(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物理的若しくは化学的な処理が、熱処理、超音波処理、電場処理、磁場処理、圧力処理、アルカリ処理、レーザー照射、研磨処理及びマイクロニードルによる処理からなる群より選択される少なくとも1つの処理である、請求項11に記載のアジュバント製剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経皮又は経粘膜によりアジュバントの投与を行う場合には、皮膚刺激性を充分抑制することが要求される。しかし、経皮又は経粘膜により効率よく投与することが可能であり、皮膚刺激性が充分に抑制され、かつ免疫応答の増強作用を充分に発揮し得るアジュバント、特に低分子からなるアジュバントは、いまだ数が少ないのが現状である。
【0007】
本発明の目的は、皮膚刺激性が充分に抑制され、かつ充分な免疫応答の増強作用を発揮することが可能な経皮又は経粘膜投与用であるアジュバント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ラウリルアルコール及びプロピレングリコールを含有するアジュバント組成物であって、ラウリルアルコール及びプロピレングリコールの含有量が、アジュバント組成物全質量基準で、それぞれ0.5〜25質量%及び8.0〜99.5質量%であり、ラウリルアルコールが溶解しており、経皮又は経粘膜投与用である、アジュバント組成物を提供する。
【0009】
かかるアジュバント組成物は、皮膚刺激性が充分に抑制され、かつ充分な免疫応答の増強作用を発揮することができる。なお、本発明に含まれる各成分は、経皮製剤の吸収促進剤として既知の化合物である。しかし、本アジュバント組成物における上記成分の組み合わせによりもたらされる効果は、対象の免疫応答を増強することであり、経皮製剤における吸収促進剤とは作用機序も及ぼす効果も全く異なるものである。抗原を注射剤の形態にて全量投与した後に、本アジュバント組成物を適用した場合にも、免疫応答の増強効果がみられていることからも確認することができる。
【0010】
本発明のアジュバント組成物は、グリセリンを更に含有し、ラウリルアルコール、プロピレングリコール及びグリセリンの含有量が、アジュバント組成物全質量基準で、それぞれ0.5〜25質量%、8.0〜90質量%及び1.0〜90質量%であることが好ましい。グリセリンを更に含有させ、ラウリルアルコール、プロピレングリコール及びグリセリンの含有量を上記範囲とすることにより、アジュバント組成物の免疫応答の増強作用をより向上させることができる。
【0011】
ラウリルアルコールの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比が、1.0〜99であることが好ましい。ラウリルアルコール及びプロピレングリコールの含有量をこのような範囲とすることにより、ラウリルアルコールを充分量溶解させることができる。
【0012】
グリセリンの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比が、0.4〜99であることが好ましい。グリセリン及びプロピレングリコールの含有量をこのような範囲とすることにより、ラウリルアルコールを充分量溶解させることができる。
【0013】
本発明はまた、アジュバント組成物を含む、アジュバント製剤を提供する。
【0014】
かかるアジュバント製剤は、上記のアジュバント組成物を含むことから、皮膚刺激性も充分に抑制され、かつ充分な免疫応答の増強作用を発揮することができる。
【0015】
アジュバント組成物の含有量が、アジュバント製剤全質量基準で50〜100質量%であってもよい。アジュバント組成物の含有量がこのような範囲であると、アジュバント製剤の免疫応答の増強作用をより向上させることができる。
【0016】
アジュバント製剤は、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、座剤、パップ剤、パッチ製剤、ローション剤、液剤、含浸剤又はブリスター剤とすることができる。
【0017】
パッチ製剤が、マトリックス型のテープ製剤、積層型のテープ製剤又はリザーバー型のパッチ製剤であってもよい。このようなパッチ製剤によれば、アジュバント組成物の投与をより迅速かつ長期にわたり行うことができる。
【0018】
アジュバント組成物は、マイクロニードル穿刺、無針注射、皮膚研磨又は粘膜研磨により、皮膚又は粘膜に投与されてもよい。
【0019】
アジュバント組成物は、マイクロニードルの少なくとも一部にコーティングされ、穿刺により、皮膚又は粘膜に投与されてもよい。
【0020】
アジュバント組成物は、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス又はエレクトロポレーションにより投与されてもよい。
【0021】
アジュバント製剤は、無傷の皮膚、無傷の粘膜、物理的若しくは化学的な処理が施された皮膚又は物理的若しくは化学的な処理が施された粘膜に投与することが可能である。
【0022】
物理的若しくは化学的な処理が、熱処理、超音波処理、電場処理、磁場処理、圧力処理、アルカリ処理、レーザー照射、研磨処理及びマイクロニードルによる処理からなる群より選択される少なくとも1つの処理であってもよい。皮膚又は粘膜に対し、このような処理を行うことにより、アジュバント製剤の経皮又は経粘膜投与の効率をより向上させることができる。
【0023】
アジュバント製剤は、抗原投与前又は抗原投与後に、皮膚又は粘膜に投与されてもよい。
【0024】
本発明はまた、上記のアジュバント組成物、又は、上記のアジュバント製剤を備える、キットを提供する。
【0025】
上記キットは、抗原又は抗原投与のための器具を更に備えてもよい。
【0026】
本発明は、免疫反応の促進を必要とする個体を対象とする、免疫賦活方法を提供するということもできる。例えば、本発明は、上記のアジュバント組成物、又は上記のアジュバント製剤を、ヒトに対して経皮又は経粘膜投与することを含む、免疫賦活方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、皮膚刺激性が充分に抑制され、かつ充分な免疫応答の増強作用を発揮することが可能な経皮又は経粘膜投与用であるアジュバント組成物を提供することができる。
【0028】
本発明はまた、アジュバント組成物を含むアジュバント製剤を提供することができる。かかるアジュバント製剤は、本発明に係るアジュバント組成物を含むことから、皮膚刺激も充分に抑制され、かつ充分な免疫応答の増強作用を発揮することができる。また、本発明に係るアジュバント製剤は、上記アジュバント組成物を高濃度で含有することが可能であるため、皮膚又は粘膜に投与した際の免疫応答の増強効果に優れる。本発明はまた、アジュバント組成物又はアジュバント製剤を備えるキットを提供することができる。また、本発明は、アジュバント組成物又はアジュバント製剤を、免疫反応の促進を必要とする個体に対して、経皮又は経粘膜投与することを含む免疫賦活方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係る経皮又は経粘膜投与用であるアジュバント組成物は、ラウリルアルコール及びプロピレングリコールを含有するアジュバント組成物であって、ラウリルアルコール及びプロピレングリコールの含有量が、アジュバント組成物全質量基準で、それぞれ0.5〜25質量%及び8.0〜99.5質量%であり、ラウリルアルコールが溶解していることを特徴とする。なお、本明細書において、ラウリルアルコールが溶解しているとは、後述の試験例1において、A又はBと評価されることを意味し、好ましくはAと評価されることを意味する。
【0031】
上記のような構成を有するアジュバント組成物は、経皮又は経粘膜投与が可能であり、皮膚刺激が充分に抑制され、かつ優れた免疫応答の増強作用(免疫賦活効果)を発揮し得る。従来の皮膚に直接適用する含浸剤と比べても、皮膚刺激性がより抑制されたものとなり、安全に免疫賦活効果を得ることができる。このような効果は、免疫IgG抗体価を測定することにより確認することができる。
【0032】
かかる効果が得られる理由は明らかではないが、所定量のラウリルアルコールと所定量のプロピレングリコールとを合わせ含有する本実施形態に係るアジュバント組成物を経皮又は経粘膜で投与することにより、皮膚又は粘膜に存在するランゲルハンス細胞が活性化され、リンパ節内に存在するヘルパーT(TH)細胞へとシグナルが効率よく伝えられるために、高い免疫応答が得られるものと考えられる。
【0033】
また、本実施形態に係るアジュバント組成物は、それ自体で免疫応答の増強作用を発揮し得ることから、抗原と混合して投与する必要はなく、抗原とは別に投与することができる。抗原とは独立して経皮又は経粘膜で投与することにより、優れた免疫応答の増強効果を得ることができるため好ましい。アジュバント組成物の投与のタイミングも抗原投与前、抗原投与時、又は抗原投与後のいずれであってもよい。抗原投与前又は抗原投与後に行うことが好ましい。さらに、アジュバント組成物の投与形態についても、抗原とは異なる投与形態で投与することができ、抗原とは独立した経路で投与してもよい。したがって、アジュバント組成物の投与時には、抗原の投与量等の条件を考慮する必要がなく、アジュバント組成物自体の投与量、投与時間、投与形態等を選択することができる。本実施形態に係るアジュバント組成物は、抗原と別に投与することができることから、抗原の投与時に発生する投与部位の腫脹、疼痛を回避してアジュバント組成物を投与することができる。
【0034】
ラウリルアルコールの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、0.5〜60質量%であってもよく、0.5〜25質量%であることが好ましく、1.0〜20質量%であることがより好ましい。ラウリルアルコールの含有量を60質量%以下とすることにより、アジュバント組成物の皮膚刺激性を充分抑制することができる。また、ラウリルアルコールの含有量を0.5質量%以上とすることにより、アジュバント組成物の免疫応答の増強作用を充分に得ることができる。上記範囲内であれば、ラウリルアルコールの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、0.5〜60質量%、0.5〜50質量%、0.5〜45質量%、0.5〜40質量%、0.5〜25質量%、0.5〜20質量%であってもよい。また、上記範囲内であれば、ラウリルアルコールの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、1.0〜25質量%、又は1.0〜20質量%であってもよい。
【0035】
プロピレングリコールの含有量は、アジュバント組成物全量基準で、8.0〜99.5質量%であるが、40〜99質量%であることが好ましく、49〜99質量%であることがより好ましい。プロピレングリコールの含有量を8.0質量%以上とすることにより、ラウリルアルコールを充分に溶解することができる。上記範囲内であれば、プロピレングリコールの含有量は、アジュバント組成物全量基準で、8.0〜99.5質量%、40〜99.5質量%、又は49〜99.5質量%であってもよい。また上記範囲内であれば、プロピレングリコールの含有量は、アジュバント組成物全量基準で、8.0〜99質量%、40〜99質量%、又は49〜99質量%であってもよい。
【0036】
本実施形態に係るアジュバント組成物は、グリセリンを更に含有することができる。グリセリンを含有させることにより、アジュバント組成物の免疫応答の増強作用をより向上させることができる。
【0037】
プロピレングリコールの含有量は、アジュバント組成物がグリセリンを含有する場合、アジュバント組成物全質量基準で、8.0〜90質量%であることが好ましく、49〜90質量%であることがより好ましく、49〜79質量%であることがさらに好ましい。プロピレングリコールの含有量をこのような範囲とすることにより、ラウリルアルコールをより充分に溶解させることができる。上記範囲内であれば、アジュバント組成物がグリセリンを含有する場合のプロピレングリコールの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、8.0〜90質量%、又は49〜90質量%であってもよい。また、上記範囲内であれば、アジュバント組成物がグリセリンを含有する場合のプロピレングリコールの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、8.0〜79質量%、又は49〜79質量%であってもよい。
【0038】
グリセリンの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、1.0〜90質量%であることが好ましく、1.0〜80質量%であることがより好ましく、8.0〜60質量%であることがさらに好ましく、16〜50質量%であることが特に好ましい。グリセリン含有量をこのような範囲とすることにより、ラウリルアルコールをより充分に溶解させることができる。上記範囲内であれば、グリセリンの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、1.0〜90質量%、1.0〜80質量%、1.0〜60質量%又は1.0〜50質量%であってもよい。また上記範囲内であれば、グリセリンの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、8.0〜90質量%、8.0〜80質量%、8.0〜60質量%、又は8.0〜50質量%であってもよい。また上記範囲内であれば、グリセリンの含有量は、アジュバント組成物全質量基準で、16〜90質量%、16〜80質量%、16〜60質量%、又は16〜50質量%であってもよい。
【0039】
ラウリルアルコールの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、1.0〜99であることが好ましく、2.8〜89であることがより好ましく、2.8〜79であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、ラウリルアルコールの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、1.0〜99、1.0〜89、1.0〜79であってもよい。また上記範囲内であればラウリルアルコールの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、2.8〜99、2.8〜89、又は2.8〜79であってもよい。
【0040】
また、グリセリンの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、0.4〜99であることが好ましく、0.4〜9.0であることがより好ましく、0.6〜9.0であることがさらに好ましく、1.0〜4.0であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、グリセリンの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、0.4〜99、0.4〜9.0、又は0.4〜4.0であってもよい。また上記範囲内であれば、グリセリンの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、0.6〜99、0.6〜9.0、又は0.6〜4.0であってもよい。また上記範囲内であれば、グリセリンの含有量に対するプロピレングリコールの含有量の比は、1.0〜99、1.0〜9.0、又は1.0〜4.0であってもよい。
【0041】
アジュバント組成物中のラウリルアルコール、プロピレングリコール及びグリセリンの含有量は、アジュバント組成物を所定量採取し、例えば、ガスクロマトグラフィー法により定量することで決定することができる。測定条件は、以下のように設定してもよい。
装置:株式会社島津製作所製 GC−2010
検出器:株式会社島津製作所製 水素炎イオン化検出器 FID−2010
カラム:Agilent社製 GCカラム DB−1
キャリアガス:He
【0042】
アジュバント組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。その他成分としては、脂肪族アルコール(ただし、ラウリルアルコール、グリセリン及びプロピレングリコールを除く)、脂肪酸誘導体、遊離脂肪酸、脂肪族エーテル等が挙げられる。
【0043】
このような成分としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物を使用することができる。
CH
2R
1(CHR
2)
nCH
2R
3 (I)
【0044】
上記一般式(I)中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、H、OH、OCOR
4を表し、nは0、1又は2であり、nが2であるとき、R
2は同一でも異なってもよく、R
4は直鎖状若しくは分枝状の炭素数1〜3のアルキル基、直鎖状若しくは分枝状の炭素数2〜3のアルケニル基、又は炭素数2〜3のアルキニル基を表す。ただし、R
1、R
2及びR
3が同時にHとなることはなく、nが1であるときに、R
1、R
2及びR
3の2つ以上が同時にOHとなることはない。
【0045】
脂肪族アルコールとしては、上記一般式(I)で表される脂肪族アルコールの他、直鎖状又は分枝状の脂肪族アルコールを使用することができるが、直鎖状の脂肪族アルコールが好ましい。また、脂肪族アルコールは、飽和又は不飽和のいずれであってもよいが、飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。脂肪族アルコールは、炭素数及び分子量共に制限されるものではないが、炭素数8〜20の脂肪族アルコールであることがより好ましい。炭素数をこのような範囲とすると、皮膚透過性の観点から好ましい。
【0046】
脂肪族アルコールは、例えば、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、デカノール等が挙げられる。これらの脂肪族アルコールの中でも、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0047】
脂肪酸誘導体としては、上記一般式(I)で表される脂肪酸誘導体の他、脂肪酸部分を含む化合物を使用することができる。脂肪酸誘導体としては、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸ハライド等が包含する。脂肪酸誘導体としては、脂肪酸エステルが好ましく、脂肪酸炭素数が10〜20、脂肪酸の不飽和度が0又は1である脂肪酸エステル、及び1価の脂肪酸エステルはそれぞれより好ましい。
【0048】
脂肪酸エステルは、例えば、トリアセチン、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、イソプロピルミリステート、ポリエチレングリコール、モノオレイン酸グリセロール、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル等が挙げられる。これらの脂肪酸エステルの中でも、特にソルビタンモノラウレートが最も好ましい。
【0049】
遊離脂肪酸としては、直鎖状又は分枝状の遊離脂肪酸を使用することができる。また、飽和又は不飽和の遊離脂肪酸のいずれであってもよい。遊離脂肪酸は、炭素数8〜20のものが好ましい。炭素数をこのような範囲とすると、皮膚透過性の観点から好ましい。
【0050】
遊離脂肪酸は、例えば、オレイン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等が挙げられる。これらの遊離脂肪酸の中でも、オレイン酸及びラウリン酸が好ましい。
【0051】
脂肪族エーテルとしては、低分子量及び高分子量のいずれのエーテル化合物であってもよい。このようなエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール等が挙げられる。ポリエチレングリコールとしては、好ましくは、平均分子量が200〜4000であるものが好ましく、200〜1000であるものがより好ましい。このようなポリエチレングリコールは、例えば、マクロゴール400(三洋化成工業株式会社製)の商品名で、商業的に入手可能である。
【0052】
上記の脂肪族アルコール、脂肪酸誘導体、遊離脂肪酸及び脂肪族エーテルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
上記アジュバント組成物は、これを含有するアジュバント製剤として使用することができる。
【0054】
アジュバント製剤中におけるアジュバント組成物の含有量は、使用の目的等に応じて調整することができるが、アジュバント組成物を高濃度で含有することが好ましい。アジュバント組成物の含有量は、アジュバント製剤全質量基準で、50〜100質量%とすることができるが、75〜100質量%であることが好ましく、85〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることがさらに好ましい。アジュバント組成物の含有量を50質量%以上とすることで、アジュバント製剤の免疫賦活効果をより向上させることができる。
【0055】
アジュバント製剤は、使用の目的、製剤の態様等に応じて、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、増粘剤、湿潤剤、充填剤、溶解剤、溶解補助剤、吸収促進剤、薬効補助剤、安定化剤、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤、架橋剤、重合剤、粘着剤、可塑剤、pH調整剤、防腐剤、賦形剤などが挙げられる。
【0056】
増粘剤は、水分を30〜80%安定に保持でき、かつ保水性を有するものであることが好ましい。増粘剤は、例えば、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉等の植物系、ザンサンガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系などの天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マイレン酸共重合体等の合成高分子などの水溶性高分子などが挙げられる。これらの増粘剤のうち、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。ポリアクリル酸ナトリウムは、ゲル強度が強く、かつ保水性に優れる。平均重合度20000〜70000のポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。平均重合度が20000より大きいと増粘効果がより充分のものとなり、ゲル強度が向上する傾向にある。また、平均重合度が70000より小さいと増粘効果が強すぎることによる作業性の低下を抑制することができる。また、上記増粘剤を2種類以上併用することにより、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムが強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成し、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0057】
湿潤剤としては、ソルビトール等の多価アルコールなどを使用することができる。充填剤としては、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを使用することができる。湿潤剤及び充填剤の配合量は、アジュバント製剤全質量を基準として、合計で0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましい。
【0058】
溶解補助剤又は吸収促進剤としては、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペート等を使用することができる。
【0059】
薬効補助剤としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムヒドロキシホスファイト硫酸塩等を使用することができる。
【0060】
界面活性剤としては、非イオン性活性剤、イオン性活性剤(カチオン、アニオン、両性)のいずれも使用することができる。安全性の面から通常医薬品基剤に用いられる非イオン性活性剤を使用することが望ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0061】
アジュバント製剤は、架橋剤、重合剤等を含有していてもよい。このような成分を含有させることにより、膏体を強固にするとともに保水性を持たせることができる。架橋剤や重合剤は、増粘剤等の種類に応じて適宜選択される。
【0062】
例えば、増粘剤にポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩を使用した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の他、例えば、Ca、Mg、Alなどの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物などの多価金属化合物が好適に用いられる。
【0063】
また、増粘剤にポリビニルアルコールを使用した場合は、アジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Cr等の錯化物などが好適に用いられる。
【0064】
また、増粘剤にポリビニルピロリドンを使用した場合は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物又はそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸及びその誘導体)などが好適に用いられる。
【0065】
また、増粘剤にポリエチレンオキサイドを使用した場合は、パーオキサイド、ポリスルホンアザイド等が好適に用いられる。
【0066】
また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を使用した場合は、多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩等が好適に用いられる。
【0067】
また、増粘剤にゼラチンを使用した場合は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどのアルデヒド類、グリオキサール、ブタジエンオキシド等のジエポキシド類、ジビニルケトン等のジケトン類、ジイソシアネート類などが好適に用いられる。
【0068】
また、増粘剤にポリアクリル酸ナトリウムを使用した場合、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ほう酸ナトリウム等の多価金属塩が好適に用いられる。とくに、亜鉛塩、アルミニウム塩が好ましい。架橋反応が促進されるからである。
【0069】
架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(又は水溶性高分子)1当量に対し0.5〜1.5当量が好ましい。多価金属塩の濃度を0.5当量以上とすることによって、反応が促進されてゲル強度が高くなり、多価金属塩の濃度を1.5当量以下とすることによって、反応を適度な速度において行わせしめ、ゲル化を均一とし、作業性を向上させることができる。
【0070】
粘着剤としては、アクリル系高分子又はゴム系の高分子が好ましい。
【0071】
アクリル系高分子としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて共重合したものであればとくに限定されないが、好ましくは2−エチルヘキシルアクリレートを50%以上含有するものが好ましい。具体的な粘着剤としては、医薬品添加物事典2000(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に包含されるアクリル系高分子等の粘着剤、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会)などを使用することができる。ゴム系の高分子としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISと略記する)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(以下、PIBと略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと略記する)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRと略記する)、ポリシロキサン等が挙げられる。これらのゴム系の高分子のうち、SIS、PIB及びポリシロキサンが好ましく、SIS、PIBがより好ましい。これらの粘着剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
粘着剤の配合量は、アジュバント製剤全質量を基準として、5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。粘着剤の配合量をこのような範囲とすると、アジュバント製剤の皮膚又は粘膜への透過性の観点から好ましく、貼付剤を形成する場合には、粘着剤層の形成の観点から好ましい。
【0073】
粘着力が不足している場合には、別途、粘着付与樹脂を配合することが望ましい。粘着付与樹脂としては、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等)、脂環族飽和炭化水素樹脂(例えばアルコンP100、荒川化学工業)、脂肪族系炭化水素樹脂(例えばクイントンB170、日本ゼオン)、テルペン樹脂(例えばクリアロンP−125ヤスハラケミカル)、マレイン酸レジンなどが挙げられる。とくに水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましい。
【0074】
粘着付与樹脂の配合量は、貼付剤としての充分な粘着力及び剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、アジュバント製剤全質量を基準として、5〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0075】
可塑剤としては、石油系オイル(例えば、流動パラフィン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えば、液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンなどが挙げられる。これらの可塑剤の中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチルが好ましく、流動パラフィン、液状ポリブテン及びミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。これらの可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
可塑剤の配合量は、アジュバント製剤全質量を基準として、10〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましい。可塑剤の配合量をこのような範囲とすると、アジュバント製剤の皮膚又は粘膜への透過性の観点から好ましく、貼付剤を形成する場合には、充分な凝集力の維持し得ることから好ましい。
【0077】
吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物であればいずれでも使用することができる。吸収促進剤は、例えば、炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、アミド、エーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、また、環状、直鎖状、分枝状のいずれでもよい)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油などが挙げられる。このような吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
吸収促進剤の配合量は、充分な皮膚への透過性、及び、発赤、浮腫等の皮膚への刺激性などを考慮して、アジュバント製剤全質量を基準として、0.01〜40質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0079】
アジュバント製剤はまた、種々の剤形として使用することができ、従来用いられている経皮又は経粘膜投与製剤と同じ剤形とすることができる。このようなアジュバント製剤の剤形としては、アジュバント組成物を経皮的又は経粘膜的に投与できるものであることが好ましく、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、座剤、パップ剤、パッチ製剤、ローション剤、液剤、含浸剤又はブリスター剤等の剤形であることが好ましく、パッチ製剤又は含浸剤の剤形であることがより好ましく、含浸剤の剤形であることがさらに好ましい。このような剤形である場合、外用形態のアジュバント製剤として非侵襲的体内投与が可能となる。
【0080】
パッチ製剤としては、マトリックス型のテープ製剤、積層型のテープ製剤及びリザーバー型のパッチ製剤が包含される。これらのうち、マトリックス型のテープ製剤及びリザーバー型のパッチ製剤としての使用が好ましく、リザーバー型のパッチ製剤としての使用がさらに好ましく用いられる。
【0081】
マトリックス型のテープ製剤とは、テープ製剤のうち、粘着性を備えた基剤中に薬理活性物質を分散・含有してなる粘着剤層を有するものをいう。マトリックス型テープ製剤は、粘着剤層の一方の面に支持体、他方の面に剥離ライナーを備える。基剤は、本質的にゴム状(ガラス状)ポリマー又はゲルを含む。
【0082】
積層型のテープ製剤とは、テープ製剤のうち、粘着性を備えた基剤中に薬理活性物質を分散・含有してなる複数の粘着剤層を有し、粘着剤層の一方の面に支持体、他方の面に剥離ライナーを貼り合わせたものをいう。
【0083】
リザーバー型のパッチ製剤とは、薬理活性物質を貯蔵するリザーバーを有し、このリザーバーの一方の面に薬剤に対して不浸透性の裏あて部材(支持体)を備え、他方の面に剥離ライナー、又は、薬剤浸透性の粘着剤層及び剥離ライナーを備えるものをいう。
【0084】
含浸剤は、一般に、活性成分を含む液剤をパッドに含浸して保持させた状態で、粘着カバー材でパッド部を覆う製剤である。その構成は特に限定されるものではないが、支持体、液剤に対する不浸透性の裏あて部材(フィルム)、粘着カバー剤、パッド、ライナー等を備えることができる。含浸剤とすることで、パッド部に含浸させた液剤、軟膏又はゲル等を安定に保持可能である。また、ブリスター容器等に液剤などを保持させた状態で保管し、投与時にパッド部に含浸させ、含浸剤を調製してもよい。
【0085】
パッドとしては、例えば、パルプ等の天然部材、ガーゼ、脱脂綿等の天然織物部材、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニル等の合成繊維織物部材などを用いることができる。これらの部材を組み合わせて織布、不織布等に加工して使用することもできる。
【0086】
アジュバント製剤は上述した剤形として、皮膚又は粘膜に適用してもよいが、マイクロニードル穿刺、無針注射、皮膚研磨又は粘膜研磨により、皮膚又は粘膜に投与することもできる。
【0087】
アジュバント製剤の投与方法として、マイクロニードルの少なくとも一部にアジュバント製剤をコーティングして、穿刺により投与する方法を用いてもよい。マイクロニードルへのコーティングについては、例えば、特表2004−504120号公報、特表2004−528900号公報、国際公開2005/016440号に記載の方法で行うことができる。また、アジュバント製剤の投与方法としては、イオントフォレーシス、ソノフォレーシス又はエレクトロポレーションにより投与する方法であってもよい。
【0088】
抗原は、免疫細胞上の抗原レセプターに結合し免疫応答を惹起する物質であり、抗原としては、特に制限されるものではない。例えば、ポリヌクレオチド(DNAワクチン、RNAワクチン)、タンパク質ベースのワクチン等を使用することができる。このような抗原としては、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹等のウイルスを弱毒化又は不活性化したもの、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、グループA連鎖球菌属、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌等の細菌を弱毒化又は不活性化したもの、タンパク質、多糖、オリゴ糖、リポタンパク質、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0089】
商業的に入手可能な、抗原性作用物質を含有するワクチンもまた、使用することができる。このようなワクチンとしては、例えば、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン等が挙げられる。さらには、癌、動脈硬化、神経疾患、アルツハイマー等のワクチン療法で使用される抗原も使用することができる。
【0090】
また、抗原性(感作性)を有するアレルゲン物質を抗原として使用してもよい。このようなアレルゲン物資としては、多種多様な金属、化学物質が挙げられる。例えば、アトピー性皮膚炎の抗原を明らかにするアレルギー検査及び治療の場合は、ホコリ、不活化ダニ等のハウスダスト、各種の花粉などが使用されてもよい。また、T細胞性介在性の自己免疫疾患又は症状に関連する炎症性T細胞により認識される抗原も包含される。
【0091】
抗原の投与方法は、とくに限定されないが、経口、注射(筋肉内、皮下、皮内)、マイクロニードル穿刺等による投与方法、経皮又は経粘膜投与方法等が使用できる。経皮投与の場合は、抗原の皮膚透過性と必要な投与量に応じた経皮投与手段が選択される。抗原が経皮投与可能であれば、アジュバント組成物と抗原とを含有する経皮的な非侵襲性製剤を形成することができる。抗原が充分な経皮又は経粘膜活性を有していない場合には、非経皮的又は非経粘膜的に投与してもよく、例えば、注射による投与、経口による投与が考えられる。注射による投与の場合は、アジュバント組成物と抗原とを同時に投与してもよい。
【0092】
アジュバント製剤の投与方法は、抗原を非経皮的もしくは非経粘膜的に投与(注射、マイクロニードル穿刺等)する前または後に、あるいは、投与するのと同時に、アジュバント製剤(とくに好ましくは含浸剤やパッチ製剤)を投与することが好ましい。抗原を非経皮的又は非経粘膜的に投与した後に、アジュバント製剤を投与することがより好ましく、抗原を非経皮的又は非経粘膜的に投与した直後に、アジュバント製剤を投与するのがより好ましい。かかる場合には抗原の投与を行いながら、アジュバント製剤の投与(好ましくは貼付による投与)を継続して行うことができる。例えば、抗原をマイクロニードル穿刺等で投与したまま、アジュバント製剤を貼付等によって別途投与することができる。
【0093】
アジュバント製剤の投与方法が貼付である場合、その貼付時間は、アジュバント製剤が、皮膚又は粘膜を充分に透過してその効果を発揮できる時間であればとくに限定されないが、0.1〜96時間であることが好ましく、0.5〜48時間であることがより好ましく、2〜24時間であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、貼付時間は、0.1〜96時間、0.5〜96時間、2〜96時間、4〜96時間、又は6〜96時間であってもよい。また上記範囲内であれば、貼付時間は、0.1〜48時間、0.5〜48時間、2〜48時間、4〜48時間、又は6〜48時間であってもよい。また上記範囲内であれば、貼付時間は、0.1〜12時間、0.5〜12時間、2.0〜12時間、又は6〜12時間であってもよい。これらのうち貼付時間の下限値については長く設定されることがより好ましく、貼付時間の上限値については短く設定されることがより好ましい。
【0094】
上記抗原と、アジュバント組成物又はアジュバント製剤とを混合して用いる場合、その配合量比は、抗原と、アジュバントの組み合わせによって適宜決定することができる。アジュバントが高濃度となるような配合で使用することが好ましい。
【0095】
本発明の一側面によれば、本実施形態に係るアジュバント組成物又はアジュバント製剤を用いる免疫賦活方法又は免疫調節方法を提供する。かかる方法は、抗原の免疫原性を高め、抗体価を上昇させることに優れている。
【0096】
換言すれば、本発明の一側面によれば、上記のアジュバント組成物、又は上記のアジュバント製剤を、免疫反応の促進を必要とする個体に対して、経皮又は経粘膜投与することを含む、免疫賦活方法が提供される。
【0097】
免疫反応の促進を必要とする個体とは、例えば、抗原投与による予防を必要としている個体、又は抗原投与による治療を必要とする疾病若しくは疾患に罹患している個体を含む。個体は、ヒトであってもよい。ここで抗原には、上述した抗原として使用可能なウイルス、細菌等を含む。免疫賦活方法又は免疫調整方法は、適用する対象に応じた、予防又は治療のための方法ということもできる。例えば、ウイルス感染症の発症予防のために免疫反応の促進を必要とする個体に適用する場合には、上記免疫賦活方法又は免疫調整方法は、ウイルス感染症の予防方法ということもできる。
【0098】
免疫賦活方法又は免疫調整方法においては、上記アジュバント組成物又はアジュバント製剤を、所望の免疫応答又は免疫反応の促進効果を誘導するための有効量及び効果的な時間、経路で投与することができる。例えば、有効量のアジュバント組成物又はアジュバント製剤を、単回投与としてもよく、複数回に分けて投与してもよい。
【0099】
免疫賦活方法又は免疫調整方法において経皮又は経粘膜投与は、1日当たり1〜5回で行うことができ、1日当たり1〜3回、又は1日当たり1〜2回で行ってもよい。
【0100】
免疫賦活方法又は免疫調節方法において、アジュバント組成物又はアジュバント製剤の投与は、抗原の投与と同時に行ってもよく、抗原の投与とは時間差を設けて行ってもよい。免疫賦活方法又は免疫調節方法においては、アジュバント組成物又はアジュバント製剤の投与は、抗原の投与とは別経路で行うことが好ましい。また、アジュバント組成物又はアジュバント製剤を投与する部位は、抗原を適用する部位又は領域と同一であっても、異なっていてもよい。
【0101】
免疫賦活方法又は免疫調節方法において、アジュバント組成物又はアジュバント製剤の投与形態と、抗原の投与形態に関し、例えば、抗原の皮下注射又はマイクロニードル穿刺投与と、アジュバント組成物等の経皮又は経粘膜で投与との組み合わせが好ましい。抗原のマイクロニードル穿刺投与とアジュバント組成物等の経皮投与との組み合わせがより好ましい。さらに、マイクロニードルなどの投与器具を使用した場合には、投与器具を適用したまま、本発明のアジュバント組成物などを適用することもできる。
【0102】
アジュバント組成物又はアジュバント製剤は、無傷の皮膚、無傷の粘膜に投与することができる。アジュバント組成物又はアジュバント製剤の吸収効率を上げることを目的として、皮膚又は粘膜に対して物理的若しくは化学的な処理を行うことが好ましい。
【0103】
物理的若しくは化学的な処理としては、例えば、熱処理(サーマル処理)、超音波処理、電場処理、磁場処理、圧力処理、アルカリ処理、レーザー照射、研磨処理及びマイクロニードルからなる群より選択される少なくとも1つの処理であることが好ましい。
【0104】
イオントフォレーシス、エレクトロポレーション、ソノフォレーシス(超音波)等の装置を用いる方法、マイクロカニューレ、マイクロニードル穿刺、無針注射等を装着した装置を用いる方法により、更に高い効率かつより安全に、免疫応答を完成させることができる。皮膚の角質層におけるラメラ構造の変化、水和、変性、小孔形成、剥離又はバイパス形成の少なくとも1つによって適用されるものであることが好ましい。アジュバント製剤の投与が、角質層のラメラ構造変化、水和、変性、小孔形成、剥離又はバイパス形成を伴う場合には、アジュバント製剤の経皮吸収がより促進されうる。
【0105】
免疫賦活方法のためのキットに、以上に示したアジュバント組成物又はアジュバント製剤を利用することもできる。かかるキットは、アジュバント組成物又はアジュバント製剤が備えられていればよく、抗原、又は抗原投与のための器具を更に備えていてもよい。抗原投与のための器具は、例えば、マイクロニードル、注射器等の投与器具とすることもできる。
【0106】
上記キットの一態様として、例えば、表面の少なくとも一部に抗原をコーティングしたマイクロニードル及びアジュバント組成物を含浸させたパッチ製剤を備えるキットとすることができる。
【0107】
本実施形態に係るアジュバント組成物を上記抗原と同一手段、又は異なる経皮若しくは経粘膜投与手段で投与することによって、皮膚又は粘膜のランゲルハンス細胞が活性化され、皮膚又は粘膜からリンパ節内に存在するTH細胞へとシグナルを効率よく伝えられることにより高い免疫応答が完成されると考えられる。このことにより、外用医薬品、化粧品あるいはアレルゲン物質の抗原性の簡便な評価、感染症、癌、アレルギー等のワクチンによる予防又は治療、T細胞介在性の自己免疫疾患の治療などが可能となる。本実施形態に係るアジュバント組成物及びアジュバント製剤は、医薬産業及びその関連産業の発展に寄与するところ大である。
【実施例】
【0108】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0109】
(試験例1)
プロピレングリコール単独、グリセリン単独又はプロピレングリコール及びグリセリンの混合溶媒に対するラウリルアルコールの溶解性について評価した。表1に示す配合量となるようにラウリルアルコールを溶媒に添加し、20℃における溶解性を下記基準で評価した。結果を表1に示す。
A:完全に溶解した場合
B:半透明ではあるが均一となっている場合
C:分離している場合
【0110】
【表1】
【0111】
(実施例1)
表2に示す配合量(質量%)で、ラウリルアルコール、プロピレングリコール及びグリセリンを含むアジュバント組成物を調製した。得られたアジュバント組成物120μLをリント布(白十字社製、2cm
2の円形に裁断)に含浸させたものを皮膚刺激性試験用サンプルとした。
【0112】
[皮膚刺激性試験]
雌性ウサギ(JW)(SPF)の背部に刈毛及び剃毛処置を施した。2週間の馴化期間後、一般状態及び皮膚状態が良好なウサギを選択して試験を実施した。
【0113】
上記皮膚刺激性試験用サンプルを、ウサギの背部皮膚に24時間貼付した。同サンプルを剥離した後、0.5時間後、24時間後及び48時間後の皮膚反応をドレイズ基準(Draize基準)に従って観察し、評価した。評価結果は、同サンプルについて2〜6羽を対象に試験を行い、その結果の平均値を用いた。評価結果を表2に示す。
【0114】
なお、ドレイズ基準とは、皮膚反応の評価をする際に採用される基準である。まず、紅斑、痂皮及び浮腫形成の観点から、試験対象の皮膚の状態を肉眼観察し、下記の採点基準に基づき、試験対象の皮膚の状態を採点する。
<紅斑及び痂皮形成について>
0点:紅斑なし。
1点:非常に軽度の紅斑が認められる(かろうじて識別できる)。
2点:はっきりとした紅斑が認められる。
3点:中程度ないし高度の紅斑が認められる。
4点:高度紅斑(ビートの赤色)からわずかな痂皮(深部損傷)の形成が認められる。
<浮腫の形成について>
0点:浮腫なし。
1点:非常に軽度の紅斑が認められる(かろうじて識別できる)。
2点:はっきりとした紅斑が認められる。
3点:中程度ないし高度の紅斑が認められる。
4点:高度紅斑(ビートの赤色)からわずかな痂皮(深部損傷)の形成が認められる。
【0115】
そして、紅斑及び痂皮形成の観点から採点した点数と、浮腫形成の観点から採点した点数との合計値(皮膚一次刺激指数:Primary Irritation Index、P.I.I.値)を算出し、下記基準に基づいて、皮膚反応の評価とする。
<ドレイズ基準>
軽度刺激物 :P.I.I.≦2
中等度刺激物:2<P.I.I.≦5
強度刺激物 :5<P.I.I.≦8
【0116】
(実施例2〜6、参考例1及び比較例1〜6)
ラウリルアルコール、プロピレングリコール及びグリセリンの配合量を表2又は表3に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、アジュバント組成物を調製し、評価用サンプルを作製した。
【0117】
得られた評価用サンプルについて、実施例1と同様に、皮膚刺激性試験を実施した。結果を表2及び表3に示す。表2及び表3より、ラウリルアルコールの含有量が40質量%以上であると、皮膚刺激性が強度となる傾向が確認された。また、ラウリルアルコールの含有量が20質量%以下である実施例4〜6のアジュバント組成物は、皮膚刺激性が中等度であり、充分に抑制されていることが確認された。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
(実施例7)
表4に示す配合量(質量%)で、ラウリルアルコール、及びプロピレングリコールを含むアジュバント組成物を調製した。得られたアジュバント組成物120μLを含浸用テープに含浸させたものを評価用サンプルとした。なお、含浸用テープは、リント布(白十字社製、2cm
2に裁断)とアクリルテープとを積層したものを用いた。
【0121】
[免疫IgG抗体価の測定:マウス免疫試験]
得られたアジュバント組成物について、マウス免疫試験を実施した。雌性7週齢のBALB−Cマウスの腹部に、Ovalbumin(OVA)抗原を投与し、その後、アジュバント組成物を経皮投与した。
【0122】
OVA抗原を皮内注射にて、0.1μg投与した。投与は、0.1μg/50μLとなるよう生理食塩水を用いて水溶液を調製することで行った。
【0123】
その後、上記評価用サンプルをマウスの皮膚に6時間貼付することで、アジュバント組成物の投与を行った。評価用サンプルは、いずれの群もコーバン及びスキナゲートで固定した。抗原及びアジュバント組成物の投与は、初期投与に加え、2週間後に追加投与を行った。OVA特異的IgG抗体価を評価するために、4週間後に採血を行った。OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した。結果を表3に示す。
【0124】
(実施例8〜19、参考例2、及び比較例7〜10)
ラウリルアルコール、プロピレングリコール及びグリセリンの配合量を表4又は表5に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、アジュバント組成物を調製し、評価用サンプルを作製した。
【0125】
得られた評価用サンプルについて、実施例7と同様に、マウス免疫試験を実施した。結果を表4及び表5に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
表4及び表5に示すとおり、実施例7〜19のアジュバント組成物は、充分な免疫応答の増強作用を発揮することが確認された。
【0129】
以上より、本発明のアジュバント組成物が、従来のアジュバント組成物と比較して、安全性及び免疫応答の増強効果の面から優れることが示された。本発明のアジュバント組成物は、他の注射剤用アジュバント組成物で一般的に行われるような抗原との混合投与を必要とせず、抗原とは別に投与することができる。特に抗原を投与した後に、アジュバント組成物を高濃度で含有するアジュバント製剤を皮膚又は粘膜に貼付又は塗布により投与することで、目的の効果を得ることができる点で優れる。さらに、従来の含浸剤と比べても、皮膚刺激がより抑制されたものとなり、安全に免疫IgG抗体価の上昇を達成し得ることが示された。