特許第6114433号(P6114433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000002
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000003
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000004
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000005
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000006
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000007
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000008
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000009
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000010
  • 特許6114433-充電量検出装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114433
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】充電量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20170403BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170403BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20170403BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/48 P
   H01M10/42 P
   H02J7/00 Q
   H02J7/00 X
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-80567(P2016-80567)
(22)【出願日】2016年4月13日
(62)【分割の表示】特願2013-556195(P2013-556195)の分割
【原出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-166880(P2016-166880A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2016年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-18746(P2012-18746)
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木庭 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸大
(72)【発明者】
【氏名】前川 活徳
(72)【発明者】
【氏名】逢坂 哲彌
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−158444(JP,A)
【文献】 特開平5−135806(JP,A)
【文献】 特開昭60−144675(JP,A)
【文献】 特開平8−43506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル水素電池の充電量を検出する装置であって、
前記ニッケル水素電池の拡散領域内の複素インピーダンスを測定する測定手段と、
前記測定手段で測定した前記電池の拡散領域内の周波数の異なる2つ以上の前記複素インピーダンスを結んだ直線または近似直線の傾き角度を算出する検出手段と、
傾き角度と充電量との関係を予め記憶する記憶手段と、
を備え、前記検出手段は、前記ニッケル水素電池の充電量が10%以下と相対的に小さい場合に限り、算出された傾き角度と、前記記憶手段に記憶された傾き角度と充電量との関係を用いる第1の方法により前記ニッケル水素電池の充電量を検出することを特徴とする充電量検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電量検出装置であって、
前記検出手段は、実軸成分及び虚軸成分を軸とする二次元平面を用いて、周波数の異なる2つ以上の前記複素インピーダンスを結んだ直線または近似直線の傾き角度を算出することを特徴とする充電量検出装置。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の充電量検出装置において、
前記検出手段は、前記ニッケル水素電池の充電量が10%以下と相対的に小さい場合に限り、前記第1の方法により前記ニッケル水素電池の充電量を検出し、前記ニッケル水素電池の充電量が10%を超える場合に、前記第1の方法と異なる第2の方法により前記ニッケル水素電池の充電量を検出することを特徴とする充電量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池の充電量検出装置に関し、特に、二次電池の充電量を複素インピーダンス解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池のインピーダンス解析により、電池の劣化状態や余寿命を評価する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内部インピーダンスを有する電池の放電の状態を測定する方法において、第1周波数において電池の第1内部インピーダンスを測定し、第2周波数において電池の第2内部インピーダンスを測定し、第1内部インピーダンスと第2内部インピーダンス間の差を求め、内部インピーダンス間の差の偏角ないしアーギュメントであって、電池の放電の状態を表現する偏角ないしアーギュメントを求めることが記載されている。また、第1周波数及び第2周波数のうち、より低い方の周波数が0.1と10Hzの間にあることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、二次電池に交流電圧を印加して二次電池のインピーダンスに関連する電気量又は最大出力密度に関連する電気量を検出し、この電気量に基づいて二次電池の性能を判定することが記載されている。また、電気量は、二次電池のインピーダンスのうちで交流電圧の周波数により変動する成分からなる交流インピーダンス成分に関連する交流インピーダンス関連電気量であることが記載されている。また、所定の周波数帯内の多数の周波数値の交流電圧を二次電池に印加して、各周波数値毎に二次電池のインピーダンスの実軸成分値及び虚軸成分値を求め、実軸成分値及び虚軸成分値からインピーダンスに関連する電気量を演算することが記載されている。さらに、実軸成分値及び虚軸成分値をそれぞれ軸とする二次元平面におけるインピーダンスの円弧軌跡の直径に基づいて交流インピーダンス成分を演算することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−144675号公報
【特許文献2】特開2000−299137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年のハイブリッド自動車や電気自動車等の普及とともに、これらの車両に搭載される二次電池の状態を高精度に検出する技術を確立することが急務となっている。この技術により、車両に搭載される二次電池の制御や、二次電池の再利用への応用が期待できる。例えば、二次電池を再利用する際には、車両から取り出した二次電池の電池特性(開放電圧、内部抵抗、残存容量等)から再利用可能か否かを判定する手法が提案されているが、再利用可能かの判定をより高精度に行うため、より高精度に二次電池の状態を検出できる技術が望まれている。また、上記文献には、インピーダンスにより電池の状態を検出することが記載されているが、所謂電荷移動抵抗領域のインピーダンスから電池状態を検出しており、電池状態を必ずしも十分に検知しているとはいえなかった。例えば、ニッケル水素電池では、SOCが変化しても、電荷移動抵抗領域のインピーダンスに変化がないため、電荷移動抵抗領域のインピーダンスからはSOCを推定することはできなかった。
【0007】
本発明の目的は、電池の複素インピーダンス解析により、高精度に電池の充電量を検出できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ニッケル水素電池の充電量を検出する装置であって、前記ニッケル水素電池の拡散領域内の複素インピーダンスを測定する測定手段と、前記測定手段で測定した前記電池の拡散領域内の周波数の異なる2つ以上の前記複素インピーダンスを結んだ直線または近似直線の傾き角度を算出する検出手段と、傾き角度と充電量との関係を予め記憶する記憶手段とを備え、前記検出手段は、前記ニッケル水素電池の充電量が10%以下と相対的に小さい場合に限り、算出された傾き角度と、前記記憶手段に記憶された傾き角度と充電量との関係を用いる第1の方法により前記ニッケル水素電池の充電量を検出することを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記検出手段は、実軸成分及び虚軸成分を軸とする二次元平面を用いて、周波数の異なる2つ以上の前記複素インピーダンスを結んだ直線または近似直線の傾き角度を算出する。
【0010】
本発明の他の実施形態では、前記検出手段は、前記ニッケル水素電池の充電量が10%以下と相対的に小さい場合に限り、前記第1の方法により前記ニッケル水素電池の充電量を検出し、前記ニッケル水素電池の充電量が10%を超える場合に、前記第1の方法と異なる第2の方法により前記ニッケル水素電池の充電量を検出する。
【0011】
本発明によれば、電池の複素インピーダンス解析により、特に充電量が10%以下と相対的に小さい場合において高精度に検出対象の電池の充電量を検出できる。従って、例えば車両に搭載した電池を精度良く制御する、あるいは電池を再利用する際に本発明を適用することにより再利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電池の複素インピーダンス図(ナイキストプロット)である。
図2】実施形態の装置構成図である。
図3】第1実施形態の処理フローチャートである。
図4】第1実施形態の模式的説明図(ナイキストプロット)である。
図5】充電量と傾き角度との関係を示すグラフ図である。
図6】第2実施形態の処理フローチャートである。
図7】第2実施形態の模式的説明図(ナイキストプロット)である。
図8】充電量と距離との関係を示すグラフ図である。
図9】充電量と傾き角度との関係を示すグラフ図である。
図10】ワールブルグインピーダンスと伝送モデルのインピーダンスを示す図(ナイキストプロット)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0014】
<基本原理>
まず、本実施形態における基本原理について説明する。本実施形態における二次電池の充電量検出装置では、二次電池の複素インピーダンスの挙動のうち、特定の周波数領域における挙動に着目して二次電池の充電量を検出するものである。なお、以下の説明では二次電池としてニッケル水素電池(Ni−MH電池)を例にとり説明するが、これに限定されるものではなく、例えば他のアルカリ電池やリチウム電池等の非水系電池にも利用可能である。
【0015】
図1に、放電状態の電池に周波数を変えて交流電圧を印加した場合における等価回路のそれぞれの複素インピーダンスを結んだ複素インピーダンス曲線を示す。等価回路や複素インピーダンスは公知であり、例えば上記の特許文献2にも記載されている通りであるが、簡単に説明すると、電池のインピーダンスは直流インピーダンス成分と交流インピーダンス成分とを直列接続した等価回路で表現され、交流インピーダンス成分は抵抗とコンデンサの並列回路で等価される。交流インピーダンス成分は、電池の両端の電圧から直流電圧成分を除去し、電池の両端に印加される交流電圧成分Vacと交流電流Iacとを検出し、
Z=Vac/Iac=Zreal+jZimg
として得られる。Zreal(Zr)は複素インピーダンスの実軸成分、Zimg(Zi)は複素インピーダンスの虚軸成分である。図1は、電池の複素インピーダンスの実軸成分及び虚軸成分を求め、実軸成分と虚軸成分のペアデータを、横軸を実軸成分Zr、縦軸を虚軸成分Ziとする二次元平面にプロットしたものである(ナイキストプロット:横軸では右側をプラス側、左側をマイナス側とし、縦軸では上側をマイナス側、下側をプラス側としている:他のナイキストプロットも同じ)。放電状態の電池に対して、(正極容量(Ah),負極容量(Ah))=(5.54,8.5)、(4.54,7.5)、(3.54,6.5)、(2.54,5.5)、(1.54,4.5)、(0.54,3.5)、(0,2.96)のそれぞれの容量において周波数を変化させたときの複素インピーダンスの実軸成分、虚軸成分である。図において、0.1Hz、1Hz、10Hz、100Hzの点を明示的に示している。具体的には、丸印が0.1Hz、菱形印が1Hz、三角印が10Hz、四角印が100Hzを示す。周波数が低い領域は、物質拡散の関与した複素インピーダンスで構成された領域であり、本実施形態においては、拡散領域における複素インピーダンスで構成された領域と称する。具体的には、図1で示す複素インピーダンス曲線は、高周波数側の円弧を示す曲線部分(電荷移動抵抗領域)と、略直線状の部分から構成されているが、その変曲点より低周波数の部分(略直線状の部分)が拡散領域における複素インピーダンスで構成される領域である。
【0016】
発明者らは、鋭意研究の結果、上記した拡散領域の複素インピーダンスと、電池の充電量(SOC)に関連があることを見出し、本発明を得るに至った。すなわち、本発明は、上記した拡散領域の複素インピーダンスを用いて電池の充電量(SOC)を検出するものである。以下、より具体的に本実施形態の構成及び処理内容について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
本実施形態では、拡散領域における周波数の異なる2つの複素インピーダンスを結んだ直線の傾き角度(以下、拡散領域における複素インピーダンスの傾き角度という)を用いて電池10の充電量(SOC)を検出する。すなわち、図1に示されるように、拡散領域における複素インピーダンスの傾き角度は、正極及び負極の容量に応じて変化する、つまりSOCと傾き角度との間には相関関係があるため、この事実を利用して、拡散領域における複素インピーダンスの傾き角度から電池10のSOCを評価することが可能である。本実施形態では、このようなSOCの検出について説明する。
【0018】
図2に、本実施形態の充電量検出装置の構成図を示す。充電量検出装置は、検出対象である電池10に交流電圧を印加して電池10の複素インピーダンスを測定する測定手段であるインピーダンス測定器(あるいはインピーダンスアナライザ)12と、インピーダンスアナライザ12で測定された電池10の拡散領域内の周波数の異なる2つの複素インピーダンスのデータが供給され、これら複素インピーダンスのデータを結んだ直線の傾き角度を算出する検出手段であるコンピュータ14のCPUを有する。コンピュータ14は、さらに、傾き角度と充電量との関係を予め記憶した記憶手段であるメモリを有している。そして、コンピュータ14のCPUは、算出された傾き角度とメモリに記憶した関係を用いて電池10の充電量を検出する。また、図3に、本実施形態の処理フローチャートを示す。まず、電池10に測定用電極を接続し、交流電圧を印加してインピーダンス測定器12で電池10の複素インピーダンスを測定する(S201)。電池10に印加すべき交流電圧の周波数は、拡散領域内の少なくとも2つの周波数であり、例えば0.1Hzと0.5Hzであるが、これに限定されるものではない。
【0019】
次に、コンピュータ14は、インピーダンス測定器12で得られた2つの周波数における複素インピーダンスデータを用いて、拡散領域の傾き、つまり図4等におけるグラフ(ナイキストプロット)の傾き角度を演算する(S202)。傾き角度は、数学的あるいは図形的(幾何学的)のいずれの方法でもよい。2つの周波数のうち、相対的に高い周波数での複素インピーダンスを第1の複素インピーダンス、相対的に低い周波数での複素インピーダンスを第2の複素インピーダンスとすると、第1及び第2の複素インピーダンスを結ぶ直線の傾き角度を演算する。
【0020】
次に、コンピュータ14は、メモリに予め格納されているSOCと傾き角度との関係と、演算して得られた傾き角度とを比較し(S203)、比較結果に応じて電池10のSOCを判定する(S204)。ここで、SOCと傾き角度との関係は、予め複数の電池についてそのSOCと傾き角度とを測定し、両者の関係を関数あるいはテーブルとして規定してメモリに格納しておく。
【0021】
図4に、種々のSOCの電池の拡散領域における複素インピーダンスを示す。図において、符号300はSOC10%のニッケル水素電池の複素インピーダンス、符号400はSOC20%のニッケル水素電池の複素インピーダンス、符号500はSOC60%のニッケル水素電池の複素インピーダンスを示す。それぞれのSOCでの拡散領域の傾き角度は同一ではなく、SOCが増大するほど傾き角度が減少する傾向にある。すなわち、SOC10%、20%、60%の傾き角度をそれぞれβ1、β2、β3とすると、β1>β2>β3の関係にある。
【0022】
図5に、ニッケル水素電池のSOCと傾き角度との関係を示す。横軸は充電量(SOC)(%)、縦軸は拡散領域の傾き角度(deg)である。上記したように、SOCと傾き角度の間には一定の関係にあり、SOCが増大するほど傾き角度は減少する傾向にある。特に、SOCが小さい(0%〜10%程度)場合に、SOCの変化に対する傾き角度の変化が大きい。本実施形態では、図5に示すSOCと傾き角度との関係を関数あるいはテーブルとして規定してメモリに格納しておき、演算して得られた電池10の傾き角度から一義的にSOCを検出する。図5から分かるように、SOCが小さい場合にはSOCが大きい場合に比べて相対的に傾き角度に対するSOCの誤差が小さく、従って特にSOCが小さい場合に傾き角度からSOCを高精度に検出することが可能である。電池10のSOCが比較的大きい(例えば50%以上)ことが既知であれば、他の方法により電池10のSOCを検出し、電池10のSOCが比較的小さい(例えば10%以下)ことが既知であれば、本実施形態の方法により電池10のSOCを高精度に検出する等の使い分けも可能であろう。
【0023】
<第2実施形態>
本実施形態では、電池10を比較する際に基準となるベース電池の拡散領域内の複素インピーダンスである基準複素インピーダンスと、基準複素インピーダンスの周波数と同一の周波数の電池10の拡散領域内の複素インピーダンスとを結んだ直線の傾き角度(以下、拡散領域における複素インピーダンスの傾き角度という)および、基準複素インピーダンスと、基準複素インピーダンスの周波数と同一の周波数の電池10の拡散領域内の複素インピーダンスの距離を用いて電池10のSOCを検出する。なお、第1実施形態の測定手段の代わりに、測定手段であるインピーダンス測定器(あるいはインピーダンスアナライザ)12は基準複素インピーダンスの周波数と同一の周波数の電池10の拡散領域内の複素インピーダンスを測定する。また、第1実施形態の検出手段の代わりに、検出手段であるコンピュータ14のCPUは、基準複素インピーダンスと測定手段で測定した複素インピーダンスを結んだ直線の傾き角度を算出する。さらに、第1実施形態の記憶手段の代わりに、記憶手段であるメモリは、距離と充電量との関係と、傾き角度と充電量との関係を予め記憶する。そして、第1実施形態の検出手段の代わりに、検出手段であるコンピュータ14のCPUは、算出された距離と記憶手段に記憶された距離と充電量との関係と、算出された傾き角度と記憶手段に記憶された傾き角度と充電量との関係を用いて、電池10の充電量を検出する。
【0024】
図6に、本実施形態の処理フローチャートを示す。まず、検出対象の電池10に測定用電極を接続し、交流電圧を印加してインピーダンス測定器12で電池10の複素インピーダンスを測定する(S401)。電池10に印加すべき交流電圧の周波数は、拡散領域内の1つの周波数であり、例えば0.1Hzであるが、これに限定されるものではない。
【0025】
次に、コンピュータ14は、電池10を比較する際に基準となるベース電池の拡散領域内の複素インピーダンスである基準複素インピーダンスのうち、測定した周波数と同一周波数の基準複素インピーダンスをメモリから読み出す。ここで、ベース電池とは、例えば初期状態の電池10や、電池10と異なるが正常であることが既知である電池をいう。そして、S401で得られた複素インピーダンスとメモリから読み出した基準複素インピーダンスとを結んだ直線の傾き角度とそれらの間の距離を演算する(S402)。傾き角度及び距離は、数学的あるいは図形的(幾何学的)のいずれの方法でもよい。ベースの電池の複素インピーダンスは、SOCが既知、例えば20%の複素インピーダンスである。
【0026】
次に、コンピュータ14は、メモリに予め格納されている距離と傾き角度の傾向と、演算して得られた傾き角度及び距離とを比較し(S403)、比較結果に応じて電池10のSOCを判定する(S404)。
【0027】
図7に、本実施形態の処理を模式的に示す。図において、点40はベース電池の拡散領域内のある周波数、例えば0.1Hzでの複素インピーダンスであり、点60は電池10のSOC30%における同一周波数での複素インピーダンスであり、点61は電池10のSOC60%における同一周波数での複素インピーダンスである。電池10のSOCがベース電池のSOCから変化するに従い、これに応じて点60、点61が点40から変化し、距離及び傾き角度が変化していく。検出対象である電池10の容量バランスが正常である場合、傾き角度は凡そ0deg〜90deg、あるいは180deg〜270degの範囲内にある。他方、SOCが変化するに従い、距離が変化する。従って、距離と傾き角度、特に電池10が正常であることが既知であれば、その距離を用いてSOCを検出することができる。
【0028】
図8に、電池のSOCと距離との関係の一例を示す。SOCと距離との間には相関関係があり、SOCが0%〜60%まではSOCが増大するに従って距離も増大し、SOCが60%〜100%まではSOCが増大するに従って距離は減少する傾向を示す。なお、図8において、SOC=20%における点は、ベース電池のSOC(距離=0)を示す。また、図9に、電池のSOCと傾き角度との関係の一例を示す。正常な電池の場合、ベース電池に対してSOCが増大していれば傾き角度は凡そ30deg〜45degの範囲内にあり、傾き角度が変化してもSOCはあまり変化しない。なお、図9において、SOC=20%における点は、ベース電池のSOC(傾き角度=0)を示す。
【0029】
従って、コンピュータ14は、例えば電池10のSOCが60%以下であることは既知であるものの、正確なSOCが不明の場合、図8に示すSOCと距離の関係及び図9に示すSOCと傾き角度を用いて、電池10のSOCを検出することができる。なお、本実施形態では、正常な電池の場合、傾き角度が凡そ30deg〜45degの範囲内にあるが、SOCの値により傾き角度が多少変動するので、傾き角度によりSOCを推定することも可能である。
【0030】
因みに、図5におけるSOCと傾き角度の関係は、図8におけるSOCと傾き角度の関係と異なっているが、これは前者の傾き角度が拡散領域内における異なる2つの周波数での複素インピーダンス間の傾き角度であり、後者の傾き角度が拡散領域内における同一周波数での複素インピーダンス間の傾き角度を表すことに基づく点に留意されたい。この意味で、第1実施形態における「傾き角度」は「異なる2つの周波数間の傾き角度」であり、第2実施形態における「傾き角度は」は「同一周波数間の傾き角度」である。
【0031】
以上の各実施形態で説明したように、本実施形態では、拡散領域内における異なる2つの周波数における複素インピーダンスの傾き角度を用いて電池10の充電量を検出することができる。また、拡散領域内における同一の周波数における複素インピーダンスの傾き角度及び距離を用いて電池10の充電量を検出することができる。
【0032】
各実施形態の検出条件及び検出状態を要約すると以下の通りである。
【0033】
第1実施形態
周波数条件:拡散領域内の異なる2つの周波数
基準複素インピーダンス(第1複素インピーダンス):2つの周波数のうちのいずれか(例えば高い方の周波数)での複素インピーダンス(インピーダンス測定器12で測定してもよく、予めメモリに記憶してもよい)
検出項目:傾き角度
検出状態:充電量
【0034】
第2実施形態
周波数条件:拡散領域内の一つの周波数
基準複素インピーダンス(第1複素インピーダンス):電池の初期状態、あるいは正常である他の電池の複素インピーダンス(予めメモリに記憶)
検出項目:傾き角度及び距離
検出状態:充電量
【0035】
なお、第1実施形態における基準複素インピーダンスは、2つの周波数のいずれか(例えば高い方)での複素インピーダンスであるから、インピーダンス測定器12で測定される。もちろん、予め拡散領域内のある周波数における複素インピーダンスが既知であれば、これを基準複素インピーダンスとして予めメモリに格納しておき、インピーダンス測定器12では他の周波数での複素インピーダンスを測定する処理としてもよい。すなわち、第1実施形態において、インピーダンス測定器12は必ずしも異なる2つの周波数での複素インピーダンスを測定する必要はない。第2実施形態では、基準複素インピーダンスは、電池10の測定に先立ってメモリに予め格納しておくので、インピーダンス測定器12で測定する必要はない。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、第1実施形態では、電池10の拡散領域内の周波数の異なる2つの複素インピーダンスを結んだ直線の傾き角度を演算しているが、電池10の拡散領域内の周波数の異なる3つあるいはそれ以上の複素インピーダンスを結んだ直線または近似直線の傾き角度を演算してもよい。
【0038】
電池の拡散領域内の複素インピーダンスとしてはワールブルグインピーダンスと伝送モデルのインピーダンスがある。上記の実施形態では、ワールブルグインピーダンスを用いて充電量を検出しているが、伝送モデルのインピーダンスを用いて充電量の検出をしてもよい。ワールブルグインピーダンスは、水素拡散の関係した公知のインピーダンスであり、例えば、
Kuriyama, N., et al. : J Alloy & Compd., 202 (1993), 183
Zhang, W., et al. : Electrochem. Soc. the 185th Meet., (1994), abstr. No.593
等に開示されている。
【0039】
図10に、ワールブルグインピーダンスと伝送モデルのインピーダンスをそれぞれ示す。図において、領域Aはワールブルグインピーダンスであり、領域Bは伝送モデルのインピーダンスである。第1実施形態に即して説明すると、周波数の異なる2つの伝送モデルのインピーダンスを結んだ直線の傾き角度を算出し、得られた傾き角度と、傾き角度と充電量との関係を用いて電池の充電量を検出する。
【0040】
また、本実施形態では複素インピーダンスをナイキストプロットして傾き角度を演算しているが、Bode線図を用いてもよい。また、本実施形態では、複素インピーダンスの測定に交流電圧を印加しているが、交流信号であればよく、例えば交流電流を印加してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 電池、12 インピーダンス測定器、14 コンピュータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10