材は、その先端の開口部よりも基端側端部の面積が大きい(1)から(6)のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(9)前記振動部材は、基端側端部よりも先端の開口部の面積が大きく、基端側端部から徐々に拡径する拡径部と、拡径部から延設されて開口部に至る円筒部とをそなえた(7)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【0008】
(10)前記振動部材は、その基端から先端にかけて連続的にその断面の面積が大きくなるように徐々に拡開して形成された(7)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(11)前記振動部材は、その先端から基端にかけて連続的にその断面の面積が大きくなるように徐々に拡開して形成された(8)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【0009】
(12)前記振動部材は、基端側端部の外形と先端の開口部の外形とが相似形であり、側面視において、基端側から先端側に向かって拡開するように、その外側面が、基端側の取付面に対して10度から87度の傾斜面とされている(10)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(13)前
記傾斜面の角度が、50度から67度である(12)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【0010】
(14)前記振動部材は、基端端部の外形と先端の開口部の外形とが相似形であり、側面視において、先端側から基端側に向かって拡開するように、その外側面が、基端側の取付面に対して50度から87度の傾斜面とされている(11)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(15)前
記傾斜面の角度が、70度から87度である(14)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(16)前記筒状の振動部材の開口部の外径の最大値が、10mm〜40mmである(1)から(15)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【0011】
(17)前記液保持部材は、繊維である
(1)から(16)のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(
18)前記液保持部材は、スポンジ、
又は多孔質材料である
(1)から(16)のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(
19)前記振動部材の内面には、前記液保持部材を係止固定することが可能な係止突起が形成されている
(1)から(18)のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【0012】
(
20)前記超音波発生部を、前記超音波皮膚洗浄美容機の本体に対して、揺動可能または傾動可能に固定する超音波発生部固定手段を備えた(1)から(
19)のいずれかに記載の超音波皮膚洗浄美容機。
(
21)前記超音波発生部固定手段は可撓性材料から構成されている
(20)に記載の超音波皮膚洗浄美容機。
【発明の効果】
【0013】
本発明の超音波皮膚洗浄美容機では、併用される水や美容液などの液を十分に保持して、皮膚に液を十分に供給しながら超音波による皮膚洗浄を行うことができるので、従来の超音波皮膚洗浄美容機と比較して、液を併用することによる美容効果をより確実にもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の美容機の正面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した美容機の超音波ユニットの正面図である。
【
図10】
図10は、美容機の動作状態を示す超音波ユニットの概略縦断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の別の実施の形態の超音波ユニットの斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明のさらに別の実施の形態の超音波ユニットの斜視図である。図である。
【
図13】
図13は、本発明のさらに別の実施の形態の美容機の右側面図である。
【
図14】
図14は、本発明のさらに別の実施の形態の美容機の正面図である。
【
図15】
図15は、本発明のさらに別の実施の形態の美容機の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の超音波皮膚洗浄美容機について、図面に示した実施の形態を用いて説明する。
図1から
図4に示すように、本発明の実施の形態の超音波皮膚洗浄美容機10(以下「美容機10」)は、円柱状のヘッド部40と、このヘッド部40よりも細い把持部20を備えており、ヘッド部40に設けられた筒状の振動部材60を用いて、超音波により皮膚の汚れを除去するものである。
【0016】
美容機10には、その上方寄りに、前述したヘッド部40が設けられ、一方、下方寄りには、美容機10の使用の際に使用者が把持する部位である把持部20が設けられている。ヘッド部40は高さの低い円柱状に形成されている。把持部20は、ヘッド部40よりも左右の長さがやや短く、また奥行きの長さもやや短く設けられ、使用者が持ちやすい断面形状および外径とされている。また、把持部20は、
図2に示すように、ヘッド部40に対して背面側に向けて斜めになるように連設されており、使用時には把持部20に対して、ヘッド部40の振動部材60がやや正面側に突き出すようにして用いることができ、振動部材60を皮膚に密着し易くするように設けられている。
【0017】
図1に示されるように、把持部20の正面視中央付近には、楕円形の電源ボタン11が設けられており、その上方には、横長のモード操作部12が設けられている。モード操作部には、後述する超音波振動子90の出力レベルを3段階で変更操作するためのモードボタンと、この3段階の出力レベルを区別して表示する3つのLEDが備えられている。また、
図4に示されるように、把持部20の下部には、AC電源コードを接続するための接続口13が設けられている。
【0018】
また、
図3に示されるように、美容機10の背面側には、ヘッド部40の中心軸周りに円周上に配設された多数の放熱用の孔14と、これらの孔14の下方の把持部20の上端部に配置された円形のねじ孔15とが備えられている。
【0019】
また、美容機10内部には振動部材60を含む超音波ユニット50(超音波発生部)などの動作を制御するための電源基板、コンバータ、マイクロコンピュータ、LEDドライバー、パワーブースター等から構成される電子回路が内蔵されている。また本体(図示省略)と接続せずに使用できる充電タイプの美容機にあっては充電池が内蔵されており、AC電源から充電された美容機10について、ACアダプターを取り外し美容機10単体で使用することが可能である。
【0020】
次に、美容機1の要部について説明する。
図5(全体断面図)に示されるように、超音波ユニット50は、有底円筒状の振動部材60と、振動部材60の基端部において振動部材60に連設される円盤状のハウジング70と、ハウジング70のさらに外側に連設されるドーナツ円盤形状の透明なプラスチック製のカバー76とを備えている。また、ハウジング70の裏面側外周縁付近の端面には、5つのねじ孔71が穿設されている。
【0021】
また、ハウジング70の裏面には、超音波振動子90が堅固に固定されている。ハウジング70の外周面には、振動部材60側の端部に、径方向外側に突出する係止部74が周設された固定用スリーブ73が取り付けられている。超音波振動子90は、この固定用スリーブ73の端部75によりハウジング70に係止固定されている。ハウジング70の外側に装着されたカバー76は、ヘッド部40の開口部42の開口端面と、ハウジング70の外周面に取り付けられた固定用スリーブ73の係止部74とにより、固定用スリーブ73の外側に係止固定されている。そして、ハウジング70に取り付けられた固定用スリーブ73とハウジング70の基端側端面を覆うようにして、ヘッド部40の開口部42内への水分の浸入を防止するためのシリコン72が取り付けられている。さらに、シリコン72よりも背面側には、シリコン72の基端面に当接されるとともにハウジング70のねじ孔71にねじ込まれるねじ16によりハウジング70に固定される基盤80が装着されている。この基盤80とハウジング70により、シリコン72及び固定用スリーブ73は挟持固定される。また、基盤80の外周付近の正面側端面には、カバー76を透過して視認し得るLED17が取り付けられている。
【0022】
ついで、
図6から
図9を参照して、振動部材60およびハウジング70の詳細について説明する。ハウジング70は、底面側に凹部77が形成された有底円筒状とされている。前述の超音波振動子90は、この凹部77内に堅固に固定されている。底面側のハウジング70の端部には、5か所のねじ孔71が形成されている。ハウジング70の外径は42mmとされ、その高さは11mmとされている。また、凹部77におけるハウジング70の内径は33mmとされており、よってハウジング70の側部は4.5mmの厚みとされている。また凹部77奥の底部78は、7mmの厚みとされている。
【0023】
ハウジング70の上面には、振動部材60が一体に連設されている。振動部材60は、前述の通り、底部64を備え上方から見て真円状の有底円筒状に形成されている。振動部材60の外径は、ハウジング70よりも小径とされており、振動部材60の先端の開口部61の外径は30mmであり、基端寄りの端部付近の外径は29mmとされている。そして、振動部材60の側部62は0.5mmの厚みとされている。また、後述するが、振動部材60の先端部65において効率的にキャビテーションを発生させるためには、側部62の厚みは特に先端部65において0.1mm〜1.0mmとすることが好ましい。また、振動部材60よりもハウジング70の厚みが厚い方が振動部材70への超音波の伝達効率が良い。また、その高さは10mmとされている。振動部材60は強度及び肌等の施術箇所の金属アレルギー防止を考慮してステンレス製とされている。振動部材60の開口部61の外径は10mm〜40mm程度が望ましいが、鼻や鼻周辺などの狭い部位に施術をする際の利便性を向上させるためには外径の最大値が小さい方が望ましい。
【0024】
また、振動部材60の側部62は、
図6及び
図9に示すように、先端の開口部61方向に向かって拡がるように傾斜されている。本例では、基端側から先端の開口部61方向に向けて拡がるように、ハウジング70の上面に対して約87度の角度に傾斜されている。
【0025】
以上のように構成された美容機10は、以下のように使用する。まず、振動部材60の内部にコットン等の液保持部材を押し込んだ後に、美容液や専用の水等の液体を適量投下する。液保持部材は、液体を一定以上に保持することができる者であれば良く、繊維状のものやスポンジその他の多孔質材料でも良い。コットン等の液保持部材は、美容液等の液体を十分に保持しつつ、施術時には施術箇所に適量の液体を排出することも望まれるので、このような液体の保持性と排出性のバランスに優れたものを用いることが望ましい。また、振動部材60の内側の空間と同形状に成形された液保持部材を用いることにより、施術時に、液保持部材が、振動部材60内で偏ったり、振動部材60から脱落し易い形状に変形してしまうことなどを防止することができる。次に、振動部材60の開口部61を頬等の施術箇所に密着させて、電源ボタン11やモード操作部12の操作により、振動部材60に所望の超音波振動を加える。そして、振動部材60に超音波振動を加えた状態で、施術箇所の表面をマッサージするように振動部材60の開口部61を移動させる。
【0026】
この際に、
図10に示すように、振動部材60においては以下のような美容効果を得ることができる。本例においては、振動部材60に25kHz〜150kHzの超音波振動を生じさせる。この超音波振動により内部の液体に圧縮力と膨張力が反復的に表れ、液体内の異物や気体分子を中心に気泡Xが発生し、これにより非常に大きな衝撃波を生ずる、いわゆる「キャビテーション」が発生する。一般的に、超音波の周波数が高くなれば、発生する気泡Xの大きさはより小さく・細かくなる。このようにして振動部材60内部の液体に生ずるキャビテーションにより発生した強いマイクロバブルの破壊エネルギーを利用して、皮膚の毛穴の中の老廃物等を洗浄することができる。この際に、本美容機10では、振動部材60の開口部61を施術箇所に密着したまま施術を続けることにより、振動部材60の内部に液体を保持収容したままとすることができる。よって、十分な液体の量を保持しながら施術を行うことができるので、液体による美容効果を最大限に得ることができる。
【0027】
また、皮膚などの施術箇所に直接的に接触する振動部材60の先端部65においては、先端部65の超音波振動によるキャビテーションをよる美容効果を、直接的に施術箇所に及ぼすことができ、振動部材60内の液体全体に生ずるキャビテーションによる美容効果に加えて、振動部材60の先端部65によりさらに重畳的な美容効果を期待し得る。
【0028】
またさらに、振動部材60の超音波振動により、一定の温熱効果を得られるため、液体及び施術箇所が温められることによるより一層の洗浄効果を得られる。本例の美容機10においては、概ね38℃〜43℃程度に液体及び施術箇所を温めることができる。
【0029】
また、超音波振動をしている振動部材60の先端部65が直接施術箇所に触れることにより、適度なマッサージ効果を与えることができる。この結果、毛穴の汚れのもみ出し効果を得ることができる。
【0030】
ついで本発明の別の実施の形態について説明する。なお、以降において第一の実施の形態と共通する部位については、第一の実施の形態と同じ符号を図面中に付して、その説明を省略する。
図11に示される美容機の振動部材60aにおいては、振動部材60aの側部62aが、先端に向かうにしたがって拡がるように、ハウジング70の上面に対して、53度の角度に傾斜されたものである。本発明の美容機においては、振動部材の側部の傾斜角度は、本発明の主旨の範囲内において適宜変更することができる。
【0031】
また、
図12に示される美容機10bは、振動部材60bの内周面に、コットンなどを係止固定して保持可能な係止突起63が突設されているものである。液体を浸潤させたコットンが容易には脱落しないようにすることができ、美容機10bの利便性を向上させることができる。係止突起は他の形状でも良く、コットンを保持可能であって、またコットンの脱着に支障のない形状及び材質であれば特に限定されない。例えば、振動部材60bの内周面に、開口部61に沿って内側に向けてリブ状に周設されるようなものでも良い。また、ゴム等の可撓性の材質によるものを取り付けて利用することもでき、この場合にはコットンの脱着性により優れる。
【0032】
ついで本発明のさらに別の実施の形態について説明する。
図13に示される美容機10cにおいては、振動部材60cが、全体において先端が先細となるように内側に向けて87度の角度に傾斜されて形成されたものである。このような振動部材60cによっては、振動部材60cの先端部65cが開口部61の内側に向けて傾斜しているので、先端部65c周辺の液体が外部へ漏出するおそれを少なくすることができる。
【0033】
また、図示は省略するが、振動部材を美容機の本体に対して所定の範囲で揺動可能に取り付けるものとすると、使用時における振動部材の開口部の施術箇所への密着度が高まり、振動部材内部の液体の保持をより確実に行うことができる。具体的には、前述の実施の形態におけるヘッド部40を、把持部20に対して一定角度の範囲内で揺動可能とする超音波発生部固定手段とするように構成することで実現可能である。超音波発生部固定手段の例としては、ゴムなどの可撓性材料を介在させることなどが考えられる。以上のように、本発明の美容機は、上記した実施の形態の構成に限られるものではなく、既に記載した変更例の他にも本発明の主旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0034】
ついで、
図14から
図16を参照して、本発明のさらに別の実施の形態について説明する。
図14及び
図15に示されるように、この美容機10dは、前述した充電タイプの美容機とは異なり、図示しない操作装置とケーブル18により接続されるタイプの超音波皮膚洗浄美容機である。この美容機10dにおいては、操作装置において電源操作、モード操作等を行うため、美容機10d自体には操作用のボタンや表示用のLED等は備えられていない。
【0035】
また、この美容機10dの振動部材60dは、
図16に示されるように、その形状が以下の通りのものとして形成されている。振動部材60dの開口部61d及び底部64dはそれぞれ正面視真円形状に形成されており、開口部61dの直径は31mm(内径は30mm)に、底部64d直径は16mmに設けられている。そして
図16に示されるように、底部64dからは徐々に拡径される拡径部92が立ち上がるようにして連設され、さらにこの拡径部92の先端からは開口部61dに向かって内径が同一な円筒部93が延設されている。本例では、底部64からの拡径部92の角度は39.8度とされている。このように、本美容機10dの振動部材60dは、前述した美容機10等とは異なり、底部64dから開口部61dにかけて、お椀状に、断面が円弧状となるように緩やかな湾曲面が形成されているものではなく、拡径部92と円筒部93との連設部において所定の角度で屈曲されて形成されている。
【0036】
本美容機10dにおいては、連設部において屈曲される拡径部92及び円筒部93を備えた形状とすることにより、使用時において、超音波を開口部61dに向けてより効率よく伝達することができる。
【0037】
なお、本美容機10dは腕などの比較的面積の広い部位に対して施術することを想定した開口部61dの直径としているが、例えば、鼻や鼻周辺の狭い部位に施術をする場合などにおいては、開口部の直径を短くした振動部材とすることが望ましく、例えば開口部の外径を23mmとすることが良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、超音波を利用した皮膚洗浄美容機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10,10a,10b,10c,10d;超音波皮膚洗浄美容機、11;電源ボタン、12;モード操作部、13;接続口、14;孔、15;ねじ孔、16;ねじ、17;LED、18;ケーブル、20;把持部、40;ヘッド部、42;開口部、50;超音波ユニット、60,60a,60b,60c,60d;振動部材、61,61d;開口部、62,62a;側部、63;係止突起、64,64d;底部、65,65c;先端部、70;ハウジング、71;ねじ孔、72;シリコン、73;固定用スリーブ、74;係止部、75;端部、76;カバー、77;凹部、78;底部、80;基盤、90;超音波振動子、X;気泡。