(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114412
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】検出されたコンステレーション点を用いた誤差フィードバック
(51)【国際特許分類】
H04L 27/01 20060101AFI20170403BHJP
H04L 12/02 20060101ALI20170403BHJP
H04L 27/18 20060101ALI20170403BHJP
H04J 99/00 20090101ALI20170403BHJP
【FI】
H04L27/01
H04L12/02 B
H04L27/18 Z
H04J15/00
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-562088(P2015-562088)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公表番号】特表2016-517201(P2016-517201A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014054685
(87)【国際公開番号】WO2014140001
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】13305288.6
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンデルヘーヘン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ブリュッセル,ダニー
【審査官】
吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0245335(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0202281(US,A1)
【文献】
特開2007−258937(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0195817(US,A1)
【文献】
特表2007−510358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/01
H04J 99/00
H04L 12/02
H04L 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送回線(Li)に結合するための送受信機(110i、210i)であって、クロストーク探査信号の受信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプル(311、312)と、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点(321、322)との間の誤差ベクトル(331、332)を測定し、測定された誤差ベクトルを示す誤差情報(
【数1】
)をクロストーク推定のためにベクタリングコントローラ(130)に報告するように構成される、送受信機(110i、210i)において、
送受信機は、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報(
【数2】
)をベクタリングコントローラに報告するようにさらに構成される、送受信機。
【請求項2】
デマッピング情報が、受信された周波数サンプルをデマッピングするために用いられるコンステレーション格子のコンステレーション点(321、322)の順序付けされたインデックス表現から選択されたインデックス値(
【数3】
)を含む、請求項1に記載の送受信機(110i、210i)。
【請求項3】
コンステレーション格子が2位相偏移キーイングBPSKコンステレーション格子であり、デマッピング情報が、報告される周波数サンプル毎に1ビットを含む、請求項2に記載の送受信機(110i、210i)。
【請求項4】
コンステレーション格子が4位相偏移キーイングQPSKコンステレーション格子であり、
デマッピング情報が、報告される周波数サンプル毎に2ビットを含む、請求項2に記載の送受信機(110i、210i)。
【請求項5】
誤差情報が、測定された誤差ベクトルの定量化された同相のI成分および直角位相のQ成分を含む、請求項1に記載の送受信機(110i、210i)。
【請求項6】
測定された誤差ベクトルのI/Q成分が、浮動小数点数表現を用いて定量化される、請求項5に記載の送受信機(110i、210i)。
【請求項7】
測定された誤差ベクトルのI/Q成分が、共通の指数値を用いる、請求項6に記載の送受信機(110i、210i)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の送受信機(210i)を備える加入者デバイス(200)であって、
加入者デバイスは伝送回線を通じてベクタリングコントローラに通信可能に結合される、加入者デバイス(200)。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の送受信機(110i;)を含むアクセスノード(100)。
【請求項10】
伝送回線(Li)へのクロストーク係数を推定するためのベクタリングコントローラ(130)であって、クロストーク探査信号の送信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプル(311、312)と、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点(321、322)との間の送受信機(110i、210i)によって測定された誤差ベクトル(331、332)を示す誤差情報(
【数4】
)を受信するように構成される、ベクタリングコントローラ(130)において、
ベクタリングコントローラは、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報(
【数5】
)を送受信機から受信し、受信された誤差情報および受信されたデマッピング情報の両方に基づきクロストーク係数を推定するようにさらに構成される、ベクタリングコントローラ(130)。
【請求項11】
請求項10に記載のベクタリングコントローラ(130)を含むアクセスノード(100)。
【請求項12】
伝送回線(Li)を通じたクロストークを測定するための方法であって、クロストーク探査信号の受信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプル(311、312)と、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点(321、322)との間の誤差ベクトル(331、332)を測定するステップと、測定された誤差ベクトルを示す誤差情報(
【数6】
)をクロストーク推定のためにベクタリングコントローラ(130)に報告するステップと、を含む、方法において、
方法は、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報(
【数7】
)をベクタリングコントローラに報告するステップをさらに含む、方法。
【請求項13】
伝送回線(Li)へのクロストーク係数を推定するための方法であって、クロストーク探査信号の送信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプル(311、312)と、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点(321、322)との間の送受信機(110i、210i)によって測定された誤差ベクトル(331、332)を示す誤差情報(
【数8】
)を受信するステップを含む、方法において、
方法は、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報(
【数9】
)を送受信機から受信するステップと、受信された誤差情報および受信されたデマッピング情報の両方に基づきクロストーク係数を推定するステップと、をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有線通信システム内におけるクロストーク推定に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストーク(またはチャネル間干渉)は、デジタル加入者回線(Digital Subscriber Line、DSL)通信システム等の、多入力多出力(Multiple Input Multiple Output、MIMO)有線通信システムにとって、チャネル障害の主要な発生源である。
【0003】
より高いデータレートに対する要求が高まるのに伴い、DSLシステムはより高い周波数帯域に向かって進化しており、隣接する伝送回線(すなわち、ケーブルバインダ内の撚り銅対線等の、それらの長さの一部または全部にわたって近接する伝送回線)間のクロストークはより顕著になる(周波数が高くなるほど、結合が大きくなる)。
【0004】
MIMOシステムは以下の線形モデルによって記述することができる:
Y(k)=H(k)X(k)+Z(k) (1)
ここで、N成分複素ベクトルX、Y、は、N個のチャネルを通じて送信され、それぞれ、それらから受信されるシンボルの、周波数/キャリア/トーンインデックスkの関数としての、離散周波数表現を表す。NxN複素行列Hはチャネル行列と呼ばれる。チャネル行列Hの(i,j)番目の成分は、信号がj番目のチャネル入力に送信されるのに応答して、通信システムがi番目のチャネル出力上にどのように信号を生成するのかを記述する。チャネル行列の対角要素は直接チャネル結合を記述し、チャネル行列の非対角要素はチャネル間結合(クロストーク係数とも呼ばれる)を記述する。N成分複素ベクトルZは、無線周波数干渉(Radio Frequency Interference、RFI)または熱雑音等の、N個のチャネル上の加法性雑音を表す。
【0005】
クロストークを軽減し、実効スループット、到達範囲および回線安定性を最大化するために、各種の戦略が開発されている。これらの技法は、静的または動的なスペクトル管理技法からマルチユーザ信号調整(またはベクタリング)へと次第に進化している。
【0006】
チャネル間干渉を低減するための1つの技法は合同信号プリコーディングである:送信データシンボルは、それぞれの通信チャネルを通じて送信される前にプリコーダを合同して通される。プリコーダは、プリコーダと通信チャネルとの連結の結果、受信機におけるチャネル間干渉はほとんどまたは全くなくなるというものである。例えば、線形プリコーダは、送信ベクトルX(k)とプリコーディング行列P(k)との周波数領域における行列積を実行する。プリコーディング行列P(k)は、結果として得られるチャネル行列H(k)P(k)が対角化される、つまり、チャネル全体の非対角係数H(k)P(k)−およびそれゆえチャネル間干渉−がほとんど0に減少するというものである。実際には、および一次近似として、プリコーダは被妨害回線上に、直接信号に加えて、受信機においてそれぞれの妨害回線からの実際のクロストーク信号に破壊的に干渉する逆位相クロストーク前置補償信号を重畳する。
【0007】
チャネル間干渉を低減するためのさらなる技法は合同信号後処理である:受信データシンボルは、検出される前にポストコーダを合同して通される。ポストコーダは、通信チャネルとポストコーダとの連結の結果、受信機におけるチャネル間干渉はほとんどまたは全くなくなるというものである。
【0008】
ベクタリンググループ、すなわち、信号が合同して処理される通信回線のセット、の選定は、良好なクロストーク軽減性能を達成するために非常に重要である。ベクタリンググループ内において、各通信回線は、グループの他の通信回線内にクロストークを誘起する妨害回線と見なされ、その同じ通信回線が、グループの他の通信回線からクロストークを受ける被妨害回線と見なされる。ベクタリンググループに属さない回線からのクロストークは外来雑音として扱われ、除去されない。
【0009】
理想的には、ベクタリンググループは、互いと物理的に顕著に相互作用する通信回線の全セットに一致するべきである。しかし、国家規制政策によるローカルループアンバンドリングおよび/または限られたベクタリング能力がこのような網羅的なアプローチを妨げる場合があり、この場合には、ベクタリンググループは、全ての物理的に相互作用する回線のサブセットのみを含むことになり、それにより、限られたベクタリング利得しかもたらさないであろう。
【0010】
通例、信号ベクタリングは、ベクタリンググループの全ての加入者回線を通じて並行して送信されるか、またはそれらから受信される全てのデータシンボルが利用可能となる、トラフィック集約点において実行される。例えば、信号ベクタリングは、中央局(Central Office、CO)に配備されるか、または加入者構内により近いファイバ供給遠隔ユニット(路上キャビネット、電柱キャビネット、等)として配備された、デジタル加入者回線アクセスマルチプレクサ(Digital Subscriber Line Access Multiplexer、DSLAM))内で有利に実行される。信号プリコーディングは(顧客構内へ向かう)下り通信のために特に適しており、その一方で、信号後処理は、(顧客構内からの)上り通信のために特に適している。
【0011】
「Self−FEXT Cancellation (Vectoring) For Use with VDSL2 Transceivers」、ref. G.993.5と題し、国際電気通信連合(International Telecommunication Union、ITU)によって2010年4月に採用された勧告では、送受信機は、256個のデータシンボル毎後に定期的に生成する、いわゆるSYNCシンボルを通じて下りまたは上りパイロット系列を送るように構成される。G.993.5勧告では、アクセスノードは、ベクタリングされた回線を通じてSYNCシンボルを同期して送信および受信し(スーパーフレーム整列)、それにより、パイロット信号送信および干渉測定はそれぞれの伝送回線を通じて同期して実施されることがさらに想定されている。
【0012】
所与の被妨害回線上では、特定のSYNCシンボルについてトーン毎またはトーンのグループ毎に測定されたスライサ誤差(または受信誤差ベクトル)の実数部および虚数部の両方を含む、誤差サンプルが、さらなるクロストーク推定のためにベクタリングコントローラに報告される。誤差サンプルは、所与の妨害回線を通じて送信された所与のパイロット系列と、その妨害回線からのクロストーク結合関数を得るために、相関をとられる。他の妨害回線からのクロストーク寄与を排除するために、パイロット系列は、例えば、‘+1’および‘−1’の逆位相シンボルを含むウォルシュ−アダマール系列を用いることによって、互いに直交させられる。クロストーク推定は、プリコーダまたはポストコーダ係数を初期化するために用いられる。
【0013】
プリコーダまたはポストコーダ係数が初期化されると、クロストーク係数は、何らかのチャネル変化がないか、ならびに、クロストークチャネルの初期推定の何らかの残留誤差がないか、追跡され続ける。これは通例、所与の費用関数、ここでは、残留クロストーク信号のパワー、に関する最適解に向かって次第に収束する、最小二乗平均(Least Mean Square、LMS)方法等の、反復的更新方法を用いて達成される。
【0014】
理想的な線形モデルでは、G.993.5勧告に従う直交パイロット系列は非常に有効であり、クロストークチャネル(初期化)の、または残留クロストークチャネル(追跡)の正確で偏りのない推定を常に生成する。しかし、非線形効果のために、クロストーク推定は、プリコーダまたはポストコーダ係数を実際のクロストークチャネルから遠ざける望ましくないオフセット(または偏り)を有し得る。
【0015】
例えば、高クロストーク環境では、全ての妨害回線を通じて送信される全てのパイロット系列からのクロストークベクトルの合計は、受信ベクトル(または受信周波数サンプル)が復調器の決定境界を越えるほどのものになり得る。その結果、誤差ベクトルは、誤ったコンステレーション点に対して報告され、名目的または残留クロストークチャネルの推定におけるオフセットを生じさせる。
【0016】
G.993.5勧告では、理想的な期待される送信ベクトルが受信機によって推定される。パイロットとして用いることができるベクトルのセットは2つの状態:標準状態(+1)および反転状態(−1)、に限定され、これは、2位相偏移キーイング(Binary Phase Shift Keying、BPSK)変調と等価である。受信機は、最も確からしい半平面を決定することに基づき、送信ベクトルが何であることを期待されているのかを決定し(デマッピング操作とさらに呼ばれる)、これは特定のトーン自身の情報のみを用いる。4位相偏移キーイング(Quadrature Phase Shift Keying、QPSKまたは4−QAM)変調をパイロット変調のために代替的に用いることができるであろう。この場合には、デマッピングは、最も確からしい象限を決定することに基づく。
【0017】
デマッピングエラーが生じた場合、すなわち、受信機が、送信コンステレーション点と異なるコンステレーション点を選択すると、報告されるスライサ誤差は、完全に誤った値を有する。ベクタリングコントローラは、受信機内でデマッピングエラーが生じたことに気付かないため、これは、クロストーク結合係数の(およびそれゆえ、プリコーダおよびポストコーダ係数の)算出における重大な誤りをもたらす。
【0018】
デマッピングエラーに対処するための可能な知られている解決策は、複数のトーンにわたる複数のデマッピング決定を用いることであろう。特定のSYNCシンボル内の全ての探査トーンは、所与のパイロット系列のからの同じ特定のビットを用いて全て変調されるとすれば、合同推定を行うために複数のトーンを用いることができる。これは、1つのトーンによる方法よりもロバスト性が高くなるはずであるが、非常に低い信号対雑音比(Signal to Noise Ratio、SNR)の環境では、受信機はなおも誤った決定を行い得るであろう。
【0019】
別の知られている解決策は、用いられたパイロット系列の、受信機への伝達である。利点は、受信機は決定を行う必要がもはやなくなることである。不利点は、パイロット系列を変更するためにメッセージを毎回送ることは、煩わしく、初期化プロセスにおける遅延を生じさせ、ベクタリングコントローラがパイロット系列をオンザフライで変更するための柔軟性を低下させることである。
【0020】
さらに別の知られている解決策は、完全な受信ベクトルの報告である。利点は、受信機は決定を行う必要がもはやなくなることである。しかし、この解決策は分解能問題に悩まされる:高SNRの場合には、非常に高い度合の除去を実現したい。雑音を下回るレベルへのクロストークの低減は、誤差信号は、受信ベクトルと比べて非常に小さな値に低減されることになることを意味するであろう。G.993.5勧告における誤差フィードバックための最も効果的な選択肢は二進浮動小数点形式を利用する。誤差ベクトルが収束プロセスの間により小さくなるにつれて、指数は、一定の相対量子化誤差を維持して減少する。したがって、たとえ誤差フィードバックのために少数のビットを用いても、絶対量子化誤差は収束の間に減少する。完全な受信ベクトルが報告されることになる場合には、ワード長は、MSB側において、最大直接信号を表すことができ、LSB側において、最小誤差信号を表すことができるようなものである必要がある。したがって、いくらかの絶対的な誤りが存在する。収束の最後の段階において、この絶対量子化誤差は比較的大きな誤りを発生させる。これを是正するためには、多くのビットが、誤差ベクトルを符号化するために必要とされるであろう。これは、誤差フィードバックのために必要とされる帯域幅を増大させ、それゆえ、エンドユーザのための上りデータレートを低下させることになるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】国際電気通信連合、「Self−FEXT Cancellation (Vectoring) For Use with VDSL2 Transceivers」、ref. G.993.5、2010年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、知られている解決策の上述の短所または欠点を緩和または克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、伝送回線に結合するための送受信機は、クロストーク探査信号の受信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプルと、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点との間の誤差ベクトルを測定し、測定された誤差ベクトルを示す誤差情報をクロストーク推定のためにベクタリングコントローラに報告するように構成される。送受信機は、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報をベクタリングコントローラに報告するようにさらに構成される。
【0024】
このような送受信機は通例、以下のものの一部を形成する:
− デスクトップ、ラップトップ、モデム、ネットワークゲートウェイ、メディアゲートウェイなど等の、加入者ループを通じた有線通信をサポートする加入者デバイス、あるいは
− DSLAM、イーサネット(登録商標)スイッチ、エッジルータなど等の、アクセス設備を通じた加入者デバイスへの有線通信をサポートし、COにおいて、または加入者構内により近いファイバ供給遠隔ユニット(路上キャビネット、電柱キャビネット、等)として配備される、アクセスノード(またはアクセスマルチプレクサ)。
【0025】
本発明の別の態様によれば、ベクタリングコントローラは、クロストーク探査信号の送信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプルと、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点との間の送受信機によって測定された誤差ベクトルを示す誤差情報を受信するように構成される。ベクタリングコントローラは、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報を送受信機から受信し、受信された誤差情報および受信されたデマッピング情報の両方に基づきクロストーク係数を推定するようにさらに構成される。
【0026】
このようなベクタリングコントローラは通例、アクセスノードの一部を形成する。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、伝送回線を通じたクロストークを測定するための方法は、クロストーク探査信号の受信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプルと、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点との間の誤差ベクトルを測定するステップと、測定された誤差ベクトルを示す誤差情報をクロストーク推定のためにベクタリングコントローラに報告するステップと、を含む。本方法は、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報をベクタリングコントローラに報告するステップをさらに含む。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、伝送回線へのクロストーク係数を推定するための方法は、クロストーク探査信号の送信の間に、クロストーク探査信号の受信された周波数サンプルと、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点との間の送受信機によって測定された誤差ベクトルを示す誤差情報を受信するステップを含む。本方法は、受信された周波数サンプルがデマッピングされる選択されたコンステレーション点を示すデマッピング情報を送受信機から受信するステップと、受信された誤差情報および受信されたデマッピング情報の両方に基づきクロストーク係数を推定するステップと、をさらに含む。
【0029】
本発明の一実施形態では、デマッピング情報は、受信された周波数サンプルをデマッピングするために用いられるコンステレーション格子のコンステレーション点の順序付けされたインデックス表現から選択されたインデックス値を含む。
【0030】
本発明の一実施形態では、コンステレーション格子はBPSKコンステレーション格子であり、デマッピング情報は、報告される周波数サンプル毎に1ビットを含む。
【0031】
本発明の代替実施形態では、コンステレーション格子はQPSKコンステレーション格子であり、デマッピング情報は、報告される周波数サンプル毎に2ビットを含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、誤差情報は、測定された誤差ベクトルの定量化された同相の(I)成分および直角位相の(Q)成分を含む。
【0033】
本発明の一実施形態では、測定された誤差ベクトルのI/Q成分は浮動小数点数表現を用いて定量化される。
【0034】
本発明の一実施形態では、測定された誤差ベクトルのI/Q成分は共通の指数値を用いる。
【0035】
ベクタリングコントローラは送受信機からの誤差フィードバック報告を利用してクロストーク係数を推定し、さらに、プリコーダおよびポストコーダの係数を初期化または改善する。
【0036】
提案されている方法では、誤差フィードバック報告は2つの情報を含む:
− それぞれの仮数および指数二進値を含む2つの二進浮動小数点数として通例表される、送受信機によって測定されたスライサ誤差のI/Q成分(実数部および虚数部)、ならびに
− 仮定された送信コンステレーション点であって、それに関してスライサ誤差が測定された、送信コンステレーション点に従って、送受信機によって行われた決定。
【0037】
BPSKデマッピングの場合には、これは、選ばれた半平面を示すための、報告される誤差ベクトル当たり1つの追加のビットである。4−QAMデマッピングの場合には、これは、選ばれた象限を示すための、報告される誤差ベクトル当たり2つの追加のビットに対応する。
【0038】
それゆえ、ベクタリングコントローラは、追加のビット(単数または複数)の、伝送回線上で送信された正確なパイロット系列との比較に基づき、送受信機はデマッピングエラーを犯したのかどうかを知ることができる。デマッピングエラーが生じた場合には、ベクタリングコントローラは、誤った誤差ベクトル値を元の正しい値に訂正し、その訂正された値をクロストーク推定プロセスにおいて用いる。
【0039】
提案されている方法は、(例えば、浮動小数点数表現を用いて)可能な限り低い量子化雑音を有し、その一方で、デマッピングエラーの影響を受けない誤差報告を可能にし、加入者デバイスへの予告を行わない、ベクタリングコントローラによるパイロット系列のオンザフライの変更をさらに可能にする。
【0040】
実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって、発明の上記およびその他の目的および特徴はより明瞭となり、本発明そのものは最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】本発明によるアクセスノードおよび加入者デバイスを示す図である。
【
図3A】デマッピングエラーを全く有しない受信周波数サンプルの測定された誤差ベクトルを示す図である。
【
図3B】デマッピングエラーを有する受信周波数サンプルの測定された誤差ベクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に、COにおけるネットワークユニット10と、1本または複数の光ファイバを介してネットワークユニット10に結合され、銅線ループ設備を介してさまざまな加入者構内における顧客構内機器(Customer Premises Equipment、CPE)30にさらに結合される遠隔ユニット20と、を含むアクセス設備1が見られる。
【0043】
銅線ループ設備は、加入者回線が互いに近接し、それゆえ互いの内にクロストークを誘起する、共通アクセス区間40、および加入者構内への最終接続のための専用ループ区間50を含む。伝送媒体は通例、高カテゴリ銅シールド無し撚り対線(Unshielded Twisted Pair、UTP)で構成される。
【0044】
遠隔ユニット20は、共通アクセス区間内で誘起されるクロストークを軽減するため、およびそれぞれの加入者回線を通じて達成可能な通信データレートを増大させるために、ループ設備を通じて送信されているか、またはそれから受信されているデータシンボルを合同して処理するためのベクタリング処理ユニットを含む。
【0045】
図2には、本発明に係る遠隔ユニット100およびCPE 200iが見られる。遠隔ユニット100は、同じベクタリンググループの一部を形成すると仮定される、それぞれの伝送回線Liを通じてCPE 200iに結合される。
【0046】
遠隔ユニット100は以下のものを含む:
− DSL送受信機110i、
− ベクタリング処理ユニット120(もしくはVPU(Vectoring Processing Unit))、および
− VPU 120の動作を制御するためのベクタリング制御ユニット130(もしくはVCU(Vectoring Control Unit))。
【0047】
DSL送受信機110iは、VPU 120に、およびVCU 130に個々に結合される。VCU 130はVPU 120にさらに結合される。
【0048】
DSL送受信機110iはそれぞれ以下のものを含む:
− デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、DSP)111i、および
− アナログフロントエンド(Analog Front End、AFE)112i。
【0049】
CPE 200iはそれぞれのDSL送受信機210iを含む。
【0050】
DSL送受信機210iはそれぞれ以下のものを含む:
− デジタル信号プロセッサ(DSP)211i、および
− アナログフロントエンド(AFE)212i。
【0051】
AFE 112iおよび212iはそれぞれ、デジタル−アナログ変換器(Digital−to−Analog Converter、DAC)およびアナログ−デジタル変換器(Analog−to−Digital Converter、ADC)、帯域外干渉を阻止しつつ信号エネルギーを適当な通信周波数帯域内に限定するための送信フィルタおよび受信フィルタ、送信信号を増幅するため、および伝送回線を駆動するための回線駆動器、ならびにできるだけ少ない雑音を有するように受信信号を増幅するための低雑音増幅器(Low Noise Amplifier、LNA)を含む。
【0052】
AFE 112iおよび212iは、低い送信機−受信機結合比を達成しつつ、送信機出力を伝送回線に、および伝送回線を受信機入力に結合するためのハイブリッド、伝送回線の特性インピーダンスに適合するためのインピーダンス整合回路機構、および分離回路機構(通例、変圧器)をさらに含む。
【0053】
DSP 111iおよび211iはそれぞれ、下りおよび上りDSL通信チャネルを動作させるように構成される。
【0054】
DSP 111iおよび211iは、診断または管理コマンドおよび応答等の、DSL制御トラフィックを搬送するために用いられる下りおよび上りDSL制御チャネルを動作させるようにさらに構成される。制御トラフィックはユーザトラフィックとともにDSLチャネルを通じて多重化される。
【0055】
より具体的には、DSP 111iおよび211iは、ユーザおよび制御データをデジタルデータシンボルに符号化し、変調するため、ならびにデジタルデータシンボルからユーザおよび制御データを復調し、復号するためのものである。
【0056】
通例、DSP 111iおよび211i内では以下の送信ステップが実行される:
− データ多重化、フレーム化、スクランブリング、誤り訂正符号化およびインタリーブ等の、データ符号化、
− キャリア順序付けテーブルに従ってキャリアを順序付けするステップ、順序付けされたキャリアのビットローディングに従って、符号化されたビットストリームを解析するステップ、および、場合によりトレリス符号化を用いて、各ビットチャンクを(それぞれのキャリア振幅および位相を有する)適切な送信コンステレーション点上にマッピングするステップ、を含む、信号変調、
− 信号スケーリング、
− 逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform、IFFT)、
− サイクリックプレフィクス(Cyclic Prefix、CP)挿入、および場合により、
− 時間ウィンドウイング。
【0057】
通例、DSP 111iおよび211i内では以下の受信ステップが実行される:
− CP除去、および場合により、時間ウィンドウイング、
− 高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、FFT)、
− 周波数等化(Frequency EQualization、FEQ)、
− 等化された周波数サンプル1つ1つ全てに、パターンがそれぞれのキャリアビットローディングに依存する適切なコンステレーション格子を適用するステップ、場合によりトレリス復号を用いて、期待される送信コンステレーション点および対応する送信ビット列を検出するステップ、ならびに全ての検出されたビットチャンクを、キャリア順序付けテーブルに従って順序付けし直すステップ、を含む、信号復調および検出、ならびに
− データデインタリーブ、RS復号(バイト誤りがある場合には、この段階で訂正される)、デスクランブル、フレーム識別および多重分離化等の、データ復号。
【0058】
DSP 111iは、送信周波数サンプルを逆高速フーリエ変換(IFFT)ステップの前に合同信号プリコーディングのためにVPU 120に供給し、受信周波数サンプルを高速フーリエ変換(FFT)ステップの後に合同信号後処理のためにVPU 120に供給するようにさらに構成される。
【0059】
DSP 111iは、訂正された周波数サンプルをさらなる伝送または検出のためにVPU 120から受信するようにさらに構成される。代替的に、DSP 111iは訂正サンプルを受信し、さらなる伝送または検出の前に初期周波数サンプルに加えても。
【0060】
VPU 120は、伝送回線を通じて誘起されるクロストークを軽減するように構成される。これは、期待されるクロストーク(下り)の推定を前置補償するために送信周波数サンプルのベクトルにプリコーディング行列Pを乗算することによって、または被ったクロストーク(上り)の推定を後置補償するために受信周波数サンプルのベクトルにクロストーク除去行列Gを乗算することによって、達成される。
【0061】
Nを、ベクタリンググループ内の伝送回線の総数を表すものとし、iおよびjを、1からNの範囲に及ぶ回線インデックスを表すものとする。kを、0からKの範囲に及ぶ周波数インデックスを表すものとし、lを、データシンボル送信または受信インデックスを表すものとする。
【0062】
周波数分割複信(Frequency Division Duplexing、FDD)伝送の場合には、周波数インデックスkは、下り通信が考慮されるのか、それとも上り通信が考慮されるのかに依存して、異なる重複しない範囲の値をとる。時分割複信(Time Division Duplexing、TDD)伝送の場合には、周波数インデックスkは下り通信と上り通信の両方のために共通の範囲の値をとってもよい。
【0063】
【数1】
を、VPU 120によるクロストーク前置補償前の、送受信機110iによってデータシンボルlの間に周波数インデックスkにおいて回線Liを通じて送信されるべき、送信下り周波数サンプルを表すものとする。
【数2】
を、VPU 120によるクロストーク前置補償後の送信下り周波数サンプルを表すものとする。そして最後に、
【数3】
を、送受信機210iによってデータシンボルlの間に周波数インデックスkにおいて回線Liから受信される受信下り周波数サンプルを表すものとする。
【0064】
同様に、
【数4】
を、送受信機210iによってデータシンボルlの間に周波数インデックスkにおいて回線Liを通じて送信されるべき、送信上り周波数サンプルを表すものとする。
【数5】
を、送受信機110iによってデータシンボルlの間に周波数インデックスkにおいて回線Liから受信される受信上り周波数サンプルを表すものとする。そして最後に、
【数6】
を、VPU 120によるクロストーク後置補償後の受信上り周波数サンプルを表すものとする。
【0065】
以下の式が成り立つ:
【数7】
【数8】
および
【数9】
【数10】
【0066】
行列PまたはGにおいて、行iは特定の被妨害回線Liを表し、一方、列jは特定の妨害回線Ljを表す。交点には、被妨害回線Li上において妨害回線Ljからのクロストークを軽減するために、対応する妨害送信または受信周波数サンプルに適用されるべきである結合係数がある。例えば、最も強いクロストーク源にまず割り当てられるベクタリング能力が限られているという理由により、またはさらに、例えば、いくつかの回線は互いに顕著に相互作用しないという事実のために、行列の全ての係数が決定される必要はない。未決定の係数は好ましくは0にセットされる。
【0067】
また、レガシー回線等の、ベクタリング操作がサポートされていないか、または有効にされていないが、それにもかかわらず、他の通信回線となお顕著に干渉し合う通信回線Liは、ベクタリンググループ内の妨害回線と見なされるだけであることに注目すべきである。それゆえ、行列PまたはGの対応するi番目の行の非対角係数は全て0にセットされる。
【0068】
VCU 130は基本的に、VPU 120の動作を制御するためのものであり、より具体的には、ベクタリンググループの伝送回線間のクロストーク係数を推定するためのものであり、そのように推定されたクロストーク係数からプリコーディング行列Pおよびクロストーク除去行列Gの係数を初期化または更新するためのものである。
【0069】
VCU 130は、まず、それぞれの伝送回線を通じて用いられるべきそれぞれの下りおよび上りパイロット系列を構成することによって開始する。所与のシンボル期間lの間に周波数インデックスkにおいて伝送回線Liを通じて送信されるパイロットディジットを
【数11】
と表す。パイロット系列は相互に直交し、L個のシンボル期間にわたって送信されるべきL個のパイロットディジット
【数12】
を含む。ここで、(直交性要件を満足するために)L≧Nである。
【0070】
VCU 130は、パイロットディジットの検出の間に、下り通信についてはリモート送受信機210iによって、および上り通信についてはローカル送受信機110iによって測定されたそれぞれのスライサ誤差を集める。
【0071】
シンボル期間lの間の周波数インデックスkにおける被妨害回線Liを通じた、送受信機110iまたは210iによって測定されたスライサ誤差を
【数13】
と表す。
【0072】
図3Aに関して、およびパイロット信号を変調するためにBPSKが用いられると仮定すると、スライサ誤差は、クロストーク前置補償または後置補償後の等化された受信周波数サンプル311と、受信周波数サンプル311をデマッピングするために受信機によって選択された基準コンステレーション点、ここでは、標準状態(+1)に対応する、コンステレーション点321、との間の誤差ベクトル331として定義される。
【0073】
図3Aには、反転状態(−1)に対応するコンステレーション点322も、受信周波数サンプルをデマッピングするための決定境界線340とともに描かれている。受信周波数サンプル311が、決定境界線340によって区切られた右上の半平面に属する場合には、このとき、コンステレーション点321(+1)が、最も確からしい送信周波数サンプルであるとして選択され、さもなければ、受信周波数サンプル310が左下の半平面に属する場合には、このとき、コンステレーション点322(−1)が、最も確からしい送信周波数サンプルであるとして選択される。
【0074】
【数14】
および
【数15】
をそれぞれ、下りおよび上り検出についての期待される送信コンステレーション点を表すものとする。それゆえ、次式を得る:
送受信機210i内の下り検出については、
【数16】
および
送受信機110i内の上り検出については、
【数17】
ここで、
【数18】
は、周波数インデックスkにおいて伝送回線Liにわたって用いられるFEQ係数を表し、FEQ係数は直接伝達関数H
ii(k)の逆にできるだけ近く一致するべきである。
【0075】
スライサ誤差
【数19】
は、二進浮動小数点数表現を用いて定量化される実数部および虚数部の両方を含む:
【数20】
および
【数21】
ここで、M
RおよびM
Iは、第1の所与のビット数(通例、6)にわたって符号化された、誤差ベクトル
【数22】
の実数部および虚数部のそれぞれの二進仮数値を表し、Eは、第2の所与のビット数(通例、4)にわたって符号化された、誤差ベクトル
【数23】
の実数部および虚数部の共通の二進指数値を表す。
【0076】
誤差ベクトルの実数部および虚数部のための別個の指数値の使用、固定小数点数表現の使用など等の、代替的な数表現を同様に想定することもできる。
【0077】
送受信機110iおよび210iは、測定されたスライサ誤差値
【数24】
を、選択されたコンステレーション点のインデックス
【数25】
であって、それを参照してスライサ誤差
【数26】
が測定された、インデックスとともに、ベクタリングコントローラ130に報告するようにさらに構成される(
図1におけるErr−CおよびErr−Rメッセージを参照)。BPSK変調を用いると、インデックス
【数27】
は長さ1ビットであり(例えば、通常状態のために‘0’、および反転状態のために‘1’)、一方、4−QAM変調を用いると、インデックス
【数28】
は長さ2ビットである(4−QAMコンステレーション格子の4つのそれぞれのコンステレーション点のために‘00’、‘01’、‘10’または‘11’)。
【0078】
誤差フィードバック情報の量を低減するために、デシメートされた周波数インデックスk=k1・D1における干渉測定が通例利用可能である。ここで、D1は周波数デシメーション率を表す。
【0079】
次に、VCU 130は、それぞれの誤差測定値
【数29】
についてデマッピングエラーが生じたかどうかを、報告されたコンステレーション点インデックス
【数30】
を、対応する送信パイロット周波数サンプルを変調するために用いられた対応する送信パイロットディジット
【数31】
と比較することによって、決定する。実際に、VCU 130は、下りおよび上り方向の両方における所与の伝送回線のために構成された正確なパイロット系列の正確な知識を有し、それゆえ、所与の伝送回線、所与の通信方向および所与のシンボル期間のために用いられた実際の送信コンステレーション点
【数32】
を容易に導き出すことができる。
【0080】
不一致が検出された場合には、このとき、デマッピングエラーが生じており、それに応じて、VCU 130は、報告されたスライサ誤差値を訂正する:
【数33】
ここで、
【数34】
は、訂正されたスライサ誤差値を表し、
【数35】
は、報告されたコンステレーション点インデックス
【数36】
から直接導き出される。
【0081】
次に
図3Bに関して、およびパイロット信号を変調するためにBPSKが用いられるとなおも仮定すると、伝送回線を通じて被った強いクロストークのために決定境界線340を横切る、別の受信された周波数サンプル312が描かれている。その結果、通常状態321(+1)が送信されたにもかかわらず、受信機は受信周波数サンプルを誤ったコンステレーション点322(−1)上にデマッピングし、それゆえ、誤った誤差ベクトル332を報告し、それによって、クロストーク推定プロセスを実質的に偏らせてしまう。このようなデマッピングエラーが生じた場合には、VCU 130は式10に従って誤差ベクトルを元の正しい値333に訂正する。
【0082】
最後に、VCU 130は、周波数インデックスkにおける妨害回線Ljから被妨害回線Li内への等化されたクロストーク係数H
i,j(k)/H
i,i(k)の推定を得るために、完全な収集サイクルにわたり被妨害回線Liを通じて測定されたL個の(場合により、訂正された)誤差測定値
【数37】
を、妨害回線Ljを通じて送信されたパイロット系列のそれぞれのパイロットディジットと相関させる。パイロット系列は相互に直交するため、他の妨害回線からの寄与はこの相関ステップの後に0に減少する。
【0083】
次に、VCU 130は、そのように決定されたクロストーク係数からのプリコーディング行列Pおよびクロストーク除去行列Gの計算または更新に進むことができる。VCU 130は、プリコーディング行列Pおよびクロストーク除去行列Gの係数を計算するために1次もしくは2次行列反転を用いるか、またはプリコーディング行列Pおよびクロストーク除去行列Gの係数をそれらの最適値に更新するためにLMS反復アルゴリズムを用いることができる。
【0084】
用語「〜を備える(comprising)」は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではないことに留意されたい。それゆえ、表現「手段AおよびBを備えるデバイス」の範囲は、構成要素AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの関連構成要素はAおよびBであることを意味する。
【0085】
用語「結合される(coupled)」は、直接接続のみに限定されるものと解釈されるべきではないことにさらに留意されたい。それゆえ、表現「デバイスBに結合されるデバイスA」の範囲は、デバイスAの出力がデバイスBの入力に直接接続され、および/またはその逆であるデバイスまたはシステムに限定されるべきではない。それは、Aの出力とBの入力との間、および/またはその逆の間に、他のデバイスまたは手段を含む経路であってもよい、経路が存在することを意味する。
【0086】
説明および図面は単に本発明の原理を示しているにすぎない。それゆえ、当業者は、本明細書において明示的に説明されるかまたは示されていなくても、本発明の原理を具現化し、その趣旨および範囲内に含まれるさまざまな機構を考案することができるであろうことが理解されるであろう。さらに、本明細書に列挙されている全ての例は主として、本発明の原理、および発明者(単数または複数)によって当技術を促進するために提供されたコンセプトを読者が理解するための、単なる教育上の目的のためのものにすぎず、上記の具体的に列挙されている例および条件に限定することなく解釈されるべきであることが明示的に意図されている。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにそれらの特定の例を列挙する本明細書における全ての説明は、それらの均等物を包含することが意図されている。
【0087】
図に示されるさまざまな要素の機能は、専用ハードウェア、ならびに適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行する能力を有するハードウェアの使用を通じて提供されてもよい。プロセッサによって提供される場合には、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、または複数の個々のプロセッサであって、そのうちのいくつかは共有されてもよい、プロセッサによって提供されてもよい。さらに、プロセッサは、ソフトウェアを実行する能力を有するハードウェアに排他的に言及するように解釈されるべきではなく、制限なく、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field programmable gate array、FPGA)、等を暗黙のうちに含んでもよい。リードオンリーメモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、および不揮発性記憶装置等の、従来の、および/または特注の、その他のハードウェアが同様に含まれてもよい。