(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114344
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】注出口及びジッパー付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/25 20060101AFI20170403BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
B65D33/25 A
B65D33/38
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-154936(P2015-154936)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-30840(P2017-30840A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年8月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】会田 清三
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健司
(72)【発明者】
【氏名】葉山 知人
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−131523(JP,A)
【文献】
特開2010−195459(JP,A)
【文献】
特開2007−314245(JP,A)
【文献】
特表2009−505913(JP,A)
【文献】
特表2007−530375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を重ねて周囲を溶着することにより二つ以上の内容物を混合して収容するための収容部を形成する収容体本体と、
前記シート状部材の縁部に介在され、前記内容物の注出用の口部を備え、その口部の径以下の大きさの内容物を前記収容部に注入、かつ、前記収容部から注出可能な注出口と、
前記注出口の口部より径の大きな内容物を前記収容部に封入、かつ前記収容部から取り出し可能なジッパーと、を有し、
前記ジッパーは、前記重ねたシート状部材の表面に開口を備える重ね部において、前記開口を密封、開封可能に配設されており、
前記収容体本体は、上縁部と下縁部を備え、
前記重ね部は、前記上縁部と下縁部の間の中間領域に、横方向に亘って形成されており、
前記注出口は、前記重ね部より上縁部側に介在されている
ことを特徴とする注出口及びジッパー付き容器。
【請求項2】
前記二つ以上の内容物として、液体、および前記口部の径より大きな固体が含まれる場合に、
前記注出口は前記液体の注入、注出用途に用い、
前記ジッパーは前記固体の封入、取り出し用途に用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の注出口及びジッパー付き容器。
【請求項3】
前記重ね部には、前記ジッパーの開封を解除する引き裂き片が設けられており、
前記引き裂き片によって、前記収容部の未使用状態が保証されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の注出口及びジッパー付き容器。
【請求項4】
前記収容体本体は、前記下縁部に底壁が溶着された自立袋として構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の注出口及びジッパー付き容器。
【請求項5】
前記自立袋として構成される収容体本体は、横辺/縦辺の比率が1以上の横長形状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の注出口及びジッパー付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体等の収容物を注出する注出口(スパウトとも称する)と、前記注出口の径よりも大きな封入物を封入可能にするジッパーとを備えた注出口及びジッパー付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体等の収容物を収容する容器として、合成樹脂等で形成されたシート状部材の周縁部を溶着し、かつ、収容物を注出するためのスパウトをシート状部材間に介在して溶着されたものが知られている。このような容器は、安価であると共に、取り扱いが容易であることから、様々な分野で使用されている。
【0003】
上記した容器は、例えば、飲料用として利用することが可能であるが、大きな封入物を封入し、かつ、注出操作は少しずつ行うような特殊な使用態様では利用できない。例えば、自家製の果実酒を製造しようとする場合、収容部に果実や氷砂糖(封入物)を封入し、かつ焼酎を収容する必要があるが、注出口の径が小さいことから、封入物を収容部内に封入することはできない。また、飲料物に氷を入れて冷やそうとしても、注出口の径が小さ過ぎて、氷を封入することができない。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、ジッパーによって、径の大きな封入物を封入、取出可能なスパウト付き容器が開示されている。この容器は、容器の一端部に形成された開口に、密封かつ開封可能なジッパーを備えているため、スパウトより径が大きい封入物は、ジッパーを開封することによって、収容部への封入、及び収容部からの取出ができる。また、ジッパーを密封した状態では、液体のみをスパウトから注出でき、上記のような使用態様で利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4986309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した従来技術の容器を用いると、ジッパーへの負荷が大きい場合に、収容された液体等が漏れ出る課題がある。具体的には、特許文献1の
図1のように、ジッパーが上縁部(シート状部材間)に設けられている場合、液体の注出時に容器を傾けると、収容物の荷重がジッパーにかかるため、ジッパーの密着が維持できなくなり、収容された液体が漏れ出ることがある。また、スパウトとジッパーを閉じた状態であっても、容器を逆さまにしたり、倒したり、振ったりした場合に、収容物の荷重が上縁部にかかると、ジッパーの密着が保てず、液体が漏れ出すことがある。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、注出口の径よりも大きな封入物を封入できると共に、液体等の収容物の漏出を防止できる注出口及びジッパー付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、本発明に係る注出口及びジッパー付き容器は、シート状部材を重ねて周囲を溶着することにより
二つ以上の内容物を
混合して収容するための収容部を形成する収容体本体と、前記シート状部材の縁部に介在され
、前記内容物の注出用の口部を備え、その口部の径以下の大きさの内容物を前記収容部に注入、かつ、前記収容部から注出可能な注出口と、前記注出口の口部より径の大きな内容物を前記収容部に封入、かつ前記収容部から取り出し可能なジッパーと、を有し、前記ジッパーは、前記重ねたシート状部材の表面に開口を備える重ね部において、前記開口を密封、開封可能に配設されており、前記収容体本体は、上縁部と下縁部を備え、前記重ね部は、前記上縁部と下縁部の間の中間領域に、横方向に亘って形成されており、前記注出口は、前記重ね部より上縁部側に介在されていることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の容器では、ジッパーを開封して、収容部内に径の大きな封入物を封入、取出することができる。また、ジッパーを密封し、注出口を開封した状態では、注出口から液体等、封入物以外の収容物を注出可能となる。前記ジッパーは、シート状部材の表面に重ね部を形成し、その重ね部に設けられるため、シート状部材の内面同士に設ける場合に比べて、収容物の荷重による圧力を受けにくくできる。したがって、ジッパーにかかる圧力が低減されて、ジッパーの密着を維持可能となり、収容する液体等の漏れを防止できるようになる。
【0010】
通常、容器を傾けたり、逆さまにしたりした場合、収容物の荷重は、収容物が寄せ集まる部分に強くかかり、その部分は前記収容部の周縁である。従来技術のように、ジッパーが前記周縁部の対向内面に配設される場合、ジッパーは収容物の荷重による負荷を強く受けて密着部分が開口してしまうことがあり、液漏れ等が引き起こされる。これに対して、本発明の構成では、ジッパーを、シート状部材の表面の重ね部に配設するため、ジッパー部分に作用する圧力は、ジッパーの係合方向に作用することから、ジッパーを開こうとする圧力が加わり難くなる。すなわち、ジッパーに加わる負荷が低く抑えられることから、収容する液体等の漏出を防止することができる。
【0011】
このような構成の容器は、上述した自家製果実酒や氷水等、径の大きな固体と液体を混合し、液体のみを注出するような用途に好適である他、液体を凍らせた収容物を、解凍の状態にかかわらず取り出す容器としても適している。また、倒れたり、振ったりしても、液漏れや粉漏れがしにくい簡易容器等として幅広く活用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、注出口から液体等を注出し、ジッパーによって注出口の径よりも大きな封入物を封入、取出でき、かつ、ジッパー密封時にジッパーからの収容物の漏出を防止可能な注出口及びジッパー付き容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1に示す容器において、引き裂き片を引き出す状態を示す斜視図。
【
図3】(A)は
図1に示す容器のA−A線に沿った断面図、(B)は主要部の拡大図。
【
図4】
図1に示す容器の使用方法(径の大きな封入物の封入)を説明する斜視図。
【
図5】
図1に示す容器の使用方法(液体の注入)を説明する斜視図。
【
図6】
図1に示す容器の使用方法(保管状態)を説明する斜視図
【
図7】(A)は使用方法(径の大きな封入物の封入中)を示す容器の縦断面図、(B)は使用方法(径の大きな封入物の封入後)を示す容器の縦断面図、(C)は使用方法(液体の注入後)を示す容器の縦断面図。
【
図8】(A)及び(B)は、それぞれ従来の容器におけるジッパーの形成位置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1〜
図3は本発明の一実施形態に係る注出口及びジッパー付き容器(以下、容器と称する)を示す図であり、
図1は容器の平面図、
図2はジッパーの開封を解除する引き裂き片を引き出す状態における容器の斜視図、そして、
図3は
図1に示す容器のA−A線に沿った断面図である。
【0016】
本実施形態に係る容器1は、柔軟性を有し略長方形に形成された合成樹脂製のシート状部材(3a1,3a2)、及び、略同一形状の合成樹脂製のシート状部材3bを重ね合せ、斜線で示す周縁部をヒートバー等によって溶着することによって、収容部5Aを有する収容体本体5が形成される。前記シート状部材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PEF(ポリエチレンフイルム)の積層体、ONY(延伸ナイロン)/PEF(ポリエチレンフイルム)の積層体、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)/PEF(ポリエチレンフイルム)の積層体などによって構成することが可能であり、更に、このような積層構造に、アルミ箔、透明蒸着、アルミ蒸着、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)など、湿気、酸素バリヤのためのフイルムを組み合わせて構成しても良い。
【0017】
図3に示すように、前記シート状部材(3a1,3a2)は、収容体本体5の一方側(表面)に、前記シート状部材3bは、収容体本体5の他方側(裏面)となるように重ね合わされる。表面においては、図示のようにシート状部材3a1の下端とシート状部材3a2の上端が、上下方向に一定の幅をもって重なり合うように配置されて重ね部7が形成される。この場合、重ね部とは、収容体本体を構成するシート状部材のいずれかの面を複数枚で構成し、その複数枚のシート状部材の一部を重ねることで形成されたものであれば良い。本実施形態における重ね部7は、複数枚のシート状部材の内、シート状部材3a1が下側、シート状部材3a2が上側となるように重ねて形成されるが逆であっても良く、このような重ね部7は、必ずしも表面に形成される必要はない。例えば、前記裏面のシート状部材3bを同様な2枚構成として重ね部を裏面に形成しても良く、また表面と裏面の両方に重ね部が形成されても良い。さらに、表面、裏面に形成される重ね部7は一つに限定されず、複数形成しても良い。
【0018】
前記容器1は、前記シート状部材(3a1,3a2)、3bの周縁部を重ね合せて溶着し、底面がない袋構造としても良いが、本実施形態では別個の底面シートを更に設け、この底面シートと先の2枚の側面シート3a2、3bとを互いに熱溶着すること等により底壁9を形成し、容器1を自立袋としている。シート状部材(3a1,3a2)、及び3bの大きさ、形状、配置等については、使用目的に応じて適宜変形することができるが、本実施形態のように略長方形にする場合、長方形の横/縦比は、1未満(横長形状)に設定することが好ましい。このように縦長形状の方が、容器1を保持し易く、液体等の収容物を注出し易くなる。
【0019】
前記収容体本体5の上部コーナーの一方は、重ね合わされたシート部材3a1、3bがあらかじめ斜めにカットされており、そのコーナー部(カットした縁部)4eには、収容部5Aに収容される内容物を注出するための注出口(スパウト)10が配設される。注出口10の構成については特に限定されることはないが、本実施形態では、断面舟形形状の溶着部10aと、コーナー部4eから突出し円筒形で内容物注出用の口部10bとを備えており、前記溶着部10aが重ねたシート状部材のコーナー部4eに介在して溶着されることで取り付けられている。なお、口部10bには、口部を開封/密閉するための開封手段(スクリュー式のキャップ10c)が着脱可能に取り付けられており、収容部5A内の収容物を少量ずつ注出できるようになっている。
【0020】
前記注出口10の取付位置については、本実施形態のように自立袋として構成するのであれば、前記コーナー部4eに限定されることはなく、前記収容体本体5の上縁部4a、または側縁部4b、4dであって前記重ね部7より上側に形成されていることが好ましい。これは、重ね部7より下側に形成してしまうと、容器1を傾けない状態であっても、注出口10の開封時に、充填された液体等が流出する可能性があるためである。
【0021】
ただし、用途によっては、注出口10を収容体本体5の下縁部4c、または下縁部4c近傍の側縁部4b、4dに配設しても良い。例えば、レバー式の密封可能な構造を具備した注出口10を前記下縁部4cに配設した場合、注出口10の下部にグラスを置き、レバーを操作することによって、容器1を傾けずに、収容された液体等を注出できるようになる。
【0022】
前記重ね部7には、重なりあうシート状部材3a1と3a2の密着、開封を行うジッパー(チャック)20が設けられている。このジッパー20は、例えば、シート部材3a1の下端部に、横方向にほぼ全長にわたって形成される凹溝20aと、シート部材3a2の上端部に、横方向にほぼ全長にわたって形成されて凹溝20aに係合する凸部20bとから構成することが可能である。このような凹凸係合するジッパー20は、使用者が密開封することが可能であり、開封することで収容部5Aが横方向に開口され(
図4に示すように開口7aが形成される)、注出口10の口部10bよりも径の大きな封入物を収容部5Aに封入し、また収容部5Aから取出できるようになる。
【0023】
前記重ね部7の開口7aから封入する封入物の量を十分確保するためには、重ね部7の形成位置は、前記上縁部4aになるべく近いことが好ましい。一方で、前記上縁部4a近傍は、容器1を傾けたり、逆さまにしたり、倒したりした場合に、収容物の負荷がかかる場所であるため、上縁部4a近傍にジッパー20を配設すると、前述したような液漏れの原因となってしまい、上縁部4aからはある程度距離をおいて形成することが好ましい。すなわち、ジッパー20の配設位置が縁部側に近づくと、収容部5Aを規定する内壁面が次第に傾斜してしまい、その部分には、収容物からジッパー20を開こうとする負荷が大きく作用してしまう。このため、ジッパー20は、収容状態において、収容部を規定する内壁面が大きく傾斜していない位置に配設することが好ましい。
【0024】
具体的には、収容部内に収容される液体の量(最大液体収容位置)については、シート状部材に配設される注出口10の位置によって特定される。この場合、本実施形態のように、容器1を自立袋として構成し、その注出口10を上縁部側(コーナー部4e)に配設するのであれば、液体を略一杯に収容しようとすると、最大液体収容位置は、
図1に示すように、注出口10の溶着部10aの高さ方向の下端位置H付近となる。上記したように、ジッパー20に対して大きな負荷を作用させることなく、径の大きな封入物の量の確保と液漏れ防止のバランスを考慮すると、横方向のジッパー20の配設位置については、下端位置Hから35〜40%の距離(下端位置Hから下縁部4cの下端4Cまでの距離Lを100%とした場合、L1を35〜40%に設定する)に設定することが好ましい。すなわち、ジッパー20を、下端位置Hから35%未満の高さに形成すると、ジッパー20にかかる収容物の荷重による負荷が大きく作用して液漏れし易くなってしまい、ジッパー20を、下端位置Hから40%超の高さに形成すると、開口7aから封入できる封入物が少量となって、径の大きな封入物を封入できる利点が薄れてしまうからである(ジッパー20を、下端位置Hから50%の高さに形成すると負荷が作用し難く最も好ましい位置と考えられるが、封入量は少量となってしまう)。なお、上記したジッパー20の配設位置は、長方形の横辺/縦辺の比率が1以上(横長形状)の収容体本体では、ジッパー20に対して大きな圧力が作用することから特に好ましい配設態様となる。
【0025】
前記ジッパー20の配設位置は、シート状部材3a1,3a2の縦方向の長さ(高さ)によって規定できる。例えば、シート状部材3a1と3a2の高さが同一の場合、ジッパー20は、前記上縁部4aと下縁部4cの中央付近に位置するように配設することができる。すなわち、上記したようにジッパー20を下端位置Hから35〜40%の高さに配設するには、シート状部材3a1,3a2の高さによって重ね部7の位置を調整し、その重ね部7におけるジッパー20の配設位置を微調整すれば良い。
【0026】
前記重ね部7には、前記ジッパー20の開封を解除する引き裂き片30を設けておくことが好ましい。この引き裂き片30は、シート状部材3a2の上端縁3a2´から引き裂かれるとともに、シート状部材3a1の表面3a1´から剥離するように、上側となるシート状部材3a2に取着されており、この引き裂き片30によって、未使用状態を保証し、更には、収容部5A内への雑菌、異物の混入を防止することができる。例えば果実酒の製造に用いる場合、未使用状態で収容部5Aの清潔は保たれているため、容器をあらかじめ煮沸等する必要がなく便利である。
【0027】
前記引き裂き片30は紐状であって、重ね部7において、ジッパー20より上側に、ジッパー20と略平行に取着されている。引き裂き片30は、左端に摘み片30aを有し、この摘み片30aは、重ね部7の左側の側縁部4dに埋め込まれて取着されており、側縁部4dに形成された切れ目に沿って裏面から押し出すことができる。
図2の矢印で示すように、押し出された摘み片30aを引き出すことによって、引き裂き片30はシート部材30a2の上端縁3a2´から引き剥がされ、ジッパー20の上側に裂け目を生成し、この裂け目から、上記したように凹凸係合しているジッパー20を開封することができる。なお、引き裂き片30は、重ね部7の右側の周縁部4bの右端まで引き出すと、容器1から引き剥がれるように取着されている。
【0028】
次に、上記した構成の容器1の使用方法について、
図4〜
図7を併せて参照し、自家製果実酒の製造例にしたがって説明する。
【0029】
まず、引き裂き片30の左端にある摘み片30aを、左側の側縁部4dの切れ目に沿って裏面から押し出し、押し出された摘み片30aを右側に引き出すことによって、ジッパー20の上側に裂け目を発生させる。そして、この裂け目からジッパー20を開封し、現れた開口7aから、径の大きな封入物15(果実、氷砂糖)を封入する(
図4,
図7(A))。
【0030】
このように径の大きな封入物15を封入し、ジッパー20を密封した後(
図7(B))、注出口10のキャップ10cを開栓して焼酎を注ぎ入れる(
図5,
図7(C))。焼酎は、注出口10が溶着された位置付近の高さまで注入することが可能である。注入時は、例えば、
図5に示すように、注出口10に漏斗100を使用し、焼酎を注ぎ入れても良い。焼酎注入後は、注出口10のキャップ10cを密封し、果実酒が熟成されるまで容器1を保管する(
図6)。
【0031】
この保管時には、底部に溶着された底壁9によって、容器1を自立させて置くことができる。この保管時に、外部振動等によって容器1が倒れた場合であっても、ジッパー20がシート状部材の表面に形成された重ね部7に配設されていることによって、ジッパー20に加わる収容物の荷重による負荷は低く抑えられるため、収容した果実酒が容器1から漏れ出すことを回避できる。
【0032】
具体的には、
図7(C)に示すように、収容部5A内からシート状部材(側壁部分)には、矢印で示すような圧力が作用するが、上記したように、シート状部材に重ね部7を形成し、その部分に凹凸係合するジッパー20を配設することで、圧力が作用する方向と凹凸係合する方向が略同一となりジッパー20を開こうとする圧力が加わり難くなる。すなわち、ジッパー20に加わる負荷が低く抑えられることから、収容する液体等の漏出を防止することができる。
【0033】
これに対して、
図8の断面図で示される従来型の注出口及びジッパー付き容器40,50では、シート状部材間(シート状部材3a(表面)とシート状部材3b(裏面)の内面の間)にジッパー20が配設されているため、ジッパー20に収容物の荷重が強く作用して液漏れの原因となる。具体的には、
図8(A)のように、ジッパー20が容器40の下縁部付近に形成されている場合、収容物の荷重は、常にジッパー20にかかってしまい、ジッパー20は開封し易くなる。また、
図8(B)のように、ジッパー20が容器50の上縁部付近に形成された場合、容器50を傾けたり、逆さまにしたり、振ったりした場合、収容物の荷重はジッパー20にかかり易くなる。
【0034】
以上のように、容器1を安定的に保管し、果実酒が熟成した際には、注出口10から果実酒を注出する。注出時は、収容物の荷重による負荷が注出口10の配設されたコーナー部4e、及びコーナー部4e近傍の上縁部4aにかかるが、ジッパー20がシート状部材の表面に形成されていることから、ジッパー20にかかる負荷は低く、ここから果実酒が漏れ出すことはない。
【0035】
そして、果実酒を注出し、その残量がジッパー20の高さより低くなれば、ジッパー20を開封して焼酎漬となった果実を取り出すこともできる。また、必要に応じて、ジッパー20から果実や氷砂糖、注出口10から焼酎を追加収容し、再び果実酒を熟成させることもできる。さらに、封入した氷砂糖を一定程度溶かしたり、二種類以上の焼酎を混同したりする場合等、容器1を振ることがあるが、その場合であってもジッパー20から液漏れが発生することはない。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、シート部材の材質については、収容物に応じて、種々多様なものを選択でき、シート部材間の溶着方法も熱溶着でなく超音波溶着などを用いても良い。また、容器や注出口の形状、ジッパーや引き裂き片の形状についても、上記した実施形態に限定されることはない。また、重ね部の形成位置や形成態様、ジッパーの密開封構造についても凹凸係合のシールでなくても良く、引き裂き片については必ずしも必要ではない。さらに、上述した実施形態では、収容対象物として食品を例示したが、本発明は、二つ以上の液体や固形物を混合し、液体のみ、または固形物のみを取り出すような用途であれば、例えば、医薬品等の分野にも幅広く活用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 容器
3a1,3a2、3b シート状部材
4a 上縁部
4b,4d 側縁部
4c 下縁部
4e コーナー部
5 収容体本体
5A 収容部
7 重ね部
7a 開口
9 底壁
10 注出口
20 ジッパー
30 引き裂き片
40,50 従来の容器