(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114428
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】自動搬送機用磁気ガイドセンサ
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
G05D1/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-63187(P2016-63187)
(22)【出願日】2016年3月28日
(62)【分割の表示】特願2012-236215(P2012-236215)の分割
【原出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2016-119128(P2016-119128A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】591075951
【氏名又は名称】センサテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088948
【弁理士】
【氏名又は名称】間宮 武雄
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 勲
【審査官】
藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−233411(JP,A)
【文献】
特開昭50−143992(JP,A)
【文献】
実開平02−108107(JP,U)
【文献】
特開平01−287711(JP,A)
【文献】
特開平6−335547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00−1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁され磁気を発生する磁気ガイドテープによって搬送ルートが設定され前記磁気ガイドテープに沿って走行する自動搬送機に用いられる磁気ガイドセンサであって、
回路基板上で前記磁気ガイドテープと直交するその幅方向に、互いに少なくとも前記磁気ガイドテープの幅以上の距離を隔てて、回路基板の一端側と他端側に配置され、前記自動搬送機が走行中に前記磁気ガイドテープの幅方向に移動し変位するのに伴って変化する磁束密度を検出する第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子と、
これら第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子により検出された検出信号を受けてアナログ演算処理する演算増幅回路と、
前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子との中間に配設された第3の磁気検出素子と、
を備え、
前記演算増幅回路のアナログ演算出力で前記自動搬送機の、前記磁気ガイドテープの幅方向における幅寄せを制御するとともに、
前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子の変位検出電圧値に前記第3の磁気検出素子の出力電圧値を加算し、この加算電圧値を、予め設定された比較電圧値と比較し、加算電圧値が比較電圧値より小さくなった場合に、前記自動搬送機が前記磁気ガイドテープから所定の距離以上に逸脱したとみなし、事故防止用の脱線信号を出力するようにしたことを特徴とする自動搬送機用磁気ガイドセンサ。
【請求項2】
着磁され磁気を発生する磁気ガイドテープによって搬送ルートが設定され前記磁気ガイドテープに沿って走行する自動搬送機に用いられる磁気ガイドセンサであって、
回路基板上で前記磁気ガイドテープと直交するその幅方向に、互いに少なくとも前記磁気ガイドテープの幅以上の距離を隔てて、回路基板の一端側と他端側に配置され、前記自動搬送機が走行中に前記磁気ガイドテープの幅方向に移動し変位するのに伴って変化する磁束密度を検出する第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子と、
これら第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子により検出された検出信号を受けてアナログ演算処理する演算増幅回路と、
前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子との中間に配設された第3の磁気検出素子と、
を備え、
前記演算増幅回路のアナログ演算出力で前記自動搬送機の、前記磁気ガイドテープの幅方向における幅寄せを制御するとともに、
前記第1の磁気検出素子の出力電圧値と比較電圧とを比較する第1の比較回路、前記第2の磁気検出素子の出力電圧値と前記比較電圧とを比較する第2の比較回路、前記第3の磁気検出素子の出力電圧値と前記比較電圧とを比較する第3の比較回路、ならびに、前記第1の比較回路、第2の比較回路および第3の比較回路のそれぞれの出力を入力に受ける論理回路を備え、前記論理回路から、第1の比較回路、第2の比較回路および第3の比較回路のそれぞれの出力電圧値がいずれも前記比較電圧以下であること示す信号が出力された場合に、前記自動搬送機が前記磁気ガイドテープから所定の距離以上に逸脱したとみなし、事故防止用の脱線信号を出力するようにしたことを特徴とする自動搬送機用磁気ガイドセンサ。
【請求項3】
前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子のそれぞれの前方もしくは後方またはその両方に、透磁率が大きく残留磁気が小さい磁性体をそれぞれ配置し、前記磁気ガイドテープより発生され変化する周辺磁束を集めて前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子に印加させ、磁気検出感度を上げることにより磁束密度の変化を高感度に検出し、変位検出精度を高めて精度の高い幅寄せ制御を可能にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動搬送機用磁気ガイドセンサ。
【請求項4】
前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子の演算された出力電圧値に一定値の基準電圧が加算され、如何なる変位においても出力電圧値が0V以上のプラス電圧となるようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の自動搬送機用磁気ガイドセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場や倉庫などにおいて、材料や製品を乗せ床面に設けられた磁気ガイドテープに沿って搬送する自動搬送機の走行制御を行う自動搬送機用磁気ガイドセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動搬送機用磁気ガイドセンサの一般的なものとしては、
図16に示すように、プリント基板51上に磁気検出素子S1、・・・、S16を、自動搬送機の進行方向と直交する方向であって磁気ガイドテープ52の幅方向において、例えば150mmの幅内に10mmのピッチで16個並べて実装し、磁気検出素子S1、S16の右端面あるいは左端面から1ビット〜16ビットの位置付けをするとともに、16個の磁気検出素子S1、・・・、S16の信号を電気回路53のアンプで増幅し、スイッチング信号化してパラレルに出力し、その信号で自動搬送機を磁気ガイドテープ52の幅方向において制御するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
そして、磁気ガイドセンサは、幅が凡そ50mmである磁気ガイドテープより発生する磁気を検出することにより出力される連続した5個〜6個の信号の最下位ビット信号を読みあるいは最上位ビット信号を読んで、ガイドラインの幅方向における変位位置を制御しているため、磁気ガイドテープの幅方向における真の中心位置を知ることはできない。
【0004】
また、他の自動搬送機用磁気ガイドセンサとしては、上記と同様に16個の磁気検出素子を10mmピッチで磁気ガイドテープの幅方向に並べて実装し、磁気ガイドテープの磁気を検出して出力される連続した5個〜6個の位置付けされた信号をマイクロコンピュータで演算することにより磁気ガイドテープの中心位置を求め、磁気ガイドテープの幅方向における変位位置を、磁気検出素子の取付けピッチの半分である5mm単位で推定させ、磁気ガイドテープの幅方向における位置を制御する、といった方式のものもある。
【0005】
さらに他の自動搬送機用磁気ガイドセンサとして、自動搬送機が走行中に尻振りするのを防止するため、磁気ガイドテープの上方に1個の磁気検出素子を用い、磁気ガイドテープから発する磁力線が磁気ガイドテープの幅方向の異極に戻ろうとして曲線を描いて帰還する極めて少ない磁力線の方向を検出し、磁気ガイドテープの幅の範囲内で変位信号を知るようにしたものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−163021号公報
【特許文献2】特開平09−269820号公報
【特許文献3】特開平08−044427号公報
【特許文献4】特開平07−110713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した自動搬送機用の磁気ガイドセンサにおいて、磁気ガイドテープの微弱な磁気を精度良く、しかも高い検出応答スピードで行うことのできる磁気検出素子としては、一定の大きさのものを必要とするが、一般的には磁気検出素子の大きさだけでなく、検出した磁気信号を増幅するためのアンプ回路や、アンプ回路の増幅率を調整するための多くの電子パーツを必要とする。このため、磁気検出素子は、10mm程度の検出ピッチを必要とするので、10mmピッチのものが多く用いられている。このように10mmピッチで実装された磁気検出素子は、上記したように磁気ガイドテープの幅方向に16個、マルチに並べて150mm幅の磁気変位検出を行い、自動搬送機の幅寄せ制御を行う、といったものが最も一般的である。したがって、自動搬送機の磁気ガイドテープ幅方向の幅寄せ制御は、磁気検出素子の実装ピッチで段階的にしか行うことができず、実装ピッチ以下での微細な精度を要する幅寄せ制御を自由に行うことができない。しかも、磁気検出素子の実装ピッチを小さくすると、磁気検出素子の数とそれに伴う増幅回路、アンプゲイン調整回路、不平衡電圧調整回路等が増え、大変高価で消費電力も過大なものとなる。
【0008】
また、一般的に磁気ガイドラインとして用いられる磁気ガイドテープは、厚みが薄いゴムの磁気テープであり、工場や倉庫の床面に張り付けられて使用される。そして、磁気ガイドセンサは、磁気ガイドテープとの間に30mm〜50mmの検出距離を介してその上方に位置するように自動搬送機に取り付けられ、磁気ガイドテープが発生する磁束を検出することにより、自動搬送機が磁気ガイドテープに沿って走行する。このため、磁気ガイドテープから磁気検出素子に入力される磁束密度は極めて微少である。したがって、磁気ガイドセンサに、磁気抵抗素子やホール素子を磁気検出素子として用いる場合には、非常に大きな増幅度の複雑な増幅回路が必要となる。
【0009】
さらに、磁気抵抗素子を用いた磁気検出素子では、磁気が無い場合、個々の素子間での中点電圧のバラツキが非常に大きく、また、リニアホールIC素子の場合は、個々の素子での不平衡電圧のバラツキが非常に大きい。しかも、磁気検出素子の磁気検出感度は、個々の素子間において非常に大きな差があるために、個々の磁気検出素子における、アンプ回路の不平衡電圧や中点電圧の調整とアンプゲインの調整には、非常に繊細さを必要とし、多回転ボリュウム等を使った調整には技術を要するために、特定の作業者しかその調整作業を行うことができず、また、その調整には非常に長時間が掛かることとなる。
【0010】
また、大変高価な磁気検出素子を16個も使用すると、上記したようにその検出素子の数に対応する増幅回路、アンプゲイン調整回路、不平衡電圧調整回路、多回転ボリュウムやそれらに付属した抵抗、コンデンサ等の電子パーツも多くなり、材料費用が高価となる。また、マイクロコンピュータを用いたものでは、上記に加えさらに材料費が嵩むため、大変高価な磁気ガイドセンサとなる。
【0011】
さらにまた、磁気検出素子およびアンプ回路が16個にもなると、消費電力もその数に比例して大変多くなり、それに伴う発熱によって他の半導体に与える温度による特性上の影響が大きくなり品質の信頼性も低下する。また、特許文献4に開示された磁気ガイドセンサのようなものもあるが、その文献中の
図9および
図10に示す通り、磁束の発生方向と平行な磁束量を検出するため、変位量に対する磁束の変化は、磁束発生方向を検出する場合の数十分の一となり、S/N比が非常に悪くて実用的な変位検出精度が出ない。しかも、変位検出幅は、せいぜい磁気ガイドテープの幅までであり、広い範囲の幅寄せ制御を行うことができない。さらに、16個の磁気検出素子からそれぞれ信号を出力するためには、16本の信号線と電源用の2本の配線が必要であるため、最低でも合計18本の配線を必要とし、また、ケーブルは太く高価となり配線が複雑となるなどといった多くの問題点がある。
【0012】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、自動搬送機をアナログ的に任意な距離で精度良く幅寄せ制御することを可能にし、使用される磁気検出素子およびそれに関連する回路パーツの数を数分の1程度に減少させるとともに、非常に大きな増幅度の複雑な増幅回路なども必要とせず、また、配線の本数を減らし配線の複雑化を防ぎ、これらによって材料費や加工組立て費を安価にすることができ、また、磁気検出素子やパーツを少なくすることによって品質信頼性の向上を図ることができ、さらに、磁気検出素子の調整作業に要する負担を軽減することができる自動搬送機用磁気ガイドセンサを提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、着磁され磁気を発生する磁気ガイドテープによって搬送ルートが設定され前記磁気ガイドテープに沿って走行する自動搬送機に用いられる磁気ガイドセンサであって、回路基板上で前記磁気ガイドテープと直交するその幅方向に、互いに少なくとも前記磁気ガイドテープの幅以上の距離を隔てて、回路基板の一端側と他端側に配置され、前記自動搬送機が走行中に前記磁気ガイドテープの幅方向に移動し変位するのに伴って変化する磁束密度を検出する第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子と、これら第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子により検出された検出信号を受けてアナログ演算処理する演算増幅回路と、前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子との中間に配設された第3の磁気検出素子と、を備え、前記演算増幅回路のアナログ演算出力で前記自動搬送機の、前記磁気ガイドテープの幅方向における幅寄せを制御するとともに、前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子の変位検出電圧値に前記第3の磁気検出素子の出力電圧値を加算し、この加算電圧値を、予め設定された比較電圧値と比較し、加算電圧値が比較電圧値より小さくなった場合に、前記自動搬送機が前記磁気ガイドテープから所定の距離以上に逸脱したとみなし、事故防止用の脱線信号を出力するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、前記目的を達成するために、請求項2に係る発明は、着磁され磁気を発生する磁気ガイドテープによって搬送ルートが設定され前記磁気ガイドテープに沿って走行する自動搬送機に用いられる磁気ガイドセンサであって、回路基板上で前記磁気ガイドテープと直交するその幅方向に、互いに少なくとも前記磁気ガイドテープの幅以上の距離を隔てて、回路基板の一端側と他端側に配置され、前記自動搬送機が走行中に前記磁気ガイドテープの幅方向に移動し変位するのに伴って変化する磁束密度を検出する第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子と、
これら第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子により検出された検出信号を受けてアナログ演算処理する演算増幅回路と、前記第1の磁気検出素子と前記第2の磁気検出素子との中間に配設された第3の磁気検出素子と、を備え、前記演算増幅回路のアナログ演算出力で前記自動搬送機の、前記磁気ガイドテープの幅方向における幅寄せを制御するとともに、前記第1の磁気検出素子の出力電圧値と比較電圧とを比較する第1の比較回路、前記第2の磁気検出素子の出力電圧値と前記比較電圧とを比較する第2の比較回路、前記第3の磁気検出素子の出力電圧値と前記比較電圧とを比較する第3の比較回路、ならびに、前記第1の比較回路、第2の比較回路および第3の比較回路のそれぞれの出力を入力に受ける論理回路を備え、前記論理回路から、第1の比較回路、第2の比較回路および第3の比較回路のそれぞれの出力電圧値がいずれも前記比較電圧以下であること示す信号が出力された場合に、前記自動搬送機が前記磁気ガイドテープから所定の距離以上に逸脱したとみなし、事故防止用の脱線信号を出力するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の磁気ガイドセンサにおいて、前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子のそれぞれの前方もしくは後方またはその両方に、透磁率が大きく残留磁気が小さい磁性体をそれぞれ配置し、前記磁気ガイドテープより発生され変化する周辺磁束を集めて前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子に印加させ、磁気検出感度を上げることにより磁束密度の変化を高感度に検出し、変位検出精度を高めて精度の高い幅寄せ制御を可能にしたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気ガイドセンサにおいて、前記第1の磁気検出素子および第2の磁気検出素子の演算された出力電圧値に一定値の基準電圧を加算し、如何なる変位においても出力電圧値が0V以上のプラス電圧となるようにし、簡易で安価なユニポーラ回路で幅寄せ制御を行うことができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2に係る各発明の自動搬送機用磁気ガイドセンサを使用すると、自動搬送機の幅寄せをアナログ的に任意な距離で精度良く制御することが可能となり、インテリジェントな搬送ロボット化を図ることができる。
また、この磁気ガイドセンサを使用すると、磁気ガイドテープが発生する磁気の検出においてデッドエリアを無くすことができ、磁気ガイドテープと磁気ガイドセンサ間の検出距離が極めて短くなるような状態での使用も可能となり、磁気ガイドテープの幅方向における変位検出用の磁気検出素子の実装間隔を広げることができ、広い範囲での幅寄せ制御を行うことが可能となり、また、誤った脱線信号を出力することを防止するともに、実際の脱線時は確実にその脱線を検出することが可能となる。
さらに、この磁気ガイドセンサを使用すると、従来は変位信号用16本と電源用2本との合計18本の配線を必要としていたのに対し、変位信号用1本と脱線信号用1本と電源用2本との合計4本の配線で自動搬送機の制御が可能となるため、配線ケーブルは細くて済み安価となり、また、配線接続作業が容易になってそれに要する人件費を低減させることができる。
【0018】
磁気ガイドセンサにおいては、磁気検出素子の出力が磁気検出素子と磁気ガイドテープ間の距離の2乗に反比例して減少するため、従来の磁気検出素子だけによる検出では、検出距離を長くしあるいは磁気検出素子間の距離を広げることができなかった。これは、磁気検出素子の微小な出力をそのまま電気的に増幅した場合に、補正処理を全く行うことができない磁気検出素子の不平衡電圧が周囲温度の変化に伴って定量的でなくまた定性的でない個々の素子間でばらつき変化する問題があったことによる。請求項3に係る発明の磁気ガイドセンサでは、電気的に検出感度の増幅を大きくする必要が無くなったため、磁気ガイドセンサと磁気ガイドテープ間の検出距離を長くすることが可能になるとともに、2個の変位測定用の磁気検出素子間の距離を広くすることが可能となり、磁気ガイドテープの幅方向における制御を数倍〜数十倍の精度で行うことができる。
【0019】
請求項4に係る発明の磁気ガイドセンサでは、出力電圧をユニポーラ電圧にしているため、自動搬送機の幅寄せ制御に、簡易な回路で、しかも安価なコンパレータやコンバータ回路、あるいは安価なマイコンなどのパーツを使用することが可能となり、トータルコストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施形態の1例を示し、プリント基板に磁性体と組み合わされた変位検出用の2個の磁気検出素子および脱線検出用の磁気検出素子が実装された磁気ガイドセンサを示す実装図である。
【
図2】
図1に示した磁気ガイドセンサの構成要素である磁気検出素子の検出面前後に設けられる磁性体を示す外観斜視図である。
【
図3】
図1に示した磁気ガイドセンサの磁気検出素子の両面にそれぞれ磁性体を保持するためのセンサホルダを示す外観斜視図である。
【
図4】
図1に示した磁気ガイドセンサの磁気検出素子として使用されるリニアホールIC素子を示す外観斜視図である。
【
図5】
図1に示した磁気ガイドセンサの磁気検出素子の前後面に磁性体がある場合と無い場合とにおける磁気検出出力特性を示す図である。
【
図6】
図1に示した磁気ガイドセンサを用いて磁気ガイドテープを検出する稼働状況を説明するための図であって、(a)は概略外観図、(b)は側面図である。
【
図7】
図1に示した磁気ガイドセンサの回路構成の基本的部分を示すブロック図である。
【
図8】
図7に示した回路に脱線検出用の磁気検出素子、S3不平衡調整電圧源および減算増幅回路を付加した回路構成を示すブロック図である。
【
図9】
図7および
図8に示した構成の回路において、2個の変位検出用の磁気検出素子および1個の脱線検出用の磁気検出素子の各出力電圧VS1、VS2、VS3と、50mm幅の磁気ガイドテープを用いてその幅方向に変位したときの変位距離と、各磁気検出素子の変位検出出力電圧との関連を示す図である。
【
図10】
図7および
図8に示した構成の回路において、3個の磁気検出素子の出力電圧の不平衡電圧を減算補正して、VS1→VSS1、VS2→VSS2、VS3→VSS3としたときの、変位距離と変位出力電圧との関連を示す図である。
【
図11】
図7に示した回路において、変位出力電圧VSS2と、加算回路を用いて他方の変位出力電圧VSS1から減算させるため極性を反転させた出力電圧VNS2との関連を示す図である。
【
図12】
図7に示した回路において、出力電圧VSS1と出力電圧VNS2とを加算したバイポーラ電圧VBと、磁気ガイドテープの幅方向における中心点の変位距離との関連を示す図である。
【
図13】
図7に示した回路において、バイポーラ電圧VBに基準電圧VREFを加算させ、変位出力電圧をユニポーラに変換した変位信号VUと磁気ガイドテープの幅方向における中心点の変位距離との関連を示す図である。
【
図14】
図1に示した磁気ガイドセンサと磁気ガイドテープとの間の検出距離と等磁束密度曲線との関連を示す磁束密度曲線図である。
【
図15】
図7および
図8に回路構成を示した発明とは異なる発明の実施形態を示し、磁気ガイドセンサの回路構成を示すブロック図である。
【
図16】磁気検出素子が16個実装された従来の16ビット磁気ガイドセンサのプリント基板を示す実装図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の実施形態の1例を示す磁気ガイドセンサのプリント基板(回路基板)の実装図である。この磁気ガイドセンサ1は、2個の磁気検出素子S1、S2を変位検出用磁気検出素子として使用しており、この2個の変位検出用磁気検出素子S1、S2が、長方形状のプリント基板(回路基板)2の、磁気ガイドテープの幅方向である長手方向に、互いの距離を、少なくとも磁気ガイドテープの幅以上に隔てて、プリント基板2の一端側および他端側に配設されている。
【0022】
2個の変位検出用の磁気検出素子S1、S2には、プリント基板2の検出面2a側、すなわち磁気ガイドテープと対向する側にそれぞれ1個、その反対側にそれぞれ1個の、透磁率が大きく残留磁気が少ないパーマロイで形成された磁性体PC1〜PC4が、センサホルダ4a、4bに保持され磁気検出素子S1、S2に密着するように実装されている。なお、プリント基板2の中央部には、磁気検出素子S1、S2より出力される検出磁気信号を演算処理するための電気回路を構成する回路素子3が実装されている。
【0023】
図2に磁性体PC(上記各磁性体PC1〜PC4)の外観斜視図を、
図3にセンサホルダ4a(4b)の外観斜視図をそれぞれ示す。また、磁気検出素子S1、S2を構成するリニアホールIC素子5の外観図を
図4に示す。
図2に示した磁性体PCは、主にパーマロイあるいはフェライトを用いて形成されている。
【0024】
以下、磁気検出素子S1、S2にリニアホールIC素子を使った場合における磁気検出について説明する。
磁気ガイドテープは、非常に高価であり、幅30mm、厚さ2mm程度のものから一般的な幅50mm、厚さ1mm程度のものまで、色々と用途に従って用いられている。そして、磁気ガイドテープは、工場や倉庫などの床の表面に接着材で張り付けられ、長いものでは数kmの長距離に及ぶものもあり、自動搬送機の走行ルートをガイドする。この磁気ガイドテープから発する磁束は、その本質上から、透磁率が高い所を、あるいは磁気抵抗が少ない所を、最短の距離で通過しようとする性質を持っている。
【0025】
変位検出用の磁気検出素子S1、S2は、広い間隔をあけて実装されているため、磁気検出素子近辺の磁束密度は極めて小さく、非常に高い倍率で増幅しないと制御信号として利用することができない。電気的に増幅器の増幅率を上げ増幅することが考えられるが、その場合、電気的なノイズの処理やノイズシールド構造を必要とするため、品質信頼性の問題やコストの面から採用することができない。このため、この実施形態においては、磁気ガイドテープから発した磁気が、磁気検出素子S1、S2の前面(プリント基板2の検出面2a側)の磁性体PC1、PC2に吸収収束され磁気検出素子S1、S2を通過して、後方の磁性体PC3、PC4を通過し後方に通過して行くようにしている。これにより、磁気検出素子S1、S2には、磁気ガイドテープが発する周囲の磁束が磁性体PC1・PC3、PC2・PC4により集められて印加されるため、磁性体が無い場合に比べて極めて強い磁束密度となり、検出感度が高くなる。
【0026】
図1において、例えば、磁気検出素子S1、S2中のホール素子の検磁部面積が0.3mmφで、磁束の通過するセンサ素子の厚みが1.15mmであり、磁性体PC1〜PC4がパーマロイで直径2mmφ×長さ15mmのものを磁気検出素子S1、S2の両面に密着して実装した場合と、このパーマロイを取り除いた場合とを比較すると、同一の磁気ガイドテープを同一の検出距離で検出すると、磁気検出素子S1、S2への磁束入力差は約10倍となるため、変位出力値も10倍となり、したがって、磁気検出感度は凡そ10倍の感度に上昇することが分かる。この磁気検出出力特性を
図5に示す。
【0027】
なお、磁性体PC1〜PC4の形状として、コスト的に安価な丸棒のものを示したが、これに限ることなく、角棒型や板状の短冊型であっても透磁率が高く磁気検出素子の検磁部に磁束を導くことができるものであれば、丸棒のものと同様の機能を果たすことができる。特性としては、磁性体PC1〜PC4の断面太さを大きくすると磁気検出感度は低下するため、磁気検出素子S1、S2の検磁面積や磁気検出素子S1、S2への磁性体PC1〜PC4の組み付け誤差等を考慮して、磁性体PC1〜PC4の断面太さを決めることが望ましい。また、磁性体PC1〜PC4の長さを長くすると磁気検出感度は高くなるが、磁気ガイドセンサ1がそれに伴って大きくなるので、磁気検出感度と磁気ガイドセンサ1の大きさとの兼ね合いを考慮することが望ましい。また、磁気検出素子S1、S2の片面のみに磁性体を用いると、磁気検出素子S1、S2の両面に用いた場合に比べて磁気検出感度は半減する。
【0028】
一方、磁気の無い場合、すなわち磁気ガイドテープが無い場合には、磁気検出素子S1、S2の前・後方向に磁性体PCが有っても無くても磁気ガイドセンサ1に印加される磁束密度はゼロで何ら差は無いので、検出精度は10倍に向上したことを意味する。したがって、磁気検出素子S1、S2の両面に磁性体PC1〜PC4を設けるのは、印加される磁束のロスを無くし効率良く磁気検出素子S1、S2の周囲の磁束を集めて磁気検出素子S1、S2に磁束を集中させるためであり、磁気検出素子S1、S2にリニアホールIC素子を使った場合だけでなく、磁気抵抗素子を用いた場合でも全く同様の特性を得ることができる。
【0029】
なお、磁性体PCとして2mmφ×15mmのものを使用した場合について説明したが、磁気ガイドセンサ全体の構成が大きくなってよい場合には、磁性体PCを長くすることにより、検出感度を上げて、変位検出用の磁気検出素子S1、S2の間隔を広げることや変位検出精度を向上させることができる。
【0030】
上記した構成の磁気検出部を用いた搬送機用磁気ガイドセンサ1の実際の使用状態を
図6に、磁気ガイドセンサ1の全体回路のブロック図を
図7にそれぞれ示す。一般に知られているように、リニアホールIC素子は、N極でもS極でも検出することができるようにするため、磁気の無い場合は印加される電源電圧(Vcc)の約1/2にバイアスされている。そして、N極を検出するとバイアス電圧より出力電圧が増加するものの場合には、S極を検出するとバイアス電圧より出力電圧が減少するようになっていて、N極の磁束密度もS極の磁束密度も磁気検出素子S1、S2の飽和磁束密度以内において磁束密度に比例したリニアな電圧で変化し出力するようになっている。すなわち、DC5Vの電源電圧で使用する場合、無磁気においては、個々の磁気検出素子でバラツキがあるが電源電圧の凡そ2分の1である2.5V近辺の電圧が不平衡電圧として出力される。
【0031】
図6において、磁気ガイドテープ10と磁気ガイドセンサ1間の検出距離を一定にし、例えば磁気検出素子S1、S2間を、従来一般的に使用されている16ビットの検出幅と同一の150mmに設定した場合における、磁気ガイドテープ10と磁気ガイドセンサ1の変位量に対する磁気検出素子S1、S2の出力電圧関連図を
図9および
図10(図中、VS3、VSS3は、後述する第3の磁気検出素子S3に関するものを図示している)に示す。
図9および
図10においては、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心部が磁気ガイドセンサ1の中心点(磁気検出素子S1と磁気検出素子S2との中間)にあるときを変位量ゼロ点とし、磁気ガイドテープ10が左方向に変位したときをL、右側に変位したときをRとして表示している。凡そ(1/2)Vccの不平衡電圧は、個々の磁気検出素子において大きくばらつくので、精度良く変位量の測定をするためには、不平衡電圧を個々の磁気検出素子に合わせキャンセル補正することが望ましい。
【0032】
図7に示した回路構成ブロック図において、変位検出用の磁気検出素子S1の出力VS1は、減算増幅回路11で磁気検出素子S1の不平衡調整電圧源13からの不平衡調整電圧が減算され、無磁気において減算増幅回路11の出力電圧VSS1が0Vとなるように、また、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心が磁気検出素子S1の真下、すなわちL75mmのときに所定の電圧値VKとなるように、アンプゲインが減算増幅回路11で調整される。同様に、変位検出用の磁気検出素子S2の出力VS2は、減算増幅回路12で磁気検出素子S2の不平衡調整電圧源14からの不平衡調整電圧が減算され、無磁気において減算増幅回路12の出力VSS2が0Vとなるように、また、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心が磁気検出素子S2の真下、すなわちR75mmのときに所定の電圧値VKとなるように、アンプゲインが減算増幅回路12で調整される。
【0033】
上記した動作により、
図9中に示した磁気検出素子S1の出力VS1は、減算増幅回路11で出力電圧VSS1に、磁気検出素子S2の出力VS2は、減算増幅回路12で出力VSS2に補正される。この出力特性を
図10に示す。不平衡電圧が補正された出力VSS2は、オペアンプを用いた極性反転増幅回路15で極性が反転され、プラスの電圧が、絶対値が同一で極性がマイナスの出力電圧VNS2に変換される。この入出力特性を
図11に示す。
【0034】
減算増幅回路11の出力電圧VSS1と極性反転回路15の出力電圧VNS2とを加算増幅回路16で加算増幅すると(結果として、2個の変位検出用の磁気検出素子S1、S2のデーターは減算処理されたこととなる)、加算された変位出力電圧VBは、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心が磁気検出素子S1の真下、すなわちL75mmで最大の出力電圧となり、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心が磁気検出素子S1と磁気検出素子S2との中間に位置するとき、極性の異なった同一の電圧を加算増幅回路16で加算するため変位出力電圧VBは0Vとなり、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心が磁気検出素子S2の真下、すなわちR75mmの点で変位出力電圧VBとして最小値を出力する。この出力特性を
図12に示す。
【0035】
図12に示した変位出力電圧VBを幅寄せなどの自動ハンドル操作の制御信号に用いる場合は、A/Dコンバータやマイクロコンピュータを用いて信号処理してから制御を行う必要がある。ところが、この変位出力電圧VBはバイポーラ電圧であり、磁気ガイドテープ10の幅方向における中心点が、磁気検出素子S1、S2の中間点よりも右側(Rで表示する側)に位置すると、変位出力電圧VBがマイナス電圧となる。このため、安価なユニポーラのA/Dコンバータやユニポーラのコンパレータあるいはユニポーラのマイコンでは、そのままでの信号処理が困難である。したがって、この磁気ガイドセンサ1では、基準電圧源17より一定の基準電圧VREFを、バイポーラ電圧である変位出力電圧VBに加算回路18で加算し、ユニポーラ電圧に変換して変位信号VUとして出力するようにしている。ユニポーラ電圧で出力された変位信号VUは、安価な汎用のA/Dコンバータやマイコンあるいはコンパレータにそのまま入力することができるため、磁気ガイドセンサ1だけでなく制御系を含めた全体の価格を安価にすることができる。この出力特性を
図13に示す。
【0036】
図12には示されていないが、先に記載したように磁気ガイドテープ10が磁気ガイドセンサ1から遠く離れ磁気の無い場合、すなわち脱線状態においては、出力電圧VSS1、VNS2は共に0Vに補正されているため、通常の使用状態において磁気ガイドテープ10が磁気ガイドセンサ1の中心に位置する場合における出力電圧VB、VUと全く同一の信号となる。ここで、何トンもの荷重のある荷物を乗せた自動搬送機が磁気ガイドテープ10で指定されたルート以外を走行すると大惨事が発生する。したがって、このような問題の発生を防ぐため、この実施形態においては、減算増幅回路11の出力電圧VSS1と減算増幅回路12の出力VSS2とを加算回路19で加算し、加算された電圧値VADを、比較電圧源20からの予め決められた任意の比較電圧VCMと比較回路21で比較し、出力電圧VSS1、VSS2が共に減少して加算された電圧値VADが小さくなり、電圧値VADが比較電圧VCMより小さいと、磁気ガイドテープ10から磁気ガイドセンサ1が逸脱した状態であるとして、比較回路21より脱線信号VDRを出力し、この信号VDRにより自動搬送機の走行を停止するようにする。
【0037】
通常は、上記したように変位検出用の磁気検出素子S1、S2の両サイドの加算で脱線の検出に対して何ら問題は無いが、自動搬送機への磁気ガイドセンサ1の取付け場所が制約され、磁気ガイドセンサ1と磁気ガイドテープ10間の検出距離を短くして使用しなければならない場合がある。このような場合にも対応することができるように、この磁気ガイドセンサ1が具備している構成について説明する。
【0038】
図14に示すように、磁気ガイドセンサ1を自動搬送機に取り付け、磁気ガイドテープ10から所定の検出距離Aで使用する場合においては、上記したように磁束の通過方向は正常で問題は無いが、磁気ガイドセンサ1が磁気ガイドテープ10に接近した検出距離Bで使用する場合では、磁気ガイドテープ10が磁気ガイドセンサ1の中心に有るにもかかわらず、変位検出用の磁気検出素子S1および磁気検出素子S2には僅かな磁束しか入力されない。しかも、N極から出た磁束はS極に向かって帰ろうとするため、磁束の通過方向が磁気検出素子S1、S2の検出エリアで平行になりあるいは反転すると、磁気検出素子S1、S2はN極の方向が反転したS極として検出することとなる。そのエリアを
図14中に点線で示す。
【0039】
磁気ガイドテープ10が磁気ガイドセンサ1の中心に有ったとき、
図7に示した回路における減算増幅回路11の出力電圧VSS1と減算増幅回路12の出力VSS2とが共に0Vになると、変位信号VUとしては基準電圧VREFを出力するため、変位出力は変化が無く磁気ガイドテープ10の幅方向における中心を走行していることを示し問題は無いが、加算回路19の出力電圧値VADが0Vとなり、脱線信号VDRが出力され、自動搬送機は脱線状態とみなされて停止し機能しなくなる。このような問題の発生を防ぐため、この磁気ガイドセンサ1には、
図1に示すように、第3の磁気検出素子S3が、第1の磁気検出素子S1と第2の磁気検出素子S2との中間位置で、磁気ガイドセンサ1のプリント基板2の検出面2a側近くに実装され、回路的には
図8に示すように、磁気検出素子S3とS3不平衡調整電圧源22と減算増幅回路23とを、
図7に示した回路に付加した回路構成を備えている。
【0040】
図8に示した磁気ガイドセンサの回路において、脱線検出用の磁気検出素子S3の検出された出力電圧VS3からS3不平衡調整電圧が減算増幅回路23において減算され、この減算増幅回路23からの出力電圧VSS3が加算回路19に入力され、加算回路19において、不平衡電圧の調整された電圧VSS3が第1の磁気検出素子S1に係る減算増幅回路11の出力電圧VSS1および第2の磁気検出素子S2に係る減算増幅回路12の出力電圧VSS2と加算され、加算された電圧値VADが比較回路21で比較電圧VCMと比較される。これにより、第3の磁気検出素子S3が磁気ガイドテープ10の中心を通過する場合において、出力電圧VSS1と出力電圧VSS2との加算値が小さくても、出力電圧VSS3を加算した電圧値が比較電圧VCMを越える電圧値VADを発生させ、これにより、誤った脱線信号の出力を防止するようにしている。
【0041】
図14において点線で示す逆極性の磁束曲線は、磁気ガイドテープ10の検出面から放射されたN極の磁束が磁気ガイドテープ10の裏面S極に帰還するため磁束の通過方向が反転し、磁気ガイドセンサ1から見た場合にN極を検出しなければならないにもかかわらず検出極性がS極となる線を示す。これは、磁気検出素子S1、S2の前後に設けられた磁性体PCの長さにも影響を受けた曲線であり、磁性体PCの長さを変えると変化する。この逆極性の影響も重なって、出力電圧VSS1、VSS2は小さくなるので、検出距離Bをそれ程短くすることができないが、その補正のために磁気ガイドテープ10が磁気ガイドセンサ1の中心部にあることを確認し、誤脱線信号を出さないためにも磁気検出素子S3を設ける必要がある。
【0042】
この磁気ガイドセンサ1において、磁気検出素子S3は、上記したように磁気検出素子S3の真近に磁気ガイドテープ10が接近した時のみ機能すればよいこと、すなわち強い磁束密度時のみ機能すればよいので、高価な磁性体を用いて検出感度を上げる必要が無い。また、制御するための外部との接続も、電源用2本と変位信号用1本および脱線信号用1本の合計4本の配線で済み、特に長距離を配線する場合、従来の18本の配線に比べて配線作業が容易になるとともに配線用ケーブルも細く安価になる。
【0043】
上記した構成とは異なる構成として、特に脱線信号を精度良く出力し得る磁気ガイドセンサについて説明する。この磁気ガイドセンサは、
図15に示す回路を、上記した
図8の脱線信号出力回路に代えて採用したことを特徴とする。
【0044】
この磁気ガイドセンサでは、第1の磁気検出素子S1に係る減算増幅回路11の出力電圧VSS1と比較電圧源26の比較電圧VCMとを比較回路24で、第2の磁気検出素子S2に係る減算増幅回路12の出力電圧VSS2と比較電圧源27の比較電圧VCMとを比較回路25で、第3の磁気検出素子S3に係る減算増幅回路23に係る出力電圧VSS3と比較電圧源29の比較電圧VCMとを比較回路28で、それぞれ比較し、各比較回路24、25、28の比較電圧に対し各出力電圧VSS1、VSS2、VSS3が大なるか否かの論理出力をそれぞれ論理積回路30に入力し、出力電圧VSS1、VSS2、VSS3がいずれも比較電圧VCMより低い場合に論理積回路30より脱線信号VDRを出力する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、工場や倉庫などの床面に敷設された磁気ガイドテープから発生する磁気を磁気ガイドセンサによって検出することにより、自動搬送機を磁気ガイドテープに沿って自動走行させるための技術に関するものであって、この発明に係る磁気ガイドセンサは、搬送機製造や磁気センサ等の精密電子部品などの製造分野において利用されるものである。
【符号の説明】
【0046】
S1、S2、S3 磁気検出素子
PC1、PC2、PC3、PC4 磁性体
1 磁気ガイドセンサ
2 プリント基板(回路基板)
3 回路素子
4a、4b センサホルダ
5 リニアホールIC素子
6 リード線
10 磁気ガイドテープ
11、12、23 減算増幅回路
13、14、22 不平衡調整電圧源
15 極性反転回路
16 加算増幅回路
17 基準電圧源
18、19 加算回路
20、26、27、29 比較電圧源
21、24、25、28 比較回路
30 論理積回路