(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
図1は、本実施の形態の溶接システムの概略構成を示す図である。
図1を参照して、溶接システムは、溶接装置1A〜1Dと放送装置2とを含む。溶接装置1A〜1Dの各々は、溶接電源装置10A〜10C、溶接ワイヤを送給する送給装置100A〜100D、リモートコントローラ120A〜120Dを含む。
【0024】
以下、溶接システムにおいて実行される通信について説明する。溶接システムは、複数の溶接電源装置10A〜10Dと、リモートコントローラ120A〜120Dとを備える。リモートコントローラ120Aは、作業者が入力する選択入力指令に応じて複数の溶接電源装置10A〜10Dのうちから情報伝達の対象とする対象装置を選択し、選択した対象装置に対して情報を無線送信する第1無線通信部134Aを含む。
【0025】
複数の溶接電源装置10A〜10Dの各々は、リモートコントローラ120Aの第1無線通信部134Aから送信される情報を受信する第2無線通信部16A〜16D,106A〜106Dと、第2無線通信部16A〜16D,106A〜106Dで受信された情報に基づいて溶接の制御を行なう制御部14と、制御部14によって制御され溶接トーチに電力を供給する電源部12とを含む。
【0026】
好ましくは、リモートコントローラ120Aは、複数の溶接電源装置10A〜10Dに対して情報を一括して送信する。送信する情報は、電源部12に設定する溶接条件または緊急停止指令を含む。
【0027】
リモートコントローラ120Aは、複数の溶接電源装置10A〜10Dに対して情報を一括して送信する場合に、溶接電源装置10Aに情報を送信し溶接電源装置10Aの無線通信部16Aから溶接電源装置10Bの無線通信部16Bに情報を転送する第1経路と、リモートコントローラの無線通信部134Aから溶接電源装置10Bの無線通信部16Bに情報を送信する第2経路を使用することが可能に構成される。
【0028】
なお、ワイヤ送給装置100Aから溶接電源装置10Aへの通信は、有線のデータ通信であっても良い。後に
図2で説明する構成例では、無線通信部106Aから無線通信部16Aへの通信を電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)によって行なう。
【0029】
図2は、
図1の溶接装置1Aの構成の詳細を示すブロック図である。
図2を参照して、溶接装置1Aは、溶接電源装置10Aと、ワイヤ送給装置100Aと、リモートコントローラ120Aと、溶接トーチ140とを含む。
【0030】
溶接電源装置10Aは、電源部12と、制御部14と、無線通信部16Aと、電力線搬送通信部18とを含む。なお、本明細書では、電力線搬送通信部をPLC(Power Line Communication)通信部とも呼び、図示する。電源部12は、外部電源20から電力の供給を受ける。制御部14は、電源部12と、無線通信部16Aと、電力線搬送通信部18とを制御する。
【0031】
電源部12とワイヤ送給装置100Aとは、パワーケーブル160によって接続される。溶接対象である母材150と電源部12とは、溶接接地ケーブル162によって接続されている。炭酸ガスなどのシールドガスが、ガスボンベ30からガスホース164を介してワイヤ送給装置100Aに送られる。
【0032】
電力線搬送通信部18は、制御部14から与えられた送信データを示す通信信号をパワーケーブル160の溶接電圧または溶接電流に重畳してワイヤ送給装置100Aに送信する。また、電力線搬送通信部18は、パワーケーブル160に重畳された通信信号を分離して受信データを制御部14に伝達する。
【0033】
なお、ワイヤ送給装置100Aと溶接電源装置10Aとの間の通信は、電力線搬送通信に変えて専用通信線による有線通信や、無線通信でもよい。
【0034】
無線通信部16Aは、制御部14から与えられた送信データを示す通信信号を無線によってワイヤ送給装置100Aに送信する。また、無線通信部16Aは、ワイヤ送給装置100Aまたはリモートコントローラ120Aからの無線信号を受信して制御部14に受信データを伝達する。
【0035】
ワイヤ送給装置100Aは、送給機構102と、制御部104と、無線通信部106と、電力線搬送通信部108と、表示器110とを含む。送給機構102は、溶接ワイヤ166をワイヤリール111から溶接トーチ140に送給する。
【0036】
ワイヤ送給装置100Aと溶接トーチ140とを接続しているケーブルは、ケーブル内部に溶接ワイヤとシールドガスを送給する通路が設けられるとともに、パワーケーブル160によって溶接電源装置10Aから供給された電圧、および電流を溶接トーチ140に送っている。
【0037】
溶接トーチ140の先端から突出した溶接ワイヤが母材に接触すると、電流が流れてアークが発生する。溶接ワイヤは送給機構102によって、溶接速度に対応する速度で送給される。アーク周辺にはシールドガスが供給され溶接部の酸化を防いでいる。
【0038】
リモートコントローラ120Aは、操作部122と、マイク124と、スピーカ126と、表示器128と、制御部130と、バッテリ132と、無線通信部134とを含む。
【0039】
溶接トーチ140を使用して作業する作業者は、どの溶接装置もしくは作業者に対して情報を伝達するかを指定できるリモートコントローラ120Aを所持している。
【0040】
リモートコントローラ120Aは、無線通信部134Aによって、ワイヤ送給装置100Aの無線通信部106Aまたは溶接電源装置10Aの無線通信部16Aと無線によってデータの送受信を行なう。リモートコントローラ120Aは、バッテリ132を内蔵しているので、ワイヤ送給装置100Aと常時制御ケーブルによって接続される必要はない。
【0041】
なお、ワイヤ送給装置100Aとリモートコントローラ120Aとをバッテリ132の充電のために接続している間は、リモートコントローラ120Aとワイヤ送給装置100Aとは有線通信が行なわれるように構成されても良い。
【0042】
リモートコントローラ120Aは、操作部122に作業者が入力した溶接電圧や溶接電流等の溶接パラメータをワイヤ送給装置100Aの制御部104に無線通信によって送信する。制御部104は、電力線搬送通信部108に作業者が設定した溶接パラメータを示す通信信号をパワーケーブル160に重畳して溶接電源装置10Aに向けて送信させる。
【0043】
溶接電源装置10Aは、設定された溶接電圧や溶接電流が溶接トーチ140において実現されるように、電圧、電流をパワーケーブル160に出力する。
【0044】
また、音声などのデータは、リモートコントローラ120Aの無線通信部134Aからワイヤ送給装置100Aの無線通信部106Aを中継して溶接電源装置10Aの無線通信部16Aに送られるが、無線通信部134Aと無線通信部16Aとが直接通信したほうが電波状況が良好な場合には、直接送受信するようにしても良い。
【0045】
なお、
図1の溶接装置1B〜1Dの各々も、
図2で説明した溶接装置1Aと同様な構成とすることができる。
【0046】
図1、
図2を参照して、リモートコントローラ120Aは、情報伝達を行なう相手(他の作業者のリモートコントローラ120B〜120Dまたは溶接電源装置10A〜10D)を指定することができる。
【0047】
トーチで作業する作業者は、リモートコントローラ120Aを使って、複数の溶接電源装置10A〜10Dに対して情報を一括送信することができる。たとえば熟練作業者の設定した溶接条件をその作業者が使用している溶接電源装置10A以外の溶接電源装置10B〜10Dに対しても同じタイミングで設定することができる。なお、一括送信は、必ずしも同時に送信する必要はなく、作業者がリモートコントローラ120Aに対して一度の操作をすることによって、複数の溶接電源装置に時間をずらして、同じ溶接条件を示す情報を送信するのでも良い。
【0048】
図3は、リモートコントローラの具体的な形状や構成の一例を説明するための図である。
図3を参照して、リモートコントローラ120Aは、ヘッドセットの形状をしている。
【0049】
好ましくは、リモートコントローラ120Aは、作業者の頭部に固定するためのヘッドバンド129と、音を入力するマイク124と、マイク124を支持するアーム125と、作業者の耳に押し当てて用いられ音を出力するスピーカ126と、リモートコントローラ本体部121とを含む。マイク124は、音を入力する入力装置であり、スピーカ126は音を出力する出力装置である。リモートコントローラ本体部121は、対象装置を選択するための選択スイッチ122A〜122Dと、表示器128と、溶接パラメータの数値等を入力する入力部122Eとを含む。選択スイッチ122A〜122Dと入力部122Eは、
図2の操作部122に相当する。
【0050】
より好ましくは、リモートコントローラ120Aは、追加カメラユニット121Aをさらに含む。追加カメラユニット121Aは、本体部121に接続可能に構成されている。追加カメラユニット121Aは、溶接部分等を撮影するためのカメラ124Aと、カメラ124Aの画像取り込みを行なうためのシャッターボタン122Fと、撮影した画像を表示する小型液晶モニタ126Aとを含む。カメラ124Aは、マイク124と同様、送信データを取り込むための入力装置である。小型液晶モニタ126Aは、スピーカ126と同様、送信されてきたデータを認識可能な態様で作業者に示す出力装置である。
【0051】
なお、転送されてきた画像を見るだけであれば、小型液晶モニタ126Aのみを追加ユニットとしてもよい。また、追加カメラユニット121Aは、小型液晶モニタ126Aとカメラ124Aが一体化された構成であってもよい。さらに、本体部121にカメラ124A小型液晶モニタ126Aを一体化してもよい。
【0052】
より好ましくは、リモートコントローラ120Aは、
図1の他のリモートコントローラ120B〜120Dと交信が可能に構成される。送信する情報は、リモートコントローラおよび他のリモートコントローラをそれぞれ携帯する複数の作業者間で通信を行なうための音声情報を含む。送信する情報は、さらに、カメラ124Aで撮影した画像情報を含んでもよい。画像情報は、静止画、動画のいずれの情報であってもよい。慣れない作業者は、溶接部分の画像を熟練作業者に送信して、熟練作業者から指示を受けて溶接条件を変更することが可能となる。選択スイッチ122A〜122Dは、対象装置として他のリモートコントローラを指定する選択入力指令を入力することが可能に構成される。
【0053】
リモートコントローラ120Aは、他のリモートコントローラ120B〜120Dと携帯電話やトランシーバのように交信することが可能である。
【0054】
無線通信部16A,106Aを溶接電源装置10Aおよびワイヤ送給装置100Aにそれぞれ設け、リモートコントローラ120Aにマイク124およびスピーカ126を設けたことによって、作業時に溶接部分から作業者が目を離すことができない場合でも音声情報によって作業者に情報を伝達することが容易となる。また、音声認識技術を用いれば、作業者が音声入力によって、溶接電源装置10Aに指令をすることも可能となる。
【0055】
より好ましくは、
図1に示す溶接システムは、構内放送の音声をリモートコントローラに送信可能な放送装置2をさらに備える。溶接現場のような環境では、騒音が大きい場合が多く、呼び出しなどの構内放送が聞き取りにくい。このような場合にリモートコントローラ120Aのように、耳元で音声を出力するスピーカ126をヘッドセットに設けることによって、構内放送を聞き取りやすくすることが可能となる。
【0056】
溶接装置が設置されている構内の放送を放送装置2から溶接電源装置16Aまたは送給装置100A経由もしくは、作業者の所持するリモートコントローラ120Aの無線通信部134Aへ直接伝達する。
【0057】
図1に示した溶接システムは、溶接電源装置とリモートコントローラ間を無線化することによってN対Mの通信が可能な環境を構築している。また、溶接電源装置と作業者の所持するリモートコントローラ以外の無線機(工務室など)との情報通信も可能に溶接システムを構成すると好ましい。
【0058】
溶接トーチ140を使用して作業する作業者は、非常時に緊急停止情報をリモートコントローラ120Aから溶接電源装置16A〜16Dに一斉送信することができる。作業者からの緊急停止情報によって、情報を受信した溶接電源装置16A〜16Dは同じタイミングで停止する。たとえば、構内で事故が発生した場合などにこのような緊急停止情報をリモートコントローラ120Aから発信することができる。
【0059】
また、溶接電源装置10A内部の状態をリモートコントローラ120A経由で作業者へ伝達することができる。溶接電源装置10A内部の状態は、当該溶接電源装置10Aの作業者のリモートコントローラ120Aのみへの伝達が可能だが、それ以外にもあらかじめ登録している他の作業者のリモートコントローラ120B〜120Dへ伝達したり、作業をしていない監督者が所持するリモートコントローラ(または受信器)への伝達が行なえたりするように溶接システムを構成しても良い。
【0060】
また制御部14は、電力線搬送通信部18およびパワーケーブルを用いた通信に異常が発生した場合には、無線通信部16Aによってリモートコントローラ120Aと通信をすることによって異常の発生を溶接作業者に報知するようにしてもよい。
【0061】
従来の
図7に示した構成では、リモートコントローラ620は有線通信のみのため、作業者は操作している溶接機に対してのみ電流・電圧の設定値を送信することができ、他の溶接機に対しては別の手段(作業者への声かけなど)でのみ連絡していた。
【0062】
このように、無線機能がついた溶接機を使用している環境において、無線通信の大容量情報通信能力を生かして、溶接作業者が複数のその他の溶接作業者もしくは、溶接電源装置に対して情報(電流・電圧設定値、音声情報、画像情報)を伝達するシステムを実現することができる。
【0063】
反対に、溶接電源装置10Aからリモートコントローラ120Aを持っている溶接作業者に対して溶接電源装置10A内部で発生しているアラーム情報(ステータス情報)の伝達を行なうことも可能である。
【0064】
好ましくは、
図2の制御部14は、溶接トーチ140に流れる電流または溶接トーチ140に印加される電圧が異常を示した場合には、リモートコントローラ120Aに溶接異常が発生したことを示す信号を送信する。リモートコントローラ120Aは、溶接異常の発生を報知するための報知部として表示器128やスピーカ126をさらに含む。
【0065】
図4は、リモートコントローラで実行される処理の概略を説明するためのフローチャートである。
図2、
図4を参照して、リモートコントローラ120Aの制御部130は、ステップS1において
図1の放送装置2からの構内放送の有無を検出する。ステップS1において構内放送が検出された場合には、ステップS2において制御部130は無線通信部134によって構内放送を受信し、ステップS3において制御部130はスピーカ126から放送内容を出力させる。
【0066】
ステップS1において構内放送が検出されなかった場合には、制御部130はステップS4において他のリモートコントローラからの送受信をするトランシーバ要求の有無を検出する。たとえば、リモートコントローラ120Aの操作部122の操作によってトランシーバとして発信することが要求されたり、他のリモートコントローラがリモートコントローラ120Aを指定して送信がされたりした場合にはトランシーバ要求が検出される。ステップS4においてトランシーバ要求が検出された場合にはステップS5においてトランシーバ動作、すなわち他のリモートコントローラと音声の送受信を行なう動作が実行される。
【0067】
ステップS4においてトランシーバ要求が検出されなかった場合には、ステップS6に処理が進む。ステップS6では、制御部130は、溶接制御データ(溶接電流、溶接電圧等の溶接条件や、非常停止などの制御データ)を溶接電源装置に送信する要求の有無を検出する。ステップS6において、溶接制御データの送信要求が検出された場合には、ステップS7において、入力された溶接制御データを指定された溶接電源装置に送信する。
【0068】
以上説明したように、リモートコントローラ120Aは、構内放送の受信、トランシーバ機能、溶接制御データの送信の処理を行なうことができる。また、
図3に示した追加カメラユニット121Aが本体部121に接続されている場合には、
図4に示したフローチャートの処理に加えて、撮影した画像データの送信要求に応じて指定された他のリモートコントローラに送信する処理が実行される。
【0069】
図5は、溶接装置1Aから溶接装置1Bにデータを送信する制御を説明するためのフローチャートである。
図1、
図5を参照して、溶接装置1Aでは、リモートコントローラ120Aで溶接装置の選択入力が有るか否かを判断する。溶接装置の選択入力が無い場合には、再びステップS11の処理が実行され入力待ち状態となる。ステップS11においてリモートコントローラ120Aで選択入力があった場合には、ステップS12に処理が進む。
図5のフローチャートでは選択対象が溶接装置1Bである例が示されるが、他の溶接装置が選択される場合には、他の溶接装置に対して同様な処理が実行される。
【0070】
ステップS12では、選択された溶接装置1BのIDを溶接装置1Bに送信する。このとき溶接装置1Bでは接続リクエストの受信があるか否かがステップS101において判断されている。ステップS101において溶接装置1BのIDが指定された接続リクエストの受信があるまでは、ステップS101の処理が再び実行されて受信待ち状態となっている。
【0071】
ステップS101において溶接装置1BのIDが指定された接続リクエストの受信があった場合には、ステップS102においてリンク許可がされるか否かが判断される。リンク許可は自動で行なわれてもよいし、作業者にリンク接続の可否を問い合わせ作業者が手動で可否を指定するのでも良い。
【0072】
ステップS102において、リンク許可がされた場合には、ステップS103に処理が進み、溶接装置1Bは、リンクが確立した旨の応答を溶接装置1Aに向けて送信し、ステップS105にさらに処理が進む。一方、ステップS102において、リンク拒否がされた場合には、ステップS104に処理が進み、溶接装置1Bは、リンク拒否の応答を溶接装置1Aに向けて送信し、さらにステップS106に処理が進む。
【0073】
溶接装置1Aでは、ステップS12においてIDを送信した後にステップS13において溶接装置1Bからの応答を検出している。ステップS13において応答を検出した場合にはステップS14に処理が進み、溶接装置1Aは溶接装置1Bとのリンクが確立したか否かを溶接装置1Bからの応答内容に基づいて判断する。ステップS14において、リンクが確立した場合には、ステップS15に処理が進み、溶接装置1Aは溶接装置1Bに対して音声データまたは溶接制御データの送信を実行する。また、
図3に示した追加カメラユニット121Aが本体部121に接続されている場合には、撮影した画像データの送信要求に応じて指定された他のリモートコントローラに画像データを送信する処理が実行される。そしてステップS106で制御はメインルーチンに処理が戻される。
【0074】
送信された音声データまたは溶接制御データは、溶接装置1BによってステップS105で受信される。また、画像データが送信された場合には、送信された画像データも溶接装置1Bによって受信される。そしてステップS106で制御はメインルーチンに戻される。
【0075】
なお、ステップS14においてリンクが確立していないと判断された場合には、ステップS16に処理が進み通信エラー表示が表示器128に表示され、ステップS17で制御はメインルーチンに戻される。
【0076】
図6は、
図1に示す構成において基本リンクと拡張リンクの接続制御について説明するためのフローチャートである。
図1のリモートコントローラ120Aは、複数の溶接電源装置10A〜10Dのうちの第1溶接電源装置10Aと第2溶接電源装置10Bに対して情報を一括して送信する場合に、第1溶接電源装置10Aに情報を送信し第1溶接電源装置10Aの第2無線通信部16Aから第2溶接電源装置10Bの第2無線通信部16Bに情報を転送する第1経路と、リモートコントローラの第1無線通信部134Aから第2溶接電源装置10Bの第2無線通信部16Bに直接的に情報を送信する第2経路を使用することが可能に構成される。リモートコントローラ120Aは第1経路および第2経路の通信可能な経路を使用する。
【0077】
たとえば第1経路(無線通信部134A→無線通信部106A→無線通信部16A→無線通信部16B)を基本リンクとして使用し、第2経路(無線通信部134A→無線通信部16B)を基本リンクが使用不可能な場合の拡張リンクとして使用することができる。これによって、たとえば溶接電源装置10Aと溶接電源装置10Bとの間に電波を遮断するような隔壁が存在するような場合であっても、リモートコントローラ120Aから直接溶接電源装置10Bに情報を送信することができれば、同じ情報を複数の溶接電源装置10A,10Bに送信することが可能となる。
【0078】
図1、
図6を参照して、溶接装置1Aにおいてリモートコントローラ120Aから溶接装置1Bの溶接電源装置10Bに対して溶接条件や緊急停止などの制御データを送信する場合に、溶接装置1AではまずステップS201において基本リンク経路で通信が可能か否かの判断が行なわれる。
【0079】
通信が可能か否かの判断は、リモートコントローラ120A、ワイヤ送給装置100A、溶接電源装置10Aのいずれの制御部で行なうように構成しても良い。
【0080】
ステップS201において、基本リンク経路で通信が可能であると判断された場合には、ステップS202に処理が進み、基本リンク経路を使用してリモートコントローラ120Aの無線通信部134Aからワイヤ送給装置100Aの無線通信部106Aおよび溶接電源装置10Aの無線通信部16Aを経由して溶接電源装置10Bの無線通信部16Bに音声データ、溶接制御データが送信される。
【0081】
なお、データが音声データ、画像データ、他の溶接装置と共有したい設定すべき数値等のように他の作業者に伝達したい情報を含むものである場合には、さらに溶接電源装置10Bからデータ通信(たとえばPLC)でワイヤ送給装置100Bにデータが送られ、無線通信部106Bから無線通信部134Bに無線通信によってデータがリモートコントローラ120Bに送られる。
図3と同様な構成を有するリモートコントローラ120Bからは、スピーカ126から音声が出力されたり、表示器128に数値が表示されたり、追加カメラユニット121Aの小型液晶モニタ126Aに撮影画像が表示されたりする。
【0082】
ステップS102において、基本リンク経路で通信が不可能であると判断された場合には、ステップS203に処理が進む。ステップS203では、溶接装置1Aは、拡張リンク経路で通信が可能か否かの判断を行なう。
【0083】
通信が可能か否かの判断は、リモートコントローラ120A、ワイヤ送給装置100A、溶接電源装置10Aのいずれの制御部で行なうように構成しても良いが、リモートコントローラ120Aの制御部が行なうことが好ましい。
【0084】
ステップS203において、拡張リンク経路で通信が可能であると判断された場合には、ステップS204に処理が進み、拡張リンク経路を使用してリモートコントローラ120Aの無線通信部134Aから直接的に溶接電源装置10Bの無線通信部16Bに音声データ、溶接制御データが送信される。なお、データが音声データ、画像データ、他の溶接装置と共有したい設定すべき数値等のように他の作業者に伝達したい情報を含むものである場合には、さらに溶接電源装置10Bからデータ通信(たとえばPLC)でワイヤ送給装置100Bにデータが送られ、無線通信部106Bから無線通信部134Bに無線通信によってデータがリモートコントローラ120Bに送られるが、リモートコントローラ120Aから直接リモートコントローラ120Bに無線通信でデータを送信するように構成しても良い。
【0085】
ステップS203において拡張リンク経路での通信が不可能であると判断された場合には、ステップS205においてリモートコントローラ120Aの表示部に通信エラーである旨が表示される。この場合、スピーカからエラーメッセージが流れるように構成しても良い。
【0086】
ステップS202、S204,S205の処理のいずれかが実行された後には、ステップS206において制御は所定のメインルーチンに戻される。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態の溶接システムによれば、複数溶接電源の一括制御が可能となる。また、熟練工の設定条件をその他の作業者が共有することが可能となる。さらに、遠隔地にある溶接電源装置の状態を知ることができるので、溶接電源装置の場所に行かなくても作業現場に居ながらにして、作業者がどのように行動すべきか判断を行なうことができる。
【0088】
また、作業現場での他の作業者との連絡をトランシーバ機能によって行なうことが可能となる。さらに、作業現場で撮影された溶接部分等の画像を他の作業者に転送して他の作業者から指示を受けることも可能となる。
【0089】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。